説明

スクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法

【課題】基板位置決め部の昇降駆動機構の機械誤差に起因する位置ずれ誤差を排除して、高い位置精度で基板をマスクプレートに対して位置合わせすることができるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1の撮像部によって、認識孔9e、12eを撮像して取得された位置合わせデータに基づいて基板位置決め部1を制御してクランプ部材9aを上昇させてマスクプレート12の下面に位置合わせし、クランプ部材9aが治具マスク12Aの下面に当接した状態で第2の撮像部17によって認識孔12eを介して認識孔9eを撮像した撮像結果に基づき、クランプ部材9aが治具マスク12Aの下面に当接した状態における認識孔12eと認識孔9eとの位置ずれ量δx、δyを示す相対位置データを取得し、基板位置決め部1による上昇動作に起因する位置決め誤差を示すキャリブレーションデータとして記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にクリーム半田などのペーストを印刷するスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に電子部品を実装する部品実装ラインにおいて、基板上にクリーム半田などの部品接合用のペーストを供給する方法として、スクリーン印刷が用いられている。このスクリーン印刷では、ペーストの印刷部位に対応してパターン孔が設けられたマスクプレートに基板を当接させ、マスクプレート上にペーストを供給してスキージを摺動させるスキージング動作を行うことにより、パターン孔を介して基板にペーストを印刷する。このスクリーン印刷においてペーストを正しく印刷するためには、基板をマスクプレートに対して正しく位置合わせする必要がある。
【0003】
この基板位置合わせは、一般に基板およびマスクプレートにそれぞれ設けられた認識マークをカメラによって撮像して位置認識することにより行われる(例えば特許文献1参照)。この特許文献例に示す先行技術では、基板の上面とマスクプレートの下面との間に上下両方向の撮像が可能な認識手段を進出させ、マスクプレートおよび基板にそれぞれ設けられた認識マークを同一動作によって撮像するようにしている。この構成によれば、単一の移動手段によって認識手段を移動させて、基板およびマスクプレートの双方を撮像できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−130910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の先行技術には、高い印刷位置精度が求められる基板を対象とする場合において、以下に述べるような不都合がある。すなわち、基板位置合わせに際しては、まずマスクプレートおよび基板にそれぞれ設けられた認識マークを認識した位置認識結果に基づいて水平方向の位置ずれを検出する。そして基板位置決め部を水平方向に駆動してこの位置ずれを補正した上で、基板位置決め部に備えられた昇降駆動機構を駆動して基板を上昇させ、マスクプレートに対して位置合わせする。
【0006】
ところがこの基板位置決め部による上昇動作においては、昇降駆動機構が固有に有する機械誤差のため、基板は当初の水平位置を保ったまま上昇するとは限らず、機械誤差分だけ水平方向に位置ずれを生じる。このため、基板位置合わせに先立ってマスクプレートおよび基板にそれぞれ設けられた認識マークを認識して位置補正を行っても、昇降駆動機構の機械誤差に起因して後発的に生じる位置決め誤差は位置補正の対象とはならなかった。そして作業対象が高い印刷位置精度が求められる基板である場合には、この後発的に生じる位置決め誤差は無視することができず、結果として必要とされる位置精度で基板をマスクプレートに対して位置合わせすることが困難であった。
【0007】
そこで本発明は、基板位置決め部の昇降駆動機構の機械誤差に起因する位置決め誤差を排除して、高い位置精度で基板をマスクプレートに対して位置合わせすることができるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスクリーン印刷装置は、パターン孔が設けられたマスクプレートに基板を当接させてペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、上流側から搬入された基板をクランプ部材によって水平方向からクランプした状態で相対的に水平方向および上下方向に移動させることにより所定位置に位置決めする基板位置決め部と、ペーストが供給された前記マスクプレート上でスキージを摺動させることにより前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷部と、上下2方向の撮像が可能に設けられ、撮像部移動機構によって移動することにより前記クランプ部材の上面とマスクプレートの下面との間に進出して、前記クランプ部材に形成された位置参照用マークおよび前記マスクプレートにおいて前記位置参照用マークと対応した位置に形成されたマスク開口部を撮像する第1の撮像動作を行う第1の撮像部と、前記マスクプレートの上面側に設けられ、前記基板位置決め部に上昇動作を行わせて前記クランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態において、前記マスク開口部を介して前記位置参照マークを撮像する第2の撮像動作を行う第2の撮像部と、前記第1の撮像動作における撮像結果を認識処理することにより前記基板位置決め部を前記マスクプレートに対して水平方向に位置合わせするための位置補正データを取得するとともに、第2の撮像動作における撮像結果を認識処理することにより、前記基板位置決め部が上昇して前記クランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態における前記マスク開口部と前記位置参照マークとの水平方向の相対位置ずれを示す位置ずれデータを取得する認識処理部と、前記基板位置決め部、第1の撮像部、第2の撮像部および認識処理部を制御することにより前記位置ずれデータを求めて、前記基板位置決め部による上昇動作に起因して生じる水平方向の位置決め誤差を補正するためのキャリブレーション処理を実行させるキャリブレーション制御部とを備えた。
【0009】
本発明のスクリーン印刷方法は、上流側から搬入された基板をクランプ部材によって水平方向からクランプした状態で相対的に水平方向および上下方向に移動させることにより所定位置に位置決めする基板位置決め部と、ペーストが供給されたマスクプレート上でスキージを摺動させることにより前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷部とを備えたスクリーン印刷装置において、パターン孔が設けられた前記マスクプレートに前記基板を当接させてペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、上下2方向の撮像が可能に設けられ、撮像部移動機構によって移動することにより前記クランプ部材の上面とマスクプレートの下面との間に進出して、前記クランプ部材に形成された位置参照用マークおよび前記マスクプレートにおいて前記位置参照用マークと対応した位置に形成されたマスク開口部を撮像する第1の撮像部によって、前記位置参照用マークおよび前記マスク開口部を撮像する第1の撮像工程と、前記第1の撮像工程における撮像結果を認識処理することにより前記基板位置決め部を前記マスクプレートに対して水平方向に位置合わせするための位置補正データを取得する第1の認識工程と、前記位置補正データに基づいて前記基板位置決め部を制御することにより前記クランプ部材を上昇させて前記マスクプレートの下面に当接させるクランプ部材上昇行程と、前記クランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態において、前記マスクプレートの上面側に設けられた第2の撮像部によって、前記マスク開口部を介して前記位置参照マークを撮像する第2の撮像工程と、前記第2の撮像工程における撮像結果を認識処理することにより、前記基板位置決め部が上昇して前記クランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態における前記マスク開口部と前記位置参照マークとの水平方向の相対位置ずれを示す位置ずれデータを取得する第2の認識工程と、前記位置ずれデータを前記基板位置決め部による上昇動作に起因して生じる水平方向の位置決め誤差として補正するためのキャリブレーション処理を実行するキャリブレーション処理工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の撮像部によって、位置参照用マークおよびマスク開口部を撮像して取得された位置合わせデータに基づいて基板位置決め部を制御することによりクランプ部材を上昇させてマスクプレートの下面に位置合わせし、クランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態で第2の撮像部によってマスク開口部を介して位置参照マークを撮像した撮像結果を認識処理することにより基板位置決め部が上昇してクランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態におけるマスク開口部と位置参照マークとの水平方向の位置ずれを示す位置ずれデータを取得し、この位置ずれデータを基板位置決め部による上昇動作に起因して生じる水平方向の位置決め誤差を示すキャリブレーションデータとして記憶させることにより、基板位置決め部の昇降駆動機構の機械誤差に起因する位置決め誤差を排除して、高い位置精度で基板をマスクプレートに対して位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の側面図
【図2】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の正面図
【図3】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の平面図
【図4】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置における基板とマスクプレートの位置合わせの説明図
【図5】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置に用いられる第1の撮像部の構造説明図
【図6】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の動作説明図
【図7】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の制御系の構成を示すブロック図
【図8】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷方法におけるキャリブレーション処理のフロー図
【図9】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷方法におけるキャリブレーション処理の動作説明図
【図10】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷方法におけるキャリブレーション処理の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1、図2、図3を参照して、スクリーン印刷装置の構造を説明する。図1において、スクリーン印刷装置は、基板位置決め部1の上方にスクリーン印刷部11を配設して構成されている。基板位置決め部1は、上流側から搬入された基板を保持して水平方向および上下方向に移動させることにより所定位置に位置決めする機能を有し、Y軸テーブル2、X軸テーブル3およびθ軸テーブル4を段積みし、更にその上に第1のZ軸テーブル5、第2のZ軸テーブル6を組み合わせて構成されている。
【0013】
第1のZ軸テーブル5の構成を説明する。θ軸テーブル4の上面に設けられた水平なベースプレート4aの上面側には、同様に水平なベースプレート5aが昇降ガイド機構(図示省略)によって昇降自在に保持されている。ベースプレート5aは、複数の送りねじ5cをモータ5bによってベルト5dを介して回転駆動する構成のZ軸昇降機構によって昇降する。
【0014】
ベースプレート5aには垂直フレーム5eが立設されており、垂直フレーム5eの上端部には基板搬送機構8が保持されている。基板搬送機構8は基板搬送方向(X方向−−図1において紙面垂直方向)に平行に配設された2条の搬送レールを備えており、これらの搬送レールによって印刷対象の基板10の両端部を支持して搬送する。第1のZ軸テーブル5を駆動することにより、基板搬送機構8によって保持された状態の基板10を、基板搬送機構8とともに後述するスクリーン印刷部に対して昇降させることができる。図2、図3に示すように、基板搬送機構8は上流側(図2、図3において左側)および下流側に延出し、上流側から搬入された基板10は基板搬送機構8によって搬送され、さらに基板位置決め部1によって位置決めされる。そして後述するスクリーン印刷部11によって印刷が行われた後の基板10は、基板搬送機構8によって下流側に搬出される。
【0015】
第2のZ軸テーブル6の構成を説明する。基板搬送機構8とベースプレート5aの中間には、水平なベースプレート6aが昇降ガイド機構(図示省略)に沿って昇降自在に配設されている。ベースプレート6aは、複数の送りねじ6cをモータ6bによってベルト6dを介して回転駆動する構成のZ軸昇降機構によって昇降する。ベースプレート6aの上面には、上面に基板10を保持する下受け面が設けられた基板下受け部7が配設されている。
【0016】
第2のZ軸テーブル6を駆動することにより、基板下受け部7は基板搬送機構8に保持された状態の基板10に対して昇降する。そして基板下受け部7の下受け面が基板10の下面に当接することにより、基板下受け部7は基板10を下面側から支持する。基板搬送機構8の上面にはクランプ機構9が配設されている。クランプ機構9は、左右対向して配置された2つのクランプ部材9aを備えており、一方側のクランプ部材9aを駆動機構9bによって進退させることにより、基板10を両側からクランプして固定する。
【0017】
次に基板位置決め部1の上方に配設されたスクリーン印刷部11について説明する。スクリーン印刷部11は、クリーム半田S(図6参照)が供給されたマスクプレート上でスキージを摺動させることにより、パターン孔を介して基板10にペーストであるクリーム半田Sを印刷する機能を有している。図1,図2において、マスク枠12aにはマスクプレート12が展張されており、マスクプレート12には基板10において印刷対象となる電極10aの形状・位置(図3参照)に対応して、パターン孔12bが設けられている。マスクプレート12上にはスキージヘッド13が配設されており、スキージヘッド13は、水平なプレート14にスキージ16を昇降させるスキージ昇降機構15を配設した構成となっている。スキージ昇降機構15を駆動することによりスキージ16は昇降して、マスクプレート12の上面に当接する。
【0018】
ここで図4を参照して、マスクプレート12と基板10の位置合わせについて説明する。図4に示すように、印刷対象の基板10には、対角に位置して1対の基板認識マーク10mが形成されておりマスク枠12aに展張されたマスクプレート12において基板10に対応する基板領域12dには、同様に対角に位置して1対のマスク認識マーク12mが形成されている。基板位置決め部1を駆動して基板10をマスクプレート12に対して位置合わせする際には、2つの基板認識マーク10mの中点と、2つのマスク認識マーク12mの中点とを一致させるとともに、2つの基板認識マーク10mを結ぶ対角線と2つのマスク認識マーク12mを結ぶ対角線の方向が一致するように、基板10の位置を調整する。
【0019】
なお、後述するキャリブレーション処理にはキャリブレーション専用のマスクプレートである治具マスク12Aを用いるようにしている。治具マスク12Aおよびクランプ部材9aには、治具マスク12Aとクランプ部材9aの水平方向の相対位置の認識に用いられる認識孔12e、認識孔9eが、平面視して同一位置となる位置にそれぞれを貫通して設けられている。認識孔9eはクランプ部材9aに形成された位置参照用マークであり、認識孔12eは治具マスク12Aにおいて認識孔9eと対応した位置に形成されたマスク開口部である。これらはいずれも基板位置決め部1を駆動して基板10をマスクプレート12に当接させる上昇動作過程において、機械誤差に起因して生じる固有の位置決め誤差を予め実測により検出してキャリブレーションデータとして記憶させるための参照マークであり、以下に説明する第1の撮像部20,第2の撮像部17による撮像対象となる。なお、実生産用のマスクプレート12に認識孔12eを形成することにより、このマスクプレート12を治具マスク12Aとして用いてもよい。
【0020】
スキージヘッド13には、撮像方向を下向きにしたカメラを備えた第2の撮像部17がプレート14と一体的に移動可能に設けられている。第2の撮像部17は基板位置決め部1による基板10の上昇動作に起因して生じる水平方向の位置決め誤差を測定して、予めキャリブレーションデータとして求める処理を行うために設けられており、X方向の位置は、マスクプレート12または治具マスク12Aに設けられた認識孔12e、クランプ部材9aに設けられた認識孔9eの位置に合わせて設定されている。
【0021】
図2に示すように、縦フレーム25上に配置されたブラケット26上にはガイドレール27がY方向に配設されており、ガイドレール27にスライド自在に嵌合したスライダ28は、プレート14の両端に結合されている。これにより、スキージヘッド13はプレート14に結合された第2の撮像部17とともに、Y方向にスライド自在となっている。プレート14は、ナット30、送りねじ29および送りねじ29を回転駆動するスキージ移動用モータ(図示省略)より成るスキージ移動手段によりY方向に水平移動する。
【0022】
そして第2の撮像部17によってマスク開口部と位置参照マークとの位置ずれを撮像する際には、スキージ移動手段を駆動して、第2の撮像部17を、認識孔12e、9eの位置に合わせた所定位置に移動させる。すなわち第2の撮像部17は、マスクプレート12の上面側に設けられ、基板位置決め部1に上昇動作を行わせてクランプ部材9aがマスクプレート12の下面に当接した状態において、マスクプレート12または治具マスク12Aに設けられた認識孔12eを介してクランプ部材9aに設けられた認識孔9eを撮像する第2の撮像動作を行う。
【0023】
縦フレーム25上にはガイドレール31がY方向に配設されており、ガイドレール31にスライド自在に嵌合したスライダ32は、ヘッドX軸テーブル19にブラケット19aを介して結合されている。これにより、ヘッドX軸テーブル19はY方向にスライド自在となっている。図3に示すように、ヘッドX軸テーブル19には、基板10、マスクプレート12を撮像する第1の撮像部20およびマスクプレート12の下面をクリーニングするクリーニング機構18が結合されている。
【0024】
図3に示すように、クリーニング機構18は水平なユニットベース18aに未使用のクリーニングペーパを巻回したペーパロール18bと、使用済みのクリーニングペーパを巻回したペーパロール18cおよびクリーニングペーパをマスクプレート12の下面に押し付けるクリーニングヘッド18dを配設した構成となっており、ペーパロール18bから引き出されたクリーニングペーパは、クリーニングヘッド18dを経由してペーパロール18cに回収される。
【0025】
ヘッドX軸テーブル19は、ナット34、送りねじ33および送りねじ33を回転駆動するヘッド移動用モータ(図示省略)より成るヘッドY軸移動機構21によりY方向に水平移動する。ヘッドX軸テーブル19,ヘッドY軸移動機構21を駆動することにより、第1の撮像部20、クリーニング機構18はX方向、Y方向へ水平移動し、これにより基板10、マスクプレート12の任意位置の撮像およびマスクプレート12の下面の全範囲をクリーニングすることができる。ヘッドX軸テーブル19およびヘッドY軸移動機構21は、第1の撮像部20を基板10およびマスクプレート12に対して水平方向に移動させる撮像部移動機構22を構成する。
【0026】
次に図5を参照して、第1の撮像部20の構成および機能について説明する。図5(a)に示すように、ヘッドX軸テーブル19に結合された第1の撮像部20は、単一のカメラ20aに、下方向および上方向の2つの撮像光軸a1,a2を有する双方向光学系20bを組み合わせて構成されている。双方向光学系20bを撮像対象の直上または直下に位置させて撮像光軸a1,a2を撮像対象に位置合わせすることにより、単一のカメラ20aによって上下2方向の撮像を同一の進退動作によって行うことが可能となっている。
【0027】
これにより、基板10に形成された基板認識マーク10mおよびマスクプレート12に形成されたマスク認識マーク12mを撮像する。これとともに本実施の形態においては、第1の撮像部20は、クランプ部材9aに形成された位置参照用マークとしての認識孔9eおよびマスクプレート12または治具マスク12Aにおいて認識孔9eと対応した位置に形成されたマスク開口部としての認識孔12eを撮像する。
【0028】
なお、単一のカメラ20aによって上下2方向の撮像を行う構成に替えて、図4(b)に示すように、上方向の撮像光軸a2を有するカメラ20cと下方向の撮像光軸a1を有するカメラ20dとを、平面視してY方向に並列にヘッドX軸テーブル19に沿って配置した構成を用いてもよい。撮像光軸a1,a2の方向からそれぞれ入射する撮像孔は、光学系20eによって導かれて、それぞれカメラ20c、20dに入射する。
【0029】
すなわち、第1の撮像部20は、上下2方向の撮像が可能に設けられ、撮像部移動機構22によって移動することによりクランプ部材9aの上面とマスクプレート12の下面との間に進出して、クランプ部材9aに形成された位置参照用マークとしての認識孔9eおよび治具マスク12A、マスクプレート12において認識孔9eと対応した位置に形成されたマスク開口部としての認識孔12eを撮像する第1の撮像動作を行う。
【0030】
次にスクリーン印刷部11による印刷動作について,図6を参照して説明する。まず基板搬送機構8によって基板10が印刷位置に搬入されると、図6(a)に示すように、第2のZ軸テーブル6を駆動してベースプレート6aとともに基板下受け部7を上昇させ(矢印a)、基板10の下面を下受けする。そしてこの状態で基板位置決め部1を駆動して基板10をマスクプレート12に対して位置合わせする。この後、図6(b)に示すように、第1のZ軸テーブル5を駆動してベースプレート5aとともに、基板搬送機構8および基板10を上昇させて(矢印b)マスクプレート12の下面に当接させ、次いで基板10をクランプ機構9によってクランプする。これにより、スキージヘッド13によるスキージングにおいて、基板10の水平位置が固定される。そしてこの状態で、クリーム半田Sが供給されたマスクプレート12上でスキージ16を摺動させることにより、パターン孔12bを介して基板10にはクリーム半田Sが印刷される。
【0031】
次に図7参照して、制御系の構成を説明する。図6において、制御部40はCPUであり、記憶部41に記憶された各種の動作・処理プログラムやデータに基づいて以下に説明する各部を制御する。これにより、スクリーン印刷部11によるスクリーン印刷作業や、印刷作業にともなって必要とされる各種の処理が実行される。なお記憶部41には、スクリーン印刷作業の実行に必要なプログラムやデータのほか、基板位置決め部1による基板10の上昇動作における位置決め誤差を補正するためのキャリブレーションデータ41aが記憶されている。
【0032】
これらの作業・処理においては、制御部40によって機構駆動部42を制御することにより、基板搬送機構8、基板位置決め部1、スクリーン印刷部11および撮像部移動機構22が駆動される。さらに、認識処理部43によって、第1の撮像部20による第1の撮像動作における撮像結果を認識処理することにより、基板位置決め部1をマスクプレート12に対して水平方向に位置合わせするための位置補正データを取得する。これとともに、第2の撮像部17による第2の撮像動作における撮像結果を認識処理することにより、基板位置決め部1が上昇してクランプ部材9aがマスクプレート12の下面に当接した状態におけるマスク開口部としての認識孔12eと位置参照マークとしての認識孔9eの水平方向の相対位置ずれを示す位置ずれデータを取得する。キャリブレーション処理部44は、基板位置決め部1、第1の撮像部20、第2の撮像部17および認識処理部43を制御することにより位置ずれデータを求めて、基板位置決め部1による上昇動作に起因して生じる水平方向の位置決め誤差を補正するためのキャリブレーション処理を実行させる。
【0033】
次に、図8以下の各図を参照して、スクリーン印刷方法におけるキャリブレーション処理について説明する。ここでは、図4に示す治具マスク12Aを装着してキャリブレーションを行う例を示している。なおここでは基板10を基板位置決め部1によって保持させた状態でキャリブレーションのための撮像を行う例を示しているが、図9(a)に示すように、治具マスク12Aに設けられた認識孔12eの位置にクランプ部材9aに設けられた認識孔9eが位置する状態であれば、基板10が存在しない状態で以下の処理を実行してもよい。
【0034】
まず認識孔12e、認識孔9eの水平方向の相対位置を検出することにより、基板10を保持する位置基準となるクランプ部材9aの治具マスク12Aに対する位置合わせが行われる。すなわち、第1の撮像部20によって認識孔9eおよび認識孔12eを撮像する(ST1)。図9(b)に示すように、撮像部移動機構22を駆動することにより前述構成の第1の撮像部20をクランプ部材9aの上面と治具マスク12Aの下面との間に進出させ(矢印c)、クランプ部材9aに形成された認識孔9eおよび治具マスク12Aにおいて認識孔9eと対応した位置に形成された認識孔12eを第1の撮像部20によって撮像する(第1の撮像工程)。
【0035】
そして第1の撮像工程によって得られた撮像結果を認識処理部43によって認識処理することにより、基板位置決め部1を治具マスク12Aに対して水平方向に位置合わせするための位置補正データを取得する(ST2)(第1の認識工程)。また第1の撮像工程が終了した後には、図9(c)に示すように、第1の撮像部20はクランプ部材9aの上面と治具マスク12Aの下面との間から退避する(矢印d)。これにより、基板位置決め部1を駆動させてクランプ部材9aを上昇させることが可能となる。
【0036】
次いで、クランプ部材9aを上昇させて治具マスク12Aの下面に当接させる(ST3)。すなわち取得された位置補正データに基づいて基板位置決め部1を制御することにより、図10(a)に示すように、クランプ部材9aに設けられた認識孔9eを認識孔12eに位置合わせしながらクランプ部材9aを上昇させて(矢印e)治具マスク12Aの下面に当接させる(クランプ部材上昇工程)。これにより、認識孔9eが認識孔12eに位置合わせされた状態で、クランプ部材9aが治具マスク12Aの下面に密着する。
【0037】
次に、第2の撮像部17によって認識孔12eを介して認識孔9eを撮像する(ST4)。すなわち、クランプ部材9aが治具マスク12Aの下面に当接した状態において、スキージを水平方向に移動させるスキージ移動機構を駆動して、図10(b)に示すように、第2の撮像部17を認識孔12eの上方へ水平移動させ(矢印f)、第2の撮像部17によって認識孔12eを介して認識孔9eを撮像する(第2の撮像工程)。次いで、第2の撮像工程により取得された撮像結果を認識処理部43によって認識処理することにより、基板位置決め部1が上昇してクランプ部材9aが治具マスク12Aの下面に当接した状態における認識孔12eと認識孔9eとの水平方向の相対位置ずれを示す位置ずれデータを取得する(ST5)(第2の認識工程)。これにより、図10(c)に示すように、認識孔12eの中心点C1と認識孔9eの中心点C2のX、Y方向の位置ずれ量δx、δyが求められる。これらの位置ずれデータ(δx、δy)は、基板位置決め部1を制御してクランプ部材9aを上昇させる過程において昇降駆動機構の機械誤差に起因して生じる位置ずれ誤差である。
【0038】
実印刷動作においてこの位置決め誤差を補正して、基板10をマスクプレート12に対して正しく位置合わせするために、本実施の形態においては上述の位置ずれデータを基板位置決め部1による上昇動作に起因して生じる水平方向の位置決め誤差として補正するためのキャリブレーション処理を、キャリブレーション処理部44によって実行する(ST6)(キャリブレーション処理工程)。これにより、上述の水平方向の位置決め誤差を補正するためのデータがキャリブレーションデータ41aとして記憶部41に記憶される。そして基板10を対象としたスクリーン印刷作業の実行時には、読み出されたキャリブレーションデータ41aに基づいて基板位置決め部1の上昇動作時の位置補正が行われる。
【0039】
上記説明したように、本実施の形態に示すスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法においては、第1の撮像部20によって、認識孔9eおよび認識孔12eを撮像して取得された位置合わせデータに基づいて基板位置決め部1を制御することによりクランプ部材9aを上昇させてマスクプレート12の下面に位置合わせして当接させる構成のスクリーン印刷装置において、クランプ部材9aがマスクプレート12の下面に当接した状態で第2の撮像部17によって認識孔12eを介して認識孔9eを撮像した撮像結果を認識処理することにより、基板位置決め部1が上昇してクランプ部材9aがマスクプレート12の下面に当接した状態における認識孔12eと認識孔9eとの水平方向の位置ずれを示す相対位置データを取得し、相対位置データを基板位置決め部1による上昇動作に起因して生じる水平方向の位置決め誤差として出力して予めキャリブレーションデータ41aとして記憶させるようにしている。これにより、基板位置決め部1の昇降駆動機構の機械誤差に起因する位置決め誤差を排除して、高い位置精度で基板10をマスクプレート12に対して位置合わせすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法は、基板位置決め部の昇降駆動機構の機械誤差に起因する位置決め誤差を排除して、高い位置精度で基板をマスクプレートに対して位置合わせすることができるという特徴を有し、基板にクリーム半田や導電性ペーストなどのペーストを印刷するスクリーン印刷の分野に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 基板位置決め部
7 基板下受け部
8 基板搬送機構
9a クランプ部材
9e 認識孔(位置参照マーク)
10 基板
10m 認識マーク
11 スクリーン印刷部
12 マスクプレート
12A 治具マスク
12b パターン孔
12e 認識孔(マスク開口部)
12m 認識マーク
13 スキージヘッド
16 スキージ
17 第2の撮像部
20 第1の撮像部
22 撮像部移動機構
S クリーム半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン孔が設けられたマスクプレートに基板を当接させてペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、
上流側から搬入された基板をクランプ部材によって水平方向からクランプした状態で相対的に水平方向および上下方向に移動させることにより所定位置に位置決めする基板位置決め部と、
ペーストが供給された前記マスクプレート上でスキージを摺動させることにより前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷部と、
上下2方向の撮像が可能に設けられ、撮像部移動機構によって移動することにより前記クランプ部材の上面とマスクプレートの下面との間に進出して、前記クランプ部材に形成された位置参照用マークおよび前記マスクプレートにおいて前記位置参照用マークと対応した位置に形成されたマスク開口部を撮像する第1の撮像動作を行う第1の撮像部と、
前記マスクプレートの上面側に設けられ、前記基板位置決め部に上昇動作を行わせて前記クランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態において、前記マスク開口部を介して前記位置参照マークを撮像する第2の撮像動作を行う第2の撮像部と、
前記第1の撮像動作における撮像結果を認識処理することにより前記基板位置決め部を前記マスクプレートに対して水平方向に位置合わせするための位置補正データを取得するとともに、第2の撮像動作における撮像結果を認識処理することにより、前記基板位置決め部が上昇して前記クランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態における前記マスク開口部と前記位置参照マークとの水平方向の相対位置ずれを示す位置ずれデータを取得する認識処理部と、
前記基板位置決め部、第1の撮像部、第2の撮像部および認識処理部を制御することにより前記位置ずれデータを求めて、前記基板位置決め部による上昇動作に起因して生じる水平方向の位置決め誤差を補正するためのキャリブレーション処理を実行させるキャリブレーション制御部とを備えたことを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記第2の撮像部は、前記スキージを水平方向に移動させるスキージ移動機構によって水平移動することを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
上流側から搬入された基板をクランプ部材によって水平方向からクランプした状態で相対的に水平方向および上下方向に移動させることにより所定位置に位置決めする基板位置決め部と、ペーストが供給されたマスクプレート上でスキージを摺動させることにより前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷部とを備えたスクリーン印刷装置において、パターン孔が設けられた前記マスクプレートに前記基板を当接させてペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
上下2方向の撮像が可能に設けられ、撮像部移動機構によって移動することにより前記クランプ部材の上面とマスクプレートの下面との間に進出して、前記クランプ部材に形成された位置参照用マークおよび前記マスクプレートにおいて前記位置参照用マークと対応した位置に形成されたマスク開口部を撮像する第1の撮像部によって、前記位置参照用マークおよび前記マスク開口部を撮像する第1の撮像工程と、
前記第1の撮像工程における撮像結果を認識処理することにより前記基板位置決め部を前記マスクプレートに対して水平方向に位置合わせするための位置補正データを取得する第1の認識工程と、
前記位置補正データに基づいて前記基板位置決め部を制御することにより前記クランプ部材を上昇させて前記マスクプレートの下面に当接させるクランプ部材上昇行程と、
前記クランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態において、前記マスクプレートの上面側に設けられた第2の撮像部によって、前記マスク開口部を介して前記位置参照マークを撮像する第2の撮像工程と、
前記第2の撮像工程における撮像結果を認識処理することにより、前記基板位置決め部が上昇して前記クランプ部材がマスクプレートの下面に当接した状態における前記マスク開口部と前記位置参照マークとの水平方向の相対位置ずれを示す位置ずれデータを取得する第2の認識工程と、
前記位置ずれデータを前記基板位置決め部による上昇動作に起因して生じる水平方向の位置決め誤差として補正するためのキャリブレーション処理を実行するキャリブレーション処理工程とを含むことを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項4】
前記第2の撮像工程において、前記スキージを水平方向に移動させるスキージ移動機構によって前記第2撮像部を水平移動させることを特徴とする請求項3記載のスクリーン印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−18122(P2013−18122A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150656(P2011−150656)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】