説明

スイッチング周波数を温度に応じて調整するPWMコントローラ

【課題】スイッチング電源のスイッチングによる温度の上昇を防止する。
【解決手段】スイッチング電源のためのPWMコントローラのための発振器のスイッチング周波数を制御するための回路であって、スイッチング電源のためのコントローラの温度に関連付けられた信号を提供する第1の段10と、発振周波数を有する発振器であって、温度が上昇する際は発振周波数が減少し、温度が降下する際は発振周波数が増大するように、第1の段からの信号に応じて発振周波数を変化させる発振器30と、を有する回路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源に関するものであり、より具体的には、パルス幅変調を用いてパワートランジスタの出力段のオン時間を調整するためのスイッチング電源コントローラに関するものである。このようなスイッチングPWMコントローラは、より高いスイッチング周波数を用いることによって、そのような周波数で用いることのできる小型の誘導性素子または磁性素子を活用している。高スイッチング周波数で動作することによる主なデメリットは、スイッチングまたはゲートドライブによる損失を増大させ、システム効率の低下およびボード熱の増大すなわち温度の上昇をもたらすことにある。このような温度の上昇は、信頼度およびシステム整合性に対する懸念ゆえに、アプリケーションによっては容認できない場合がある。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、ある種のPWMコントローラICは、ヒステリシスモードすなわち「軽負荷」モードに入るための装備を有することが知られている。このようなコントローラは、低出力電流の条件下でこのモードに入るので、このとき送られる電力は、出力電圧を維持できるだけの大きさにとどまる。したがって、スイッチング周波数は可変である。この方法は、電力の損失を低減させ、バッテリ電源式用途のバッテリ寿命を延ばすことを目的としている。しかしながら、従来技術によるこのような回路は、回路の温度の上昇と共にスイッチング周波数を低減させることが不可能である。また、ヒステリシスモードのコンバータに適用されるので、パワートランジスタは、出力電圧を維持するためだけにオンになる。このような制御下では、周波数は、出力負荷に応じて可変である。したがって、本発明においては、パルス幅変調モードで動作することによってスイッチング周波数を定周波動作の状態に維持しつつ温度変化の関数のかたちで変化させるコントローラを提供することが望まれている。したがって、スイッチング周波数を出力負荷の関数のかたちで絶え間なく変化させるヒステリシスモードのコンバータと異なり、本発明は、定常PWM動作の状態で温度変化に基づいてスイッチング周波数を変化させる。
【発明の開示】
【0003】
本発明によれば、スイッチングレギュレータのスイッチング周波数を調整することによって回路の温度を調整すると共にシステムの整合性を維持するPWM制御回路が提供される。この回路は、下記の構成要素を有する集積回路の形態を採ることができる。
【0004】
例えばバイポーラトランジスタなどの半導体素子の温度依存性を利用して、絶対温度に比例する電流源を形成する温度感知回路。
【0005】
電圧制御式の電流源として機能する増幅回路。絶対温度に比例する電流は、抵抗に供給され、絶対温度に比例する電圧を形成する。この電圧は、増幅器の第1の入力に供給される。第2の入力は、定格の基準電圧に繋がれる。この増幅回路の出力は、温度に反比例する電流である。
【0006】
温度に反比例する電流とコンデンサとを用いてスイッチング周波数を設定する発振回路。
【0007】
上記の回路をともなうシステムにおいて、スイッチング周波数は、システムの温度上昇にともなって減少する。これは、電力損失を低減させると共に温度を低下させるので、結果として、PWMスイッチングコントローラのための温度調整回路が提供される。
【0008】
以上を踏まえ、本発明は、スイッチング電源のためのPWMコントローラのための発振器のスイッチング周波数を制御するための回路であって、
スイッチング電源のためのコントローラの温度に関連付けられた信号を提供する第1の段と、発振周波数を有する発振器であって、温度の上昇に従い発振周波数が減少し、温度の降下に従い発振周波数が増大するように、第1の段からの信号に応じて発振周波数を変化させる発振器とを有する回路を提供する。
【0009】
以下の詳細な説明から、本発明の他の目的、特徴、および利点が明らかになる。
【0010】
本発明は、以下の詳細な説明において、図面を参照にしながらより詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図を参照しつつ以下説明する。図1は、本発明にしたがった回路を示している。当該回路は、温度感知回路10、増幅器20、および発振器30の3つの部分を含む。
【0012】
例示された実施形態において、温度感知回路は、スイッチングコントローラの一部を構成することによって、当該スイッチングコントローラ回路の温度に応じている。スイッチングコントローラ回路は、集積回路パッケージ内に設けられ、パワーMOSFETなどの少なくとも1つのパワー出力トランジスタを有するスイッチング電源の出力段を制御する。出力段は、図示されていない。パワーMOSFETは、パルス幅変調されたコントローラからの信号によってゲートを制御され、コントローラのスイッチング周波数は、本発明にしたがって発振回路によって制御される。出力トランジスタのオン時間は、パルス幅変調を通じて出力電圧を制御する。多くのアプリケーションにおいて、出力段は、DCバス電圧の両端にブースト構成またはバック構成のかたちで接続された2つの出力トランジスタを有することによって、DCバス電圧を所望の電圧まで昇圧させるまたは降圧させる。ただし、スイッチング電源の出力段は、バック構成またはブースト構成の段以外の任意のスイッチング出力段であることも可能である。
【0013】
図1を参照すると、例示された実施形態において、温度感知段は、電圧源VCCとアースとの間に結合されたバイポーラトランジスタQ1,Q2,Q3,Q4を有する。例示された実施形態において、これらのトランジスタは、NPNバイポーラトランジスタである。定電流源回路において、Q3,Q4は、各足を流れる電流を等しくする。Q2は、例えばQ1の8倍の大きさを持つ。これは、Q1のVbe電圧(Vbe1)とQ2のVbe電圧(Vbe2)との間に差を生じさせる。この差、すなわちデルタVbeは、抵抗R2の両端間の差として現れ、電流(IPTAT)を絶対温度に比例する大きさに設定する。この電流は、電流ミラーM1−M2によって反映され、絶対温度に比例する電圧を抵抗R3に印加する。この電圧は、GM増幅器Aに供給され、GM増幅器Aは、次いで、発振器の電流を調整することによってコンバータの周波数を調整する。
【0014】
抵抗R3に印加される、IPTATに比例する電圧は、相互コンダクタンス増幅器Aの反転入力に結合される。増幅器Aの非反転入力は、定格の基準電圧V1に結合される。増幅器Aの出力は、絶対温度に反比例する電流(IIPTAT)であり、発振器30のコンデンサC1を充電する。コンデンサC1にかかる電圧が比較器COMPの閾値を上回る値まで増大すると、比較器は、ハイ状態に切り替わり、発振回路の2つの足に電圧を印加する。一方の足は、インバータU6A,U7Aを有し、コンデンサC2に遅延パルスを印加する。非遅延信号および遅延信号は、ANDゲートU9Aに結合される。遅延された立ち上がりは、更なる段であるインバータU8Aに結合され、立ち下がりを提供する。遅延されなかった立ち上がりと、インバータU8Aによって提供された立ち下がりは、更に、ANDゲートU10Aに提供され、パルス出力を提供する。パルス出力は、MOSFET M3のゲートに再提供され、遅延時間の後にコンデンサを放電する。これは、電流IIPTATによるコンデンサの再充電を可能にし、発振器のサイクルを再スタートさせる。コンデンサは、電流IIPTATの値に応じ、絶対温度に逆比例する率で充電される。したがって、もし温度が上昇するならば、コンデンサは、より長い時間をかけて充電され、スイッチング周波数は低減される。もし絶対温度が降下するならば、電流IIPTATは増大するので、コンデンサは、より素早く充電を行うことができ、スイッチング周波数は低減される。発振器の出力は、OSCOUTとして示されている。
【0015】
したがって、スイッチング周波数は、温度の上昇と共に減少することによって、スイッチングによる損失を低減させる。
【0016】
本発明は、多くのメリットをもたらす。本発明は、特定の出力電圧で全負荷電流を送り続けながらもシステムの過熱を防ぐことができる。スイッチング周波数は、定周波数動作(定常状態)モードのあいだ低減された状態で維持されるので、望ましくないノイズをシステムにもたらすことはない。したがって、本発明は、システムの過熱を懸念することなく、より高い周波数で、より小型の磁性素子または誘導性素子を活用することができる。
【0017】
以上では、特定の実施形態に関連して発明の説明を行ってきた。しかしながら、当業者ならば、そのほかに多数の変更形態およびその使用が明らかである。したがって、本発明は、本明細書に開示された特定の内容に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】発振器のスイッチング周波数を制御するための、本発明にしたがった回路であって、温度に応じてPWMスイッチング周波数を制御する回路の回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源のためのPWMコントローラのための発振器のスイッチング周波数を制御するための回路であって、
前記スイッチング電源のための前記コントローラの温度に関連付けられた信号を提供する第1の段と、
発振周波数を有する発振器であって、温度の上昇に従い発振周波数が減少し、温度の降下に従い発振周波数が増大するように、前記第1の段からの前記信号に応じ、発振周波数を変化させる発振器と
を備える回路。
【請求項2】
請求項1に記載の回路であって、
前記第1の段は、
前記コントローラの温度に応じ、前記コントローラの絶対温度に比例する電流を提供する第1の回路と、
絶対温度に比例する前記第1の回路からの電流に応じ、絶対温度に反比例する第2の電流を提供する第2の回路であって、前記絶対温度に反比例する電流は、温度の上昇に従い前記発振器の発振周波数が減少するように、前記発振器に提供される第2の回路と
を含む、回路。
【請求項3】
請求項2に記載の回路であって、
前記第1の回路は、前記コントローラの絶対温度に応ずる少なくとも1つのバイポーラトランジスタを含み、
前記第2の回路は、反転入力と非反転入力とを有する増幅器段を含み、前記絶対温度に比例する電流は、前記非反転入力に結合された抵抗に供給され、絶対温度に比例する電圧を提供し、これにより、前記増幅器は、前記絶対温度に反比例する電流を出力する、回路。
【請求項4】
請求項3に記載の回路であって、
前記絶対温度に反比例する電流は、比較器の入力に結合されたタイミングコンデンサを充電し、前記比較器は、前記タイミングコンデンサにかかる電圧が前記比較器に結合された所定の基準電圧を超える場合に出力を提供する、回路。
【請求項5】
請求項4に記載の回路であって、
前記発振器は、少なくとも1つの遅延段と、前記遅延段によって得られる遅延時間の後に前記コンデンサを放電するためのフィードバックラインとを含む、回路。
【請求項6】
請求項5に記載の回路であって、
前記発振器は、前記コンデンサを放電するための前記フィードバックラインによって制御される制御式スイッチを含む、回路。
【請求項7】
スイッチング電源のためのPWMコントローラのための発振器のスイッチング周波数を制御するための方法であって、
前記スイッチング電源のための前記コントローラの温度に関連付けられた第1の信号を提供し、
温度の上昇に従い発振周波数が減少し、温度の降下に従い発振周波数が増大するように、発信周波数を変化させることによって、前記第1の信号に応じ、発信周波数を有する発振器を制御すること
を備える方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記第1の信号を提供する工程は、
前記コントローラの絶対温度に比例する電流を提供し、
前記絶対温度に比例する電流に応じ、絶対温度に反比例する第2の電流を提供すると共に、温度の上昇に従い前記発振器の発振周波数が減少するように、前記絶対温度に反比例する第2の電流を前記発振器に提供することと
を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記絶対温度に比例する電流を提供する工程は、
前記コントローラの絶対温度に応ずる少なくとも1つのバイポーラトランジスタを提供し、
反転入力と非反転入力とを有する増幅器段を提供し、前記絶対温度に比例する電流は、前記非反転入力に結合された抵抗に供給され、絶対温度に比例する電圧を提供し、これにより前記増幅器は、前記絶対温度に反比例する電流を出力すること
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、更に、
前記絶対温度に反比例する電流によって、タイミングコンデンサを充電すると共に、前記タイミングコンデンサにかかる電圧が前記比較器に結合された所定の基準電圧を超える場合に、前記タイミングコンデンサにかかる電圧を前記比較器の入力に提供し、出力を提供することを備える方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−101489(P2006−101489A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−237113(P2005−237113)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(505300623)インターナショナル・レクティファイヤ・コーポレーション (23)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL RECTIFIER CORPORATION
【Fターム(参考)】