説明

スタビライザ装置

【課題】 装置全体を小型化すると共に、車両の走行時に生じる曲げ荷重等に対する剛性を高める。
【解決手段】 ボールアンドランプ機構10の直動側ランププレート12、付勢機構15、付勢力調整機構16を筒状に形成することにより、第2のスタビライザバー3の延長部3Bをこれらの部材を通してケーシング5の奥部まで進入させる。そして、ケーシング5に対し第2のスタビライザバー3の延長部3Bを回転可能に支持するすべり軸受22と第2のアンギュラ玉軸受24とを、ケーシング5の右端と左端とに配設する構成とする。従って、スタビライザ装置1の外形寸法を小さく抑えることができる。また、各スタビライザバー2,3間に曲げ荷重が作用した場合には、すべり軸受22と第2のアンギュラ玉軸受24との離れた2点間で支持することができ、曲げ荷重に対する剛性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載され、車体のロール運動を抑制するのに好適なスタビライザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、コーナリングなどの走行状態で、車体の姿勢を安定させるためにスタビライザ装置を備えているものがある。昨今では従前から開発されている油圧のスタビライザ装置の他に、搭載性に優れた電動スタビライザ装置の開発が行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−120175号公報
【特許文献2】特開2002−205523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スタビライザ装置は、車両に搭載され、車両の走行性を向上するために使用される。このようなスタビライザ装置は、搭載のために必要となる車両のスペースを少なくすることが望ましく、小型化が望まれている。一方で、スタビライザ装置には、相対的に捩られるときに曲げ荷重等が作用するため、この荷重に耐える剛性が必要になる。
【0005】
本発明の目的は、小型化しつつ曲げ荷重等に対する剛性を高めることができるようにしたスタビライザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、第1のスタビライザバーと、第2のスタビライザバーと、該各スタビライザバーを連結してねじり剛性を調整する可変剛性部とからなり、前記可変剛性部は、前記第1のスタビライザバーに一端側が固定された筒状のケーシングと、該ケーシング内に挿入される前記第2のスタビライザバーの延長部と、前記ケーシング内の該延長部外周に設けられ、前記第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとの相対回転に応じて直線運動する直動機構と、該直動機構の他端側に位置して前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、直線運動を抑制する方向に該直動機構を付勢する付勢機構と、該付勢機構の他端側に位置して前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、該付勢機構の付勢する力を軸方向に移動して調整する付勢力調整機構と、前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、該付勢力調整機構を動作させる駆動手段と、前記直動機構の他端側に位置して前記ケーシング内に設けられ、ラジアル荷重を受承する第1のラジアル軸受およびアキシアル荷重を受承する第1のスラスト軸受と、前記直動機構を挟んで前記付勢力調整機構と反対側となる前記ケーシング内の一端側に位置して設けられ、ラジアル荷重を受承する第2のラジアル軸受およびアキシアル荷重を受承する第2のスラスト軸受とを備える構成としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スタビライザ装置を小型化することができ、また、曲げ荷重等に対する剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるスタビライザ装置が適用された車両を模式的に示す全体構成図である。
【図2】第1の実施の形態によるスタビライザ装置の構造を示す縦断面図である。
【図3】対面したランププレート間にボールを挟んだ状態を拡大して示す部分断面図である。
【図4】各スタビライザバー間の捩れ角と捩りトルクとの関係を示す特性線図である。
【図5】第2の実施の形態によるスタビライザ装置の構造を示す縦断面図である。
【図6】第3の実施の形態によるスタビライザ装置の構造を示す縦断面図である。
【図7】第4の実施の形態によるスタビライザ装置の構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態によるスタビライザ装置を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0010】
ここで、図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態を示している。図1はスタビライザ装置1を車両の前輪側と後輪側とに使用した場合の全体構成を示し、このスタビライザ装置1は、下記の構成を有することにより車両の横転防止、操縦安定性の向上、さらには乗り心地の向上を図るものである。
【0011】
即ち、車両が道路のコーナ部分等を走行するような状態で、車両にロール方向の慣性力が作用した場合に、車両の前,後に設けられたスタビライザ装置1は、後述する制御装置21からの制御信号に基づいてそれぞれ車両のロール運動を抑制するように動作し、これにより、車両の横転防止を図り、車両の操縦安定性や乗り心地を向上する。
【0012】
スタビライザ装置1は、長さ方向の中央部分が車両を構成する車体側にブッシュを介して回転可能に取付けられ、図1に示すように、両端側が左,右の車輪側にそれぞれ接続(連結)されている。そして、スタビライザ装置1は、図2に示すように、軸方向の一側に配置される第1のスタビライザバー2と、軸方向の他側に配置される第2のスタビライザバー3と、第1,第2のスタビライザバー2,3の間を連結し、スタビライザバー2,3間の捩り剛性を調整する可変剛性部4とを備えている。
【0013】
車体の左側に配設された第1のスタビライザバー2は、柔軟性をもったばね鋼からなり、車体のレイアウト等に応じて図1に示す如く所望の形状に曲げられている。第1のスタビライザバー2の基端側は、可変剛性部4を介して第2のスタビライザバー3に連結され、先端側が左車輪側に接続されている。また、第1のスタビライザバー2の基端側は、後述するケーシング5と機械的に接続(連結)されている。
【0014】
車体の右側に配設された第2のスタビライザバー3は、第1のスタビライザバー2とほぼ同様に、柔軟性をもったばね鋼からなり、図1に示す如く、第1のスタビライザバー2とほぼ対称形状をなすように曲げられている。第2のスタビライザバー3は、その基端側が可変剛性部4を介して第1のスタビライザバー2に連結され、先端側が右車輪側に接続されている。
【0015】
また、第2のスタビライザバー3の基端部は、支持部3Aとなって後述するモータケース9にすべり軸受22を介して回転可能に支持されている。さらに、第2のスタビライザバー3は、支持部3Aからケーシング5内に侵入して一側に延びた延長部3Bを有し、該延長部3Bの奥端部外周には、後述のボールアンドランプ機構10の回転側ランププレート11が一体回転するようにスプライン結合されている。このボールアンドランプ機構10は、スタビライザバー2,3間の相対回転(捩り運動)を捩り剛性をもって互いに伝達するものである。
【0016】
第1,第2のスタビライザバー2,3は、図2に示す如く、軸線O−O上に配置され、車体側に対し軸線O−Oを中心にして捩られる方向に回動自在となるように支持されている。可変剛性部4は、第1,第2のスタビライザバー2,3の間を連結して設けられ、スタビライザバー2,3の間の捩り剛性を調整するものである。このため、可変剛性部4は、後述のケーシング5、ボールアンドランプ機構10、付勢機構15、付勢力調整機構16、電動モータ19、軸受20,22,23,24等により構成されている。
【0017】
可変剛性部4の外形をなすケーシング5は、第1,第2のスタビライザバー2,3間に亘って軸方向に延びる円筒状の容器として形成されている。そして、ケーシング5は、高い剛性をもった金属材料等により形成され軸線O−Oに沿って軸方向(左,右方向)に延びた円筒状の筒体6と、該筒体6の両端側を閉塞した左,右の蓋体7,8と、後述のモータケース9とを含んで構成されている。
【0018】
ここで、筒体6の内周面には、軸方向に直線状に延びる複数本の回止め突起6A(図2中に1本のみ図示)が周方向に間隔をもって突設されている。これらの回止め突起6Aは、後述の直動側ランププレート12、プランジャ17の外周側に係合し、直動側ランププレート12とプランジャ17とがケーシング5に対して回転するのを規制しつつ、筒体6の軸方向に変位するのを許すものである。
【0019】
筒体6の軸方向一側(図2中の左側)に位置する蓋体7は、高い剛性を有する金属材料等からなり、筒体6の左側端部を閉塞するように該筒体6に固着されている。そして、蓋体7は、小径筒部7Aと大径筒部7Bとにより段付円筒状に形成され、その大径筒部7B内には、後述する第2のアンギュラ玉軸受24が設けられている。
【0020】
また、蓋体7の小径筒部7Aには、第1のスタビライザバー2の基端部が例えばスプライン結合等の回止め手段を用いて一体的に接続されている。これにより、ケーシング5は、第2のスタビライザバー3に対して相対回転するように、第1のスタビライザバー2と一体的に回動することができる。
【0021】
一方、筒体6の軸方向他側(図2中の右側)に位置する蓋体8は、高い剛性を有する金属材料等により段付円筒状に形成され、筒体6の右側端部を閉塞している。そして、蓋体8の内周側には、後述する第1のアンギュラ玉軸受23が設けられ、外周側には、後述のモータケース9が取付けられている。
【0022】
この場合、可変剛性部4のケーシング5は、ボールアンドランプ機構10や付勢機構15等を内部に収納するだけではなく、ケーシング5自体が捩り力、即ち捩りトルクを伝えるための伝達部材としても機能している。これにより、スタビライザ装置1をシンプルな構造にすることができ、可変剛性部4のケーシング5は、構造の簡素化を図る上でも有効な構成を備えている。
【0023】
ケーシング5の一部を構成するモータケース9は、図2に示すように筒体6の右側に蓋体8を介して設けられ、該蓋体8に一体化するように固着されている。モータケース9は、軸方向に延びる大径筒部9Aと、該大径筒部9Aの端部を縮径して形成された中径筒部9Bと、該中径筒部9Bの端部を縮径して形成された小径筒部9Cとにより段付筒状に形成され、大径筒部9A、中径筒部9Bの内部に後述の電動モータ19を収容している。
【0024】
ここで、モータケース9の大径筒部9Aは、その開口側が蓋体8の外周側に一体的に固着されている。中径筒部9Bの内周側には、後述する電動モータ19の玉軸受20が設けられている。そして、小径筒部9Cは、第2のアンギュラ玉軸受24から軸方向に最も離間した位置に設けられ、後述するすべり軸受22を介して第2のスタビライザバー3を回転可能に支持している。
【0025】
直動機構としてのボールアンドランプ機構10は、筒体6の軸方向一側となる左側寄りに位置してケーシング5内に収容されている。ボールアンドランプ機構10は、軸方向一側に位置してケーシング5と相対回転可能な回転側ランププレート11と、該回転側ランププレート11の軸方向他側に対向して筒体6内に設けられ、ケーシング5に対し回転方向に固定された直動側ランププレート12と、各ランププレート11,12間で相対的に転動するように移動可能に設けられた剛体からなるボール13とにより大略構成されている。なお、ボール13として球状体のものを図示しているが、各ランププレート11,12間で転動するものであれば、円錐ころなど他のものでもよい。
【0026】
ここで、ボールアンドランプ機構10は、第1のスタビライザバー2が接続(連結)されたケーシング5と第2のスタビライザバー3との相対回転運動に応じて軸線O−Oに沿った軸方向(図2中の矢示A,B方向)に直線運動するものである。そして、ボールアンドランプ機構10は、後述するランプ溝11B,12Cの形状に従ってトルクの伝達係数が調整され、これによりスタビライザ装置1は、その捩り剛性が調整されるものである。
【0027】
即ち、ボールアンドランプ機構10は、第2のスタビライザバー3とケーシング5とが相対回転したときの角度によって、直動側ランププレート12の軸方向のストロークを変化させることができる。その際、ランプ溝11B,12Cの形状により相対回転角度に対するストローク量を調整することができる。また、直動側ランププレート12のストローク量により付勢機構15の反力が決まり、それが可変剛性部4の捩りトルクとなる。その際、ランプ溝のリード角の設定によりトルクを調整することができる。
【0028】
回転側ランププレート11の内周側には、軸方向に延びる小径な取付筒部11Aが形成され、回転側ランププレート11は、取付筒部11Aが後述する第2のアンギュラ玉軸受24を介してケーシング5の蓋体7内に回転自在に支持されている。また、取付筒部11A内には、第2のスタビライザバー3の基端側から延びてケーシング5内に進入してなる延長部3Bがスプライン結合等の回止め手段を用いて連結されている。そして、回転側ランププレート11は、ボルト14等を用いて延長部3Bに抜止め状態で固定されている。
【0029】
直動側ランププレート12は、その外周側から軸方向に延びる大径な案内筒部12Aを有している。そして、案内筒部12Aは、後述する付勢機構15の軸方向一側部分を径方向外側から取囲んで外側から保護すると共に、付勢機構15からの付勢力(推力)が直動側ランププレート12に安定して作用するように該付勢機構15を案内するものである。
【0030】
また、案内筒部12Aの外周面には、筒体6の内周面の各回止め突起6Aに係合する複数の係合溝12B(図2中に1個のみ図示)が周方向に間隔をもって設けられている。そして、回止め突起6Aと係合溝12Bとは、直動側ランププレート12がケーシング5に対して相対回転するのを規制し、筒体6の軸方向に相対変位(直動)するのを許すものである。
【0031】
回転側ランププレート11と直動側ランププレート12には、後述の付勢機構15による推力が作用しており、この推力によってボール13は、回転側ランププレート11と直動側ランププレート12にそれぞれ形成されたランプ溝11B,12Cに押付けられる。そして、ボールアンドランプ機構10は、前記推力とランプ溝11B,12Cの形状とに基づきトルクを伝達する。
【0032】
回転側ランププレート11の右端面(表面)には、ランプ溝11Bが円周方向に延びて複数個(例えば3個)設けられている。ここで、各ランプ溝11Bは、例えば図3に示すように円弧状に湾曲して形成されている。そして、各ランプ溝11Bは、長さ方向の中央部が最深部となり、最深部から両端側に向けて所望の曲率で浅くなる円弧状溝として形成されている。
【0033】
また、回転側ランププレート11に対面する直動側ランププレート12の左端面(表面)には、ランプ溝12Cが3個設けられている。この3個のランプ溝12Cは、ランプ溝11Bとほぼ同様に、円弧状に湾曲して形成され、長さ方向の中央部が最深部となり、この最深部から両端側に向けて浅くなる円弧状溝として形成されている。
【0034】
各ランプ溝11B,12Cは、その溝形状(湾曲形状)に従って車両の乗り心地を調整することができる。即ち、回転側ランププレート11と直動側ランププレート12との間の捩れ角が小さい範囲では、後述する付勢機構15の付勢力を小さくし、車両の乗り心地に影響を与えないことが望まれ、捩れ角が大きい範囲では付勢機構15の付勢力を大きくし旋回時のロールを抑えることが望まれている。
【0035】
このような要求を実現するため、回転側ランププレート11と直動側ランププレート12との間の捩れ角が小さい範囲では、捩りトルクがほとんど発生しないよう曲率半径が大きい円弧状とし、捩れ角が大きい範囲に入ったら急激にトルクが立ち上がるように曲率半径を小さくするといった非線形な特性を溝の形状により調整することができる。また、曲線と直線を組みあわせる等、所望の特性に合わせてランプ溝11B,12Cの溝形状、プロフィールを決めればよい。
【0036】
また、直動側ランププレート12の中心位置には、軸方向の貫通穴12Dが設けられている。貫通穴12Dは、第2のスタビライザバー3の延長部3Bよりも大きな穴として形成され、その内周側には、後述のプランジャ17が挿入可能となっている。そして、プランジャ17が図2中の矢示A方向へと軸方向に相対移動するときには、貫通穴12D内にプランジャ17の先端側が進入し、逆に矢示B方向へと軸方向に相対移動するときには、プランジャ17の先端側が貫通穴12D内から抜出すように後退する。このように構成したので、付勢機構15として用いている皿ばねの中心孔を常にプランジャ17の外径で拘束することができ、皿ばねが径方向に位置ずれするのを防止できるから、付勢機構15の付勢力を安定させることができる。
【0037】
回転側ランププレート11と直動側ランププレート12とに挟まれた3個のボール13は、各ランプ溝11B,12C間に収められている。また、各ボール13は、各ランプ溝11B,12C間に収められた状態で第1,第2のランププレート11,12が互いに当接したり、干渉したりしないような直径寸法をもった金属球等により形成されている。
【0038】
そして、このように構成された直動機構としてのボールアンドランプ機構10は、後述する付勢機構15の付勢力を用いて回転側ランププレート11と直動側ランププレート12とを互いに接近する方向に押付けることにより、通常はボール13が両者のランプ溝11B,12Cの最深部に配置される。これによって、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とは、付勢機構15の付勢力で常に初期角度(車両が左,右方向で傾斜してない角度)になるように付勢される。
【0039】
一方、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3(ケーシング5)とが軸線O−Oを中心にして相対回転した場合には、ランプ溝11Bとランプ溝12Cとが周方向で相対的に位置ずれするから、各ボール13は、各ランプ溝11B,12Cの中央部から端部側に移動する。これにより、各ランププレート11,12は、各ランプ溝11B,12Cの傾斜に従って互いに軸方向に離間する方向に変位する。このため、ランプ溝12Cをランプ溝11Bに向け押付けている付勢機構15の付勢力は大きくなり、このときの捩り剛性を大きくすることができる。
【0040】
直動側ランププレート12の右側に位置して筒体6内に付勢機構15が設けられている。この付勢機構15は、ボールアンドランプ機構10の他端側となる軸方向の右側に位置して第2のスタビライザバー3の延長部3B外周に設けられている。付勢機構15は、直動側ランププレート12の直線運動を抑制する方向に該直動側ランププレート12を付勢するもので、回転側ランププレート11に向けて直動側ランププレート12を押付ける押付力を発生する弾性部材により構成されている。
【0041】
即ち、付勢機構15を構成する弾性部材には、図2に示すように、複数枚(例えば7枚)の皿ばねを互い違いに重ね合わせて配置したものが用いられている。皿ばねを連ねてなる付勢機構15は、その一端側が直動側ランププレート12に当接し、他端側が後述のプランジャ17に当接するように配置されている。そして、付勢機構15は、ボールアンドランプ機構10の直動側ランププレート12に対し矢示A方向の付勢力(推力)を与えるものである。
【0042】
付勢機構15の付勢力を調整する付勢力調整機構16は、付勢機構15の右側に位置してケーシング5内に設けられている。付勢力調整機構16は、第2のスタビライザバー3の延長部3B外周に設けられている。また、付勢力調整機構16は、例えば付勢機構15の伸縮方向に任意の大きさのセット荷重を付与するものである。ここで、付勢力調整機構16は、筒体6内を軸方向に移動可能なプランジャ17、ねじ部材18等により構成されている。
【0043】
プランジャ17は、図2に示すように段付筒状に形成され、軸方向の中間位置には、径方向外向きに突出する大径な円環状のばね受部17Aが形成されている。そして、プランジャ17は、ばね受部17Aが直動側ランププレート12との間で付勢機構15をプリセット状態(セット荷重を付与した状態)で挟むように、直動側ランププレート12に軸方向で対向して設けられている。
【0044】
プランジャ17のばね受部17Aには、その外周側に周方向に互いに離間して複数の係合溝17B(図2中に1個のみ図示)が形成され、該各係合溝17Bは、筒体6の各回止め突起6Aに係合している。これにより、プランジャ17は、ケーシング5に対し回転が規制された状態で軸方向に移動可能に連結されている。また、ばね受部17Aの内径位置には、直動側ランププレート12に向けて延びた円筒状のばね保持筒17Cが設けられている。ばね保持筒17Cは、付勢機構15をなす複数枚の皿ばねを内径側から保持することにより、同軸位置に整列させている。
【0045】
さらに、ばね受部17Aの内径位置には、直動側ランププレート12と反対側となる電動モータ19に向けて延びたねじ筒17Dが設けられている。このねじ筒17Dの外周側には、例えば台形ねじからなる雄ねじ17Eが形成されている。そして、プランジャ17の雄ねじ17Eは、後述するねじ部材18の雌ねじ18Cと共に、後述の電動モータ19による回転運動をプランジャ17の直線運動に変換するねじ機構を構成している。
【0046】
プランジャ17のねじ筒17Dの外径側を軸方向に延びるねじ部材18は、プランジャ17側に位置する厚肉筒18Aと、電動モータ19側に位置して該厚肉筒18Aよりも小径な薄肉筒18Bとにより段付筒状に形成されている。薄肉筒18Bは、後述する電動モータ19の中空回転軸19Cに回止め状態で連結され、この中空回転軸19Cと一体に回転する。また、厚肉筒18Aの内径側には、プランジャ17の雄ねじ17Eに螺合する台形ねじからなる雌ねじ18Cが形成され、該雌ねじ18Cは、雄ねじ17Eと一緒にプランジャ17を軸方向に変位させるねじ機構を構成している。
【0047】
ここで、ねじ部材18は、薄肉筒18Bがケーシング5の蓋体8内に後述する第1のアンギュラ玉軸受23を介して回転可能に支持されている。そして、ねじ部材18に作用する軸方向のアキシアル荷重は、厚肉筒18Aから第1のアンギュラ玉軸受23を介して蓋体8により受承され、電動モータ19にアキシアル荷重が作用するのを抑える構成となっている。
【0048】
また、付勢力調整機構16は、プランジャ17とねじ部材18とを、台形ねじからなる雄ねじ17Eと雌ねじ18Cとによって螺合しているため、電動モータ19でねじ部材18を回転駆動しない限りは、図2中の矢示A,B方向のいずれにも変位することはなく、付勢機構15の付勢力によってプランジャ17が軸方向に動くこともない。
【0049】
このように構成された付勢力調整機構16は、電動モータ19によってねじ部材18を正,逆方向に回転駆動し、プランジャ17のばね受部17Aを直動側ランププレート12に接近させる図2中の矢示A方向と、該プレート12から離間させる矢示B方向とに直線的に変位させる。これにより、付勢機構15は、直動側ランププレート12とプランジャ17のばね受部17Aとの間で軸方向に撓み変形し、両者の間隔(離間寸法)に応じてボールアンドランプ機構10に対する付勢力、即ちばね荷重が可変に調整される。
【0050】
従って、付勢力調整機構16は、電動モータ19によりねじ部材18を回転駆動してプランジャ17を軸方向に変位させ、ボールアンドランプ機構10に対する付勢機構15の付勢力を調整する。これにより、スタビライザ装置1は、例えば図4中にハッチングを付して示すように、各スタビライザバー2,3間の捩れ角に対する捩り剛性としての捩りトルクを、車両の直進走行時、コーナリング走行時等の走行状態に応じてハッチングの範囲内でソフトからハードまで可変に調整するものである。
【0051】
付勢力調整機構16を動作させる駆動手段としての電動モータ19は、ケーシング5の一部をなすモータケース9内に位置し、第2のスタビライザバー3の延長部3B外周に設けられている。この電動モータ19は、モータケース9の内面に固着された固定子19Aと、該固定子19Aの内周側に設けられた回転子19Bと、該回転子19Bの中心側を軸方向に延びた円筒状の中空回転軸19Cとにより大略構成されている。
【0052】
そして、中空回転軸19Cの一端側は、ねじ部材18の薄肉筒18B内に一体回転するように連結され、第1のアンギュラ玉軸受23を介してケーシング5の蓋体8に回転可能に支持されている。一方、他端側は、ラジアル軸受としての玉軸受20を介してモータケース9の中径筒部9Bに回転可能に支持されている。
【0053】
また、電動モータ19の中空回転軸19Cは、第2のスタビライザバー3の延長部3Bよりも大きな円筒状に形成することにより、該延長部3Bを電動モータ19を貫いて蓋体7側まで延長することができる。電動モータ19は、制御装置21に電気的に接続され、該制御装置21によって回転数等が制御されている。
【0054】
次に、第1のスタビライザバー2が取付けられたケーシング5内に第2のスタビライザバー3(延長部3B)を回転可能に支持するための構成について述べる。この場合、ケーシング5と第2のスタビライザバー3との間の径方向に作用するラジアル荷重は、すべり軸受22と第2のアンギュラ玉軸受24とにより受承し、付勢機構15の反力によって軸方向に作用するアキシアル荷重は、第1のアンギュラ玉軸受23と第2のアンギュラ玉軸受24とにより受承している。このときに、すべり軸受22と第2のアンギュラ玉軸受24とは、ケーシング5の両端位置に配置しているから、曲げ荷重に対する剛性を高めることができる。
【0055】
ケーシング5内のボールアンドランプ機構10の右端側に設けられた円筒状のすべり軸受22は、第1のラジアル軸受を構成するもので、モータケース9の小径筒部9Cの内周側に挿嵌されている。これにより、すべり軸受22は、第2のアンギュラ玉軸受24に対しケーシング5内で最も離間した位置に配設されている。そして、すべり軸受22は、その内周面で第2のスタビライザバー3の支持部3Aを回転可能に支持することにより、各部材が回転するときのラジアル荷重を受承することができる。
【0056】
また、ケーシング5内のボールアンドランプ機構10の右端側には、第1のスラスト軸受を構成する第1のアンギュラ玉軸受23が設けられている。アンギュラ玉軸受23は、右側の蓋体8内に挿嵌され、内周側では、ねじ部材18の薄肉筒18Bと電動モータ19の中空回転軸19Cとを回転可能に支持している。ここで、第1のアンギュラ玉軸受23は、アキシアル方向(軸方向)で蓋体8とねじ部材18の厚肉筒18A端面との間に配置されることにより、付勢機構15からの反力(アキシアル荷重)を受承することができる。
【0057】
ボールアンドランプ機構10を挟んで付勢力調整機構16と反対側、即ち、ボールアンドランプ機構10の左側に第2のアンギュラ玉軸受24が設けられている。このアンギュラ玉軸受24は、左側の蓋体7の大径筒部7B内に挿嵌され、内周側では、回転側ランププレート11の取付筒部11Aと第2のスタビライザバー3の延長部3Bの奥端部とを回転可能に支持している。
【0058】
ここで、第2のアンギュラ玉軸受24は、回転側ランププレート11を介して延長部3Bの奥端部を回転可能に支持することにより、各部材の回転によるラジアル荷重を受承することができる。しかも、第2のアンギュラ玉軸受24は、アキシアル方向(軸方向)で蓋体7の大径筒部7Bと回転側ランププレート11との間に配置されることにより、付勢機構15によるアキシアル荷重を受承することができる。
【0059】
上述したように、単一の第2のアンギュラ玉軸受24は、ラジアル荷重を受承する第2のラジアル軸受としての機能と、アキシアル荷重を受承する第2のスラスト軸受としての機能との両方を兼ね備えている。これにより、軸受を設けるためのスペースを小さくすることができる。また、第2のアンギュラ玉軸受24は、すべり軸受22に対しケーシング5内で最も離間した左端位置に配設しているから、大きく離間した2点で曲げ荷重を効果的に支持することができる。
【0060】
第1の実施の形態によるスタビライザ装置1は、上述のように構成されるもので、次に、その作動について説明する。
【0061】
まず、車両が直進している場合には、車体がロールすることはほとんどない。このために、スタビライザ装置1に求められる捩り剛性は小さく、各スタビライザバー2,3は比較的容易に独立して回動することができる。これにより、例えば直進走行時に一方の車輪が凹部に落ちることがあっても、この一方の車輪だけをストロークさせることができ、安定した走行姿勢を得ることができる。
【0062】
即ち、ステアリング角、アクセル開度、ブレーキの操作状況、横加速度等の情報を基にして走行状況を判断し、直進走行していると判断した場合には、電動モータ19によってねじ部材18を任意の方向に回転させ、図2に示すように、直動側ランププレート12とプランジャ17のばね受部17Aとを例えば付勢機構15によるアキシアル荷重が発生する範囲内で離間させる。これにより、付勢機構15に付加される初期荷重が小さくなるから、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とを相対回転させるのに必要な捩り力となる捩りトルクも小さくなる。従って、スタビライザ装置1の捩り剛性を小さくできるから、左,右の車輪は、路面の凹凸に合わせて独立してストロークすることができ、良好な乗り心地を得ることができる。
【0063】
次に、ステアリングを操作して道路のコーナ部分等を走行する場合には、外側へのロールを抑える必要がある。そこで、スタビライザ装置1は、電動モータ19によってねじ部材18を先程とは逆方向に回転させ、直動側ランププレート12とプランジャ17のばね受部17Aとの離間寸法を小さくして接近させる。これにより、付勢機構15に付加される初期荷重が大きくなるから、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とを相対回転させるのに必要な捩り力も大きくなる。従って、スタビライザ装置1は、各スタビライザバー2,3間の捩り剛性を高めることで、車体が外側にロールするのを抑えることができ、コーナリング時の走行姿勢を安定させることができる。
【0064】
このコーナリング時の制御では、左コーナを走行する場合、右コーナを走行する場合のいずれでも、付勢力調整機構16によって付勢機構15の初期荷重を大きくすることになる。これにより、山道を走行する場合、スラローム走行を行う場合のように、左コーナと右コーナとが交互に続く場合でも、各スタビライザバー2,3間の捩り剛性を一度高めた後には、速度やコーナの大きさに応じて微調整するだけでよく、電動モータ19の頻繁な駆動を防止することができる。
【0065】
また、スタビライザ装置1に対して片持ち状態で取付けられた各スタビライザバー2,3は、走行時等に回動するときに、それぞれの基端側が軸線O−Oから外れて回転することがあり、ケーシング5と第2のスタビライザバー3の延長部3Bとの間に無理な曲げ荷重が作用することがある。
【0066】
然るに、第1の実施の形態によれば、ボールアンドランプ機構10の直動側ランププレート12、付勢機構15、付勢力調整機構16のプランジャ17、電動モータ19の中空回転軸19Cを円筒状(または円環状)に形成しているから、ケーシング5に対し第2のスタビライザバー3の延長部3Bを奥部まで進入させることができる。これにより、ケーシング5に対し第2のスタビライザバー3の延長部3Bを回転可能に支持するすべり軸受22と第2のアンギュラ玉軸受24とは、ケーシング5の右端と左端とに配設することができる。
【0067】
従って、第1のスタビライザバー2(ケーシング5)と第2のスタビライザバー3とを曲げようとする曲げ荷重が作用した場合には、ケーシング5の右端に位置するすべり軸受22と左端に位置する第2のアンギュラ玉軸受24とにより、大きな間隔寸法をもった2点で支持することができる。
【0068】
この結果、スタビライザ装置1は、直動側ランププレート12、付勢機構15、付勢力調整機構16のプランジャ17、電動モータ19の中空回転軸19Cを円筒状に形成した上で、これらの中心位置に第2のスタビライザバー3の延長部3Bを進入させているから、スタビライザ装置1の外形寸法を小さく抑えることができる。これにより、スタビライザ装置1を小型化することができ、車体に対する取付けの自由度を高めることができる。
【0069】
しかも、すべり軸受22と第2のアンギュラ玉軸受24との2点間の間隔寸法を大きくとることにより、曲げ荷重が作用したときの支点と作用点との距離を長くすることができる。これにより、曲げ荷重に対するスタビライザ装置1の剛性を高めることができ、信頼性や耐久性を向上することができる。また、回転側ランププレート11と直動側ランププレート12との相対的な傾きを抑制することができ、可変剛性部4によるトルク制御を安定的に行うことができる。
【0070】
また、第2のアンギュラ玉軸受24は、ラジアル荷重を受承する第2のラジアル軸受としての機能と、アキシアル荷重を受承する第2のスラスト軸受としての機能とを備えているから、軸受の個数を削減して組立作業性を向上でき、またスタビライザ装置1の小型化、軽量化等を図ることができる。
【0071】
また、付勢力調整機構16と電動モータ19との間に第1のスラスト軸受をなす第1のアンギュラ玉軸受23を配設しているから、付勢機構15の反力(アキシアル荷重)は第1のアンギュラ玉軸受23を介して蓋体8で受承することができる。これにより、モータ19にアキシアル荷重が作用することを防止できる。よって、モータケース9へのアキシアル荷重は作用しないので、その分モータケース8の板厚を薄くすることができる。但し、曲げ荷重は作用するため、その分の強度は必要である。
【0072】
次に、図5は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、第1のスラスト軸受としてスラスト玉軸受を用い、第2のラジアル軸受および第2のスラスト軸受として2個のアンギュラ玉軸受を背面組合せで用いる構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0073】
ここで、第2の実施の形態によるスタビライザ装置31の可変剛性部32は、前述した第1の実施の形態による可変剛性部4とほぼ同様に、後述のケーシング33、第1のスラスト玉軸受36、第2のアンギュラ玉軸受37,38と、ボールアンドランプ機構10、付勢機構15、付勢力調整機構16、すべり軸受22等により大略構成されている。
【0074】
可変剛性部32のケーシング33は、第1の実施の形態によるケーシング5とほぼ同様に、筒体6、蓋体34,35およびモータケース9を含んで構成されている。しかし、この場合のケーシング33は、筒体6の左側(軸方向の他側)に設けられた蓋体34と、右側(軸方向の一側)に設けられた蓋体35とが異なる形状に形成されている。これは、後述する第2のアンギュラ玉軸受37,38と第1のスラスト玉軸受36を配設するためである。
【0075】
即ち、左側の蓋体34は、小径筒部34A、中径筒部34B、大径筒部34Cにより段付筒状に形成されている。大径筒部34Cは、2個の第2のアンギュラ玉軸受37,38を背面組合せで配設するために、軸方向に長尺に形成されている。また、右側の蓋体35は、第1のスラスト玉軸受36を配設できる形状となっている。
【0076】
ケーシング33内のボールアンドランプ機構10の右端側に設けられた第1のスラスト軸受を構成する第1のスラスト玉軸受36は、ねじ部材18、電動モータ19の中空回転軸19Cを回転可能に支持するラジアル軸受としても機能している。そして、第1のスラスト玉軸受36は、アキシアル方向(軸方向)で蓋体35とねじ部材18の厚肉筒18A端面との間に配置されることにより、付勢機構15からの反力(アキシアル荷重)を受承することができる。
【0077】
ボールアンドランプ機構10を挟んで付勢力調整機構16と反対側、即ち、ボールアンドランプ機構10の左側には、第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受の両方の機能をもった2個の第2のアンギュラ玉軸受37,38が設けられている。この2個のアンギュラ玉軸受37,38は、左側の蓋体34の大径筒部34C内に背面組合せで挿嵌され、それぞれの内周側では、回転側ランププレート11の取付筒部11Aと第2のスタビライザバー3の延長部3Bの奥端部とを回転可能に支持している。
【0078】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受の両方の機能をもった2個の第2のアンギュラ玉軸受37,38を背面組合せで設けているから、ケーシング33に対して第2のスタビライザバー3の延長部3Bの奥端部を強固に支持することができ、曲げ荷重等に対する剛性をさらに高めることができる。
【0079】
次に、図6は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、第2のスタビライザバーの延長部に回止め突起を設け、この回止め突起を直動側ランププレートの内径側とプランジャの内径側とに係合させて回止めする構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0080】
ここで、第3の実施の形態によるスタビライザ装置41の第2のスタビライザバー42は、後述のケーシング44内に進入した部位が延長部42Aとなり、該延長部42Aの奥端部は縮径軸部42Bとなっている。また、延長部42Aの奥部側の外周面には、軸方向に直線状に延びる複数本の回止め突起42C(1本のみ図示)が周方向に間隔をもって突設されている。これらの回止め突起42Cは、後述の回転・直動側ランププレート51、プランジャ55の内周側に係合することにより、回転・直動側ランププレート51とプランジャ55とを延長部42Aと一緒に回転させつつ、該延長部42Aに対して軸方向に変位するのを許すものである。
【0081】
スタビライザ装置41の可変剛性部43は、前述した第1の実施の形態による可変剛性部4とほぼ同様に、後述のケーシング44、ボールアンドランプ機構49、付勢機構53、付勢力調整機構54、電動モータ57、軸受58,59,60,61等により構成されている。
【0082】
可変剛性部43のケーシング44は、第1の実施の形態によるケーシング5とほぼ同様に、筒体45、蓋体46,47およびモータケース48を含んで構成されている。しかし、第3の実施の形態によるケーシング44は、筒体45内の左側位置に後述するボールアンドランプ機構49の固定側ランププレート50が一体的に設けられている点で、第1の実施の形態によるケーシング5と異なる構成となっている。左側の蓋体46は、小径筒部46Aと大径筒部46Bにより段付筒状に形成され、大径筒部46Bの内周側には第2のアンギュラ玉軸受61が配設されている。
【0083】
直動機構としてのボールアンドランプ機構49は、筒体45の左側寄りに位置してケーシング44内に収容されている。ボールアンドランプ機構49は、軸方向一側に位置してケーシング44の筒体45に一体的に設けられた固定側ランププレート50と、該固定側ランププレート50の右側に対面して設けられ、第2のスタビライザバー42の延長部42Aと一緒に回転し、かつ軸方向に移動可能となった回転・直動側ランププレート51と、各ランププレート50,51間の剛体からなるボール52とにより大略構成されている。
【0084】
また、固定側ランププレート50,回転・直動側ランププレート51の対向面には、それぞれランプ溝50A,51Aが形成されている。回転・直動側ランププレート51の内周面には、第2のスタビライザバー42の各回止め突起42Cに係合する複数の係合溝51B(1個のみ図示)が設けられている。そして、回止め突起42Cと係合溝51Bとは、回転・直動側ランププレート51を第2のスタビライザバー42の延長部42Aと一体的に回転させつつ、延長部42Aと軸方向に相対変位(直動)するのを許すものである。
【0085】
筒体45内には、回転・直動側ランププレート51の右側に位置して付勢機構53が設けられている。この付勢機構53は、第1の実施の形態による付勢機構15とほぼ同様に、第2のスタビライザバー42の延長部42A外周に設けられた複数枚の皿ばねにより形成されている。
【0086】
付勢機構53の付勢力を調整する付勢力調整機構54は、付勢機構53の右側に位置してケーシング44内に設けられている。付勢力調整機構54は、第2のスタビライザバー42の延長部42A外周に設けられている。また、付勢力調整機構54は、筒体45内を軸方向に移動可能なプランジャ55、ねじ部材56等により構成されている。
【0087】
付勢力調整機構54のプランジャ55は、段付筒状に形成され、軸方向の中間位置には、径方向外向きに突出する大径な円環状のばね受部55Aが形成されている。プランジャ55のばね受部55Aには、その内周側に複数の係合溝55B(1個のみ図示)が形成され、該各係合溝55Bは、第2のスタビライザバー42の延長部42Aの外周側に設けられた回止め突起42Cに係合している。これにより、プランジャ55は、ケーシング44に対し延長部42Aと一緒に相対回転可能で、延長部42Aに対し軸方向に移動可能に連結されている。
【0088】
ばね受部55Aの外径位置には、回転・直動側ランププレート51に向けて延びることにより、付勢機構53をなす複数枚の皿ばねを外径側から保持する円筒状のばね保持筒55Cが設けられている。また、ばね受部55Aの径方向の中間位置には、後述の電動モータ57に向けてねじ筒55Dが延び、該ねじ筒55Dの内周側には、後述するねじ部材56の雄ねじ56Bに螺合する台形ねじからなる雌ねじ55Eが形成されている。
【0089】
付勢力調整機構54のねじ部材56は、延長部42Aの外周側を軸方向に延びた円筒体として形成され、その軸方向の中間位置には拡径して鍔部56Aが形成されている。ねじ部材56の右端側には、後述する電動モータ57の中空回転軸57Cが回止め状態で連結されている。また、ねじ部材56のプランジャ55側の外周面には、プランジャ55の雌ねじ55Eに螺合する台形ねじからなる雄ねじ56Bが形成され、該雄ねじ56Bは、雌ねじ55Eと一緒にプランジャ55を軸方向に変位させるねじ機構を構成している。
【0090】
ここで、ねじ部材56は、鍔部56Aよりも右側部分がケーシング44の蓋体47内に後述する第1のアンギュラ玉軸受60を介して回転可能に支持されている。そして、ねじ部材56に作用する軸方向のアキシアル荷重は、鍔部56Aから第1のアンギュラ玉軸受60を介して蓋体47により受承され、電動モータ57にアキシアル荷重が作用するのを抑える構成となっている。なお、本実施の形態では第1のアンギュラ玉軸受60を用いているが、アキシアル荷重のみを受承すれば足りるので、アンギュラ玉軸受に換えてスラスト軸受としてもよい。
【0091】
このように構成された付勢力調整機構54は、電動モータ19によってねじ部材56を正,逆方向に回転駆動したときに、プランジャ55のばね受部55Aを回転・直動側ランププレート51に接近させる方向と、該プレート51から離間させる方向とに直線的に変位することができる。これにより、付勢機構53は、回転・直動側ランププレート51とプランジャ55のばね受部55Aとの間で軸方向に撓み変形し、両者の間隔(離間寸法)に応じてボールアンドランプ機構49に対する付勢力、即ちばね荷重が可変に調整される。
【0092】
付勢力調整機構54を動作させる駆動手段としての電動モータ57は、モータケース48内に位置し、第2のスタビライザバー42の延長部42A外周に設けられている。この電動モータ57は、第1の実施の形態による電動モータ19とほぼ同様に、固定子57A、回転子57B、中空回転軸57Cにより大略構成されている。
【0093】
そして、中空回転軸57Cの一端側は、ねじ部材56、第1のアンギュラ玉軸受60を介してケーシング44の蓋体47に回転可能に支持されている。一方、他端側は、ラジアル軸受としての玉軸受58を介してモータケース48内に回転可能に支持されている。
【0094】
次に、第1のスタビライザバー2が取付けられたケーシング44内に第2のスタビライザバー42(延長部42A)を回転可能に支持するための構成について述べる。この場合、ケーシング44と第2のスタビライザバー42との間の径方向に作用するラジアル荷重は、すべり軸受59、回転・直動側ランププレート51、ボール52、固定側ランププレート50、蓋体46により受承し、付勢機構15の反力によって軸方向に作用するアキシアル荷重は、第1のアンギュラ玉軸受60と第2のアンギュラ玉軸受61とにより受承している。このときに、すべり軸受59と第2のアンギュラ玉軸受61とは、ケーシング5の両端位置に配置しているから、2点間での支持構造により曲げ荷重に対する剛性を高めることができる。なお、本実施の形態では第2のアンギュラ玉軸受61を用いて構成しているが、主にラジアル荷重を受承するものであるので、曲げ荷重を回転・直動側ランププレート51、ボール52、固定側ランププレート50、蓋体46で受けることができれば、深溝玉軸受を用いても良い。
【0095】
第1のラジアル軸受を構成するすべり軸受59は、ケーシング44を構成するモータケース48の内周側に挿嵌されている。これにより、すべり軸受59は、第2のアンギュラ玉軸受61に対しケーシング44内で最も離間した位置に配設されている。
【0096】
また、第1のスラスト軸受を構成する第1のアンギュラ玉軸受60は、ボールアンドランプ機構49の右端側に位置する蓋体47内に設けられている。アンギュラ玉軸受60は、ねじ部材56と電動モータ57の中空回転軸57Cとを回転可能に支持している。一方で、第1のアンギュラ玉軸受60は、アキシアル方向(軸方向)で蓋体47とねじ部材56の鍔部56Aとの間に配置されることにより、付勢機構53からの反力(アキシアル荷重)を受承することができる。
【0097】
第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受とを構成する第2のアンギュラ玉軸受61は、ボールアンドランプ機構10を挟んで付勢力調整機構16と反対側、即ち、ボールアンドランプ機構49の左側の蓋体46内に第2のアンギュラ玉軸受61が設けられている。このアンギュラ玉軸受61は、内周側で第2のスタビライザバー42の延長部42Aの奥端部をケーシング44に対し回転可能に支持している。
【0098】
ここで、第2のアンギュラ玉軸受61は、第1の実施の形態による第2のアンギュラ玉軸受24とほぼ同様に、延長部42Aの奥端部を回転可能に支持してラジアル荷重を受承している。また、第2のアンギュラ玉軸受61は、ケーシング44と第2のスタビライザバー42との間に作用するアキシアル方向(軸方向)の荷重を受承することができる。
【0099】
この第3の実施の形態においても、単一の第2のアンギュラ玉軸受61は、ラジアル荷重を受承する第2のラジアル軸受としての機能と、アキシアル荷重を受承する第2のスラスト軸受としての機能との両方を兼ね備えている。また、第2のアンギュラ玉軸受61は、すべり軸受59に対しケーシング44内で最も離間した左位置に配設しているから、大きく離間した2点で曲げ荷重を効果的に支持することができる。
【0100】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、第2のスタビライザバー42の延長部42Aの外周側に回止め突起42Cを設ける構成としているから、第1の実施の形態のように、筒体6の内周面に回止め突起6Aを加工する場合に比較し、簡単な加工により回止め突起42Cを形成することができる。
【0101】
次に、図7は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、中実な回転軸を備えた一般的な電動モータを駆動手段として用いる構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0102】
ここで、第4の実施の形態によるスタビライザ装置71の第2のスタビライザバー72は、後述のケーシング74内に進入した部位が延長部72Aとなり、該延長部72Aの外周側には、後述するボールアンドランプ機構79の回転側ランププレートが一体的に設けられている。
【0103】
スタビライザ装置71の可変剛性部73は、前述した第1の実施の形態による可変剛性部4とほぼ同様に、後述のケーシング74、ボールアンドランプ機構79、付勢機構83、付勢力調整機構84、電動モータ87、軸受88,89,90,91等により構成されている。
【0104】
可変剛性部73のケーシング74は、円筒状の筒体75と、該筒体75の一端側となる右側を覆った蓋体76と、筒体75の他端側となる左側を覆った蓋体77と、該蓋体77の左側に設けられたモータケース78とを含んで構成されている。また、筒体75の内周面には、軸方向に直線状に延びる複数本の回止め突起75A(1本のみ図示)が周方向に間隔をもって突設されている。
【0105】
これらの回止め突起75Aは、後述の直動側ランププレート81、プランジャ85の外周側に係合し、直動側ランププレート81とプランジャ85とがケーシング74に対して回転するのを規制しつつ、筒体75の軸方向に変位するのを許すものである。モータケース78には第1のスタビライザバー2の基端側が一体回転するように接続されている。一方、ケーシング74には、右側の蓋体76から第2のスタビライザバー72の延長部72Aが同軸に進入している。
【0106】
直動機構としてのボールアンドランプ機構79は、筒体75の右側寄りに位置してケーシング74内に収容されている。ボールアンドランプ機構79は、軸方向の右側に位置して第2のスタビライザバー72の延長部72Aに一体的に設けられた回転側ランププレート80と、該回転側ランププレート80の左側に対面して設けられ、軸方向に移動可能となった直動側ランププレート81と、各ランププレート80,81間に設けられた剛体からなるボール82とにより大略構成されている。
【0107】
また、回転側ランププレート80,直動側ランププレート81の対向面には、それぞれランプ溝80A,81Aが形成されている。直動側ランププレート81の外周面には、筒体75の各回止め突起75Aに係合する複数の係合溝81B(1個のみ図示)が設けられている。そして、回止め突起75Aと係合溝81Bとは、直動側ランププレート81がケーシング74に対して相対回転するのを規制し、筒体75の軸方向に相対変位(直動)するのを許すものである。
【0108】
筒体75内には、直動側ランププレート81の左側に位置して付勢機構83が設けられている。この付勢機構83は、第1の実施の形態による付勢機構15とほぼ同様に、第2のスタビライザバー72の延長部72A外周に設けられた複数枚の皿ばねにより形成されている。
【0109】
付勢機構83の付勢力を調整する付勢力調整機構84は、付勢機構53の左側に位置してケーシング74内に設けられている。付勢力調整機構84は、第2のスタビライザバー72の延長部72A外周に設けられている。また、付勢力調整機構84は、筒体75内を軸方向に移動可能なプランジャ85、ねじ部材86等により構成されている。
【0110】
付勢力調整機構84のプランジャ85は、段付筒状に形成され、軸方向の中間位置には、径方向外向きに突出する大径な円環状のばね受部85Aが形成されている。このばね受部85Aの外周側には複数の係合溝85B(1個のみ図示)が形成され、該各係合溝85Bは、筒体75の内周面に設けられた回止め突起75Aに係合している。これにより、プランジャ85は、ケーシング74に対し回転が規制された状態で軸方向に移動可能に連結されている。
【0111】
ばね受部85Aには、内径位置から直動側ランププレート81に向けて延びる円筒状のばね保持筒85Cと、径方向の中間位置から後述の電動モータ87に向けて延びるねじ筒85Dとが設けられている。また、ねじ筒85Dの内周側には、後述するねじ部材86の雄ねじ86Bに螺合する台形ねじからなる雌ねじ85Eが形成されている。
【0112】
付勢力調整機構84のねじ部材86は、延長部72Aの外周側を軸方向に延びた円筒体として形成され、その軸方向の中間位置には拡径して鍔部86Aが形成されている。ねじ部材86の左端側には、後述する電動モータ87の回転軸87Cが回止め状態で連結されている。また、ねじ部材86のプランジャ85側の外周面には、プランジャ85の雌ねじ85Eに螺合する台形ねじからなる雄ねじ86Bが形成され、該雄ねじ86Bは、雌ねじ85Eと一緒にプランジャ85を軸方向に変位させるねじ機構を構成している。
【0113】
ここで、ねじ部材86は、蓋体73内に後述する第2のアンギュラ玉軸受91を介して回転可能に支持されている。そして、ねじ部材86に作用する軸方向のアキシアル荷重は、鍔部86Aから第2のアンギュラ玉軸受91を介して蓋体73により受承することができる。また、ねじ部材86は、その内周側に第2のスタビライザバー72の延長部72Aの奥端部を後述のすべり軸受90を介して回転可能に支持している。
【0114】
このように構成された付勢力調整機構84は、電動モータ87によってねじ部材86を回転駆動することにより、プランジャ85のばね受部85Aを接近または離間させることができる。これにより、付勢力調整機構84は、直動側ランププレート81とプランジャ85との間で付勢機構83のばね荷重を可変に調整することができる。
【0115】
付勢力調整機構84を動作させる駆動手段としての電動モータ87は、第2のスタビライザバー72の延長部72Aに対向するようにモータケース78内に設けられている。この電動モータ87は、固定子87A、回転子87Bおよび中実な回転軸87Cにより大略構成されている。
【0116】
そして、回転軸87Cの一端側は、ねじ部材86に連結され、この状態で第2のアンギュラ玉軸受91を介して左側の蓋体77に回転可能に支持されている。一方、回転軸87Cの他端側は、すべり軸受88を介してモータケース78に回転可能に支持されている。
【0117】
次に、第1のスタビライザバー2が取付けられたケーシング74内に第2のスタビライザバー72(延長部72A)を回転可能に支持するための構成について述べる。この場合、ケーシング74と第2のスタビライザバー72との間の径方向に作用するラジアル荷重は、第1のアンギュラ玉軸受89とすべり軸受90と第2のアンギュラ玉軸受91とにより受承し、付勢機構83の反力によって軸方向に作用するアキシアル荷重は、第1のアンギュラ玉軸受89と第2のアンギュラ玉軸受91とにより受承している。このときに、第1のアンギュラ玉軸受89とすべり軸受90とは、ケーシング74の軸方向に大きく離間するように配置しているから、2点間での支持構造により曲げ荷重に対する剛性を高めることができる。
【0118】
ケーシング74内のボールアンドランプ機構79の右端側に設けられた第1のアンギュラ玉軸受89は、第1のラジアル軸受と第1のスラスト軸受とを構成するものである。第1のアンギュラ玉軸受89は、その内周側が第2のスタビライザバー72の延長部72Aに圧入して取付けられ、外周側は右側の蓋体76内に隙間嵌め(遊嵌)されている。そして、第1のアンギュラ玉軸受89は、ケーシング74の開口部側で延長部72Aを回転可能に支持してラジアル荷重を受承している。また、第1のアンギュラ玉軸受89は、ケーシング74と第2のスタビライザバー72との間に作用するアキシアル方向(軸方向)の荷重を受承することができる。
【0119】
付勢力調整機構84の左側に位置してねじ部材86内に設けられたすべり軸受90は、延長部72Aの奥端部を回転可能に支持する第2のラジアル軸受を形成している。また、付勢力調整機構84の左側に位置してケーシング74の蓋体77とねじ部材86との間に設けられた第2のアンギュラ玉軸受91は、第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受とを構成している。第2のアンギュラ玉軸受91は、その内周側がねじ部材86に圧入して取付けられ、外周側は左側の蓋体77内に隙間嵌め(遊嵌)されている。そして、第2のアンギュラ玉軸受91は、ケーシング74の奥部側でねじ部材86と延長部72Aとを回転可能に支持してラジアル荷重を受承している。また、第2のアンギュラ玉軸受91は、ケーシング74とねじ部材86との間に作用するアキシアル方向(軸方向)の荷重を受承することができる。
【0120】
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態では、電動モータ87を中実な回転軸87Cを備えた一般的なものとしているから、製造コストの低減、組立作業性の向上等を図ることができる。
【0121】
なお、第1の実施の形態では、1個のすべり軸受22が第1のラジアル軸受の機能を有し、1個の第1のアンギュラ玉軸受23が第1のスラスト軸受の機能を有し、1個の第2のアンギュラ玉軸受24が第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受との両方の機能を有する構成としている。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1のラジアル軸受と第1のスラスト軸受を1個の軸受によって形成し、第2のラジアル軸受を1個の軸受によって形成し、第2のスラスト軸受を1個の軸受によって形成する構成としてもよい。また、第1のラジアル軸受と第1のスラスト軸受を1個の軸受によって形成し、第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受を1個の軸受によって形成する構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0122】
また、第1の実施の形態では、第1のラジアル軸受としてすべり軸受22を適用し、第1のスラスト軸受として第1のアンギュラ玉軸受23を適用し、第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受として第2のアンギュラ玉軸受24を適用する構成としている。しかし、本発明はこれに限ることなく、例えば第1,第2のラジアル軸受として玉軸受、ころ軸受等の他の軸受を適用し、第1,第2のスラスト軸受としてアンギュラころ軸受、スラスト軸受、すべり軸受等の他の軸受を適用する構成としてもよい。また、ラジアル軸受とスラスト軸受の2つの機能をもった軸受として、ラジアル軸受とスラスト軸受とを合体させてなるコンバインド軸受を用いる構成としてもよい。これらの構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0123】
また、第1の実施の形態では、各ランププレート11,12に設けるランプ溝11B,12Cを、その長さ方向の中央部が最深部となり、両端側に向けて浅くなる円弧状溝として形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばランプ溝の形状を変更して、長さ方向の中央部が最深部となり、両端側に向けて直線状に浅くなるV字状の傾斜溝として形成してもよい。また、ランプ溝の中央部に位置する最深部を平坦な形状に形成してもよい。この場合、ランプ溝の最深部の位置でボールが転動しているときには、トルクを発生しないから、小さな凹凸が車体に伝わらないようにすることができ、乗り心地を良好にすることができる。これらの構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0124】
また、第1の実施の形態では、各ランププレート11,12にそれぞれ3本のランプ溝11B,12Cを設け、該各ランプ溝11B,12Cに3個のボール13を収容した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばランプ溝11B,12Cを2本または4本以上設け、ボール13を2個または4個以上設ける構成としてもよい。また、ボール13に代えて円錐ころ等を用いる構成としてもよい。これらの構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0125】
一方、第1の実施の形態では、直線運動を抑制する方向に直動側ランププレート12を付勢する付勢機構15を、複数枚の皿ばねにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばコイルばね等の他の弾性体を皿ばねに代えて用いる構成としてもよい。このような変更は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0126】
また、第1の実施の形態では、プランジャ17の雄ねじ17Eとねじ部材18の雌ねじ18Cとからなるねじ機構を、台形ねじによって構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばボールねじ等の他のねじ機構を用いる構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0127】
ここで、台形ねじを用いた場合とボールねじを用いた場合とを比較する。台形ねじは、逆作動性が低いため、一度剛性を高くする側に移動すると電力を消費することなく特性を保持することができるが、フェイル時にプランジャの位置が決まってしまい、所定の捩り剛性に戻すことが難しい。一方、ボールねじは機械効率が高く、逆作動性が良いのでフェイル時には捩り剛性がソフトな特性に落ち着き、前後のロール配分を狙い通りにできる反面、制御時にはプランジャ位置を保持するためモータに電流を流し続けなければならない。それぞれにメリットとデメリットがあるので、要求に応じて適宜選択するとよい。
【0128】
また、各実施の形態では、第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーを柔軟性を持つ材料で形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明おいては、実質的に柔軟性を持たない剛性の極めて高い材料で、第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーを形成することもできる。
【0129】
また、各実施の形態では、直動側ランププレートなどの回止めを回止め突起と溝とにより構成する例を示したが、転動体と該転動体の動作を拘束するケースとからなる転がり直動ガイドを用いてもよい。転がり直動ガイドを用いると、ランププレートが滑らかに動作することができ、消費電力の低減や動作の高速化を図ることができる。特に、第3の実施の形態では効果的である。
【0130】
次に、上記の実施の形態に含まれる発明について述べる。第1のラジアル軸受と第1のスラスト軸受、および/または第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受を単一の軸受で構成している。
【0131】
これにより、第1のラジアル軸受と第1のスラスト軸受、および/または第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受を少ない個数の軸受によって形成することができるから、軸受の個数を削減して組立作業性を向上でき、またスタビライザ装置の小型化、軽量化等を図ることができる。
【0132】
また、第1のスタビライザバーと、第2のスタビライザバーと、該各スタビライザバーを連結してねじり剛性を調整する可変剛性部とからなり、前記可変剛性部は、前記第1のスタビライザバーに一端側が固定された筒状のケーシングと、該ケーシング内に挿入される前記第2のスタビライザバーの延長部と、前記ケーシング内の該延長部外周に設けられ、前記第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとの相対回転に応じて直線運動する直動機構と、該直動機構の一端側に位置して前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、直線運動を抑制する方向に該直動機構を付勢する付勢機構と、該付勢機構の一端側に位置して前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、該付勢機構の付勢する力を軸方向に移動して調整する付勢力調整機構と、前記ケーシング内に設けられ、該付勢力調整機構を動作させる駆動手段と、前記直動機構の他端側に位置して前記ケーシング内に設けられ、ラジアル荷重を受承する第1のラジアル軸受およびアキシアル荷重を受承する第1のスラスト軸受と、前記付勢力調整機構の一端側に位置して前記ケーシング内に設けられ、ラジアル荷重を受承する第2のラジアル軸受およびアキシアル荷重を受承する第2のスラスト軸受とを備える構成としている。
【0133】
これにより、直動機構、付勢機構、付勢力調整機構を延長部の外周に設けているから、この延長部をケーシングの奥部まで進入させることができる。従って、ケーシングに対し延長部を回転可能に支持する第1,第2のラジアル軸受は、ケーシングの両端側に離間して配設することができる。
【0134】
この結果、第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとを曲げようとする曲げ荷重が作用した場合でも、ケーシングの両端側に位置する各軸受により、大きな間隔寸法をもった2点で曲げ荷重を支持することができる。また、ケーシング内に延長部を進入させているから、スタビライザ装置の外形寸法を小さく抑えることができる。さらに、駆動手段として例えば中実な回転軸をもった汎用の電動モータを用いることができるから、製造コストの低減、組立作業性の向上等を図ることができる。
【符号の説明】
【0135】
1,31,41,71 スタビライザ装置
2 第1のスタビライザバー
3,42,72 第2のスタビライザバー
3B,42A,72A 延長部
4,32,43,73 可変剛性部
5,33,44,74 ケーシング
6,45,75 筒体
7,8,34,35,46,47,76,77 蓋体
9,48,78 モータケース
10,49,79 ボールアンドランプ機構(直動機構)
11,80 回転側ランププレート
12,81 直動側ランププレート
13,52,82 ボール
15,53,83 付勢機構
16,54,84 付勢力調整機構
17,55,85 プランジャ
18,56,86 ねじ部材
19,57,87 電動モータ(駆動手段)
20,58 玉軸受
22,59 すべり軸受(第1のラジアル軸受)
23,60 第1のアンギュラ玉軸受(第1のスラスト軸受)
24,37,38,61 第2のアンギュラ玉軸受(第2のラジアル軸受、第2のスラスト軸受)
36 第1のスラスト玉軸受(第1のスラスト軸受)
50 固定側ランププレート
51 回転・直動側ランププレート
88 すべり軸受
89 第1のアンギュラ玉軸受(第1のラジアル軸受、第1のスラスト軸受)
90 すべり軸受(第2のラジアル軸受)
91 第2のアンギュラ玉軸受(第2のスラスト軸受)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスタビライザバーと、第2のスタビライザバーと、該各スタビライザバーを連結してねじり剛性を調整する可変剛性部とからなり、
前記可変剛性部は、
前記第1のスタビライザバーに一端側が固定された筒状のケーシングと、
該ケーシング内に挿入される前記第2のスタビライザバーの延長部と、
前記ケーシング内の該延長部外周に設けられ、前記第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとの相対回転に応じて直線運動する直動機構と、
該直動機構の他端側に位置して前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、直線運動を抑制する方向に該直動機構を付勢する付勢機構と、
該付勢機構の他端側に位置して前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、該付勢機構の付勢する力を軸方向に移動して調整する付勢力調整機構と、
前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、該付勢力調整機構を動作させる駆動手段と、
前記直動機構の他端側に位置して前記ケーシング内に設けられ、ラジアル荷重を受承する第1のラジアル軸受およびアキシアル荷重を受承する第1のスラスト軸受と、
前記直動機構を挟んで前記付勢力調整機構と反対側となる前記ケーシング内の一端側に位置して設けられ、ラジアル荷重を受承する第2のラジアル軸受およびアキシアル荷重を受承する第2のスラスト軸受とを備える構成としてなるスタビライザ装置。
【請求項2】
前記第1のラジアル軸受と第1のスラスト軸受、および/または前記第2のラジアル軸受と第2のスラスト軸受を単一の軸受で構成してなる請求項1に記載のスタビライザ装置。
【請求項3】
第1のスタビライザバーと、第2のスタビライザバーと、該各スタビライザバーを連結してねじり剛性を調整する可変剛性部とからなり、
前記可変剛性部は、
前記第1のスタビライザバーに一端側が固定された筒状のケーシングと、
該ケーシング内に挿入される前記第2のスタビライザバーの延長部と、
前記ケーシング内の該延長部外周に設けられ、前記第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとの相対回転に応じて直線運動する直動機構と、
該直動機構の一端側に位置して前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、直線運動を抑制する方向に該直動機構を付勢する付勢機構と、
該付勢機構の一端側に位置して前記ケーシング内の前記延長部外周に設けられ、該付勢機構の付勢する力を軸方向に移動して調整する付勢力調整機構と、
前記ケーシング内に設けられ、該付勢力調整機構を動作させる駆動手段と、
前記直動機構の他端側に位置して前記ケーシング内に設けられ、ラジアル荷重を受承する第1のラジアル軸受およびアキシアル荷重を受承する第1のスラスト軸受と、
前記付勢力調整機構の一端側に位置して前記ケーシング内に設けられ、ラジアル荷重を受承する第2のラジアル軸受およびアキシアル荷重を受承する第2のスラスト軸受とを備える構成としてなるスタビライザ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−131815(P2011−131815A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294620(P2009−294620)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】