説明

スクリーン印刷用マスク及びスクリーン印刷用マスクの作製方法

【課題】被印刷基板との密着性、開口部における位置精度、耐洗浄液性、スキージ圧と柔軟性のバランスを満たし、高密度かつ高精細なパターンであっても、滲みや抜け不良なしに、適正なペースト材転写量を良好に位置ずれなく転写印刷することができるスクリーン印刷用マスク及びスクリーン印刷用マスクの作製方法を提供することである。
【解決手段】開口部を有するスクリーン印刷用マスクにおいて、プリント面側の開口部の周囲に突設樹脂部が形成されていることを特徴とするスクリーン印刷用マスク及び突設樹脂部がセルフアライメントで形成されることを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷に使われるスクリーン印刷用マスク及びスクリーン印刷用マスクの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型、多機能化に伴い、電子基板の高密度化や配線パターンの微細化が進められており、電子基板への電子部品の高密度実装化が広く行われている。この電子基板への電子部品の高密度実装化においては、電子基板面に電子部品を実装するためにクリーム半田を印刷し、半田端子に電子部品を搭載した後にリフロー炉で加熱して半田付けを行う。上記クリーム半田の印刷方法としては、スクリーン印刷による工程が広く用いられている。一般的に、スクリーン印刷は、パターン状に複数の開口部が形成されたスクリーン印刷用マスクを印刷すべき被印刷基板の上面にセットし、スクリーン印刷用マスク上にクリーム半田等のペースト材を供給してスキージによって掻き寄せることによって、ペースト材を開口部を通してパターン状に転写印刷する方法である。スクリーン印刷用マスクのスキージと接触する面をスキージ面、被印刷基板と接触する面をプリント面と称する。
【0003】
印刷パターンが高密度かつ高精細となってくると、スクリーン印刷用マスクと被印刷基板との密着性が重要となってくる。スクリーン印刷用マスクと被印刷基板との間に隙間が生ずると、印刷時にペースト材が開口パターンからはみ出して滲みが発生することになる。図10は、スクリーン印刷の工程において、良好に印刷が行われた場合を示す概念図である。図11は、スクリーン印刷の工程において、被印刷基板の凹凸による密着性不良によって、滲みが発生した場合を示す概念図である。図10と図11において、(a)が印刷時の状態で、被印刷基板5の上にスクリーン印刷用マスク1を重ね、その上にペースト材8をのせてからスキージ7で掻き寄せることにより、スクリーン印刷用マスク1の開口部を通して、ペースト材8を被印刷基板5上へ転写印刷させている。図10(b)では、被印刷基板5の表面の平滑性が良いため、開口部2に充填されたペースト材8がそのまま転写されており、良好な印刷が行われている。図11(b)では、被印刷基板5の表面の平滑性が悪いため、ペースト材8の滲みが発生してしまっている。このように、滲みが発生すると、隣り合うパターン同士でブリッジ短絡等の欠陥が発生する可能性が増し、良好な品質の印刷ができない結果となる。
【0004】
この密着性の問題を改善する目的で、メタルマスクの開口周縁に、エッチング、めっき、スパッタリング等によって、隆起部を形成したスクリーン印刷用マスクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ただし、隆起部が金属層であるため、柔軟性に劣り、充分な密着性を得るのには限界があった。
【0005】
密着性を改善する他の方法として、スクリーン印刷用マスクの被印刷基板との接触面に樹脂層を形成した樹脂付きスクリーン印刷用マスクが提案されている(例えば、特許文献2〜3参照)。樹脂付きスクリーン印刷用マスクを用いたスクリーン印刷の工程を図12に示す。図12(a)に示すように、スクリーン印刷用マスク1の被印刷基板5との接触面に樹脂層3が設けられているために、表面の平滑性が悪い被印刷基板5に対しても、樹脂付きスクリーン印刷用マスク4が密着し、ペースト材8の滲みを防いでいる。そのため、良好なペースト材8の転写印刷が可能となっている(図12(b))。
【0006】
しかし、より高密度かつ高精細なパターンになってくると、樹脂付きスクリーン印刷用マスクにおいて、さらに以下に示すような特性が要求されるようになってきた。第1に、スクリーン印刷用マスクと樹脂層の開口部とに位置ずれがないこと、つまり開口部の位置精度が要求されている。
【0007】
ここで、図13を用いて、スクリーン印刷用マスクの開口部と樹脂層の開口部との位置ずれによる問題を説明する。図13(a)は、樹脂付きスクリーン印刷用マスクを樹脂層3面から見た透視図であり、スクリーン印刷用マスク1の開口部2のエッジ部19の位置と、樹脂層3の開口部2のエッジ部29の位置とがずれている。距離Xは、スクリーン印刷用マスク1の開口部2の重心位置18と、樹脂層3の開口部2の重心位置28とのずれを表している。また、図13(b)は、図13(a)の線A−A’で切断した樹脂付きスクリーン印刷用マスクの断面図である。このように、スクリーン印刷用マスク1と樹脂層3の開口部2がお互いにずれた断面形状であると、ペースト材を適正な位置に印刷することができない。さらに、スクリーン印刷用マスク1の開口部2の一部分が、樹脂層3の鍔によって塞がれているため、ペースト材転写量が減少するという結果も招いてしまう。よって、印刷位置精度や転写性を良くするために、スクリーン印刷用マスクと樹脂層の開口部とに位置ずれがないことが要求されている。
【0008】
第2に、耐洗浄液性が要求されている。すなわち、多数枚の印刷を行っていくと、スクリーン印刷用マスクの洗浄が定期的に必要となるが、その洗浄には通常、有機溶剤が使用される。有機溶剤によって樹脂層が溶解、膨潤すると、ペースト材の滲みやペースト材転写量の変動等の問題が発生する。特に、高密度かつ高精細なパターンの印刷を行う際には、洗浄液による洗浄回数も増える傾向にあり、大きな問題となっている。
【0009】
第3に、スキージ圧と柔軟性とのバランスが要求されている。図14(b)に示すように、通常のスキージ圧70(図14において、スキージ圧70の大きさは矢印の数で表している)では隙間40が生ずる場合があるが、図14(a)に示すように、スキージ圧70を上げると、隙間40が無くなる。すなわち、樹脂層3を変形させるだけの圧力を加えれば密着性は向上する。しかし、スクリーン印刷の場合、通常、スキージ圧を上げて印刷を行うと、開口部中央のペースト材を削ってしまって、ペースト材転写量の減少を招いたり、スクリーン印刷用マスクのスキージ面の摩耗を引き起こしたり、スクリーン印刷用マスクの引きずりによる寸法変化等を起こしたり、樹脂層に対して面内方向の歪みが加わってアライメントマークの位置ずれが発生する等の問題があり、良好な印刷品質を確保できなくなる。パターンが高密度かつ高精細になればなるほど、これらの問題は大きな影響を及ぼすようになってきている。
【0010】
従来の樹脂付きスクリーン印刷用マスクとしては、例えば、メタルマスクに樹脂層を形成した樹脂付きスクリーン印刷用マスクの例としては、エッチング法でメタルマスクを作製した後に、感光性樹脂層を塗布等の手法で形成し、開口パターンを形成したフォトマスクを重ねてパターン露光を行い、その後、現像処理を行うことで、感光性樹脂層に開口部を形成して樹脂層とするものが知られている(例えば、特許文献2参照)。この樹脂付きスクリーン印刷用マスクでは、メタルマスクとフォトマスクの開口パターンとの位置あわせを正確に行うことが難しく、第1の要求特性であるメタルマスクと感光性樹脂層の開口部の位置精度に問題があった。また、通常の感光性樹脂層は有機溶剤によって溶解、膨潤する傾向があり、樹脂層の劣化や変質、変形なしに洗浄を行うことは難しく、第2の要求特性である耐洗浄液性も満足するものではなかった。
【0011】
また、開口部を有しないメタルプレートと開口部を有しない樹脂層(例えば、ポリイミド樹脂層)とを積層した後、YAGレーザ等によるレーザ加工によって、樹脂層とメタルプレートを一括開口する方法で得られる従来の樹脂付きスクリーン印刷用マスクでは、メタルプレートと樹脂層との開口部の重心位置のずれはなく、精度良く同じ位置に開口部の形成が可能であるとされている(例えば、特許文献3参照)。しかし、レーザ加工時の熱の発生により、メタルプレートと樹脂層において、熱歪みや熱変形が発生し、スクリーン印刷用マスク自体が歪んだり、開口部が変形したりする場合があり、スクリーン印刷用マスクと樹脂層の開口部の位置ずれが発生し、第1の要求特性を満足することはできていない。また、ポリイミド層を樹脂層とした場合には、第2の要求特性である耐洗浄液性には優れている一方、柔軟性には劣るため、第3の要求特性であるスキージ圧と柔軟性とのバランスに問題があった。
【0012】
以上のように、被印刷基板との密着性、開口部における位置精度、耐洗浄液性、スキージ圧と柔軟性のバランスを満たし、高密度かつ高精細なパターンの印刷を良好に行うことができるスクリーン印刷用マスクは、これまでのところ得られていなかった。
【特許文献1】実開平5−72456号公報
【特許文献2】特開平9−315026号公報
【特許文献3】特開2001−113667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、被印刷基板との密着性、開口部における位置精度、耐洗浄液性、スキージ圧と柔軟性のバランスを満たし、高密度かつ高精細なパターンであっても、滲みや抜け不良なしに、適正なペースト材転写量を良好に位置ずれなく転写印刷することができるスクリーン印刷用マスク及びスクリーン印刷用マスクの作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)開口部を有するスクリーン印刷用マスクにおいて、プリント面側の開口部の周囲に突設樹脂部が形成されていることを特徴とするスクリーン印刷用マスク、
(2)突設樹脂部の頂部が曲面である上記(1)記載のスクリーン印刷用マスクを見出した。
【0015】
また、(3)プリント面側の開口部の周囲に突設樹脂部が形成されてなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、突設樹脂部がセルフアライメントで形成されることを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法、
(4)スクリーン印刷用マスクのプリント面に樹脂層をラミネートによって形成して開口部のプリント面側を覆う工程、開口部の樹脂層を除去する工程、スキージ面側より硬化処理を行って開口部周囲の樹脂層を硬化する工程、未硬化の樹脂層を除去して硬化部からなる突設樹脂部を形成する工程を含む上記(3)記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法、
(5)樹脂層の樹脂が光架橋性樹脂であり、硬化処理が光照射処理である上記(4)記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法を見出した。
【0016】
さらに、(6)スクリーン印刷用マスクに荷電樹脂粒子を電着して突設樹脂部を形成する工程を含むことを特徴とする上記(3)記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法、
(7)スクリーン印刷用マスクのプリント面に樹脂層をラミネートによって形成して開口部のプリント面側を覆う工程、開口部の樹脂層を除去する工程、開口部内壁及び開口部周囲に荷電樹脂粒子を電着して突設樹脂部を形成する工程を含む上記(6)記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法を見出した。
【0017】
また、(8)開口部の樹脂層を除去する工程が、スキージ面から樹脂層除去液を供給して開口部の樹脂層を除去する工程である上記(4)または(7)記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法、
(9)開口部の樹脂層を除去する工程が、開口部以外の樹脂層の上に更に樹脂層開口用電着樹脂層を形成した後に、プリント面側から樹脂層除去液を供給して開口部の樹脂層を除去する工程である上記(4)または(7)記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法、
(10)開口部の樹脂層を除去する工程が、開口部の樹脂層を薄膜化させた後に樹脂層除去液を供給して開口部の樹脂層を除去する工程である上記(4)または(7)記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法を見出した。
【発明の効果】
【0018】
(1)本発明のスクリーン印刷用マスクは、プリント面側の開口部の周囲に突設樹脂部が形成されている。図1(a)は、突設樹脂部50が形成されたスクリーン印刷用マスク1を用いたスクリーン印刷の工程を表したものである。突設樹脂部50を設けることにより、弱いスキージ圧70でも、突設樹脂部50が被印刷基板5に密着し、滲みを防止することができ、良好な印刷品質を得ることができる。
【0019】
(2)発明(1)において、突設樹脂部の頂部が曲面であるスクリーン印刷用マスクにより、スキージの圧力のコントロールを容易にし、滲みのない印刷が可能となる。図1(a)に示すように、突設樹脂部50の頂部が平面である場合でも、適正なスキージ圧70で被印刷基板5に対して良好な密着が得られる。しかし、さらに高密度かつ高精細なパターンの印刷の場合やスキージ圧をあまりかけることのできない場合に、スキージ圧70を更に弱めていくと、図1(b)に示したように、いずれは、隙間40が発生する。ここで、図1(c)に示したように、突設樹脂部50の頂部を曲面とすることで、弱いスキージ圧70でも隙間40がなくなって良好な密着性を維持でき、滲みのない良好な印刷を行うことが可能となる。
【0020】
(3)プリント面側の開口部の周囲に突設樹脂部が形成されてなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、突設樹脂部がセルフアライメントで形成されることにより、突設樹脂部が開口部周囲の適正な位置に、位置ずれなく形成されているため、転写不良等の問題の発生がなく、滲みのない良好な印刷品質を得ることができる。また、セルフアライメントで突設樹脂部を形成するため、位置合わせの作業に伴う追加の部材・装置や労力を省くことができ、簡便な作業で良好な精度の突設樹脂部を形成することができる。
【0021】
(4)発明(3)において、スクリーン印刷用マスクのプリント面に樹脂層をラミネートによって形成して開口部のプリント面側を覆う工程、開口部の樹脂層を除去する工程、スキージ面側より硬化処理を行って開口部周囲の樹脂層を硬化する工程、未硬化の樹脂層を除去して硬化部からなる突設樹脂部を形成する工程を含むスクリーン印刷用マスクの作製方法では、これら全ての工程がセルフアライメントである。よって、位置合わせの作業を必要とせず、簡便に突設樹脂部を形成することができる。発明(4)において、まず、スクリーン印刷用マスクのプリント面に樹脂層をラミネートによって形成して開口部のプリント面側を覆う工程、開口部の樹脂層を除去する工程によって、スクリーン印刷用マスクのプリント面側の開口部を除いた領域に、位置ずれなく、樹脂層を形成することができる。次いで、スキージ面側より硬化処理を行って開口部周囲の樹脂層を硬化する工程によって、位置ずれなく、開口部の周囲の樹脂層のみを硬化することができる。続いて、未硬化の樹脂層の除去を行って硬化部からなる突設樹脂部を形成する工程によって、精度良く突設樹脂部の形成ができる。
【0022】
(5)また、発明(4)において、樹脂層の樹脂が光架橋性樹脂であり、硬化処理が光照射処理であることにより、より簡便な処理により突設樹脂部を位置ずれなく形成することが可能となる。
【0023】
(6)発明(3)において、スクリーン印刷用マスクに荷電樹脂粒子を電着して突設樹脂部を形成する工程を含むスクリーン印刷用マスクの作製方法によって、簡便に開口部周囲に位置ずれなく突設樹脂部の形成ができる。
【0024】
(7)発明(6)において、スクリーン印刷用マスクのプリント面に樹脂層をラミネートによって形成して開口部のプリント面側を覆う工程、開口部の樹脂層を除去する工程、開口部内壁及び開口部周囲に荷電樹脂粒子を電着して突設樹脂部を形成する工程を含むスクリーン印刷用マスクの作製方法は、これら全ての工程がセルフアライメントである。よって、位置合わせの作業を必要とせず、簡便に突設樹脂部を形成することができる。発明(7)において、まず、スクリーン印刷用マスクのプリント面に樹脂層をラミネートによって形成して開口部のプリント面側を覆う工程、開口部の樹脂層を除去する工程により、スクリーン印刷用マスクのプリント面の開口部を除いた領域に精度よく、位置ずれなく、樹脂層を形成することができる。その後、開口部内壁及び開口部周囲に荷電樹脂粒子を電着して突設樹脂部を形成する工程により、開口部周囲に位置ずれなく突設樹脂部を形成することができる。
【0025】
また、発明(4)または発明(7)における開口部の樹脂層を除去する工程が、プリント面とは反対側のスキージ面から樹脂層除去液を供給して開口部の樹脂層を除去する工程である発明(8)、開口部以外の樹脂層の上に更に樹脂層開口用電着樹脂層を形成した後に、プリント面側から樹脂層除去液を供給して開口部の樹脂層を除去する工程である発明(9)、及び、開口部の樹脂層を薄膜化させた後に、樹脂層除去液を供給して開口部の樹脂層を除去する工程である発明(10)では、レーザ加工やパターン露光等の手段を用いずに、予め作製された開口部を有するスクリーン印刷用マスクの品質を悪化させることなく、湿式処理によって簡便にかつ精度良く、セルフアライメントで開口部の樹脂層を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明のスクリーン印刷用マスク及びスクリーン印刷用マスクの作製方法について詳細に説明する。電子基板上へのクリーム半田等のペースト材のスクリーン印刷を例に説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、以下の例に限定されるものではない。
【0027】
本発明に係わる開口部を有するスクリーン印刷用マスクは、片面にペースト材をのせ、スキージで掻き寄せることでペースト材を被印刷基板に転写することができるものであれば、いずれの方式で作製したスクリーン印刷用マスクであっても使用することができる。エマルジョン型スクリーン印刷用マスク、ソリッドマスク、サスペンドマスク、メタルマスク(エッチング法、レーザ法、アディティブ法、機械加工法)等、いずれのものも使用可能である。
【0028】
また、スクリーン印刷用マスクの開口部のパターンについても特に制限はなく、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形、その他、ひょうたん形、ダンベル形等の不定形等が挙げられる。
【0029】
本発明に係わる突設樹脂部とは、スクリーン印刷用マスクのプリント面側の開口部周囲に形成された他の部位よりも突出した隆起部のことであり、かつ、隆起部が樹脂で形成されたものである。
【0030】
図2に突設樹脂部が形成された本発明のスクリーン印刷用マスクの一例を示す。図2(a)はプリント面側から見た平面図である。図2(b)は、図2(a)のB−B’断面で切断したスクリーン印刷用マスクの断面図で、プリント面側が下になっている。突設樹脂部50は、開口部周囲の領域(平坦部60)よりも突出した隆起部である。
【0031】
突設樹脂部の幅Wpは5〜200μmの範囲が好ましい。5μm未満であると、機械的な強度が弱くなる場合があり、200μmを超えると、突設樹脂部による密着の効果が低くなる場合がある。また、突設樹脂部の高さは、被印刷基板の凹凸の程度、スキージ圧、突設樹脂部の樹脂種類、求められる印刷時の耐久性によって変わってくるが、5〜200μmが好適であり、アスペクト比で示すと(高さ/幅)で0.05〜20が好適である。アスペクト比が低すぎると、状況によっては、突設樹脂部による密着の効果が低くなる場合があり、アスペクト比が高すぎると、状況によっては、機械的強度が弱くなる場合がある。
【0032】
発明(2)のスクリーン印刷用マスクは、突設樹脂部の頂部が曲面からなるものである。図3(a)は発明(2)のスクリーン印刷用マスクの断面図であり、図3(b)は突設樹脂部を拡大した断面図である。突設樹脂部50の頂部51の曲率半径Rpは、0.5〜200μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。曲率半径Rpが200μmを超えると、曲面の効果が薄れて、弱いスキージ圧では密着性が得られなくなる場合がある。曲率半径Rpが0.5μm未満であると、突設樹脂部50の機械的強度が不足する場合がある。
【0033】
本発明のスクリーン印刷用マスクにおいて、突設樹脂部の樹脂としては、スクリーン印刷用マスクとの接着性に優れ、被印刷基板との密着性が得られ、耐洗浄液性のある樹脂であればよい。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール等のビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等の樹脂等を使用することができる。ペースト材やスクリーン印刷用マスク洗浄液に対する耐久性、機械的強度をもたせるために、光架橋性や加熱硬化性が付与された樹脂であってもよい。突設樹脂部は、1種類の樹脂で形成されていても、2種以上の樹脂で形成されていてもよい。また、単層でもよいし、複層でもよい。
【0034】
突設樹脂部形状及び材質は、スクリーン印刷用マスクのパターン形状、求められる品質、印刷条件等の制約によって選定される。
【0035】
また、突設樹脂部の形成方法は、各種印刷法(スクリーン印刷法、凸版、凹版、平版印刷等)および塗工法(ロール塗工、ディップ塗工、スプレー塗工、スピン塗工、グラビア塗工等)およびラミネート法を用いて、全面に樹脂を形成した後に、フォトリソグラフィ法で開口部周囲に樹脂層を形成することができる。フォトリソグラフィ法によらずに、初めから、開口部周囲のパターンに対応した版もしくは印刷用マスクを用いて、開口部周囲にのみ樹脂層を形成しても良い。より高精細かつ高密度なパターンの印刷を行う際には、突設樹脂部の位置ずれを最小限に押さえることのできる後述のセルフアライメントでの突設樹脂部の形成が好ましい。本発明に係わるセルフアライメントでの突設樹脂部の形成とは、別途パターンを記録したフォトマスクやパターンデータを利用することなく、位置合わせ作業なく、突設樹脂部を開口部周囲の所望の位置に精度良く形成することである。
【0036】
セルフアライメントで突設樹脂部を形成する発明(4)のスクリーン印刷用マスクの作製方法を図4を用いて説明する。まず、開口部2を有するスクリーン印刷用マスク1を公知の方法にて作製する(図4(a))。次に、樹脂層3をラミネートによりプリント面に形成する(図4(b))。次いで、開口部2の樹脂層3を除去する(図4(c))。続いて、スキージ面側より硬化処理20を行って、開口部周囲の樹脂層3の硬化を行う(図4(d))。硬化処理20は、硬化のエネルギーの流れもしくは硬化反応物質の流れを矢印で示している。硬化部22は、硬化処理によって硬化した樹脂層を表す。続いて、未硬化部23の除去をおこなって、硬化部22からなる突設樹脂部50が形成されたスクリーン印刷用マスク1が作製される(図4(e))。また、この際、未硬化部23の除去を途中まで行って、未硬化部23が平坦部60に残った状態で、突設樹脂部50を形成しても良い(図4(f))。
【0037】
発明(4)のスクリーン印刷用マスクの作製方法における樹脂層のラミネートとは、すでにシート状に形成されている樹脂層シートを熱圧着させる工程である。密着性が確保され、かつ、熱や圧力によってスクリーン印刷用マスクに歪みが発生することがなく、均一な厚みでのラミネートができるのであれば、いずれの方法でも使用可能である。好ましくは、熱ロールを用いてラミネートを行う。温度は、40〜150℃、より好ましくは、60〜120℃である。圧力は、熱ロールでのラミネートの場合には、線圧力で、1〜100N/cmの範囲、より好ましくは5〜50N/cmの範囲である。このラミネート工程により、開口部を有するスクリーン印刷用マスクのプリント面に厚みの均一な樹脂層を良好に形成することが可能となる。
【0038】
発明(4)のスクリーン印刷用マスクの作製方法において、開口部の樹脂層は位置合わせの作業を必要としないセルフアライメントで除去される。具体的には、開口部を有するスクリーン印刷用マスクの開口部形状を基準として、ラミネートした樹脂層の開口部の除去を行う。除去方法としては、樹脂層除去液による湿式処理を用いる。湿式処理を用いることで、スクリーン印刷用マスクの板厚、寸法の大小にかかわらず、良好かつ均一に高い生産性で樹脂層の除去を行うことができる。セルフアライメントで除去された樹脂層の開口部は、スクリーン印刷用マスクの開口部形状に対して、重心位置のずれを少なくすることができる。重心位置のずれ(図13(a)の距離X)は5μm以内、好ましくは3μm以内とすることができる。
【0039】
発明(4)のスクリーン印刷用マスクの作製方法では、開口部の樹脂層の除去を行った後、スキージ面側より硬化処理を行って開口部周囲の樹脂層を硬化する。その後、未硬化の樹脂層の除去を行うことで、硬化部からなる突設樹脂部が形成される。硬化処理は、熱線照射、光照射、薬液注入、ガス注入等の手段を利用できる。
【0040】
発明(5)は、発明(4)において樹脂層を光架橋性樹脂として、硬化処理を光照射処理とするものである。スキージ面側より光照射を行い、開口部近傍の光架橋性樹脂を硬化させる。光照射処理は、処理工程が簡略で、硬化処理幅のコントロールが容易という利点を有する。光照射条件(波長、照度、エネルギー、照射時間、照射角度、散乱光/平行光の別等)やプリント面側に反射板、散乱板等を設置する場合/しない場合によって、硬化領域や硬化状態をコントロールすることができ、所望の形状の突設樹脂部を形成することができる。
【0041】
本発明(6)のスクリーン印刷用マスクの作製方法では、スクリーン印刷用マスクに荷電樹脂粒子を電着して突設樹脂部を形成する。スクリーン印刷用マスクのプリント面に対向するように現像電極を設置し、スクリーン印刷用マスクのプリント面と現像電極との間に荷電樹脂粒子を分散させた液を充填し、適正な電界を現像電極とスクリーン印刷用マスクとの間に印加することで、荷電樹脂粒子をスクリーン印刷用マスクのプリント面に電着させる。図5(a)に電着前のスクリーン印刷用マスク、図5(b)に電着後の突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを示す。この際、開口部周囲以外(開口部内壁やプリント面やスキージ面)にも電着が行われるが、電着条件(荷電樹脂粒子の電荷及び印加電圧、処理時間、樹脂粒子分散液供給量等)を制御することで、特に開口部の周囲に多くの荷電樹脂粒子を電着させることができる。電着によって付着した荷電樹脂粒子は、加熱、圧力、光、溶剤等によって定着されて、電着樹脂層32となる。開口部2の周囲に過剰に付着した電着樹脂層32が突設樹脂部50を形成する。なお、スキージ面への荷電樹脂粒子の付着は不要であるため、スキージ面にあらかじめマスキングテープを接着させてから電着を行っても良い。
【0042】
また、内壁への付着量及び突設樹脂部の高さから、あらかじめスクリーン印刷用マスクの開口径及び厚みを突設樹脂部の厚み、高さを差し引いた寸法で製作しておいても良い。より薄い板厚、より広い開口の加工となり、加工精度の向上が期待できる。
【0043】
発明(6)において、突設樹脂部を効率良く形成するためには、スクリーン印刷用マスクは、少なくとも開口部内壁もしくは開口部の周囲が導電性であるものを用いることが好ましい。短時間で突設樹脂部の形成が可能となる。
【0044】
発明(7)のスクリーン印刷用マスクの作製方法について、図6を用いて説明する。開口部2を有するスクリーン印刷用マスク1を作製した後(図6(a))、樹脂層3をラミネートによりプリント面に形成する(図6(b))。次いで、開口部2の樹脂層3を除去し(図6(c))、続いて、荷電樹脂粒子を適正な電着条件にて電着させて、電着樹脂層32を形成し、突設樹脂部50が形成されたスクリーン印刷用マスク1が作製される(図6(d))。
【0045】
発明(4)または発明(7)において、開口部の樹脂層をセルフアライメントで除去する方法である発明(8)を図7で説明する。開口部2を有するスクリーン印刷用マスク1(図7(a))に樹脂層3をラミネートにより形成した後(図7(b))、スキージ面側から樹脂層除去液を供給して開口部2の樹脂層3を除去する(図7(c))。樹脂層除去液の供給に先立って、樹脂層3のプリント面側にはマスキング層31を設ける必要があり、開口部以外の領域の樹脂層3は、マスキング層31があるために除去されることはない。
【0046】
マスキング層31は、樹脂層3をラミネートした後に形成することもできるが、あらかじめ、樹脂層3と一体として形成しておき、ラミネートによって、樹脂層3と共にスクリーン印刷用マスク1に熱圧着する方法が、生産性の点からも好ましい。
【0047】
発明(4)または発明(7)において、開口部の樹脂層をセルフアライメントで除去する別の方法である発明(9)を図8で説明する。開口部2を有するスクリーン印刷用マスク1(図8(a))に樹脂層3をラミネートにより形成した後(図8(b))、プリント面側から荷電樹脂粒子の電着を行い、樹脂層開口用電着樹脂層33を形成する(図8(c))。この樹脂層開口用電着樹脂層33の形成は、発明(6)における電着における突設樹脂部と同じ方法を使用することができる。荷電樹脂粒子は、非開口部の表面に向かってより大きな電界を受け、非開口部の樹脂層3表面の荷電樹脂粒子付着量が、開口部2の樹脂層3表面の荷電樹脂粒子付着量よりも多くなる。電着条件を適正に調整することで、荷電樹脂粒子付着量をコントロールすることができる。開口部2の樹脂層3表面では、樹脂層3が完全に被覆されない不十分な荷電樹脂粒子付着量とし、非開口部の樹脂層3表面では、樹脂層3を完全に被覆するのに十分な量の樹脂粒子付着量が得られるように設定する。その結果、樹脂層除去液を供給することにより、樹脂層開口用電着樹脂層33によって覆われていない開口部2の樹脂層3のみ除去される(図8(d))。その後、樹脂層開口用電着樹脂層33を除去しても良い(図8(e))。
【0048】
発明(4)または発明(7)において、開口部の樹脂層をセルフアライメントで除去する別の方法である発明(10)を図9で説明する。開口部2を有するスクリーン印刷用マスク1(図9(a))に樹脂層3をラミネートにより形成した後(図9(b))、開口部2の樹脂層3を薄膜化させる(図9(c))。次に樹脂層除去液を供給して、薄膜化された開口部2の樹脂層3の除去を行う(図9(d))。
【0049】
樹脂層の薄膜化は、熱処理、加圧処理、減圧処理等によって行うことができる。熱処理の場合では、樹脂層の種類にもよるが、40〜150℃、より好ましくは、60〜120℃で処理を行う。また、熱処理で薄膜化を行う際に、スキージ面にも樹脂層やマスキングテープ等をラミネートして、開口部内の空気を密閉状態とし、その空気の熱膨張を利用して、開口部の樹脂層を薄膜化することもできる。開口部の樹脂層の膜厚を薄くした後に樹脂層除去液による処理を行うことで、開口部の樹脂層を除去することができる。樹脂層除去液は、プリント面から供給しても良いし、スキージ面から供給しても良い。また、処理条件を選ぶと、開口部の樹脂層を除去した段階(図9(d))で、開口部周囲に突設樹脂部50を形成することもできる。
【0050】
発明(4)、(7)〜(10)において、樹脂層の樹脂は、スクリーン印刷用マスクとの密着性、化学的強度、機械的強度を有している樹脂であり、かつ樹脂層除去液により溶解除去可能な樹脂であれば特に限定されない。アクリル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール等のビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等の樹脂が利用できる。アルカリ水溶液を樹脂層除去液として使用する場合には、アルカリ水溶液に対する溶解性が高い樹脂を樹脂層として使用する。アルカリ水溶液を樹脂層除去液として使用する場合、樹脂層としては酸価が1mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上の樹脂を好適に用いることができる。
【0051】
樹脂層には、必要に応じて、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱硬化剤、表面張力調整剤、撥水剤及び撥油剤等の成分を添加してもよい。これらの成分は、各々0.01〜20質量%程度含有することができる。これらの成分は、1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
樹脂層は、必要に応じて、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−n−アミル、硫酸メチル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶剤又はこれらの混合溶剤を含有してもよい。
【0053】
樹脂層には、クリーム半田等のペースト材やスクリーン印刷用マスク洗浄液に対する耐久性、機械的強度をもたせるために、光架橋性や加熱硬化性を付与することもできる。樹脂層の樹脂が光架橋性樹脂である場合、光照射処理は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等の光源を用いて活性光を照射する。光量は、0.5〜20J/cm2であることが好ましく、1〜10J/cm2であることがより好ましい。光量が0.5J/cm2未満では、樹脂層中の光重合性化合物に未反応の不飽和基が残存し、十分な硬度の樹脂層が得られない傾向がある。一方、20J/cm2を超えると、樹脂層中の光架橋反応は飽和に達するため、これ以上の光量は不要である。
【0054】
光照射処理の後に加熱処理による耐性化処理を施すことによって、さらに耐久性を向上させることもできる。加熱処理は、光架橋性樹脂中に微量に残存した未反応の光重合性化合物の蒸発を促し、他方では、架橋反応も進行し、さらに高密度な三次元架橋を形成させることができる。加熱温度は、120〜170℃であるのが好ましく、140〜160℃であるのがさらに好ましい。加熱時間は、10〜90分間行うのが好ましい。
【0055】
光架橋性樹脂としては、光照射前には、樹脂層除去液に対して可溶であり、光照射後に硬化し、スクリーン印刷時の耐久性が得られるものであればいずれのものも使用可能である。例えば、市販の回路形成用ドライフィルムや、ソルダーレジスト形成用ドライフィルム、感光性ポリイミドフィルム、スクリーン印刷用直間法フィルム等の光架橋性樹脂フィルムも使用可能である。
【0056】
光架橋性樹脂としては、カルボキシル基を含有するバインダーポリマー、分子内に少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、及び、光重合開始剤を含むことが好ましい。カルボキシル基を含有するバインダーポリマーとしては、光重合性化合物と共に光架橋可能な重合体であればよく、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂の有機高分子が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
また、樹脂層除去液にアルカリ水溶液を用いた場合、樹脂層除去液への溶解性が高いことから、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレートを主成分とし、これにエチレン性不飽和カルボン酸及びその他の共重合可能なエチレン性不飽和基を有する単量体(以下、重合性単量体という)を共重合させてなるアクリル系重合体であればより好ましい。
【0058】
上記(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
上記エチレン性不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸が好適に用いられ、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸や、それらの無水物やハーフエステルを用いることもできる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。
【0060】
上記その他の重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ビニル−n−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0061】
また、カルボキシル基を含有するバインダーポリマーにおいて、2種類以上を組み合わせて用いる場合のバインダーポリマーの組み合わせとしては、例えば、異なる共重合成分を有する2種類以上のバインダーポリマーの組み合わせ、異なる質量平均分子量を有する2種類以上のバインダーポリマーの組み合わせ、異なる分散度(質量平均分子量/数平均分子量)を有する2種類以上のバインダーポリマーの組み合わせが挙げられる。
【0062】
カルボキシル基を含有するバインダーポリマーの酸価は、30〜500mgKOH/gであることが好ましく、100〜300mgKOH/gであることがより好ましい。樹脂層除去液としてアルカリ水溶液を用いた場合、この酸価が、30mgKOH/g未満では溶解までの時間が長くなる傾向があり、一方、500mgKOH/gを超えると光架橋した部分のアルカリ水溶液に対する耐久性が低下する傾向がある。
【0063】
カルボキシル基を含有するバインダーポリマーの質量平均分子量は、10,000〜150,000であることが好ましく、10,000〜100,000であることがより好ましい。質量平均分子量が、10,000未満ではアルカリ水溶液に対する耐久性が低下する傾向があり、一方、150,000を超えると溶解までの時間が長くなる傾向がある。これらの好適な態様は、樹脂層の開口部の除去を行う際だけではなく、スキージ面側より硬化処理を行って開口部周囲の樹脂層を硬化させた後の未硬化の樹脂層の除去を行う際にも適用される。
【0064】
カルボキシル基を含有するバインダーポリマーは、分子内に重合可能なエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマーであるとより好ましい。不飽和基1モルあたりの樹脂グラム質量を表す二重結合当量が、400〜3000が好適である。二重結合当量が400未満の場合、保存安定性が悪くなり易く、一方、3000を越えると、硬化の際に多量のエネルギーを必要とすることがあるため好ましくない。
【0065】
分子内に重合可能なエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルとエチレン性不飽和カルボン酸及びその他の重合性単量体から得られたアクリル系共重合樹脂に脂環式エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物あるいはエポキシ基含有脂肪族エチレン性不飽和化合物を付加させることにより得られる。脂環式エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有脂肪族エチレン性不飽和化合物は、1分子中に1個の重合性不飽和基と、それぞれ脂環式エポキシ基、脂肪式エポキシ基とを有する化合物である。具体的には、メチルメタクリレートとアクリル酸及び/又はメタクリル酸との共重合物にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させた共重合樹脂を好適に使用することができる。
【0066】
また、分子内に重合可能なエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマーは、その分子内に水酸基を含有していてもよい。この水酸基と重合可能なエチレン性不飽和基とを有するバインダーポリマーは、水酸基を有する樹脂に重合可能なエチレン性不飽和基を導入することにより得られる。水酸基を有する樹脂としては、ポリオール化合物又はそのアルキレンオキサイド付加物、エポキシ基の側鎖をもつ芳香族化合物等のオキサイド付加物等が挙げられる。ポリオール化合物としては、高温時の熱分解性に優れる点でポリグリセリンが好ましい。
【0067】
上記水酸基を有する樹脂に導入する重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物としては、水酸基とエステル化反応するカルボキシル基又は付加反応するイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。カルボキシル基を有するものとしては、フリーのカルボキシル基の他、エステル化されたカルボン酸エステル基でもよく、前者としては、(メタ)アクリル酸、後者としては、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が代表例として挙げられる。イソシアネート基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸とアルキレン多価アルコールから得られるヒドロキシ(メタ)アクリレートとジイソシアネート化合物(例えば、イソホロンジイソシアネート)から得られるイソシアネート基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
水酸基及び重合可能なエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマーの水酸基価は、アルカリ水溶液に対する溶解性と耐久性の点から、50〜800KOHmg/gであることが好ましい。また、水酸基価と同時に酸価を制御することも有効であり、無水酢酸等の酸無水物を添加し、水酸基の一部をエステル化することもできる。
【0069】
光重合性化合物としては、分子内に少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合可能な化合物であればよい。例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー;ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β′−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO、PO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、EO及びPOは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを示し、EO変性された化合物は、エチレンオキサイド基のブロック構造を有するものであり、PO変性された化合物は、プロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものである。これらの光重合性化合物は単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
また、分子内に3個以上の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物を使用して、架橋点を増やすことにより、さらに高効率で架橋を形成させることができる。分子内に3個以上の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレートのうち少なくとも1種を含有する。分子内に3個以上の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物として、その構造中にポリアルキレンオキサイド基を含まない化合物を使用することにより、スクリーン印刷に使用するスクリーン印刷用マスクの洗浄液が突設樹脂部へ浸透することを抑制することができる。
【0071】
また、光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0072】
カルボキシル基を含有するバインダーポリマーの配合量は、樹脂層全体に対して40〜80質量%であることが好ましく、45〜70質量%であることがより好ましい。40質量%未満では光架橋した部分の化学的強度、機械的強度が低くなる傾向がある。80質量%を超えると光重合性が低下することがある。
【0073】
分子内に少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物の配合量は、樹脂層全体に対して20〜60質量%であることが好ましく、30〜55質量%であることがより好ましい。20質量%未満では、光感度が不十分となる傾向があり、一方、60質量%を超えると、硬化後の樹脂層が脆くなり機械的強度が弱くなる傾向がある。
【0074】
また、光重合開始剤の配合量は、樹脂層全体に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.2〜10質量%であることがより好ましい。配合量が、0.1質量%未満では光重合性が不十分となる傾向があり、一方、20質量%を超えると、露光の際に光架橋性組成物の表面で吸収が増大して樹脂層内部の光架橋が不十分となる傾向がある。
【0075】
発明(4)、(7)〜(10)において、樹脂層除去液としては、樹脂層を溶解又は分散可能な液であり、使用する樹脂層の組成に見合った液を使用する。樹脂層除去液は、マスキング層及び樹脂層開口用電着樹脂層を溶解しない液か、あるいは、マスキング層及び樹脂層開口用電着樹脂層を溶解する液であっても、樹脂層を適正量分だけ溶解する条件において、マスキング層が膨潤したり、形状が変化したりすることがない液を使用する。また、スクリーン印刷用マスクに対しても、溶解や膨潤、形状変化等を起こさせない樹脂層除去液を使用する。一般的には、アルカリ水溶液が有用に使用され、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸又は炭酸アルカリ金属塩、リン酸又は炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物の水溶液、エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン等の有機塩基性化合物を使用することができる。樹脂層の除去では、樹脂層に対する溶解性を制御するため、樹脂層除去液の濃度や温度、樹脂層除去液を供給する際のスプレー圧等を調整する必要がある。樹脂層除去液は、ディップ処理装置、両面シャワースプレー装置、片面シャワースプレー装置等を利用することができる。樹脂層の除去は、樹脂層除去液による処理に続いて、水洗や酸処理を行うことによって、速やかに停止させることができる。
【0076】
樹脂層除去液として2種類の液の組み合わせ(樹脂層除去液A及び樹脂層除去液B)を用いて、2段階処理を行って樹脂層の除去を行うことができる。まず、樹脂層除去液Aで処理を行うと、樹脂層成分はミセルを形成した後で不溶化し、樹脂層除去液A中に溶解拡散することが防止される。次いで、樹脂層除去液Bを供給すると、不溶化されたミセルが溶解再分散されて、樹脂層が除去される。このようにして樹脂層の除去を行うと、より均一に開口がなされる。
【0077】
樹脂層除去液Aとしては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物のうち少なくともいずれか1種を含み、無機アルカリ性化合物の含有量が5〜20質量%である水溶液が好適に用いられる。樹脂層除去液Aの無機アルカリ性化合物の含有量は、より好ましくは7〜20質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。無機アルカリ性化合物の含有量が5質量%未満では、ミセルが不溶化し難く、樹脂層除去液A中でミセルが溶解拡散しやすくなってしまうことがある。また、20質量%を超えると、析出が起こりやすく、液の経時安定性、作業性に劣る。樹脂層処理液AのpHは9〜13の範囲とすることが好ましい。また、界面活性剤、消泡剤等を適宜添加することもできる。
【0078】
樹脂層除去液Bとしては、樹脂層除去液Aの処理で生成した不溶化ミセルを溶解再分散させ、かつ、溶解再分散後は、樹脂層除去液Bのみによる処理ではそれ以上、絶縁性樹脂層の除去が進行しないか、もしくは進行しにくい液であればいずれの液も使用可能である。好ましくは、水または、pH6〜10の範囲の酸またはアルカリ性の水溶液が好適に用いられる。また、界面活性剤、消泡剤等を適宜添加することもできる。
【0079】
本発明において、樹脂層を除去するための処理条件(温度、スプレー圧、時間)は、樹脂層の溶解の程度に合わせて適宜調整される。具体的には、処理温度は10〜50℃、より好ましくは15〜40℃、さらに好ましくは15〜35℃である。また、両面シャワースプレー装置、または片面シャワースプレー装置を使用する場合、スプレー圧は0.05〜0.5MPaとするのが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.3MPaである。
【0080】
発明(8)で用いることができるマスキング層としては、樹脂層除去液に対して不溶性又は難溶性である樹脂や金属等を使用することができる。樹脂としては、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等の樹脂が利用できる。汎用性の点から、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等を好適に使用することができる。金属としては、銅やアルミニウム等を使用できる。マスキング層としては、簡便性や面内の均一性の点から金属よりも樹脂を用いるのがより好ましい。マスキング層は、フィルム形状として、樹脂層と一体化して基板上に形成するようにすれば、工程上、簡便で安定に樹脂層とマスキング層の形成ができるので好ましい。アルカリ水溶液を樹脂層除去液として使用する場合、マスキング層の酸価は、樹脂層の酸価の十分の一以下、好ましくは百分の一以下である樹脂を好適に使用することができる。
【0081】
発明(6)、(7)に係わる荷電樹脂粒子は、正または負に帯電した樹脂製の粒子で、液体に分散させた状態で電着される。液体としては、水や電気絶縁性液体を使用することができる。水を使用した場合、荷電樹脂粒子は、適当な酸価を有する高分子を主成分とし、有機アミン等で中和されて、水中において帯電したコロイド粒子を形成する。電気絶縁性液体を使用した場合、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等の樹脂が、粒子状態で電気絶縁性液体中に分散されている。樹脂粒子には電荷制御剤を含有させることができ、その荷電は、電着時のバイアス電圧の正負に応じて正、負を使い分ける必要がある。このような電気絶縁性液体中に荷電樹脂粒子を分散させた液としては、電子写真用湿式トナーを好適に用いることができる。
【0082】
発明(9)に係わる樹脂層開口用電着樹脂層は、樹脂層除去液に対して不溶性または難溶性であり、電着法に使用可能な樹脂であればいずれであってもよいが、開口部の樹脂層上は被覆せずに、開口部以外の樹脂層上には緻密な樹脂層開口用電着樹脂層を形成させるためには、荷電樹脂粒子の粒子径は0.1〜5μmの範囲が好ましい。0.1μm未満であると、電着に時間がかかり、開口部以外の樹脂層上への付着量が少なくなり、また、5μmより大きいと、開口部の樹脂層への付着が早くなり、いずれの場合も、開口部の樹脂層を被覆せずに、開口部以外の樹脂層上に緻密な樹脂層開口用電着樹脂層を形成させることが難しくなる場合がある。
【0083】
本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法では、スクリーン印刷用マスクの開口加工の後に、追加工を行ってから、樹脂層の形成もしくは突設樹脂部の形成を行うことも可能である。例えば、追加工としては、電解研磨、化学研磨、機械研磨等の研磨処理や、フッ素樹脂コーティングやシリコン樹脂コーティング等の開口部内壁面も含めたスクリーン印刷用マスク表面に対する表面処理等が挙げられる。開口部内壁面の平滑性向上や、樹脂層もしくは突設樹脂部との接着性向上に効果がある場合がある。
【0084】
逆に、スクリーン印刷用マスクの作製時に、プリント面の研磨処理を行っていた場合、突設樹脂部を形成することによって、滲みや抜け不良なしに、適正なペースト材転写量を良好に位置ずれなく転写印刷することができるので、スクリーン印刷用マスクの作製時の研磨処理が不要となり、スクリーン印刷用マスクの作製時の研磨処理を省くことも可能である。
【0085】
また、図においては、メタルマスク等のメッシュ層を有しないスクリーン印刷用マスクでの例を説明したが、メッシュ層を有するスクリーン印刷用マスクの場合も同様にして樹脂層を形成することができる。
【0086】
本発明のスクリーン印刷用マスクは、いかなるスクリーン印刷にも使用することが可能であるが、通常は、剛性のある枠に取り付けて用いられる。例えば、剛性のある金属製の枠にまずメッシュ(紗)を貼り付け、そのメッシュの中央部に、スクリーン印刷用マスクの突設樹脂部が形成されたプリント面と反対側のスキージ面の外周部を接着剤によって貼り付ける。続いて、接着部以外の内側のメッシュを切り取ることによって、枠付きのスクリーン印刷用マスクを作製することができる。また、本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法では、枠にすでに取り付けられた状態のスクリーン印刷用マスクに、突設樹脂層を形成して、枠付きのスクリーン印刷用マスクとすることもできる。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
「荷電樹脂粒子の分散液の作製」
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗を備えた4ツ口フラスコ内で、IPソルベント1620(商品名、出光興産(株)製)720質量部、ドデシルメタクリレート475.2質量部および2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.8質量部を混合し、窒素置換した後、80℃に加熱し、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4.8質量添加し、ラジカル重合を行った。温度を85℃として、7時間加熱し反応を終了させ、濃度40質量%の重合体混合物(A1)を得た。
【0088】
得られた重合体混合物(A1)12質量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート0.0573質量部、触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン0.0006質量部をIPソルベント1620(商品名、出光興産(株)製)24質量部に混合し、60℃で5時間反応させ、重合体混合物(A2)を得た。
【0089】
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗を備えた4ツ口フラスコ内で、516質量部のIPソルベント1620(商品名、出光興産(株)製)、重合体混合物(A2)36質量部、アクリル酸メチル24質量部、メタクリル酸メチル24質量部、を混合し窒素雰囲気下で85℃に加温した。ここに2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.48質量添加を添加し10時間加熱して、重合体混合物(A3)を得た。
【0090】
得られた重合体混合物(A3)の固形分1質量部に対して0.02質量部の電荷制御剤(オクタデシルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体;質量組成比 3/1、無水マレイン酸加水分解率 45%、質量平均分子量 1.3万)を添加した後、固形分濃度が1質量%になるようにIPソルベント1620(商品名、出光興産(株)製)で希釈し、高絶縁性媒体中に分散された荷電樹脂粒子を得た。得られた荷電樹脂粒子の平均粒子径をコールターカウンター法によって測定した結果、0.28μmであった。
【0091】
アディティブ(電鋳)用のベース基材として、板厚0.2mmのSUS304のステンレス板を用い、その表面に厚み110μmの感光性メッキレジスト層を形成させた。106μm径の円形の露光領域を複数設けたフォトマスクを用いて、パターン露光及び現像処理を行うことで、106μm径の円柱状のメッキレジスト層をベース基材の表面に形成させた。このメッキレジスト層を形成させたベース基材をスルファミン酸ニッケルメッキ浴に浸漬し、2A/dm2、浴温度45℃の条件で電気メッキを行い、厚さ93μmのニッケル層を円柱状のメッキレジスト層以外のベース基材上に形成させた。その後、メッキレジスト層を除去し、ニッケル層をベース基材から剥離することによって、スクリーン印刷用マスクとして、円形状の開口部を有したニッケル層からなるアディティブ法によるメタルマスクを得た。
【0092】
このメタルマスクのスキージ面一面にマスキングテープを貼った後、上記の荷電樹脂粒子の分散液を用いて電着を行った。メタルマスクのプリント面に対向して現像電極を配置し、メタルマスクのプリント面と現像電極との間に荷電樹脂粒子の分散液を充満させ、メタルマスクに対して200Vの電界を現像電極に印加して、メタルマスクのプリント面へ荷電樹脂粒子の電着を繰り返し行った。現像初期は、全面均一に電着が進行するが、更に電着を進めると、開口部エッジ部により多くの荷電樹脂粒子の電着が観測された。現像時間を調整し、図5(b)で示す「平坦部60の電着樹脂層32の厚みDb+突設樹脂部50の高さDp」が7μmとなるように電着を行った。その後、スキージ面のマスキングテープを剥がし、熱をかけることで電着した荷電樹脂粒子をフィルム化し、突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを得た。その後、加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0093】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの開口部を顕微鏡にて観察した結果、突設樹脂部50の高さDpは2μm、平坦部60の電着樹脂層の厚みDbは5μm、開口部の内壁に付着した電着樹脂層は3μmであった。また、突設樹脂部50の幅Wpは10μmであった(図5(b))。突設樹脂部の頂点は曲面であり、その曲率半径Rpは10μmであった(図3(b))。
【0094】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。転写されたペースト材の形状も良好な形状を維持しており、ペースト材の抜け性も良好であった。スキージ圧を半減させても、印刷品質は良好なままであった。
【0095】
(実施例2)
板厚80μmのステンレス板(SUS304)に、YAGレーザで開口径100μmの円形開口部を複数形成し、スクリーン印刷用マスクとして、レーザ法によるメタルマスクを作製した。このメタルマスクにラミネータを用いて、表1に示す成分よりなる樹脂層(膜厚20μm)及び25μmのマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムをメタルマスクのプリント面に熱圧着し、樹脂層及びマスキング層(支持体フィルム)を形成した。
【0096】
【表1】

【0097】
次に、樹脂層除去液として、2種類の液(樹脂層除去液A及び樹脂層除去液B)を用いて、樹脂層の除去を行った。樹脂層除去液Aとして、10質量%炭酸ナトリウム水溶液(25℃)を、樹脂層除去液Bとして水を、それぞれシャワースプレーでメタルマスクのスキージ面側より当てて、開口部の樹脂層の除去を行った。その後、マスキング層の除去を行った。続いて、プリント面に反射板(鏡)を重ね、吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置(ユニレックURM300、ウシオライティング(株)製、露光量:12mW/cm2)を用いて、スキージ面側から5分間紫外線を照射し、開口部周囲の樹脂層を硬化させた。
【0098】
次に反射板を取り除き、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)で処理を行って、開口部周囲以外の未硬化部の樹脂層の除去を完全に行い、突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを得た。その後、紫外線処理(2J/cm2)及び加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0099】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの開口部を顕微鏡にて観察した結果、突設樹脂部50の幅Wpは均一に20μmとなっており、突設樹脂部50の高さDpは20μmであり、位置ずれは見られなかった(図2)。平坦部60はメタルマスクが完全に露出していた。突設樹脂部の頂点は曲面であり、その頂部51の曲率半径Rpは15μmであった(図3(b))。
【0100】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。転写されたペースト材の形状も良好な形状を維持していた。ペースト材の抜け性も良好であったが、実施例1よりはペースト材の転写量は少なかった。また、スキージ圧を半減させても、印刷品質は良好なままであった。
【0101】
(実施例3)
板厚75μmのステンレス板(SUS304)に、YAGレーザで開口径120μmの円形開口部を複数形成し、スクリーン印刷用マスクとして、レーザ法によるメタルマスクを作製した。このメタルマスクにラミネータを用いて、表1に示す成分よりなる樹脂層(膜厚20μm)及び25μmのマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムをメタルマスクのプリント面に熱圧着し、樹脂層及びマスキング層(支持体フィルム)を形成した。
【0102】
次に、樹脂層除去液として、2種類の液(樹脂層除去液A及び樹脂層除去液B)を用いて、樹脂層の除去を行った。樹脂層除去液Aとして、10質量%炭酸ナトリウム水溶液(25℃)を、樹脂層除去液Bとして水を、それぞれシャワースプレーでメタルマスクのスキージ面側より当てて、開口部の樹脂層の除去を行った。その後、マスキング層の除去を行った。
【0103】
このメタルマスクのスキージ面一面にマスキングテープを貼った後、実施例1で用いたのと同様の荷電樹脂粒子の分散液を用いて電着を行った。実施例1と同様にメタルマスクに対して200Vの電界を現像電極に印加して、現像時間を調整することで、突設樹脂部50の高さDpが5μmとなるまで電着を行った。その後、スキージ面のマスキングテープを剥がし、熱をかけることで電着した荷電樹脂粒子をフィルム化させ、突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを得た。その後、紫外線処理(2J/cm2)及び加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0104】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの開口部を顕微鏡にて観察した結果、突設樹脂部50の高さDpは5μm、平坦部60の電着樹脂層の厚みは0μm、樹脂層の厚みは20μm、内壁に付着した電着樹脂層の厚みは10μmであった。また、突設樹脂部50の幅Wpは10μmであった(図6(d))。突設樹脂部の頂点は曲面であり、その曲率半径Rpは7μmであった(図3(b))。
【0105】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。転写されたペースト材の形状も良好な形状を維持していた。ペースト材の抜け性も良好であった。スキージ圧を半減させても、印刷品質は良好なままであった。
【0106】
(実施例4)
板厚80μmのステンレス板(SUS304)に、YAGレーザで開口径100μmの円形開口部を複数形成し、スクリーン印刷用マスクとして、レーザ法によるメタルマスクを作製した。このメタルマスクにラミネータを用いて、表1に示す成分よりなる樹脂層(膜厚25μm)及び25μmのマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムをメタルマスクのプリント面に、また、メタルマスクのスキージ面に樹脂層(膜厚5μm)及びマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムを、それぞれの面に熱圧着した。
【0107】
次に、室温25℃に放置した後に、80℃に上昇させることで、樹脂層の樹脂を軟化させると同時に、開口部内の空気を膨張させ、開口部の樹脂層の厚みを薄膜化させた。続いて、両面のマスキング層の除去を行った。プリント面の開口部の樹脂層の厚みを測定したところ、3μmと薄膜化していた。
【0108】
次いで、樹脂層除去液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液(25℃))をプリント面とスキージ面両側からシャワースプレーにより供給し、スキージ面の樹脂層及びプリント面の開口部の樹脂層の除去を行った。開口部以外のプリント面の樹脂層の厚みは20μmとなっていた。
【0109】
続いて、プリント面に反射板(鏡)を重ね、吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置(ユニレックURM300、ウシオライティング(株)製、露光量:12mW/cm2)を用いて、スキージ面側から5分間紫外線を照射し、開口部周囲の樹脂層を硬化させた。
【0110】
次に反射板を取り除き、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)で処理を行って、開口部周囲以外の未硬化部の樹脂層の除去を完全に行い、突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを得た。その後、紫外線処理(2J/cm2)及び加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0111】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの開口部を顕微鏡にて観察した結果、突設樹脂部50の幅Wpは均一に20μmとなっており、突設樹脂部50の高さDpは20μmであり、位置ずれは見られなかった(図2)。平坦部60はメタルマスクが完全に露出していた。突設樹脂部の頂点は曲面であり、その頂部51の曲率半径Rpは15μmであった(図3(b))。
【0112】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。転写されたペースト材の形状も良好な形状を維持していた。ペースト材の抜け性も良好であったが、実施例1よりはペースト材の転写量は少なかった。また、スキージ圧を半減させても、印刷品質は良好なままであった。
【0113】
(実施例5)
板厚75μmのステンレス板(SUS304)に、YAGレーザで開口径120μmの円形開口部を複数形成し、スクリーン印刷用マスクとして、レーザ法によるメタルマスクを作製した。このメタルマスクにラミネータを用いて、表1に示す成分よりなる樹脂層(膜厚19μm)及び25μmのマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムをメタルマスクのプリント面に熱圧着した。
【0114】
続いて、マスキング層の除去を行った後、実施例1で使用したものと同様の荷電樹脂粒子の分散液を用いてプリント面に電着を行った。現像電極をプリント面に対向して設置し、プリント面と現像電極との間に荷電樹脂粒子の分散液を充満させ、メタルマスクに対して50Vの電界を現像電極に印加して、プリント面へ荷電樹脂粒子の電着を行った。開口部以外の樹脂層上への樹脂層開口用電着樹脂層の厚みが1μmになるように電着を行った。その後加熱して樹脂層開口用電着樹脂層をフィルム化し、プリント面から樹脂層除去液(1質量%炭酸ナトリウム水溶液(25℃))をシャワースプレーにより供給し、開口部の樹脂層の除去を行った。
【0115】
その後、乾燥を行った後、スキージ面一面にマスキングテープを貼った後、実施例1で用いたのと同様の荷電樹脂粒子の分散液を用いて電着を行った。現像時間を調整し、図6(d)の突設樹脂部50の高さがDpが5μmとなるように電着を行った。その後、スキージ面のマスキングテープを剥がし、熱をかけることで電着した荷電樹脂粒子をフィルム化させ、電着樹脂層32からなる突設樹脂部を形成した。その後、紫外線処理(2J/cm2)及び加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0116】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの開口部を顕微鏡にて観察した結果、突設樹脂部50の高さDpは5μm、平坦部60の電着樹脂層の厚みは0μm、樹脂層の厚みは20μm、内壁に付着した電着樹脂層の厚みは10μmであった(図6(d))。また、突設樹脂部50の幅Wpは10μmであった。突設樹脂部の頂点は曲面であり、その曲率半径Rpは7μmであった(図3(b))。
【0117】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。
【0118】
(実施例6)
実施例2において、スキージ面側から5分間紫外線を照射し、開口部周囲の樹脂層を硬化させた後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)で処理を行う際に、処理時間を短くして、図4(f)で示す平坦部60(未硬化部23)の厚みDbが5μmになるように未硬化部の樹脂層の除去を行った以外は、実施例2と同様にして突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの作製を行った。その後、紫外線処理(2J/cm2)及び加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0119】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの開口部を顕微鏡にて観察した結果、突設樹脂部50の幅Wpは均一に20μmとなっており、突設樹脂部50の高さDpは15μm、平坦部60の樹脂層の厚みDbは5μmであり、突設樹脂部に位置ずれは見られなかった(図4(f))。突設樹脂部の頂点は曲面であり、その頂部51の曲率半径Rpは15μmであった(図3(b))。
【0120】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。転写されたペースト材の形状も良好な形状を維持していた。ペースト材の抜け性も良好であったが、実施例1よりはペースト材の転写量は少なかった。また、スキージ圧を半減させても、印刷品質は良好なままであった。
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。
【0121】
(実施例7)
実施例2において、スキージ面側からの紫外線照射の時間を15分間にした以外は、実施例2と同様にして突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの作製を行った。その後、紫外線処理(2J/cm2)及び加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0122】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの開口部を顕微鏡にて観察した結果、突設樹脂部50の幅Wpは均一に100μmとなっており、突設樹脂部50の高さDpは20μmであり、位置ずれは見られなかった(図2)。平坦部60の樹脂層は完全に除去されていた。突設樹脂部の頂点は曲面であり、その頂部51の曲率半径Rpは60μmであった(図3(b))。
【0123】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。転写されたペースト材の形状も良好な形状を維持していた。ペースト材の抜け性も良好であったが、実施例1よりはペースト材の転写量は少なかった。また、スキージ圧を半減させて印刷を行ったところ、若干の線幅の太りが見られたが、問題となる滲みの発生は見られず、問題ない印刷状態であった。
【0124】
(実施例8)
実施例2において、開口部周囲の樹脂層の硬化をスキージ面側からの紫外線照射ではなく、新たにスクリーン印刷用マスクの開口パターンに合わせたフォトマスクを利用して開口部周囲の樹脂層の硬化を行った以外は実施例2と同様にして突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの作製を行った。すなわち、フォトマスクとして、スクリーン印刷用マスクの開口パターンの位置に300μm径の円形透過部を有するフォトマスクを用意して、プリント面に重ね合わせて、慎重に位置合わせを繰り返し行った後、最も合った所で、紫外線照射を行って、開口部周囲の樹脂層の硬化を行った。その後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)で処理を行って、硬化部以外の樹脂層の除去を行い、突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを作製した。その後、紫外線処理(2J/cm2)及び加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0125】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクの開口部を顕微鏡にて観察した結果、突設樹脂部50の幅Wpは、位置ずれのため、場所により20〜180μmとばらつきがあった。平坦部60はメタルマスクが完全に露出していた。突設樹脂部の頂部51は平面であった。
【0126】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。転写されたペースト材の形状も良好な形状を維持していた。ペースト材の抜け性も良好であったが、実施例1よりはペースト材の転写量は少なかった。また、スキージ圧を半減させて印刷を行ったところ、部分的に若干の線幅の太りが見られたが、問題となる滲みの発生は見られず、問題ない印刷状態であった。
【0127】
(比較例1)
板厚100μmのステンレス板(SUS304)に、YAGレーザで開口径100μmの円形開口部を複数形成し、スクリーン印刷用マスクとした。
【0128】
このスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生が見られた。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、変化はなかった。転写されたペースト材の形状もやや崩れた箇所が発生することがあり、ペースト材の抜け性も良くなかった。また、スキージ圧を半減させて印刷を行ったところ、更に滲みは悪化した。また、開口部を観察したところ、レーザ加工時の加工精度の悪さによると思われる輪郭のがたつきが見られ、印刷したパターンにもがたつきが転写されており、良好な印刷品質が得られなかった。
【0129】
(比較例2)
板厚50μmのステンレス板(SUS304)にYAGレーザで開口径100μmの円形開口部を複数形成し、スクリーン印刷用マスクとした。また、50μmの厚みのシリコンゴムシートを準備し、スクリーン印刷用マスクの開口部のパターンと同様のパターンの開口部を形成した。このスクリーン印刷用マスクのプリント面にシリコンゴムシートを接着剤で貼り付けて、樹脂付きのスクリーン印刷用マスクを準備した。
【0130】
この樹脂付きのスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧でスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。プリント面を洗浄液を用いて、洗浄したところ、シリコンゴムシートの膨潤、変形が見られ、それ以後、スクリーン印刷をおこなっても、滲みが発生したり、転写画像の輪郭のがたつきが発生し、良好なスクリーン印刷ができなかった。
【0131】
(比較例3)
実施例1において、ニッケル層からなるアディティブ法によるメタルマスクを作製する際に、ニッケル層の厚みを99μmとし、開口部の径を102μmとした以外は、実施例1と同様にしてメタルマスクを作製した。その後、実施例1と同様にして荷電樹脂粒子の電着を行った。電着樹脂層32の厚みDbが1μmとなるように電着を終了させた(図5(b))。その後、加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0132】
できあがった樹脂付きのスクリーン印刷用マスクの開口部を顕微鏡にて観察した結果、突設樹脂部は形成されておらず。荷電樹脂粒子層の厚みDbは1μm、突設樹脂部50の高さDpは0μmであった。また開口部の内壁に付着した荷電樹脂粒子の厚みは1μmであった(図5(b))。
【0133】
できあがった樹脂付きのスクリーン印刷用マスクを用いて通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生が部分的に見られ、全面にわたって良好な印刷はできなかった。
【0134】
(実施例9)
実施例2と同様にしてスクリーン印刷用マスクとしてメタルマスクを作製した。次に、表1に示す成分100部に対してエポキシ樹脂20部(共栄社化学(株)製エポライト3002)を加えた組成からなる樹脂層(膜厚20μm)及び25μmのマスキング層(支持体フィルム、材質:ポリエステル)で形成された樹脂フィルムをメタルマスクのプリント面に熱圧着し、樹脂層及びマスキング層(支持体フィルム)を形成した。続いて、実施例2と同様にして、開口部の樹脂層の除去を行った。次にスキージ面よりセラミックヒータを用いて、遠赤外線を照射し、開口部を通して、開口部周囲の樹脂層に対して熱処理を行い、開口部の周囲の樹脂層を硬化させた。1質量%炭酸ナトリウム水溶液(30℃)で処理を行って、図4(f)で示す平坦部60(未硬化部23)の厚みDbが15μmになるように未硬化部の樹脂層の除去を行った。その後、紫外線処理(2J/cm2)及び加熱処理(150℃1時間)を行い、耐洗浄液性を向上させた。
【0135】
開口部周囲の樹脂層の厚みDbは20μmであり、高さDP5μmの突設樹脂部が形成されていた。突設樹脂部50の幅Wpは均一に30μmとなっており、突設樹脂部に位置ずれは見られなかった(図4(f))。突設樹脂部の頂点は曲面であり、その頂部51の曲率半径Rpは20μmであった(図3(b))。
【0136】
突設樹脂部が形成されたスクリーン印刷用マスクを用いて、通常のスキージ圧にてスクリーン印刷を行ったところ、滲みの発生は見られなかった。また、洗浄液を用いて洗浄を行っても、突設樹脂部の形状に変化はなかった。転写されたペースト材の形状も良好な形状を維持していた。ペースト材の抜け性も良好であったが、実施例1よりはペースト材の転写量は少なかった。また、スキージ圧を半減させても、印刷品質は良好なままであった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のスクリーン印刷用マスク及びスクリーン印刷用マスクの作製方法は、広範なスクリーン印刷の用途に適用可能であり、例えば、ペースト材としては、導電性材料、絶縁性材料、色材、封止材料、接着材料、レジスト材料、処理薬剤等を、スクリーン印刷によって任意の基材上にパターン形成を行う用途に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明のスクリーン印刷用マスクを表す断面図。
【図2】本発明のスクリーン印刷用マスクを表す説明図。
【図3】本発明のスクリーン印刷用マスクを表す説明図。
【図4】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法を表す断面図。
【図5】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法を表す断面図。
【図6】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法を表す断面図。
【図7】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法を表す断面図。
【図8】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法を表す断面図。
【図9】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法を表す断面図。
【図10】スクリーン印刷の工程を表す断面図。
【図11】スクリーン印刷の工程を表す断面図。
【図12】スクリーン印刷の工程を表す断面図。
【図13】スクリーン印刷用マスクの開口部と樹脂層の開口部とのずれを表す説明図。
【図14】スクリーン印刷のスキージ圧と隙間との関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0139】
1 スクリーン印刷用マスク
2 開口部
3 樹脂層
4 樹脂付きスクリーン印刷用マスク
5 被印刷基板
7 スキージ
8 ペースト材
18 スクリーン印刷用マスクの開口部の重心位置
19 スクリーン印刷用マスクの開口部のエッジ部
20 硬化処理
22 樹脂層の硬化部
23 樹脂層の未硬化部
28 樹脂層の開口部の重心位置
29 樹脂層の開口部のエッジ部
31 マスキング層
32 電着樹脂層
33 樹脂層開口用電着樹脂層
40 隙間
50 突設樹脂部
51 突設樹脂部の頂部
60 平坦部
70 スキージ圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するスクリーン印刷用マスクにおいて、プリント面側の開口部の周囲に突設樹脂部が形成されていることを特徴とするスクリーン印刷用マスク。
【請求項2】
突設樹脂部の頂部が曲面である請求項1記載のスクリーン印刷用マスク。
【請求項3】
プリント面側の開口部の周囲に突設樹脂部が形成されてなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、突設樹脂部がセルフアライメントで形成されることを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【請求項4】
スクリーン印刷用マスクのプリント面に樹脂層をラミネートによって形成して開口部のプリント面側を覆う工程、開口部の樹脂層を除去する工程、スキージ面側より硬化処理を行って開口部周囲の樹脂層を硬化する工程、未硬化の樹脂層を除去して硬化部からなる突設樹脂部を形成する工程を含む請求項3記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【請求項5】
樹脂層の樹脂が光架橋性樹脂であり、硬化処理が光照射処理である請求項4記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【請求項6】
スクリーン印刷用マスクに荷電樹脂粒子を電着して突設樹脂部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項3記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【請求項7】
スクリーン印刷用マスクのプリント面に樹脂層をラミネートによって形成して開口部のプリント面側を覆う工程、開口部の樹脂層を除去する工程、開口部内壁及び開口部周囲に荷電樹脂粒子を電着して突設樹脂部を形成する工程を含む請求項6記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【請求項8】
開口部の樹脂層を除去する工程が、スキージ面から樹脂層除去液を供給して開口部の樹脂層を除去する工程である請求項4または7記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【請求項9】
開口部の樹脂層を除去する工程が、開口部以外の樹脂層の上に更に樹脂層開口用電着樹脂層を形成した後に、プリント面側から樹脂層除去液を供給して開口部の樹脂層を除去する工程である請求項4または7記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【請求項10】
開口部の樹脂層を除去する工程が、開口部の樹脂層を薄膜化させた後に樹脂層除去液を供給して開口部の樹脂層を除去する工程である請求項4または7記載のスクリーン印刷用マスクの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−107208(P2009−107208A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281442(P2007−281442)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】