説明

スターポリマー、硬化性樹脂組成物

【課題】低粘度で、優れた光学特性を備え、かつ、リフロー耐性及び低収縮率の樹脂組成物を与え得るスターポリマー、該スターポリマーを含む硬化性樹脂組成物及び、優れた光学特性を備え、かつ、リフロー耐性及び低収縮率である成形体、光学部品及びレンズを提供する。
【解決手段】式(1)の繰り返し単位と式(2)の繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体を有するスターポリマー。


(式(1)中、Rは脂環構造を有するアルキル基を表し、式(2)中、Rはオキシラニル基又はオキセタニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターポリマー、それを含む硬化性樹脂組成物に関する。更に、本発明は前記硬化性樹脂組成物を成形してなる成形体、光学部品及びレンズ(例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、車載カメラ用レンズ、携帯カメラ用レンズ、デジタルカメラ用レンズ、OHP用レンズ等)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学材料の研究が盛んに行われており、特にレンズ材料の分野においては高屈折性、低分散性(すなわち高いアッベ数)、靭性、耐熱性、透明性、易成形性、軽量性、耐薬品性・耐溶剤性等に優れた材料の開発が強く望まれている。
【0003】
プラスチックレンズは、ガラスなどの無機材料に比べ軽量で割れにくく、様々な形状に加工できるため、眼鏡レンズのみならず近年では携帯カメラ用レンズやピックアップレンズ等の光学材料にも急速に普及しつつある。
【0004】
また、レンズを組み込んだ部品が半田リフロー工程を通るような場合はレンズ自体も半田浴に曝されることになり、熱可塑性樹脂からなるレンズや、耐熱性の低い熱硬化性樹脂からなるレンズでは透過率等の光学特性の劣化を起こし問題となっている。
更に、低分子化合物が重合等により高分子化合物へと変化する際には、一般的に体積収縮が起こることが知られている。体積収縮は例えばレンズなどへの使用を考えると金型転写性が悪く、焦点距離が変化するといった点で問題がある。一方、体積収縮を抑制するために、予め部分的に重合した前駆体(プレポリマー等)を用いると、粘度が高くなりハンドリング性が低下するという問題がある。
【0005】
そして、特許文献1には、スターポリマーを含有することにより、低粘度で注入時の作業性が良好であり、重合収縮率が小さく、種々の形状の合わせガラスを得ることが可能で、かつ、工学的均一性、及び透明性に優れ、広い温度範囲で柔軟性、耐熱性を保持している合わせ硝子を得ることができる、合わせ硝子用樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献2には、低粘度の(メタ)アクリル酸エステル系スターポリマー、該スターポリマーを含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体組成物及びその製造方法について記載されている。
しかしながら、これらスターポリマーの光学特性は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−219791号公報
【特許文献2】特開平11−29617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、優れた光学特性、リフロー耐性及び低い硬化収縮率を併せ持つ硬化性樹脂組成物、及びそれを含んで構成されるレンズ等の光学部品は未だ見出されておらず、その開発が望まれていた。
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、低粘度で、優れた光学特性を備え、リフロー耐性を有し、低い硬化収縮率の樹脂組成物を与え得るスターポリマー、該スターポリマーを含む硬化性樹脂組成物を提供するものである。
更に、本発明の目的は、本発明の硬化性樹脂組成物を成形してなる、優れた光学特性を備え、リフロー耐性を有し、低い硬化収縮率である成形体、光学部品及びレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する構造単位を含む共重合体を有するスターポリマーが、ハンドリングに優れ、優れた光学特性、リフロー耐性及び低い硬化収縮率を併せ持つ硬化性樹脂組成物を与え得ることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の課題を解決する手段は以下のとおりである。
【0009】
〔1〕
下記一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体を有するスターポリマー。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは置換若しくは無置換の脂環構造を有する基を表す。)
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは置換若しくは無置換のオキシラニル基を有する基又はオキセタニル基を有する基を表す。)
〔2〕
数平均分子量が1000〜100000であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のスターポリマー。
〔3〕
数平均分子量が1000以上、3000未満であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のスターポリマー。
〔4〕
前記一般式(2)で表される繰り返し単位を5〜95質量%含むことを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のスターポリマー。
〔5〕
前記一般式(1)中、Rがアダマンチル基又はトリシクロ[4,3,0,12,5]デカ−3−イル基であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のスターポリマー。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のスターポリマーの少なくとも一種と、少なくとも二官能以上の反応性基を有する化合物とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
〔7〕
前記化合物の有する反応性基がオキシラニル基を有する基又はオキセタニル基を有する基であることを特徴とする〔6〕に記載の硬化性樹脂組成物。
〔8〕
硬化後の屈折率が1.50以上であり、アッベ数が45以上であり、かつ波長589nmにおける厚さ500μm換算の光線透過率が75%以上であることを特徴とする〔6〕又は〔7〕に記載の硬化性樹脂組成物。
〔9〕
〔6〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
〔10〕
〔6〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする光学部品。
〔11〕
〔6〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を成形してなることを特徴とするレンズ。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスターポリマーは溶解性に優れ、これを含む硬化性樹脂組成物は、特定の構造を有する構造単位を含む共重合体を有するため優れた光学特性、リフロー耐性及び低い硬化収縮率を併せ持つ硬化性樹脂組成物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明のスターポリマー、硬化性樹脂組成物、成形体、光学部品及びレンズについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0016】
本発明のスターポリマーは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体を有する。
【0017】
【化3】

【0018】
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは置換若しくは無置換の脂環構造を有する基を表す。)
【0019】
【化4】

【0020】
(一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは置換若しくは無置換のオキシラニル基を有する基又はオキセタニル基を有する基を表す。)
【0021】
本発明のスターポリマーが有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、一般式(1)で表される繰り返し単位を含むことにより、脂環構造を含むため、一定の体積中の電子密度が高く、屈折率を高くすることができる。脂環構造がかさ高いことから、ガラス転移点が向上し、耐熱性を向上することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、一般式(2)で表される繰り返し単位を含むことによりオキシラニル基又はオキセタニル基といった重合性官能基を有していることから、硬化性樹脂組成物へ導入した場合に、三次元ネットワークの構築に関与し、強靭な構造を形成できる。
【0022】
一般式(1)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
〔一般式(1)で表される繰り返し単位〕
【0023】
【化5】

【0024】
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは脂環構造を有する基を表す。)
【0025】
一般式(1)におけるRが表す脂環構造を有する基としては、置換若しくは無置換の脂環構造又は−L−R(Lは連結基を表し、Rは置換若しくは無置換の脂環構造を表す。)を表す。
脂環構造としては、炭素数1〜30の脂環式炭化水素を挙げることができる。具体的には、例えば、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基を挙げることができ、アダマンチル基、トリシクロ[4,3,0,12,5]デカ−3−イル基が特に好ましい。
Lが表す連結基としては、アルキレン基、オキシアルキレン基を挙げる事ができる。
アルキレン基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えばメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基が好ましい。
オキシアルキレン基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えばオキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシイソプロピレン基、オキシn−オクチレン基が挙げられ、オキシエチレン基が好ましい。 脂環構造はかさ高いため、同じ炭素数の直鎖炭化水素と比較して主鎖の運動性を抑制し、ガラス転移点を向上させるため、Rに脂環構造を有することにより耐熱性が向上する。
【0026】
脂環構造に置換可能な置換基としては、アルキル基、アルキコキシ基を挙げることができ、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコオキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、又はエチレンオキシ基がより好ましい。
【0027】
本発明において、Rとしてはアダマンチル基又はトリシクロ[4,3,0,12,5]デカ−3−イル基が更に好ましい。高屈折率、高アッベ数、耐熱性を鼎立するためである。
【0028】
次に一般式(2)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
〔一般式(2)で表される繰り返し単位〕
【0029】
【化6】

【0030】
(一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは置換若しくは無置換のオキシラニル基を有する基又は置換若しくは無置換のオキセタニル基を有する基を表す。)
【0031】
一般式(2)におけるRにおけるオキシラニル基を有する基又はオキセタニル基を有する基に置換可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を挙げる事ができ、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子が好ましく、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
が表す置換若しくは無置換のオキシラニル基を有する基又は置換若しくは無置換のオキセタニル基を有する基としては、置換若しくは無置換のオキシラニルアルキル基、置換若しくは無置換のオキセタニルアルキル基、置換若しくは無置換のエポキシシクロアルケニルアルキル基を挙げることができる。好ましくは、オキシラニルメチル基、オキセタニルメチル基、エチルオキセタニルメチル基、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル基であり、より好ましくはオキシラニルメチル基又はエチルオキセタニルメチル基である。
【0032】
以下に、重合することによって一般式(1)で表される繰り返し単位を形成することが出来るモノマーの具体例を以下のA−1〜A−22に、一般式(2)で表される繰り返し単位を形成することができるモノマーの具体例を以下のB−1〜B−6として挙げるが、本発明で採用することができるモノマーはこれらの具体例に限定されるものではない。
【0033】
【化7】

【0034】
【化8】

【0035】
【化9】

【0036】
一般式(1)で表される繰り返し単位及び(2)で表される繰り返し単位を形成することができるモノマーは、市販されており、また容易に合成することもできる。一般式(1)で表される繰り返し単位を形成することができるモノマーは、例えば対応するアルコール(例えば1−アダマンタノール等)と(メタ)アクリル酸クロライドと縮合することによって合成することができる。一般式(2)で表される繰り返し単位を形成することができるモノマーも同様な方法に従い合成することができる。
【0037】
本発明で用いるスターポリマーを合成する際には、一般式(1)で表される繰り返し単位を形成することができるモノマーを、モノマー組成物中に5〜95質量%使用することが好ましく、10〜90質量%使用することがより好ましく、30〜85質量%使用することが更に好ましい。また、一般式(2)で表される繰り返し単位を形成することができるモノマーを、モノマー組成物中に5〜95質量%使用することが好ましく、10〜90質量%使用することがより好ましく、15〜70質量%使用することが更に好ましい。
一般式(1)で表される繰り返し単位に対する一般式(2)で表される繰り返し単位は5質量%〜1900質量%であることが好ましく、10質量%〜1000質量%であることがより好ましい。
上記の範囲であれば、高屈折率、高アッベ数、耐熱性と硬化後の樹脂組成物の硬度を両立することができる。
【0038】
一般式(1)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位を形成することができるモノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
<共重合可能な他のモノマー>
本発明のスターポリマーは、重合することによって一般式(1)で表される繰り返し単位又は一般式(2)で表される繰り返し単位を形成することができるモノマーとともに、他のモノマーを共重合させることにより製造してもよい。そのような他のモノマーとして、Polymer Handbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience (1975) Chapter 2 Page1〜483に記載のものなどを用いることができる。
他のモノマーを用いることにより屈折率、アッベ数等の光学特性や、脆性、弾性率等の力学特性を微調整したり、離型性などの成形適性を付与することができる。
【0040】
具体的には、例えば、スチレン誘導体、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、イタコン酸ジアルキル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0041】
前記スチレン誘導体としては、スチレン、2,4,6−トリブロモスチレン、2−フェニルスチレン、4−クロロスチレン等が挙げられる。
【0042】
前記アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert−ブチル、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
【0043】
前記メタクリル酸エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等が挙げられる。
【0044】
前記アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜6のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0045】
前記メタクリルアミド類としては、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜6のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0046】
前記アリル化合物としては、アリルエステル類(例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノール等が挙げられる。
【0047】
前記ビニルエーテル類としては、アルキルビニルエーテル(アルキル基としては炭素数1〜10のもの、例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等が挙げられる。
【0048】
前記ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
【0049】
前記イタコン酸ジアルキル類としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。
【0050】
その他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル等も挙げることができる。
【0051】
共重合可能な他のモノマーの好ましい総割合は全モノマー中50質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは40質量%以下である。
【0052】
<スターポリマーの合成法>
本発明のスターポリマーの合成法は、合成した枝ポリマーを少なくとも三官能以上のコア部とカップリングする方法であっても良いし、三官能以上のコア部から逐次又は連鎖的に重合し、枝ポリマーを形成する方法であってもよいが、連鎖移動剤を用いてラジカル重合を行う方法も挙げることができる。
連鎖移動剤としては、チオール含有化合物を挙げることができ、少なくとも三官能以上のチオール含有化合物存在下、ラジカル重合を行う方法がプロセス上簡便であり、好ましい。
【0053】
連鎖移動剤の使用量はモノマー成分の総和に対し、0.1質量%〜30質量%とすることができる。
また、スターポリマーの合成においては必要に応じて溶媒を使用することができる。使用できる溶媒としては、特に制限はなく、モノマーおよび生成するスターポリマーが溶解する溶媒が好ましい。
本発明のスターポリマーの合成に用いる少なくとも三官能以上のチオール含有化合物は、下記一般式(3)で表すことができる。
【0054】
【化10】

【0055】
(一般式(3)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基を表す。nはそれぞれ独立に0〜10の整数を表し、kは0〜3の整数を表し、lは0〜4の整数を表し、mは0〜3の整数を表し、kは0〜3の整数を表し、lは0〜3の整数を表し、mは0〜3の整数を表す。ただし、kとlとmとの総和は4以下であり、kとlとmとの総和は4以下であり、lとlの総和は3以上である。)
【0056】
が表すアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基を挙げることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
が表すアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基を挙げることができ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
が表すアリール基としては、炭素数6から30のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0057】
本発明のスターポリマーの合成に用いる少なくとも三官能以上のチオール含有化合物の具体例を以下のC−1〜C−9として挙げるが、本発明で採用することができるチオール含有化合物はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0058】
【化11】

【0059】
<スターポリマーの具体例>
以下の表に、本発明で使用することができるスターポリマーの好ましい具体例を挙げる。表1に記載される種類のモノマーを表に記載される質量割合で混合して共重合することにより、表1に記載の数平均分子量のスターポリマーを製造することができる。ただし、本発明で用いることができるスターポリマーはこれらに限定されるものではない。
【0060】
【表1】

【0061】
これらのスターポリマーは、後述する硬化性樹脂組成物に1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のスターポリマーの数平均分子量は1000〜100000であることが好ましく、1000以上、3000未満であることがより好ましい。数平均分子量は1000以上であれば、十分な硬化収縮率を抑制する効果が得られ、100000以下であれば硬化性樹脂組成物に含有させた際に粘度が高くならず、ハンドリング特性に優れる。
【0062】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明のスターポリマーの少なくとも一種と、少なくとも二官能以上の反応性基を有する化合物とを含む。二官能以上の反応性基を有する化合物の有する反応性基が、オキシラニル基又はオキセタニル基であることが好ましい。オキシラニル基を有する基又はオキセタニル基を有する基としては、置換若しくは無置換のオキシラニルアルキル基、置換若しくは無置換のオキセタニルアルキル基、置換若しくは無置換のエポキシシクロアルケニルアルキル基を挙げることができる。好ましくは、オキシラニルメチル基、オキセタニルメチル基、エチルオキセタニルメチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、1,2‐エポキシシクロヘキセニル基、であり、より好ましくは1,2‐エポキシシクロヘキセニル基、3,4‐エポキシシクロヘキセニルメチル基である。
少なくとも二官能以上の反応性基を有する化合物として具体的には、CEL−2021P(ダイセル化学工業製)等を挙げることができる。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物は、二官能以上の反応性基を有する化合物が液状である場合、単離後の本発明のスターポリマーを反応性基を含有する単量体に溶解させても良いし、反応性基を含有する単量体中でスターポリマーの合成を行うことにより調製しても良い。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物は本発明のスターポリマー及び少なくとも二官能以上の反応性基を含有する単量体以外に、カチオン重合開始剤等の光酸発生剤あるいは硬化剤、硬化助剤を含んでいても良い。
カチオン重合開始剤としては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩を挙げることができる。
硬化剤としては、酸無水物類、フェノール類、アミン類、アルコール類、チオール類を挙げることができる。
また、硬化助剤としては、四級アンモニウム塩、イミダゾール類、有機ホスフィン化合物、金属石鹸類を挙げることができる。
また硬化反応は紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって開始しても良いし、加熱による開始でも良い。
【0065】
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物の硬化後の屈折率は1.50以上であることが好ましく、1.51以上であることがより好ましい。なお、これらの屈折率は22℃、波長589nmにおける値である。
【0066】
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物は、硬化後の波長589nmにおける厚み500μm換算の光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。
【0067】
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物は、硬化後のアッベ数が45以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、55以上であることが特に好ましい。
【0068】
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物は、硬化後の屈折率が1.50以上であり、アッベ数が45以上であり、かつ波長589nmにおける厚さ500μm換算の光線透過率が75%以上であることが好ましい。
【0069】
[添加剤]
本発明においては上記硬化性樹脂組成物には、均一分散性、成形時の流動性、離型性、耐候性等の観点から適宜各種添加剤を配合しても良い。例えば、表面処理剤、可塑剤、帯電防止剤、分散剤、離型剤等を挙げることができる。また前記反応性基を有さない樹脂を添加しても良く、このような樹脂の種類に特に制限はないが、前記硬化性樹脂組成物と同様の光学物性、熱物性、分子量を有するものが好ましい。
これら添加剤の配合割合は目的に応じて異なるが、硬化性樹脂組成物を足しあわせた量に対して、0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることが特に好ましい。
【0070】
<帯電防止剤>
本発明の硬化性樹脂組成物の帯電圧を調節するために、帯電防止剤を添加することができる。帯電防止剤を添加する場合には、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯防止剤、ノ二オン性帯電防止剤、両性イオン性帯電防止剤、高分子帯電防止剤、あるいは帯電性微粒子などが挙げられ、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの例としては、特開2007−4131号公報、特開2003−201396号公報に記載された化合物を挙げることができる。
帯電防止剤の添加量はまちまちであるが、硬化性樹脂組成物の全固形分の0.001〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜30質量%であり、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0071】
<その他>
上記成分以外に、成形性を改良する目的で変性シリコーンオイル等の公知の離型剤を添加したり、耐光性や熱劣化を改良する目的で、ヒンダードフェノール系、アミン系、リン系、チオエーテル系等の公知の劣化防止剤を適宜添加しても良く、これらを配合する場合には硬化性樹脂組成物の全固形分に対して0.1〜5質量%程度が好ましい。
【0072】
[硬化性樹脂組成物の調製]
硬化性樹脂組成物の調製は、例えば、本発明のスターポリマーの少なくとも一種と、少なくとも三官能以上の反応性基を有する化合物と、必要に応じて添加される各種成分とを混合し、攪拌することで実施できる。
更に必要に応じて、溶剤として、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシー2−プロパノール、t−ブタノール、酢酸、プロピオン酸等の親水的な極性溶媒の単独又は混合溶媒、あるいはクロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、クロロベンゼン、メトキシベンゼン等の非水溶性溶媒と上記極性溶媒との混合溶媒を用いることもできる。
【0073】
[樹脂硬化物]
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させ樹脂硬化物を得る方法としては、特に限定されないが、上述したように硬化性樹脂組成物を加熱又は光照射を行って硬化せることもできるし、活性光線又は放射線等の光照射を行った後に更に加熱することにより硬化させることもできる。
【0074】
上記の方法によって得られた樹脂硬化物は、そのままキャスト成形して透明成形体を得ることもできる。本発明は硬化性樹脂組成物を成形してなる成形体にも関する。また、該溶液を濃縮、凍結乾燥、あるいは適当な貧溶媒から再沈澱させる等の手法により溶剤を除去した後、粉体化した固形分を射出成形、圧縮成形等の公知の手法によって成形することもできる。
この際、本発明の材料粉体を直接加熱溶融あるいは圧縮などによりレンズ等の成形体に加工することもできるが、いったん押し出し法などの手法で、一定の重さ、形状を有するプリフォーム(前駆体)を作成した後、該プリフォームを圧縮成形で変形させてレンズ等の光学部品を作成することもできる。この場合目的の形状を効率的に作成するために、プリフォームに適当な曲率をもたせることもできる。
【0075】
上記樹脂硬化物をマスターバッチとして他の樹脂に混合して用いても良い。
【0076】
[光学部品]
上述の本発明の硬化性樹脂組成物を成形することにより、本発明の光学部品を製造することができる。本発明の光学部品では、硬化性樹脂組成物の説明で前記した屈折率、や光学特性を示すものが有用である。
また本発明の光学部品としては、最大0.1mm以上の厚みを有する高屈折率の光学部品が特に有用である。好ましくは0.1〜5mmの厚みを有する光学部品への適用であり、特に好ましくは0.1〜3mmの厚みを有する透明部品への適用である。
これらの厚い成形体は溶液キャスト法での製造では、溶剤が抜けにくく通常容易ではないが、本発明の硬化性樹脂組成物を用いることにより、成形が容易で非球面などの複雑な形状も容易に付与することができ、良好な透明性を有する光学部品とすることができる。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物を利用した光学部品は、本発明の硬化性樹脂組成物の優れた光学特性を利用した光学部品であれば特に限定はないが、例えば、レンズ基材や、特に光を透過する光学部品(いわゆるパッシブ光学部品)に使用することも可能である。かかる光学部品を備えた機能装置としては、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオ等の撮影装置等が例示される。かかる光学機能装置における前記パッシブ光学部品としては、レンズ、プリズム、プリズムシート、パネル、フィルム、光導波路、光ディスク、LEDの封止剤等が例示される。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いた光学部品は、特にレンズ基材に好適である。硬化性樹脂組成物を成形してなるレンズにも関する。本発明の硬化性樹脂組成物を用いて製造されたレンズ基材は、リフロー耐性に優れ、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れている。また、硬化性樹脂組成物を構成するモノマーの種類や分散させる無機微粒子の量を適宜調節することにより、レンズ基材の屈折率や屈折率温度依存性を任意に調節することが可能である。
本発明における「レンズ基材」とは、レンズ機能を発揮することができる単一部材を意味する。レンズ基材の表面や周囲には、レンズの使用環境や用途に応じて膜や部材を設けることができる。例えば、レンズ基材の表面には、保護膜、反射防止膜、ハードコート膜等を形成することができる。また、レンズ基材の周囲を基材保持枠などに嵌入して固定することもできる。ただし、これらの膜や枠などは、本発明でいうレンズ基材に付加される部材であり、本発明でいうレンズ基材そのものとは区別される。
【0079】
本発明におけるレンズ基材をレンズとして利用するに際しては、本発明のレンズ基材そのものを単独でレンズとして用いてもよいし、前記のように膜や枠などを付加してレンズとして用いてもよい。本発明のレンズ基材を用いたレンズの種類や形状は、特に制限されない。本発明のレンズ基材は、例えば、眼鏡レンズ、光学機器用レンズ、オプトエレクトロニクス用レンズ、レーザー用レンズ、ピックアップ用レンズ、撮像レンズ(車載カメラ用レンズ、携帯カメラ用レンズ、デジタルカメラ用レンズ等;ズームレンズや、正/負のパワーレンズなど各種公知の撮像レンズを含む)、OHP用レンズ、マイクロレンズアレイ等)に使用される。
【0080】
従来、レンズ等の光学素子に使用されている熱可塑性の素材はリフロー処理に耐え得る耐熱性を有していないため、ウェハレベルレンズアレイの製造においては、熱または光で硬化するエネルギー硬化樹脂が用いられる。しかしながら、エネルギー硬化樹脂は、一般的に、金型中での硬化から離型までの工程で収縮が発生し易く、そのため、ウェハレベルレンズアレイを構成する個々のレンズ要素の配置がずれたり、離型までの過程でウェハレベルレンズアレイに歪みや傷が発生したりするという問題があった。
【0081】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて、種々の形態のウェハレベルレンズアレイを製造することができる。
【0082】
例えば、特許第3916380号公報、同第3929479号公報、同第3946245号公報、同第3976780号公報、同第3976781号公報、同第3976782号公報、同第4022246号公報、国際公開2008/102648号公報、同2008/102773号公報、同2008/102774号公報、同2008/102775号、同2008/102776号等に記載されているように、平行平板の基板の少なくとも一方の表面にレンズ構造を形成してなるウェハレベルレンズアレイの平行平板部分及び/または当該レンズ構造部分に本発明の硬化性樹脂組成物を使用することができる。
【0083】
また、特許第4226061号公報、同4226067号公報、同2008/102582号公報等に記載されているような、基板とレンズ部分とを同時に一体的に形成したウェハレベルレンズアレイにおいては収縮の影響がより大きく発生するため、硬化による収縮が小さい本発明の硬化性樹脂組成物は特に有効である。
【0084】
更には、本発明の硬化性樹脂組成物は、国際公開2008/084646号公報に記載されているような、レンズ同士が腕部で連結され同一平面に配置された構成のウェハレベルレンズアレイの製造にも適している。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0086】
[分析及び評価方法]
(1)光線透過率測定
測定する樹脂を成形して厚さ500μmの基板を作成し、紫外可視吸収スペクトル測定用装置UV−3100(島津製作所製)で波長589nmの光について測定した。
(2)屈折率測定
アッベ屈折計(アタゴ社製DR−M4)にて、波長589nmの光について行った。
(3)アッベ数(νD)測定
アッベ屈折計(アタゴ社製DR−M4)にて、波長486nm、589nm、656nmの光についてそれぞれの屈折率を測定し、波長486nmにおける屈折率をnF、波長589nmにおける屈折率をnD、波長656nmにおける屈折率をnCとした場合に、下記の式より算出した。
【0087】
【数1】

【0088】
(4)硬化収縮率測定
硬化性樹脂組成物の硬化前の密度Di及び硬化後の密度Dfを乾式自動密度計(島津製作所製AccuPyc1330−03)にて測定し、下記の式より算出した。
【0089】
【数2】

【0090】
(5)耐熱性評価
厚さ500μmの基板状に成形した樹脂を270℃に設定したオーブンの中で、6分間保持した後に、目視にて着色を表化した。茶褐色となったものを×、強く黄変したものを△、弱く黄変したものを○、ほとんど変化が見られなかったものを◎とした。
【0091】
[材料の調製]
(1)スターポリマーの合成
還流冷却器、ガス導入コックを付した500ml三口フラスコに、1−アダマンチルメタクリレート(大阪有機化学工業株式会社製;商品名ADMA、A−1に該当)210.0g、グリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製、B−1に該当)90.0g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製、C−1に該当)34.8g、酢酸エチル700.0gを添加し、2回窒素置換した後、開始剤として和光純薬工業株式会社製V−65(商品名)30.0gを添加し、更に2回窒素置換した後、窒素気流下70℃で3時間加熱した。その後、70℃で5時間減圧乾燥をおこない、溶媒、残存モノマーを留去することにより本発明のスターポリマーP−1を得た(収率96%、数平均分子量2,300、質量平均分子量3,900)。
他の例示したポリマーについても、同様の方法で調製できる。
【0092】
(2)硬化性樹脂組成物の調製
(1)で合成したスターポリマーP−1を50.0gをダイセル化学工業製CEL−2021P(商品名)(反応性基含有化合物)50.0gに溶解し、更にサンアプロ株式会社製CPI−100P(光酸発生剤)4.0gを添加し、硬化性樹脂組成物を得た。
他の例示した硬化性樹脂組成物についても、同様の方法で調製できる。
【0093】
[紫外光照射による光学部品の製造]
実施例1〜10と比較例1〜4の各レンズを下記の手順で製造した。使用したスターポリマーの種類及び他成分の組成は表3に示す通りとした。 比較例1〜4で使用したスターポリマーは、下記の表2に示すように、比較例1ではスターポリマーとしてQ−1(構成モノマーはA−1を90質量%、C−1を10質量%であり、数平均分子量は2500)を用い、比較例2ではスターポリマーとしてQ−2(構成モノマーはA−1を95質量%、C−1を5質量%であり、数平均分子量は18000)を用い、比較例3ではスターポリマーとしてQ−3(構成モノマーはA−1を60質量%、テトラヒドロフラニルメタクリレートを30質量%、C−1を10質量%であり、数平均分子量は2800)を用い、比較例4ではスターポリマーとしてQ−4(構成モノマーはメチルメタクリレートを60質量%、B−3を30質量%、C−1を10質量%であり、数平均分子量は3000)を用いた。
製造した各硬化性樹脂組成物を厚さ500μmで規定したガラス板に挟み、HOYA社製UL750を用いて、40mW/cmのUV光を120秒照射することにより、硬化物を得た。この平板状硬化物の光線透過率測定、屈折率測定、アッベ数測定、硬化収縮率測定、耐熱性評価を行った。これらの結果は以下の表3に記載した。
【0094】
【表2】

【0095】
THPMA:テトラヒドロフラニルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
【0096】
【表3】

【0097】
表3から明らかなように、本発明のスターポリマーを用いることにより屈折率が1.50より大きくて、アッベ数が45より大きく、透明性が良好であり、硬化収縮率が小さく、耐熱性の良好な光学部品が得られた(実施例1〜11)。本発明の光学部品は耐熱性が良いため、リフロー耐性に優れる。一方、一般式(2)で表される繰り返し単位を有さないスターポリマーを用いた比較例1〜3では、硬化後に相分離が生じたことにより、透過率が低下し、比較例1では波長486nmにおける屈折率nFを測定することが出来なかったため、アッベ数を算出することが出来ず、分子量の大きいQ−2を用いた比較例2では、アッベ屈折率計での各波長における屈折率、及びアッベ数測定を行えなかった。スターポリマーとしてQ−3を用いた比較例3では、波長486nmにおける屈折率nFを測定することが出来なかったため、アッベ数を算出することが出来ず、耐熱性も低い結果であった。また、一般式(1)で表される繰り返し単位を有さないスターポリマーを用いた比較例4では、屈折率が1.50未満と低く、耐熱性も不十分であった。
【0098】
[成形体及びレンズの作製]
製造した各硬化性樹脂組成物を非球面形状に加工されたレンズ用金型を用いて180℃で加熱成形し、最大厚さ1mmの光学部品であるレンズを得た。
本発明の硬化性樹脂組成物により形成した成形体は1mmの厚い成形体に加工しても良好な透明性を示し、屈折率が高く、アッベ数が高く、レンズなどの光学材料に好適に用いることができる。また、硬化性樹脂組成物を用いることにより、型の形状に合わせて正確に凹凸レンズ形状を生産性よく形成することができることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位と一般式(2)で表される繰り返し単位とを含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体を有するスターポリマー。
【化1】

(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは置換若しくは無置換の脂環構造を有する基を表す。)
【化2】

(一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは置換若しくは無置換のオキシラニル基を有する基又はオキセタニル基を有する基を表す。)
【請求項2】
数平均分子量が1000〜100000であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスターポリマー。
【請求項3】
数平均分子量が1000以上、3000未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスターポリマー。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位を5〜95質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスターポリマー。
【請求項5】
前記一般式(1)中、Rがアダマンチル基又はトリシクロ[4,3,0,12,5]デカ−3−イル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスターポリマー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のスターポリマーの少なくとも一種と、少なくとも二官能以上の反応性基を有する化合物とを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記化合物の有する反応性基がオキシラニル基を有する基又はオキセタニル基を有する基であることを特徴とする請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
硬化後の屈折率が1.50以上であり、アッベ数が45以上であり、かつ波長589nmにおける厚さ500μm換算の光線透過率が75%以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする光学部品。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を成形してなることを特徴とするレンズ。

【公開番号】特開2011−74280(P2011−74280A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228689(P2009−228689)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】