説明

スプール制御弁

【課題】 電磁油圧制御弁のセット荷重調整装置において、リターンスプリング4の荷重の(再)調整が容易で、且つバルブボディ1の収容孔2の取付け孔(雌ネジ孔)に対するアジャストスクリュー5の固定が確実にできるようにすることを課題とする。
【解決手段】 バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ孔に対するアジャストスクリュー5の捩じ込み位置を調整することで、電磁油圧制御弁の出力圧、つまりリターンスプリング4のバネ荷重を調整する。そして、電磁油圧制御弁の出力圧の調整、つまりリターンスプリング4のバネ荷重の調整が終了した後に、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44にストッパ6の圧入部を圧入固定することにより、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ孔に対するアジャストスクリュー5の軸方向位置が規制される。これにより、アジャストスクリュー5がバルブボディ1の収容孔2の雌ネジ孔に位置決め固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール制御弁に関するもので、特にバルブスプリングのアジャストスクリューの支持構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、例えば自動変速機(AT)や無段変速機(CVT)等の油圧制御には、電磁油圧制御弁(電磁弁)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
電磁弁は、バルブボディに形成される収容孔内に収容されるスプール制御弁と、このスプール制御弁の弁体であるバルブスプールをスプール収容孔の開口側へ移動させる電磁アクチュエータとを備えている。
スプール制御弁は、収容孔内に嵌合される円筒状のスリーブ、このスリーブに形成されるスプール収容孔内に往復摺動可能に支持されるバルブスプール、このバルブスプールをアクチュエータ側へ付勢する圧縮コイルスプリング、およびスプール収容孔の開口部を閉塞するアジャストスクリューを有している。
【0003】
スリーブには、スプール収容孔の軸線方向に対して垂直な半径方向に延びる複数のポートが、スリーブの内部と外部とを連通するように形成されている。複数のポートは、オイルが供給される供給ポート、オイルが出力される出力ポート、バルブスプールをフィードバックするフィードバックポート、およびオイルが排出される排出ポート等により構成されている。
バルブスプールは、スリーブの孔壁面に直接摺動している。このバルブスプールは、供給ポートと出力ポートとの間の連通状態を制御する複数のランドを有している。
ここで、バルブスプールよりも開口側のスプール収容孔(スプリング収容室)に収容された圧縮コイルスプリングは、その一端がバルブスプールの端面に係止されており、他端がアジャストスクリューの端面に係止されている。
【0004】
このアジャストスクリューの外周には、スプール収容孔(スクリュー取付け孔)の雌ネジと螺合可能な雄ネジが形成されている。この雄ネジの外周に位置する部分のスリーブには、スプリング収容室に連通し、スリーブの外周面で開口した2つの貫通孔が形成されている。
スリーブの貫通孔には、かしめピンが挿入され、挿入されたかしめピンによりアジャストスクリューのネジ山が潰される。これにより、アジャストスクリューがスリーブに固定される。
すなわち、オイルの出力圧は、アジャストスクリューを回転して軸線方向に移動させることにより、圧縮コイルスプリングの取付け荷重を変えて調整される。その後、アジャストスクリューのネジ山をかしめピンで潰すことにより、スリーブ内の任意の位置でアジャストスクリューが固定される。
【0005】
また、リニアソレノイドの出力杆と同軸状に形成される弁体支持孔と、複数のポートを有する弁本体と、弁体支持孔内に摺動自在に配置されたスプール弁体と、このスプール弁体をリニアソレノイド側へ付勢する弁体スプリングと、筒状の圧入筒部を有する有底薄肉筒状の調圧キャップとを備えたリニアソレノイド弁が公知である(例えば、特許文献2参照)。
弁本体には、調圧キャップ取付け孔が形成されている。この調圧キャップ取付け孔は、調圧キャップの圧入筒部が圧入されて固着されるように、圧入筒部の外径よりも小さい内径を持って弁本体の端面で開口している。
そして、弁体スプリングのセット荷重は、調圧キャップの調圧キャップ取付け孔への圧入深さを調整することによって調整される。
【0006】
[従来の技術の不具合]
ところが、特許文献1に記載の電磁弁においては、アジャストスクリューの半径方向外側から、アジャストスクリューのネジ山を潰すための作業スペースが必要となる。
これにより、仮にバルブスプールがバルブボディの孔壁面に直接摺動し、アジャストスクリューの雄ネジの外周に位置する部分のバルブボディの壁部近傍に油路が設けられる場合等では、アジャストスクリューのネジ山をかしめピンで潰すことにより、スリーブ内の任意の位置でアジャストスクリューを固定する構造を使用することができないという問題が生じている。
【0007】
また、特許文献2に記載のリニアソレノイド弁においては、弁体スプリングのセット荷重の調整を、調圧キャップの調圧キャップ取付け孔への圧入深さを調整することによって行うようにしている。
このように調圧キャップを弁本体の調圧キャップ取付け孔に圧入する場合、目標圧を外れたときに、弁体スプリングのセット荷重の再調整が非常に困難である。例えば弁本体の調圧キャップ取付け孔に圧入される調圧キャップを開口側に引き戻して調圧キャップ取付け孔に対して固定することは困難であるという問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−166238号公報
【特許文献2】特開平10−311454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、スプリングのバネ荷重の(再)調整が容易で、且つバルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の固定が確実にできるスプール制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明(スプール制御弁)は、バルブボディに形成された収容孔に収容されて、流体圧を調圧するバルブスプールと、バルブボディの収容孔に収容されて、バルブスプールにバルブボディの収容孔の軸線方向の荷重を与えるスプリングと、このスプリングの荷重を調整する荷重調整部材と、バルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の軸線方向の位置を規制する位置規制部材とを備えている。
荷重調整部材は、バルブボディの収容孔に捩じ込むことによりバルブボディの孔壁面に固定される。
位置規制部材は、バルブボディの収容孔に圧入することによりバルブボディの孔壁面に固定される。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、バルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の捩じ込み量を調節することにより、スプリングの荷重が調整される。
そして、スプリングの荷重調整が終了した後に、バルブボディの収容孔に位置規制部材を圧入固定することにより、バルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の軸線方向の位置が規制される。
したがって、バルブボディの収容孔に荷重調整部材を圧入していないので、目標を外れた場合であっても、スプリングの荷重の(再)調整が容易となる。
また、バルブボディの収容孔に荷重調整部材を捩じ込んだ後に、バルブボディの収容孔に圧入される位置規制部材によってバルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の軸線方向の位置を規制できるので、バルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の固定を確実に実施することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、バルブボディの(収容)孔壁面に、荷重調整部材を捩じ込むことにより固定するための雌ネジを形成している。また、荷重調整部材の外周面に、バルブボディの収容孔(雌ネジ)に締結可能な雄ネジを形成している。
これによって、荷重調整部材を回しながら収容孔内に挿入することで、バルブボディの収容孔内の任意の位置で荷重調整部材が固定される。
このとき、スプリングの荷重が目標値と異なる場合には、荷重調整部材を開口側に戻したり(緩めたり)、あるいは更に奥側へ入れたりすることを容易に行うことができる。つまりスプリングの荷重の(再)調整が容易となる。
【0013】
請求項3に記載の発明(スプール制御弁)は、バルブボディに形成された収容孔に収容されて、流体圧を調圧するバルブスプールと、バルブボディの収容孔に収容されて、バルブスプールにバルブボディの収容孔の軸線方向の荷重を与えるスプリングと、このスプリングの荷重を調整する荷重調整部材と、バルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の軸線方向の位置を規制する位置規制部材と、バルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の軸線方向の位置ズレを吸収する位置ズレ吸収部材とを備えている。
荷重調整部材は、バルブボディの収容孔に捩じ込むことによりバルブボディの孔壁面に固定される。
位置規制部材は、バルブボディの収容孔に圧入することによりバルブボディの孔壁面に固定される。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、バルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の軸線方向の位置ズレを吸収する位置ズレ吸収部材を設けたことにより、バルブボディの収容孔に対する位置規制部材の圧入荷重を一定寸法で管理することができるため、位置規制部材の圧入作業が容易になる。
また、荷重調整部材の軸線方向の位置ズレを、位置ズレ吸収部材で吸収することが可能となる。これにより、バルブボディに対する荷重調整部材の相対回転や緩みを吸収できるので、スプリングの荷重を調整した後にスプリングの荷重の再調整を行う必要はない。
請求項4に記載の発明によれば、位置規制部材と荷重調整部材との間に位置ズレ吸収部材を設置している。
なお、位置ズレ吸収部材をコイルスプリング、ウェーブワッシャ、板スプリング等のばね部材で構成した場合には、一端が位置規制部材に係止(保持)され、また、他端が荷重調整部材に係止(保持)される。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、バルブスプールが、バルブボディの(収容)孔壁面に往復摺動可能に支持されている。
請求項6に記載の発明によれば、バルブスプールが、バルブボディの(収容)孔壁面と直接摺動する。
請求項7に記載の発明によれば、荷重調整部材に、スプリングの荷重を受け止める第1バネ座を設け、また、バルブスプールに、スプリングの荷重を受け止める第2バネ座を設けている。そして、荷重調整部材の第1バネ座とバルブスプールの第2バネ座との間にスプリングが設置されている。
【0016】
請求項8に記載の発明によれば、バルブボディの収容孔は、少なくとも軸線方向の一端面で開口し、この開口側から奥側まで軸線方向に(真っ直ぐに)延伸されている。
なお、バルブボディの収容孔は、軸線方向の両端面で開口し、一方の開口側から他方の開口側まで軸線方向に(真っ直ぐに)延伸されていても良い。
請求項9に記載の発明によれば、スプール制御弁の弁体であるバルブスプールをバルブボディの収容孔の軸線方向の開口側(バルブスプールのフルリフト側)へ向かって駆動するアクチュエータを備えている。
請求項10に記載の発明によれば、バルブスプールをバルブボディの収容孔の軸線方向の奥側(バルブスプールの初期位置側)へ向かって付勢するスプリングを備えている。
また、スプリングは、バルブスプールよりも収容孔の軸線方向の開口側に収容されている。
【0017】
請求項11に記載の発明によれば、バルブボディの収容孔の一部に、バルブスプールが直接摺動する摺動孔を設けている。
請求項12に記載の発明によれば、バルブボディの収容孔の一部に、荷重調整部材を固定する取付け孔(ネジ孔)を設けている。
また、荷重調整部材は、スプリングよりも収容孔の軸線方向の開口側に収容されている。
請求項13に記載の発明によれば、バルブボディの収容孔の一部に、位置規制部材を固定する取付け孔(圧入孔)を設けている。
また、位置規制部材は、荷重調整部材よりも収容孔の軸線方向の開口側に収容されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は複数の収容孔が一端面で開口したバルブボディを示した側面図で、(b)はバルブボディの収容孔に収容される電磁油圧制御弁を示した断面図である(実施例1)。
【図2】電磁油圧制御弁のセット荷重調整装置を示した断面図である(実施例1)。
【図3】(a)は複数の収容孔が端面で開口したバルブボディを示した側面図で、(b)はバルブボディの収容孔に収容される電磁油圧制御弁を示した断面図である(実施例2)。
【図4】電磁油圧制御弁のセット荷重調整装置を示した断面図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、バルブスプールにバルブボディの収容孔の軸線方向の荷重を与えるバルブスプリングの荷重の(再)調整が容易で、且つバルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の固定が確実にできるという目的を、バルブボディの収容孔に荷重調整部材を捩じ込んだ後に、バルブボディの収容孔に位置規制部材を圧入してバルブボディの収容孔に対する荷重調整部材の軸線方向の位置を規制することで実現した。
【実施例1】
【0020】
[実施例1の構成]
図1および図2は本発明の実施例1を示したもので、図1(a)は複数の収容孔が一端面で開口したバルブボディを示した図で、図1(b)はバルブボディの収容孔に収容される電磁油圧制御弁を示した図で、図2は電磁油圧制御弁のセット荷重調整装置を示した図である。
【0021】
本実施例の油圧制御装置は、自動車に搭載される自動変速機(AT)や無段変速機(CVT)等の油圧制御に使用されるものである。
油圧制御装置は、複数の油路L1〜L6等を有するバルブボディ1と、このバルブボディ1に形成された各収容孔2内に、バルブスプール3、リターンスプリング4、アジャストスクリュー5およびストッパ6が収容される複数の電磁油圧制御弁と、ドライバー等から要求された変速状態を実現するように複数の電磁油圧制御弁を制御する変速機制御ユニット(電子制御装置:TCU)とを備えている。
【0022】
TCUは、バルブボディ1の外表面上に搭載されて、複数のリニアソレノイドを通電制御して、複数の電磁油圧制御弁の各バルブスプール3を駆動することで、自動変速機の変速制御等を行う。
バルブボディ1は、トランスミッションケースの下部に取り付けられるオイルパン内に設置されている。
バルブボディ1は、例えばアルミニウム合金等の金属材料によって平板形状に形成されており、バルブスプール3を往復摺動自在に支持するスプール支持部材である。
【0023】
バルブボディ1は、複数の電磁油圧制御弁を保持するバルブ保持部材であって、複数の収容孔2、複数の油路L1〜L6、複数の第1〜第4連通路11〜14、複数のドレーンポート15および複数の第1、第2開口部16、17を備えている。
バルブボディ1には、作動油(オイル)が流出入する複数の油路として、油圧発生手段であるオイルポンプから油路(図示せず)や切替弁(図示せず)等を介して油圧が供給される油路(供給油路、インレット(IN)油路)L1と収容孔2とを連通する第1連通路(INポート)11と、バルブスプール3で調圧した出力圧が出力される油路(出力油路、アウトレット(OUT)油路)L2と収容孔2とを連通する第2連通路(OUTポート)12と、油路L2に連通する油路(フィードバック(FB)油路)L3と収容孔2とを連通する第3連通路(FBポート)13とが形成されている。
【0024】
バルブボディ1には、低圧側(オイルパンのオイル貯留部等)に接続する油路(排出(EX)油路)L4と収容孔2とを連通する第4連通路14と、低圧側(オイルパンのオイル貯留部等)と収容孔2とを連通するドレーンポート15とが形成されている。
第1〜第4連通路11〜14およびドレーンポート15は、収容孔2の内部と外部とを収容孔2の軸線方向に対して垂直な半径(放射)方向に連通している。
第1、第2連通路11、12は、互いに収容孔2の軸線方向に所定距離を隔てた位置で開口している。また、第1、第3連通路11、13は、互いに収容孔2の軸線方向に所定距離を隔てた位置で開口している。
【0025】
バルブボディ1は、軸線方向の一端面および他端面(両端面)で開口し、軸線方向の一端側の第1開口部(挿入口)16から他端側(奥側)の第2開口部17まで真っ直ぐに延びる収容孔2を有している。この収容孔2は、複数並列して設けられている。
複数の収容孔2の各第1開口部16は、バルブボディ1の内部と外部とを収容孔2の軸線方向に連通している。この第1開口部16は、低圧側(オイルパンのオイル貯留部等)と収容孔2とを連通するドレーンポート(EXポート)を兼ねている。
バルブボディ1のソレノイド側(第2開口部17側)の端面からは、円筒状の延長部(円筒部)18が軸線方向の他方側へ延伸されている。この円筒部18の端部には、リニアソレノイドに結合する円環状のフランジ19が一体的に形成されている。
【0026】
次に、本実施例の電磁油圧制御弁の詳細を図1および図2に基づいて説明する。
複数の電磁油圧制御弁のうちの少なくとも1つの電磁油圧制御弁は、内燃機関(エンジン)により駆動される油圧発生手段であるオイルポンプ(図示せず)によって発生した油圧(ライン圧)を調圧して自動変速機に組み込まれる摩擦係合要素(クラッチまたはブレーキ)へ送るソレノイドバルブである。
電磁油圧制御弁は、ライン油圧を収容孔2内に入力すると共に、収容孔2内に入力したライン油圧を調圧して出力する電磁スプール制御弁を構成している。
なお、バルブボディ1には、電磁油圧制御弁のバルブスプール3を、収容孔2の軸線方向の開口側(フルリフト側)へ向かって駆動する電磁アクチュエータ(リニアソレノイド)が搭載されている。
【0027】
ここで、リニアソレノイドは、バルブスプール3と一体移動可能に連結した非磁性体製のシャフト21と、バルブスプール3およびシャフト21と一体移動可能に連結した磁性体製のプランジャ22と、通電されると周囲に磁束を発生するコイル23と、このコイル23と外部回路(外部電源や外部制御回路:TCU)との接続を行うための外部接続用コネクタ24と、コイル23の内周側に磁路を形成するコイル内周側固定コア(ステータコア25、26、磁気抵抗部27、リング状の磁性部品28)と、コイル23の外周側に磁路を形成するコイル外周側固定コア(有底円筒状のヨーク29)とを備えている。
【0028】
プランジャ22は、コイル23が通電されると励磁(磁化)される磁性金属(例えば鉄等の強磁性材料)よりなる。
プランジャ22は、コイル23への通電に伴って形成される磁気回路の一部を構成する磁性移動体であって、ステータコア26内をその軸線方向に往復摺動可能な可動コア(ムービングコア)である。このプランジャ22は、バルブスプール3に伝わるリターンスプリング4の付勢力によってバルブスプール3、シャフト21と共に、ヨーク29の底面側へ付勢される。また、プランジャ22には、ステータコア26内での変位に伴うプランジャ前後空間のオイルの流動を確保するために、プランジャ両端面を連通する呼吸孔30が軸線方向に設けられている。
【0029】
コイル23は、電力の供給を受けると(電流印加または通電されると)、プランジャ22をステータコア25の磁気吸引部31側に引き寄せる磁力を発生する磁束発生手段(磁力発生手段)である。コイル23が通電されると、プランジャ22、ステータコア25、26、磁気抵抗部27およびヨーク29を磁束が集中して通る磁気回路が形成される。
コイル23は、磁力によってバルブスプール3、シャフト21およびプランジャ22を、バルブボディ1とバルブスプール3の軸線方向の一方側(前方側)へ駆動するものである。コイル23は、絶縁性を有する合成樹脂製のボビン32に、絶縁被膜を施した導線を複数回巻装したソレノイドコイルである。
【0030】
コイル23は、ボビン32に巻装されたコイル部、およびこのコイル部より引き出された一対のコイル端末リードを有している。
一対のコイル端末リードは、外部接続用コネクタ24のターミナル(外部接続端子)33を介して、外部回路(外部電源や外部制御回路:TCU)と接続されている。なお、コイル23の外周部、およびコイル23とターミナル33との導通接合部は、絶縁性を有するモールド樹脂材により被覆されて保護されている。
モールド樹脂材の外周部は、ターミナル33の先端を露出して収容する外部接続用コネクタ24のハウジングを形成している。
【0031】
コイル内周側固定コアおよびコイル外周側固定コアよりなる磁気固定子は、コイル23が通電されると励磁(磁化)される磁性金属(例えば鉄等の強磁性材料)よりなる磁性固定体である。
コイル内周側固定コアは、シャフト21およびプランジャ22をその軸線方向に摺動可能に嵌合支持するステータコア25、26と、ステータコア25、26間の磁束の流れを低減する磁気抵抗部27と、リング状の磁性部品28とを磁性材により一体的に設けた一体部品を有している。
なお、ステータコア25とステータコア26とが非磁性材を挟んで連結していても良い。
【0032】
磁気抵抗部27は、ステータコア25、26を連結する薄肉部によって構成されている。
磁性部品28は、コイル23のボビン32およびステータコア25、26に対して別体部品で構成されている。
ヨーク29は、開放された開口端側から奥側まで延びる凹部を磁性材により一体的に設けた一体部品である。
【0033】
ここで、本実施例の電磁油圧制御弁では、リニアソレノイドのコイル23への印加電圧値または供給電流値等の供給電力が増加する程、初期位置に対する、バルブスプール3、シャフト21およびプランジャ22のストローク量(リフト量、移動量)が大きくなるように構成されている。
また、電磁油圧制御弁では、バルブボディ1のフランジ19とステータコア25のフランジ34との外径を一致させ、フランジ19、34をヨーク29の開口端側の薄肉部35の内周面に収納した後に、薄肉部35を内側に折り曲げてフランジ19、34をかしめ固定している。
【0034】
以上のように構成されたリニアソレノイドでは、ターミナル33を介してコイル23が通電されると、ヨーク29、ステータコア25、プランジャ22、ステータコア26、ヨーク29の順にコイル23の周囲を周回するように磁束が流れる磁気回路が形成される。これにより、ステータコア25の磁気吸引部31とプランジャ22との間に磁気吸引力が作用してプランジャ22が吸引される。
ここで、プランジャ22の先端面には、ステータコア25の軸受け部の摺動孔を軸線方向に摺動可能なシャフト21が当接しているので、プランジャ22の吸引に伴ってシャフト21が軸線方向の前方側(図示左方向)に押し出される。この結果、電磁油圧制御弁のバルブスプール3がリニアソレノイドにより駆動される。
【0035】
次に、本実施例の電磁油圧制御弁のセット荷重調整装置の詳細を図1および図2に基づいて説明する。
電磁油圧制御弁は、リターンスプリング4のセット荷重(バネ荷重)をアジャストスクリュー5の捩じ込み位置に応じて調整するセット荷重調整装置(電磁スプール制御弁の荷重調整装置)を備えている。
電磁油圧制御弁のセット荷重調整装置は、バルブボディ1の収容孔2内に往復移動(摺動)可能に支持されるバルブスプール3と、このバルブスプール3に収容孔2の軸線方向の荷重(バネ荷重)を与えるリターンスプリング4と、このリターンスプリング4のバネ荷重を調整するアジャストスクリュー5と、このアジャストスクリュー5の軸方向位置を規制するストッパ6とを備えている。
【0036】
ここで、本実施例の電磁油圧制御弁は、バルブボディ1に形成された収容孔2内にバルブスプール3、リターンスプリング4、アジャストスクリュー5およびストッパ6を収容したスプール制御弁である。
ここで、収容孔2は、バルブスプール3を往復摺動可能に支持する複数の摺動孔41を有している。また、複数の摺動孔41よりも第1開口部16側の収容孔2には、リターンスプリング4を伸縮自在に収容する断面円形状のスプリング収容室42が設けられている。
また、スプリング収容室42よりも第1開口部16側の収容孔2には、アジャストスクリュー5を固定する断面円形状の取付け孔(雌ネジ孔)が設けられている。バルブボディ1の雌ネジ孔の孔壁面には、アジャストスクリュー5が捩じ込まれる雌ネジ43が形成されている。
【0037】
また、雌ネジ孔よりも第1開口部16側の収容孔2には、ストッパ6を固定する断面円形状の取付け孔(圧入孔)44が設けられている。
なお、収容孔2は、取付け孔(圧入孔)44、取付け孔(雌ネジ孔)、複数の摺動孔41の順に開口径(孔径)が小さくなっている。また、第1開口部16と取付け孔(圧入孔)44との開口径(孔径)を異ならせても良い。例えば第1開口部16から取付け孔44の終端(雌ネジ43の直前)まで開口径(孔径)を徐々に小さくしても良い。あるいは段階的に小さくしても良い。
【0038】
バルブボディ1に形成される油路L1は、電磁油圧制御弁の外部から内部(収容孔2の連通室(円筒状の連通部)45)へ向かってオイルを流入させる第1連通路11、およびこの第1連通路11と収容孔2側で連通すると共に、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面で開口した円環状の第1凹溝(入力溝)46を有している。この第1凹溝46は、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面に円周方向に延長されている。また、第1凹溝46は、バルブボディ1の孔壁面から半径方向の外側へ凹んでいる。
バルブボディ1に形成される油路L2は、電磁油圧制御弁の内部(収容孔2の連通室45)から外部へ向かってオイルを流出させる第2連通路12を有している。
【0039】
バルブボディ1に形成される油路L3は、油路L2から内部(収容孔2の連通室45)へ向かってオイルを流入させる第3連通路13、およびこの第3連通路13と収容孔2側で連通すると共に、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面で開口した円環状の第3凹溝47を有している。この第3凹溝47は、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面に円周方向に延長されている。また、第3凹溝47は、バルブボディ1の孔壁面から半径方向の外側へ凹んでいる。
バルブボディ1に形成される油路L4は、電磁油圧制御弁の内部(収容孔2の連通室45)から外部(オイルパンのオイル貯留部)へ向かってオイルを流出させる第4連通路14、およびこの第4連通路14と収容孔2側で連通すると共に、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面で開口した円環状の第4凹溝48を有している。この第4凹溝48は、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面に円周方向に延長されている。また、第4凹溝48は、バルブボディ1の孔壁面から半径方向の外側へ凹んでいる。
【0040】
バルブスプール3は、電磁油圧制御弁の弁体を構成するもので、バルブボディ1の収容孔2内に往復移動可能に嵌挿されている。このバルブスプール3は、バルブボディ1の第1開口部16から挿入されて、収容孔2内に収容されている。また、バルブスプール3は、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面に往復摺動可能に支持されている。また、バルブスプール3は、複数の油路L1〜L4間の連通状態を制御する複数のランド51〜53を有している。
複数のランド51〜53の外周面は、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面と直接摺動する摺動部(摺動面)となっている。なお、複数のランド51〜53の摺動面とバルブボディ1の収容孔2の孔壁面との間には、バルブスプール3の往復摺動を可能とするための摺動クリアランスが形成されている。
【0041】
バルブスプール3のランド51は、このランド51よりも小径のスプール軸部との間に、バルブスプール3の軸線方向に対して垂直な段差を有している。
また、ランド51の端縁には、段差の垂直面、つまり連通室45側(スプール軸部側)の端面からランド51の外周面まで切り欠くことで形成される複数(2つ)のノッチ54が形成されている。
複数のノッチ54は、ランド51の円周方向に所定の間隔(例えば180°の角度間隔)で形成されている。また、複数のノッチ54は、バルブボディ1の第1凹溝46を伴って油路L1から連通室45へ流入するオイルの流量を制御するものである。これにより、バルブスプール3のストローク変化(移動量)に対して油路L1の第1連通路11の開口面積が緩やかに変化する特性(ストローク−開口面積特性)を備えたスプール制御弁を構成できる。
また、バルブスプール3のランド51は、バルブボディ1に対する移動量に応じて油路L1の開口面積を変更する機能を有している。
【0042】
本実施例の電磁油圧制御弁は、ノーマリオープンタイプの電磁弁であるため、バルブスプール3の初期位置(リフト量、移動量がゼロ)において、複数のノッチ54を介して、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面とバルブスプール3のスプール軸部の外周との間に形成される連通室45と油路L1とが連通している。
また、バルブボディ1の収容孔2の孔壁面とスプール軸部の外周との間に形成される連通室45は、油路L2に連通している。
【0043】
電磁油圧制御弁は、リニアソレノイドの作動によってバルブスプール3をその軸線方向に変位(移動)させることで、油路L1と油路L2の連通面積と、油路L2と油路L4の連通面積とが変化する。これにより、油路L2に発生する油圧が調圧される。
本実施例では、バルブスプール3が図示左側(第1開口部16側)へ移動するに従って、油路L1の開口面積が徐々に小さくなる。
ここで、アジャストスクリュー5およびバルブスプール3には、リターンスプリング4のバネ荷重を受け止めるスプリング座部(第1バネ座)55およびスプリング座部(第2バネ座)56が設けられている。
【0044】
リターンスプリング4は、バルブスプール3を収容孔2の軸線方向の奥側(他端側、初期位置側、ソレノイド側)へ向かって付勢する付勢力(バネ荷重、スプリング力)を発生するバルブスプリングを構成している。このリターンスプリング4は、バルブスプール3よりも収容孔2の軸線方向の第1開口部16側の収容孔2内に伸縮自在に収容されている。
また、リターンスプリング4は、アジャストスクリュー5のスプリング座部55とバルブスプール3のスプリング座部56との間に渦巻き状に巻装されたコイルを有している。 リターンスプリング4のコイルの軸線方向の一端側(第1開口部16側)には、アジャストスクリュー5のスプリング座部55に接触する円環状の第1コイル端部が設けられている。
リターンスプリング4のコイルの軸線方向の他端側(第2開口部17側、スプール側)には、バルブスプール3のスプリング座部56に接触する円環状の第2コイル端部が設けられている。
【0045】
アジャストスクリュー5は、例えばアルミニウム合金等の金属材料によって円筒形状に形成されており、リターンスプリング4よりも収容孔2の軸線方向の第1開口部16側の収容孔2内に収容されている。このアジャストスクリュー5は、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に捩じ込むことによりバルブボディ1の取付け孔の孔壁面に固定されている。また、アジャストスクリュー5は、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対する捩じ込み量(螺合量)に応じて、リターンスプリング4のバネ荷重を調整する荷重調整部材である。
アジャストスクリュー5は、リターンスプリング4のバネ荷重を受け止める凹状のスプリング座部(凹部)55を有している。
【0046】
アジャストスクリュー5は、第1〜第3円筒部61〜63を有している。
第1円筒部61は、アジャストスクリュー5の最大外径部であり、スプリング座部55および第2円筒部62の周囲を円周方向に取り囲むように設けられている。この第1円筒部61の外周面には、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43と螺合する雄ネジ64が形成されている。
第2円筒部62の軸線方向の一端面(環状端面)には、ストッパ6が当接する円環状の当接面65が設けられている。また、第2円筒部62の内部には、アジャストスクリュー5を捩じ回す工具が係合する係合部(十字溝または六角溝)66が設けられている。その係合部66に工具を嵌合してアジャストスクリュー5の捩じ込み量を調整することで、バルブスプール3に与えられるリターンスプリング4のバネ荷重が調整される。
第3円筒部63には、バルブスプール3との間に所定の軸方向距離を隔てて対向する対向面67が設けられている。この第3円筒部63は、スプリング座部55よりも半径方向の内側に設けられている。
なお、アジャストスクリュー5には、バルブボディ1の収容孔2内でのバルブスプール3の変位に伴うスクリュー前後空間のオイルの流動を確保するために、アジャストスクリュー両端面を連通する呼吸孔68が軸線方向に設けられている。
【0047】
ストッパ6は、例えばアルミニウム合金等の金属材料によって所定の形状に形成されており、アジャストスクリュー5よりも収容孔2の軸線方向の第1開口部16側の収容孔2内に収容されている。このストッパ6は、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対するアジャストスクリュー5の軸線方向の位置を規制する位置規制部材である。
また、ストッパ6は、アジャストスクリュー5の第2円筒部62を係止する円筒部71、およびこの円筒部71の軸線方向の一端に設けられる円環状のフランジ(円環部)72を有している。
円筒部71の軸線方向の他端面には、第2円筒部62の当接面65に当接する当接面73が設けられている。
【0048】
フランジ72の外周部には、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44に圧入嵌合する圧入部74が円周方向全体(全周)に設けられている。この圧入部74は、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44の内径よりも僅かに大きい外径を有している。これにより、ストッパ6は、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44にフランジ72の圧入部74が圧入されることによって、バルブボディ1の取付け孔44の孔壁面に固定される。
なお、ストッパ6には、バルブボディ1の収容孔2内でのバルブスプール3の変位に伴うストッパ前後空間のオイルの流動を確保するために、ストッパ両端面を連通する呼吸孔75が軸線方向に設けられている。
【0049】
ここで、本実施例の電磁油圧制御弁の組付手順として、バルブボディ1の円筒部18のフランジ19にリニアソレノイドをかしめ固定することで、バルブボディ1の収容孔2の第2開口部17側を閉塞する。
そして、バルブボディ1の収容孔2の第1開口部16側(開口側)から収容孔2の奥側(シャフト21側)へ向かってバルブスプール3およびリターンスプリング4を順番に挿入する。
そして、バルブボディ1の収容孔2の開口側から収容孔2の取付け孔(雌ネジ孔)にアジャストスクリュー5を挿入して、リターンスプリング4をアジャストスクリュー5で圧縮しながら、リターンスプリング4のバネ荷重が適正な値(目標値)になる位置まで、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔(雌ネジ孔)にアジャストスクリュー5を回しながら捩じ込む。
そして、リターンスプリング4のバネ荷重の調整作業を行った後に、バルブボディ1の収容孔2の開口側から収容孔2の取付け孔44にストッパ6を挿入し、ストッパ6がアジャストスクリュー5と接触する位置まで、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44にストッパ6を圧入する。
これにより、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対してアジャストスクリュー5の回り止め(固定)が成される。
【0050】
[実施例1の作用]
次に、自動変速機(AT)や無段変速機(CVT)等の油圧制御に使用される電磁油圧制御弁の作動を図1および図2に基づいて簡単に説明する。
【0051】
コイル23へ電力が供給されていない場合、リターンスプリング4の付勢力によって、バルブスプール3、シャフト21およびプランジャ23が、ソレノイド側の初期位置で停止している(図1の状態)。
つまりバルブスプール3がバルブボディ1の収容孔2内において図1の最も図示右側の位置(初期位置)にある場合、第1凹溝46およびノッチ54を介して、バルブスプール3のスプール軸部の周囲を円周方向に取り囲むように設けられる連通室45と油路L1の第1連通路11とが連通し、油路L1が開放(全開)されている。
これにより、連通室45を介して、油路L1の第1連通路11および第1凹溝46と油路L2の第2連通路12とが連通する。
【0052】
したがって、オイルポンプからバルブボディ1の油路L1を経て第1連通路11に流入しているオイルは、第1凹溝46およびノッチ54を介して、電磁油圧制御弁の内部(連通室45)へ流入する。さらに、電磁油圧制御弁の内部(連通室45)から第2連通路12を経て油路L2へオイルが出力されて、クラッチ(またはブレーキ)に作用する油圧が最も大きい状態となる。
このように、本実施例の電磁油圧制御弁は、コイル23への電力の供給が成されていない時に、油路L1と油路L2とが連通するため、ノーマリオープンタイプのソレノイドバルブとして機能する。
【0053】
一方、コイル23へ電力が供給(電流印加)されると、コイル23を流れる電流の大きさに対応した磁気吸引力でステータコア25の磁気吸引部31にプランジャ22が吸引される。これに伴って、先端にバルブスプール3が連結されたシャフト21が軸線方向の前方側へ押し出されることにより、バルブスプール3がバルブボディ1の収容孔2の第1開口部16側へ移動する。
【0054】
ここで、バルブスプール3が初期位置から収容孔2の軸線方向の第1開口部16側へ向かって、所定のストローク量分だけ移動した場合、バルブボディ1の収容孔2の摺動孔41にノッチ54の一部が重なり、ノッチ54が部分的に塞がれる。
このとき、バルブスプール3は、プランジャ22の推力(磁気吸引力)とリターンスプリング4のバネ荷重と油路L2から油路L3へ入力されるオイルの圧力(フィードバック油圧)によりバルブスプール3に作用するフィードバック力(軸力)とが釣り合う位置で停止し、バルブスプール3が第1開口部16側に移動する程、油路L1の第1連通路11および第1凹溝46の開口面積を縮小する。
【0055】
したがって、オイルポンプから油路L1を経て第1連通路11に流入しているオイルは、第1凹溝46、ノッチ54を介してバルブボディ1の収容孔2の内部(連通室45)へ流入する。さらに、連通室45から第2連通路12を介して油路L2へオイルが出力されて、クラッチ(またはブレーキ)に作用する油圧が下降する。
さらに、バルブスプール3のストローク量がより大きくなると、バルブスプール3のストローク量の増加に伴って油路L1の第1連通路11および第1凹溝46の開口面積が小さくなる。これに伴って、第2連通路12から油路L2へオイルが出力されて、クラッチ(またはブレーキ)に作用する油圧が小さくなる。つまりバルブスプール3のランド51と油路L1との一部が重なるオーバラップ量に応じてクラッチ(またはブレーキ)に出力される油圧(出力圧)が調圧される。
【0056】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例の電磁油圧制御弁のセット荷重調整装置においては、バルブボディ1に形成された収容孔2に、クラッチ(またはブレーキ)に出力される出力圧を調圧するバルブスプール3、およびこのバルブスプール3に収容孔2の軸線方向の第2開口部17側(奥側)の荷重を与えるリターンスプリング4を収容し、バルブボディ1の収容孔2の摺動孔41の孔壁面にバルブスプール3のランド51〜53が直接摺動するように構成されている。
また、電磁油圧制御弁の出力圧の調整、つまりリターンスプリング4のバネ荷重の調整は、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対するアジャストスクリュー5の第1円筒部61の捩じ込み位置を調整することで成される。
【0057】
そして、電磁油圧制御弁の出力圧の調整、つまりリターンスプリング4のバネ荷重の調整が終了した後に、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44にストッパ6を圧入固定することにより、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対するアジャストスクリュー5の軸方向位置が規制される。つまりアジャストスクリュー5がバルブボディ1の収容孔2の取付け孔(雌ネジ孔)に位置決め固定される。
したがって、バルブボディ1の収容孔2に調整ネジ等の荷重調整部材を圧入していないので、出力圧が目標値(目標圧)を外れた場合であっても、ストッパ6のフランジ72の圧入部74を圧入する前に、電磁油圧制御弁の出力圧の(再)調整、つまりリターンスプリング4のバネ荷重の(再)調整が容易となる。
【0058】
また、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43にアジャストスクリュー5の第1円筒部61の雄ネジ64を捩じ込んだ後に、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44に圧入されるストッパ6によってバルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対するアジャストスクリュー5の軸方向位置を規制できる。これにより、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対するアジャストスクリュー5の固定を確実に実施することができる。すなわち、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対するアジャストスクリュー5の回り止め(緩み止めを含む)を行うことができる。
【実施例2】
【0059】
図3および図4は本発明の実施例2を示したもので、図3(a)は複数の収容孔が端面で開口したバルブボディを示した図で、図3(b)はバルブボディの収容孔に収容される電磁油圧制御弁を示した図で、図4は電磁油圧制御弁のセット荷重調整装置を示した図である。
【0060】
本実施例の電磁油圧制御弁のセット荷重調整装置は、バルブボディ1の収容孔2内に往復摺動可能に支持されるバルブスプール3と、このバルブスプール3に収容孔2の軸線方向の第2開口部17側(初期位置側)へ向かって付勢するリターンスプリング4と、このリターンスプリング4のバネ荷重を調整するアジャストスクリュー5と、このアジャストスクリュー5の軸方向位置を規制するストッパ6と、バルブボディ1の収容孔2に対するアジャストスクリュー5の軸線方向の位置ズレを吸収する位置ズレ吸収部材であるアブソーバースプリング7と、バルブスプール3を収容孔2の軸線方向の第1開口部16側(フルリフト側)へ向かって駆動するリニアソレノイドとを備えている。
【0061】
ここで、バルブボディ1の収容孔2は、バルブスプール3を往復摺動可能に支持する複数の摺動孔41、リターンスプリング4を伸縮自在に収容する断面円形状のスプリング収容室42、およびアジャストスクリュー5を固定する断面円形状の取付け孔(雌ネジ孔)を有している。このバルブボディ1の雌ネジ孔の孔壁面には、アジャストスクリュー5の第1円筒部61の雄ネジ64と螺合する雌ネジ43が形成されている。
そして、雌ネジ孔よりも第1開口部16側の収容孔2には、アブソーバースプリング7を伸縮自在に収容する断面円形状のスプリング収容室49が設けられている。また、スプリング収容室49よりも第1開口部16側の収容孔2には、ストッパ6を固定する断面円形状の取付け孔(圧入孔)50が設けられている。
ここで、ストッパ6およびアジャストスクリュー5には、アブソーバースプリング7のバネ荷重を受け止めるスプリング座部(第1バネ座)81およびスプリング座部(第2バネ座)82が設けられている。
【0062】
ストッパ6は、例えばアルミニウム合金等の金属材料によって円環板形状に形成されており、アジャストスクリュー5よりも収容孔2の軸線方向の第1開口部16側の収容孔2内に収容されている。このストッパ6は、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対するアジャストスクリュー5の軸線方向の位置を規制する位置規制部材である。
また、ストッパ6は、アジャストスクリュー5との間に所定の軸方向距離を隔てて配設れる円環部83を有している。
この円環部83には、アジャストスクリュー5との間に所定の軸方向距離を隔てて対向する対向面が設けられている。スプリング座部81は、円環部83の対向面に設けられている。
【0063】
円環部83の外周部には、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44に圧入嵌合する圧入部84が円周方向全体(全周)に設けられている。この圧入部84は、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44の内径よりも僅かに大きい外径を有している。これにより、ストッパ6は、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44に円環部83の圧入部84が圧入されることによって、バルブボディ1の取付け孔44の孔壁面に固定される。
ストッパ6には、バルブボディ1の収容孔2内でのバルブスプール3の変位に伴うストッパ前後空間のオイルの流動を確保するために、ストッパ両端面を連通する呼吸孔85が軸線方向に設けられている。
【0064】
アブソーバースプリング7は、アジャストスクリュー5を収容孔2の軸線方向の奥側(他端側、初期位置側、ソレノイド側)へ向かって付勢する付勢力(バネ荷重、スプリング力)を発生するスクリュースプリングを構成している。このアブソーバースプリング7は、アジャストスクリュー5よりも収容孔2の軸線方向の第1開口部16側の収容孔2内に伸縮自在に収容されている。
また、アブソーバースプリング7は、ストッパ6のスプリング座部81とアジャストスクリュー5のスプリング座部82との間に渦巻き状に巻装されたコイルを有している。
アブソーバースプリング7の軸線方向の一端側(第1開口部16側)には、ストッパ6のスプリング座部81に接触する円環状の第1コイル端部が設けられている。
アブソーバースプリング7の軸線方向の他端側(第2開口部17側、スプール側)には、アジャストスクリュー5のスプリング座部82に接触する円環状の第2コイル端部が設けられている。
【0065】
ここで、実施例1の電磁油圧制御弁においては、ストッパ6の圧入時に圧入荷重や圧入代を管理する必要がある。特に、過大な荷重を掛けてストッパ6を圧入し過ぎると、アジャストスクリュー5の雄ネジ64と螺合するバルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43を破損させる可能性がある。
そこで、アジャストスクリュー5とストッパ6との間に、バルブボディ1の収容孔2に対するアジャストスクリュー5の軸線方向の位置ズレを吸収するアブソーバースプリング7を設けることにより、バルブボディ1の収容孔2の取付け孔44に対するストッパ6の圧入荷重を一定寸法で管理することができるため、ストッパ6の圧入作業が容易になる。 また、アジャストスクリュー5の位置ズレは、アブソーバースプリング7の弾性変形で吸収することができる。すなわち、バルブボディ1の収容孔2の雌ネジ43に対するアジャストスクリュー5の回り止め(緩み止めを含む)を確実に行うことができる。
【0066】
[変形例]
本実施例では、本発明のスプール制御弁を、自動車の自動変速機の油圧制御を行う油圧制御装置に組み込まれる電磁油圧制御弁に適用しているが、本発明のスプール制御弁を、流体圧制御弁、流体流量制御弁、流路切替制御弁に適用しても良い。
また、スプール制御弁として、自動変速機で使用する作動油(ATF、オイル)だけでなく、内燃機関(エンジン)に供給する燃料、内燃機関(エンジン)や自動変速機の摺動部に供給する潤滑油、内燃機関(エンジン)等の高温部に循環供給される冷却水等の流量、圧力を制御する流体圧制御弁に適用しても良い。
【0067】
本実施例では、本発明のスプール制御弁のバルブスプール3を第1開口部16側へ向かって駆動するアクチュエータを、電磁アクチュエータであるリニアソレノイドによって構成しているが、本発明のスプール制御弁のバルブスプールを開口側へ向かって駆動するアクチュエータを、電動モータを駆動源とする電動アクチュエータ、電磁式または電動式負圧制御弁を備えた負圧作動式アクチュエータによって構成しても良い。
また、本発明のスプール制御弁を、ノーマリオープンタイプからノーマリクローズタイプに変更しても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 バルブボディ
2 バルブボディの収容孔
3 バルブスプール
4 リターンスプリング
5 アジャストスクリュー(荷重調整部材)
6 ストッパ(位置規制部材)
7 アブソーバースプリング(位置ズレ吸収部材)
16 収容孔の第1開口部
17 収容孔の第2開口部
41 バルブボディの摺動孔
42 バルブボディのスプリング収容室
43 バルブボディの取付け孔(雌ネジ孔)の雌ネジ
44 バルブボディの取付け孔(圧入孔)
45 連通室
55 アジャストスクリューのスプリング座部(第1バネ座)
56 バルブスプールのスプリング座部(第2バネ座)
61 第1円筒部
62 第2円筒部
63 第3円筒部
64 アジャストスクリューの雄ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バルブボディに形成された収容孔に収容されて、流体圧を調圧するバルブスプールと、
(b)前記収容孔に収容されて、前記バルブスプールに前記収容孔の軸線方向の荷重を与えるスプリングと、
(c)前記収容孔に捩じ込むことにより前記バルブボディの孔壁面に固定されて、前記収容孔に対する捩じ込み量に応じて前記スプリングの荷重を調整する荷重調整部材と、
(d)前記収容孔に圧入することにより前記バルブボディの孔壁面に固定されて、前記収容孔に対する前記荷重調整部材の軸線方向の位置を規制する位置規制部材と
を備えたスプール制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載のスプール制御弁において、
前記バルブボディの孔壁面には、雌ネジが形成されており、
前記荷重調整部材の外周面には、前記雌ネジと螺合する雄ネジが形成されていることを特徴とするスプール制御弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスプール制御弁において、
前記収容孔に対する前記荷重調整部材の軸線方向の位置ズレを吸収する位置ズレ吸収部材を備えたことを特徴とするスプール制御弁。
【請求項4】
請求項3に記載のスプール制御弁において、
前記位置ズレ吸収部材は、前記位置規制部材と前記荷重調整部材との間に設置されていることを特徴とするスプール制御弁。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載のスプール制御弁において、
前記バルブスプールは、前記バルブボディの孔壁面に摺動可能に支持されていることを特徴とするスプール制御弁。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のスプール制御弁において、
前記バルブスプールは、前記バルブボディの孔壁面と直接摺動することを特徴とするスプール制御弁。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載のスプール制御弁において、
前記荷重調整部材は、前記スプリングの荷重を受け止める第1バネ座を有し、
前記バルブスプールは、前記スプリングの荷重を受け止める第2バネ座を有し、
前記スプリングは、前記第1バネ座と前記第2バネ座との間に設置されていることを特徴とするスプール制御弁。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載のスプール制御弁において、
前記収容孔は、少なくとも軸線方向の一端面で開口し、この開口側から奥側まで軸線方向に延びていることを特徴とするスプール制御弁。
【請求項9】
請求項8に記載のスプール制御弁において、
前記バルブスプールを前記収容孔の軸線方向の開口側へ向かって駆動するアクチュエータを備えたことを特徴とするスプール制御弁。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のスプール制御弁において、
前記スプリングは、前記バルブスプールを前記収容孔の軸線方向の奥側へ向かって付勢することを特徴とするスプール制御弁。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載のスプール制御弁において、
前記収容孔は、前記バルブスプールが直接摺動する摺動孔を有していることを特徴とするスプール制御弁。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のうちのいずれか1つに記載のスプール制御弁において、
前記収容孔は、前記荷重調整部材を固定する取付け孔を有していることを特徴とするスプール制御弁。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のうちのいずれか1つに記載のスプール制御弁において、
前記収容孔は、前記位置規制部材を固定する取付け孔を有していることを特徴とするスプール制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−87807(P2013−87807A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226563(P2011−226563)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】