説明

スパッタリングによる薄膜の製造方法及び製造装置

【課題】スパッタリングによるターゲットの消費効率を低下させずに、段差に成膜される薄膜の被覆性を改善する。
【解決手段】基板の端部71Lの表面に段差のある基板21に薄膜を成膜する場合、まず(A)に示すように基板21をターゲットに対して傾斜させながら薄膜91を成膜する。次に、(B)に示すように基板21をターゲットに対して傾斜させながら薄膜91の上に薄膜92を成膜する。薄膜91と薄膜92を順に成膜することで、(C)に示すように、段差の側面97L,97R及び底面98に被覆性の良い薄膜が成膜される。また、ターゲットに対して基板21の角度を連続的に変化させながら薄膜96を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の製造方法及び製造装置に関し、詳しくはスパッタリングによる薄膜の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の表面に薄膜を成膜する方法は、化学気相蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や物理気相蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)が知られている。PVDとしては、真空槽内にアルゴンガスなどの不活性な気体を導入し、高電圧をかけることでイオン化したアルゴンなどを加速してターゲットに衝突させ、その衝突の際に飛散されるターゲットを構成する粒子(以下、スパッタ原子)を基板などの表面に被着させて薄膜を成膜する手法が、スパッタリングとして広く用いられている。
【0003】
主にターゲットから垂直な方向にスパッタ原子が飛散されるスパッタリングを用いて平坦な基板に薄膜を成膜する場合には、一般に、ターゲットと基板を平行に設置する。しかし、スパッタリングを用いて凹凸のある基板に薄膜を成膜する場合、ターゲットと平行な基板の面内だけでなく、凹凸による段差の側面においても薄膜が成膜されるものの、ターゲットと平行な基板の面内と比較すると薄い膜厚の薄膜が成膜される。
【0004】
これを改善するために、ターゲットに対して基板を移動させ、その移動速度や移動経路を変化させて制御することにより、段差側面においても均一な膜厚を持つ薄膜を成膜する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ターゲットから飛散されるスパッタ原子はCOS則に従い飛散されるが、基板表面に凹凸があると、段差の側面に段差の底部と比較して薄い薄膜が成膜されるだけでなく、凹凸による段差の底部などのターゲットと平行な基板面に成膜される薄膜も膜厚が不均一になるという問題がある。
【0006】
このような段差底部などにおける膜厚の不均一を改善する方法としては、ターゲットと基板の間の距離を広げる方法や、ターゲットと基板の間に基板の表面に垂直に入射するスパッタ原子以外を遮蔽するコリメータを設置する方法などが知られている。
【特許文献1】特開平5−25619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、特許文献1の薄膜の製造方法によれば、凹凸の段差の側面と底部とで同じ膜厚の薄膜を成膜することができる。また、ターゲットと基板の間の距離を広げる方法やコリメータを設置する方法によれば、ターゲットと平行な基板の面内での膜厚の不均一性を改善できる。しかしながら、これらの方法によると、薄膜を成膜すべき基板以外の物に被着するスパッタ原子が多く、ターゲットの消費効率が悪くなるという問題がある。
【0008】
さらに、スパッタリングによって薄膜を成膜すると、凹凸による段差の側面や底部に成膜される薄膜の膜厚や形状といった被覆性は、基板の中央部と基板の端部とでは差が生じ、基板の中央部と基板の端部において比較すると、凹凸による段差の側面に成膜される薄膜は、基板中央部では対称的であるのに対して、基板端部の段差側面の薄膜は基板の中央側に位置する側面と、基板の端部側に位置する側面では、膜厚が異なり対称性が悪いという問題もある。
【0009】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、ターゲットの消費効率を低下させずに、凹凸による段差の底部における膜厚の均一性、基板の端部における凹凸による段差側面の薄膜の対称性といった薄膜の被覆性を改善するスパッタリングを用いた薄膜の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスパッタリングによる薄膜の製造方法は、基板を設置するステージと、成膜する薄膜の材料からなるターゲットとを有し、前記ターゲットを構成する材料の粒子を飛散させ、前記基板上に被着させて薄膜を成膜するスパッタリングによる薄膜の製造方法において、前記基板を前記ターゲットに対して傾斜させることで、前記粒子が前記基板に被着する角度を調節しながら前記基板の表面に薄膜を成膜させることを特徴とする。
【0011】
また、前記ステージを前記ターゲットに対して傾斜させることによって、前記基板を前記ターゲットに対して傾斜させることを特徴とする。
【0012】
本発明のスパッタリングを用いた薄膜の製造装置は、基板を設置するステージと、成膜する薄膜の材料からなるターゲットとを有し、前記ターゲットを構成する材料の粒子を飛散させ、前記基板上に被着させて薄膜を成膜するスパッタリングによる薄膜の製造装置において、前記粒子の主な飛散方向に略垂直な第1の回転軸のまわりに前記基板を回転させる第1の回転機構と、前記基板の表面に略平行な第2の回転軸のまわりに前記基板を回転させる第2の回転機構と、前記第2の回転軸とは異なる前記基板の表面に略平行な第3の回転軸のまわりに前記基板を回転させる第3の回転機構とを備え、前記基板を前記ターゲットに対して傾斜させることで、前記粒子が前記基板に被着する角度を調節しながら前記基板の表面に薄膜を成膜させることを特徴とする。
【0013】
また、前記第1の回転機構、前記第2の回転機構、及び前記第3の回転機構は、前記ステージを回転させることによって前記基板を前記ターゲットに対して傾斜させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスパッタリングを用いた薄膜の製造方法及び製造装置によれば、表面に凹凸がある基板に薄膜を成膜する場合に、ターゲットの消費効率を低下させることなく、凹凸による段差の側面や凹凸による段差の底部に成膜される薄膜の被覆性を改善することができる。
【0015】
さらには、薄膜を成膜する基板の中央部と端部とで、略同様の被覆性をもつ薄膜を成膜することができる。従って、基板内に複数の製品、部品などを作製する場合には、歩留まりがよくなり、製造コストの削減につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示すように、本発明を実施するマグネトロンスパッタリング装置5(薄膜の製造装置)は、内部を真空にすることができる真空槽6、薄膜を成膜する際に必要な様々な計器や装置からなる操作部7、操作部7を構成する各種計器や装置を制御するコンピュータ8などから構成される。
【0017】
真空槽6の内部には、ステージ11、ステージ駆動部12、ターゲット13、磁石ユニット14が配設されている。また、真空槽6には、バルブ16を介してアルゴンガス17を、バルブ18を介して窒素ガス19を導入することができる。ステージ11は、ターゲット13と対向する位置にあり、薄膜を成膜する基板21を配置される。
【0018】
ステージ駆動部12は、回転軸L1(図2参照)のまわりにステージ11を回転させるとともに、ターゲット13に対してステージ11を傾斜させる。このステージ駆動部12は、後述するステージコントローラ36によって薄膜を成膜中であっても真空槽6の外部から自在に駆動される。
【0019】
ターゲット13は、基板21に成膜する薄膜の材料からなり、磁石ユニット14上の真空槽6の内部に配設される。また、基板21上に薄膜を成膜させる際には、ターゲット13は陰極になるように電圧が印加される。
【0020】
磁石ユニット14は、真空槽6の外部に、ステージ11と対向する位置に配設される。この磁石ユニット14の内部には、磁石22が設けられている。磁石22は、ターゲット13の表面付近に半円状の磁力線を持つ磁場を生成する。
【0021】
ターゲット13から飛散するスパッタ原子24(粒子)は、その発生原理が結晶としてのターゲット13と様々な方向から飛来するアルゴンイオンとの物理的な衝突であるから、スパッタ原子24は、ターゲット13の表面にアルゴンイオンが衝突する方向に応じて飛散される。マグネトロンスパッタリング装置5の場合、ターゲット13の下方にスパッタ原子24は飛散される。
【0022】
シャッタ26は、節27に回動自在に取り付けられており、モータ43を介し、シャッタコントローラ34によって開閉される。このシャッタ26が基板21の表面を覆う閉じ位置にある場合は、基板21をスパッタ原子24から遮蔽する。また、シャッタ26が基板21の表面を開放する開き位置にある場合には、スパッタ原子24は、基板21上に被着し、堆積することで薄膜が成膜される。
【0023】
操作部7は、流量制御部32、シャッタコントローラ34、ステージコントローラ36などから構成される。流量制御部32は、バルブ16に接続されており、真空槽6にアルゴンガス17を導入する際に、その流量を適切な量に調節する。
【0024】
ステージコントローラ36は、ステージ駆動部12を制御することで、ステージ11をターゲット13に対して自在に回転又は傾斜させる。このステージコントローラ36は、基板21上に薄膜を成膜している最中であってもステージ11を、延いては基板21をターゲット13に対して傾斜させる。
【0025】
図2に示すように、ステージ11は基板係止板51と傾斜台52とから構成される。基板係止板51の上面には、基板21を係止する係止爪53a,53b,53cが設けられている。係止爪53a,53b,53cは基板21の形状に即して設けられているから、他の大きさ又は形状の基板を用いるときには、この基板係止板51自体を係止する基板の形状に合わせたものに交換する。また、基板係止板51の下面には、基板係止板51を傾斜台52に螺合させるための雄ネジ部56が設けられている。
【0026】
傾斜台52の上面には、基板係止板51を雄ネジ部56によって螺合させるための雌ネジ部57が設けられている。また、傾斜台52の下面には、後述するステージ傾斜部63のボールジョイントを形成する上カバー59a,59b,59c,59dが設けられている。
【0027】
図2に示すように、ステージ駆動部12は、回転台61(第1の回転機構)、ステッピングモータ62、ステッピングモータ64a,64b,64c,64d、ステージ傾斜部63a,63c(第2の回転機構)、ステージ傾斜部63b,63d(第3の回転機構)から構成される。
【0028】
回転台61は、ステッピングモータ62によって回転軸L1のまわりに回転される。ステッピングモータ62は真空槽6内部の壁66に設けられた円筒部67の内部に固定されている。また、回転台61の上面にはステージ傾斜部63a,63b,63c,63dが設けられている。
【0029】
ステッピングモータ64a,64b,64c,64dは、回転台61に固定されており、回転台61の回転とともに回転軸L1のまわりに回転される。ステッピングモータ64a,64b,64c,64dは、円筒部67の側面に設けられた電極(図示しない)に回転自在に電気的に接続されており、回転台61が定常的で一方向に回転してもステージコントローラ36によって駆動することができる。
【0030】
ステージ傾斜部63aは、ボールジョイントを成膜するボール68a及び下カバー60a、上下動ネジ部69a、水平回転部70aから構成される。下カバー60aがボール68aを挟み込むようにして上カバー59aと嵌合することでボールジョイントが形成される。
【0031】
水平回転部70aは、回転台61に水平方向に回転自在に設置され、歯車(図示しない)を介してステッピングモータ64aによって回転台に対して回転される。また、水平回転部70a内壁は、上下動ネジ部69aと螺合するようにネジ溝が切られている。
【0032】
上下動ネジ部69aは、水平回転部70aの回転に応じて上端に設けられたボール68aを上下動させる。これにより、ステージ傾斜部63の全体としての長さは伸縮し、ステージ11はターゲット13に対して傾斜される。
【0033】
同様にして、ステージ傾斜部63bはボール68b及び下カバー60b、上下動ネジ部69b、水平回転部70bから構成され、ステージ傾斜部63cはボール68c及び下カバー60c、上下動ネジ部69c、水平回転部70cから構成され、ステージ傾斜部63dはボール68d及び下カバー60d、上下動ネジ部69d、水平回転部70dから構成される。
【0034】
なお、ステージ傾斜部63aとステージ傾斜部63cは、ステージ傾斜部63aが伸張する場合はステージ傾斜部63cは収縮し、ステージ傾斜部63cが伸張する場合はステージ傾斜部63aは収縮するというようにして対になって駆動され、ステージ11を回転軸L2のまわりに回転させ、ターゲット13に対して傾斜させる。同様に、ステージ傾斜部63bとステージ傾斜部63dは対になって駆動され、ステージ11を回転軸L3のまわりに回転させ、ターゲット13に対して傾斜させる。
【0035】
以下、上述のように構成されるマグネトロンスパッタリング装置5の作用を説明する。真空槽6内の気圧を10−7Pa程度の真空にした後に、基板21とターゲット13間に電圧を印加し、流量制御部32からアルゴンガス17の流量を調節しながら徐々に真空槽6内にアルゴンガス17を導入する。
【0036】
そして、ステージコントローラ36を操作し、ステージ駆動部12を駆動してステージ11及びステージ11上に設置された基板21をターゲット13に対して傾斜させて成膜を行う。このとき、例えば、図3に示すように、基板21をターゲット13に平行な面内で回転させるだけでなく、ステージ11に対して傾斜させる。
【0037】
図3(B)に示すように、ステージ11及び基板21はターゲット13に平行な面内で回転しながらも、ターゲット13の表面と基板21の表面が平行である場合であっても、基板の中央部73と基板21の端部71L,71Rでは、ターゲット13から飛来するスパッタ原子24の飛来する方向、角度は異なる。
【0038】
図3(A)に示すように、端部71Lをターゲット13から遠ざかるように、また端部71Rをターゲット13に近づくように基板21及びステージ11を傾斜させると、基板21及びステージ11がターゲット13と平行な場合と比べて、端部71Lに飛来するスパッタ原子24は基板21の表面に近い浅い角度で端部71Lに入射する。
【0039】
このとき、端部71Rに飛来するスパッタ原子24は、基板21の表面から離れた深い角度で端部71Rに入射する。また、中央部73に飛来するスパッタ原子24は、基板21とターゲット13とが平行である場合と比べて、浅い角度で入射する。このスパッタ原子24の基板21への入射角度は、ターゲット13と基板21を平行に保ったまま端部71L方向に基板21を平行移動したときの入射角度に相当する。
【0040】
しかしながら、基板21を端部71L方向に平行移動する場合、ターゲット13から飛来するスパッタ原子24のうち端部71R付近に飛来していたものは基板21上に被着することができないため、成膜の効率は落ち、ターゲットの消費効率が悪い。これに比べ、図3(A)に示すように基板21を傾ける場合には、ターゲット13から飛散されるスパッタ原子24の殆どは基板21上に被着することができるから、ターゲットの消費効率を低下させることなく、被覆性を改善することができる。
【0041】
同様に、図3(C)に示すように、端部71Rをターゲット13に近づくように、また、端部71Lをターゲット13から遠ざかるように基板21及びステージ11を傾斜させると、端部71R、中央部73、端部71Lにそれぞれ入射するスパッタ原子24は、基板21をターゲット13と平行に保ったまま端部71Rの方向に平行移動した場合に相当する入射角度で基板21に被着し、かつターゲットの消費効率を低下させることなく、被覆性を改善することができる。
【0042】
また、多層のプリント基板で各層間を電気的に接続するためのいわゆるビアホールがある場合や、半導体基板上に電極金属などが蒸着されている場合など、基板21上に凹凸がある場合、この凹凸による段差の影響で、段差の底面や段差の側面に成膜される薄膜は、平坦な基板に成膜する場合と異なる。例えば、図4に示すように、基板21の表面に凹凸のある場合に、基板21をターゲット13と平行に保ったときに成膜される薄膜は、端部71L、中央部73、端部71Rそれぞれで異なる。
【0043】
図4(A)に示すように、端部71Lにある段差に成膜される薄膜74は、中央部73側の側面76と、中央部73から見て遠く、より基板21の端に近い段差の側面77とを比較すると、側面76は成膜される薄膜74は薄く、対称性が悪いばかりか被覆性も悪い。また、段差の深さ方向では、段差上部よりも底面78に近づくほど薄い薄膜が成膜される。さらに、底面78に成膜される薄膜74の膜厚は、側面77に近いほど厚く、側面76に近いほど薄くなり、底面78の面内での対称性に加え、被覆性が悪い。
【0044】
同様に、図4(C)に示すように、端部71Rにある段差に成膜される薄膜74は、中央部73側の側面81と基板21の端側の側面82を比較すると、中央部73側の側面81に成膜される薄膜は薄く、対称性が悪いだけでなく被覆性も悪い。また、底面83に成膜される薄膜の膜厚は、側面82に近いほど厚く、側面81に近いほど薄くなり、底面83の面内での対称性に加え、被覆性が悪い。
【0045】
また、図4(B)に示すように、中央部73にある段差に成膜される薄膜74は、側面86Lと側面86Rに成膜される薄膜74は、端部71L及び端部71Rの段差側面の薄膜と比較して対称性のよい薄膜が成膜できる。また、底面88に成膜される薄膜の膜厚は、中央付近が厚く、側面86L及び側面86Rに近づくにつれて薄くなる。
【0046】
このように表面に凹凸があり、段差に薄膜を成膜する場合、図5(A)及び(B)に示すように、端部71Lをターゲット13に近づくように基板21を傾斜させて成膜される薄膜91上に、端部71Lをターゲット13から遠ざかるように基板21を傾斜させて薄膜92を成膜する。すると、図5(C)に示すように、結果として段差の側面に成膜される薄膜96は、段差側面97L,97Rでは対称的で、被膜性の良い薄膜が成膜される。これは、基板の中央部にある段差に成膜する薄膜と同等の被覆性である。さらに、薄膜96の段差の底面98における膜厚は段差の底面98の面内で均一になる。
【0047】
また、端部71Rにある段差に成膜される薄膜についても同様である。さらにまた、前述したように、基板をターゲットに対して傾けることによるスパッタ原子の入射角度の変化は、基板とターゲットの対向する表面を平行に保ったまま基板をターゲットに対して平行移動させることに相当するから、中央部73にある段差に成膜される薄膜についても上述した端部71L及び端部71Rにある段差に成膜された薄膜と同様に、底面に成膜される薄膜の膜厚は底面の面内で均一になる。つまり、薄膜を成膜する基盤内で、その中央部と端部とで略同様の被覆性を持つ薄膜を成膜される。
【0048】
以上のように、本発明のスパッタリングによる薄膜の製造方法及び薄膜の製造装置によれば、ターゲットの消費効率を低下させることなく、被覆性の良い薄膜を段差の側面及び底面に成膜することができる。
【0049】
さらには、薄膜を成膜する基板内で、その中央部と端部とで略同様の被覆性を持つ薄膜を成膜することができ、基板内に複数の製品、部品などを作製する場合には、歩留まりが良くなり、製造コストの削減にもつながる。
【0050】
なお、本実施形態はマグネトロンスパッタリング装置5を例に説明したが、これに限らず、例えば、イオンビームスパッタリング装置、RFスパッタリング装置、DCスパッタリング装置などスパッタリングによって薄膜を成膜する場合にも本発明を適用することができる。但し、イオンビームスパッタリング装置のように、スパッタ原子がターゲットから飛散される主な方向が、ターゲットの表面に垂直でない場合には、本実施形態におけるターゲットと基板の平行性は、スパッタ原子の主な飛散方向に基板表面が略垂直であることに相当する。
【0051】
なお、本実施形態では、薄膜の成膜をしてからステージ11を傾斜させるなどして、成膜とステージ11の回転又は傾斜を独立に行うが、これに限らず、薄膜の成膜を行っている最中に連続的にステージ11を回転又は傾斜さてもよい。
【0052】
なお、本実施形態では、基板を回転及び傾斜させる場合、回転軸L1、回転軸L2及び回転軸L3についてそれぞれ独立にステージ11及び基板21を回転させるが、これに限らず、例えば、回転台61上にカムなどを設けることで、回転軸L1のまわりの回転に連動して、ターゲット13に対して基板21及びステージ11を回転させるなどすることで本発明の効果を得ることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、ターゲット13に略平行な表面を持つステージ11を回転、又は傾斜させることによって、基板21をターゲット13に対して傾斜させるが、これに限らず、ターゲット13に対して傾斜した基板設置面を持つステージを回転させるなどしてもよい。また、ステージ11を回転、又は傾斜させずとも、直接、基板21をターゲット13に対して回転、又は傾斜させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のマグネトロンスパッタリング装置を示す概略図である。
【図2】ステージ及びステージ駆動部の分解斜視図である。
【図3】ステージ及び基板が傾斜する様子を表す説明図である。
【図4】表面に段差がある基板をターゲットに対して平行に配置するときに成膜される薄膜を示す断面図である。
【図5】表面に段差がある基板をターゲットに対して傾斜させながら薄膜を成膜する様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
5 マグネトロンスパッタリング装置(薄膜の製造装置)
11 ステージ
12 ステージ駆動部
13 ターゲット
17 アルゴンガス
21 基板
24 スパッタ原子(粒子)
36 ステージコントローラ
61 回転台(第1の回転機構)
63a,63c ステージ傾斜部(第2の回転機構)
63b,63d ステージ傾斜部(第3の回転機構)
71L,71R 基板の端部
73 基板の中央部
74,91,92 薄膜
76,77,81,82,86L,86R,93L,93R,97L,97R 段差の側面
78,83,88,94,98 段差の底面
L1 回転軸(第1の回転軸)
L2 回転軸(第2の回転軸)
L3 回転軸(第3の回転軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を設置するステージと、成膜する薄膜の材料からなるターゲットとを有し、前記ターゲットを構成する材料の粒子を飛散させ、前記基板上に被着させて薄膜を成膜するスパッタリングによる薄膜の製造方法において、
前記基板を前記ターゲットに対して傾斜させることで、前記粒子が前記基板に被着する角度を調節しながら前記基板の表面に薄膜を成膜させることを特徴とするスパッタリングによる薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記ステージを前記ターゲットに対して傾斜させることによって、前記基板を前記ターゲットに対して傾斜させることを特徴とする請求項1記載のスパッタリングによる薄膜の製造方法。
【請求項3】
基板を設置するステージと、成膜する薄膜の材料からなるターゲットとを有し、前記ターゲットを構成する材料の粒子を飛散させ、前記基板上に被着させて薄膜を成膜するスパッタリングによる薄膜の製造装置において、
前記粒子の主な飛散方向に略垂直な第1の回転軸のまわりに前記基板を回転させる第1の回転機構と、
前記基板の表面に略平行な第2の回転軸のまわりに前記基板を回転させる第2の回転機構と、
前記第2の回転軸とは異なる前記基板の表面に略平行な第3の回転軸のまわりに前記基板を回転させる第3の回転機構とを備え、
前記基板を前記ターゲットに対して傾斜させることで、前記粒子が前記基板に被着する角度を調節しながら前記基板の表面に薄膜を成膜させることを特徴とするスパッタリングによる薄膜の製造装置。
【請求項4】
前記第1の回転機構、前記第2の回転機構、及び前記第3の回転機構は、前記ステージを回転させることによって前記基板を前記ターゲットに対して傾斜させることを特徴とする請求項3記載のスパッタリングによる薄膜の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−13817(P2008−13817A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186829(P2006−186829)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】