説明

スプール弁

【課題】 スプールの軸方向変位に対するダンピング効果を高めることができ、衝撃等の発生を抑えることができるようにする。
【解決手段】 スプール7の軸方向変位に対してダンピング作用を与える抵抗発生手段としての可変絞り機構15を設ける。この可変絞り機構15は、スプール7のピストン摺動穴7Aとばね室13との間でスプール7に穿設された径方向の油路16と、カバー6側に固定して設けられスプール7の軸方向変位に従って油路16の流路面積を変化させるピストン17とにより構成している。そして、ピストン17のプランジャ部17Bは、スプール7が軸方向の途中位置にあるときに比べて、スプール7が軸方向一側の端部に位置したときに、プランジャ部17Bの端面17C側で油路16の開口面積(流路面積)を小さく絞る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に用いられ、油圧回路内の圧力変化等に従って軸方向に変位するスプールに対し衝撃吸収用のダンピング作用を与えるようにしたスプール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械に用いる油圧回路には、例えば圧力制御弁、流量制御弁、方向制御弁等として知られるスプール弁が設けられている。そして、この種の従来技術によるスプール弁としては、弁ハウジング内に形成したスプール孔にスプールを挿入すると共に、このスプールの端部側には圧力室としての油室を設ける構成としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、従来技術では、スプールの端部の外周には、軸方向で互いに異なる位置に軸方向に延びる複数の絞り溝を形成すると共に、これら複数の絞り溝の間を、スプールの外周に沿って周方向に延びる環状溝を介して互いに連通させる構成としている。このとき、複数の絞り溝は、前記油室と流出ポートとの間に直列に設けられ、流通する油液に対して絞り抵抗を発生させることにより、前記スプールの動きに対するダンピング効果を発揮するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−153237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術によるスプール弁は、スプールの端部外周に設けた複数の絞り溝により油液に絞り作用を与え、ダンピング効果を発揮することができるものである。しかし、このときのダンピング効果は、スプールの軸方向変位に拘わらずほぼ一定に保たれるもので、ストロークエンドから離れているときも、近づいたときもダンピング効果が変わらない。また、スプールがストロークエンドに近づくに従ってダンピング効果が低下する場合もある。
【0006】
このため、スプールの移動途中での応答性を重視する場合、十分なダンピング効果が得られず、スプールが軸方向の一方側の端部(ストロークエンド)に達するときに、スプールの変位速度が速すぎることがあり、場合によっては、スプールが弁ハウジングに衝突して衝撃が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、スプールの軸方向変位に対するダンピング効果を高めることができ、衝撃等の発生を抑えることができるようにしたスプール弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、軸方向に延びるスプール孔を有し該スプール孔の軸方向に離間して複数の通路が設けられた弁ハウジングと、前記弁ハウジングのスプール孔内に軸方向に変位可能に挿嵌され前記複数の通路を互いに連通,遮断するスプールと、前記スプール孔の軸方向の一方側に位置して前記弁ハウジングに設けられ内部が油液で満たされる油室と、前記スプールの軸方向変位に従って前記油室の内,外に油液を流入,流出させ、流通する油液に絞り抵抗を発生させる抵抗発生手段とを備えたスプール弁に適用される。
【0009】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記抵抗発生手段は、前記スプールが軸方向の途中位置にあるときに比べて、前記スプールが軸方向一方側の端部に位置したときには油液の流路面積が小さくなる可変絞り機構により構成したことにある。
【0010】
また、請求項2の発明によると、前記可変絞り機構は、前記スプールに設けられ前記油室との間で前記スプール内に油液が流入,流出する油路と、前記弁ハウジング側に設けられ前記スプールの軸方向変位に従って前記油路の流路面積を変化させる流路可変部材とにより構成している。
【0011】
一方、請求項3の発明によると、前記可変絞り機構は、前記スプールに設けられ前記油室との間で前記スプール内に油液が流入,流出する複数の細孔と、前記弁ハウジング側に設けられ前記スプールの軸方向変位に従って前記各細孔のいずれかを開,閉して前記流路面積を変化させる流路可変部材とにより構成している。
【0012】
また、請求項4の発明によると、前記可変絞り機構は、前記スプールに設けられ前記油室との間で前記スプール内に油液が流入,流出する複数の細孔と、前記弁ハウジング側に設けられ前記スプールが軸方向の途中位置にあるときに前記各細孔を全て開き、前記スプールが軸方向の一方側の端部まで変位したときには前記各細孔の一部を少なくとも部分的に閉じて前記流路面積を変化させる流路可変部材とにより構成している。
【0013】
また、請求項5の発明によると、前記可変絞り機構は、前記スプールに設けられ前記油室との間で前記スプール内に油液が流入,流出する複数の細孔と、前記弁ハウジング側に設けられ前記スプールが軸方向の途中位置にあるときに前記各細孔を全て開き、前記スプールが軸方向の一方側の端部まで変位したときには前記各細孔の少なくともいずれか一つを閉じて前記流路面積を変化させる流路可変部材とにより構成している。
【0014】
さらに、請求項6の発明によると、前記スプールは、軸方向の一方側がピストン摺動穴となって開口し他方側で前記通路の少なくともいずれかに連通する筒状弁体として構成し、前記流路可変部材は、一方側が前記弁ハウジングに一体または別体に設けられ他方側が前記ピストン摺動穴内に挿嵌されたピストンにより構成している。
【発明の効果】
【0015】
上述の如く、請求項1に記載の発明は、スプールがスプール孔内で軸方向の途中に位置したときに比べて、スプールが軸方向一方側の端部に位置したときには油液の流路面積が小さくなる可変絞り機構を設ける構成としている。これにより可変絞り機構は、スプールが軸方向の途中位置から一方側の端部に向けて摺動変位するときに、油液の流路面積を小さくして絞り抵抗が漸次大きくなるようにダンピング効果を高め、スプールの変位速度を遅くすることができる。この結果、スプールが弁ハウジングの端面に衝突するのを、その手前で減速して緩衝することができ、衝撃が発生するのを良好に抑えることができる。
【0016】
また、請求項2の発明は、可変絞り機構を、スプール側に設けた油路と弁ハウジング側に設けた流路可変部材とにより構成している。これにより、前記流路可変部材はスプールの軸方向変位に従って前記油路の流路面積を変化させることができ、流路面積に応じた絞り抵抗を発生することにより、ダンピング効果を発揮することができる。
【0017】
一方、請求項3の発明によると、可変絞り機構の流路可変部材は、スプールの軸方向変位に従って複数の細孔のいずれかを開,閉して流路面積を変化させることができ、この場合も流路面積に応じた絞り抵抗を発生することにより、ダンピング効果を発揮することができる。また、複数の細孔の開口面積を加算した開口総面積を、スプールの軸方向変位に従って漸次減少するように変化させることができ、油液の絞り抵抗によるダンピング効果の特性を各細孔の配置、個数等に応じて適宜に変えることができる。
【0018】
また、請求項4の発明によると、可変絞り機構の流路可変部材は、スプールが軸方向の途中に位置するときに複数の細孔を全て開き、スプールが軸方向一方側の端部に位置するときには前記各細孔の一部を少なくとも部分的に閉じるので、この場合もスプールの軸方向変位に従って油液の流路面積を変化させることができ、流路面積に応じた絞り抵抗を発生することにより、スプールが軸方向一方側の端部に接近するにつれてダンピング効果を高めることができると共に、ダンピング効果の特性を様々に変化させることができる。
【0019】
また、請求項5の発明によると、可変絞り機構の流路可変部材は、スプールが軸方向の途中位置にあるときに複数の細孔を全て開き、前記スプールが軸方向の一方側の端部まで変位したときには前記各細孔の少なくともいずれか一つを閉じることにより、油液の流路面積を変化させることができ、ダンピング効果の特性を様々に変化させることができる。
【0020】
さらに、請求項6の発明によると、筒状弁体からなるスプールが弁ハウジング内で軸方向一方側の端部に近づくように変位するときには、弁ハウジング側に設けたピストンがスプールのピストン摺動穴内に進入するように相対変位し、例えば細孔の一部をピストンによって閉じることができ、ダンピング効果を高めることができる。従って、ピストンを用いて可変絞り機構を構成するから、可変絞り機構をスプール内部に設けることができ、スプール弁全体を小型化し、コンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態によるスプール弁を、シーケンス弁として用いる場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0022】
ここで、図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1はスプール弁の本体部分(外殻)を構成する弁ハウジングで、該弁ハウジング1は、図1に示すようにブロック体として形成されたハウジング本体2と、後述のカバー6とにより構成されている。
【0023】
3はハウジング本体2に設けられたスプール孔で、該スプール孔3は、図1中に示すように、ハウジング本体2内を左、右方向(軸方向)に延びる円形穴として形成され、その一側(一方側)は後述のカバー6内と連通するようにハウジング本体2の一側の端面2Aに開口している。また、スプール孔3の軸方向他側(他方側)には、後述の油圧パイロット部10が設けられている。
【0024】
4,5はハウジング本体2に設けられた複数の通路(以下、油通路4,5という)で、該油通路4,5は、スプール孔3の軸方向に互いに離間して配置され、スプール孔3の周囲に形成された環状の油溝4A,5Aを介してスプール孔3内と連通するものである。そして、油通路4,5は、後述のスプール7により油溝4A,5Aを介して互いに連通,遮断される。
【0025】
ここで、油通路4,5のうち一方の油通路4は、例えば油圧ポンプ(図示せず)の吐出側等に連通して形成され、所謂高圧側の油通路4として構成される。また、他方の油通路5は、タンク(図示せず)等に常に連通される低圧側の油通路5として構成されるものである。
【0026】
6はハウジング本体2と共に弁ハウジング1を構成するカバーで、該カバー6は、図1〜図3に示す如く一側が蓋部6Aとなって閉塞された有蓋な筒状体として形成されている。ここで、カバー6は、ハウジング本体2の端面2Aにボルト等の締結手段(図示せず)を用いて着脱可能に固定されている。そして、カバー6は、後述するスプール7の軸方向一側部分を外側から覆い、その内側には後述のばね室13が形成される。
【0027】
7は弁ハウジング1のスプール孔3内に摺動可能に設けられたスプールで、該スプール7は、図1に示すように、軸方向の一側(一方側)がピストン摺動穴7Aとなって開口し、内部がドレン通路7Bとなって軸方向の他側端部7Cが閉塞された筒状弁体として形成されている。また、スプール7の外周側には、カバー6の開口端側に位置してばね受用の環状凸部7Dが設けられ、該環状凸部7Dには、後述の圧力設定ばね14が弾性変形状態で当接している。
【0028】
また、スプール7には、ピストン摺動穴7Aと他側端部7Cとの間となる位置にそれぞれ複数個の油穴8,9が径方向に穿設され、該各油穴8,9は、スプール7内のドレン通路7Bと常時連通している。そして、油穴8,9のうち一方の油穴8は、図1に示す如く油通路5に油溝5Aを介して連通し、これにより、スプール7内のドレン通路7Bは、低圧側の油通路5に連通し続けるものである。また、他方の油穴9は、図3に示すように高圧側の油通路4に油溝4A等を介して連通する。
【0029】
ここで、スプール7は、後述の油圧パイロット部10と圧力設定ばね14とによりスプール孔3に沿って軸方向に摺動変位し、図1に示す如く環状凸部7Dがハウジング本体2の端面2Aに当接した状態で、スプール7は閉弁位置(閉弁方向でのストロークエンド)となる。そして、スプール7が図3に示すように開弁位置(開弁方向でのストロークエンド)まで摺動変位したときには、油穴9が高圧側の油通路4に油溝4A等を介して連通し、これにより、油通路4,5間がスプール7を介して互いに連通される。
【0030】
10はハウジング本体2内に設けられた油圧パイロット部で、該油圧パイロット部10は、スプール穴3の軸方向他側に摺動可能に設けられスプール7の他側端部7Cに当接するパイロットピストン11と、該パイロットピストン11の端面にパイロット圧を作用させるパイロット通路12とを含んで構成されている。ここで、パイロットピストン11は、スプール孔3およびスプール7よりも小径に形成され、パイロット通路12から供給されるパイロット圧に従ってスプール7を軸方向に駆動するものである。
【0031】
また、パイロット通路12は、パイロットピストン11の外径よりもさらに小さい穴径の通路として形成され、例えば高圧側の油通路4と連通するように形成されている。即ち、パイロット通路12には、高圧側の油通路4に供給される圧油の一部がパイロット圧となって導かれるものである。
【0032】
13はスプール7の軸方向の一側に位置してカバー6内に形成された油室としてのばね室で、該ばね室13内には、圧力設定ばね14が配設され、その内部は常に油液で満たされている。ここで、圧力設定ばね14は、後述するピストン17のばね受座17Aとスプール7の環状凸部7Dとの間に予圧縮(プリセット)状態で取付けられ、スプール7を予め決められた開弁設定圧で閉弁方向(図1中の左方向)に付勢している。
【0033】
そして、パイロット通路12内に供給されるパイロット圧(即ち、高圧側の油通路4内の圧力)が前記開弁設定圧を越える過剰圧となったときには、油圧パイロット部10のパイロットピストン11によりスプール7を圧力設定ばね14に抗して開弁方向(図1〜図3中の右方向)に押圧し、このときに圧力設定ばね14は、図2、図3に示す如く弾性的に撓み変形される。
【0034】
15はスプール7の軸方向変位に対してダンピング作用を与える抵抗発生手段としての可変絞り機構である。そして、該可変絞り機構15は、スプール7のピストン摺動穴7Aとばね室13とを連通するようにスプール7に穿設された径方向の油路16と、カバー6側に固定して設けられスプール7の軸方向変位に従って油路16の流路面積を変化させる流路可変部材としてのピストン17とにより構成されている。
【0035】
ここで、ピストン17は、その軸方向の一側に環状板からなるばね受座17Aを有し、該ばね受座17Aは、圧力設定ばね14によりカバー6の蓋部6Aに当接した状態に保持される。また、ピストン17の他側部位は、ばね受座17Aと同軸になるように一体に形成されて軸方向に延びるプランジャ部17Bとなっている。そして、このプランジャ部17Bは、スプール7のピストン摺動穴7A内に相対変位可能に挿嵌され、その端面17C側で油路16の開口面積(流路面積)を図2、図3に示す如く変化させる。
【0036】
これにより、可変絞り機構15は、スプール7の軸方向変位に従ってばね室13内の油液を油路16からスプール7内のピストン摺動穴7A、ドレン通路7Bに、即ちばね室13の内,外に油液を流入,流出させ、油路16を流通する油液に油路16の開口面積に応じた絞り抵抗を発生させる。そして、油路16の開口面積は、図2に示す如くスプール7が軸方向の途中位置にあるときに比べて、図3に示す如くスプール7が軸方向一側の端部に位置したときに小さく絞られるものである。
【0037】
本実施の形態によるスプール弁は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0038】
まず、油通路4内の圧力に対応して増減されるパイロット通路12内のパイロット圧が低い状態では、スプール7が圧力設定ばね14によって図1に示す開弁方向に付勢され、スプール7の環状凸部7Dはハウジング本体2の端面2Aに押付けられている。このとき、スプール7の油穴9は、高圧側の油通路4と遮断されているから、高圧側の油通路4から低圧側の油通路5に向けて圧油が流れることはない。
【0039】
しかし、例えば油圧ポンプ等から油通路4に供給される圧油の圧力が上昇し、圧力設定ばね14の開弁設定圧を越えるような過剰に高い圧力が発生することがある。そして、このような高圧なパイロット圧がパイロット通路12に供給されるときには、パイロットピストン11が図2に示すように軸方向の一側に向けて変位する。これによってスプール7は、パイロットピストン11により圧力設定ばね14に抗して軸方向一側に向けて摺動変位する。
【0040】
これにより、スプール7の油穴9は、図2に示すようにノッチ等を介して環状の油溝4A(高圧側の油通路4)に連通し始める。このため、高圧側の油通路4は、スプール7の油穴9、ドレン通路7B、油穴8を介して低圧側の油通路5に連通し始め、圧油の一部が低圧側の油通路5に流れる。このとき、パイロット通路12内のパイロット圧が圧力設定ばね14の開弁設定圧以下まで下がれば、スプール7は再び図1に示す閉弁位置に戻ろうとする。
【0041】
しかし、図2に示す状態でもパイロット通路12内のパイロット圧が圧力設定ばね14の開弁設定圧以下に下がらないことがあり、この場合には当該パイロット圧により、パイロットピストン11と一緒にスプール7が、図3に示すように圧力設定ばね14に抗して軸方向一側へとさらに摺動変位し、スプール7の先端(ピストン摺動穴7A側の端面)は、ピストン17のばね受座17Aに強く衝突しようとする。
【0042】
そこで、本実施の形態では、スプール7の軸方向変位に対してダンピング作用を与える抵抗発生手段としての可変絞り機構を設け、スプール7が軸方向の途中位置(図2参照)にあるときに比べて、スプール7が図3に示すように軸方向一側の端部に位置したときに、油路16の流路面積をピストン17により小さくする構成としている。
【0043】
即ち、この場合の可変絞り機構15は、スプール7のピストン摺動穴7Aとばね室13との間でスプール7に穿設された径方向の油路16と、カバー6側に固定して設けられスプール7の軸方向変位に従って油路16の流路面積を変化させるピストン17とにより構成している。そして、ピストン17のプランジャ部17Bは、その端面17C側で油路16の開口面積(流路面積)を図3に示す如く小さく絞るものである。
【0044】
これにより、可変絞り機構15は、スプール7の軸方向変位に従ってばね室13内の油液を油路16からスプール7内のピストン摺動穴7A、ドレン通路7B(即ち、ばね室13の内,外)に油液を流入,流出させ、油路16を流通する油液に油路16の開口面積に応じた絞り抵抗を発生することができる。
【0045】
この結果、可変絞り機構15は、スプール7の先端(ピストン摺動穴7A側の端面)がピストン17のばね受座17Aに接近したときに、ピストン17の端面17C側で油路16の開口面積を漸次小さくして絞り抵抗が大きくなるようにダンピング効果を高め、その変位速度を急速に減じることができる。
【0046】
従って、本実施の形態によれば、スプール7の先端がピストン17のばね受座17Aに衝突するのを、可変絞り機構15のダンピング効果により緩衝することができ、衝撃が発生するのを良好に抑えることができる。これにより、スプール7の先端、ピストン17のばね受座17Aまたはカバー6の蓋部6A等が損傷されるのを防止でき、各部品の耐久性、寿命を向上することができる。
【0047】
また、スプール7を筒状弁体として形成し、その内周側に設けたピストン摺動穴7A内にピストン17のプランジャ部17Bを挿入する構成としている。このため、スプール7の油路16とピストン17とからなる可変絞り機構17を、スプール7の内部に収納するように設けることができ、スプール弁全体の小型化を図ることができる。
【0048】
次に、図4および図5は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0049】
しかし、本実施の形態の特徴は、可変絞り機構21を、第1の実施の形態で述べたピストン17と、スプール7に軸方向に互いに離間して設けた複数(例えば、2個)の細孔22,23とにより構成したことにある。そして、この場合の細孔22,23は、その流路面積がピストン17のプランジャ部17Bにより変えられる油路を構成するものである。
【0050】
ここで、一の細孔22は、スプール7のドレン通路7Bとばね室13とを常時連通する位置に形成され、他の細孔23は、スプール7のピストン摺動穴7Aとばね室13とを連通する位置でスプール7に形成されている。そして、この場合の細孔23は、図5に示す如くスプール7が開弁方向のストロークエンドまで摺動変位し、スプール7の先端がピストン17のばね受座17Aに当接するときに、ピストン17のプランジャ部17Bにより完全に閉塞され、スプール7のピストン摺動穴7A、ドレン通路7Bに対して遮断されるものである。
【0051】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、可変絞り機構21のピストン17により、スプール7の軸方向変位に従って細孔22,23の合計の開口面積を変化させる構成としているので、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
特に、本実施の形態によれば、スプール7の先端(ピストン摺動穴7A側の端面)がピストン17のばね受座17Aから離れている途中の位置では、可変絞り機構21のピストン17によって細孔22,23のいずれも開いた状態とし、スプール7の先端がピストン17のばね受座17Aに当接する手前の位置ではピストン17のプランジャ部17Bにより細孔23を閉じ、細孔22は開いたままの状態に保つ構成としている。
【0053】
これにより、複数の細孔22,23の開口面積を合計した開口総面積を、スプール7がピストン17のばね受座17Aに当接する軸方向一側の位置に近づくに従って小さく減じることができ、例えば細孔22,23の個数、配置等を適宜に変えることにより、ダンピング効果により衝撃を緩衝する減衰力特性を様々に変化させることができる。
【0054】
次に、図6および図7は本発明の第3の実施の形態を示し、第3の実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0055】
しかし、本実施の形態の特徴は、可変絞り機構31を、第1の実施の形態で述べたピストン17と、スプール7に軸方向に互いに離間して設けた複数(例えば、2個)の細孔32,33とにより構成したことにある。そして、この場合の細孔32,33は、その流路面積がピストン17のプランジャ部17Bにより変えられる油路を構成するものである。
【0056】
ここで、一の細孔32は、スプール7のドレン通路7Bとばね室13とを常時連通する位置に形成され、他の細孔33は、スプール7のピストン摺動穴7Aとばね室13とを連通する位置でスプール7に形成されている。そして、この場合の細孔33は、図7に示す如くスプール7が開弁方向のストロークエンドまで摺動変位し、スプール7の先端がピストン17のばね受座17Aに当接するときに、ピストン17のプランジャ部17Bにより部分的に塞がれ、その開口面積(流路面積)が小さく絞られるものである。
【0057】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、可変絞り機構31のピストン17により、スプール7の軸方向変位に従って細孔32,33の合計の開口面積を変化させる構成としているので、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
特に、本実施の形態によれば、スプール7の先端(ピストン摺動穴7A側の端面)がピストン17のばね受座17Aから離れている途中の位置では、可変絞り機構31のピストン17によって細孔32,33のいずれも開いた状態とし、スプール7の先端がピストン17のばね受座17Aに当接する位置ではピストン17のプランジャ部17Bにより細孔33を部分的に閉じ、細孔32は開いたままの状態に保つ構成としている。
【0059】
これにより、複数の細孔32,33の開口面積を合計した開口総面積を、スプール7がピストン17のばね受座17Aに当接する軸方向一側の位置に近づくに従って小さく減じることができ、例えば細孔32,33の個数、配置等を適宜に変えることにより、ダンピング効果により衝撃を緩衝する減衰力特性を様々に変化させることができる。
【0060】
なお、上記第2,第3の実施の形態では、可変絞り機構21の細孔22,23、可変絞り機構31の細孔32,33の個数をそれぞれ2個とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば細孔の個数を3個以上に増やすことも可能である。そして、細孔の個数を増やすと同時に、各細孔の配置を調整することにより、ダンピング効果をより一層向上できるように、減衰力特性を調整する上での自由度を高めることができる。
【0061】
また、上記第1〜第3の実施の形態では、スプール7を常に閉弁位置(中立位置)に向けて付勢し、かつ開弁設定圧を決めるためにばね室13内に圧力設定ばね14を配設する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば圧力設定ばね14等を用いることのない形式のスプール弁に適用してもよい。
【0062】
そして、カバー6の蓋部6A側にピストン17のばね受座17Aを押付けるばね等の手段を用いない場合には、流路可変部材(例えば、ピストン17)の軸方向一側を螺着、接着、溶接等の手段を用いて弁ハウジング(カバー6の蓋部6A)に固定したり、一体に形成したりする構成とすればよい。また、流路可変部材は、ピストン17等に限るものではなく、例えばカバー6側に筒状部材を一体または別体に設け、この筒状部材の内周側にスプールの一側を摺動可能に挿嵌できるようにし、筒状部材によって油路16(細孔22,33)を開,閉する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるスプール弁をスプールが閉弁位置で停止した状態で示す縦断面図である。
【図2】図1中のスプールが開弁位置に向けて軸方向の中間位置に変位した状態で示す縦断面図である。
【図3】スプールが開弁位置となるストロークエンドまで摺動変位した状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態によるスプール弁を示す縦断面図である。
【図5】図4中のスプールが開弁位置のストロークエンドまで摺動変位した状態で示す縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態によるスプール弁を示す縦断面図である。
【図7】図6中のスプールが開弁位置のストロークエンドまで摺動変位した状態で示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 弁ハウジング
2 ハウジング本体
3 スプール孔
4 高圧側の油通路
5 低圧側の油通路
6 カバー
7 スプール
7A ピストン摺動穴
7B ドレン通路
8,9 油穴
10 油圧パイロット部
13 ばね室(油室)
14 圧力設定ばね
15,21,31 可変絞り機構(抵抗発生手段)
16 油路
17 ピストン(流路可変部材)
22,23,32,33 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるスプール孔を有し該スプール孔の軸方向に離間して複数の通路が設けられた弁ハウジングと、前記弁ハウジングのスプール孔内に軸方向に変位可能に挿嵌され前記複数の通路を互いに連通,遮断するスプールと、前記スプール孔の軸方向の一方側に位置して前記弁ハウジングに設けられ内部が油液で満たされる油室と、前記スプールの軸方向変位に従って前記油室の内,外に油液を流入,流出させ、流通する油液に絞り抵抗を発生させる抵抗発生手段とを備えたスプール弁において、
前記抵抗発生手段は、前記スプールが軸方向の途中位置にあるときに比べて、前記スプールが軸方向一方側の端部に位置したときには油液の流路面積が小さくなる可変絞り機構により構成したことを特徴とするスプール弁。
【請求項2】
前記可変絞り機構は、前記スプールに設けられ前記油室との間で前記スプール内に油液が流入,流出する油路と、前記弁ハウジング側に設けられ前記スプールの軸方向変位に従って前記油路の流路面積を変化させる流路可変部材とにより構成してなる請求項1に記載のスプール弁。
【請求項3】
前記可変絞り機構は、前記スプールに設けられ前記油室との間で前記スプール内に油液が流入,流出する複数の細孔と、前記弁ハウジング側に設けられ前記スプールの軸方向変位に従って前記各細孔のいずれかを開,閉して前記流路面積を変化させる流路可変部材とにより構成してなる請求項1に記載のスプール弁。
【請求項4】
前記可変絞り機構は、前記スプールに設けられ前記油室との間で前記スプール内に油液が流入,流出する複数の細孔と、前記弁ハウジング側に設けられ前記スプールが軸方向の途中位置にあるときに前記各細孔を全て開き、前記スプールが軸方向の一方側まで変位したときには前記各細孔の一部を少なくとも部分的に閉じて前記流路面積を変化させる流路可変部材とにより構成してなる請求項1に記載のスプール弁。
【請求項5】
前記可変絞り機構は、前記スプールに設けられ前記油室との間で前記スプール内に油液が流入,流出する複数の細孔と、前記弁ハウジング側に設けられ前記スプールが軸方向の途中位置にあるときに前記各細孔を全て開き、前記スプールが軸方向の一方側まで変位したときには前記各細孔の少なくともいずれか一つを閉じて前記流路面積を変化させる流路可変部材とにより構成してなる請求項1に記載のスプール弁。
【請求項6】
前記スプールは、軸方向の一方側がピストン摺動穴となって開口し他方側で前記通路の少なくともいずれかに連通する筒状弁体として構成し、前記流路可変部材は、一方側が前記弁ハウジングに一体または別体に設けられ他方側が前記ピストン摺動穴内に挿嵌されたピストンにより構成してなる請求項2,3,4または5に記載のスプール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−101336(P2010−101336A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270563(P2008−270563)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】