説明

ステアリングサポートビーム及びその製造方法

【課題】 寸法精度が良く、軽量であると共に、生産性に優れたステアリングサポートビームを提供する。
【解決手段】 第2サポートビーム2内に第1サポートビーム1の一部が挿入され、第2ビーム2に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部22、28が外嵌めされ、第2ビーム2におけるブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部を拡径することによってブラケット嵌合部22、28が挟み込まれ、第1ビーム1における第2拡径部の対応領域が拡径されることで形成された第1拡径部11A、11B、12A、12Bが、第2拡径部の内側凹部内に侵入して係止され、第1ビーム1における第2ビーム2で被覆されていない領域に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部25、31、34、37が外嵌めされ、第1ビーム1におけるブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部を拡径することによってブラケット嵌合部が挟み込まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車体の左右間に架設されるステアリングサポートビーム及びその製造方法に関する。
【0002】
なお、この明細書において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いる。
【背景技術】
【0003】
自動車の前部のインストルメントパネルの内部には、車体の左右のフロントピラー間にステアリングサポートビームが架設されている。このようなステアリングサポートビームが配置されることによって、側面からの衝突等による衝撃に対して十分な剛性、強度が確保される。このステアリングサポートビームに複数の取付用ブラケットが溶接固定され、これら取付用ブラケットにそれぞれ各種車載部品が取付固定される。
【0004】
前記ステアリングサポートビームは、運転席側では比較的大きな強度を備えていることが必要であるのに対し、助手席側ではそれ程大きな強度を必要としないものであることから、従来では、運転席側は2重管構造のサポートビームを用い、助手席側は径小の1重管からなるサポートビームを用いてこれらを連結した構成のものが用いられていた。例えば、特許文献1では、短尺の大径パイプに長尺の細径パイプを挿入して長さ方向の一部(端部)を2重管構造にした状態で、先端部がテーパ形状の拡管ポンチを2重管構造部の端縁から加圧しながら2重管内に押し込むことによって、該2重管構造部分を同時拡管加工して拡径した構成からなるステアリングサポートビームが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、少なくとも運転席側の強度を大きくするために、全長にわたって2重管構造にしたステアリングサポートビームが提案されている。
【特許文献1】特開2003−205311号公報
【特許文献2】特開平11−222157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、次のような問題があった。即ち、ステアリングサポートビームには、通常、ステアリングコラム、オーディオ、インストルメントパネル、エアバックユニット等を固定するための複数のブラケットが溶接等の方法で固定されるが、特許文献1の技術では、これら複数のブラケットの固定は、前記拡管ポンチによる同時拡管加工工程とは別工程で行うものとなるため、生産効率が低いという問題があった。更に、ブラケットを溶接で接合した場合、溶接歪みによる寸法精度の低下も懸念される。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、ステアリングサポートビームの全長にわたって2重管構造にしているので、サポートビームの重量が大きく増大し、軽量化の要請に対応できないという問題があった。また、ステアリングサポートビームへの複数のブラケットの溶接固定は、2重管形成工程とは別工程で行うものとなるため、生産効率が低いという問題もあった。
【0008】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、寸法精度が良く、軽量であると共に、優れた生産性を備えたステアリングサポートビーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]筒状の第1サポートビームと、該第1サポートビームの外径より大きい内径を有する筒状の第2サポートビームとを備え、前記第2サポートビーム内に前記第1サポートビームの一部が挿入配置され、
前記第2サポートビームに1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされ、前記第2サポートビームにおける前記ブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部が拡径されることで第2拡径部が形成され、前記取付用ブラケットの嵌合部がその両側周囲部にある前記第2拡径部によって挟み込まれることによって、前記取付用ブラケットが前記第2サポートビームに対して固定され、
前記第1サポートビームにおける前記第2拡径部の対応領域が拡径されることで形成された第1拡径部が、前記第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入して係止されることによって、前記第1サポートビームと前記第2サポートビームとが連結固定され、
前記第1サポートビームにおける前記第2サポートビームで被覆されていない領域に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされ、前記第1サポートビームにおける前記ブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部が拡径されることで第3拡径部が形成され、前記取付用ブラケットの嵌合部がその両側周囲部にある前記第3拡径部によって挟み込まれることによって、前記取付用ブラケットが前記第1サポートビームに対して固定されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
【0011】
[2]前記第1拡径部、第2拡径部及び第3拡径部は、いずれもサポートビームの周方向に沿って形成されている前項1に記載のステアリングサポートビーム。
【0012】
[3]前記第1サポートビーム、前記第2サポートビーム及び取付用ブラケット嵌合部は、いずれも断面楕円状である前項1または2に記載のステアリングサポートビーム。
【0013】
[4]筒状の第2サポートビームに1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記第2サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえると共に前記第2サポートビームの両端部を封止した状態で、前記第2サポートビームの内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加えることによって、前記第2サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第2拡径部を形成し、これら両側の第2拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第1工程と、
前記拡径後の第2サポートビームの内部に筒状の第1サポートビームの一部を挿入配置し、該第1サポートビームにおける前記第2サポートビームで被覆されていない領域に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記両サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえると共に前記サポートビームの両端部を封止した状態で、前記両サポートビームの内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加えることによって、前記第1サポートビームにおける前記第2拡径部の対応領域を拡径せしめて第1拡径部を形成し、該第1拡径部を前記第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入させて係止すると共に、前記第1サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第3拡径部を形成し、これら両側の第3拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第2工程とを包含することを特徴とするステアリングサポートビームの製造方法。
【0014】
[5]前記第1工程及び第2工程において、前記サポートビームの内周面に沿わせる態様で筒状の弾性部材を配置せしめてサポートビームの内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加える前項4に記載のステアリングサポートビームの製造方法。
【0015】
[6]筒状の第2サポートビームに1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記第2サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえると共に前記第2サポートビームの両端部を封止した状態で、前記第2サポートビームの内部に弾性部材を封入して該弾性部材に対して所定の圧力を加えることによって、前記第2サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第2拡径部を形成し、これら両側の第2拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第1工程と、
前記拡径後の第2サポートビームの内部に筒状の第1サポートビームの一部を挿入配置し、該第1サポートビームにおける前記第2サポートビームで被覆されていない領域に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記両サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえると共に前記サポートビームの両端部を封止した状態で、前記両サポートビームの内部に弾性部材を封入して該弾性部材に対して所定の圧力を加えることによって、前記第1サポートビームにおける前記第2拡径部の対応領域を拡径せしめて第1拡径部を形成し、該第1拡径部を前記第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入させて係止すると共に、前記第1サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第3拡径部を形成し、これら両側の第3拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第2工程とを包含することを特徴とするステアリングサポートビームの製造方法。
【0016】
[7]前記弾性部材として硬質ゴムを用いる前項6に記載のステアリングサポートビームの製造方法。
【0017】
[8]筒状の第2サポートビームに1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記第2サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえた状態で、前記第2サポートビームの内部に電磁成形用コイルを配置せしめて該コイルに通電することによって、前記第2サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第2拡径部を形成し、これら両側の第2拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第1工程と、
前記拡径後の第2サポートビームの内部に筒状の第1サポートビームの一部を挿入配置し、該第1サポートビームにおける前記第2サポートビームで被覆されていない領域に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記両サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえた状態で、前記両サポートビームの内部に電磁成形用コイルを配置せしめて該コイルに通電することによって、前記第1サポートビームにおける前記第2拡径部の対応領域を拡径せしめて第1拡径部を形成し、該第1拡径部を前記第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入させて係止すると共に、前記第1サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第3拡径部を形成し、これら両側の第3拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第2工程とを包含することを特徴とするステアリングサポートビームの製造方法。
【0018】
[9]前記電磁成形用コイルを前記サポートビームの内部空間における該サポートビーム内周面の近接位置に配置する前項8に記載のステアリングサポートビームの製造方法。
【0019】
[10]前記第2工程において、前記第2サポートビームの内部の全長にわたって前記第1サポートビームを挿入配置する前項4〜9のいずれか1項に記載のステアリングサポートビームの製造方法。
【0020】
[11]前項4〜10のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたステアリングサポートビーム。
【発明の効果】
【0021】
[1]の発明では、第1サポートビームにおける第2拡径部の対応領域が拡径されることで形成された第1拡径部が、第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入して係止されることによって、第1サポートビームと第2サポートビームとが連結固定されているから、径大の第2サポートビームと径小の第1サポートビームとが十分な強度でかつ安定状態に連結される。また、サポートビームにおけるブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部に形成された拡径部(第2拡径部・第3拡径部)によってブラケット嵌合部が挟み込み固定されているから、取付用ブラケットもサポートビームに対して十分な強度でかつ安定状態に固定される。また、ビーム同士の連結及びブラケットの固定に際し溶接を要しないので、熱の影響によるサポートビームの強度低下もないし、寸法精度も良好なものとなる。更に、溶接を要しないので、第1サポートビーム、第2サポートビームおよび取付用ブラケットとして異種材同士の組み合わせが可能となる利点もある。加えて、ステアリングサポートビームの一部(運転席側のみ)を2重管構造にしているので、十分に軽量性を維持できる。
【0022】
[2]の発明では、第1拡径部、第2拡径部及び第3拡径部は、いずれもサポートビームの周方向に沿って形成されているから、サポートビーム同士の連結強度及びブラケットの固定強度をより一層向上させることができる。
【0023】
[3]の発明では、第1サポートビーム、第2サポートビーム及び取付用ブラケット嵌合部は、いずれも断面楕円状であるので、ブラケット嵌合部がサポートビームに固定された状態時において、ブラケット嵌合部がサポートビームの周方向に回転するのを確実に防止できる。
【0024】
[4]の発明では、両サポートビームの内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加えることによって、第1サポートビームにおける第2拡径部の対応領域を拡径せしめて第1拡径部を形成し、該第1拡径部を第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入させて係止するので、径大の第2サポートビームと径小の第1サポートビームとを十分な強度でかつ安定状態に連結することができる。また、サポートビームにおけるブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部に形成した拡径部(第2拡径部・第3拡径部)によってブラケット嵌合部を挟み込み固定するから、取付用ブラケットをサポートビームに対して十分な強度でかつ安定状態に固定することができる。また、両サポートビームの連結及び取付用ブラケットの第1サポートビームへの取付固定を同時になし得るから、生産性に優れている。また、ビーム同士の連結及びブラケットの固定に際し溶接を要しないので、熱の影響によるサポートビームの強度低下もないし、寸法精度も良好なものとなる。更に、溶接を要しないので、第1サポートビーム、第2サポートビームおよび取付用ブラケットとして異種材同士の組み合わせが可能となる利点もある。
【0025】
[5]の発明では、第1工程及び第2工程において、サポートビームの内周面に沿わせる態様で筒状の弾性部材を配置せしめてサポートビームの内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加えるので、十分に拡径することができる。
【0026】
[6]の発明では、両サポートビームの内部に弾性部材を封入して該弾性部材に対して所定の圧力を加えることによって、第1サポートビームにおける第2拡径部の対応領域を拡径せしめて第1拡径部を形成し、該第1拡径部を第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入させて係止するので、径大の第2サポートビームと径小の第1サポートビームとを十分な強度でかつ安定状態に連結することができる。また、サポートビームにおけるブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部に形成した拡径部(第2拡径部・第3拡径部)によってブラケット嵌合部を挟み込み固定するから、取付用ブラケットをサポートビームに対して十分な強度でかつ安定状態に固定することができる。また、両サポートビームの連結及び取付用ブラケットの第1サポートビームへの取付固定を同時になし得るから、生産性に優れている。また、ビーム同士の連結及びブラケットの固定に際し溶接を要しないので、熱の影響によるサポートビームの強度低下もないし、寸法精度も良好なものとなる。更に、溶接を要しないので、第1サポートビーム、第2サポートビームおよび取付用ブラケットとして異種材同士の組み合わせが可能となる利点もある。
【0027】
[7]の発明では、弾性部材として硬質ゴムを用いるので、十分に拡径することができる。
【0028】
[8]の発明では、両サポートビームの内部に電磁成形用コイルを配置してコイルに通電することによって、第1サポートビームにおける第2拡径部の対応領域を拡径せしめて第1拡径部を形成し、該第1拡径部を第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入させて係止するので、径大の第2サポートビームと径小の第1サポートビームとを十分な強度でかつ安定状態に連結することができる。また、サポートビームにおけるブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部に形成した拡径部(第2拡径部・第3拡径部)によってブラケット嵌合部を挟み込み固定するから、取付用ブラケットをサポートビームに対して十分な強度でかつ安定状態に固定することができる。また、両サポートビームの連結及び取付用ブラケットの第1サポートビームへの取付固定を同時になし得るから、生産性に優れている。また、ビーム同士の連結及びブラケットの固定に際し溶接を要しないので、熱の影響によるサポートビームの強度低下もないし、寸法精度も良好なものとなる。更に、溶接を要しないので、第1サポートビーム、第2サポートビームおよび取付用ブラケットとして異種材同士の組み合わせが可能となる利点もある。
【0029】
[9]の発明では、サポートビームに対して電磁作用を十分に及ぼすことができて十分に拡径することができる。
【0030】
[10]の発明では、第2サポートビームの内部の全長にわたって第1サポートビームを挿入配置するから、第2サポートビーム側の強度を十分に向上させることができる。
【0031】
[11]の発明では、径大の第2サポートビームと径小の第1サポートビームとが十分な強度でかつ安定状態に連結されると共に、取付用ブラケットがサポートビームに対して十分な強度でかつ安定状態に固定されたステアリングサポートビームが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
この発明に係るステアリングサポートビーム(10)の一実施形態を図1、2に示す。本実施形態のステアリングサポートビーム(10)は、自動車の車体の左右のフロントピラー間に配置されてこれらフロントピラーに連結固定される自動車用ステアリングサポートビームである。図1、2において、(1)は第1サポートビーム、(2)は第2サポートビーム、(21)(24)(27)(30)(33)(36)は取付用ブラケットである。
【0033】
前記第1サポートビーム(1)及び第2サポートビーム(2)は、いずれも断面楕円状の筒状押出材からなる。前記第2サポートビーム(2)は、前記第1サポートビーム(1)の外径より大きい内径を有しており、運転席側に配置される。一方、第1サポートビーム(1)は助手席側に配置される。
【0034】
フロントピラー取付用サイドブラケット(21)は、図1、2に示すように、前記第2サポートビーム(2)に外嵌め可能な断面楕円状の嵌合部(22)と、該嵌合部(22)から外方に向けて延ばされた取付部(23)とからなる。また、もう一方のフロントピラー取付用サイドブラケット(24)は、図1、2に示すように、前記第1サポートビーム(1)に外嵌め可能な断面楕円状の嵌合部(25)と、該嵌合部(25)から外方に向けて延ばされた取付部(26)とからなる。
【0035】
コラム取付用ブラケット(27)は、図1、2に示すように、前記第2サポートビーム(2)に外嵌め可能な断面楕円状の嵌合部(28)と、該嵌合部(28)の外周面から外方に向けて突設された取付部(29)とからなる。
【0036】
エアバッグユニット取付用ブラケット(30)は、図1、2に示すように、前記第1サポートビーム(1)に外嵌め可能な断面楕円状の嵌合部(31)と、該嵌合部(31)の外周面から外方に向けて突設された取付部(32)とからなる。
【0037】
オーディオ取付用ブラケット(33)は、図1、2に示すように、前記第1サポートビーム(1)に外嵌め可能な断面楕円状の嵌合部(34)と、該嵌合部(34)から外方に向けて延ばされた取付部(35)とからなる。
【0038】
グローブボックス取付用ブラケット(36)は、図1、2に示すように、前記第1サポートビーム(1)に外嵌め可能な断面楕円状の嵌合部(37)と、該嵌合部(37)から外方に向けて延ばされた取付部(38)とからなる。
【0039】
前記取付用ブラケット(21)(24)(27)(30)(33)(36)は、いずれも押出材からなる。
【0040】
しかして、前記第2サポートビーム(2)内に前記第1サポートビーム(1)の一端側の一部(左端部)が挿入配置されている。本実施形態では、前記第2サポートビーム(2)の内部の長さ方向の全長にわたって前記第1サポートビーム(1)が挿入配置された構成が採用されている(図2参照)。
【0041】
前記第2サポートビーム(2)の左側端部の外周面に、フロントピラー取付用サイドブラケット(21)の嵌合部(22)が外嵌めされると共に、該第2サポートビーム(2)における嵌合部(22)取付位置の左右両側周囲部が拡径されることで周方向にわたる第2拡径部(13A)(13B)が形成され、これら第2拡径部(外側拡径部)(13A)(13B)の間に前記サイドブラケット(21)の嵌合部(22)が挟み込み固定されることによって、前記サイドブラケット(21)が前記第2サポートビーム(2)に対して安定状態にかつ強固に固定されている。
【0042】
また、前記第2サポートビーム(2)の中央部の外周面に、コラム取付用ブラケット(27)の嵌合部(28)が外嵌めされると共に、該第2サポートビーム(2)における嵌合部(28)取付位置の左右両側周囲部が拡径されることで周方向にわたる第2拡径部(外側拡径部)(15A)(15B)が形成され、これら第2拡径部(15A)(15B)の間に前記コラム取付用ブラケット(27)の嵌合部(28)が挟み込み固定されることによって、前記コラム取付用ブラケット(27)が前記第2サポートビーム(2)に対して安定状態にかつ強固に固定されている。
【0043】
前記第1サポートビーム(1)における前記第2拡径部(外側拡径部)(13A)(13B)(15A)(15B)の対応領域が拡径されることで形成された第1拡径部(内側拡径部)(11A)(11B)(12A)(12B)が、前記第2サポートビーム(2)の第2拡径部(外側拡径部)(13A)(13B)(15A)(15B)の内側凹部内に侵入して係止されることによって、前記第1サポートビーム(1)と前記第2サポートビーム(2)とが連結固定されている(図2参照)。
【0044】
また、前記第1サポートビーム(1)の右側端部の外周面に、フロントピラー取付用サイドブラケット(24)の嵌合部(25)が外嵌めされると共に、該第1サポートビーム(1)における嵌合部(25)取付位置の左右両側周囲部が拡径されることで周方向にわたる第3拡径部(14A)(14B)が形成され、これら第3拡径部(14A)(14B)の間に前記サイドブラケット(24)の嵌合部(25)が挟み込み固定されることによって、前記サイドブラケット(24)が前記第1サポートビーム(1)に対して安定状態にかつ強固に固定されている。
【0045】
また、前記第1サポートビーム(1)における第2サポートビーム(2)で被覆されていない領域(非被覆領域)の略中央部の外周面に、エアバッグユニット取付用ブラケット(30)の嵌合部(31)が外嵌めされると共に、該第1サポートビーム(1)における嵌合部(31)取付位置の左右両側周囲部が拡径されることで周方向にわたる第3拡径部(16A)(16B)が形成され、これら第3拡径部(16A)(16B)の間に前記エアバッグユニット取付用ブラケット(30)の嵌合部(31)が挟み込み固定されることによって、前記エアバッグユニット取付用ブラケット(30)が前記第1サポートビーム(1)に対して安定状態にかつ強固に固定されている。
【0046】
また、前記第1サポートビーム(1)における第2サポートビーム(2)で被覆されていない領域(非被覆領域)の略中央部の外周面に、オーディオ取付用ブラケット(33)の嵌合部(34)が外嵌めされると共に、該第1サポートビーム(1)における嵌合部(34)取付位置の左右両側周囲部が拡径されることで周方向にわたる第3拡径部(17A)(17B)が形成され、これら第3拡径部(17A)(17B)の間に前記オーディオ取付用ブラケット(33)の嵌合部(34)が挟み込み固定されることによって、前記オーディオ取付用ブラケット(33)が前記第1サポートビーム(1)に対して安定状態にかつ強固に固定されている。
【0047】
更に、前記第1サポートビーム(1)における第2サポートビーム(2)で被覆されていない領域(非被覆領域)の略中央部の外周面に、グローブボックス取付用ブラケット(36)の嵌合部(37)が外嵌めされると共に、該第1サポートビーム(1)における嵌合部(37)取付位置の左右両側周囲部が拡径されることで周方向にわたる第3拡径部(18A)(18B)が形成され、これら第3拡径部(18A)(18B)の間に前記グローブボックス取付用ブラケット(36)の嵌合部(37)が挟み込み固定されることによって、前記グローブボックス取付用ブラケット(36)が前記第1サポートビーム(1)に対して安定状態にかつ強固に固定されている。
【0048】
このようにして前記取付用ブラケット(21)(24)(27)(30)(33)(36)は、いずれも前記サポートビームに対して安定状態にかつ強固に固定されている。
【0049】
上記構成に係るステアリングサポートビーム(10)は、例えば次のようにして製造される。流体圧を利用した第1製造方法について図3、4及び図5、6を参照しつつ説明する。
【0050】
まず、断面楕円状の筒状押出材からなる第1サポートビーム(1)及び該第1サポートビーム(1)の外径より大きい内径を有した筒状押出材からなる第2サポートビーム(2)を準備する。
【0051】
図3(a)に示すように、前記第2サポートビーム(2)の中央部の外周面に、コラム取付用ブラケット(27)の嵌合部(28)を外嵌すると共に、前記第2サポートビーム(2)の左側端部の外周面に、フロントピラー取付用サイドブラケット(21)の嵌合部(22)を外嵌する。
【0052】
次に、図3(b)に示すように、前記第2サポートビーム(2)の外周面における取付用ブラケット嵌合部(22)(28)の左右両側周囲部を除く残りの部位を、上下分割可能な割型からなる押さえ具(51)(53)で挟み込んで押さえた状態で保持する。更に、コラム取付用ブラケット(27)の外側を上下分割可能な割型からなる押さえ具(52)で挟み込んで押さえた状態で保持する。なお、取付用ブラケット(27)を押さえる押さえ具(52)の配置は、必須ではない。例えば、取付用ブラケット(27)が、流体に対して所定の圧力を加えることで生じる内圧に対し、十分な強度、剛性を有する場合には、前記押さえ具(52)の配置は不要である。
【0053】
また、図3(b)に示すように、第2サポートビーム(2)の右側端部を封止具(61)で液密状態に封止する。この封止具(61)は、略円盤形状であり、その片面に弾性シール部材(61A)が一体化されており、該弾性シール部材(61A)を第2サポートビーム(2)の右側端部の開口面に当接させた状態で封止具(61)に対して外部から内方への軸力を負荷することによって、第2サポートビーム(2)の右側端部を液密状態に封止する。
【0054】
更に、図3(b)に示すように、第2サポートビーム(2)の左側端部を封止具(62)で液密状態に封止する。この封止具(62)は、略円盤形状であり、その片面に弾性シール部材(62A)が一体化されており、該弾性シール部材(62A)を第2サポートビーム(2)の左側端部の開口面に当接させた状態で封止具(62)に対して外部から内方への軸力を負荷することによって、第2サポートビーム(2)の左側端部を液密状態に封止する。この封止具(62)には、その厚さ方向に貫通する貫通孔(63)(63)が形成されている。
【0055】
しかる後、前記封止具(62)の貫通孔(63)(63)を介して第2サポートビーム(2)内に、水、オイル等の流体を封入し、この流体に対して所定の圧力を加える。圧力は、特に限定されるものではないが、通常5〜70MPaの範囲である。
【0056】
流体に対して所定の圧力を加えると、即ち前記封止具(61)(62)に対して外部から内方への圧力を加えつつ、前記押さえ具(51)(52)(53)に対して外部から内方への圧力を加えて拘束した状態で、流体に対して所定の圧力を加えると、図3(c)に示すように、前記第2サポートビーム(2)における取付用ブラケット嵌合部(22)(28)の取付位置の左右両側周囲部が拡径して第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)を形成し、これら両側の第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)によって前記取付用ブラケット嵌合部(22)(28)を挟み込み固定するものとなる。以上の図3(a)(b)(c)で示した工程が第1工程である。
【0057】
次に、封止具(61)を取り外した後、図4(a)に示すように、前記第2サポートビーム(2)の内部に前記第1サポートビーム(1)の一端側の一部を挿入配置する。また、この第1サポートビーム(1)における前記第2サポートビーム(2)で被覆されていない領域(非被覆領域)に取付用ブラケット(24)(30)(33)(36)の嵌合部(25)(31)(34)(37)を外嵌めする。即ち、図4(a)に示すように、前記第1サポートビーム(1)の非被覆領域の略中央部の外周面に、オーディオ取付用ブラケット(33)の嵌合部(34)およびグローブボックス取付用ブラケット(36)の嵌合部(37)を外嵌する。更に、前記第1サポートビーム(1)の非被覆領域の略中央部から右端部側へ寄った位置の外周面に、エアバッグユニット取付用ブラケット(30)の嵌合部(31)を外嵌する。更に、前記第1サポートビーム(1)の右側端部の外周面に、フロントピラー取付用ブラケット(24)の嵌合部(25)を外嵌する。
【0058】
また、図4(a)に示すように、前記両サポートビーム(1)(2)の外周面における取付用ブラケット嵌合部(22)(25)(28)(31)(34)(37)の左右両側周囲部を除く残りの部位を、上下分割可能な割型からなる押さえ具(51)(53)(55)(56)(57)(59)で挟み込んで押さえた状態で保持する。更に、コラム取付用ブラケット(27)の外側を上下分割可能な割型からなる押さえ具(52)で挟み込んで押さえた状態で保持し、エアバッグユニット取付用ブラケット(30)の外側を上下分割可能な割型からなる押さえ具(58)で挟み込んで押さえた状態で保持する(図4(a)参照)。なお、取付用ブラケット(27)(30)を押さえる押さえ具(52)(58)の配置は、必須ではない。例えば、取付用ブラケット(27)(30)が、流体に対して所定の圧力を加えることで生じる内圧に対し、十分な強度、剛性を有する場合には、前記押さえ具(52)(58)の配置は不要である。
【0059】
更に、図4(a)に示すように、前記第2サポートビーム(2)の左側端部を封止具(62)で液密状態に封止すると共に、前記第1サポートビーム(1)の右側端部を封止具(61)で液密状態に封止する
しかる後、前記封止具(62)の貫通孔(63)(63)を介して第1サポートビーム(1)内に、水、オイル等の流体を封入し、この流体に対して所定の圧力を加える。圧力は、特に限定されるものではないが、通常5〜70MPaの範囲である。
【0060】
流体に対して所定の圧力を加えると、即ち前記封止具(61)(62)に対して外部から内方への圧力を加えつつ、前記押さえ具(51)(52)(53)(55)(56)(57)(58)(59)に対して外部から内方への圧力を加えて拘束した状態で、流体に対して所定の圧力を加えると、図4(b)に示すように、前記第1サポートビーム(1)における前記第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)の対応領域が拡径して第1拡径部(11A)(11B)(12A)(12B)を形成し、該第1拡径部(11A)(11B)(12A)(12B)が前記第2サポートビーム(2)の第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)の内側凹部内に侵入して係止すると共に、前記第1サポートビーム(1)における取付用ブラケット嵌合部(25)(31)(34)(37)の取付位置の左右両側周囲部が拡径して第3拡径部(14A)(14B)(16A)(16B)(17A)(17B)(18A)(18B)を形成し、これら両側の第3拡径部(14A)(14B)(16A)(16B)(17A)(17B)(18A)(18B)によって前記取付用ブラケット嵌合部(25)(31)(34)(37)を挟み込み固定するものとなる。以上の図4(a)(b)で示した工程が第2工程である。
【0061】
次いで、押さえ具(51)(52)(53)(55)(56)(57)(58)(59)及び封止具(61)(62)を取り外して、流体を除去すれば、図1、2に示すステアリングサポートビーム(10)が得られる。
【0062】
次に、第1製造方法の変形例を図5及び図6を参照しつつ説明する。この製造方法では、図5(b)(c)及び図6(a)(b)に示すように、両サポートビーム(1)(2)の内部に内周面に沿う態様で弾性チューブ材(筒状の弾性部材)(80)を配置せしめた状態でサポートビーム(1)(2)の内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加える操作を行うものとする以外は、前記第1製造方法と同様に操作を行って拡径する。この製造方法では、弾性チューブ材(80)に対して流体を介して所定の圧力を加えるので、十分に拡径することができる。前記弾性チューブ材(80)としては、特に限定されないが、硬質ゴムが好適である。
【0063】
前記第1製造方法において、前記流体としては、特に限定されるものではないが、例えば水、オイル等が挙げられる。
【0064】
次に、弾性部材を利用した第2製造方法について図7及び図8を参照しつつ説明する。この第2製造方法は、両サポートビーム(1)(2)の内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加える操作を行う代わりに、加圧により弾性変形可能な弾性部材(66)を封入して該弾性部材(66)に対して所定の圧力を加える操作を行うものとすると共に、両端に封止具(61)(62)を配置する代わりに、第1工程では第2サポートビーム(2)の両端部内に押圧具(64)(65)をそれぞれ内挿配置し、第2工程では第1サポートビーム(1)の両端部内に押圧具(64)(65)をそれぞれ内挿配置するものとした以外は、前記第1製造方法と同様であるので、同様の部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
この第2製造方法では、図7(b)(c)に示すように、第1工程において、第2サポートビーム(2)の内部に加圧により弾性変形可能な弾性部材(66)を封入して該弾性部材(66)に対して押圧具(64)(65)を介して外部から所定の圧力を加える。そうすると、図7(c)に示すように、前記第2サポートビーム(2)における取付用ブラケット嵌合部(22)(28)の取付位置の左右両側周囲部が拡径して第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)を形成し、これら両側の第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)によって前記取付用ブラケット嵌合部(22)(28)を挟み込み固定する。また、第2工程では、図8(a)(b)に示すように、第1サポートビーム(1)の内部に加圧により弾性変形可能な弾性部材(66)を封入して該弾性部材(66)に対して押圧具(64)(65)を介して外部から所定の圧力を加える。そうすると、図8(b)に示すように、前記第1サポートビーム(1)における前記第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)の対応領域が拡径して第1拡径部(11A)(11B)(12A)(12B)を形成し、該第1拡径部(11A)(11B)(12A)(12B)が前記第2サポートビーム(2)の第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)の内側凹部内に侵入して係止すると共に、前記第1サポートビーム(1)における取付用ブラケット嵌合部(25)(31)(34)(37)の取付位置の左右両側周囲部が拡径して第3拡径部(14A)(14B)(16A)(16B)(17A)(17B)(18A)(18B)を形成し、これら両側の第3拡径部(14A)(14B)(16A)(16B)(17A)(17B)(18A)(18B)によって前記取付用ブラケット嵌合部(25)(31)(34)(37)を挟み込み固定するものとなる。即ち、図8(a)における第1サポートビーム(1)の押さえ具(51)(52)(53)(55)(56)(57)(58)(59)で押さえていない部位を拡径することができる。こうして図1、2に示すステアリングサポートビーム(10)を製造することができる。
【0066】
次に、電磁成形を利用した第3製造方法について図9及び図10を参照しつつ説明する。この第3製造方法は、両サポートビーム(1)(2)の内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加える操作を行う代わりに、両サポートビーム(1)(2)の内部に電磁成形用コイル(70)を配置せしめて該コイル(70)に通電する操作を行うものとすると共に、両端の封止具(61)(62)を配置しないものとした以外は、前記第1製造方法と同様であるので、同様の部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
この第3製造方法では、図9(b)(c)、図10(a)(b)に示すように、両サポートビーム(1)(2)の内部に電磁成形用コイル(70)を配置せしめる。好ましくは、電磁成形用コイル(70)を前記両サポートビーム(1)(2)の内部空間における該サポートビーム(1)(2)内周面の近傍位置に配置する。しかして、例えばコイル(70)に大電流を急激に通電すると、サポートビーム(1)(2)にうず電流と呼ばれる誘導電流が流れてサポートビーム(1)(2)がジュール熱で加熱されると共に、電磁力がサポートビーム(1)(2)を外側に圧する(押す)方向に働くので、即ち加熱しつつ外方に向けて圧するので、第1工程では、図9(c)に示すように、前記第2サポートビーム(2)における取付用ブラケット嵌合部(22)(28)の取付位置の左右両側周囲部が拡径して第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)を形成し、これら両側の第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)によって前記取付用ブラケット嵌合部(22)(28)を挟み込み固定し、また第2工程では、図10(a)(b)に示すように、前記第1サポートビーム(1)における前記第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)の対応領域が拡径して第1拡径部(11A)(11B)(12A)(12B)を形成し、該第1拡径部(11A)(11B)(12A)(12B)が前記第2サポートビーム(2)の第2拡径部(13A)(13B)(15A)(15B)の内側凹部内に侵入して係止すると共に、前記第1サポートビーム(1)における取付用ブラケット嵌合部(25)(31)(34)(37)の取付位置の左右両側周囲部が拡径して第3拡径部(14A)(14B)(16A)(16B)(17A)(17B)(18A)(18B)を形成し、これら両側の第3拡径部(14A)(14B)(16A)(16B)(17A)(17B)(18A)(18B)によって前記取付用ブラケット嵌合部(25)(31)(34)(37)を挟み込み固定するものとなる。即ち、図10(a)における第1サポートビーム(1)の押さえ具(51)(52)(53)(55)(56)(57)(58)(59)で押さえていない部位を拡径することができる。こうして図1、2に示すステアリングサポートビーム(10)を製造することができる。
【0068】
図9、10に示す実施形態では、電磁成形用コイル(70)を前記両サポートビーム(1)(2)の内部空間における該サポートビーム(1)(2)内周面の全面に沿って配置しているが、例えば拡径したい位置に対して選択的に電磁成形用コイル(70)を配置するようにしても良い。
【0069】
この発明において、前記第1拡径部(11)(12)、前記第2拡径部(13)(15)及び前記第3拡径部(14)(16)(17)(18)の幅(W)は、特に限定されないが、5〜30mmに設定されるのが好ましい。また、これら拡径部の幅は、全て同一幅に設定されるのが好ましい。また、前記拡径部(11〜18)の変形量(拡径量)(h)は、特に限定されないものの、0.5〜3mmに設定されるのが好ましい。
【0070】
前記第1サポートビーム(1)及び第2サポートビーム(2)の外径は、60〜100mmに設定されるのが好ましい(特にサポートビームがアルミニウム材で構成される場合にはこの範囲に設定されるのが良い)。また、前記第1サポートビーム(1)及び第2サポートビーム(2)の肉厚は、1.5〜5mmに設定されるのが好ましい(特にサポートビームがアルミニウム材で構成される場合にはこの範囲に設定されるのが良い)。
【0071】
なお、上記実施形態では、サポートビーム(1)(2)は、断面が楕円状に形成されているが、特にこのような形状に限定されるものではなく、例えば断面が四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形状や、その他の異形断面形状に形成されていても良い。中でも、サポートビーム(1)(2)は、断面が楕円状または多角形状に形成されるのが好ましく、この場合には取付用ブラケットの嵌合部が固定された状態時においてこれらがサポートビーム(1)(2)の周方向に回転移動するのを確実に防止できる利点がある。また、例えばサポートビーム(1)(2)が断面多角形状である場合には、前記取付用ブラケットの嵌合部は、この断面多角形状のサポートビーム(1)(2)に外嵌め可能な多角形状に構成すれば良い。前記サポートビーム(1)(2)が、その他の異形断面形状に形成された場合も同様である。なお、サポートビーム(1)(2)として断面多角形状を採用する場合には、角部を角張らせないで角部を略円弧状の形状にする(丸みを持たせる)のが良く、これにより拡径時の割れ発生を十分に防止することができる。
【0072】
なお、前記取付用ブラケットの嵌合部が固定された状態時においてこれらがサポートビーム(1)(2)の周方向に回転移動するのを防止する手段としては、前述した構成以外に、例えば前記取付用ブラケット嵌合部(22)(25)(28)(31)(34)(37)の内周面に軸線方向に伸びる凹溝を形成するものとし、前記流体に対して所定の圧力を加える(その他、電磁成形する等)ことによって、前記第1サポートビーム(1)及び第2サポートビーム(2)における凹溝対応位置を拡径せしめて拡径部を形成し、該拡径部を前記取付用ブラケット嵌合部の凹溝内に侵入させて係止する構成(特開平7ー116751号公報参照)等が挙げられる。
【0073】
また、上記実施形態では、第1サポートビーム(1)、第2サポートビーム(2)及び取付用ブラケット(21)(24)(27)(30)(33)(36)は、いずれも押出材からなる構成が採用されているが、特にこのような構成に限定されるものではない。例えば、第1サポートビーム(1)、第2サポートビーム(2)及び取付用ブラケット(21)(24)(27)(30)(33)(36)は、樹脂(FRPも含む)の射出成形材によって形成されていても良い。また、第1サポートビーム(1)及び第2サポートビーム(2)は、鉄や銅で形成されていても良いし、或いはアルミニウムや鉄の電縫管で構成されても良い。また、取付用ブラケット(21)(24)(27)(30)(33)(36)は鋳造(Mg鋳造等)、鍛造、板金プレス(鉄板金等)、鋳物(鋳鉄等)、押出+切断により形成されても良い。
【0074】
前記押出材は、軽金属またはその合金からなる押出材であるのが好ましい。中でも、前記押出材は、アルミニウム押出材であるのが特に好ましく、この場合には優れた軽量性を維持しつつ優れた生産性を確保することができる。前記アルミニウム押出材としては、例えば5000系、6000系、7000系等を例示できる。
【0075】
或いはまた、前記押出材は、合成樹脂押出材であるのが好ましく、この場合には優れた軽量性を維持しつつ優れた生産性を確保することができる。
【0076】
また、例えば、前記取付用ブラケット(21)(24)(27)(30)(33)(36)を鉄製の板金で構成し、前記第1サポートビーム(1)及び第2サポートビーム(2)をアルミニウム押出材で構成しても良い。この場合、素材間の熱膨張率の差によるかしめ強度の低下を十分に考慮してかしめ代(しろ)を設計する必要がある。
【0077】
前記取付用ブラケット(21)(24)(27)(30)(33)(36)の嵌合部(22)(25)(28)(31)(34)(37)は、その内部の空間内に前記サポートビームが挿入されることによって該サポートビームに外嵌めでき得る形状であれば特に限定されない。即ち、前記取付用ブラケットの嵌合部(22)(25)(28)(31)(34)(37)は、サポートビームに外嵌めされた状態において外方に向けて離脱しない(外れない)形状であれば特に限定されない。例えば、前記取付用ブラケットの嵌合部(22)(25)(28)(31)(34)(37)は、上記実施形態のように断面が楕円状の筒形状に形成されていても良いし、或いはブラケットの嵌合部(22)(25)(28)(31)(34)(37)の周方向の一部に開口部が設けられていても良い。
【0078】
なお、前記サポートビーム(1)(2)に、前記取付用ブラケット(21)(24)(27)(30)(33)(36)の嵌合部(22)(25)(28)(31)(34)(37)が外嵌めされた状態時において、クリアランス(サポートビームと嵌合部との隙間)は、小さい方が良く、中でもクリアランスが0.2〜0.3mmになるように設計されるのが好ましいが、特にこのような範囲に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
この発明に係るステアリングサポートビームは、例えば自動車等の車体の左右間に架設して用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明の一実施形態に係るステアリングサポートビームを示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線の断面図である。
【図3】この発明に係る流体圧を利用した第1製造方法の第1工程の一例を示す断面図であり、(a)は第2サポートビームに対してブラケットを配置した状態、(b)はさらに押さえ具を配置した状態、(c)は流体圧を加えた状態をそれぞれ示す。
【図4】この発明に係る流体圧を利用した第1製造方法の第2工程の一例を示す断面図であり、(a)は第2サポートビーム内に第1サポートビームの一端部を挿入せしめてブラケット及び押さえ具を配置した状態、(b)は流体圧を加えた状態をそれぞれ示す。
【図5】この発明に係る流体圧を利用した第1製造方法の他の例の第1工程を示す断面図であり、(a)は第2サポートビームに対してブラケットを配置した状態、(b)はさらに押さえ具を配置した状態、(c)は流体圧を加えた状態をそれぞれ示す。
【図6】この発明に係る流体圧を利用した第1製造方法の他の例の第2工程を示す断面図であり、(a)は第2サポートビーム内に第1サポートビームの一端部を挿入せしめてブラケット及び押さえ具を配置した状態、(b)は流体圧を加えた状態をそれぞれ示す。
【図7】この発明に係る弾性部材を利用した第2製造方法の第1工程の一例を示す断面図であり、(a)は第2サポートビームに対してブラケットを配置した状態、(b)はさらに押さえ具を配置した状態、(c)は流体圧を加えた状態をそれぞれ示す。
【図8】この発明に係る弾性部材を利用した第2製造方法の第2工程の一例を示す断面図であり、(a)は第2サポートビーム内に第1サポートビームの一端部を挿入せしめてブラケット及び押さえ具を配置した状態、(b)は流体圧を加えた状態をそれぞれ示す。
【図9】この発明に係る電磁成形を利用した第3製造方法の第1工程の一例を示す断面図であり、(a)は第2サポートビームに対してブラケットを配置した状態、(b)はさらに押さえ具を配置した状態、(c)は流体圧を加えた状態をそれぞれ示す。
【図10】この発明に係る電磁成形を利用した第3製造方法の第2工程の一例を示す断面図であり、(a)は第2サポートビーム内に第1サポートビームの一端部を挿入せしめてブラケット及び押さえ具を配置した状態、(b)は流体圧を加えた状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0081】
1…第1サポートビーム
2…第2サポートビーム
10…ステアリングサポートビーム
11、12…第1拡径部(内側拡径部)
13、15…第2拡径部(外側拡径部)
14、16、17、18…第3拡径部
21…取付用サイドブラケット
22…嵌合部
24…取付用サイドブラケット
25…嵌合部
27…コラム取付用ブラケット
28…嵌合部
30…エアバッグユニット取付用ブラケット
31…嵌合部
33…オーディオ取付用ブラケット
34…嵌合部
36…グローブボックス取付用ブラケット
37…嵌合部
51〜53、55〜59…押さえ具
66…弾性部材
70…コイル
80…弾性チューブ材(筒状の弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の第1サポートビームと、該第1サポートビームの外径より大きい内径を有する筒状の第2サポートビームとを備え、前記第2サポートビーム内に前記第1サポートビームの一部が挿入配置され、
前記第2サポートビームに1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされ、前記第2サポートビームにおける前記ブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部が拡径されることで第2拡径部が形成され、前記取付用ブラケットの嵌合部がその両側周囲部にある前記第2拡径部によって挟み込まれることによって、前記取付用ブラケットが前記第2サポートビームに対して固定され、
前記第1サポートビームにおける前記第2拡径部の対応領域が拡径されることで形成された第1拡径部が、前記第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入して係止されることによって、前記第1サポートビームと前記第2サポートビームとが連結固定され、
前記第1サポートビームにおける前記第2サポートビームで被覆されていない領域に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされ、前記第1サポートビームにおける前記ブラケット嵌合部取付位置の両側周囲部が拡径されることで第3拡径部が形成され、前記取付用ブラケットの嵌合部がその両側周囲部にある前記第3拡径部によって挟み込まれることによって、前記取付用ブラケットが前記第1サポートビームに対して固定されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
【請求項2】
前記第1拡径部、第2拡径部及び第3拡径部は、いずれもサポートビームの周方向に沿って形成されている請求項1に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項3】
前記第1サポートビーム、前記第2サポートビーム及び取付用ブラケット嵌合部は、いずれも断面楕円状である請求項1または2に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項4】
筒状の第2サポートビームに1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記第2サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえると共に前記第2サポートビームの両端部を封止した状態で、前記第2サポートビームの内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加えることによって、前記第2サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第2拡径部を形成し、これら両側の第2拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第1工程と、
前記拡径後の第2サポートビームの内部に筒状の第1サポートビームの一部を挿入配置し、該第1サポートビームにおける前記第2サポートビームで被覆されていない領域に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記両サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえると共に前記サポートビームの両端部を封止した状態で、前記両サポートビームの内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加えることによって、前記第1サポートビームにおける前記第2拡径部の対応領域を拡径せしめて第1拡径部を形成し、該第1拡径部を前記第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入させて係止すると共に、前記第1サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第3拡径部を形成し、これら両側の第3拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第2工程とを包含することを特徴とするステアリングサポートビームの製造方法。
【請求項5】
前記第1工程及び第2工程において、前記サポートビームの内周面に沿わせる態様で筒状の弾性部材を配置せしめてサポートビームの内部に流体を封入して該流体に対して所定の圧力を加える請求項4に記載のステアリングサポートビームの製造方法。
【請求項6】
筒状の第2サポートビームに1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記第2サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえると共に前記第2サポートビームの両端部を封止した状態で、前記第2サポートビームの内部に弾性部材を封入して該弾性部材に対して所定の圧力を加えることによって、前記第2サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第2拡径部を形成し、これら両側の第2拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第1工程と、
前記拡径後の第2サポートビームの内部に筒状の第1サポートビームの一部を挿入配置し、該第1サポートビームにおける前記第2サポートビームで被覆されていない領域に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記両サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえると共に前記サポートビームの両端部を封止した状態で、前記両サポートビームの内部に弾性部材を封入して該弾性部材に対して所定の圧力を加えることによって、前記第1サポートビームにおける前記第2拡径部の対応領域を拡径せしめて第1拡径部を形成し、該第1拡径部を前記第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入させて係止すると共に、前記第1サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第3拡径部を形成し、これら両側の第3拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第2工程とを包含することを特徴とするステアリングサポートビームの製造方法。
【請求項7】
前記弾性部材として硬質ゴムを用いる請求項6に記載のステアリングサポートビームの製造方法。
【請求項8】
筒状の第2サポートビームに1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記第2サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえた状態で、前記第2サポートビームの内部に電磁成形用コイルを配置せしめて該コイルに通電することによって、前記第2サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第2拡径部を形成し、これら両側の第2拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第1工程と、
前記拡径後の第2サポートビームの内部に筒状の第1サポートビームの一部を挿入配置し、該第1サポートビームにおける前記第2サポートビームで被覆されていない領域に1ないし複数個の取付用ブラケットの嵌合部を外嵌めし、前記両サポートビームの外周面における取付用ブラケット嵌合部の両側周囲部を除く残りの部位を押さえ具で押さえた状態で、前記両サポートビームの内部に電磁成形用コイルを配置せしめて該コイルに通電することによって、前記第1サポートビームにおける前記第2拡径部の対応領域を拡径せしめて第1拡径部を形成し、該第1拡径部を前記第2サポートビームの第2拡径部の内側凹部内に侵入させて係止すると共に、前記第1サポートビームにおける取付用ブラケット嵌合部の取付位置の両側周囲部を拡径せしめて第3拡径部を形成し、これら両側の第3拡径部によって前記取付用ブラケット嵌合部を挟み込み固定する第2工程とを包含することを特徴とするステアリングサポートビームの製造方法。
【請求項9】
前記電磁成形用コイルを前記サポートビームの内部空間における該サポートビーム内周面の近接位置に配置する請求項8に記載のステアリングサポートビームの製造方法。
【請求項10】
前記第2工程において、前記第2サポートビームの内部の全長にわたって前記第1サポートビームを挿入配置する請求項4〜9のいずれか1項に記載のステアリングサポートビームの製造方法。
【請求項11】
請求項4〜10のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたステアリングサポートビーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−264469(P2006−264469A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84278(P2005−84278)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】