説明

スナップアセンブリ分離フロート蒸気ベント装置

この発明は、概して、船外船舶用燃料噴射エンジンといった内燃機関のための蒸気ベントシステムに関する。この蒸気ベントシステムは、蒸気分離器から蒸気を放出するためにスナップアセンブリ分離フロート蒸気ベントを含む。このスナップアセンブリの設計により、コスト、振動、および組立てに必要な条件が減じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
この発明は、概して内燃機関に関し、より具体的にはスナップアセンブリ分離フロート蒸気ベントを有する船外船舶用燃料噴射エンジンのための蒸気ベントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術
内燃機関の技術では、エンジンにおける熱の蓄積が、エンジンの燃料供給システムに悪影響を及ぼして、燃料がエンジンの燃焼室に導入される前に気化することがあるという問題が、長きにわたり認識されている。この状態は、一般的に蒸気閉塞(vapor lock)と呼ばれており、エンジンの部品に有害な影響を与える可能性があるだけでなく、エンジンの性能不良、過熱、およびエンジン動作の中断を引き起こす可能性がある。燃料蒸気は特に、燃料噴射エンジンには不都合である。一般的に、燃料噴射エンジンにおいて、燃料は、燃料噴射器によって燃焼室内に噴射される前に、高圧燃料ポンプによって燃料レールに導入される。この燃料レールは一般的にエンジンの燃焼熱のために比較的高温に加熱され、加熱された燃料は、アイドリングならびに始動および停止動作など、エンジンの使用率が低い間に、燃料システムに戻される。
【0003】
通常、燃料レールからの、加熱された燃料は、蒸気分離器に戻され、この分離器において、加熱された燃料により生じた燃料蒸気が凝縮されて液体燃料に戻された後、高圧ポンプおよび燃料レールに再び導入される。このような蒸気分離器は、当該技術では既に知られており、分離器の中を通過する何らかの形態の冷却材を用いて、加熱された燃料を冷却し燃料蒸気を凝縮して液体燃料に戻す。ほとんどの船外船舶用途では、たとえば、液体冷却材が動作環境から供給され、湖水または海水が冷却のためにエンジン内で循環する。しかしながら、このような水は、水中で浮遊している海草、漂流物または小さな生物体といった汚染物質を含んでいることがあるので、エンジン冷却システムおよび蒸気分離器が、ごみおよび汚染物質で詰まってしまう危険性がある。先行技術の蒸気分離器のもう1つの欠点は、構成部品が複雑であるために製造費用が高くなる可能性があるとともに組立て時間が長くなる可能性がある点である。したがって、当該技術では、製造が比較的簡単で汚染物質で詰まる可能性を低下させる分離器を持つことが、望ましい進歩となるであろう。
【0004】
燃料蒸気が燃料噴射器に向かわないようにするための1つの方法が、米国特許第6,857,419号に記載されている。エンジンの冷却中に凝縮しなかった燃料蒸気は、チャンバの上部にあるフロートニードル弁を通ってチャンバから逃げる。図1に示されるように、圧力逃し弁が、チャンバの上部に設けられ、予め定められた内部圧力に達すると、蒸気を逃す。図1は、先行技術による蒸気分離器の上部壁アセンブリを示す。蒸気通路246は、蒸気出口248がその終端であり、上部壁アセンブリ232内を通るように形成されている。蒸気通路246の下端に位置しているのは、ニードル弁プランジャ252とニードル弁座254とを含むニードル弁アセンブリ250である。フロートアセンブリ256が、ニードル弁アセンブリ250に装着され、サポートアーム258と、フロートアーム262の一端に取付けられたフロート260とを含む。フロートアーム262の他端は、フロート260が上下に旋回できるよう、ピボットピン264によってサポートアーム258に旋回可能に装着されている。ニードル弁プランジャ252は、フロート260が上向きに旋回したときにニードル弁プランジャがニードル弁座254の上に載ってニードル弁を封止するように、フロートアーム262上に装着されている。しかしながら、フロート260が下向きに旋回すると、ニードル弁プランジャは、ニードル弁座254から離れて弁を開き、チャンバ内の蒸気および空気をニードル弁を通して蒸気通路246に出し、蒸気出口248から放出する。
【0005】
図2を参照して、閉鎖バイアスベント弁を用いて、蒸気および/または空気を、閉じられたチャンバ内の液体から分離する。閉鎖バイアスベント弁210は、燃料蒸気分離器230の燃料チャンバ270内に設置されたフロート272によって機能するようにされ、フロート272は、ばねの力に抗してレバーアーム214を旋回させる、上向きに延びるフロートアーム268を有する。具体的には、上向きのフロートアーム268およびレバーアーム214はそれぞれフック269および219を有する。燃料蒸気分離器230が指定された満杯レベルまで燃料で充填されると、フロート272が上向きに移動してフック269とフック219が互いに離される。結果として、閉鎖バイアスベント弁10はその閉じた位置に留まる。逆に、燃料蒸気分離器230が空のとき、または、閉じられた燃料チャンバ270内の流体レベルが、閉じられた燃料チャンバ270内における気化燃料の蓄積によって空になると、フロート272が閉じられた燃料チャンバ270内の指定レベルよりも下に落ちる。この移動の間にフック269およびフック219が結合することにより、弁210がその開放位置に置かれて気化燃料を燃料蒸気分離器230から放出する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある実施の形態に従うと、蒸気ベントアセンブリは、ヒンジピンブラケットを備え、ヒンジピンブラケットは、一方の端部に隣接する細長いフロートガイド部材と他方の端部に隣接するばね保持部材とを有し、この他方の端部には、貫通開口部と、端部間におけるスナップ保持機能を有する、横方向に間隔を開けて設けられた一対のサポートアームとがあり、さらに、フロートガイド部材に摺動可能な状態で配置されたフロートと、ばねとを備え、ばねの対向する端部のうち一方の端部はヒンジピンブラケット上のばね保持部材によって保持され、さらに、弁ニードルと、フロートブラケットとを備え、フロートブラケットは、一方の端部に隣接しばねのもう一方の端部を保持するように構成されたばね保持部材と、他方の端部に隣接するフロート保持部材とを有し、フロート保持部材は、フロートを組立てられた状態で保持するように、かつ、貫通通路を開閉するために弁ニードルを動作可能な状態で支持するように、構成され、フロートブラケットは、ばね保持部材とフロート保持部材との間で横断する方向に延在するロック部材を有し、ロック部材は、ヒンジピンブラケット上のスナップ保持機能と、ロック状態のスナップ係合をすることにより、アセンブリを組立てられた状態で維持するように構成される。
【0007】
本発明の上記およびそれ以外の局面、特徴および利点は、現在好ましい実施の形態および最良の形態に関する以下の説明、以下の特許請求の範囲および添付の図面と関連付けて考慮されると、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】先行技術に従う蒸気分離器の上部壁アセンブリを示す。
【図2】先行技術に従う燃料蒸気分離器を示し、閉鎖バイアスベント弁が閉鎖位置にあり、フロートが解放位置にある状態を示している。
【図3】本発明の別の局面に従う、スナップアセンブリ分離フロート蒸気ベントを示す。
【図4A】図3に示されるスナップアセンブリの分解図を示す。
【図4B】図3に示されるスナップアセンブリの分解図を示す。
【図5A】ベントが開放位置にある図3に示されるスナップアセンブリの側面図を示す。
【図5B】ベントが閉鎖位置にある図3に示されるスナップアセンブリの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
現在好ましい実施の形態の詳細な説明
エンジンは一般的に、ガソリンまたはエタノールのような液体燃料で動く。液体燃料はエンジンによって燃料タンクから汲み上げられる。低圧燃料供給ポンプが、燃料を、タンクから、供給ラインを通して汲み上げる。この燃料は、先行技術の図2に示されるもののような蒸気分離器に送られる。この蒸気分離器は、流入してきた低圧の燃料から発せられた蒸気、および、エンジンから戻ってきた熱い攪拌された燃料から発せられた蒸気をも、集めて放出する。次に、高圧ポンプが燃料を圧力によって燃料噴射システムに供給し、この燃料がエンジンによって消費される。
【0010】
より具体的には、蒸気分離器は、燃料から発せられた蒸気を集めて放出する。蒸気分離器は、液体燃料および燃料から発せられた蒸気双方を収容するように封止されたハウジングによってその輪郭が定められ、蒸気を逃すための蒸気ベントを有する。この場合、蒸気分離器は、分離されるフロート弁によって制御される。このフロート弁は、蒸気分離器内の液体燃料のレベルに反応する。液体燃料が蒸気ベントから逃げるおそれがあるときは必ず、このフロート弁が自動的に閉じる。それ以外の場合は、蒸気ベントは開いたままで燃料蒸気を排出する。
【0011】
図3は、本発明に従う、例示としての、スナップアセンブリ分離フロート蒸気ベントを示す。このアセンブリ300は、ヒンジピンブラケット302と、フロート320と、フロートブラケット335と、ロック部材340とを含み、これらがともに動作することにより、フロート320を上向きおよび下向きに移動させてベントを開放および閉鎖する。フロート320は、合成樹脂で構成することができ、摺動可能な状態でガイド部材に取付けられ、一対のサポートアームまたはヒンジピンブラケット340によって回転可能な状態で支持される。
【0012】
図4Aおよび図4Bは、図3に示されるスナップアセンブリの分解図を示す。このスナップアセンブリは、ある例示としての実施の形態では、分離フロート蒸気ベントアセンブリであり、このアセンブリはヒンジピンブラケット302を含み、ヒンジピンブラケット302は、一方の端部に隣接する細長いフロートガイド部材305と、他方の端部に隣接するばね保持部材310とを有し、この他方の端部には、貫通開口部と、端部間におけるスナップ保持機能を有する、横方向に間隔を開けて設けられた一対のサポートアーム315とがある。このアセンブリはまた、フロートガイド部材305に摺動可能な状態で配置されたフロート320と、ばね325とを有し、このばねの対向する端部のうち一方の端部は、ヒンジピンブラケット302上のばね保持部材310によって保持される。加えて、このアセンブリは、弁ニードル330と、フロートブラケット335とを有し、フロートブラケット335は、一方の端部に隣接しばねのもう一方の端部(ばね保持部材310で固定されるばねの端部の反対側)を保持するように構成されたばね保持部材と、他方の端部に隣接するフロート保持部材とを有し、フロート保持部材は、フロートを組立てられた状態で保持するように、かつ、貫通通路を開閉するために弁ニードル330を動作可能な状態で支持するように、構成されている。ロック部材340は、ばね保持部材とフロート保持部材との間で横断する方向に延びており、ロック部材は、ヒンジピンブラケット上のスナップ保持機能と、ロック状態のスナップ係合をすることにより、このアセンブリを組立てられた状態で維持するように構成される。
【0013】
図5Aおよび図5Bは、図3に示されるスナップアセンブリの側面図であり、図5Aではベントが開放位置にあり図5Bではベントが閉鎖位置にある。閉じられたチャンバ内の流体レベルが、閉じられた燃料チャンバ内における気化燃料の蓄積によって空になると、アセンブリ300が動作して、フロートを、フロートが分離されて気化燃料が放出される下方位置に移動させる。一方、閉じられたチャンバ内の流体レベルが満杯になると、アセンブリ300が動作して、フロートを、フロートが結合されベントが閉鎖状態を保つ上方位置に移動させる。
【0014】
上記教示に照らせば本発明に数多くの変形が可能であることは明らかである。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲の中で、具体的に記載されたもの以外のやり方で実施し得ることが、理解されるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気ベントアセンブリであって、
ヒンジピンブラケットを備え、前記ヒンジピンブラケットは、一方の端部に隣接する細長いフロートガイド部材と他方の端部に隣接するばね保持部材とを有し、前記他方の端部には、貫通開口部と、端部間におけるスナップ保持機能を有する、横方向に間隔を開けて設けられた一対のサポートアームとがあり、さらに、
前記フロートガイド部材に摺動可能な状態で配置されたフロートと、
ばねとを備え、前記ばねの対向する端部のうち一方の端部は前記ヒンジピンブラケット上のばね保持部材によって保持され、さらに、
弁ニードルと、
フロートブラケットとを備え、前記フロートブラケットは、一方の端部に隣接し前記ばねのもう一方の端部を保持するように構成されたばね保持部材と、他方の端部に隣接するフロート保持部材とを有し、前記フロート保持部材は、前記フロートを組立てられた状態で保持するように、かつ、貫通通路を開閉するために前記弁ニードルを動作可能な状態で支持するように、構成され、前記フロートブラケットは、前記ばね保持部材と前記フロート保持部材との間で横断する方向に延在するロック部材を有し、前記ロック部材は、前記ヒンジピンブラケット上の前記スナップ保持機能と、ロック状態のスナップ係合をすることにより、前記アセンブリを組立てられた状態で維持するように構成される、蒸気ベントアセンブリ。
【請求項2】
閉じられた燃料チャンバ内の流体レベルが、前記閉じられた燃料チャンバ内における気化燃料の蓄積によって空になると、前記アセンブリは前記フロートを下方位置に移動させて前記気化燃料を放出するように動作する、請求項1に記載の蒸気ベントアセンブリ。
【請求項3】
閉じられた燃料チャンバ内の流体レベルが満杯になると、前記アセンブリは前記フロートを上方位置に移動させて前記ベントが閉鎖された状態を保つように動作する、請求項1に記載の蒸気ベントアセンブリ。
【請求項4】
燃料供給システムであって、
液体燃料が蓄えられる燃料タンクと、
前記液体燃料を前記タンクから蒸気分離器に汲み入れる低圧ポンプと、
前記低圧ポンプからの前記液体燃料を受け前記燃料から発せられた蒸気を集める蒸気分離器とを備え、前記蒸気分離器は、スナップアセンブリ機能を有する蒸気ベントアセンブリを含み、さらに、
前記蒸気分離器に接続され前記液体燃料を燃焼機関の噴射システムに送る高圧ポンプを備える、燃料供給システム。
【請求項5】
前記蒸気分離器は、
ヒンジピンブラケットを備え、前記ヒンジピンブラケットは、一方の端部に隣接する細長いフロートガイド部材と他方の端部に隣接するばね保持部材とを有し、前記他方の端部には、貫通開口部と、端部間におけるスナップ保持機能を有する、横方向に間隔を開けて設けられた一対のサポートアームとがあり、さらに、
前記フロートガイド部材に摺動可能な状態で配置されたフロートと、
ばねとを備え、前記ばねの対向する端部のうち一方の端部は前記ヒンジピンブラケット上のばね保持部材によって保持され、さらに、
弁ニードルと、
フロートブラケットとを備え、前記フロートブラケットは、一方の端部に隣接し前記ばねのもう一方の端部を保持するように構成されたばね保持部材と、他方の端部に隣接するフロート保持部材とを有し、前記フロート保持部材は、前記フロートを組立てられた状態で保持するように、かつ、貫通通路を開閉するために前記弁ニードルを動作可能な状態で支持するように、構成され、前記フロートブラケットは、前記ばね保持部材と前記フロート保持部材との間で横断する方向に延在するロック部材を有し、前記ロック部材は、前記ヒンジピンブラケット上の前記スナップ保持機能と、ロック状態のスナップ係合をすることにより、前記アセンブリを組立てられた状態で維持するように構成される、請求項4に記載の燃料システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2013−512822(P2013−512822A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542073(P2012−542073)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/057182
【国際公開番号】WO2011/068686
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】