説明

スペクトル検出器、顕微鏡システム

【課題】同時に多チャンネルで高分解能のスペクトル検出し、かつスペクトル検出器と情報処理装置との間につなぐ信号線の数をスペクトル検出器のA/D変換器の数より少なくした装置を提供する。
【解決手段】スペクトル検出器102に、光を導入する光入力部と、光入力部からの光を分光する分光素子14と、分光素子14により分光された光をスペクトル毎に検出しアナログ電気信号に変換する複数の受光素子と、サンプリング回路16とを設ける。サンプリング回路16は、複数の受光素子毎に接続され、接続されている受光素子からのアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する複数のA/D変換器と、複数のA/D変換器の各々が出力する複数のデジタル電気信号の入力を受付け、受付けた複数のデジタル電気信号を順次選択しA/D変換器の数より少ない出力端子を介して情報処理装置103に出力する信号処理部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡の技術に関し、特に試料から反射した光をスペクトル毎に検出する検出器の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ走査顕微鏡の技術として、検出光を分光し複数の受光素子を持った光検出器でスペクトルを検出することが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1(図5参照)では、複数の受光素子を有するスペクトル検出器が受光素子毎に所定領域のスペクトルを検出する。
【0003】
また、レーザ走査顕微鏡と、レーザ走査顕微鏡が検出したデータを利用して画像処理を行う情報処理装置とを有するシステムが知られている(特許文献1の図2)。特許文献1では、レーザ走査顕微鏡に設けられたスペクトル検出器が検出した光を電気信号に変換する。そして、スペクトル検出器は、8つの受光素子出力を加算してA/D変換後に、接続ケーブルを介して情報処理装置(パーソナルコンピュータ)に電気信号を出力する。情報処理装置は、接続ケーブルを介して電気信号を受付け、その電気信号を用いて画像処理を行なう。
【0004】
【特許文献1】特開2003−185582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のスペクトル検出器を利用して、検出されたスペクトルを分析しようとした場合、以下のような問題が生じる。すなわち、スペクトル検出器が検出したスペクトルのデータは、8つの受光素子の加算値を使用する為に分解能が低下し、同時に多チャンネル(多受光素子)で検出している効果を十分使えていない。
【0006】
また、スペクトル検出器と情報処理装置との間をA/D変換器と同数の接続ケーブルで接続している。その結果、A/D変換器の数が多くなるほど接続ケーブルの引き廻しが不便になる。なお、スペクトル検出器と情報処理装置とを離れた位置に配置する場合、さらに取り扱いが不便となる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、同時に多数のチャンネル(受光素子+A/D変換器)で高分解能のスペクトル検出を実現し、更に、スペクトル検出器と情報処理装置との間につなぐ信号線の数をスペクトル検出器のA/D変換器の数より少なくした装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明のスペクトル検出器は、情報処理装置に接続されているスペクトル検出器であって、光を導入する光入力部と、前記光入力部から導入された光を分光する分光素子と、前記分光素子により分光された光をスペクトル毎に検出しアナログ電気信号に変換する複数の受光素子と、前記複数の受光素子毎に接続され、該接続されている前記受光素子からの前記アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する複数のA/D変換器と、前記複数のA/D変換器の各々が出力する複数のデジタル電気信号の入力を受付け、該受付けた複数のデジタル電気信号を順次選択して前記A/D変換器の数より少ない出力端子を介して前記情報処理装置に出力する信号処理部と、を有する。
【0009】
請求項2に係る発明のスペクトル検出器は、請求項1に記載のスペクトル検出器であって、前記信号処理部は、外部の装置が出力する制御信号の入力を受付け、前記受付けた制御信号にしたがい、前記複数のA/D変換器の中からデジタル電気信号の入力を受付けるA/D変換器を選択し、該選択したA/D変換器が出力するデジタル電気信号を受信し、該受信したデジタル電気信号を前記出力端子に出力することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明の顕微鏡システムは、請求項1〜2のいずれか一項に記載のスペクトル検出器と、照明光を標本に照射し、該標本から発せられた光を集光し観察する顕微鏡と、前記情報処理装置とを有する顕微鏡システムであって、前記スペクトル検出器と前記顕微鏡とは、ファイバケーブルにより接続されていて、前記顕微鏡は、前記ファイバケーブルを介して前記集光した光を前記スペクトル検出器に伝送し、前記スペクトル検出器の光入力部は、前記ファイバケーブルを介して前記集光した光を受付け、前記情報処理装置は、前記スペクトル検出器の出力端子に接続された信号線を介して接続され、前記スペクトル検出器が出力するデジタル電気信号の入力を受付け、該受付けたデジタル電気信号を用いて画像処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、スペクトル検出器に設けられた信号処理部がそれぞれのA/D変換器が出力する複数のデジタル電気信号を前記A/D変換器の数より少ない所定の数の出力端子を介して情報処理装置に出力するようにしている。そのため、本発明によれば、スペクトル検出器と情報処理装置との間につなぐ信号線の数を少なくすることができる。また、本発明では、スペクトル検出器の内部には、受光素子と同数のA/D変換器を設け、受光素子が検出した電気信号をデジタル信号に変化した上で情報処理装置に送信するようにしている。そのため、本発明では、同時に多数の受光素子の信号を得ることができ、高分解能のスペクトル検出が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
最初に、本発明の第1実施形態が適用された蛍光スペクトル検出に応用した顕微鏡システムの概略について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態が適用された顕微鏡システムの概略を示す図である。図示するように、第1実施形態の顕微鏡システムは、レーザ走査顕微鏡101と、スペクトルディテクタ(スペクトル検出器)102と、コントローラ(情報処理装置)103と、を有する。第1実施形態の顕微鏡システムでは、多様化するアプリケーションに適するように、レーザ走査顕微鏡101、スペクトルディテクタ102、およびコントローラ103を各々異なるユニットで構成している。なお、コントローラ103には、モニタ20が接続されている。
【0015】
スペクトルディテクタ102およびコントローラ103は、配置に自由度を持たせるため、コネクタ付のケーブル104で接続されていて、必要な信号をこのケーブル104を介して通信している。レーザ走査顕微鏡101とコントローラ103とは、信号線200により接続されていて、必要な信号をこの信号線200を介して通信している。また、レーザ走査顕微鏡101とスペクトルディテクタ102との間は光ファイバー12により接続されていて、レーザ走査顕微鏡101が集光した光は、光ファイバー12を経由してスペクトルディテクタ102に導かれる。
【0016】
レーザ走査顕微鏡101は、レーザ光を試料8の面上に照射し、その試料から発した光(蛍光)を集光し、集光した光を光ファイバー12を介してスペクトルディテクタ102に伝送する。具体的には、レーザ走査顕微鏡101は、レーザ光を照射するレーザ1、レーザ1から照射された光を遮断あるいは通過させるためのシャッタ2、シャッタ2が開いた場合に光を伝送する光ファイバー3、レンズ4、1stダイクロイックミラー5、2次元走査手段6(例えば2つのガルバノミラースキャナ)、対物レンズ7、ステージ9、集光レンズ10、およびピンホール11を有する。
【0017】
そして、レーザ1から射出されたレーザ光は、シャッタ2が開かれている場合に光ファイバー3でレンズ4に伝送される。光ファイバー3を経由して伝送された光は、レンズ4で平行光になり、1stダイクロイックミラー5で反射され2次元走査手段6に導かれる。2次元走査手段6は、コントローラ103のXYスキャナ駆動回路19に制御されていて、ステージ9に搭載された標本8を対物レンズ7を介して点で照明する。なお、照明光は、2次元走査手段6によってX-Y方向に2次元に走査される。対物レンズ7で点に照明された標本8からは、蛍光が発生し、戻り光として光路を逆行し、2次元走査手段6でデスキャニングされた後、1stダイクロイックミラー5を透過し、集光レンズ10で集光されてピンホール11を通過する。レーザ走査顕微鏡101で得られた蛍光は、光ファイバー12を通じてスペクトルディテクタ102に導かれる。
【0018】
スペクトルディテクタ102は、遮光を兼ねた筐体で囲まれていている。スペクトルディテクタ102は、光ファイバー12を通過して導かれた蛍光を分光し、分光されたスペクトル光を検出して電気信号に変換してコントローラ103に出力する。具体的には、スペクトルディテクタ102は、光ファイバー12からの蛍光を平行光にするレンズ13と、レンズ13からの平行光を分光する分光素子(例えば回折格子、プリズムなど)14と、分光されたスペクトル光を検出して電気信号に変換して出力する光検出部105とを有する。
【0019】
光検出部105は、マルチチャンネル光検出器15および光信号サンプリング回路16を有する。そして、分光素子が分光したスペクトル光は、マルチチャンネル光検出器15に入射され、スペクトル光の回折幅とマルチチャンネル光検出器15の検出チャンネルのピッチによる波長分解能で検出される。マルチチャンネル検出器15からの各チャンネルの信号は光信号サンプリング回路16でそれぞれ輝度を示すデータとしてサンプリングされる。サンプリングされた輝度を示すデータは、デジタルデータに変換された上でケーブル104aを介してコントローラ103の画像処理回路17に転送される。
【0020】
コントローラ103は、本システム全体の動作を制御する装置である。具体的には、コントローラ103は、画像処理回路17および装置制御回路18を有する画像処理部106と、XYスキャナ駆動回路19と、を有する。
【0021】
装置制御回路18は、レーザ走査顕微鏡101、スペクトルディテクタ102、およびコントローラ103自身の動作を制御する。具体的には、装置制御回路18は、スペクトルディテクタ102の光信号サンプリング回路16に対してケーブル104bを介して輝度を示すデータのサンプリング周期を示す信号を送信する。また、装置制御回路18は、XYスキャナ駆動回路19にレーザ走査顕微鏡102の2次元走査手段6の動作を制御させる。また、装置制御回路18は、図示しないシャッタ制御回路を介してレーザ走査顕微鏡101のシャッタ2の開閉を制御する。
【0022】
画像処理回路17は、スペクトルディテクタ102が出力したデジタルデータの入力を受付け、受付けたデジタルデータに対する画像処理を行い、モニタ20に画像を表示する。
【0023】
続いて、上述したスペクトルディテクタ102の光検出部105、およびコントローラ103の画像処理部106の構成を詳細に説明する。
【0024】
図2は、本実施形態の光検出部105、および画像処理部106の構成を詳細に説明するための図である。なお、図2では、スペクトルディテクタ102のレンズ13および分光素子14と、コントローラ103のXYスキャナ駆動回路19とを説明の便宜上省略している。
【0025】
先ず、スペクトルディテクタ102の光検出部105について説明する。光検出部105は、マルチチャンネル光検出器15と、光信号サンプリング回路16と、コネクタ35とを有する。マルチチャンネル光検出器15は、32個の受光素子を有する。32個の受光素子は、それぞれ異なる波長領域の光を検出するための検出チャンネルのピッチが設定されている。そして、マルチチャンネル光検出器15は、分光されたスペクトルを32個の受光素子のそれぞれに設定されているピッチによる波長分解能で検出し、輝度を示す電流に変換し、光信号サンプリング回路16に出力する。なお、マルチチャンネル光検出器15の受光素子には、例えば、光電子増倍管(Photomultiplier Tube)を用いることができる。また、本実施形態では、マルチチャンネル光検出器15が32個の受光素子を有する場合を説明するが、受光素子の数は、例示に過ぎない。
【0026】
光信号サンプリング回路16は、受光素子と同数のアナログ演算回路31と、受光素子と同数のA/D変換素子32と、マルチプレクサ33と、バッファ34と、を有する。また、光信号サンプリング回路16は、データの入出力端子であるコネクタ35に接続されている。
【0027】
アナログ演算回路31は、受光素子31が出力する電流の入力を受付け、入力された電流に対して電流電圧変換および増幅処理を行い、アナログの電圧信号としてA/D変換素子32に出力する。
【0028】
A/D変換素子32は、レーザ走査顕微鏡101の2次元走査手段6の走査に同期したサンプリングクロックSCLKをコントローラ103の同期信号発生回路52からケーブル104bを介して受信する。A/D変換素子32は、アナログ演算回路31から出力されたアナログの電圧信号を上記の受信したサンプリングクロックSCLKでデジタルデータに変換する。なお、本実施形態では、アナログの電圧信号を12bitのデジタルデータに変換する場合を例に説明する。
【0029】
A/D変換素子32は、変換した12bitのデジタルデータを12本の信号線でマルチプレクサ33に出力する。本実施形態では、32個のA/D変換素子32を設けているため、384(32個×12本)本の信号線によりデジタルデータがマルチプレクサ33に出力される。このように、本実施形態では、受光素子31と同数のアナログ演算回路31およびA/D変換素子32を設けている。そのため、32個の受光素子が出力する輝度を示すデータ(電流)を同時にサンプリングすることが可能となる。
【0030】
マルチプレクサ33は、2次元走査手段6の走査に同期したサンプリングクロックSCLKより384(32個×12本)倍以上速い周波数の転送クロックTCLKをコントローラ103からケーブル104bを介して受信する。マルチプレクサ33は、32個のA/D変換素子32が各々出力する輝度を示すデジタルデータの入力を上記受信した転送クロックTCLKに同期して順次受付ける。すなわち、マルチプレクサ33は、32個の輝度を示すデジタルデータを受付ける。そして、マルチプレクサ33は、受付けた32個の輝度を示すデジタルデータを時系列にシリアルデータ通信し、1つの信号ラインとしてコネクタ35から出力する。
【0031】
なお、転送クロックTCLKをサンプリングクロックSCLKよりも384(32個×12本)倍以上速い周波数にしたのは、384(32個×12本)本の信号線で出力される32個の輝度を示すデータを次のサンプリングまでの間に全て時系列にシリアル転送するためである。
【0032】
このように、マルチプレクサ33に入力された複数の輝度を示すデジタルデータを1つの信号ラインで出力するようにすれば、32個の受光素子が各々検出した32個の輝度を示す信号を1本のケーブル104aにより出力することが可能となる。
【0033】
続いて、コントローラ103の画像処理部106の構成を詳細に説明する。画像処理部106は、画像処理回路17および装置制御回路18を有する。画像処理回路17は、スペクトルディテクタ102が出力したデジタルデータを格納するバッファ41と、デジタルデータをアナログデータに変換するD/A変換器42と、モニタ20に表示する画像を描画するためのフレームメモリ43と、画像処理を行うCPU(Central Processing Unit)44と、を有する。また、装置制御回路18は、サンプリングクロックSCLK、転送クロックTCLK等の同期信号を生成する同期信号発生回路52と、コントローラ103の動作を制御するCPU51とを有する。
【0034】
そして、画像処理回路17のCPU44は、同期信号発生回路52から転送クロックTCLKを取得する。CPU44は、スペクトルディテクタ102が出力した輝度を示すデジタルデータを、バッファ41を介し上記転送クロックTCLKに同期してフレームメモリ43に一時記録する。CPU44は、これらの輝度を示すデジタルデータを目的に応じて、D/A変換器42を通じてモニタ20に画像データとして表示したり、演算処理を行いグラフや表に表を作成したり、また、コンピュータ(不図示)などにデータを転送したりする。
【0035】
また、装置制御回路18の同期信号発生回路52は、サンプリングクロックSCLKを生成し、生成したサンプリングクロックSCLKをXYスキャナ駆動回路19(図1参照)と、スペクトルディテクタ102のA/D変換素子33とに出力する。また、同期信号発生回路52は、生成したサンプリングクロックSCLKを用いて所定の周波数(例えば、サンプリングクロックSCLKの384倍の周波数)の転送クロックTCLKを生成する。同期信号発生回路52は、生成した転送クロックTCLKを画像処理回路17およびスペクトルディテクタ102のマルチプレクサ33に出力する。
【0036】
このように本実施形態のスペクトルディテクタ102は、複数の受光素子を有する光検出部105にA/D変換素子32およびマルチプレクサ33を設け、それぞれの受光素子が検出した複数個の輝度データを1本のシリアル信号に変換して出力するようにしている。
【0037】
そのため、本実施形態によれば、スペクトルディテクタ102から画像処理を行うコントローラ100に1本のケーブルでデータを送信することが可能になる。その結果、本実施形態によれば顕微鏡システムの機器の配置の自由度を高め、かつ設置を容易にすることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、スペクトルディテクタ102から送られる輝度を示すデータは、デジタルデータである。そのため、スペクトルディテクタ102から送信されるデータが劣化する可能性を低減することができる。
【0039】
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0040】
本発明の第2実施形態は、第1実施形態のスペクトルディテクタ102の光検出部105の光信号サンプリング回路16の構成を変形したものである。具体的には、第2実施形態は、輝度を示すデジタルデータを転送する速度に制限がある場合を考慮して、マルチプレクサの数と出力ポート数を増やすようにしたものである。なお、第2実施形態は、第1実施形態と光信号サンプリング回路16の構成が異なる以外は同様の構成を有している。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いることとする。また、第2実施形態の説明では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0041】
図3は、本発明の第2実施形態のスペクトルディテクタ102の光検出部105の光信号サンプリング回路16を説明するための図である。なお、図3では、スペクトルディテクタ102のレンズ13および分光素子14は、説明の便宜上省略している。
【0042】
図示するように、第2実施形態の光信号サンプリング回路16は、第1実施形態と同様の構成のマルチプレクサ33およびバッファ34の組を2組設けるようにしている。そして、1つのマルチプレクサ33に16個のA/D変換素子32を割り当てるようにしている。各マルチプレクサ33は、16個のA/D変換素子32が出力する16個の輝度を示すデジタルデータを受付けて、そのデジタルデータをシリアルデータに変換し、1つの信号ラインとしてコネクタ35から出力する。その結果、第2実施形態では、スペクトルディテクタ102から2本のケーブル104aで輝度を示すデジタルデータをコントローラ103に出力することができる。
【0043】
このように第2実施形態によれば、輝度を示すデジタルデータをシリアル転送する速度に制限がある場合に、出力信号ライン数を2倍にすることで、転送速度を1/2に抑えることが可能となる。
【0044】
なお、本発明は以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、マルチプレクサ33にA/D変換素子32が出力する輝度を示すデジタルデータを選択して転送させるようにしてもよい。
【0045】
具体的には、コントローラ103の装置制御回路18に、スペクトルディテクタ102に出力させる輝度を示すデータの「データ数」の設定を受付ける機能を設ける。装置制御回路18は、設定された「データ数」によりマルチプレクサ33に選択させるA/D変換素子33を決定し、決定したA/D変換素子33を示す制御信号を生成し、マルチプレクサ33に出力する。マルチプレクサ33は、制御信号により示されるA/D変換素子32からのデータだけを選択して転送する。なお、装置制御回路18は、出力させる「データ数」ではなく、出力させる受光素子のチャンネルを選択させ、その旨を示す制御信号を生成するようにしてもよい。また、制御信号は、コントローラ103以外の他の情報処理装置により生成し、スペクトルディテクタ102に出力するようにしてもよい。
【0046】
このようにすることで、スペクトルディテクタ102から転送するデータ数を減らすことができる。
【0047】
また、上記の実施形態では、マルチプレクサ33は、受付けた複数のデジタルデータを1本のシリアル信号に変換して出力する場合を例にしたが、マルチプレクサ33が出力する信号の本数については、特に限定しない。受光素子の数より少ない本数であればよい。例えば、デジタルデータを転送する速度に制限がある場合、輝度データのbit数(ここでは12本)にしてもよい。この場合、コントローラ103の同期信号発生回路52が出力する転送クロックTSLKを、サンプリングクロックSCLKよりも32倍以上速い周波数で設定する。そして、マルチプレクサ33は、32個の輝度データを次のサンプリングまでの間に全て転送するため、サンプリングクロックSCLKよりも32倍以上速い周波数の転送クロックTCLKに同期し、輝度を示すデジタルデータを順じ切り替えて出力する。すなわち、マルチプレクサ33は、順次に輝度を示すデジタルデータを受付ける一のA/D変換素子32を選択し、選択したA/D変換素子32から12本の信号線により出力される輝度データを受付け、12本のケーブル104aを介して出力する。このように構成しても、32個の受光素子が検出した輝度信号を12本のケーブル104aにより出力することが可能となり、コントローラ103に接続するケーブルの数を削減できる。
【0048】
また、光信号サンプリング回路16の中に任意の輝度を示すデータを平均化する処理を行う回路を設け、コントローラ103に転送するデータ数を減らすようにしてもよい。また、スペクトルディテクタ102を小型化するために、アナログ演算回路31、A/D変換素子32、マルチプレクサ33、バッファ34を1つのボードに実装するようにしてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、マルチチャンネル光検出器15を使用した走査顕微鏡システムについて説明したが、特にこれに限定するものではない。例えば、スペクトルディテクタ102に代えて、シングルディテクタをNチャンネル搭載したNチャンネルディテクタを用いるようにしてもよい。ここで、図4に本実施形態に適用するシングルディテクタを複数チャンネル搭載したNチャンネルディテクタ300を示す。図示するように、Nチャンネルディテクタ300には、通常のシングルディテクタ301a〜nがNチャンネル設けられている。なお、光信号サンプリング回路16の構成は、上述したものと同じである。そして、このように構成した場合も、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態が適用された顕微鏡システムの概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の光検出部105、および画像処理部106の構成を詳細に説明するための図である。
【図3】本発明の第2実施形態のスペクトルディテクタ102の光検出部105の光信号サンプリング回路16を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態に適用するNチャンネルディテクタ300の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
1…レーザ、2…シャッタ、3…光ファイバー、4…レンズ、5…1stダイクロイックミラー、6…2次元走査手段、7…対物レンズ、8…標本、9…ステージ、10…集光レンズ、11…ピンホール、12…光ファイバー、13…レンズ、14…分光素子、15…マルチチャンネル光検出器、16…光信号サンプリング回路、17…画像処理回路、18…装置制御回路、19…XYスキャナ駆動回路、20…モニタ、31…アナログ演算回路、32…A/D変換素子、33…マルチプレクサ、34…バッファ、35…コネクタ、41…バッファ、42…D/A変換器、43…フレームメモリ、44…CPU、51…CPU、52…同期信号発生回路、101…レーザ走査顕微鏡、102…スペクトルディテクタ、103…コントローラ、104…ケーブル、105…光検出部、106…画像処理部、200…信号線、300…Nチャンネルディテクタ300、301…シングルディテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置に接続されているスペクトル検出器であって、
光を導入する光入力部と、
前記光入力部から導入された光を分光する分光素子と、
前記分光素子により分光された光をスペクトル毎に検出しアナログ電気信号に変換する複数の受光素子と、
前記複数の受光素子毎に接続され、該接続されている前記受光素子からの前記アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する複数のA/D変換器と、
前記複数のA/D変換器の各々が出力する複数のデジタル電気信号の入力を受付け、該受付けた複数のデジタル電気信号を順次選択して前記A/D変換器の数より少ない出力端子を介して前記情報処理装置に出力する信号処理部と、を有すること
を特徴とするスペクトル検出器。
【請求項2】
請求項1に記載のスペクトル検出器であって、
前記信号処理部は、
外部の装置が出力する制御信号の入力を受付け、
前記受付けた制御信号にしたがい、前記複数のA/D変換器の中からデジタル電気信号の入力を受付けるA/D変換器を選択し、該選択したA/D変換器が出力するデジタル電気信号を受信し、該受信したデジタル電気信号を前記出力端子に出力すること
を特徴とするスペクトル検出器。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか一項に記載のスペクトル検出器と、照明光を標本に照射し、該標本から発せられた光を集光し観察する顕微鏡と、前記情報処理装置とを有する顕微鏡システムであって、
前記スペクトル検出器と前記顕微鏡とは、ファイバケーブルにより接続されていて、
前記顕微鏡は、
前記ファイバケーブルを介して前記集光した光を前記スペクトル検出器に伝送し、
前記スペクトル検出器の光入力部は、前記ファイバケーブルを介して前記集光した光を受付け、
前記情報処理装置は、
前記スペクトル検出器の出力端子に接続された信号線を介して接続され、
前記スペクトル検出器が出力するデジタル電気信号の入力を受付け、該受付けたデジタル電気信号を用いて画像処理を行うこと
を特徴とする顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−153692(P2006−153692A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345674(P2004−345674)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】