説明

スパッタリング装置

【課題】 大型の基板の場合でも、必要な成膜速度を維持してボトムカバレッジ率を向上させることができるようにする。
【解決手段】 カソード2を構成する磁石機構4は、ターゲット5の表面のある場所から出てターゲット5の表面の他の場所に入る漏洩磁力線をターゲット5の表面上に周状に連ねて周状磁界を複数設定する、これによって磁石機構4の静止時には周状となるエロージョン領域50が交差せずに複数形成される。エロージョン領域50のうちのエロージョン最深部から最も大きな入射角でスパッタ粒子が基板30に入射する箇所のその入射角は、一つのエロージョン領域の場合に比べて小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、スパッタリング装置、特に、半導体集積回路等の製作の際の成膜工程で使用されるスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングによる薄膜作成、とりわけ高集積化した半導体デバイスの製作における成膜工程に用いられるスパッタリングでは、高アスペクト比の微細ホール底部へ被覆性よく成膜すること、即ちボトムカバレッジ率の向上が強く求められている。
こうした要求に対して、入射角の小さなスパッタ粒子のみを微細ホールに入射させて成膜する工夫がなされてきた。この一つが、コリメートスパッタと呼ばれるものである。
【0003】
図10は、ボトムカバレッジ率を向上させた従来のスパッタリング装置の一例であるコリメートスパッタリング装置の概略を説明した図である。図10に示す装置は、真空容器1内にカソード2と基板ホルダ3とを対向配置している。カソード2は、磁石機構4と、磁石機構4の前側に配設されたターゲット5とから構成され、基板ホルダ3の前面には成膜する基板30が載置される。
そして、カソード2と基板ホルダ3との間の空間には、コリメーター6が設けられる。コリメーター6は、基板30に対して垂直な方向(以下、軸方向)が高さ方向となるような小さな筒状の部材をセグメント状に多数配置した構造であり、軸方向に沿ったスパッタ粒子の流路がセグメント状に多数形成されるようにしている。このような構造であり、しばしば「格子状」又は「蜂の巣状」等と称せられる。
【0004】
ターゲット5から放出されるスパッタ粒子は余弦則に従う分布を持っているため、コリメーター6には入射角の大きなスパッタ粒子も多く入射する。しかし、このようなスパッタ粒子の多くは、コリメーター6の各流路の壁面の部分に付着するため、結果的にコリメーター6の部分を出射するスパッタ粒子は、出射角の小さなものがほとんどとなる。このため、基板30には入射角の小さなもののみが入射するようになり、基板30の表面に形成された微細ホールの底部に対する被覆性が向上する。
しかしながら、上記コリメートスパッタリング装置では、コリメーター6へのスパッタ粒子の付着によって、コリメーター6の各流路の断面積が小さくなり、コリメーター6を通過できるスパッタ粒子の量が経時的に減少する。このため、スパッタ速度が経時的に低下してしまう。
【0005】
このような問題のない高ボトムカバレッジ率のスパッタリング装置として、ターゲット−基板間の距離(以下、TS距離)を長く(従来比3〜6倍)した低圧遠隔スパッタリング装置と呼ばれる装置が最近開発されている。図11は、従来のスパッタリング装置の他の例である低圧遠隔スパッタリング装置の概略を説明した図である。
図11に示す装置は、図10と同様、真空容器1の内部にカソード2と基板ホルダ3を対向配設し、磁石機構4の前側にターゲット5を設けるとともに基板ホルダ3の前面に基板を載置するようにする。TS距離は、例えば150mm〜360mm程度とされる。また、真空容器1内の圧力は、従来より低く1mTorr程度以下としている。これは、スパッタ粒子の平均自由行程を長くしてスパッタ粒子の散乱を少なくするためである。スパッタ粒子の散乱が少なく結果、基板にほぼ垂直な向きに多くスパッタ粒子を入射させることが可能になり、微小ホールのボトムカバレッジ率を向上させることができる。
具体例を述べると、例えば特開平7−292474号公報では、ターゲット直径250mm、基板直径200mm、TS距離300mm、圧力3×10-2Paの条件で、ボトムカバレッジ率の向上が見られるとしている。
【特許文献1】特開平04−074861号公報
【特許文献2】特開昭62−001865号公報
【特許文献3】特開平05−209267号公報
【特許文献4】特開平07−292474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記公報の表3に記載されている通り、ボトムカバレッジ率向上のためTS距離を長くすると、成膜速度が大幅に減少する。このため、低圧遠隔スパッタは、256メガビット以降のプロセス(線幅0.25μm,アスペクト比4〜6)における微細ホールへの成膜に有効であるとされつつも、生産性の点で課題を残している。成膜速度を上げるためTS距離を近づけると、ボトムカバレッジ率が低下するため、256メガビット以降のプロセスへの適用が困難となる。つまり、低圧遠隔スパッタにおいて、成膜速度とボトムカバレッジ率は、トレードオフの関係にあり、両立しない。
【0007】
一方、スパッタプロセスに要請されている別の点は、基板の大型化への対応である。上述のような半導体デバイスのプロセスでは、一枚の基板から産出されるデバイスの数を多くして生産性を向上させるため、基板サイズは大型化する傾向がある。また、液晶ディスプレイを製作する際のガラス基板へのスパッタプロセスでも、表示面積を大きくするため基板が大型化する傾向がある。
このような基板サイズの大型化は、上記低圧遠隔スパッタにおけるTS距離や成膜速度のファクターに複雑に絡み合ってくる。
まず、基板サイズが大型化すると、前述のような低圧遠隔スパッタでも、中心から離れた基板の周辺部では、ボトムカバレッジ率が不十分になるという問題が生ずる。この点を図12及び図13を使用して説明する。
【0008】
図12及び図13は、図11に示す装置を使用して、大型の基板に成膜する場合の問題点を説明した図であり、図12は装置中のターゲットと基板の部分図、図13は、基板の中心付近及び周辺部のボトムカバレッジ率を示した断面図である。
図12に示すように、ターゲット5と基板30とは平行に対向して配置され、その中心軸20(中心を通り表面に垂直な軸)は同一直線上に位置する。尚、図12には、中心軸20から片側の部分が例示されている。
【0009】
スパッタが行われると、ターゲット5の表面には図12に斜線で示すようなエロージョン(侵食)が生ずる。この際、基板30に形成された微小ホール301への成膜の状態は、中心付近と周辺部とでは、図13に示すように異なる。即ち、図13(A)に示すように、基板30の中心付近では、微小ホール301の底部に被覆性よく膜302が堆積する。しかしながら、ターゲット5の径より大きな部分の基板30の周辺部では、図13(B)に示すように、中心軸側から大きな入射角で入射するスパッタ粒子が多くなるため、微細ホール301のうち、基板30の周縁側の壁面には膜302が堆積するものの、中心軸側の壁面や底面には堆積しない状態となる。
このような状態は、コンタクトホール内面へのバリアメタル(拡散防止膜)の形成などの場合に致命的な欠陥となってしまう。従って、基板が大型化する場合、それに応じてターゲットを大型化させなければならない。
【0010】
さて、このような基板の大型化の問題が、前述した成膜速度とボトムカバレッジ率のために必要なTS距離との非両立性の問題に複雑に絡み合い、問題をさらに増長させる。この点を、出願人の社内的なデータを使用しながら説明する。
図14から図17は、低圧遠隔スパッタに関する実験データを示したものである。このうち図14は、ボトムカバレッジ率の圧力及びTS距離依存性を示すデータであり、図15は、得られた薄膜のシート抵抗分布の圧力及びTS距離依存性を示すデータである。また、図16及び図17は、アスペクト比に対するボトムカバレッジ率の関係を示すデータであり、図16がTS距離340mm、図17がTS距離が260mmの場合のデータである。尚、これらのデータは、基板直径6インチ、ターゲット直径269mmの条件で得られている。
【0011】
まず、図14に示すように、低圧側においてボトムカバレッジ率の向上が見られ、TS距離65mmに比べTS距離100mmの場合に高いボトムカバレッジ率が得られている。また、基板の中心付近に比べ、周辺部において高いボトムカバレッジ率が得られている。
また、図15に示すように、TS距離を長くするとシート抵抗分布の均一性が悪化する傾向があるが、圧力を低くするとこの傾向は緩和される。即ち、2.0mTorr以下にすると、TS距離を長くしてもシート抵抗分布は殆ど変化していない。
【0012】
次に、アスペクト比とボトムカバレッジ率の関係を見ると、図16に示す様に、アスペクト比2において40〜45%のボトムカバレッジ率が得られている。一般的にボトムカバレッジ率は15%程度あればデバイスの諸特性において問題が無いといわれており、このようなことからも低圧遠隔スパッタ法は格段に優れた技術であることが分かる。ちなみに、図10に示すようなコリメートスパッタリング装置による場合、ボトムカバレッジ率は15%程度であり、これと比べると低圧遠隔スパッタ法の優秀性が改めて分かる。
【0013】
尚、図16中、○印は基板の中心付近のボトムカバレッジ率を示し、●印は周辺部のボトムカバレッジ率を示している。両データとも殆ど同一線上に並んでおり、基板の面内におけるボトムカバレッジ率は高い均一性を維持していることが分かる。尚、成膜速度は、コリメートスパッタ法と同程度の600オングストローム毎分程度であり、従来のスパッタに比べて約1/3〜1/4程に低下してしまっている。
一方、TS距離を260mmに縮めると、成膜速度は1000オングストローム毎分に改善されるが、図17に示すように、ボトムカバレッジ率はアスペクト比2で28〜35%程度まで減少してしまう。ただ、この場合でも、コリメートスパッタ法の15%よりは高い。
【0014】
さて、これらの結果から、基板が大型化して例えば直径300mmになった場合、ボトムカバレッジ率や成膜速度がどうなるかを検討する。図18は、基板の大型化がボトムカバレッジ率及び成膜速度に与える影響について検討した結果の図である。尚、図18において、ターゲット5におけるエロージョンの断面形状が斜線で示されている。
まず、図17に示した通り、ターゲット直径269mm、TS距離340mmの条件により、優れたボトムカバレッジ率が得られる(図18(a))。これは、基板30がターゲット5より小さい直径8インチの場合も同様である。
次に、基板30がターゲット5よりも大きい300mmになった場合、前述したようにターゲット5も基板30と同程度まで大型化させる必要がある。この場合、同様のボトムカバレッジ率を得るためには、TS距離をさらに長くしなければならないと考えられる。
【0015】
上記の点を、エロージョン最深部からのスパッタ粒子の飛行経路に代表させて説明する。多くのスパッタリングでは、ターゲット上のエロージョンが生ずる領域(以下、エロージョン領域)のうち、ターゲットの径方向における特定の部分が最も深く侵食される傾向があり(以下、この部分をエロージョン最深部とよぶ)、この部分から放出されるスパッタ粒子が成膜状況に最も支配的な影響を与える。このようなエロージョン最深部の形状は、現在主流である平板マグネトロンスパッタリング等では、エロージョン領域が周状であることから、多くの場合周状の形状を描く。
図19及び図20は、エロージョン最深部が周状となる点について説明した図であり、図19が従来の装置における磁石機構の斜視概略図、図20が従来の装置におけるカソードの斜視概略図である。図10や図11のような装置では、平板状のターゲット5の裏側に配設された磁石機構4は、円盤状のヨーク411の上に固定された中央の柱状の中心磁石412と中心磁石412を間隙をおいて取り囲む筒状の周辺磁石413とから構成されている。
【0016】
中心磁石412の前面と周辺磁石413の前面とは異なる磁極が現れるようようになっておいる。例えば中心磁石412がN極であり、周辺磁石413がS極である場合、中心磁石412から出た磁力線は、ターゲット5を透過してターゲット5の表面のある場所から出て漏洩し、図19及び図20に示すように弧状に膨らんだ後、ターゲット5の表面の他の場所に入り、ターゲット5を透過して周辺磁石413に達する。そして、このような漏洩磁力線は、中心磁石412と周辺磁石413との間隙部分の形状に沿って連なり、図19及び図20に示すような周状磁界が形成される。
【0017】
マグネトロンスパッタリングなど、磁界の作用を利用したスパッタリングでは、磁界によって電子を捉えて、気体分子の電離効率を向上させている。従って、イオンによってターゲット5がスパッタされる領域即ちエロージョン領域50の形状は、磁界の形状に相応したものとなり、周状磁界を設定する上記の例では周状になる。
また、マグネトロンスパッタリングでは、電界と磁界が直交する部分で電子がマグネトロン運動を行い、電離効率は最高となる。従って、図19及び図20に示すような構成では、弧状の漏洩磁力線の頂上の部分で電界と磁界の直交関係が成立し、この部分の下方の部分に強いエロージョンを生ずる傾向がある。つまり、エロージョン最深部は、弧状の漏洩磁力線の頂上部分の下方に位置する周状の形状を描くことになる。
【0018】
さて、前述したようにエロージョン最深部からは盛んにスパッタ粒子が放出されるので、エロージョン最深部の幾何学的配置は基板上への成膜の状態に最も影響を与えると考えられる。ここで、図10や図11に示すようにターゲット5と基板30とが同軸上に対向配置されている場合、ターゲット5の片側の半周分のエロージョン最深部は、基板30の同じ側の半分の領域に対する成膜に影響を与え、反対側の半分の領域への成膜には影響を与えないと考えられる。その反対側の基板30の表面には、やはりターゲット5の反対側の半周分のエロージョンが影響を与えるからである。
この半周分のエロージョン最深部から放出されるスパッタ粒子を考えると、基板30に入射する入射角が最も大きくなるのは、基板30の中心付近に入射するスパッタ粒子である。エロージョン最深部の半径がターゲット5の半径の1/2以下であるときは、基板30の周辺部に入射するスパッタ粒子が最も入射角が小さくなるが、このような場合はまれである。
【0019】
さて、前述したターゲット直径269mmである図18(a)の例において、エロージョン最深部が中心軸20から例えば70mm(直径140mm)の位置に発生した場合、基板30の中心付近へのスパッタ粒子への入射角θは、TS距離340mmの条件から、11.6°程度となる。
一方、基板30が大型化して300mmになった場合、前述したようにターゲット5も同様なサイズまで大型化させなければならない。図18(b)に示すように、基板30より少し大きな直径314mmのターゲット5を用い、エロージョン最深部が直径163mmの位置に生じた場合、TS距離を同一とすると、中心付近へのスパッタ粒子の入射角θは13.5°程度まで拡大してしまう。従って、図18(a)の場合と同様の入射角にして同様のボトムカバレッジ率を得るためには、TS距離を実に397mmにまで拡大しなければならなくなる。ここまでTS距離を長くすると、成膜速度は実用化不可能な程度迄低下してしまう。
【0020】
そこで、図18(d)に示すように、TS距離を実用的な範囲である303mm(基板直径と同程度)にすると、中心付近への入射角θは、15.0°となり、図18(b)の場合に比べ、(15.0/11.3)=1.3倍程度まで拡大する。この15.0°という入射角は、従前の269mmサイズのターゲット5(エロージョン最深部直径140mm)を使用する場合、TS距離を260mm程度にするのと同じである(図18(c))。この構成は、図17のデータが得られたスパッタリングそのものであり、アスペクト比2の微小ホールに対して28〜35%程度のボトムカバレッジ率しか得られない。
このように、基板が大型化していく中、必要な成膜速度を維持してボトムカバレッジ率を向上させることは、低圧遠隔スパッタといえどもこれまでの構成では困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本願の請求項1の発明は、排気系を備えた真空容器と、真空容器内の所定の位置に配置された円板状のターゲットと、ターゲットの表面側に磁界を設定する磁石機構とを具備し、ターゲットに対向させて円形の基板を同一中心軸上に平行に配置し、前記磁石機構が作る磁界によって電子を捉えながらターゲットをスパッタして基板の表面に所定の薄膜を作成するスパッタリング装置であって、
前記磁石機構は、ターゲットの表面のある場所から出てターゲットの表面の他の場所に入る漏洩磁力線を設定するとともにこのような漏洩磁力線をターゲットの表面上に周状に連ねて形成される周状磁界を設定するものであり、当該磁石機構がターゲットに対して相対的に静止している場合には周状となるエロージョン領域がこの周状磁界によってターゲットの表面上に形成されるスパッタリング装置において、
前記磁石機構は、ターゲット側の表面が第一の磁極である第一磁極磁石と、ターゲット側の表面の磁極が第一の磁極とは異なる第二の磁極である第二磁極磁石とを有しており、
第一磁極磁石は、平面で見た際、ターゲットの周縁に沿って延びるとともにターゲットの中心軸上に中心がある円周部と、円周部の内側を区画する区画部とから成り、区画部は、ターゲットの中心軸を外れた位置において延びていて円周部の内側を大きさの異なる二つの領域に区画しており、
第二磁極磁石は、第一磁極磁石の区画部によって区画された円周部内の二つの領域にそれぞれ配置されており、
第一磁極磁石及び各第二磁極磁石により、ターゲットの表面上に前記周状磁界が複数設定され、前記周状となるエロージョン領域が交差しないようにして複数形成されるようになっているという構成を有する。
同様に上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、上記請求項1の構成において、前記基板は前記ターゲットから150mm以上360mm以下の距離にて配置されるという構成を有する。
同様に上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、上記請求項1の構成において、前記磁石機構をターゲットの中心軸の周りに回転させる回転機構を具備しているという構成を有する。
【発明の効果】
【0022】
以下に説明する通り、本願の各請求項記載の発明によれば、大型の基板に対しても必要な成膜速度を維持してボトムカバレッジ率を向上させることができるので、次世代の集積回路用の実用的な成膜技術として最適なものとなる。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、ターゲットのエロージョンが均一化され、ターゲットの利用効率の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。
図1は、本願発明の第一の実施形態に係るスパッタリング装置の概略を説明する図である。図1に示すスパッタリング装置は、排気系11を備えた真空容器1と、真空容器1内に対向して配置されたカソード2及び基板ホルダ3と、真空容器1内に所定のガスを導入するガス導入系7と、カソード2に所定の電圧を与えるカソード電源21等から主に構成されている。
図1の装置は、カソード2の構成に大きな特徴がある。図2及び図3は、図1の装置におけるカソード2の構成を説明する図であり、図2は磁石機構4の構成を説明する斜視概略図、図3は図2の磁石機構4によるターゲット5上の周状磁界の構成を説明する斜視概略図である。
カソード2は、磁石機構4と磁石機構4の前側に配設されたターゲット5とから構成され、カソード電源21によって所定の電圧が印加される。本実施形態の特徴的な点は、ターゲット5の表面上に周状磁界を複数設定して周状となるエロージョン領域が交差しないようにして複数形成されるようにする点である。
具体的に説明すると、磁石機構4は、円盤状のヨーク421と、このヨーク421の上に固定された一つのN極磁石422及び二つのS極磁石423,424とから構成されている。N極磁石422は、図2に示すように、ヨーク421の周縁に沿って延びるリング状の円周部と、中心から外れた位置で円周部の内側の空間を仕切るように延びる区画部とからなる形状である。また、二つのS極磁石のうちの一方は、外周部によって仕切られた空間のうち大きい方の空間の中央に位置する第一S極磁石423であり、他方は、小さい方の空間の中央に位置する第二S極磁石424になっている。尚、中心軸20は、第一S極磁石423とN極磁石422の区画部との間の間隙の中心付近を通るよう構成されている。また、図2及び図3から解るように、N極磁石422の円周部は、ターゲット5の周縁に沿って延びるものとなっている。
【0024】
上記構成に係る磁石機構4によると、図3に示すようにターゲット5表面上に大きさの異なる周状磁界が二つ設定される。即ち、N極磁石422から出て第一S極磁石423に達する弧状の漏洩磁力線は、第一S極磁石423の周囲の上方に周状に連なって第一の周状磁界が設定され、N極磁石422から出て第二S極磁石424に達する弧状の漏洩磁力線は、第二S極磁石424の周囲の上方に周状に連なって第二の周状磁界を設定する。そして、このような二つの周状磁界によって、図3に示すような二つの周状となるエロージョン領域50が交差せずに形成されるのである。
【0025】
尚、本実施形態における磁石機構4は、後述するように回転機構22によって回転させられるが、上記エロージョン領域50の複数形成は、いうまでもなく磁石機構4の静止時の状態である。磁石機構4が回転すると、エロージョン領域50が中心軸20の周りに回転するので、エロージョン領域はターゲット5のほとんど全面に広がる(領域の数としては一つ)。
さて、このように周状となるエロージョン領域50がターゲット5上に交差せずに複数形成されると、そのエロージョン領域50のエロージョン最深部の直径(エロージョン最深部の形状が円形でない場合、周の中心を通り周上の任意の2点を結んだ直線の長さ(幅)のうち最も短いものとする)は、エロージョン領域50が一つである従来のエロージョン最深部の直径に比べ、常に小さくなる。そして、エロージョン最深部の直径が小さくなると、TS距離を拡大することなしにスパッタ粒子の入射角が小さくできる。
【0026】
上記の点を、図4を利用して詳しく説明する。図4は、図1から図3に示す実施形態の作用効果を説明する断面概略図である。
図4に斜線で示したターゲット5のエロージョンの断面形状において、エロージョン最深部から基板30を見込んだとき、入射角が左右同じで最も入射角が大きくなる基板30の表面上の箇所は、図18に示すのと同様に、周状のエロージョン最深部の中心と同軸上に位置する箇所である。そして、エロージョン最深部からこの箇所に入射するスパッタ粒子の入射角θは、図18に示すような一つのエロージョン領域の場合に比べ明らかに小さくなる。図4に示すように、中心を通る方向で見たエロージョン最深部の幅(以下、単にエロージョン最深部の幅)をφ1、φ2とする。
【0027】
このように、本実施形態の構成によれば、TS距離を長くすることなしにスパッタ粒子の入射角を小さくすることができる。このため、必要な成膜速度を確保しつつボトムカバレッジ率の向上を図ることができ、さらに高集積化する次世代の集積回路用の実用的な成膜技術として最適なものとなる。
尚、二つのエロージョン領域50の離間距離が大きくなると、その離間部分に対向する基板30上の箇所において最も入射角が大きくなることがあり得る。従って、エロージョン領域50の離間距離はできるだけ小さくすべきであり、エロージョン最深部の幅の1/2以下にすることが理想的である。
【0028】
また、各々のエロージョン最深部の幅は、基板直径以下とすることがボトムカバレッジ率改善の点から好ましい。基板30の直径以上になった場合、従来と同様にスパッタ粒子の入射角が限度以上に大きくなってしまう。但し、基板に比べて異常に大きなターゲットを使用したり、ターゲットに比して異常に小さな基板を使用したりしなければ、このような事態にはならないと想定される。
さらに、TS距離に対する各々のエロージョン最深部の幅の大きさの限度は、被覆する微小ホールのアスペクト比等によって決まる。図5は、TS距離に対する各々のエロージョン最深部の幅とアスペクト比との関係について説明した図である。
【0029】
前述のように、256メガビット以降の集積回路の製作には、アスペクト比2以上の微小ホールに対する成膜が求められている。ここで、TS距離に等しいエロージョン最深部によってアスペクト比2の微小ホール301に成膜する場合を考えると、図5に示す通り、エロージョン最深部から出たスパッタ粒子はホールの開口の縁303の付近を通ってホール底部の反対側の縁304に達する。つまり、アスペクト比2の微小ホールに対する成膜では、(エロージョン最深部幅)=(TS距離)が限度であり、それ以上にエロージョン最深部の幅が大きくなると、ボトムカバレッジ率が著しく低下する。従って、アスペクト比2以上の次世代の成膜技術のためには、エロージョン最深部の幅をTS距離以下とすることが望ましい。
【0030】
次に、本実施形態のその他の部分の構成及び全体の動作について簡単に説明する。
まず、排気系11は、10−8Torr程度まで排気可能なものが採用され、成膜時には、真空容器1内にアルゴン等の放電用ガスを導入して0.3mTorr程度の真空圧力を維持し、前述した低圧遠隔スパッタと同様にスパッタ粒子散乱防止効果が得られるようにする。
真空容器1の器壁は、不図示のゲートバルブが設けられ、ゲートバルブを通して基板30を搬入搬出する不図示の搬送系が備え付けられている。また、真空容器1には、不図示のロードロックチャンバがゲートバルブを介して並設され、真空容器1から隔絶されたロードロックチャンバ内において、基板30を大気圧雰囲気に戻すようになっている。
【0031】
カソード2の構成は上述の通りであるが、本実施形態では、カソード2を中心軸20の周りに回転させる回転機構22が付設されている。回転機構22は、ターゲット5上のエロージョンを均一にするものであり、ヨーク421の裏面に接続された中心軸20と同軸上の回転軸221と、回転軸221を回す駆動源222などから構成されている。尚、前述した通り、ターゲット5の中心軸20付近がエロージョン領域50に含まれるので、磁石機構4を回転させた際にこの部分がエロージョンされずに残ってしまうことが防止され、さらにターゲット5の利用効率が向上する。
【0032】
基板ホルダ3には、基板30を静電吸着によって吸着保持する機構や成膜中に基板30を所定温度まで加熱する加熱機構が設けられる。また、基板30に所定のバイアス電圧を与えるためのバイアス用電源が必要に応じて基板ホルダ3に接続される。
ガス導入系7は、スパッタ放電に必要なガスを真空容器1内に導入するものであり、不図示のボンベに繋がれた配管71と、配管上に設けられた流量調整器72やバルブ73などで構成される。また、反応性スパッタ等を行う場合、反応性のガスを放電用のガスに混ぜて導入する場合がある。
【0033】
カソード電源21は、スパッタ放電に必要な所定の負の直流電圧又は高周波電圧をカソード2に印加するよう構成される。ターゲット5が金属の場合には負の直流電圧が印加され、誘電体等の場合には高周波電圧が印加される場合が多い。尚、真空容器1やバイアスをかけない場合の基板ホルダ3等は接地され、電気的には接地電位に保たれる。カソード2に与えられた電圧は、これらの部材との間で電界を発生させ、この電界によってスパッタ放電が生じるようになっている。
【0034】
上記構成に係る本実施形態のスパッタリング装置では、基板30は不図示の搬送系によって不図示のゲートバルブを通して真空容器1内に搬送され、基板ホルダ3上に載置される。次に、ガス導入系7を動作させて所定のガスを真空容器1内に導入しながら、カソード電源21を動作させて所定の電圧をカソード2に印加し、上述の通りスパッタ放電を生じさせる。これによってターゲット5からはスパッタ粒子が放出され、このスパッタ粒子30板に到達して堆積することにより所定の成膜が行われる。
【0035】
ここで、上述の通り本実施形態では、直径の小さなエロージョン領域50がターゲット5上に形成されるので、基板30に入射するスパッタ粒子の入射角が小さくなる。従って、微小ホールへのボトムカバレッジ率が従来に比べ格段に向上する。
次に、本願発明の第二の実施形態について説明する。
図6は、本願発明の第二の実施形態におけるカソードの構成を説明する斜視概略図である。この第二の実施形態では、図6に示す通り三つの周状磁界が設定されるようになっている。即ち、本実施形態では、カソード2を構成する磁石機構4は、ヨーク431上に固定されたN極磁石432と三つのS極磁石433とからなり、N極磁石432は、ヨーク431の周縁に沿ったリング状の外周部と、外周部の内部を三つの空間に区画部とから構成された形状を有している。そして、外周部内の三つの空間の中心位置には、それぞれS極磁石433が配設されている。
【0036】
図6に示す三つの周状磁界によって、ターゲット5上には三つのエロージョン領域50が交差せずに形成される。従って、エロージョン最深部の直径はこの第二の実施形態においても小さくなり、第一の実施形態と同様にスパッタ粒子の入射角の低減作用が得られる。また、第一の実施形態と比較すると、三つの周状磁界を設定する本実施形態では、二つの周状磁界の場合に比べてエロージョン領域50の直径をさらに小さくできる場合が多い。
磁石機構4の部分以外は、前述した第一の実施形態と同様に構成できるので、説明を省略する。
【0037】
次に、本願発明の第三の実施形態について説明する。図7及び図8は本願発明の第三の実施形態を説明する図であり、図7は平面図、図8は側断面図である。前述した第一第二の実施形態では、磁石機構4が永久磁石から構成されていたが、この第三の実施形態では、電磁石によって構成されている。即ち、磁石機構4は、板状の鉄心体441と、鉄心体441の上に固定されターゲット5上に磁力線を漏洩させる第一から第五の五つの磁極体442,443,444,445,446と、鉄心体441に巻かれた磁界コイル447とから主に構成されている。
【0038】
鉄心体441は、長方形の板状の部材であり、ターゲット5と平行に配置される。五つの磁極体442,443,444,445,446は、幅方向をターゲット5に向かう側に向けて配置された帯板状の部材であり、それぞれ鉄心体441の表面に溶接等により固定される。五つの磁極体442,443,444,445,446は、長方形の鉄心体441の短辺の方向が長さ方向になる姿勢で固定されている。具体的には、鉄心体441の向かい合う短辺の部分の縁にN極となる第一及び第五の磁極体442,446がそれぞれ固定され、長辺の方向の中程より第五磁極体446よりの位置に、同じくN極となる第三磁極体444が固定されている。そして、第一磁極体442と第三磁極体444との中間の位置にS極となる第二磁極体443が固定され、第三磁極体444と第五磁極体446との中間の位置に同じくS極となる第四磁極体445が固定されている。
【0039】
また、第一磁極体442と第二磁極体443の間、第二磁極体443と第三磁極体444の間、第三磁極体444と第四磁極体445の間、及び、第四磁極体445と第五磁極体446の間の鉄心体441の部分には、それぞれ磁界コイル447が巻かれている。そして、それぞれの磁界コイル447に所定の向きの直流電流が流されることによって、N極である第一磁極体442及び第三磁極体444から出てS極である第二磁極体443に達する第一の漏洩磁力線と、N極である第三磁極体444及び第五磁極体446から出てS極である第四磁極体445に達する第二の漏洩磁力線とがそれぞれ設定される。
【0040】
また、上記鉄心体441の両側には、図8に示すように八つの補助鉄心体451,452,453,454,455,456,457,458が配設されている。八つの補助鉄心体451,452,453,454,455,456,457,458は、四分割の扇状のような形状の板状を成している。それぞれの補助鉄心体451,452,453,454,455,456,457,458は、扇の周縁の部分に沿って固定された帯板状の周縁磁極体459と扇の中心部分に固定された柱状の中心磁極体460とを備えている。
【0041】
八つの補助鉄心体の451,452,453,454,455,456,457,458うち、第一から第四の四つの補助鉄心体451,452,453,454は、第一第三の磁極体442,444と第二の磁極体443の離間距離にほぼ等しい半径のものであり、第五から第八の補助鉄心体455,456,457,458は、第三第五の磁極体444,446と第四磁極体445の離間距離にほぼ等しい半径のものになっている。また、各々の補助鉄心体451,452,453,454,455,456,457,458には、弧状の漏洩磁力線が周縁磁極体459と中心磁極体460にまたがって設定されるよう磁界コイル447が巻かれている。
【0042】
そして、図7に示すように、第一から第四の補助鉄心体451,452,453,454は、それらの中心磁極460が第二磁極体443の両端付近に位置するとともに、それらの周縁磁極体459が第一磁極体442及び第三磁極体443とともに周状を成すよう配置されている。同様に、第五から第八の補助鉄心体455,456,457,458は、それらの中心磁極体460が第四磁極体445の両端付近に位置するとともに、それらの周縁磁極体459が第三磁極体444及び第五磁極体446とともに周状を成すよう配置されている。
このような配置によって、各磁極体によって設定される弧状の磁力線が周状に連なり、周状磁界が二つ並設されるようになっている。そして、第二磁極体443と第三磁極体444との間の中間部分が中心軸20になるようにしてターゲット5を同軸上に配置すれば、図2に示す磁石機構4とほぼ等価なカソード2の構成が電磁石によって達成される。この第三実施形態においても、中心軸20の周りに磁石機構4を回転させれば、エロージョンの均一化が図られ、ターゲット5の利用効率が向上できる。
【0043】
電磁石を用いた上述の第三実施形態では、各々の磁界コイル447への供給電流を制御することで磁界分布を調整し、膜厚分布の改善等を図ることができる。この点を図9を用いて説明する。図9は、図7及び図8に示す第三実施形態において、各磁界コイルへの供給電流を独立して制御する電流制御手段を付加した応用例の説明図である。
この例における電流制御手段は、各々の磁界コイル447A,447B,……447Lに直流電流を供給する直流電源448と、直流電源448からの磁界コイル447A,447B,……447Lへの各供給回路上に設けられた電流調整器449と、電流調整器449を制御して各磁界コイル447A,447B,……447Lへの電流供給量を調整するプログラマブルコントローラ450とから主に構成されている。
【0044】
図7及び図8に示すカソード2を使用して成膜を行った場合、例えば基板30の周辺部分の成膜速度が中心部分に比べて低く、膜厚分布の面内均一性が充分でないと判断される場合、八つの補助鉄心体451,452,453,454,455,456,457,458に巻かれた磁界コイル447への電流供給量を相対的に多くするよう制御する。例えば、電流調整器449として、サイリスタ等を用いて所定周期で電流をオンオフできるようなものを採用し、プログラマブルコントローラ450からの信号によって、そのオンオフ周期を調整するようにする。
そして、図7に示す鉄心体441に巻かれた四つの磁界コイル447への電流のオン周期に比べ、補助鉄心体451,452,453,454,455,456,457,458に巻かれた八つの磁界コイル447への電流のオン周期を相当程度長くする。これによって、補助鉄心体451,452,453,454,455,456,457,458の部分の漏洩磁力線の磁束密度が相対的に高くなり、ターゲット5の周辺部分のエロージョンが強化される結果、基板30の周辺部の成膜速度が改善され膜厚分布の面内均一性が向上する。
【0045】
このような供給電流量の独立制御は、二つの周状磁界を設定する二つの電磁石の群同士で独立制御可能としてもよいし、個々の電磁石すべてについて独立制御可能としてもよい。少なくとも二つの群について独立制御可能であれば、何らかの磁界分布調整機能が発揮される。
上述した各実施形態の構成において、周状磁界の数は2又は3であったが、4もしくはそれ以上であってもよい。周状磁界の数を多くすれば同一TS距離におけるスパッタ粒子の入射角は一般的には小さくなるので、ボトムカバレッジ率向上の点から好適である。
【0046】
また、回転機構22は、磁石機構4を回転させる代わりにターゲット5を回転するようにしてもよい。さらに、磁石機構4の中心軸20をターゲット5の中心軸から所定距離偏心させて配置し、ターゲット5の中心軸の周りに磁石機構4を回転させる場合もある。
尚、本明細書における「周状」は最も広い意味を有し、円周状、楕円周状、長円周状、角周状、波線のように入りくんだ周状等のあらゆる形状を含む。また、完全につながった周状でなくともよく、一部にとぎれている場合もよい。例えば一部にとぎれた部分がある周状磁界や周状のエロージョン領域50ではあっても、それに起因する膜厚不均一化等の問題が限度以下であればかまわない。
【0047】
また、エロージョン最深部は、線状ではなくて帯状即ち相当の幅を有する場合がある。さらに、最深部分の深さから相当程度浅い部分までをエロージョン最深部とすることがある。エロージョン最深部は、エロージョン領域のどの部分が成膜に最も影響を与えているかをみる概念なので、成膜への影響度に応じて適宜決定される。
また尚、エロージョン領域とは、磁界の作用によって実質的なエロージョンが生じている場所のことである。エロージョン領域外に拡散して基板に到達したごく少数のイオンがターゲットをたたくことによって、エロージョン領域以外でも経時的にごく浅いエロージョンが生ずることがあるが、そのようなエロージョンは、成膜の状況に影響を与えるものではないので、実質的なエロージョンではないと判断される。例えば、エロージョン領域の平均エロージョン速度を100とした場合、5%以下の速度のエロージョンが生じている領域は、実質的にはエロージョン領域ではないとされる。
【実施例】
【0048】
次に、上記第一の実施形態に属する実施例について例示して説明する。第一の実施形態において、
ターゲット直径:314mm、
TS距離:303mm、
基板直径:300mm、
圧力:0.3mTorr、
カソードへの供給電圧:−600V、
N極磁石の直線部の偏心距離(図2の距離d):40mm、
第一のエロージョン最深部の幅(図4のφ1):200mm、
第二のエロージョン最深部の幅(図4のφ2):100mm、
磁石機構の回転速度:200rpm、
基板温度:300℃、
ターゲット材料:チタン、
放電用ガス:アルゴン、
の条件でスパッタリングを行ったところ、アスペクト比2の微小ホールに対してボトムカバレッジ率40〜45%で成膜が行えることが確認された。またその際の成膜速度は1000オングストローム毎分であった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本願発明の第一の実施形態に係るスパッタリング装置の概略を説明する図である。
【図2】図1の装置におけるカソードの構成を説明する図であり、磁石機構の構成を説明する斜視概略図である。
【図3】図1の装置におけるカソードの構成を説明する図であり、磁石機構によるターゲット上の周状磁界の構成を説明する斜視概略図である。
【図4】図1から図3に示す実施形態の作用効果を説明する図であり、図2のX−Xの方向での断面図である。
【図5】TS距離に対する各々のエロージョン最深部の幅とアスペクト比との関係について説明した図である。
【図6】本願発明の第二の実施形態におけるカソードの構成を説明する斜視概略図である。
【図7】本願発明の第三の実施形態を説明する平面図である。
【図8】本願発明の第三の実施形態を説明する側断面図である。
【図9】図7及び図8に示す第三実施形態において、各磁界コイルへの供給電流を独立して制御する電流制御手段を付加した応用例の説明図である。
【図10】ボトムカバレッジ率を向上させた従来のスパッタリング装置の一例であるコリメートスパッタリング装置の概略を説明した図である。
【図11】従来のスパッタリング装置の他の例である低圧遠隔スパッタリング装置の概略を説明した図である。
【図12】図11に示す装置を使用して大型の基板に成膜する場合の問題点を説明した図であり、装置中のターゲットと基板の部分図である。
【図13】図12と同様に、図11に示す装置を使用して大型の基板に成膜する場合の問題点を説明した図であり、基板の中心付近及び周辺部のボトムカバレッジ率を示した断面図である。
【図14】低圧遠隔スパッタに関する実験データを示すものであり、ボトムカバレッジ率の圧力及びTS距離依存性を示すデータである。
【図15】同じく低圧遠隔スパッタに関する実験データを示すものであり、得られた薄膜のシート抵抗分布の圧力及びTS距離依存性を示すデータである。
【図16】同じく低圧遠隔スパッタに関する実験データを示すものであり、TS距離が340mmの場合のアスペクト比に対するボトムカバレッジ率の関係を示すデータである。
【図17】同じく低圧遠隔スパッタに関する実験データを示すものであり、TS距離が260mmの場合のアスペクト比に対するボトムカバレッジ率の関係を示すデータである。
【図18】基板の大型化がボトムカバレッジ率及び成膜速度に与える影響について検討した結果の図である。
【図19】エロージョン最深部が周状となる点について説明した図であり、従来の装置における磁石機構の斜視概略図である。
【図20】エロージョン最深部が周状となる点について説明した図であり、従来の装置におけるカソードの斜視概略図である。
【符号の説明】
【0050】
1 真空容器
11 排気系
2 カソード
20 中心軸
22 回転機構
3 基板ホルダ
30 基板
4 磁石機構
5 ターゲット
50 エロージョン領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気系を備えた真空容器と、真空容器内の所定の位置に配置された円板状のターゲットと、ターゲットの表面側に磁界を設定する磁石機構とを具備し、ターゲットに対向させて円形の基板を同一中心軸上に平行に配置し、前記磁石機構が作る磁界によって電子を捉えながらターゲットをスパッタして基板の表面に所定の薄膜を作成するスパッタリング装置であって、
前記磁石機構は、ターゲットの表面のある場所から出てターゲットの表面の他の場所に入る漏洩磁力線を設定するとともにこのような漏洩磁力線をターゲットの表面上に周状に連ねて形成される周状磁界を設定するものであり、当該磁石機構がターゲットに対して相対的に静止している場合には周状となるエロージョン領域がこの周状磁界によってターゲットの表面上に形成されるスパッタリング装置において、
前記磁石機構は、ターゲット側の表面が第一の磁極である第一磁極磁石と、ターゲット側の表面の磁極が第一の磁極とは異なる第二の磁極である第二磁極磁石とを有しており、
第一磁極磁石は、平面で見た際、ターゲットの周縁に沿って延びるとともにターゲットの中心軸上に中心がある円周部と、円周部の内側を区画する区画部とから成り、区画部は、ターゲットの中心軸を外れた位置において延びていて円周部の内側を大きさの異なる二つの領域に区画しており、
第二磁極磁石は、第一磁極磁石の区画部によって区画された円周部内の二つの領域にそれぞれ配置されており、
第一磁極磁石及び各第二磁極磁石により、ターゲットの表面上に前記周状磁界が複数設定され、前記周状となるエロージョン領域が交差しないようにして複数形成されるようになっていることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記基板は前記ターゲットから150mm以上360mm以下の距離にて配置されることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記磁石機構をターゲットの中心軸の周りに回転させる回転機構を具備していることを特徴とする請求項1又は2記載のスパッタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−241598(P2006−241598A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149061(P2006−149061)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【分割の表示】特願平8−150041の分割
【原出願日】平成8年5月21日(1996.5.21)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】