説明

スイング逆止弁

【課題】浮遊物を含む汚水や溶解物質を多く含む液体や、腐食性ガス等に対して、流量調整弁26およびシリンダー装置20に浮遊物や析出物が詰まったり、腐食が生じないスイング逆止弁3を提供する。
【解決手段】スイング逆止弁3の弁箱9の外壁にシリンダー装置20を設け、弁体10を支持する弁棒11とシリンダー装置20のピストン22を連結機構で連結し、弁体10の開閉動作とピストン22の往復移動を連動させる。弁体10の開動作と連動するピストン22の移動で容積を拡大させるシリンダー室25をトランスファバリア手段50を介して弁体10の上流側に連通管28で連通し、シリンダー室25とトランスファバリア手段50の間の連通管28に流量調整弁26を設ける。トランスファバリア手段50は、一次側と二次側が隔壁により分離され、この隔壁の移動で一次側と二次側が相互に圧力伝達し得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路内の流体を一方向にのみ流して逆流を阻止するために流路に設けられるスイング逆止弁において、急激な弁体の開閉動作を防止するようにしたスイング逆止弁であって、しかも浮遊物を含む汚水や溶解物質を多く含む液体の送水管路または腐食性ガス等の送気管路に好適なスイング逆止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスイング逆止弁の一例を図9を参照して説明する。図9は、従来のスイング逆止弁の一例の構造を示す縦断面図である。図9において、スイング逆止弁3は、弁箱9内に弁体10が弁棒11により揺動自在に支持され、実線で示したように、流体を流す方向と反対方向に弁体10が自重により揺動して弁座12に密着当接して閉状態となるように構成されている。そして、破線で示したように、弁体10は自重の力に抗して押し開けられて流体を流す方向に揺動されて開状態となるように構成されている。かかる構成で、上流側の流体の圧力が下流側より高ければ、その圧力差で弁体10は流体を流す方向に揺動して弁座12から離れ、流体の通過を許容する。そして、下流側の流体の圧力が上流側より高ければ、その圧力差および弁体10の自重で、弁体10は流体を流す方向とは逆方向に揺動して弁座12に密着当接して、流体の逆方向の通過を阻止する。
【0003】
上述の従来のスイング逆止弁3では、上流側が下流側より高い圧力である際に、その圧力差で弁体10が押し開けられて開状態となるために、圧力差が小さいと、弁体10の自重が閉方向に作用しているために、弁体10を押し開ける力が小さくて全開位置まで開成できず、弁体10は中途の開度で保持される。すると、弁体10により流路面積が狭搾されて流路抵抗が大きくなり、それだけ圧力損失を生ずるという問題があった。また、上流側が下流側より低い圧力による圧力差で弁体10が弁座12に押し付けられて密着して閉状態となって逆流の阻止がなされるが、その圧力差が小さいと、弁体10を弁座12に当接させる力が小さく、逆流方向の漏れを生ずる問題があった。
【0004】
これらの不具合を改善する技術が、特開昭56−134675号公報に示されている。この公報に示された技術は、スイング逆止弁の弁箱内にシリンダー装置を配設し、弁体を開状態と閉状態とに揺動自在に支持する弁棒とシリンダー装置のピストンを連結機構で連結して、弁体の開閉動作とピストンの往復移動が連動するようになされる。さらに、弁体の開動作と連動するピストンの移動により容積を拡大させるシリンダー室内を弁体の上流側に連通させ、弁体の閉動作と連動するピストンの移動により容積を拡大する他方のシリンダー室内を弁体の下流側に連通させている。
【特許文献1】特開昭56−134675号公報
【0005】
かかる構成にあっては、上流側が下流側より高い圧力であれば、その圧力差で弁体が押し開けられて開状態とする力が作用するのとともに、上流側の高い圧力の流体がシリンダー室内に流入してその容積を拡大してピストンを移動させて弁体を開状態とす力が作用する。もって、小さな圧力差であっても、弁体を完全開状態とすることができ、流路抵抗を小さくできて圧力損失を生ずることがない。また、上流側が下流側より低い圧力であれば、その圧力差で弁体が弁座に押し付けられて閉状態とする力が作用するとともに、下流側の高い圧力の流体が他方のシリンダー室内に流入してその容積を拡大してピストンを反対方向に移動させて弁体を閉状態とす力が作用する。もって、小さな圧力差であっても、弁体を弁座に確実に密着当接させて完全閉状態とすることができ、逆流方向の漏れを確実に阻止することができる。
【0006】
上述の図9に示す構造の従来のスイング逆止弁3および特開昭56−134675号公報に示されたスイング逆止弁のいずれにあっても、弁体10が開閉動作する速度を制御する機構は何ら設けられていない。そこで、上流側より下流側の圧力が一時的に急激に高くなった場合等には、その圧力差と弁体10の自重により、弁体10が急激に閉方向に揺動されて弁座12に激しく衝突し、弁体10および弁座12に損傷を生ずる場合があった。
【0007】
また、弁体10が弁座12に近づき、流路内を流れる流体の流量が減少して行くと、ある流量の際に急に流路内の圧力と流れ速度に激しい脈動と振動を起こすサージングと称される現象が生ずる虞があることが知られている。しかし、このサージングの現象については、その要因が十分には未だ解明されておらず確実な対策がなされていない現状にある。そして、サージングが起こると、弁体10が前後に激しく揺動され、弁体10が弁座12に繰り返して激しく衝突し、異常騒音を発するとともに弁体10および弁座12に損傷を生じさせる。
【0008】
そこで、本出願人は、先に特願2005−86701号において、弁体が急激に揺動することがなく、弁体が弁座に激しく衝突して損傷するようなことのないスイング逆止弁を提案している。特願2005−86701号で提案したスイング逆止弁の一例を図10および図11を参照して説明する。図10は、先に提案したスイング逆止弁の一例の構造を示す図である。図11は、図10のシリンダー装置の配管図である。図10および図11において、図9と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【特許文献2】特願2005−86701号
【0009】
まず、スイング逆止弁3本体は、図9に示す従来例と全く同じである。そして、弁箱9の外壁にシリンダー装置20が付設され、ピストン22の連接棒23がクランクアーム24を介して弁棒11に連結される。この弁棒11は、弁箱9の外壁を適宜な気密状態で貫通して外方に突出されている。そして、クランクアーム24は、弁棒11に対して相対的に回転しないように固定されればよい。これらの連接棒23とクランクアーム24からなる連結機構により、弁体10の開閉動作とピストン22の往復移動が連動するようになされる。さらに、弁体10の開動作と連動するピストン22の移動によりその容積を拡大させるシリンダー装置20のシリンダー室25に、流量調整手段としての流量調整弁26を介装した流路として連通管28が連通され、その先端が弁体10より上流側の上流側弁箱フランジ34に穿設されて流路に連通する連通孔に接続されている。
【0010】
かかる構成において、弁体10の閉状態で、スイング逆止弁3の上流側が下流側よりも圧力が高くなると、その圧力差により弁体10が自重に抗して開状態となる方向に揺動されて押し開けられる。そして、連通管28の先端を弁体10の上流側に連通することで、上流側の高い圧力の流体がシリンダー室25に流入してピストン22を移動させ、このピストン22に連接棒23とクランクアーム24により連結される弁体10を開方向に揺動させ、弁体10を完全開状態とすることができる。この際、シリンダー装置20のシリンダー室25の容積が拡大されるように作用するが、流量調整弁26によりシリンダー室25に流入できる流量が設定されており、急激には流入できず、ブレーキとして作用し、弁体10の開動作の速度が緩慢なものとなる。また、弁体10の開状態で、スイング逆止弁3の上流側が下流側よりも圧力が低くなると、その圧力差および弁体10の自重により弁体10が閉状態となる方向に揺動される。この際、弁体10の閉方向への揺動に伴いピストン22が移動してシリンダー装置20のシリンダー室25の容積を縮小しようとするが、流量調整弁26によりシリンダー室25から流出できる流量が設定されており、急激には流出できず、ブレーキとして作用し、弁体10の閉動作の速度が緩慢なものとなる。したがって、弁体10は急激に開閉動作することがなく、弁体10が弁座12に急激に衝突して破損を生ずるようなことがない。しかも、弁体10の開閉動作が緩慢となるために、サージングの現象に対してもその脈動と振動に対応して動作することがなく、弁体10が弁座12に繰り返して衝突するようなこともない。また、弁箱9の外壁にシリンダー装置20を付設し、弁箱9の外部で弁棒11とピストン22を連結機構で連結しているので、スイング逆止弁3自体は図9に示すごとき従来の構造と同様なものを用いることができる。
【0011】
また、先に特願2005−86701号で提案したスイング逆止弁の他の例を図12および図13を参照して説明する。図12は、先に提案したスイング逆止弁の他の例の構造を示す図である。図13は、図12のシリンダー装置の配管図である。図12および図13において、図9ないし図11と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0012】
図12および図13に示す他の例において、図10および図11に示す一例と相違するところは、シリンダー装置20の他方のシリンダー室38(ピストン22に対してシリンダー室25と反対側にあり、弁体10の開動作でその容積が縮小される)に、流量調整弁40を介装した連通流路としての連通管42が連通され、その先端が弁体10より下流側の下流側弁箱フランジ44に穿設されて流路に連通する連通孔に接続されたことにある。なお、シリンダー室25は大気に連通されている。
【0013】
かかる構成において、連通管42の先端を弁体10の下流側に連通することで、下流側の高い圧力の流体が他方のシリンダー室38に流入してピストン22を移動させ、このピストン22の移動により弁体10を閉方向に揺動させる。もって、弁体10を弁座12に確実に密着当接させて完全閉状態とすることができる。なお、図10および図11に示す一例と同様に、弁体10の開閉動作の速度は、流量調整弁40により緩慢なものとなることは勿論である。
【0014】
さらに、先に特願2005−86701号で提案したスイング逆止弁の別の例を図14および図15を参照して説明する。図14は、先に提案したスイング逆止弁の別の例の構造を示す図である。図15は、図14のシリンダー装置の配管図である。図14および図15において、図9ないし図13と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0015】
図14および図15に示す別の例において、図10および図11に示す一例および図12および図13に示す他の例と相違するところは、シリンダー装置20のシリンダー室25に流量調整弁26を介装して連通した連通管28の先端が、弁体10より上流側の上流側弁箱フランジ34に穿設されて流路に連通する連通孔に接続されるとともに、シリンダー装置20の他方のシリンダー室38に流量調整弁40を介装して連通したた連通管42の先端が、弁体10より下流側の下流側弁箱フランジ44に穿設されて流路に連通する連通孔に接続されたことにある。
【0016】
かかる構成において、連通管28の先端を弁体10の上流側に連通することで、上流側の高い圧力の流体がシリンダー室25に流入してピストン22を移動させ、このピストン22に連接棒23とクランクアーム24により連結される弁体10を開方向に揺動させる。もって、弁体10を完全開状態とすることができる。また、他方のシリンダー室38を流量調整弁40を介して連通管42の先端を弁体10の下流側に連通することで、下流側の高い圧力の流体が他方のシリンダー室38に流入してピストン22を移動させ、このピストン22の移動により弁体10を閉方向に揺動させる。もって、弁体10を弁座12に確実に密着当接させて完全閉状態とすることができる。そして、弁体10の開閉動作の速度は、流量調整弁26、40により緩慢なものとなることは勿論である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述の先に提案した特願2005−86701号のスイング逆止弁の技術にあっては、スイング逆止弁に流れる流体が、浮遊物が混入している汚水や溶解物質を多量に含む液体等、あるいは腐食性のあるガスに対しては、流量調整弁26、40やシリンダー装置20のシリンダー室25、38に浮遊物や析出物が詰まったり、また腐食が生じたりすることによって、流量調整弁26、40の動作に支障を生じさせ、またシリンダー装置20のピストン22の移動に支障を生じさせる。そこで、流量調整弁26、40としての機能、またシリンダー装置20としての機能が十分に発揮できないという問題がある。また、頻繁な保守管理が必要である。
【0018】
本発明は、上述のごとき事情に鑑みてなされたもので、浮遊物を含む汚水や溶解物質を多く含む液体や、腐食性ガス等に対して、流量調整弁およびシリンダー装置に浮遊物や析出物が詰まったり、腐食が生じたりしないようにしたスイング逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上述のごとき問題点を解決するためになされたもので、流路内の流体を一方向にのみ流して逆流を阻止するために前記流路に設けられるスイング逆止弁において、弁箱の外壁にシリンダー装置を付設し、前記スイング逆止弁の弁体を開状態と閉状態に揺動可能に支持する弁棒と前記シリンダー装置のピストンを連結機構で連結して、前記弁体の開閉動作と前記ピストンの往復移動が連動するようになし、前記弁体の開動作と連動する前記ピストンの移動により容積を拡大させる前記シリンダー装置のシリンダー室をトランスファバリア手段を介して前記弁体の上流側に連通し、前記シリンダー室と前記トランスファバリア手段の連通流路に流量調整手段を設けて構成されている。
【0020】
また、流路内の流体を一方向にのみ流して逆流を阻止するために前記流路に設けられるスイング逆止弁において、弁箱の外壁にシリンダー装置を付設し、前記スイング逆止弁の弁体を開状態と閉状態に揺動可能に支持する弁棒と前記シリンダー装置のピストンを連結機構で連結して、前記弁体の開閉動作と前記ピストンの往復移動が連動するようになし、前記弁体の閉動作と連動する前記ピストンの移動により容積を拡大させる前記シリンダー装置の他方のシリンダー室を第2のトランスファバリア手段を介して前記弁体の下流側に連通し、前記他方のシリンダー室と前記第2のトランスファバリア手段の連通流路に流量調整手段を設けて構成しても良い。
【0021】
そして、流路内の流体を一方向にのみ流して逆流を阻止するために前記流路に設けられるスイング逆止弁において、弁箱の外壁にシリンダー装置を付設し、前記スイング逆止弁の弁体を開状態と閉状態に揺動可能に支持する弁棒と前記シリンダー装置のピストンを連結機構で連結して、前記弁体の開閉動作と前記ピストンの往復移動が連動するようになし、前記弁体の開動作と連動する前記ピストンの移動により容積を拡大させる前記シリンダー装置のシリンダー室をトランスファバリア手段を介して前記弁体の上流側に連通し、前記弁体の閉動作と連動する前記ピストンの移動により容積を拡大させる前記シリンダー装置の他方のシリンダー室を第2のトランスファバリア手段を介して前記弁体の下流側に連通し、前記シリンダー室と前記トランスファバリア手段の連通流路および前記他方のシリンダー室と第2のトランスファバリア手段の連通流路のいずれか一方または双方に流量調整手段を設けて構成することもできる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載のスイング逆止弁にあっては、弁体の開動作と連動するピストンの移動により容積を拡大させるシリンダー装置のシリンダー室をトランスファバリア手段を介して弁体の上流側に連通し、シリンダー室とトランスファバリア手段の連通流路に流量調整手段を設けているので、スイング逆止弁内に流れる流体はトランスファバリア手段で阻止されて、流量調整弁およびシリンダー装置のシリンダー室に流入することがない。もって、スイング逆止弁に浮遊物を含む汚水や溶解物質を多く含む液体や、腐食性ガス等が流れていても、流量調整弁およびシリンダー装置に浮遊物や析出物が詰まったり、腐食が生じたりすることがない。そこで、流量調整弁としての機能、またシリンダー装置としての機能を十分に発揮できるとともに、頻繁な保守管理を必要としない。
【0023】
また、請求項2記載のスイング逆止弁にあっては、弁体の閉動作と連動するピストンの移動により容積を拡大させるシリンダー装置の他方のシリンダー室を第2のトランスファバリア手段を介して弁体の下流側に連通し、他方のシリンダー室と第2のトランスファバリア手段の連通流路に流量調整手段を設けているので、請求項1記載のものと同様に、スイング逆止弁内に流れる流体は第2のトランスファバリア手段で阻止されて、流量調整弁およびシリンダー装置の他方のシリンダー室に流入することがない。もって、スイング逆止弁に浮遊物を含む汚水や溶解物質を多く含む液体や、腐食性ガス等が流れていても、流量調整弁およびシリンダー装置に浮遊物や析出物が詰まったり、腐食が生じたりすることがない。そこで、流量調整弁としての機能、またシリンダー装置としての機能を十分に発揮できるとともに、頻繁な保守管理を必要としない。
【0024】
そして、請求項3記載のスイング逆止弁にあっては、弁体の開動作と連動するピストンの移動により容積を拡大させるシリンダー装置のシリンダー室をトランスファバリア手段を介して弁体の上流側に連通し、弁体の閉動作と連動するピストンの移動により容積を拡大させるシリンダー装置の他方のシリンダー室を第2のトランスファバリア手段を介して弁体の下流側に連通し、シリンダー室とトランスファバリア手段の連通流路および他方のシリンダー室と第2のトランスファバリア手段の連通流路のいずれか一方または双方に流量調整手段を設けているので、請求項1および2記載のものと同様に、スイング逆止弁内に流れる流体はトランスファバリア手段および第2のトランスファバリア手段で阻止されて、流量調整弁およびシリンダー装置のシリンダー室および他方のシリンダー室に流入することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の第1実施例を図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明のスイング逆止弁の第1実施例の構造を示す図である。図2は、図1のシリンダー装置の配管図である。図1および図2において、図9ないし図15と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0026】
まず、第1実施例において、図10および図11に示す先に提案した一例と相違するところは、弁体10の開動作と連動するピストン22の移動により容積を拡大させるシリンダー装置20のシリンダー室25に、流量調整手段としての流量調整弁26を介装して流路として連通する連通管28を連通し、この連通管28にトランスファバリア手段50を介装して、さらにその連通管28の先端が弁体10より上流側の上流側弁箱フランジ34に穿設されて流路に連通する連通孔に接続されていることにある。このトランスファバリア手段50としては、ダイアフラム型アキュムレータやブラダ型アキュムレータやピストン型アキュムレータ等を用いて、弁体10より上流側に連通する一次側と流量調整弁26に連通する二次側が、隔壁により遮断されて分離されるとともに隔壁の移動により一方の流体の圧力等が他方の流体に伝達され得るものであれば良い。なお、図1に示されるトランスファバリア手段50は、ダイアフラム型アキュムレータである。
【0027】
かかる構成において、弁体10の閉状態で、スイング逆止弁3の上流側が下流側よりも圧力が高くなると、その圧力差により弁体10が自重に抗して開状態となる方向に揺動されて押し開けられる。そして、連通管28の先端を弁体10の上流側に連通することで、上流側の高い圧力の流体がトランスファバリア手段50の一次側に流入し、その一次側の圧力で隔壁が移動して二次側の流体がシリンダー室25に流入してピストン22を移動させる。このピストン22に連接棒23とクランクアーム24により連結される弁体10が開方向に揺動されて、弁体10が完全開状態とされる。この際、シリンダー装置20のシリンダー室25の容積が拡大されるように作用するが、流量調整弁26によりシリンダー室25に流入できる流量が適宜に設定されており、急激には流入できず、ブレーキとして作用し、弁体10の開動作の速度が緩慢なものとなる。また、弁体10の開状態で、スイング逆止弁3の上流側が下流側よりも圧力が低くなると、その圧力差および弁体10の自重により弁体10が閉状態となる方向に揺動される。この際、弁体10の閉方向への揺動に伴いピストン22が移動してシリンダー装置20のシリンダー室25の容積を縮小しようとするが、流量調整弁26によりシリンダー室25から流出できる流量が適宜に設定されているので、急激には流出できず、ブレーキとして作用し、弁体10の閉動作の速度が緩慢なものとなる。したがって、弁体10は急激に開閉動作することがなく、弁体10が弁座12に急激に衝突して破損を生ずるようなことがない。しかも、弁体10の開閉動作が緩慢となるために、サージングの現象に対してもその脈動と振動に対応して動作することがなく、弁体10が弁座12に繰り返して衝突するようなこともない。また、弁箱9の外壁にシリンダー装置20を付設し、弁箱9の外部で弁棒11とピストン22を連結機構で連結しているので、スイング逆止弁3自体は図9に示すごとき従来の構造と同様なものを用いることができる。
【0028】
弁体10の開閉動作の際に流量調整弁26を通過してシリンダー装置20のシリンダー室25に流出入する流体は、トランスファバリア手段50によりスイング逆止弁3内を流れる流体と隔離されており、トランスファバリア手段50の二次側の流体を浮遊物が混入せずまた溶解物質を含まれない液体または腐食性のない気体とすることで、流量調整弁26およびシリンダー装置20に浮遊物や析出物が詰まったり腐食したりすることがなく、本来の機能を十分に発揮することができる。もって、スイング逆止弁3内に流れる流体が、浮遊物が混入されている汚水や溶解物質を多量に含む液体等、あるいは腐食性のあるガス等であっても、流量調整弁26およびシリンダー装置20は何ら不具合を生じない。
【0029】
次に、本発明の第2実施例を図3および図4を参照して説明する。図3は、本発明のスイング逆止弁の第2実施例の構造を示す図である。図4は、図3のシリンダー装置の配管図である。図3および図4において、図1と図2および図9ないし図15と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0030】
第2実施例において、図1および図2に示す第1実施例と相違するところは、弁棒11に固定連結されるクランクアーム24は、連接棒23と連結されるのと反対側に大きく伸ばされ、その反対側に大きく伸びた部分にバランス調整手段としての重り36が配設されたことにある。なお、ピストン22に対してシリンダー室25と反対側にある他方のシリンダー室38は大気に連通されている。また、シリンダー室25が、流量調整手段として流量調整弁26とチェック弁30が並列に介装して連通管28に連通され、この連通管28がトランスファバリア手段50の二次側に連通していることにある。
【0031】
かかる構成において、弁体10をその自重により閉方向に揺動させるように作用する力に対して、重り36により反対方向に揺動させる力を作用させて、相互に打ち消し合わせ、弁体10の自重による影響を排除することができる。そこで、上流側が下流側よりも僅かに圧力が高いだけでも、その圧力差により弁体10を開状態となる方向に十分に揺動させて押し開けることができる。そして、連通管28の先端を弁体10の上流側に連通することで、上流側の高い圧力の流体がシリンダー室25に流入してピストン22を移動させ、このピストン22に連接棒23とクランクアーム24により連結される弁体10を開方向に揺動させる。もって、弁体10を完全開状態とすることができる。なお、第1実施例と同様に、弁体10の開閉動作の速度は、流量調整弁26により緩慢なものとなることは勿論である。
【0032】
また、弁体10の開動作と閉動作とで、シリンダー装置20と流量調整弁26によるブレーキとして作用する力は同じである。しかし、図4に示す配管構造では、弁体10の開動作と閉動作とで、ブレーキとして作用させる力を相違させることができ、一方の動作を他方の動作より早くするように設定することができる。しかも、そのブレーキ作用をより大きなものとすることができる。図4の配管構造にあっては、シリンダー室25の容積を拡大する弁体10の開動作に対してチェック弁30が順方向に設定されているので流入する流量は規制されずブレーキとしての作用が小さなものとなり、またシリンダー室25の容積を縮小する弁体10の閉動作に対してチェック弁30が逆方向に設定されているので流出する流量は規制されてブレーキとしての作用が大きなものとなる。よって、弁体10の動作方向により、ブレーキの作用が相違することとなる。しかも、シリンダー室25に流出入する流体を、大気よりも粘性の大きな液体32とすることで、より大きなブレーキとしての作用が得られる。
【0033】
なお、上記の第2実施例において、重り36に代えて、コイルバネなどにより、弁体10をその自重により閉方向に揺動させるように作用する力に対して、反対方向に揺動させる力を作用させて、相互に打ち消し合わせ、弁体10の自重による影響を排除するようにしても良い。また、流量調整手段は、図4に示すごとく流量調整弁26とチェック弁30の並列回路による構成に限られず、流量調整弁26とチェック弁30の並列回路に第2の流量調整弁が直列に接続されても良く、また第2の流量調整弁とチェック弁30の直列回路に流量調整弁26が並列に接続されても良い。しかも、弁体10の開動作および閉動作のいずれに対してブレーキ作用が大きくなるように設定するかは、チェック弁30を接続する方向を適宜に設定すれば良いことは容易に理解し得るであろう。
【0034】
そして、本発明の第3実施例を図5および図6を参照して説明する。図5は、本発明のスイング逆止弁の第3実施例の構造を示す図である。図6は、図5のシリンダー装置の配管図である。図5および図6において、図1ないし図4および図9ないし図15と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0035】
図5および図6に示す第3実施例において、図1および図2に示す第1実施例と相違するところは、シリンダー装置20の他方のシリンダー室38(ピストン22に対してシリンダー室25と反対側にあり、弁体10の開動作でその容積が縮小される)に、流量調整弁40を介装して連通した連通流路としての連通管42が、第2のトランスファバリア手段52を介して、弁体10より下流側の下流側弁箱フランジ44に穿設されて流路に連通する連通孔に連接されたことにある。なお、第2のトランスファバリア手段52も、第1実施例のトランスファバリア手段50と同様に、一次側と二次側が隔壁により遮断されて分離されるとともに隔壁の移動により一次側と二次側の流体の圧力等が相互に他方に伝達され得るものであれば良い。また、シリンダー室25は大気に連通されている。
【0036】
かかる構成において、連通管42の先端を弁体10の下流側に連通することで、下流側の高い圧力が第2のトランスファバリア手段52を介して他方のシリンダー室38に伝達されてピストン22を移動させ、このピストン22の移動により弁体10を閉方向に揺動させる。もって、弁体10を弁座12に確実に密着当接させて完全閉状態とすることができる。そして、連通管42に第2のトランスファバリア手段52を介装することで、弁体10の開閉動作の際に流量調整弁40を通過してシリンダー装置20の他方のシリンダー室38に流出入する流体は、スイング逆止弁3内を流れる流体と隔離されており、流量調整弁40およびシリンダー装置20に浮遊物や析出物が詰まったりすることがない。もって、スイング逆止弁3内に流れる流体が、浮遊物が混入されている汚水や溶解物質を多量に含む液体等、あるいは腐食性のあるガス等であっても、流量調整弁40およびシリンダー装置20は何ら不具合を生じない。なお、図1および図2に示す第1実施例と同様に、弁体10の開閉動作の速度は、流量調整弁40により緩慢なものとなることは勿論である。
【0037】
さらに、本発明の第4実施例を図7および図8を参照して説明する。図7は、本発明のスイング逆止弁の第4実施例の構造を示す図である。図8は、図7のシリンダー装置の配管図である。図7および図8において、図1ないし図6および図9ないし図15と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0038】
図7および図8に示す第4実施例において、図1および図2に示す第1実施例および図5および図6に示す第3実施例と相違するところは、シリンダー装置20のシリンダー室25に流量調整弁26を介装して連通した連通管28が、トランスファバリア手段50を介して弁体10より上流側の上流側弁箱フランジ34に穿設されて流路に連通する連通孔に連接されるとともに、シリンダー装置20の他方のシリンダー室38に流量調整弁40を介装して連通した連通管42が第2のトランスファバリア手段52を介して弁体10より下流側の下流側弁箱フランジ44に穿設されて流路に連通する連通孔に接続されたことにある。
【0039】
かかる構成において、連通管28の先端を弁体10の上流側に連通することで、上流側の高い圧力がトランスファバリア手段50を介してシリンダー室25に伝達されてピストン22を移動させ、このピストン22に連接棒23とクランクアーム24により連結される弁体10を開方向に揺動させる。もって、弁体10を完全開状態とすることができる。また、他方のシリンダー室38を流量調整弁40を介して連通管42の先端を弁体10の下流側に連通することで、下流側の高い圧力が第2のトランスファバリア手段52を介して他方のシリンダー室38に伝達されてピストン22を移動させ、このピストン22の移動により弁体10を閉方向に揺動させる。もって、弁体10を弁座12に確実に密着当接させて完全閉状態とすることができる。しかも、弁体10の開閉動作の際に流量調整弁26、40を通過してシリンダー装置20のシリンダー室25、38に流出入する流体は、スイング逆止弁3内を流れる流体と隔離されており、流量調整弁26、40およびシリンダー装置20に浮遊物や析出物が詰まったりすることがない。もって、スイング逆止弁3内に流れる流体が、浮遊物が混入されている汚水や溶解物質を多量に含む液体等、あるいは腐食性のあるガス等であっても、流量調整弁26、40およびシリンダー装置20は何ら不具合を生じない。そして、弁体10の開閉動作の速度は、流量調整弁26、40により緩慢なものとなることは勿論である。
【0040】
なお、上記実施例において、本発明のスイング逆止弁は、流路内に液体または気体のいずれが流れるものであっても良い。そして、第1ないし第4実施例において、連通管28、42の先端が上流側弁箱フランジ34、下流側弁箱フランジ44に穿設した連通孔に接続されるものに限られず、弁箱9に弁体10よりも上流側または下流側で流路に連通するように穿設された連通孔に接続されても良い。また、第4実施例にあっては、連通管28、42に流量調整弁26、40がそれぞれに介装されているが、いずれか一方の連通管にのみ介装させても良い。さらに、シリンダー装置20のピストン22の移動に対するシリンダー室25と他方のシリンダー室38の容積変化が同じであるようにしても良く、また上記実施例とは逆に、ピストン22の移動に対してシリンダー室25の容積変化が他方のシリンダー室38の容積変化よりも小さくなるように設定しても良い。そしてまた、バランス調整手段は、第2実施例のものに限られず、弁体10の自重による閉方向へ揺動させる力を減殺させるいかなる手段が用いられていても良く、そのバランス調整手段を設ける箇所は、上記実施例に限られるものでない。そしてさらに、弁棒11とピストン22を連結する連結機構は、上記実施例のものに限られず、弁体10の開閉動作とピストン22の往復移動が連結されるならば、いかなる構造の連結機構であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のスイング逆止弁の第1実施例の構造を示す図である。
【図2】図1のシリンダー装置の配管図である。
【図3】本発明のスイング逆止弁の第2実施例の構造を示す図である。
【図4】図3のシリンダー装置の配管図である。
【図5】本発明のスイング逆止弁の第3実施例の構造を示す図である。
【図6】図5のシリンダー装置の配管図である。
【図7】本発明のスイング逆止弁の第4実施例の構造を示す図である。
【図8】図7のシリンダー装置の配管図である。
【図9】従来のスイング逆止弁の一例の構造を示す縦断面図である。
【図10】先に提案したスイング逆止弁の一例の構造を示す図である。
【図11】図10のシリンダー装置の配管図である。
【図12】先に提案したスイング逆止弁の他の例の構造を示す図である。
【図13】図12のシリンダー装置の配管図である。
【図14】先に提案したスイング逆止弁の別の例の構造を示す図である。
【図15】図14のシリンダー装置の配管図である。
【符号の説明】
【0042】
3 スイング逆止弁
9 弁箱
10 弁体
11 弁棒
12 弁座
20 シリンダー装置
22 ピストン
23 連接棒
24 クランクアーム
25 シリンダー室
26、40 流量調整弁
28、42 連通管
30 チェック弁
34 上流側弁箱フランジ
36 重り
38 他方のシリンダー室
44 下流側弁箱フランジ
50 トランスファバリア手段
52 第2のトランスファバリア手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内の流体を一方向にのみ流して逆流を阻止するために前記流路に設けられるスイング逆止弁において、弁箱の外壁にシリンダー装置を付設し、前記スイング逆止弁の弁体を開状態と閉状態に揺動可能に支持する弁棒と前記シリンダー装置のピストンを連結機構で連結して、前記弁体の開閉動作と前記ピストンの往復移動が連動するようになし、前記弁体の開動作と連動する前記ピストンの移動により容積を拡大させる前記シリンダー装置のシリンダー室をトランスファバリア手段を介して前記弁体の上流側に連通し、前記シリンダー室と前記トランスファバリア手段の連通流路に流量調整手段を設けて構成したことを特徴とするスイング逆止弁。
【請求項2】
流路内の流体を一方向にのみ流して逆流を阻止するために前記流路に設けられるスイング逆止弁において、弁箱の外壁にシリンダー装置を付設し、前記スイング逆止弁の弁体を開状態と閉状態に揺動可能に支持する弁棒と前記シリンダー装置のピストンを連結機構で連結して、前記弁体の開閉動作と前記ピストンの往復移動が連動するようになし、前記弁体の閉動作と連動する前記ピストンの移動により容積を拡大させる前記シリンダー装置の他方のシリンダー室を第2のトランスファバリア手段を介して前記弁体の下流側に連通し、前記他方のシリンダー室と前記第2のトランスファバリア手段の連通流路に流量調整手段を設けて構成したことを特徴とするスイング逆止弁。
【請求項3】
流路内の流体を一方向にのみ流して逆流を阻止するために前記流路に設けられるスイング逆止弁において、弁箱の外壁にシリンダー装置を付設し、前記スイング逆止弁の弁体を開状態と閉状態に揺動可能に支持する弁棒と前記シリンダー装置のピストンを連結機構で連結して、前記弁体の開閉動作と前記ピストンの往復移動が連動するようになし、前記弁体の開動作と連動する前記ピストンの移動により容積を拡大させる前記シリンダー装置のシリンダー室をトランスファバリア手段を介して前記弁体の上流側に連通し、前記弁体の閉動作と連動する前記ピストンの移動により容積を拡大させる前記シリンダー装置の他方のシリンダー室を第2のトランスファバリア手段を介して前記弁体の下流側に連通し、前記シリンダー室と前記トランスファバリア手段の連通流路および前記他方のシリンダー室と第2のトランスファバリア手段の連通流路のいずれか一方または双方に流量調整手段を設けて構成したことを特徴とするスイング逆止弁。
【請求項4】
請求項1ないし3記載のいずれかのスイング逆止弁において、自重により前記弁体が閉方向に揺動する力を減殺するように、前記弁棒にバランス調整手段を設けて構成したことを特徴とするスイング逆止弁。
【請求項5】
請求項1ないし4記載のいずれかのスイング逆止弁において、前記流量調整手段を前記シリンダー室または前記他方のシリンダー室への流体の流入と流出とで異なる流量調整に設定し得るように構成したことを特徴とするスイング逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−75860(P2008−75860A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259317(P2006−259317)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000151058)株式会社電業社機械製作所 (21)
【Fターム(参考)】