説明

スラグ溶融バーナ装置

【課題】外筒の内周面が蒸気の膜で覆われ、熱伝達率が低下して外筒の管壁温度が急上昇する現象を防止することができ、外筒の熱による損傷を防止すること。また、バーナ先端部での冷却効率の斑による冷却不足に起因したバーナの焼損を防止すること。
【解決手段】二段噴流床石炭ガス化炉内に位置する先端部が、外筒41と内筒42とを有する二重管構造とされ、かつ、先端部を冷却する冷却水が、内筒42の内側を通って供給され、先端部を冷却した後、外筒41と内筒42との間に形成された空間内を通って基端側に戻されるように構成されているとともに、外筒41と内筒42との間に形成された空間の流路面積が、内筒42の内側に形成された流路面積よりも小さくなるように構成されており、外筒41と内筒42との間に形成された空間を通って基端側に戻される冷却水に、内筒42の外周面に形成されたガイド49に沿った旋回流F1と、外筒41および内筒42の長手方向に沿った略直線的な流れF2とが付与されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグホールに付着成長した固形スラグやつらら状スラグを容易に溶解し、切断するスラグ溶融バーナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラグホールに付着成長した固形スラグやつらら状スラグを溶解し、切断することができるスラグ溶融バーナ装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【特許文献1】特開平8−312937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されたスラグ溶融バーナ装置では、二段噴流床石炭ガス化炉内に挿入された先端部を冷却する冷却水が、冷却水配管を介して先端部近傍に導かれた後、外筒に形成された冷却水出口を介して外部に排出されるようになっている。そのため、先端部を冷却して冷却水出口に達するまでの間に冷却水の一部が蒸発してしまい、外筒の内周面が蒸気の膜で覆われ、熱伝達率が低下して外筒の管壁温度が急上昇し、外筒が熱によって損傷してしまうおそれがあった。
また、スラグ溶融バーナ装置では燃料の酸化剤として純酸素を用いるが、焼損防止のためバーナ先端部を十分に斑なく冷却する必要がある。上記特許文献1に開示されたスラグ溶融バーナ装置では、冷却水は先端部近傍に冷却水配管を介して導かれるが、冷却水配管の出口近傍とそれ以外の部位で冷却効率の斑が生じバーナ先端部全体を均一に効率よく冷却できない。このため、特に大型のバーナの場合は、バーナ先端部に冷却の不十分な部位が生じ、ひいては焼損に至るおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、外筒の内周面が蒸気の膜で覆われ、熱伝達率が低下して外筒の管壁温度が急上昇する現象(DNB:Departure of Nuclear Boiling)を防止することができ、外筒の熱による損傷を防止することができるスラグ溶融バーナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係るスラグ溶融バーナ装置は、コンバスタに気体搬送された微粉炭を燃焼させ、リダクタでその燃焼ガス中に同様に気体搬送された微粉炭を投入、乾留してガス化するとともに、不燃分を溶融スラグとしてスラグホールから排出する二段噴流床石炭ガス化炉のスラグ溶融バーナ装置であって、前記二段噴流床石炭ガス化炉内に位置する先端部が、外筒と内筒とを有する二重管構造とされ、かつ、前記先端部を冷却する冷却水が、前記内筒の内側を通って供給され、前記先端部を冷却した後、前記外筒と前記内筒との間に形成された空間内を通って基端側に戻されるように構成されているとともに、前記外筒と前記内筒との間に形成された空間の流路面積が、前記内筒の内側に形成された流路面積よりも小さくなるように構成されており、前記外筒と前記内筒との間に形成された空間を通って基端側に戻される冷却水に、前記内筒の外周面に形成されたガイドに沿った旋回流と、前記外筒および前記内筒の長手方向に沿った略直線的な流れとが付与されるように構成されている。
【0006】
本発明に係るスラグ溶融バーナ装置によれば、二段噴流床石炭ガス化炉内に位置する先端部(例えば、灯油燃焼室内に挿入される部分)が、外筒と内筒とを有する二重管構造とされ、かつ、内筒の内部を通って先端側(例えば、図3に示すバーナチップ金物45および取付用キャップ46の側)に供給され、先端(例えば、図3に示すバーナチップ金物45、バーナチップ、および取付用キャップ46)を冷却した冷却水が、内筒の流路面積よりも小さい流路面積を有する外筒と内筒との間の空間を通って基端側(例えば、図3に示す前部チャンバー44の側)に戻される。このとき、外筒と内筒との間の空間内に浸入した冷却水は、その流速が高められるとともに、例えば、図6に示すように、ガイド49に沿った旋回流F1と、外筒41および内筒42の長手方向に沿った略直線的な流れF2とになって下流側に流れていくこととなる。
これにより、外筒の内周面が蒸気の膜で覆われ、熱伝達率が低下して外筒の管壁温度が急上昇する現象(DNB:Departure of Nuclear Boiling)を防止することができ、外筒の熱による損傷を防止することができる。
また、バーナ先端部での冷却効率の斑による冷却不足に起因したバーナの焼損を防止することができる。
【0007】
上記スラグ溶融バーナ装置において、前記先端部の先端における流路面積が、前記内筒の内側に形成された流路面積よりも小さくなるように構成されているとさらに好適である。
【0008】
このようなスラグ溶融バーナ装置によれば、先端部の先端における流路面積が(例えば、図3に示すレジューサ47,48の内周面とバーナチップ金物45との間の流路面積、レジューサ47,48の前側の端面とバーナチップ金物45の後側の端面との間の流路面積、およびレジューサ47,48の外周面と外筒41の内周面41aとの間の流路面積がそれぞれ)、内筒の流路面積よりも小さくなるように設定されていることとなるので、先端(例えば、図3に示すバーナチップ金物45、バーナチップ、および取付用キャップ46)における冷却水の流速を高めることができ、先端を効率よく冷却することができて、先端の熱による損傷を防止することができる。
【0009】
上記スラグ溶融バーナ装置において、前記二段噴流床石炭ガス化炉内に位置する先端部が、前記二段噴流床石炭ガス化炉に対して進退可能に構成されているとさらに好適である。
【0010】
このようなスラグ溶融バーナ装置によれば、スラグ溶融バーナ装置を使用しない時(不使用時)には、二段噴流床石炭ガス化炉内に位置する先端部(例えば、灯油燃焼室内に挿入される部分)を、二段噴流床石炭ガス化炉内(例えば、図1および図2に示す灯油燃焼室3内)から引き抜くことができるように構成されていることとなる。
これにより、スラグ溶融バーナ装置の、前記二段噴流床石炭ガス化炉内に位置する先端部の熱による損傷をさらに防止することができる。
【0011】
本発明に係る二段噴流床石炭ガス化炉は、熱に対して優れた耐久性を有するスラグ溶融バーナ装置を具備している。
本発明に係る二段噴流床石炭ガス化炉によれば、熱によって損傷したスラグ溶融バーナ装置の取り替え作業が大幅に低減し、二段噴流床石炭ガス化炉の稼働時間が大幅に向上するとともに、二段噴流床石炭ガス化炉全体としての信頼性を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る石炭ガス化コンバインドサイクル発電プラントは、信頼性に優れた二段噴流床石炭ガス化炉を具備している。
本発明に係る石炭ガス化コンバインドサイクル発電プラントによれば、石炭ガス化コンバインドサイクル発電プラント全体としての信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るスラグ溶融バーナ装置によれば、外筒の内周面が蒸気の膜で覆われ、熱伝達率が低下して外筒の管壁温度が急上昇する現象(DNB:Departure of Nuclear Boiling)を防止することができ、外筒の熱による損傷を防止することができるという効果を奏する。
また、本発明に係るスラグ溶融バーナ装置によれば、バーナ先端部での冷却効率の斑による冷却不足に起因したバーナの焼損を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るスラグ溶融バーナ装置の一実施形態について、図1から図12を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置を具備した二段噴流床ガス化炉とチャー回収設備を備えた石炭ガス化コンバインドサイクル発電プラントの一部を示す系統図である。
図1中の符号1は二段噴流床ガス化炉(以下、「ガス化炉」という。)、符号2はスラグホッパ、符号3は灯油燃焼室(「スラグ溶融バーナ燃焼室」ともいう。)、符号4はコンバスタ、符号5はリダクタ、符号6は後部熱交換器、符号7はコンバスタバーナ、符号8はチャーバーナ、符号9はリダクタバーナ、符号10はスラグホール、符号11はチャー回収設備、符号12はサイクロン、符号13はポーラスフィルタ、符号14はチャービン、符号15はチャー供給ホッパ、符号17はチャー、符号19はスラグホッパ水、符号20は高温排ガス、符号22はクロスオーバをそれぞれ示している。
【0015】
また、図1中の符号23はスラグ溶融バーナ装置、符号24は燃料配管(LNG管)、符号25は酸化剤配管(酸素管)、符号27はLNG弁、符号29はLNG供給設備、符号30は酸素弁、符号31は酸素供給設備、符号32は操作盤、符号35はLNG、符号36は酸素(純酸素)をそれぞれ示している。
【0016】
図1に示すように、ガス化炉1は、スラグホッパ2、灯油燃焼室3、コンバスタ4、リダクタ5、および後部熱交換器6を備えており、その後流にはチャー回収設備11が設けられている。
【0017】
スラグホッパ2には一定量のスラグホッパ水19が貯水されている。また、灯油燃焼室3には一本または二本のスラグ溶融バーナ装置23が設けられており、コンバスタ4にはコンバスタバーナ7およびチャーバーナ8が、リダクタ5にはリダクタバーナ9が、それぞれ複数本ずつ設けられている。そして、コンバスタ4内の下部にはスラグホール10が設けられている。
【0018】
後部熱交換器6は、クロスオーバ22によってリダクタ5と連結されている。また、後部熱交換器6の後流には、1個または複数個のサイクロン12、1個または複数個のポーラスフィルタ13、およびチャービン14を有するチャー回収設備11が配置されている。
【0019】
図示していない粉砕設備で数ミクロン〜数10ミクロンに粉砕された石炭が、熱負荷用石炭としてコンバスタバーナ7へ、ガス化用石炭としてリダクタバーナ9へ、それぞれ供給されるようになっている。また、チャーバーナ8には、ガス化炉1で生成されたチャー17が供給されるようになっている。
【0020】
図2に示すように、スラグ溶融バーナ装置23は、そのバーナ軸線37がスラグホール中心点(スラグホール10の下縁を形成する円の中心)38を通るように、シールボックス39を介して灯油燃焼室3の側壁面3aに取り付けられている。また、このスラグ溶融バーナ装置23の内部には、その長手方向に沿って燃料配管24(図3参照)および酸化剤配管25(図3参照)が延びている。
【0021】
また、図1に示すように、燃料配管24はLNG弁27および配管を介してLNG供給設備29に接続されている。一方、酸化剤配管25は、酸素弁30を介して酸素供給設備31と接続されており、これらLNG弁27および酸素弁30はそれぞれ、(例えば、中央操作室に配置された)操作盤32により制御されるようになっている。
【0022】
さて、図3に示すように、本実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置23は、外筒41と、内筒42と、後部チャンバー43と、前部チャンバー44とを備えている。
外筒41は、燃料配管24、酸化剤配管25、内筒42、および前部チャンバー44をその内部に収容する中空円筒状の部材であり、その先端(図3において左側の端)にはバーナチップ金物45が、その基端(図3において右側の端)には後部チャンバー43が取り付けられている。また、バーナチップ金物45の先端には、少なくとも1個(本実施形態では5個)の噴射孔(図示せず)を有するバーナチップ(図示せず)が、取付用キャップ46を介して取り付けられている。
【0023】
バーナチップ金物45とバーナチップとの間には、燃料配管24を介して供給されたLNG燃料35と、酸化剤配管25を介して供給された酸素36とを各々灯油燃焼室3内に噴出させる図示しないスプレイプレートが配置されており、バーナチップ金物45には、燃料配管24および酸化剤配管25の一端がそれぞれ接続(連結)されている。そして、スプレイプレートを通過したLNG燃料35と酸素36は、バーナチップの噴射孔を通って灯油燃焼室3内に噴射されて、スラグホール10に付着した溶融スラグ(図示せず)を着火源として着火し、火炎を形成することとなる。
【0024】
図3のIV−IV矢視断面図である図4に示すように、内筒42は、燃料配管24および酸化剤配管25をその内部に収容する中空円筒状の部材であり、図4および図5に示すように、その先端の内周側にはレジューサ47,48が取り付けられている。これらレジューサ47,48は、内筒42の一端から流れ出る冷却水の流路を狭めて、この部分を通過する冷却水の流速を速めるためのものであり、本実施形態では上側にレジューサ47が、下側にレジューサ48が配置されている。また、これらレジューサ47,48は、内筒42を外筒41に対して取り付けた際に、その前側(図3において左側)の端面と、バーナチップ金物45の後側(図3において右側)の端面との間に、所定の隙間ができるよう、内筒42に対して取り付けられている。さらに、内筒42の外周面には、冷却水に旋回流を与えながら冷却水を下流側に導く螺旋状のガイド49が形成されている。そして、図6に示すように、ガイド49の高さは、内筒42を外筒41に対して取り付けた際に、その端面(半径方向外側の周端面)と外筒41の内周面41aとの間に所定の隙間が形成されるように、すなわち、外筒41と内筒42との間に、ガイド49に沿った旋回流F1と、外筒41の内周面41aとガイド49の端面との間を通過するとともに、外筒41および内筒42の長手方向に沿った略直線的な流れF2とが形成されるように設定されている。
【0025】
図7に示すように、後部チャンバー43は、長手方向に沿って貫通する4つの穴(第1の穴50、第2の穴51、第3の穴52、および第4の穴53)を有する円筒状の部材であり、外筒41の基端に取り付けられている。第1の穴50は、その内部に酸化剤配管25が配置される穴であり、第2の穴51は、その内部に燃料配管24が配置される穴である。第3の穴52は、冷却水54を後部チャンバー43と前部チャンバー44との間に位置する外筒41内に導くための穴であり、第3の穴52の入口側には冷却水供給管55(図3参照)が接続(連結)されている。第4の穴53は、その入口側に接続(連結)された連絡管56(図3参照)を介して導かれた冷却水54を外部に導くための穴であり、第4の穴53の出口側には冷却水戻り管57(図3参照)が接続(連結)されている。
【0026】
図8に示すように、前部チャンバー44は、一端側(図8において右側)に縮径部44a、他端側(図8において左側)に拡径部44bを有するとともに、長手方向に沿って貫通する4つの穴(第1の穴58、第2の穴59、第3の穴60、および第4の穴61)を有する略円筒状の部材である。また、前部チャンバー44は、バーナチップ金物45と後部チャンバー43との間に位置する外筒41内に配置されて、外筒41の内部を先端側の空間S1(図3参照)と基端側の空間S2(図3参照)とに区画する(仕切る)部材でもある。前部チャンバー44は、拡径部44bの外周面と外筒41の外周面とが面一になるようにして外筒41に取り付けられている。一方、内筒42は、その外周面と縮径部44aの外周面とが面一になるようにして前部チャンバー44に取り付けられている。第1の穴58は、その内部に燃料配管24が配置される穴であり、第2の穴59は、その内部に酸化剤配管25が配置される穴である。第3の穴60は、冷却水54を内筒42内に導くための穴である。第4の穴61は、縮径部44aと拡径部44bとの間に、周方向に沿って形成された流路62を介して導かれた冷却水54を、拡径部44bの出口側に接続(連結)された連絡管56(図3参照)に導くための穴である。
【0027】
つぎに、図9から図12を用いて冷却水54の流れを説明する。
図9に示すように、冷却水54は、冷却水供給管55を介して、後部チャンバー43に形成された第3の穴52の入口側に導かれた後、第3の穴52を通って空間S2(より詳しくは、外筒41の内周面41a(図6参照)、後部チャンバー43の前側(図9において左側)の端面、および前部チャンバー44の後側(図9において右側)の端面で囲まれた空間)内に浸入する。
なお、空間S2内に配置された連絡管56、燃料配管24、および酸化剤配管25はそれぞれ、空間S2内に導かれた冷却水がその内部に浸入しないようにシールされている。
【0028】
空間S2内を通過した冷却水は、図10に示すように、前部チャンバー44に形成された第3の穴60を通って内筒42の内部空間(より詳しくは、内筒42の内周面、前部チャンバー44の前側(図10において左側)の端面、およびレジューサ47,48の後側(図10において右側)の端面で囲まれた空間)内に浸入する。
なお、内筒42の内部空間内に配置された燃料配管24および酸化剤配管25はそれぞれ、内筒42の内部空間内に導かれた冷却水がその内部に浸入しないようにシールされている。
【0029】
内筒42の内部空間内を通過した冷却水は、図11に示すように、レジューサ47,48の内周面とバーナチップ金物45との隙間、レジューサ47,48の前側の端面とバーナチップ金物45の後側の端面との隙間、およびレジューサ47,48の外周面と外筒41の内周面41a(図6参照)との間を通って外筒41と内筒42との間の空間内に浸入する。外筒41と内筒42との間の空間内に浸入した冷却水54は、図6に示すように、ガイド49に沿った旋回流F1と、外筒41および内筒42の長手方向に沿った略直線的な流れF2とになって下流側に流れていき、前部チャンバー44に形成された流路62を通って第4の穴61に導かれる。
なお、レジューサ47,48の外周面と外筒41の内周面41aとの間を通って外筒41と内筒42との間の空間内に浸入した冷却水は、全て前部チャンバー44に形成された流路62を通って第4の穴61に導かれるようになっている。
【0030】
前部チャンバー44に形成された第4の穴61を通過した冷却水は、図12に示すように、連絡管56を介して後部チャンバー43の第4の穴53に導かれた後、冷却水戻り管57を介して外部に排出される。
【0031】
本実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置23によれば、少なくとも灯油燃焼室3内に挿入される部分が、外筒41と内筒42とを有する二重管構造とされ、かつ、内筒42の内部を通って先端側(より詳しくは、バーナチップ金物45および取付用キャップ46の側)に供給され、先端(より詳しくは、バーナチップ金物45、バーナチップ、および取付用キャップ46)を冷却した冷却水が、内筒42の流路面積よりも小さい流路面積を有する外筒41と内筒42との間の空間を通って基端側(より詳しくは、前部チャンバー44の側)に戻される。このとき、外筒41と内筒42との間の空間内に浸入した冷却水54は、その流速が高められるとともに、図6に示すように、ガイド49に沿った旋回流F1と、外筒41および内筒42の長手方向に沿った略直線的な流れF2とになって下流側に流れていくこととなる。
これにより、外筒41の内周面41aが蒸気の膜で覆われ、熱伝達率が低下して外筒41の管壁温度が急上昇する現象(DNB:Departure of Nuclear Boiling)を防止することができ、外筒41の熱による損傷を防止することができる。
また、バーナ先端部での冷却効率の斑による冷却不足に起因したバーナの焼損を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置23によれば、先端における流路面積が(すなわち、レジューサ47,48の内周面とバーナチップ金物45との間の流路面積、レジューサ47,48の前側の端面とバーナチップ金物45の後側の端面との間の流路面積、およびレジューサ47,48の外周面と外筒41の内周面41aとの間の流路面積がそれぞれ)、内筒42の流路面積よりも小さくなるように設定されているので、先端(より詳しくは、バーナチップ金物45、バーナチップ、および取付用キャップ46)における冷却水の流速を高めることができ、先端を効率よく均一に冷却することができて、先端の熱による損傷を防止することができる。
【0033】
なお、上述した実施形態において、スラグ溶融バーナ装置23の、灯油燃焼室3内に挿入される部分が、灯油燃焼室3に対して進退可能に構成されているとさらに好適である。すなわち、スラグ溶融バーナ装置23を使用しない時(不使用時)には、スラグ溶融バーナ装置23の、灯油燃焼室3内に挿入される部分が、灯油燃焼室3内から引き抜くことができるように構成されているとさらに好適である。
これにより、スラグ溶融バーナ装置23の、灯油燃焼室3内に挿入される部分の熱による損傷をさらに防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置を具備した二段噴流床ガス化炉とチャー回収設備を備えた石炭ガス化コンバインドサイクル発電プラントの一部を示す系統図である。
【図2】図1中のスラグ溶融バーナ装置付近を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置の概略断面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置の先端部を拡大して示す斜視図である。
【図6】外筒と内筒との間を流れる冷却水の流れ状態を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置の後部チャンバーを拡大して示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置の前部チャンバーを拡大して示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置内を流れる冷却水の流れ状態を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置内を流れる冷却水の流れ状態を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置内を流れる冷却水の流れ状態を説明するための図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るスラグ溶融バーナ装置内を流れる冷却水の流れ状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
1 二段噴流床石炭ガス化炉
4 コンバスタ
5 リダクタ
10 スラグホール
23 スラグ溶融バーナ装置
41 外筒
42 内筒
49 ガイド
54 冷却水
F1 旋回流
F2 略直線的な流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバスタに気体搬送された微粉炭を燃焼させ、リダクタでその燃焼ガス中に同様に気体搬送された微粉炭を投入、乾留してガス化するとともに、不燃分を溶融スラグとしてスラグホールから排出する二段噴流床石炭ガス化炉のスラグ溶融バーナ装置であって、
前記二段噴流床石炭ガス化炉内に位置する先端部が、外筒と内筒とを有する二重管構造とされ、かつ、前記先端部を冷却する冷却水が、前記内筒の内側を通って供給され、前記先端部を冷却した後、前記外筒と前記内筒との間に形成された空間内を通って基端側に戻されるように構成されているとともに、
前記外筒と前記内筒との間に形成された空間の流路面積が、前記内筒の内側に形成された流路面積よりも小さくなるように構成されており、前記外筒と前記内筒との間に形成された空間を通って基端側に戻される冷却水に、前記内筒の外周面に形成されたガイドに沿った旋回流と、前記外筒および前記内筒の長手方向に沿った略直線的な流れとが付与されるように構成されていることを特徴とするスラグ溶融バーナ装置。
【請求項2】
前記先端部の先端における流路面積が、前記内筒の内側に形成された流路面積よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスラグ溶融バーナ装置。
【請求項3】
前記二段噴流床石炭ガス化炉内に位置する先端部が、前記二段噴流床石炭ガス化炉に対して進退可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスラグ溶融バーナ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のスラグ溶融バーナ装置を具備してなることを特徴とする二段噴流床石炭ガス化炉。
【請求項5】
請求項4に記載の二段噴流床石炭ガス化炉を具備してなることを特徴とする石炭ガス化コンバインドサイクル発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−91193(P2010−91193A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261946(P2008−261946)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(504437018)株式会社 クリーンコールパワー研究所 (6)
【出願人】(000241957)北海道電力株式会社 (78)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000242644)北陸電力株式会社 (112)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】