説明

スルホン酸誘導体を含んで成る医薬組成物

化学式(I)のナフタレンスルホン酸又はキノリンスルホン酸であって、式中、Aは、N、又はCR8の化学式群であり、ここでR8は、互いに独立して、H、OH、NR1011であり、ここでR10及びR11は、H、又はC1−C6アルキル又は化学式NH−CO−R12基を表し、ここでR12はC1−C6アルキル又はC6−C10アリールであり;R1及びR2は、互いに独立して、H、又はSO39であり、ここでR9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;R3は、H、又はOHであり;そして、R4、R5、R6、及びR7は、互いに独立して、H、NR1011、又はNH−CO−R12基を表し;但し、(i)R1又はR2の少なくとも1つがSO39であり、そして(ii)R4、R5、R6、又はR7の少なくとも1つは、NR1011、又はNH−CO−R12基である、あるいはこれらの医薬組成物的に受容可能な塩;及び医薬的に受容可能な賦形剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのナフタレンスルホン酸又はキノリンスルホン酸誘導体を含んで成る医薬組成物、並びにこれらの治療的及び/又は診断的適用に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性及び塩基性線維芽細胞成長因子(それぞれ、aFGF及びbFGF)は、生化学及び生物学特性が極めて類似し、全ての分裂促進因子ファミリー(FGFs)の系列であると考えられる2つのポリペプチドである。FGFは、一般的に、ヘパリン及びヘパラン硫酸のグリコシド部位に強力な親和性を示し、細胞表面上のこれらの特異的なチロシンキナーゼレセプターを認識するため、及び細胞分裂シグナルにおけるこれらの存在を伝達するために、いずれかのこれらのポリスルフェートに対する結合がFGFに必要とされることが示されている。
【0003】
FGFsは極めて重要な血管形成プロモータであり、そして不適当なFGF発現は癌及び他の種類の症状の発達に寄与し得る。血管形成は、ある正常な生理状態、例えば、創傷治癒、胎児及び胚の発達、並びに子宮内膜及び胎盤における黄体の形成において起こる組織又は器官中の新しい血管の形成により特徴づけられるプロセスである。更に血管形成はある病理状態、例えば、癌、糖尿病性網膜症、関節リウマチ等の病原的な基礎を構成する。従って、血管形成、特に、FGF阻害活性は、これらの疾患、特に、癌、そして特には固形腫瘍の薬理的治療を形成することができると信じられる。固形腫瘍が悪性になると、これらは成長に必要な供給物を受け取ることにより高密度な血管ネートワークを誘導し、そしてこれらの異化反応生成物を除去する。当該腫瘍の崩壊は、栄養素の不足及び自家中毒症の原因となる、当該血管ネットワークの形成を阻害することにより起こる。
【0004】
血管形成の影響に追加して、FGF活性化阻害は、抗腫瘍治療において他の潜在的に正の影響を有する。これらの血管形成活性に関わらず、FGFは直接的に多くの種類の腫瘍細胞の増殖を誘導する[例えば、Bieker R., et al (2003) Cancer Res. 63, 7241-7246; Polnaszek N et al, (2003) Cancer Res. 63, 5754-5760 ; Kono K., et al (2003) J Neuroocol 63,163-171, Rosini P., et al (2002) Prostate"53, 310-321, Yura Y., (2001) J. Oral. Pathol. Med. 30,159-167] 。また、FGF活性は抗癌剤に対する腫瘍細胞の耐性に関係し、FGFの不活性化により、上記耐性を戻すことが可能であることが示されている[Song S. Et al., (2000) PNAS 97, 8658- 8663, Pardo OE., et al, (2003) Mol. Cell. Biol., 23,7600-7610, Zhang Y et al., (2001) J Pharmacol. Exp. Ther. 299, 426-433, Song S et al., (2001) Cancer Res. 61, 6145-6150 ] 。
【0005】
臨床的な開発の異なる段階における腫瘍学のための多くの抗血管形成剤 [Krueger et al. (2001) Seminars in Oncology 28,570-576]、正の血管制御因子の影響に対抗するために生物が使用する、考慮すべき数のポリペプチドが存在する[Hagedorn, M. & Bikfalvi, A. (2000) Crit. Rev. Onc. Hemat. 34,89-110]。しかしながら、上記ポリペプチドを、考慮すべき低分子量を有する他の化合物と比較した場合、これらの薬理的な弱点が明らかにされる。
【0006】
スラミンとして知られるポリスルホン酸化ビナフチル尿素は、潜在的な抗血管形成及び抗癌剤として考えられ[Manetti, F., et al. (2000) Curr. Pharm. Des. 6,1897-1924]、これは、少なくともある程度、FGF及びこれらのチロシンキナーゼレセプターの場合のように、多くの成長因子とこれらの膜レセプターの相互作用を中断するこれらの能力によるものである。ヘパリンはaFGF/スラミン複合体を破壊し、そしてこれらのポリスルホン酸化尿素の影響に対抗することが示されてきたが、スラミンはFGFヘパリン結合部位を遮断することにより作用すると考えられる。
【0007】
抗血管形成及び抗癌化合物の他の群は、スルホン酸ビナフタレンジスタマイシンAの合成誘導体型である、スラジスタ(suradista)により形成される。これらの化合物は、FGFと密接に相互作用し、これらのポリペプチドの細胞膜チロシンキナーゼレセプターの結合を阻害し、そして、生体内においてFGF誘導血管形成及び新血管新生を抑制する。
【0008】
言い換えると、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸(1,3,6−NTS)が、スラミン及びスラジスタにより、aFGF分裂促進活性阻害の最小モデルを構成することが発見されている[Lozano, R. M., et al. (1998) J. Mol. Biol. 281, 899-915] 。上記化合物(1,3,6−NTS)は、正の結果を伴い試験管内及び生体内の両方において、aFGF誘導血管形成及びグリア細胞腫増殖阻害因子として試験されおり[Lozano, R. M., et al. (1998) J. Mol. Biol. 281,899-915 ; Cuevas, P., et al. (1999) Neurol. Res. 21, 191-194; Cuevas, P., et al. (1999) Neurol. Res. 21, 481-487 ; Cuevas, P., et al. (1999) Neurosci. Lett. 275,149-151]、新しい抗血管形成化合物の開発の新規な潜在的な経路を示唆する。Lozanoらの研究(上述)もまた、芳香環当たり、減少した数のスルホン酸基を含むあるナフタレン誘導体、特には、1,5−ナフタレンジスルホン酸(1,5−NDS)及びナフタレンスルホン酸(1−NMS)が、NTSよりもaFGF分裂促進活性阻害因子として作用したことを明らかに示した。しかしながら、これらの化合物は、これらがaFGF分裂促進活性を阻害する濃度において明らかな毒性を示した。
【0009】
従って、FGF活性阻害化合物、好ましくは上記阻害能を有し、且つ低い細胞毒性しか有さない化合物を発見する必要性が未だ存在する。
【発明の開示】
【0010】
本発明発明の発明者は、化学式(I)のあるスルホン酸誘導体、特に、スルホ基/スルホン酸基、及び任意的に水素結合を形成できる極性基(このような極性基は、例えば、芳香環のある位置に存在するアミン基である)を含んで成るあるナフタレンスルホン酸又はキノリンスルホン酸誘導体が、培養中の線維芽細胞におけるaFGF誘導性分裂促進活性阻害因子並びに血管形成阻害因子であることを観察し、そしてこれらは更に試験動物中で毒性の兆候を示すことなく、動物試験において腫瘍形成を阻害する。従って、上記化合物は、癌の治療において、特に、固形腫瘍の治療において潜在的に有用である。また、同様に、上記スルホン酸誘導体は、他の非腫瘍血管形成依存型疾患、例えば、関節リウマチ、子宮内膜症、肥満症、動脈硬化、再狭窄、乾癬等の治療において潜在的に有用である。
【0011】
従って、本発明のある観点は、少なくとも1つの上記ナフタレンスルホン酸又はキノリンスルホン酸誘導体と一緒に医薬的に受容可能な賦形剤を含んで成る医薬組成物に関する。
【0012】
他の観点において、本発明は、癌の治療、非腫瘍血管形成依存型疾患、例えば、関節リウマチ、子宮内膜症、肥満症、動脈硬化、再狭窄、乾癬等の治療のための医薬製品の調製における上記ナフタレンスルホン酸又はキノリンスルホン酸誘導体の使用に関する。
【0013】
他の追加的な観点において、本発明は、化学療法又は放射線治療に対する癌細胞の感受性を増大させるための医薬製品の調製における化学式(I)の誘導体の使用、並びに、FGF生物活性に関係する疾患又は状態の診断キットの調製におけるこれらの使用に関する。
【0014】
いくつかの2−ナフタレンスルホン酸誘導体が知られており、例えば、5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(Aldrich)は、染色産業において使用される。上記5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩 [J. Chem. Soc. 3172 (1959) ; Helv. Chim. Acta 45, 1608 y 1611 (1962)]、並びに5−アセチルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム [J. Med. Chem. 38 (8), 1344-1354 (1995) ; J. Med. Chem. 40 (6), 920-929 (1997)] も知られている。
【0015】
発明の詳細な説明
ある観点において、本発明は以下を含んで成る医薬組成物に関する:
(i)少なくとも1つの化学式(I)の化合物
【化1】

式中:
Aは、N、又はCR8の化学式群であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、SO39、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12、又はC1−C6アルキルを表わし;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールである;
但し:
(a)R1〜R8の少なくとも1つが、SO39であり、そして、
(b)残りのR1〜R8の少なくとも1つが、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基であり、
ここで、R9、R10、R11、及びR12は、前述の意味を有する;
又は、これらの医薬的に受容可能な塩若しくはプロドラッグ;及び、
(ii)少なくとも1つの医薬的に受容可能な賦形剤。
【0016】
本明細書において使用される「C1−C6アルキル」の語は、飽和した、直鎖又は分岐鎖の炭素原子が1〜6の炭化水素由来のラジカル、例えば、メチル、エチル、イソプロピル等を意味する。
【0017】
本明細書において使用される「C6−C10アリール」の語は、炭素原子が6〜10の芳香族炭化水素由来のラジカル、例えば、フェニル、ナフチル等を意味する。
【0018】
「医薬的に受容可能な塩又はプロドラッグ」の語は、医薬形態において使用でき、そして生体内において、化学式(I)の化合物を直接的又は間接的に供することができるいずれかの塩、エステル、アミド、溶媒和化合物、水和物、多形形態等を含む。当該塩の性質は、医薬的に受容可能である限り重大な意味を持たない。
【0019】
化学式(I)の化合物の塩は、当業者に周知な慣習的な方法により、適当な酸又は塩基と化学式(I)の化合物を反応させることにより、有機若しくは無機酸、又は塩基から得ることができる。
【0020】
上記プロドラッグは、当業者に周知な方法により、塩基又は触媒の存在下において、化学式(I)の化合物とカルボン酸、無水物又はハロゲン化アシルを反応させることにより、例えば、エステルに変換した遊離ヒドロキシル基、又はアミドに変換したアミノ基から得ることができる。
【0021】
化学式(I)の化合物中に含まれるものは、ナフタレンスルホン酸誘導体[AがCR8である化学式(I)の化合物]及びキノリンスルホン酸誘導体[Aが窒素である化学式(I)の化合物]である。
【0022】
特別の態様において、化学式(I)の化合物は、2−NMS系(2−ナフタレンスルホン酸誘導体)に属するナフタレンスルホン酸誘導体であり、式中:
Aは、CR8であり;
1は、H、又はC1−C6アルキルであり;
2は、SO39であり;
3は、H、OH、又はC1−C6アルキルであり;
4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基、又はC1−C6アルキルを表し;
9はH、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールであり;
但し、R4、R5、R6、R7、又はR8の少なくとも1つは、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12であり、ここでR10、R11、及びR12は前述の意味を有する。
【0023】
2−NMS系の好ましい化合物は、化学式(I)の化合物を含み、式中:
Aは、CR8であり、ここでR8はH又はOHである;
1は、Hであり;
2は、SO39であり、ここでR9はH又はナトリウムである;
3は、Hであり;そして、
4、R5、R6、及びR7は、互いに独立して、H、OH、OCH3、COOH、NH2、NHCOCH3、NHCOC65、NHCH3、又はN(CH32を表し;
但し、R4、R5、R6、又はR7の少なくとも1つは、OH、OCH3、COOH、NH2、NHCOCH3、NHCOC65、NHCH3、又はN(CH32である。
【0024】
2−NMS系の化合物の説明例は以下を含む:
5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム
5−アセチルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム
5−ベンゾイルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム
8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム
8−アセチルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、及び、
4−ヒドロキシ−6−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム。
【0025】
当該2−NMS系中、5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、5−アセチルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、及び4−ヒドロキシ−6−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム化合物が特に好ましく、そして特に5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウムが好ましく、これらが強力なaFGF誘導性分裂促進活性阻害因子、aFGF誘導血管形成活性阻害因子であること、更にこれらは培養中の線維芽細胞に毒性がないことが示された。
【0026】
他の特別な態様において、化学式(I)の化合物は、1−NMS系(1−ナフタレンスルホン酸誘導体)に属するナフタレンスルホン酸誘導体であり、式中:
Aは、CR8であり;
1は、SO39であり;
2は、H、又はC1−C6アルキルであり;
3は、H、OH、又はC1−C6アルキルであり;
4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基、又はC1−C6アルキルを表し;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールであり;
但し、R4、R5、R6、R7、又はR8の少なくとも1つは、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12であり、ここでR10、R11、及びR12は前述の意味を有する。
【0027】
1−NMS系の好ましい化合物は、化学式(I)の化合物を含み、式中:
Aは、CR8であり;
1は、SO39であり、ここでR9はH又はナトリウムである;
2は、Hであり;
3は、Hであり;そして、
4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、OH、OCH3、COOH、NH2、NHCOCH3、NHCOC65、NHCH3、又はN(CH32を表し;
但し、R4、R5、R6、R7又はR8の少なくとも1つは、OH、OCH3、COOH、NH2、NHCOCH3、NHCOC65、NHCH3、又はN(CH32である。
【0028】
1−NMS系の化合物の説明例は以下を含む:
4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、
4−アセチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、
4−ベンゾイルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、
5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、及び、
4−アミノ−3−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム。
【0029】
他の特別な態様において、化学式(I)の化合物は、キノリンスルホン酸誘導体であり、式中:
Aは、Nであり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、CO39、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12、又はC1−C6アルキルを表し;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールである;
但し:
(a)R1〜R8の少なくとも1つが、SO39であり、そして、
(b)残りのR1〜R8の少なくとも1つが、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基であり、
ここで、R9、R10、R11、及びR12は前述の意味を有する。
【0030】
本発明の組成物は1又は複数の化学式(I)の化合物を含んでよい。本発明の医薬組成物は、好ましくは、5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、5−アセチルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、5−ベンゾイルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、及びこれらの混合体から選択される化学式(I)の化合物を含んで成る。
【0031】
化学式(I)の化合物は、商業的に、又は慣習的な方法(実施例4)のいずれかにより得ることができる既知の生成物である。
【0032】
化学式(I)の化合物は、試験管内及び生体内の両方においてFGF活性を阻害する能力を有し、FGFは、血管ネットワーク形成を誘導するための、並びに移植された腫瘍により誘導される血管形成を阻害するための重要な物質である。上記化学式(I)の化合物は、動物の試験において、腫瘍形成を阻害する能力を有する。特に、ある化学式(I)の化合物は、抗血管形成活性と一緒に低い細胞毒性を有し、このため癌の治療、特に固形腫瘍の治療の候補として、及び非腫瘍性血管形成依存型疾患の候補として極めて適当である。いずれかの理論に結びつけることを意図するわけではないが、化学式(I)の化合物の化合物は、固形腫瘍が悪性になると誘導される血管ネットワークの形成を防止し、これにより、栄養分の不足及び自家中毒、更に腫瘍細胞の増殖を直接阻害することが原因で腫瘍の崩壊を引き起こすと信じられる。
【0033】
いくつかの試験は、培養中の線維芽細胞においてaFGF誘導性分裂促進活性を阻害するための(実施例1)、並びに生体内においてaFGF及びbFGF誘導血管形成を阻害するための(実施例2)、そして腫瘍細胞の移植により動物中で誘導される血管形成を阻害するための(実施例3)化学式(I)の化合物の能力を明らかに示す。
【0034】
本発明により供される医薬組成物は、治療的有効量の少なくとも1つの化学式(I)の化合物と、一緒に少なくとも1つの医薬的に受容可能な賦形剤を含んで成る。上記医薬組成物は、動物、好ましくは人の体の内部又は表面において投与及び/適用するために有用である。
【0035】
上記医薬組成物の調製における化学式(I)の化合物の使用は、本発明の更なる観点である。
【0036】
化学式(I)の化合物は、化学式(I)の化合物と動物の体のその作用部位とを接触させるいずれかの方法により、癌、特に、固形腫瘍、あるいは、非腫瘍血管形成依存型疾患、例えば、関節リウマチ、子宮内膜症、肥満症、動脈硬化、再狭窄、乾癬の治療のために投与することができる。投与しなければならない化学式(I)の化合物の治療的有効量、並びに、上記化学式(I)の化合物及び/又は本発明の医薬組成物での病理状態の治療のための投与量は、治療する疾患、年齢、患者の状態、疾患の重篤度、使用される化学式(I)の化合物の投与方法及び頻度等を含むいくつかの因子に依存するであろう。
【0037】
本発明により供される化学式(I)の化合物を含む医薬組成物は、適当であると考えられるいずれかの投与形態、例えば、固体又は液体として提供することができ、そして、これらはいずれかの適当な方法、例えば、経口的、非経口的、直腸的、又は局所的に投与することができ、いずれにしろ、これらは所望される投与形態の形成のために必要である医薬的に受容可能な賦形剤を含むであろう。医薬製品及びこれらを得るために必要な賦形剤を投与するための異なる投与形態の概説は、例えば、"Tratado de Farmacia Galenica", C. Fauli i Trillo, 1993, Luzan 5, S. A. Ediciones, Madrid において見つけることができる。
【0038】
上記化学式(I)の化合物は、癌、特に固形腫瘍、例えば、乳癌、前立腺癌等の治療のための医薬製品の調製において使用することができる[Rosti G., et al. (2002) Crit. Rev. Oncol. Hemato. 41, 129-240]。あるいは、化学式(I)の化合物は、他の血管形成依存型疾患、例えば、皮膚病、関節リウマチ、子宮内膜症、肥満症、動脈硬化、再狭窄、乾癬等の治療のための医薬製品の調製において使用することができる。
【0039】
他の活性剤、例えば、抗癌剤は、化学式(I)の化合物と一緒に使用することができる。異なる活性剤は、単一の製剤若しくは複数の製剤において同時に、又は継続的に投与することができる。
【0040】
化学療法、又は放射線治療に対する癌細胞の感受性を増大するための医薬製品の調製における化学式(I)の誘導体の使用、並びにFGF生物活性に関係する疾患又は状態の診断するためのキットの調製におけるこれらの使用は、本発明の他の更なる観点である。
【0041】
以下の実施例は本発明を説明し、そしてその範囲を制限するものとして考慮してはならない。
【実施例】
【0042】
実施例1
aFGF誘導性分裂促進活性阻害
Lozanoらの研究[Lozano, R. M., et al. (1998) J. Mol. Biol. 281,899-915] は、あるナフタレンスルホン酸化合物、例えば、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸(1,3,6−NTS)、1,5−ナフタレンジスルホン酸(1,5−NDS)、及び1−ナフタレンスルホン酸(1−NMS)が、aFGF誘導性分裂促進阻害因子であることを明らかに示した。1−NMSは1,3,6−NTS及び1,5−NDSよりもより潜在的な阻害因子である。しかしながら、1−NMS及び1,5−NDSは、これらがaFGF誘導性分裂促進活性を阻害する濃度においては毒性である。
【0043】
このたび、より潜在的な薬理的特性を伴う他のアリールスルホン酸化合物を発見する目的のため、異なる立体的容積又は負荷を伴う一定の官能基を異なる芳香族化合物の異なる位置に置くことによる反復性の試験誤差プロセスに従い、aFGF活性化因子の存在下における培養中の線維芽細胞において、これらのaFGF誘導有糸分裂誘発阻害活性を試験した。aFGF誘導性分裂促進活性を阻害する上記アリールスルホン酸化合物の検索において、出発物質として使用された物質は、1−NMSと称される系を生じた1−ナフタレンスルホン酸(1−NMS)及び2−NMSと称される系を生じた2−ナフタレンスルホン酸(2−NMS)であった。1−NMS、2−NMS等は、aFGF誘導性分裂促進活性を阻害し(より低い濃度においてそのように行うが)、そしてaFGF誘導性分裂促進活性を阻害する濃度範囲において静止状態の線維芽細胞に毒性である。また、他のアリールスルホン酸化合物も試験した(表1を参照のこと)。
【0044】
1.1 試験化合物
表1は全ての試験した化合物を挙げ、一方これらの調製は実施例4において説明する。
表1
試験化合物
【表1】

【0045】
1.2 aFGF誘導有糸分裂誘発阻害試験
上記aFGFタンパク質の分裂促進活性を評価するために通常使用される細胞である、Balb/c 3T3 線維芽細胞[ATCC CRL−1658]の細胞培養におけるaFGFの分裂促進応答を慣習的な方法により評価した[Lozano, R. M., et al. (1998) J. Mol. Biol. 281, 899-915]、手短には、aFGF(0.32ng/mL)の不存在下又は存在下のミオイノシトールヘキサスルフェート(MIHS)(20μg/mL)を補充した最小培地で60時間培養中の線維芽細胞と接触する試験化合物の濃度を上昇させることからなる[Zazo M., Lozano, R. M., Ortega S., Varela J., Diaz-Orejas R., Ramirez J. M., Gimenez-Gallego G., in Gene (1992) 113,231-238により開示された139アミノ酸残基のaFGFが使用された]。
【0046】
1.3 結果
得られた結果は図1において示され、全ての試験化合物のための培養中の線維芽細胞におけるaFGF誘導性分裂促進阻害試験の結果(○)、それと一緒に静止状態の線維芽細胞のための上記化合物の毒性分析(□)を要約する。
【0047】
手短には、上記結果は、実質的に全ての試験化合物が、1mM強の濃度において進行的にaFGF誘導有糸分裂誘発を阻害することを明らかに示す(試験化合物の濃度の増加として示差吸光度ユニット(○)の減少を参考のこと)。また、上記分裂促進試験において、浮遊細胞又は他の細胞の破裂の兆候の不存在は、多くの試験化合物がaFGFの不存在下又は存在下において線維芽細胞に毒性ではないことを示す。言い換えると、試験化合物によるaFGF誘導有糸分裂誘発阻害は、ヘパリン濃度を上昇させることにより補償することができ(aFGF分裂促進活性化因子)(データは示さない)、上記化合物が、タンパク質とその活性化因子間の結合を遮断することにより作用するaFGF誘導性分裂促進活性阻害因子であることが断定できる。
【0048】
より特別には、1−NMS系に関して、C−1、C−2、C−4、C−6、及びC−7化合物は、aFGF分裂促進活性を阻害する濃度範囲において、これらは静止状態の線維芽細胞において一定の毒性効果を示すが、aFGF誘導性分裂促進活性阻害因子であることを観察することができる。化合物C−7は最も低いIC50を示すものであるあるが、0.2mM以上の濃度において逆の効果が観察される(これは、aFGFの不存在下において培養した静止状態の線維芽細胞の増殖が優位に増加することである)。化合物C−3及びC−5は、試験した濃度範囲中で、低いaFGF誘導有糸分裂誘発阻害因子活性を示すが、上記濃度範囲中で静止状態の線維芽細胞に毒性ではない。
【0049】
2−NMS系に関して、化合物C−8が、化合物C−1よりも低い濃度においてaFGF誘導性分裂促進活性を阻害することが観察される;しかしながら、また、aFGF誘導性分裂促進活性を阻害する濃度範囲において静止状態の線維芽細胞に毒性である。また、化合物C−12及びC−13は、有効なaFGF誘導有糸分裂誘発活性阻害因子であるが、これらは、aFGFの不存在下ですら高い有糸分裂誘発因子活性を有する。しかしながら、当該最後の効果は、2番目に優れたIC50値を有する化合物C−9において生じず、少なくともaFGF誘導性分裂促進活性を阻害する濃度範囲において観察された静止状態の線維芽細胞に対する化合物C−1及びC−8に説明した毒性効果もない。C−9よりもやや低い阻害因子活性を有する他の2つの化合物が更に明らかにされ、具体的には化合物C−10及びC−17であり、C−9同様、静止状態の線維芽細胞に非侵害性であった。化合物C−15及びC−16はaFGF誘導性分裂促進活性阻害因子であり、試験濃度範囲中では静止状態の線維芽細胞に非侵害性である。化合物C−11、C−14及びC−18もまた、aFGF誘導性分裂促進活性阻害因子であるが、化合物C−14は、試験濃度範囲中で静止状態の線維芽細胞において一定の毒性効果を示す。化合物C−19は、静止状態の線維芽細胞において一定の腫瘍化効果を示す。化合物C−9の阻害因子活性IC50は、265μMであり、1,3,6−NTSの2オーダー以上優り [Lozano, R. M., et al. (1998) J. Mol. Biol. 281, 899-915] 、そして、マウス中の慣習的な血管形成試験により(実施例2)、そして動物の腫瘍形成の阻害因子として(実施例3)、生体内における血管形成阻害因子としての使用を評価するために選択された。
【0050】
化合物C−20、C−22、及びC−24は、試験濃度においてaFGF誘導有糸分裂誘発阻害因子活性をほとんど示さなかったが、これらは、静止状態の線維芽細胞に非侵害性であった。化合物C−23は潜在的なaFGF誘導性分裂促進活性阻害因子であるが、aFGF誘導性分裂促進活性を阻害する濃度範囲中で静止状態の線維芽細胞において毒性効果を示す。化合物C−21及びC−25は、静止状態の線維芽細胞において一定の腫瘍化効果を示す。
【0051】
得られた結果は、血管形成において、アリールスルホン酸誘導体、好ましくはナフタレンスルホン酸誘導体の潜在的な薬理的な適用可能性を改善する立体化学ガイドライン系を確立することを許容し、特に:
a)2−NMS系誘導体は一般的に1−NMS系誘導体よりも潜在的なaFGF誘導性分裂促進活性阻害因子であるため、スルホン酸基は、好ましくは、ナフタレンの2位に位置しなければならない。
b)2−NMS系誘導体中、ナフタレン環の5又は6位にアミノ酸を含むものは、より優れたaFGF誘導性分裂促進活性阻害因子である(それぞれ、C−14及びC−18に対するC−9及びC−17を参照のこと);そして、
c)小アミドによるアミノ基の置換は、実質的に阻害因子活性を変化しないため(C−10に対するC−9を参照のこと)、5位に存在する官能基の大きさは、一定の関連性を有するようである;しかしながら、かさ高いアミドを導入すると、有意な減少が観察される(C−11及びC−13に対するC−9を参照のこと)。
【0052】
ナフタレン環は、ほとんどの適当な阻害因子の核を構成するようであるが、2位においてスルホン酸基を有し、そして5又は6位にアミン基を有するキノリンもまた使用できることが予想される。
【0053】
化合物C−7は、最も優れたaFGF誘導性分裂促進阻害因子活性を示すが、静止状態の線維芽細胞に毒性であるため、前述のルールに対して例外を構成する。
【0054】
実施例2
マウスにおける血管形成阻害試験
血管形成阻害因子としてC−9化合物を評価するために、マウスにより標準的な血管形成試験を行った。
【0055】
重さ25±4gの病原体除去 C57/BI/6 マウス(Charles River, Spain)が使用された。当該動物は、調節された温度及び湿度状態下においてプラスチックケージ中で飼育した;これらは水及び食物を自由に摂取し、そして12時間の明るさと暗さの日程が保たれた。NIH及び欧州連合の動物福祉におけるガイドラインは細心に従った。
【0056】
10mm長の無菌ゼラチンスポンジキューブ(Curaspon Dental, Clinimed Holding, Zwanenburg, Holland)を、腹腔内麻痺を誘導した後(Cuevas, P., et al. (1999) Neurol. Res. 21, 191-194)、マウスの背中の皮下に移植した。当該動物を2グループに分けた:グループA(n=10):29μg/mLのヘパリンを含む200μLのリン酸バッファー食塩水(PBS)を装填したスポンジを移植された動物により形成される;及び、グループB(n=40):10μg/mLのaFGFを含むグループAと同じ溶液で浸漬したスポンジを移植された動物により形成される。皮下嚢にスポンジを移植した後、皮膚を縫合した。グループBのマウスは、外科的処置から24時間後に200μLのPBDの腹腔内注射により、それぞれ0.008、0.08、0.8、及び8mg/kgの化合物C−9を与えた4つのグループ(n=10)にランダムに分けた[Pesenti, E., et al. (1992) Brit. J. Cancer 66, 367-372 ; Cuevas, P., et al. (1999) Neurol. Res. 21,191-194]。全ての手順は無菌条件下で行った。
【0057】
血管形成を評価するために、移植から7日後にマウスを再び上述のように麻痺させ、そして上記のスポンジを摘出し、慣習的方法[Cuevas, P., et al. (1999) Neurol. Res. 21,191-194] により、組織実験を行うために処置した。顕微鏡に接続した形態計測コンピュータープログラムにより新血管新生を定量化した。スポンジ中の新たな血管の成長を、赤血球を含む表面積の測定により評価した。新血管新生は、10倍の拡大率で3つの異なるセクションの4つの予定した視野において分析した。統計学的分析は生徒のt−試験を使用して行った。
【0058】
図2及び3は、C−9で処置したマウスに皮下的に移植したゼラチンスポンジ中のaFGFにより誘導された新血管新生阻害を示す。C−9化合物の異なる投与量での面積単位当たりの新たな血管の数の算出は、新血管新生阻害がすでに、0.008、0.08mg/kgを受けたマウスにおいて評価可能であり、そして0.8mg/kg以上の投与量では実質的に完全であることを明らかに示した。最後の当該データは、C−9が、スラミン及び1,3,6−NTSよりも考慮すべき有効な新血管新生阻害因子であることを明らかに示す。なぜなら、これらの最後2つの場合、約200mg/kgの濃度が、実質的に新血管新生阻害に達するために必要とされるようであるからである[Pesenti, E., et al. (1992) Brit. J. Cancer 66, 367-372 ; Cuevas, P., et al. (1999) Neurol. Res. 21,191-194]。aFGFをbFGFで置き替えた場合、同等の結果が得られた(データ無し)。試験された最も高いC−9濃度は、上記動物中いずれかの毒性死、又は変化の兆候を生じず、体重の変化も起こさなかった。
【0059】
実施例3
移植腫瘍での動物中の血管形成及び腫瘍成長阻害
3.1 アルビノラビットでの試験
アルビノニュージーランドラビット(3±0.5kg、雄及び雌同数)を使用し、そして、5μLのグリア細胞腫C6細胞懸濁液[ATCC CCL−107]を手術用顕微鏡を使用して10μLのハミルトンシリンジで上皮下的に角膜に注射して移植した。当該注射は、角膜の角膜縁から2mmにおいて行った。同時に、試験する化合物(C−9)、又は生理食塩溶液(コントロール)の継続的な注入を保証するために、浸透圧ミニポンプを頚部中に皮下移植した。カテーテルは、当該溶液を0.2mg/hの一定速度で強膜へと誘導した。このように、約0.003mg/mLの試験化合物又は生理食塩水溶液の濃度が角膜に維持されることが計算される。処置は14日間維持された。当該角膜を、各処置後、各実験の最後、及び各処置後の定時において除去し、そして組織実験のために処置した。
【0060】
極めて正のアポトーシス指数(アポトーシスは処置の日数で増加する)、及び極めて減少した角膜の血管新生面積(処置していない動物との比較において)が観察された。顕微鏡観察により、以下を明らかとすることができた:より少ない数のグリア細胞腫C6細胞、より多い数のアポトーシス体、処置動物での破壊された血管の存在及びアポトーシスの内皮核の存在。
【0061】
3.2 ラットでの試験
実施例3.1において説明したものと同様の試験をラットで行い、脳の下部中にC6グリア細胞腫を、そして浸透圧性マイクロポンプをラットの背中に移植した。カテーテルは、C−9化合物又は生理食塩水を含む処置溶液をグリア細胞腫移植片に誘導した。このように処置したラットの脳の冠状切片を得て、そして未処置のラットの脳の冠状切片と比較した。NMR分光イメージングにより当該分析を行った。
【0062】
この場合において、腫瘍量が有意に減少したことが理解される。また、腫瘍内の血管新生阻害も確認された(6倍)。また「アポトーシス指標」も得られ、実験のグリア細胞腫においてC−9化合物が潜在的なアポトーシス阻害因子であることを明らかに示した。
【0063】
実施例4
試験化合物の調製
他に示さない限り、試験化合物は商業的に入手可能な原料から得られ、そして更に精製することなく使用した。調製した化合物の構造及び純度はNMRにより確認した。溶媒は慣習的な方法を使用して乾燥させ、そして精製した。特に、化合物C−1及びC−3、並びに化合物C−6、C−7、C−9、C−14、C−17、C−18、C−20、C−21及びC−22の酸前駆体は商業的生成物である。残る試験化合物は、以下に簡単に説明するように慣習的な方法により得られた。
【0064】
一般的に、他に示さない限り、全ての反応は、正のアルゴン圧下においてガラスストッパー又はラバー隔壁を装着した乾燥フラスコ中で行った。空気及び湿度に感応性の液体及び溶液は、シリンジ又はステンレススチールカニューレに移した。230〜400メッシュ径のシリカゲルを使用してフラッシュクロマトグラフィーカラムを調製した。Kieselgel 60 F254(Merck)中で薄層クロマトグラフィーを行った。酢酸(800mL)中、20%硫酸水溶液(200mL)で処理した後、それから検出をまずUV(245mm)により行った。有機溶媒を乾燥させるために、無水MgSO4又はNa2SO4を使用した。上記溶媒の除去は、真空条件下においてロータリーエバポレータで行った。
【0065】
ナトリウム塩
当該ナトリウム塩は、所望量の0.1Nの水酸化ナトリウムを水中の対応する硫酸誘導体の懸濁液に添加することにより調製した。溶媒の留去は、当該ナトリウム塩を供した。
【0066】
アセチルアミド誘導体(C−4、C−10、C−15、C−19)
アセチルアミド誘導体は、無水酢酸中で対応するナトリウム塩(C−3、C−9、C−14、及びC−18)の懸濁液を90℃で4時間加熱することにより調製した。当該溶媒を留去し、アセチルアミド誘導体を産出した。
【0067】
ベンゾイルアミド誘導体(C−5、C−11、C−16)
僅かに過剰量の塩化ベンゾイル(1.2当量)を、ピリジン中の対応する硫酸溶液に添加した。30分後、溶媒を留去し、そして残渣をシリカゲルカラム(1:9 MeOH:CH2Cl2 v/v)においてクロマトグラフにかけた。精製した生成物をその対応するナトリウム塩に変換した。
【0068】
化合物C−2
濃H2SO4(0.32ml)を2−メチル−ナフタレン(2.8mmol)に添加した。当該混合物をオイルバス中、80℃で3時間加熱した。当該溶液を冷却し、氷上に注ぎ、そして1NのNaOHを添加することにより塩基性にした。当該生成物を冷却条件下において分離し、そしてろ過により単離した。
【0069】
化合物C−8
イオン交換樹脂(アンバーライト)(H+型)をメタノール中の2−ナフタレンスルホン酸ナトリウムに添加した。当該混合物を一昼夜撹拌し、そしてろ過し、そして溶媒を留去した。当該残渣を凍結乾燥させ、2−ナフタレンスルホン酸を産出した。
【0070】
化合物C−12
過剰量の無水フタル酸(1.3当量)をメタノール中のC−9溶液(0.6mmol)に添加した。当該混合物を一昼夜撹拌し、そして留去した。当該残渣をシリカゲルカラム(3:7 MeOH:CH2Cl2 v/v)においてクロマトグラフにかけ、所望の生成物を産出した。
【0071】
化合物C−13
塩化アジポイル(0.5当量)をピリジン中のC−9の懸濁液(0.1mmol)に添加した。撹拌を48時間続け、そして溶媒を留去した。残渣を少量のメタノールで溶かし、そして分離した固形物を収集し、そして特徴づけた。
【0072】
化合物C−23
濃硫酸(61mL)を、スルファニル酸(75g、390mmol)、グリセロール(103mL、1.41mol)及びニトロベンゼン(20mL、195mmol)の混合物に添加し、それから当該反応混合物を注意深く約80℃に過熱する。当該発熱プロセスが引き金となり、自然に120〜140℃になる。それから外部加熱を停止し、そして一度当該反応を安定化させる(約30分後)、再び外部加熱し、140〜145℃まで4時間加熱する。当該時間が経過後、当該混合物を冷却し、そして500mlの水−氷混合体上に注ぎ、これを冷蔵庫で+4℃で4日間保つ。当該期間が経過してから、産出した少量の固形物を除去し、そしてろ過水をそれ自身の容量の6倍に水で希釈し、そしてBaCO3で処理し、再度、産出した固形残渣をろ過する。当該ろ液を20%NaOHでpH11に処理する。これらのアルカリ水の一定分量の溶媒を真空条件下において除去し、そしてシリカゲル( Merck, Kieselgel, H F254, 7:3 AcOEt/MeOH)においてクロマトグラフィーカラムにより精製し、分析的に純粋なナトリウム塩の試料を単離する。
【0073】
化合物C−24
キノリン(9mL、76.2mmol)を、H2SO4 SO3(20%SO3、30mL)を含むフラスコに滴下した。当該温度を全プロセスを通して50℃以下に保つ。添加が完了してから、当該混合物を140℃で2時間過熱する。冷却した原生成物をそれから水−氷混合体上に注ぎ、水で大量に洗浄した後、白色固形物として8−スルホキノリンを単離する。真空条件下において乾燥させてから、8.25gの酸(>50%)が定量される。当該酸は前に示した対応するナトリウム塩を調製するために使用した。
【0074】
化合物C−25
6.45mmolのグラミンを10mLの濃H2SO4に溶解させ、そして5分間0℃で撹拌した。当該溶液を氷上に注ぎ、そして1NのNaOHを添加することにより塩基性にした。当該水溶液をジクロロメタンで抽出し、1NのH2SO4を添加することにより中和し、そして留去した。当該残渣を熱エタノールで溶かし、そして当該固形物をろ過により分離した。当該エタノール溶液を留去し、そして所望の化合物を産出するために、当該残渣をカラムクロマトグラフィー(エタノール)にかけた。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】図1A、図1B、及び図1Cは、アッセイした化合物の濃度(x軸)に対する示差吸光度(y軸)を示すグラフの組であり、これらは、aFGFの不存在下(□)及びaFGFの存在下(○)の両方におけるミオイノシトールで補助した最小培地で培養中の線維芽細胞のaFGF誘導有糸分裂誘発における、C−1〜C−25化合物の濃度の増加の影響を示す:(A)C−1〜C−7;(B)C−8〜C−19;(C)C−20〜C−25;(実施例1及び表1を参照のこと)。
【図1B】図1A、図1B、及び図1Cは、アッセイした化合物の濃度(x軸)に対する示差吸光度(y軸)を示すグラフの組であり、これらは、aFGFの不存在下(□)及びaFGFの存在下(○)の両方におけるミオイノシトールで補助した最小培地で培養中の線維芽細胞のaFGF誘導有糸分裂誘発における、C−1〜C−25化合物の濃度の増加の影響を示す:(A)C−1〜C−7;(B)C−8〜C−19;(C)C−20〜C−25;(実施例1及び表1を参照のこと)。
【図1C】図1A、図1B、及び図1Cは、アッセイした化合物の濃度(x軸)に対する示差吸光度(y軸)を示すグラフの組であり、これらは、aFGFの不存在下(□)及びaFGFの存在下(○)の両方におけるミオイノシトールで補助した最小培地で培養中の線維芽細胞のaFGF誘導有糸分裂誘発における、C−1〜C−25化合物の濃度の増加の影響を示す:(A)C−1〜C−7;(B)C−8〜C−19;(C)C−20〜C−25;(実施例1及び表1を参照のこと)。
【0076】
【図2】図2は、C−9化合物の抗血管形成効果の図解写真を示し(実施例2を参照のこと)、PBS(A)中、及びPBS+aFGF(B及びC)中に浸漬したスポンジ移植片の代表的な組織切片を示す。写真(C)において示された組織切片は、8mg/kgのC−9化合物で腹腔内的に処置されたマウスに移植したスポンジに相当する。(C)中の矢印は、赤血球及び白血球を含む血管を示す。(B)中に示された過剰増殖性の細胞浸潤は、aFGFに浸漬し且つC−9化合物で腹腔内的に処置したスポンジ移植片中で消滅したことを述べている。当該写真は、元の50倍の拡大率(50×)で示される。
【0077】
【図3】図3は、異なる濃度におけるC−9化合物により血管新生阻害を示す棒グラフを示す(実施例2を参照のこと)。当該阻害因子(C−9)濃度は、x軸において示され、一方、赤血球(血管新生)を含む表面積の測定値はy軸において表される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つの化学式(I)の化合物
【化1】

式中:
Aは、N、又はCR8の化学式群であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、SO39、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12、又はC1−C6アルキルを表わし;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールである;
但し:
(a)R1〜R8の少なくとも1つが、SO39であり、そして、
(b)残りのR1〜R8の少なくとも1つが、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基であり、
ここで、R9、R10、R11、及びR12は、前述の意味を有する;
又は、これらの医薬的に受容可能な塩若しくはプロドラッグ;及び、
(ii)少なくとも1つの医薬的に受容可能な賦形剤、
を含んで成る医薬組成物。
【請求項2】
化学式(I)の化合物、
式中:
Aは、CR8であり;
1は、H、又はC1−C6アルキルであり;
2は、SO39であり;
3は、H、OH、又はC1−C6アルキルであり;
4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基、又はC1−C6アルキルを表し;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールであり;
但し、R4、R5、R6、R7、又はR8の少なくとも1つは、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12であり、ここでR10、R11、及びR12は前述の意味を有する、
を含んで成る、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
化学式(I)の化合物、
式中:
Aは、CR8であり、ここでR8はH又はOHである;
1は、Hであり;
2は、SO39であり、ここでR9がH又はナトリウムである;
3は、Hであり;そして、
4、R5、R6、及びR7は、互いに独立して、H、OH、OCH3、COOH、NH2、NHCOCH3、NHCOC65、NHCH3、又はN(CH32を表し;
但し、R4、R5、R6、又はR7の少なくとも1つは、OH、OCH3、COOH、NH2、NHCOCH3、NHCOC65、NHCH3、又はN(CH32である、
を含んで成る、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、5−アセチルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、5−ベンゾイルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、8−アセチルアミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシ−6−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、及びこれらの混合体により形成される群から選択される化学式(I)の化合物から成る、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
化学式(I)に記載の化合物、
式中:
Aは、CR8であり;
1は、SO39であり;
2は、H、又はC1−C6アルキルであり;
3は、H、OH、又はC1−C6アルキルであり;
4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基、又はC1−C6アルキルを表し;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールであり;
但し、R4、R5、R6、R7、又はR8の少なくとも1つは、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12であり、ここでR10、R11、及びR12は前述の意味を有する、
を含んで成る、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
化学式(I)の化合物、
式中:
Aは、CR8であり;
1は、SO39であり、ここでR9はH又はナトリウムである;
2は、Hであり;
3は、Hであり;そして、
4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、OH、OCH3、COOH、NH2、NHCOCH3、NHCOC65、NHCH3、又はN(CH32を表し;
但し、R4、R5、R6、R7又はR8の少なくとも1つは、OH、OCH3、COOH、NH2、NHCOCH3、NHCOC65、NHCH3、又はN(CH32である、
を含んで成る、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、4−アセチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、4−ベンゾイルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、4−アミノ−3−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム、及びこれらの混合体により形成される群から選択される、化学式(I)の化合物を含んで成る、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
化学式(I)の化合物、
式中:
Aは、Nであり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、CO39、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12、又はC1−C6アルキルを表し;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールである;
但し:
(a)R1〜R8の少なくとも1つが、SO39であり、そして、
(b)残りのR1〜R8の少なくとも1つが、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基であり、
ここで、R9、R10、R11、及びR12は前述の意味を有する、
を含んで成る、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
1又は複数の化学式(I)の化合物を含んで成る、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
化学式(I)のナフタレンスルホン酸誘導体
【化2】

式中:
Aは、N、又はCR8の化学式群であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、SO39、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12、又はC1−C6アルキルを表わし;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールである;
但し:
(a)R1〜R8の少なくとも1つが、SO39であり、そして、
(b)残りのR1〜R8の少なくとも1つが、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基であり、
ここで、R9、R10、R11、及びR12は、前述の意味を有する;
又は、これらの医薬的に受容可能な塩若しくはプロドラッグ、
の使用であって、FGF生物活性が関係する疾患又は状態の予防又は治療のための医薬製品の調製における使用。
【請求項11】
上記疾患又は状態が、関節リウマチ、子宮内膜症、肥満症、動脈硬化、再狭窄、乾癬から選択される血管形成依存性疾患である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
上記疾患又は状態がいずれかの種類の癌である、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
化学式(I)の化合物
【化3】

式中:
Aは、N、又はCR8の化学式群であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、SO39、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12、又はC1−C6アルキルを表わし;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールである;
但し:
(a)R1〜R8の少なくとも1つが、SO39であり、そして、
(b)残りのR1〜R8の少なくとも1つが、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基であり、
ここで、R9、R10、R11、及びR12は、前述の意味を有する;
又は、1つのこれらの医薬的に受容可能な塩若しくはプロドラッグ、
の使用であって、化学療法又は放射線治療に対する癌細胞の感受性を増加させるための、医薬製品の調製における使用。
【請求項14】
化学式(I)の化合物
【化4】

式中:
Aは、N、又はCR8の化学式群であり;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、互いに独立して、H、SO39、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12、又はC1−C6アルキルを表わし;
9は、H、アンモニウム、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属のカチオンであり;
10及びR11は、互いに独立して、H、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールを表し;
12は、OH、C1−C6アルキル、又はC6−C10アリールである;
但し:
(a)R1〜R8の少なくとも1つが、SO39であり、そして、
(b)残りのR1〜R8の少なくとも1つが、OR10、CO210、NR1011、NH−CO−R12基であり、
ここで、R9、R10、R11、及びR12は、前述の意味を有する;
又は、1つのこれらの医薬的に受容可能な塩若しくはプロドラッグ、
の使用であって、FGF生物活性に関係する疾患又は状態のための診断キットの調製における使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−522073(P2006−522073A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505599(P2006−505599)
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/ES2004/000104
【国際公開番号】WO2004/078704
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505338589)イタルファルマコ,ソシエダ アノニマ (2)
【出願人】(505337777)
【出願人】(505338578)インスティテュート マドリレーニョ デ ラ サルード (1)
【Fターム(参考)】