説明

ステアリング装置

【課題】コラムと車体取付けブラケットとの間のチルト摺動面や送りナットの偏摩耗が減少すると共に、チルト摺動面やチルト駆動機構の耐久性が向上し、チルト位置調整が円滑に行われるようにしたステアリング装置を提供する。
【解決手段】荷重N1とN2はほぼ同一であり、摩擦係数μ1とμ2が同一であれば、距離L2が距離L1よりも長く形成されているため、時計回りの回転モーメントM2の方が反時計回りの回転モーメントM1よりも大きくなり、M2−M1=M4の時計回りの回転モーメントがロアーコラム3に作用する。その結果、推力F3によってロアーコラム3に作用する反時計回りの回転モーメントM3が、時計回りの回転モーメントM4によって打ち消され、反時計回りの回転モーメントM3が小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリング装置、特に、運転者の体格や運転姿勢に応じて、電動アクチュエータを動力源として、ステアリングホイールのチルト位置を調整することができるチルト位置調整式の電動ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の体格や運転姿勢に応じてステアリングホイールの上下方向位置を調整する為の装置として、チルト式ステアリング装置と呼ばれる電動ステアリング装置がある。また、ステアリングホイールの上下方向位置と前後方向位置の両方の位置を調整する為の装置として、チルト・テレスコピック式ステアリング装置と呼ばれる電動ステアリング装置がある。
【0003】
このような電動ステアリング装置として、特許文献1の電動ステアリング装置がある。特許文献1に示す従来の電動ステアリング装置は、チルト駆動用の送りねじ軸が1本で構成されているため、コラムの中心軸線に対して右側か左側のどちらか一方の側に送りねじ軸が配置されている。従って、チルト位置調整時には、一方の側のコラム側面に係合する送りナットの推力によって、コラムの中心軸線を中心として、コラムに回転モーメントが作用する。
【0004】
この回転モーメントがコラムに作用すると、コラムと車体取付けブラケットとの間のチルト摺動面や送りナットに偏摩耗が生じ、チルト位置調整が円滑に行われなくなると共に、チルト摺動面やチルト駆動機構の耐久性が低下する問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−2503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コラムと車体取付けブラケットとの間のチルト摺動面や送りナットの偏摩耗が減少すると共に、チルト摺動面やチルト駆動機構の耐久性が向上し、チルト位置調整が円滑に行われるようにしたステアリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、車体後方側にステアリングホイールが装着されるステアリングシャフト、車体に取り付け可能な車体取付けブラケットの左右の側板にチルト摺動可能に挟持された左右の側面を有し、上記ステアリングシャフトを回転可能に軸支するとともに、チルト中心軸を支点とするチルト位置調整、または、チルト中心軸を支点とするチルト位置調整と、上記ステアリングシャフトの中心軸線に沿ったテレスコピック位置調整の両方が可能なコラムを備えたステアリング装置において、上記コラムの中心軸線から左側チルト摺動面までの距離と、上記コラムの中心軸線から右側チルト摺動面までの距離のうちのいずれか一方が他方よりも長く形成され、上記コラムの中心軸線からの距離が長い方のコラム側面に係合して、チルト駆動用の推力をコラムに付与するチルト駆動機構を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
【0008】
第2番目の発明は、第1番目の発明のステアリング装置において、上記コラムの中心軸線からの距離が長い方のチルト摺動面の摩擦係数よりも、上記コラムの中心軸線からの距離が短い方のチルト摺動面の摩擦係数を小さくしたことを特徴とするステアリング装置である。
【0009】
第3番目の発明は、第2番目の発明のステアリング装置において、上記コラムの中心軸線からの距離が短い方のチルト摺動面に固体潤滑剤がコーティングされていることを特徴とするステアリング装置である。
【0010】
第4番目の発明は、第3番目の発明のステアリング装置において、上記固体潤滑剤は、二硫化モリブデン、四フッ化エチレン、グラファイト、ふっ化黒鉛、窒化ほう素、二硫化タングステン、メラミンシアヌレートのうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とするステアリング装置である。
【0011】
第5番目の発明は、第2番目の発明のステアリング装置において、上記コラムの中心軸線からの距離が短い方のコラム側面と車体取付けブラケットの側板との間にはスペーサが介挿され、上記スペーサの内側面またはコラム側面のうちの少なくともいずれか一方の側面に固体潤滑剤がコーティングされていることを特徴とするステアリング装置である。
【0012】
第6番目の発明は、第5番目の発明のステアリング装置において、上記固体潤滑剤は、二硫化モリブデン、四フッ化エチレン、グラファイト、ふっ化黒鉛、窒化ほう素、二硫化タングステン、メラミンシアヌレートのうちの少なくともいずれか一つであることを特徴とするステアリング装置である。
【0013】
第7番目の発明は、第1番目から第6番目までのいずれかの発明のステアリング装置において、操舵補助用モータの駆動力によって、減速機構を介して所定の操舵補助力を上記ステアリングシャフトに付与する操舵補助機構を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
【0014】
第8番目の発明は、第1番目から第6番目までのいずれかの発明のステアリング装置において、上記チルト駆動機構は、チルト用モータによって駆動され、互いに螺合する送りねじ軸と送りナットの相対移動で、上記コラムに推力を付与する送りねじ機構であることを特徴とするステアリング装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のステアリング装置では、コラムの中心軸線から左側チルト摺動面までの距離と、コラムの中心軸線から右側チルト摺動面までの距離のうちのいずれか一方が他方よりも長く形成され、コラムの中心軸線からの距離が長い方のコラム側面に係合して、コラムにチルト駆動用の推力を付与するチルト駆動機構を備えている。従って、チルト駆動用の推力によってコラムに作用する回転モーメントを打ち消す方向の回転モーメントが、チルト摺動面に作用する。
【0016】
そのため、コラムと車体取付けブラケットとの間のチルト摺動面やチルト駆動機構の偏摩耗が小さくなり、チルト位置調整が円滑に行われると共に、チルト駆動機構の耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下の実施例では、ステアリングホイールの上下方向位置と前後方向位置の両方の位置を調整する、チルト・テレスコピック式の電動ステアリング装置に本発明を適用した例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の電動ステアリング装置101を車両に取り付けた状態を示す全体斜視図である。電動ステアリング装置101は、ステアリングシャフト102を回動自在に軸支している。ステアリングシャフト102には、その上端(車体後方側)にステアリングホイール103が装着され、ステアリングシャフト102の下端(車体前方側)には、ユニバーサルジョイント104を介して中間シャフト105が連結されている。
【0019】
中間シャフト105には、その下端にユニバーサルジョイント106が連結され、ユニバーサルジョイント106には、ラックアンドピニオン機構等からなるステアリングギヤ107が連結されている。
【0020】
運転者がステアリングホイール103を回転操作すると、ステアリングシャフト102、ユニバーサルジョイント104、中間シャフト105、ユニバーサルジョイント106を介して、その回転力がステアリングギヤ107に伝達され、ラックアンドピニオン機構を介して、タイロッド108を移動し、車輪の操舵角を変えることができる。
【0021】
図2は本発明の実施例1の電動ステアリング装置101の要部を示す正面図である。図3は図2のA−A断面図であって、車体取付けアッパーブラケットとコラムとの間のチルト摺動部を示す。図4は図2のB−B断面図であって、チルト駆動機構の要部を示す。
【0022】
図2から図4に示すように、本発明の電動ステアリング装置101は、車体取付けアッパーブラケット2、ロアーコラム(アウターコラム)3、アッパーコラム(インナーコラム)4等から構成されている。
【0023】
車体後方側の車体取付けアッパーブラケット2は、その上板21が車体11に固定されている。ロアーコラム3の車体前方側端部にはブラケット31が一体的に形成され、このブラケット31と車体取付けロアーブラケット12とがチルト中心軸32によって連結されている。車体取付けロアーブラケット12は車体11に固定されている。
【0024】
このチルト中心軸32を支点として、中空円筒状のロアーコラム3の車体前方側端部が、車体11に、チルト位置調整(図2の紙面に平行な平面内で揺動)可能に軸支されている。すなわち、本発明の実施例では、車体取付けアッパーブラケット2と車体取付けロアーブラケット12とが、各々別体で構成されている。車体取付けアッパーブラケット2と車体取付けロアーブラケット12は、一個の車体取付けブラケッで一体的に構成してもよい。
【0025】
ロアーコラム3の内周には、アッパーコラム4がテレスコピック位置調整(ロアーコラム3の中心軸線に平行に摺動)可能に嵌合している。アッパーコラム4には、上部ステアリングシャフト102Aが回動可能に軸支され、上部ステアリングシャフト102Aの車体後方側(図2の左側)端部には、ステアリングホイール103が固定されている。
【0026】
ロアーコラム3には、下部ステアリングシャフト102Bが回動可能に軸支され、下部ステアリングシャフト102Bは上部ステアリングシャフト102Aとスプライン嵌合している。従って、アッパーコラム4のテレスコピック位置に関わらず、上部ステアリングシャフト102Aの回転が下部ステアリングシャフト102Bに伝達される。
【0027】
下部ステアリングシャフト102Bの車体前方側(図2の右側)は、ユニバーサルジョイント104(図1参照)を介してステアリングギヤ107(図1参照)に連結され、ステアリングホイール103を運転者が手で回すと、上部ステアリングシャフト102Aを介して下部ステアリングシャフト102Bが回動し、車輪の操舵角を変えることができる。
【0028】
車体取付けアッパーブラケット2の上板21には、上板21から下方に平行に延びる左側板22と右側板23が形成されている。左側板22、右側板23の内側面221、231に、ロアーコラム3の左側面33と右側面34がチルト摺動可能に挟持されている。
【0029】
ロアーコラム3の左側面33と、車体取付けアッパーブラケット2の左側板22の内側面221との間には、スペーサ7が介挿されている。また、左側板22、右側板23の下端は下板24によって連結され、上板21、左側板22、右側板23、下板24によって閉じた矩形形状を形成し、車体取付けアッパーブラケット2の剛性を向上させている。
【0030】
ロアーコラム3の下面外周には、テレスコ位置調整を行うテレスコ駆動機構5が取付けられている。また、車体取付けアッパーブラケット2の左側板22、右側板23の下方には、チルト位置調整を行うチルト駆動機構6が取付けられている。
【0031】
チルト駆動機構6用のチルト用モータ61の図示しない出力軸に取付けられたウォーム62が、送りねじ軸63(図2、図3参照)の下方に取付けられたウォームホイール64に噛み合って、チルト用モータ61の回転を送りねじ軸63に伝達している。
【0032】
送りねじ軸63は、チルト用モータ61の中心軸線に対して垂直(図2、図4の上下方向)に延び、その上端と下端が、軸受631、632によって車体取付けアッパーブラケット2に回転可能に軸支されている。
【0033】
送りねじ軸63の外周に形成された雄ねじには、角柱形状の送りナット65が螺合し、この送りねじ軸63と送りナット65によって、チルト駆動用の送りねじ機構が構成されている。送りねじ軸63が回転すると、送りナット65は垂直方向に直線運動を行う。
【0034】
送りナット65の角柱形状の外周には、角柱形状のナットホルダ67の矩形孔671が外嵌している。その結果、ナットホルダ67は、ロアーコラム3の中心軸線方向に略平行(チルト用モータ61の中心軸線に対して平行)に相対摺動可能に送りナット65に連結されている。
【0035】
また、ナットホルダ67は、その上面と下面の左右方向(図4で見て)の中央部に、ロアーコラム3の中心軸線方向に平行(図4の紙面に直交する方向、図2の左右方向)に長い長孔672、672を形成しており、上記送りねじ軸63をこれら各長孔672、672を通じて、ナットホルダ67内に挿通している。また、このナットホルダ67に上記長孔672、672を通じて挿通した送りねじ軸63の雄ねじ部に、上記送りナット65の雌ねじを螺合させている。
【0036】
また、図4に示すように、ロアーコラム3の右側面34には、断面が円形の係合孔66が形成され、この係合孔66内に、ナットホルダ67の左側面に突出して形成した円柱形状のチルト駆動力伝達突起673が、係合孔66に対して相対回転可能に内嵌している。
【0037】
従って、このナットホルダ67を介して送りナット65をロアーコラム3に連結すると、送りナット65をロアーコラム3に連結した位置と送りナット65の中心位置(送りねじ軸63の中心位置)が、ロアーコラム3の軸方向にずれることができるため、これら両運動のコラムの中心軸線方向のずれを吸収することができる。
【0038】
また、送りナット65とナットホルダ67が、ロアーコラム3の中心軸線方向に平行に円滑に相対摺動するために、送りナット65の外周とナットホルダ67の矩形孔671との間には、若干の隙間が形成されている。
【0039】
ロアーコラム3の下面外周には、図2に部分的に見えるテレスコ用モータ51が取付けられている。ロアーコラム3の下面外周には、ロアーコラム3の中心軸線に平行に送りねじ軸52が固定され、送りねじ軸52の車体後方端(図2の左端)が、アッパーコラム4の車体後方端に固定されたフランジ41の下端に連結されている。
【0040】
テレスコ用モータ51の図示しない出力軸に取付けられたウォームの回転が、図示しないウォームホイールに伝達され、送りねじ軸52に螺合する図示しない送りナットを回転させる。この送りナットの回転で送りねじ軸52を往復移動(図2の左右方向の移動)して、アッパーコラム4をテレスコピック位置調整する。
【0041】
この電動ステアリング装置101で、ステアリングホイール103のチルト位置を調整する必要が生じると、運転者は図示しないスイッチを操作して、チルト用モータ61を正逆いずれかの方向に回転させる。すると、チルト用モータ61の回転によって送りねじ軸63が回転し、送りナット65が直線運動を行う。
【0042】
すると送りナット65に外嵌するナットホルダ67のチルト駆動力伝達突起673が直線運動を行う。チルト駆動力伝達突起673は、ロアーコラム3の右側面34側に形成された係合孔66に係合しているから、チルト駆動力伝達突起673と係合孔66との係合位置で、ロアーコラム3には、図4の上下方向の推力が付与される。その結果、ロアーコラム3は、チルト中心軸32を支点として上方または下方にチルト移動する。
【0043】
また、この電動ステアリング装置101で、ステアリングホイール103のテレスコピック位置を調整する必要が生じると、運転者は図示しないスイッチを操作して、テレスコ用モータ51を正逆いずれかの方向に回転させる。すると、テレスコ用モータ51の回転によって、ロアーコラム3の中心軸線に平行に送りねじ軸52が移動することで、アッパーコラム4がテレスコピック移動を行う。
【0044】
車体取付けアッパーブラケット2の左側板22には、図3の上下方向(チルト位置調整方向)に離間して2個の雌ねじ25、25が形成され、雌ねじ25、25は、左側板22を貫通している。雌ねじ25、25には、調整ねじ8、8の雄ねじ81、81がねじ込まれている。調整ねじ8、8の右端には、雄ねじ81、81の外径よりも小径の軸部82、82が形成されている。
【0045】
スペーサ7には、雌ねじ25、25の上下方向の間隔と同一間隔で2個の貫通孔72、72が形成され、この貫通孔72、72の内径は、軸部82、82の外径よりも若干大きめに形成されている。従って、軸部82、82と貫通孔72、72の位相が一致したところで、調整ねじ8、8の雄ねじ81、81をねじ込めば、軸部82、82が貫通孔72、72に嵌入する。その結果、スペーサ7が、車体取付けアッパーブラケット2の内側面221とロアーコラム3の左側面33の所定位置に保持される。
【0046】
調整ねじ8、8の雄ねじ81、81を更にねじ込めば、雄ねじ81、81と軸部82、82の段差面が、スペーサ7の外側面73に当接して、スペーサ7をロアーコラム3の左側面33に向って押し付けることができる。その結果、製造誤差等によって、車体取付けアッパーブラケット2の内側面221とロアーコラム3の左側面33との間の間隔が傾斜していても、調整ねじ8、8の雄ねじ81、81のねじ込み量を適宜調整すれば、ロアーコラム3の左側面33にスペーサ7の内側面74を均等に当接させることができる。
【0047】
従って、ロアーコラム3と右側板23、及び、ロアーコラム3とスペーサ7との間のチルト摺動抵抗を所望の摺動抵抗に設定でき、かつ、チルト角度にかかわらず、チルト動作中のチルト摺動抵抗が一定に維持される。調整ねじ8、8の調整が完了したら、ロックナット83、83を雄ねじ81、81にねじ込んで、調整ねじ8、8を緩み止めする。
【0048】
図3に示すように、ロアーコラム3の中心軸線36からロアーコラム3の左側面33までの距離をL1、ロアーコラム3の中心軸線36からロアーコラム3の右側面34までの距離をL2とすると、L2はL1よりも長く形成されている。
【0049】
従って、この電動ステアリング装置101で、ステアリングホイール103のチルト位置を上方に調整する必要が生じ、チルト用モータ61を回転させて、例えば、送りナット65を図4の上方に直線運動させた場合を説明する。
【0050】
ロアーコラム3はチルト中心軸32を支点として上方にチルト移動し、ロアーコラム3には、図4に示すように、チルト駆動力伝達突起673と係合孔66との係合位置で、図4の上方向の推力F3が作用する。この推力F3によって、ロアーコラム3には、ロアーコラム3の中心軸線36を中心として、反時計回りの回転モーメントM3が作用する。
【0051】
ロアーコラム3がチルト中心軸32を支点として上方にチルト移動すると、ロアーコラム3の左側面33とスペーサ7の内側面74との接触面(左側チルト摺動面68)、及び、ロアーコラム3の右側面34と右側板23の内側面231との接触面(右側チルト摺動面69)には、摩擦力によって、図3の下方向の反力F1、F2が各々作用する。
【0052】
調整ねじ8、8の押し付け力によって、左側チルト摺動面68に直交する方向に作用する荷重をN1、右側チルト摺動面69に直交する方向に作用する荷重をN2とする。また、左側チルト摺動面68の摩擦係数をμ1、右側チルト摺動面69の摩擦係数をμ2にとすると、反力F1=N1×μ1、反力F2=N2×μ2、となる。
【0053】
また、この反力F1、F2によって、ロアーコラム3には、ロアーコラム3の中心軸線36を中心として、各々、反時計回りの回転モーメントM1と時計回りの回転モーメントM2が作用する。この反時計回りの回転モーメントM1=N1×μ1×L1、時計回りの回転モーメントM2=N2×μ2×L2、となる。
【0054】
荷重N1と荷重N2はほぼ同一であり、摩擦係数μ1と摩擦係数μ2が同一であれば、距離L2が距離L1よりも長く形成されているため、時計回りの回転モーメントM2の方が反時計回りの回転モーメントM1よりも大きくなり、M2−M1=M4の時計回りの回転モーメントがロアーコラム3に作用する。
【0055】
その結果、推力F3によってロアーコラム3に作用する反時計回りの回転モーメントM3が、時計回りの回転モーメントM4によって打ち消され、反時計回りの回転モーメントM3が小さくなる。
【0056】
すなわち、ロアーコラム3の左右の側面のうち、ロアーコラム3の中心軸線36からの距離が長い方の右側面34側に、チルト駆動用の推力を付与する送りねじ軸63を配置しているため、推力によってロアーコラム3に作用する回転モーメントを打ち消す方向の回転モーメントが作用する。
【0057】
そのため、ロアーコラム3と車体取付けアッパーブラケット2との間のチルト摺動面や送りナット65の偏摩耗が小さくなり、チルト位置調整が円滑に行われると共に、チルト駆動部の耐久性が向上する。
【0058】
実施例1では、ロアーコラム3の中心軸線36からの距離が長い右側面34側に、チルト駆動用の推力を付与する送りねじ軸63を配置しているが、ロアーコラム3の中心軸線36からロアーコラム3の左側面33までの距離を、ロアーコラム3の中心軸線36からロアーコラム3の右側面34までの距離よりも長く形成し、左側面33側に、チルト駆動用の推力を付与する送りねじ軸63を配置してもよい。
【実施例2】
【0059】
次に本発明の実施例2について説明する。図5は本発明の実施例2の電動ステアリング装置101の要部を示す正面図である。図6は図5のC−C断面図であって、車体取付けアッパーブラケットとコラムとの間のチルト摺動部を示す。図7は図5の−D断面図であって、チルト駆動機構の要部を示す。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0060】
実施例2は、操舵補助用モータの駆動力によって、減速機構を介して所定の操舵補助力をステアリングシャフトに付与する操舵補助機構を備えたステアリング装置に適用した例を示している。また、ロアーコラム3の中心軸線36からの距離が短い方のチルト摺動面の摩擦係数を、ロアーコラム3の中心軸線36からの距離が長い方のチルト摺動面の摩擦係数よりも小さくすることによって、推力によってロアーコラム3に作用する回転モーメントを打ち消す方向の回転モーメントが大きくなるようにした例である。
【0061】
図5から図7に示すように、本発明の実施例2の電動ステアリング装置101は、車体取付けアッパーブラケット2、ロアーコラム(アウターコラム)3、操舵補助部37(電動アシスト機構)、アッパーコラム(インナーコラム)4等から構成されている。
【0062】
車体後方側の車体取付けアッパーブラケット2は、その上板21が車体11に固定されている。ロアーコラム3の車体前方側(右側)には、操舵補助部(電動アシスト機構)37のハウジング371の左端が固定されている。操舵補助部37は、電動モータ372、減速ギヤボックス部373、出力軸374等から構成されている。操舵補助部37は、下部車体取付けブラケット375によって、チルト中心軸376を介して車体11にチルト位置調整(図5の紙面に平行な平面内で揺動)可能に支持されている。
【0063】
ロアーコラム3の内周には、アッパーコラム4がテレスコピック位置調整(ロアーコラム3の中心軸線に平行に摺動)可能に嵌合している。アッパーコラム4には、上部ステアリングシャフト102Aが回動可能に軸支され、上部ステアリングシャフト102Aの車体後方側(図5の左側)端部には、ステアリングホイール103が固定されている。
【0064】
ロアーコラム3には、図示しない下部ステアリングシャフトが回動可能に軸支され、下部ステアリングシャフトは上部ステアリングシャフト102Aとスプライン嵌合している。従って、アッパーコラム4のテレスコピック位置に関わらず、上部ステアリングシャフト102Aの回転が下部ステアリングシャフトに伝達される。
【0065】
操舵補助部37は、下部ステアリングシャフトに作用するトルクを検出し、電動モータ372を駆動して、出力軸374を所要の操舵補助力で回転させ、車体前方側に接続される図1の中間シャフト105を経由して、ステアリングギヤ107に連結され、車輪の操舵角を変えることができる。
【0066】
車体取付けアッパーブラケット2の上板21には、上板21から下方に平行に延びる左側板22と右側板23が形成されている。左側板22、右側板23の内側面221、231に、ロアーコラム3の左側面33と右側面34がチルト摺動可能に挟持されている。すなわち、ロアーコラム3の右側面34は、車体取付けアッパーブラケット2の右側板23の内側面231に直接当接している。
【0067】
また、左側板22、右側板23の下端は下板24によって連結され、上板21、左側板22、右側板23、下板24によって閉じた矩形形状を形成し、車体取付けアッパーブラケット2の剛性を向上させている。
【0068】
ロアーコラム3の下面外周には、テレスコ位置調整を行うテレスコ駆動機構5が取付けられている。また、車体取付けアッパーブラケット2の左側板22、右側板23の下方には、チルト位置調整を行うチルト駆動機構6が取付けられている。
【0069】
チルト駆動機構6用のチルト用モータ61の出力軸に取付けられたウォーム62が、送りねじ軸63の下方に取付けられたウォームホイール64に噛み合って、チルト用モータ61の回転を送りねじ軸63に伝達している。
【0070】
送りねじ軸63は、チルト用モータ61の中心軸線に対して垂直(図5、図7の上下方向)に延び、その上端と下端が、軸受631、632によって車体取付けアッパーブラケット2に回転可能に軸支されている。
【0071】
送りねじ軸63の外周に形成された雄ねじには、角柱形状の送りナット65が螺合し、この送りねじ軸63と送りナット65によって、チルト駆動用の送りねじ機構が構成されている。送りねじ軸63が回転すると、送りナット65は垂直方向に直線運動を行う。
【0072】
送りナット65の角柱形状の外周には、角柱形状のナットホルダ67の矩形孔671が外嵌している。その結果、ナットホルダ67は、ロアーコラム3の中心軸線方向に略平行(チルト用モータ61の中心軸線に対して平行)に相対摺動可能に送りナット65に連結されている。
【0073】
また、ナットホルダ67は、その上面と下面の左右方向(図7で見て)の中央部に、ロアーコラム3の中心軸線方向に平行(図7の紙面に直交する方向、図5の左右方向)に長い長孔672、672を形成しており、上記送りねじ軸63をこれら各長孔672、672を通じて、ナットホルダ67内に挿通している。また、このナットホルダ67に上記長孔672、672を通じて挿通した送りねじ軸63の雄ねじ部に、上記送りナット65の雌ねじを螺合させている。
【0074】
また、図7に示すように、ロアーコラム3の右側面34には、断面が円形の係合孔66が形成され、この係合孔66内に、ナットホルダ67の左側面に突出して形成した円柱形状のチルト駆動力伝達突起673が、係合孔66に対して相対回転可能に内嵌している。
【0075】
従って、このナットホルダ67を介して送りナット65をロアーコラム3に連結すると、送りナット65をロアーコラム3に連結した位置と送りナット65の中心位置(送りねじ軸63の中心位置)が、ロアーコラム3の軸方向にずれることができるため、これら両運動のロアーコラム3の中心軸線方向のずれを吸収することができる。また、送りナット65とナットホルダ67が、ロアーコラム3の中心軸線方向に平行に円滑に相対摺動するために、送りナット65の外周とナットホルダ67の矩形孔671との間には、若干の隙間が形成されている。
【0076】
また、実施例1とは異なり実施例2では、ナットホルダ67の右側面には、ナットホルダ67の右側に突出した円柱形状のチルト駆動力伝達突起674が形成されている。そして、これらチルト駆動力伝達突起673、674は、図7で見て、同一水平線上に配置され、かつ、互いに同軸上に位置している。
【0077】
さらに、実施例1とは異なり実施例2では、ロアーコラム3の右側面34には、ナットホルダ67の車体前方側(図5の右側)に、L字形(図5及び図7の上方から見て)の腕部38の基端部381を固定している。この基端部381から車体後方側にL字形に折れ曲がり、ロアーコラム3の右側面34に平行に、車体後方側に延びる後方延長部382に、係合孔383を形成している。
【0078】
そして、上記チルト駆動力伝達突起674が係合孔383に、係合孔383に対して相対回転可能に内嵌している。この様な構成にすれば、ステアリングホイール103のチルト位置調整時に、ロアーコラム3に対するナットホルダ67の回動を、より円滑に、且つ、より安定して行なえる。この結果、ロアーコラム3の、チルト中心軸376を支点とする円弧運動を、より円滑に、かつ、より安定して行うことが可能となる。
【0079】
送りねじ軸63が回転すると、チルト中心軸376を支点として、ロアーコラム3がチルト位置調整時に円弧状の軌跡に沿って揺動(図5の紙面に平行な平面内で揺動)する。
【0080】
ロアーコラム3の下面外周には、テレスコ用モータ51が取付けられている。ロアーコラム3の下面外周には、ロアーコラム3の中心軸線に平行に送りねじ軸52が固定され、送りねじ軸52の車体後方端(図5の左端)が、アッパーコラム4の車体後方端に固定されたフランジ41の下端に連結されている。
【0081】
テレスコ用モータ51の図示しない出力軸に取付けられたウォームの回転が、図示しないウォームホイールに伝達され、送りねじ軸52に螺合する図示しない送りナットを回転させる。この送りナットの回転で送りねじ軸52を往復移動(図5の左右方向の移動)して、アッパーコラム4をテレスコピック位置調整する。
【0082】
車体取付けアッパーブラケット2の左側板22には、図6の上下方向(チルト位置調整方向)に離間して2個の雌ねじ25、25が形成され、雌ねじ25、25は、左側板22を貫通している。雌ねじ25、25には、調整ねじ8、8の雄ねじ81、81がねじ込まれている。調整ねじ8、8の右端には、雄ねじ81、81の外径よりも小径の軸部82、82が形成されている。
【0083】
スペーサ7には、雌ねじ25、25の上下方向の間隔と同一間隔で2個の貫通孔72、72が形成され、この貫通孔72、72の内径は、軸部82、82の外径よりも若干大きめに形成されている。従って、軸部82、82と貫通孔72、72の位相が一致したところで、調整ねじ8、8の雄ねじ81、81をねじ込めば、軸部82、82が貫通孔72、72に嵌入する。その結果、スペーサ7が、車体取付けアッパーブラケット2の内側面221とロアーコラム3の左側面33の所定位置に保持される。
【0084】
図6に示すように、ロアーコラム3の中心軸線36からロアーコラム3の左側面33までの距離をL1、ロアーコラム3の中心軸線36からロアーコラム3の右側面34までの距離をL2とすると、実施例2においても実施例1と同様に、L2はL1よりも長く形成されている。
【0085】
さらに、本発明の実施例2では、ロアーコラム3の左側面33とスペーサ7の内側面74との接触面(左側チルト摺動面68)のチルト摺動時の摩擦係数を小さくするために、この左側チルト摺動面68に固体潤滑剤をコーティングしている。すなわち、上記したスペーサ7の内側面74、ロアーコラム3の左側面33のうちの少なくとも一つの側面に、固体潤滑剤をコーティングしている。
【0086】
固体潤滑剤としては、種々の潤滑剤があるが、二硫化モリブデン(MoS2)、四フッ化エチレン(PTFE)、グラファイト、ふっ化黒鉛、窒化ほう素(BN)、二硫化タングステン(WS2)、メラミンシアヌレート(MCA)等が好ましい。
【0087】
従って、この電動ステアリング装置101で、ステアリングホイール103のチルト位置を上方に調整する必要が生じ、チルト用モータ61を回転させて、送りナット65を図7の上方に直線運動させる。すると、ロアーコラム3はチルト中心軸376を支点として上方にチルト移動し、ロアーコラム3には、図7に示すように、図7の上方向の推力F3が作用する。この推力F3によって、ロアーコラム3には、ロアーコラム3の中心軸線36を中心として、反時計回りの回転モーメントM3が作用する。
【0088】
ロアーコラム3がチルト中心軸376を支点として上方にチルト移動すると、ロアーコラム3の左側面33とスペーサ7の内側面74との接触面(左側チルト摺動面68)、及び、ロアーコラム3の右側面34と右側板23の内側面231との接触面(右側チルト摺動面69)には、摩擦力によって、図6の下方向の反力F1、F2が各々作用する。
【0089】
調整ねじ8の押し付け力によって、左側チルト摺動面68に直交する方向に作用する荷重をN1、右側チルト摺動面69に直交する方向に作用する荷重をN2とする。また、左側チルト摺動面68の摩擦係数をμ1、右側チルト摺動面69の摩擦係数をμ2とすると、反力F1=N1×μ1、反力F2=N2×μ2、となる。
【0090】
また、この反力F1、F2によって、ロアーコラム3には、ロアーコラム3の中心軸線36を中心として、各々、反時計回りの回転モーメントM1と時計回りの回転モーメントM2が作用する。この反時計回りの回転モーメントM1=N1×μ1×L1、時計回りの回転モーメントM2=N2×μ2×L2、となる。
【0091】
荷重N1と荷重N2はほぼ同一であり、固体潤滑剤の作用によって摩擦係数μ1が摩擦係数μ2よりも小さく、距離L2が距離L1よりも長く形成されているため、時計回りの回転モーメントM2の方が反時計回りの回転モーメントM1よりも大きくなり、M2−M1=M4の時計回りの回転モーメントがロアーコラム3に作用する。従って、時計回りの回転モーメントM4は、実施例1よりも大きくなる。
【0092】
その結果、図7の推力F3によってロアーコラム3に作用する反時計回りの回転モーメントM3が、時計回りの回転モーメントM4によって打ち消され、反時計回りの回転モーメントM3が、実施例1よりも小さくなる。
【0093】
すなわち、ロアーコラム3の左右の側面のうち、ロアーコラム3の中心軸線36からの距離が長い方の右側面34側に、チルト駆動用の推力を付与する送りねじ軸63を配置し、かつ、左側チルト摺動面68の摩擦係数μ1を小さくしているため、推力によってロアーコラム3に作用する回転モーメントを打ち消す方向の回転モーメントが、実施例1よりも大きく作用する。
【0094】
そのため、ロアーコラム3と車体取付けアッパーブラケット2との間のチルト摺動面や送りナット65の偏摩耗がより小さくなり、チルト位置調整が円滑に行われると共に、チルト駆動部の耐久性がより一層向上する。
【0095】
実施例2の変形例として、ロアーコラム3の中心軸線36からロアーコラム3の左側面33までの距離を、ロアーコラム3の中心軸線36からロアーコラム3の右側面34までの距離よりも長く形成し、左側面33側に、チルト駆動用の推力を付与する送りねじ軸63を配置し、かつ、右側チルト摺動面69の摩擦係数を小さくしてもよい。
【0096】
固体潤滑剤をチルト摺動面にコーティングする方法は、部品の形状はそのままで固体潤滑剤をコーティングすることができるので、部品点数の増加や部品重量の増加が無く、組立手順も変わらない。
【0097】
さらに、実施例1から実施例2では、ロアーコラム3がアウターコラム、アッパーコラム4がインナーコラムで構成されているが、ロアーコラム3をインナ−コラム、アッパーコラム4をアウターコラムにしてもよい。
【0098】
また、本発明の実施例1から実施例2では、チルト位置調整とテレスコピック位置調整の両方が可能なチルト・テレスコピック式の電動ステアリング装置に本発明を適用した場合について説明したが、チルト位置調整だけが可能なチルト式の電動ステアリング装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の電動ステアリング装置101を車両に取り付けた状態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の電動ステアリング装置101の要部を示す正面図である。
【図3】図2のA−A断面図であって、車体取付けアッパーブラケットとコラムとの間のチルト摺動部を示す。
【図4】図2のB−B断面図であって、チルト駆動機構の要部を示す。
【図5】本発明の実施例2の電動ステアリング装置101の要部を示す正面図である。
【図6】図5のC−C断面図であって、車体取付けアッパーブラケットとコラムとの間のチルト摺動部を示す。
【図7】図5のD−D断面図であって、チルト駆動機構の要部を示す。
【符号の説明】
【0100】
101 電動ステアリング装置
102 ステアリングシャフト
102A 上部ステアリングシャフト
102B 下部ステアリングシャフト
103 ステアリングホイール
104 ユニバーサルジョイント
105 中間シャフト
106 ユニバーサルジョイント
107 ステアリングギヤ
108 タイロッド
11 車体
12 車体取付けロアーブラケット
2 車体取付けアッパーブラケット
21 上板
22 左側板
221 内側面
23 右側板
231 内側面
24 下板
25 雌ねじ
3 ロアーコラム
31 ブラケット
32 チルト中心軸
33 左側面
34 右側面
36 中心軸線
37 操舵補助部(電動アシスト機構)
371 ハウジング
372 電動モータ
373 減速ギヤボックス部
374 出力軸
375 下部車体取付けブラケット
376 チルト中心軸
38 腕部
381 基端部
382 後方延長部
383 係合孔
4 アッパーコラム
41 フランジ
5 テレスコ駆動機構
51 テレスコ用モータ
52 送りねじ軸
6 チルト駆動機構
61 チルト用モータ
62 ウォーム
63 送りねじ軸
631、632 軸受
64 ウォームホイール
65 送りナット
66 係合孔
67 ナットホルダ
671 矩形孔
672 長孔
673 チルト駆動力伝達突起
674 チルト駆動力伝達突起
68 左側チルト摺動面
69 左側チルト摺動面
7 スペーサ
72 貫通孔
73 外側面
74 内側面
8 調整ねじ
81 雄ねじ
82 軸部
83 ロックナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後方側にステアリングホイールが装着されるステアリングシャフト、
車体に取り付け可能な車体取付けブラケットの左右の側板にチルト摺動可能に挟持された左右の側面を有し、上記ステアリングシャフトを回転可能に軸支するとともに、チルト中心軸を支点とするチルト位置調整、または、チルト中心軸を支点とするチルト位置調整と、上記ステアリングシャフトの中心軸線に沿ったテレスコピック位置調整の両方が可能なコラムを備えたステアリング装置において、
上記コラムの中心軸線から左側チルト摺動面までの距離と、上記コラムの中心軸線から右側チルト摺動面までの距離のうちのいずれか一方が他方よりも長く形成され、
上記コラムの中心軸線からの距離が長い方のコラム側面に係合して、チルト駆動用の推力をコラムに付与するチルト駆動機構を備えたこと
を特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたステアリング装置において、
上記コラムの中心軸線からの距離が長い方のチルト摺動面の摩擦係数よりも、上記コラムの中心軸線からの距離が短い方のチルト摺動面の摩擦係数を小さくしたこと
を特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたステアリング装置において、
上記コラムの中心軸線からの距離が短い方のチルト摺動面に固体潤滑剤がコーティングされていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたステアリング装置において、
上記固体潤滑剤は、
二硫化モリブデン、四フッ化エチレン、グラファイト、ふっ化黒鉛、窒化ほう素、二硫化タングステン、メラミンシアヌレートのうちの少なくともいずれか一つであること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
請求項2に記載されたステアリング装置において、
上記コラムの中心軸線からの距離が短い方のコラム側面と車体取付けブラケットの側板との間にはスペーサが介挿され、
上記スペーサの内側面またはコラム側面のうちの少なくともいずれか一方の側面に固体潤滑剤がコーティングされていること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたステアリング装置において、
上記固体潤滑剤は、
二硫化モリブデン、四フッ化エチレン、グラファイト、ふっ化黒鉛、窒化ほう素、二硫化タングステン、メラミンシアヌレートのうちの少なくともいずれか一つであること
を特徴とするステアリング装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載されたステアリング装置において、
操舵補助用モータの駆動力によって、減速機構を介して所定の操舵補助力を上記ステアリングシャフトに付与する操舵補助機構を備えたこと
を特徴とするステアリング装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載されたステアリング装置において、
上記チルト駆動機構は、
チルト用モータによって駆動され、互いに螺合する送りねじ軸と送りナットの相対移動で、上記コラムに推力を付与する送りねじ機構であること
を特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−126781(P2008−126781A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312348(P2006−312348)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】