説明

スクリーン印刷装置、その吸着プレート、及びフレキシブルプリント配線基板の製造方法

【課題】先に印刷されたソルダーレジストに生じる凸部に起因して発生する配線基板の変形を防止して、後に印刷されるソルダーレジストの部分的な厚みムラを無くす。
【解決手段】フレキシブルプリント配線基板の一方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを印刷してから、他方の面に前記ソルダーレジストを印刷するスクリーン印刷装置であって、前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する吸着プレートと、前記他方の面にスクリーンマスクを介して移動させることにより前記ソルダーレジストを後に印刷するスキージとを備え、前記吸着プレートには、前記配線基板を固定するための吸着穴と、前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する際、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を吸収して、前記配線基板を平坦に保持するための凹部とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクリーン印刷装置、その吸着プレート、及びフレキシブルプリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷装置には、フレキシブルプリント配線基板、例えばTABテープに、配線パターンの絶縁保護を目的としてソルダーレジストを印刷するものがある。ソルダーレジストをTABテープにスクリーン印刷する場合、TABテープが印刷時に動かないように、吸着プレートに設けた吸着穴にてTABテープを真空吸着で固定している。この固定が無い場合、印刷時にTABテープが動いてしまい、100〜300μm程度の寸法公差を満足できなくなってしまうため、スクリーン印刷にとって吸着プレートは必要不可欠な冶具である。一般的に、吸着プレートは多数の吸着穴を有し、吸着穴以外の領域では、その表面に凹凸はなくフラットである。
【0003】
なお、関連技術として、吸着プレートに凸部を設けてスキージ圧によるリードの変形を防止するものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−45668号公報
【特許文献2】特開2003−23045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線パターンの絶縁保護を目的としたソルダーレジストを配線基板に印刷する場合、絶縁性フィルムの片面だけにソルダーレジストを印刷する場合には大きな問題にはならない。また、両面にソルダーレジストを印刷する場合であっても、先行して印刷する表面へのソルダーレジストの印刷時には問題は発生しない。しかし、後に裏面にソルダーレジストを印刷する場合には、先に印刷した表面へのソルダーレジストに凹凸形状があると、後に印刷する裏面へのソルダーレジストの厚さに影響を与える。その結果、配線基板形状が歪み、裏面に印刷するソルダーレジストの膜厚にムラを生じさせてしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来技術の問題点を解消して、一方の面に先に印刷されたソルダーレジストの凸部に起因して発生した配線基板形状の変形による、他方の面に後に印刷されるソルダーレジストの部分的な厚みムラを無くすことが可能なスクリーン印刷装置、その吸着プレート、及びフレキシブルプリント配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態によれば、
絶縁性フィルムの両面に配線パターンが形成されてなるフレキシブルプリント配線基板の、一方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを印刷してから、他方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆する前記ソルダーレジストを印刷するスクリーン印刷装置であって、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線
基板を固定する吸着プレートと、前記他方の面にスクリーンマスクを介して移動させることにより前記ソルダーレジストを後に印刷するスキージとを備え、
前記吸着プレートには、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定するための吸着穴と、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する際、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を収容して、前記配線基板を平坦に保持するための凹部と
が設けられているスクリーン印刷装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記凹部は、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストの両端部に発生するソルダーレジストの一対の凸部を収容して、前記配線基板を平坦に保持するための一対の平行な長形溝であって、
前記吸着プレートに吸着されて固定された前記配線基板の他方の面に、位置合わせされた前記スクリーンマスクを介して前記ソルダーレジストを印刷する際の、前記スキージの移動方向に対して略直交するよう設けられている。
【0009】
本発明の他の実施の形態によれば、
絶縁性フィルムの両面に配線パターンが形成されたフレキシブルプリント配線基板の両面に、前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを印刷するために、前記配線基板を真空吸着により固定するスクリーン印刷装置の吸着プレートであって、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を平坦に固定するための吸着穴と、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する際、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を収容して、前記配線基板を平坦に保持するための凹部と
が設けられているスクリーン印刷装置の吸着プレートが提供される。
【0010】
好ましくは、前記凹部は、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストの両端部に発生するソルダーレジストの一対の凸部を収容して、前記配線基を平坦に保持するための一対の平行な長形溝であって、
前記吸着プレートに吸着されて固定された前記配線基板の他方の面に、位置合わせされた前記スクリーンマスクを介して前記ソルダーレジストを印刷する際の、前記スキージの移動方向に対して略直交するよう設けられている。
【0011】
本発明の別な実施の形態によれば、
絶縁性フィルムの両面に配線パターンが形成されてなるフレキシブルプリント配線基板の一方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを印刷してから、他方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆する前記ソルダーレジストを印刷するフレキシブルプリント配線基板の製造方法であって、
前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定するための吸着穴と、前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する際、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を収容して、前記配線基板を平坦に保持するための凹部とを設けた吸着プレートを用意し、
前記配線基板の一方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆する前記ソルダーレジストを先に印刷した後、
前記吸着プレートに設けた凹部に、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を位置合わせして、前記凸部を前記凹部に収容させた状態で、前記配線基板の一方の面を真空収容して、前記配線基板を平坦に固定する工程と、
平坦に固定された前記配線基板の他方の面に、位置合わせしたスクリーンマスクを介し
てスキージを移動させることにより、前記配線パターンの所定部分を被覆する前記ソルダーレジストを後に印刷する工程と、
を含むフレキシブルプリント配線基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一方の面に先に印刷されたソルダーレジストの凸部に起因して発生する配線基板の変形によって、他方の面に後に印刷されるソルダーレジストの部分的な厚みムラを無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフレキシブルプリント配線基板に印刷されたソルダーレジストの凸部の真空吸着前後の状態を示す説明図であって、(a)は吸着前の状態図、(b)は吸着後の状態図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る吸着プレートの説明図であって、(a)は先に印刷されたソルダーレジストを描き込んだ吸着プレートの平面図、(b)は(a)のx−x’断面図である。
【図3】従来例の2メタル構造TABテープへのソルダーレジスト印刷の工程図であり、(a)は印刷前の2メタル構造TABテープの断面図、(b)は表面へのソルダーレジスト印刷のステップ図、(c)は裏面へのソルダーレジスト印刷のステップ図である。
【図4】従来例の真空吸着によるTABテープの変形メカニズムを説明する状態図であり、(a1)は真空吸着前の状態図、(a2)は(a1)の要部拡大図、(b)は真空吸着後の状態を示す拡大図、(c)は裏面へのソルダーレジスト印刷後の状態を示す拡大図、(d)は吸着プレート引き離し後の部分的なソルダーレジスト膜厚異常を示す拡大説明図である。
【図5】一般的な2メタル構造TABテープ製造プロセスの説明図であり、(a)は両面銅箔板、(b)はパンチング(ガイド穴あけ)、(c)はレーザ加工、(d)は銅メッキ、(e)はパターニング、(f)フォトソルダーレジスト、(g)はAu/Niめっきのステップを示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るスクリーン印刷装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施の形態を説明する。
【0015】
まず、本願発明の従来技術の問題点について、より詳細に説明する。2メタル構造TABテープ(単にTABテープともいう)のように、配線パターンが形成されている両面にソルダーレジストを印刷する場合、先に印刷した表面へのソルダーレジストに発生する凹凸形状が、後に印刷する裏面へのソルダーレジストの厚さに影響を与えてしまう。その原因はつぎの通りである。2メタル構造TABテープの基板を担うポリイミドフィルムの厚さが15μm〜25μmと薄い。このため、裏面へのソルダーレジストの印刷において、先に印刷した表面Sのソルダーレジストの形状の凹凸形状の影響が、TABテープを吸着プレートに真空吸着することにより、裏面に顕著に現れる。この凹凸形状に起因して歪んだTABテープの裏面にそのままソルダーレジストをフラットに印刷すると、印刷面のTABテープの歪みによりソルダーレジストの膜厚にムラを生じさせてしまう。
【0016】
(2メタル構造TABテープ)
これをフレキシブルプリント配線基板としての2メタル構造TABテープを例にとって、図3を用いて説明する。図3(a)に示す2メタル構造TABテープ100は、絶縁性フィルムとしてのポリイミドフィルム110の表面S及び裏面Gに、金属箔としての銅箔が形成されてなる基材に、裏面G側からレーザを照射することにより、裏面G側の銅箔及びポリイミドフィルム110を貫通する開口部を形成する。つぎに、両面の銅箔上にフォ
トリソグラフィによりレジストパターン(図示しない)を形成し、露出した銅箔をエッチングすることにより、銅配線パターン161、162を形成する。そして、裏面G側の銅配線パターン上及び開口部内に銅めっき180を施し、両面の導通を図るように構成したものである。
【0017】
図3(b)に示すように、このようなTABテープ100の表面Sの配線パターン161の所定部分にソルダーレジスト171を先に印刷する。このときソルダーレジスト171の両端部に凸部(盛り上がり部)173が発生する。しかる後、図3(c)に示すように、裏面Gの配線パターン162の所定部分にソルダーレジスト172を印刷する。すると、裏面Gのソルダーレジスト172の前記凸部173の対応部分に、凸部173に起因して薄い部分175が形成され、これがソルダーレジスト172の膜厚にムラを生じさせる。なお、裏面Gにも表面Sと同様にソルダーレジスト172の両端部に盛上がり部174が発生する。
【0018】
(膜厚にムラが生じる原因)
ここで、さらに図3(b)から図3(c)に至る過程を、要部を拡大した図4を用いて具体的に説明する。特に、熱硬化型ソルダーレジストを用いる場合には、図4に示すように、2メタル構造TABテープ100の表面Sに印刷したソルダーレジスト171の両端部には、スクリーンマスクが離れる際に生じるソルダーレジスト171との癒着などを原因として、盛り上がり部173が発生するのが常である(図4(a1)、(a2))。このような盛り上がり部173を表面Sに有するTABテープ100を、凹凸のないフラットな面を有する吸着プレート200で真空吸着すると、盛り上がり部173を起点としてTABテープ100がポリイミドフィルム110ごと変形する(図4(b))。TABテープ100が変形したままソルダーレジスト172を裏面Gにフラットに印刷すると、表面Sのソルダーレジスト171の盛り上がり部173に対応する部位111もフラットに印刷されてしまう(図4(c))。その結果、印刷後に吸着プレート200から開放された2メタル構造TABテープ100は、その変形がもとに戻ったとき、前記部位111に膜厚が薄くなる凹部174が形成されるため、ソルダーレジスト172の膜厚にムラを生じさせてしまう(図4(d))。
【0019】
膜厚が薄くなる現象は、印刷スキージ移動方向(図4(c)の矢印で示す図の左右方向)に段差(高さバラつき)があると段差部分にソルダーレジスト厚み変化が生じるため、スキージ移動方向と垂直な方向のソルダーレジスト形状の影響を強く受ける。すなわち、表面Sのソルダーレジスト171に盛り上がり部173が発生している箇所で裏面Gのソルダーレジスト172の膜厚が薄くなっている。黒色など、色の濃いソルダーレジストの場合、厚みムラが外観上目立ちやすく、膜厚が薄くなっている部分は外観上はソルダーレジストのカスレのように見えるため、点検工程にて不良とされてしまう。
【0020】
(実施の形態の概要)
そこで、本実施の形態にかかる吸着プレートを備えたスクリーン印刷装置では、吸着プレートに、配線基板の一方の面を真空吸着して配線基板を固定する際、先に印刷した配線基板の一方の面へのソルダーレジストに発生する凸部を収容して、配線基板を平坦に保持するための凹部を設けている。
【0021】
このように、先に印刷したソルダーレジストの凸部を収容する凹部を吸着プレートに設けることにより、凸部が発生している一方の面を吸着プレートに真空吸着させても、配線基板はその凸部を原因として変形することがない。したがって、既印刷面を真空吸着の際、配線基板の他方の面を平坦に保持できるので、後に印刷するソルダーレジストの膜厚にムラが生じるのを低減できる。
【0022】
[スクリーン印刷装置]
次に、このスクリーン印刷装置について具体的に説明する。
【0023】
スクリーン印刷装置は、例えば間欠搬送される2メタル構造TABテープに、配線の腐食を防止する腐食防止層としてのソルダーレジストを印刷する。このTABテープの両面に、前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを先後して印刷する。
【0024】
図6に本実施の形態のスクリーン印刷装置の概要図を示す。
このスクリーン印刷装置は、印刷ステージ2と、その上に設置され2メタル構造TABテープ100のいずれか一方の印刷面を真空吸着して2メタル構造TABテープ100を平坦に固定する吸着プレート200と、転写する印刷パターンが形成されたスクリーンマスク9と、このスクリーンマスク9を介して移動させることにより2メタル構造TABテープ100の印刷面にソルダーレジスト170を塗布するスキージ13とから主に構成される。
【0025】
2メタル構造TABテープ100の両面へのソルダーレジスト170の印刷は次のように行う。なお、TABテープの表裏で配線パターンが異なるので、それらの配線パターンを被覆するためのスクリーンマスク9及び吸着プレート200も表裏で異なるものが使われるが、ここでは便宜上同じものを使っている。
【0026】
まず、表面Sにソルダーレジスト170を先に印刷する。スクリーンマスク9を、吸着プレート200に設置したTABテープ100上に位置合わせする。TABテープ100を、その裏面Gを吸着プレート200上に吸着穴210より吸着させて印刷ステージ2に固定する。スキージ13の圧力によりスクリーンマスク9上のソルダーレジストインク16を押し出し、TABテープ100の表面Sに転写させる。
【0027】
表面Sにソルダーレジスト170を印刷した後、裏面Gにもソルダーレジスト170を印刷する。スクリーンマスク9を、吸着プレート200上のTABテープ100上に位置合わせする。先にソルダーレジスト170が印刷された表面Aを吸着プレート200上に吸着穴210より吸着させてTABテープ100を印刷ステージ2に固定する。スキージ13の圧力によりスクリーンマスク9上のソルダーレジストインク16を押し出し、TABテープ100の裏面Gに、その配線パターン160の所定部分に転写させる。
【0028】
ここで、後の印刷時に使用する吸着プレート200には、吸着穴210に加えて、TABテープ100の表面Sを真空吸着してTABテープ100を固定する際、先に印刷したTABテープ100の表面Sへのソルダーレジスト170に発生する凸部を収容して、TABテープ100を平坦に保持するための凹部が設けられている。この凹部を設けることによって、先に印刷したTABテープ100の表面Sへのソルダーレジスト170の端部に発生する盛り上がり部を収容するようになっている。実施の形態によっては、前記凹部は溝であることもある。
【0029】
(溝による盛上がり部の収容)
要部を拡大した図1に示す実施の形態では、吸着プレート200に、表裏を貫通する吸着穴210とは別に、吸着面側に凹部として溝220が設けられている。図1には、表面Sにソルダーレジスト171が印刷されたTABテープ100と、ソルダーレジスト171が印刷されたTABテープ100を真空吸着する吸着プレート200とが示されており、(a)は吸着前、(b)は吸着後を示す。
【0030】
図1に示すように、2メタル構造TABテープ100は、ポリイミドフィルム110を有し、その表面Sに配線パターン161が形成され、その裏面Gに配線パターン162が
形成されて構成されている。そのうちの表面Sに形成された配線パターン161の所定部分には、これを覆うソルダーレジストが裏面Gよりも先に印刷されている。既述したように熱硬化型ソルダーレジストを用いる場合、表面Sに印刷したソルダーレジスト171の端部には、盛り上がり部173が不可避的に発生する。
【0031】
本実施の形態では、吸着プレート200に、前記盛り上がり部173を収容する溝220を形成している。吸着プレート200の溝220の形成場所は、吸着プレート200にTABテープ100を吸着した際に、表面Sのソルダーレジスト171の盛り上がり部173に発生する端部が接触する位置に来るよう形成する。
【0032】
溝220の断面深さ及び開口幅は、表面Sに印刷されたソルダーレジスト171の端部の盛り上がり部の高さ及び幅によって決まる。盛り上がり部173の高さは、ソルダーレジストエリアの中央部から測定すると平均で3μmに満たない程度である。また幅は0.5mmに満たない程度である。従って、端部の盛り上がり部173を吸収する溝の深さは〜3μm程度であり、溝の開口幅は〜1mm程度である。また、溝220の形状は、例えば断面U字状ないし円弧状をしてTABテープ100にキズが付かないよう、鋭利な角が無いことが望ましい。
【0033】
図1(a)に示すように、ソルダーレジスト171の端部に発生している盛り上がり部173の直下に溝220が来るよう、TABテープ100を吸着プレート200に位置合わせする。図1(b)に示すように、TABテープ100の表面Sに形成されたソルダーレジスト171を吸着プレート200上に吸着穴210より真空吸着してTABテープ100を固定する。すると、吸着プレート200の溝220にソルダーレジスト171の端部の盛り上がり部173が収まり、印刷面がフラットになる。その結果、表面Sに印刷されたソルダーレジスト171の端部の盛り上がり形状に起因して発生するTABテープ形状の変形による、裏面Gのソルダーレジストの部分的な厚みムラを無くすことができる。
【0034】
[吸着プレート]
次に吸着プレートについて詳細に説明する。吸着プレートは、ポリイミドフィルムの両面に配線パターンが形成されたTABテープの両面に、前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを印刷するために、TABテープを真空吸着により固定するものである。ここでは、特に裏面Gにソルダーレジストを印刷するときに用いられる吸着プレートをいう。
【0035】
吸着プレートには、吸着穴と凹部とが設けられている。吸着穴は、ソルダーレジストを先に印刷したTABテープの一方の面を真空吸着してTABテープを平坦に固定するためのものである。凹部は、ソルダーレジストを先に印刷したTABテープの一方の面を真空吸着してTABテープを固定する際、先に印刷したTABテープの一方の面へのソルダーレジストに発生する凸部を収容して、TABテープを平坦に保持するためのものである。
【0036】
先に印刷したソルダーレジストの凸部を収容する凹部を吸着プレートに設けることにより、凸部が発生している一方の面を吸着プレートに真空吸着させても、TABテープはその凸部を原因として変形することがない。したがって、真空吸着の際、TABテープの他方の面を平坦に保持できるので、後に印刷するソルダーレジストの膜厚にムラが生じるのを低減できる。
【0037】
図2に示す実施の形態において、吸着プレート200には、その吸着面に溝220が形成されている。この溝220は、第1のソルダーレジスト171を印刷するときに第1のソルダーレジスト171の両端部に形成されるソルダーレジストの1対の盛り上がり部173をそれぞれ収容する1対の平行な溝220で構成されている。溝220の対の数は、
TABテープ100の種類によって異なるが、図示例では、2対形成されている。この溝220は、ソルダーレジストを後に印刷する際の吸着プレート200に対するスキージ13の移動方向(白抜き矢印)に対して直交する方向であって、吸着プレート200に対するTABテープ100の搬送方向を長さ方向となす長形溝で構成される。なお、溝とスキージの移動方向の位置関係は、必ずしも直角に交わる必要はなく、略直交する位置関係であればよい。
【0038】
このように溝をスキージの移動方向に対して略直交する方向に設けた長形溝で構成することにより、スキージの移動の始端と終端に相当するソルダーレジストの両端部に、他の部分よりも厚くソルダーレジストが印刷されることから、この両端部を確実に吸収できるようになっている。また、溝をTABテープ100の搬送方向を長さ方向となす長形溝で構成することにより、搬送方向に隣接する複数のソルダーレジストの端部に対して共通化できるので、溝パターンを簡素化できるようになっている。
【0039】
ソルダーレジスト171が印刷されたTABテープが、そのソルダーレジスト側を吸着面に向けて吸着プレート200に位置決めされて吸着されると、図2(a)示すように、吸着プレート200の吸着面に吸着されるソルダーレジスト171は1対の溝220間の平坦部230を跨いで位置し、その両端部が1対の溝220にかかることになる。吸着されると、図2(b)に示すように、第1のソルダーレジスト171の両端に形成されている一対の盛り上がり部173は一対の溝220内に収まる。なお、図2(b)の上方のソルダーレジスト171は吸着前、下方のソルダーレジスト171は吸着後を模式的に示したものである。
【0040】
また、吸着プレート200には、前記溝220を避けるように、多数の吸着穴210が表裏面を貫通して設けられ、吸着プレート200上に載置されたTABテープ100を真空吸着により固定するようになっている。多数の吸着穴210は、TABテープ100の平坦度を保つために、規則的に配列されるように設けることが好ましい。図示例では、碁盤目状に設けられている。吸着穴210は、直径が〜1mm、間隔が〜5mmで形成すれば十分吸着できる。
【0041】
吸着プレート200の材質は、加工精度の出しやすい材料が好ましく、ステンレス、真鍮などの硬い材質が用いられるが、特にグラナイトが好ましい。
【0042】
(実施の形態の作用)
上記のような構成において、吸着プレート200の吸着穴210を介して図示しない真空ポンプにより、先にソルダーレジスト171が印刷されたTABテープ100の表面S側を真空引きすると、TABテープ100は印刷ステージ2の吸着プレート200の吸着面に吸着されて固定される。この際、TABテープ100の表面Sから突出するソルダーレジスト171の両端部の盛り上がり部173は、一対の長形溝220内に収容され、TABテープ100の表面Sと吸着プレート200の吸着面とは密着状態となる。この状態で、スキージ13でスクリーンマスク9をTABテープ100に付勢しながらスキージ13を長形溝220に対して略直交方向に移動して、TABテープ100の裏面Gにソルダーレジスト172を印刷する。すると、ソルダーレジスト172は略均一の厚みで配線パターン162の所定部分に印刷される。
【0043】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、吸着プレート200に溝220を設けたので、表面Sにソルダーレジスト171を先に印刷した2メタル構造TABテープ100を、その表面S側を吸着プレート200に真空吸着させた状態で、裏面Gにソルダーレジスト172を印刷する際に、溝220が表面Sのソルダーレジスト171の盛り上がり部173を収容する。し
たがって、TABテープ100の表面S側を吸着プレート200に平坦に固定させることができ、TABテープ100の変形に起因する裏面Gのソルダーレジスト172の部分的な厚みムラを低減できる。
【0044】
また、吸着プレート200に設けた溝を一対の平行な溝220で構成したので、表面Sに印刷したソルダーレジスト171の一対の盛り上がり部173を有効に収容することができる。
【0045】
また、実施の形態では、溝をスキージの動作方向に対して略直交する1対の長形溝で構成しているので、スキージの移動の始端と終端に相当するソルダーレジストの両端部の盛上がり部を確実に収容できる。また、溝をTABテープ100の搬送方向を長さ方向となす長形溝で構成しているので、搬送方向に隣接する複数のソルダーレジストの端部に対して共通化できるので、溝パターンを簡素化できる。
【0046】
また、2メタル構造TABテープの表面に印刷されたソルダーレジスト端の盛り上がり形状の起因で発生していた裏面ソルダーレジストの厚みムラが解消されるので、外観上、ソルダーレジストのカスレとしてリジェクトされることが無くなり、点検良品率を向上できる。因みに、点検良品率は平均で3%向上した。これにより、歩留が安定し、製品の安定供給が可能となる。
【0047】
(フレキシブルプリント配線基板の製造方法)
次に、本発明の実施の形態によるフレキシブルプリント配線基板の製造方法について説明する。
【0048】
フレキシブルプリント配線基板の製造方法は、絶縁性フィルムの両面に配線パターンが形成されてなるフレキシブルプリント配線基板の両面に、前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを先後して印刷する。この場合において、前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定するための吸着穴と、前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する際、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を収容して、前記配線基板を平坦に保持するための凹部とを設けた吸着プレートを用意する。前記吸着プレートを用いて前記収容プレートの凹部により前記配線基板の凸部を収容させた状態で、前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を、真空吸着して前記配線基板を平坦に固定する工程と、平坦に固定された前記配線基板の他方の面に、スクリーンマスクを介してスキージを移動させることにより、前記配線パターンの所定部分を被覆する前記ソルダーレジストを後に印刷する工程と、を含む。
【0049】
これによれば、先に印刷したソルダーレジストの凸部を収容する凹部を設けた吸着プレートを用いることにより、凸部が発生している一方の面を吸着プレートに真空吸着させても、配線基板はその凸部を原因として変形することがない。したがって、真空吸着の際、配線基板の他方の面を平坦に保持できるので、後に印刷するソルダーレジストの膜厚にムラが生じるのを低減できる。
【0050】
(TABテープの製造方法の全工程)
図5に、ソルダーレジスト印刷工程を含むTABテープの製造方法の全工程を示す。
ポリイミドフィルム110の両面に銅箔121、122を貼った両面銅貼板を用意する(図5(a))。この両面銅貼板にパンチングによりガイド穴開けをし(図5(b))、裏面をレーザ加工して開口を形成し(図5(c))、裏面にCuめっきを行う(図5(d))。表裏面をパターニングし(レジストコート、露光、現像、エッチング、レジスト剥離)て配線パターンを形成する(図5(e))。先後して両面にソルダーレジストを印刷
し(図5(f))、ソルダーレジストで被覆されていない部分にAu/Niめっきする(図5(g))。
【0051】
図5(f)において、TABテープ100を略平坦に位置決めすることができるため、表面のソルダーレジスト170の端部を原因とする裏面のソルダーレジスト170の厚みムラをなくすことができる。
【0052】
(他の実施例/変形例)
このほかにも、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々様々変形実施可能なことは勿論である。例えば、上述した実施の形態では、溝220の形状を断面Uの字形状ないし円弧状としたが、溝220の形状はこれに限定されず、例えば断面多角形であってもよい。
また、実施の形態ではソルダーレジストの印刷の順番を先に表面を印刷してから裏面を後に印刷するようにしたが、逆に裏面を先に印刷してから表面を後に印刷するような場合にも、本発明の適用は可能である。さらに実施の形態では、吸着プレートに設ける長形溝は、スキージの移動方向に対して垂直方向になるように形成したが、並行方向になるように形成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
S 表面(一方の面)
G 裏面(他方の面)
13 スキージ
100 2メタル構造TABテープ(フレキシブルプリント配線基板)
110 ポリイミドフィルム
161 配線パターン
162 配線パターン
171 ソルダーレジスト
172 ソルダーレジスト
173 盛り上がり部(凸部)
200 吸着プレート
210 吸着穴
220 溝(凹部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルムの両面に配線パターンが形成されてなるフレキシブルプリント配線基板の、一方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを印刷してから、他方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆する前記ソルダーレジストを印刷するスクリーン印刷装置であって、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する吸着プレートと、前記他方の面にスクリーンマスクを介して移動させることにより前記ソルダーレジストを後に印刷するスキージとを備え、
前記吸着プレートには、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定するための吸着穴と、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する際、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を収容して、前記配線基板を平坦に保持するための凹部と
が設けられているスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記凹部は、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストの両端部に発生するソルダーレジストの一対の凸部を収容して、前記配線基を平坦に保持するための一対の平行な長形溝であって、
前記吸着プレートに吸着されて固定された前記配線基板の他方の面に、位置合わせされた前記スクリーンマスクを介して前記ソルダーレジストを印刷する際の、前記スキージの移動方向に対して略直交するよう設けられている請求項1に記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
絶縁性フィルムの両面に配線パターンが形成されたフレキシブルプリント配線基板の両面に、前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを印刷するために、前記配線基板を真空吸着により固定するスクリーン印刷装置の吸着プレートであって、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を平坦に固定するための吸着穴と、
前記ソルダーレジストを先に印刷した前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する際、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を収容して、前記配線基板を平坦に保持するための凹部と
が設けられているスクリーン印刷装置の吸着プレート。
【請求項4】
前記凹部は、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストの両端部に発生するソルダーレジストの一対の凸部を吸収して、前記配線基を平坦に保持するための一対の平行な長形溝であって、
前記吸着プレートに吸着されて固定された前記配線基板の他方の面に、位置合わせされた前記スクリーンマスクを介して前記ソルダーレジストを印刷する際の、前記スキージの移動方向に対して略直交するよう設けられている請求項3に記載のスクリーン印刷装置の吸着プレート。
【請求項5】
絶縁性フィルムの両面に配線パターンが形成されてなるフレキシブルプリント配線基板の一方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆するソルダーレジストを印刷してから、他方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆する前記ソルダーレジストを印刷するフレキシブルプリント配線基板の製造方法であって、
前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定するための吸着穴と、前記配線基板の一方の面を真空吸着して前記配線基板を固定する際、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を吸収して、前記配線基板を平坦に保持するための凹部とを設けた吸着プレートを用意し、
前記配線基板の一方の面に前記配線パターンの所定部分を被覆する前記ソルダーレジストを先に印刷した後、
前記吸着プレートに設けた凹部に、先に印刷した前記配線基板の一方の面への前記ソルダーレジストに発生する凸部を位置合わせして、前記凸部を前記凹部に吸収させた状態で、前記配線基板の一方の面を真空吸収して、前記配線基板を平坦に固定する工程と、
平坦に固定された前記配線基板の他方の面に、位置合わせしたスクリーンマスクを介してスキージを移動させることにより、前記配線パターンの所定部分を被覆する前記ソルダーレジストを後に印刷する工程と、
を含むフレキシブルプリント配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206400(P2012−206400A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74146(P2011−74146)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】