説明

ズームレンズ、カメラモジュール及び電子機器

【課題】レンズ屈折面形状が変化することで焦点距離が変化するレンズを用いるズームレンズを構成するにあたり、収差を抑制して光学特性の劣化を抑える。
【解決手段】第1の可変レンズ32を含み、レンズ32の変形により焦点距離が変化する物体側のレンズ群51と、このレンズ群51に対して絞り11を挟んで像側に配置される第2の可変レンズ41を含み、この第2の可変レンズ41の変形により焦点距離が変化する像側のレンズ群54と、これらの間に、口径絞り11を含むレンズ群52を有する。物体側のレンズ群51及び像側のレンズ群54に設けられる第1及び第2の可変レンズ32及び41の変形を制御することによって変倍を行うとともに、変倍による像面移動補償及び焦点合わせが行われる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ移動を伴うことなく、レンズ材料そのものの変形によって焦点距離が可変となるレンズを含み、その可変によってズームするズームレンズとこれを用いたカメラモジュール及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子を用いたカメラモジュールやこれを用いた撮像装置等の各種電子機器においては、小型、軽量化が求められている。このため、カメラモジュールに用いるズームレンズとして、移動機構をもたない可変焦点レンズを用いる方法が種々提案されている。例えば特許文献1には、コンバータレンズとして、レンズ屈折面形状が変形可能とされる可変焦点レンズを用いる技術が提案されている。
【0003】
この屈折面変形型のレンズは、平板又は所定の曲面を有する光透過性基板に封止材を介して樹脂製等の光透過性の弾性膜を接合し、内部に光透過性の液体等を充填したものである。光透過性基板と弾性膜との間に充填される材料にかかる圧力を変化させることで弾性膜を変形させ、これにより曲面形状を変化させて焦点距離を可変とすることができる。このように曲面形状を可変とするレンズとしては、内部に液体を充填する液体レンズや、ゲルを充填するゲルレンズ等が提案されている。
【0004】
このような屈折面変形型の可変レンズの一例の概略断面構成を図69に示す。図69に示すように、この可変レンズ82は、一方の面にガラスや樹脂等の材料より成る光透過性基板81とし、他方の面に光透過性の弾性膜等より成る変形膜87を有する。そして例えばリング状の枠体83、85とその間を接合材等の接合部84によって周囲を液密に保持され、これらに囲まれた領域に、光透過性の液体やゲル等の流動性を有する媒質90が封入されて屈折面変形型の可変レンズ82が構成される。この可変レンズ82は、図示の例では接合部84の一部に管状等の液体移動部86が設けられ、内部の媒質90を出し入れ可能としている。そして図示しない外部のポンプ機構等の駆動によって、この可変レンズ82内の媒質90の体積が変化するように構成される。これにより変形膜87が変形し、可変レンズ82を凸レンズから凹レンズの範囲で焦点距離の切り替えが可能な構成とすることができる。なお、変形機構は図示の例のように媒質90の出し入れのみではなく、枠体83又は85の変形等によって変形膜87に対する圧力を変化させる機構でもよく、変形膜87に対する圧力を変化させる機構は特に限定されない。
【0005】
ここで、可変レンズ82中の媒質としては、シリコン系オイル等の光透過性を有し、また適切な屈折率を有する材料を用いることが好ましい。また、変形膜87の材料としては、シリコン系ゴム等の適度な弾性を有する変形可能な材料であり、且つ所要の光透過性を有することが好ましく、変形可能な薄膜等の形状とすることが好ましい。
このような構成とすることによって、媒質90の変形膜87に対する圧力を変化させる機構、例えば媒質90を吸引又は注入する機構等の比較的簡易な機構をもって、簡単にレンズパワーを可変とすることができる。そしてこのような可変レンズ82を利用することで、アフォーカル倍率の変化を実現でき、図2に示すような可変レンズ82を例えば複数組み合わせることによって、より簡単な構成で特許文献1に記載されているようなワイドコンバータを実現できる。
【0006】
また、エレクトロウエッティング現象を利用し、容器内に有極性及び無極性の2種類の液体を収容し、電圧を印加して両液体の界面の形状を変形し、可変焦点を行ういわゆるエレクトロウエッティング型の可変焦点レンズも利用が検討されている。このエレクトロウエッティング型の可変焦点レンズを用いたズームレンズは例えば特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−185627号公報
【特許文献2】特開2008−089752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような撮像素子を備えるカメラモジュールにおいては、高解像度化、高画素数化も求められており、カメラモジュールに用いるズームレンズとして、収差を低く抑える良好な光学特性が求められている。しかしながら、液体レンズやゲルレンズ、エレクトロウエッティングレンズを用いたレンズ系において、収差を考慮して良好な光学特性を実現しつつズームレンズに利用する構成は提案されていない。
【0009】
上記問題に鑑みて、本発明は、レンズ屈折面形状が変化することで焦点距離が変化するレンズを用いるズームレンズを構成するにあたり、収差を抑制して光学特性の劣化を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明によるズームレンズは、物体側に配置され、変形する透明材料からなる変形面を有する第1の可変レンズを含み、この第1の可変レンズの変形により焦点距離が変化する物体側のレンズ群を有する。そしてこの物体側のレンズ群に対して絞りを挟んで像側に配置され、変形する透明材料からなる変形面を有する第2の可変レンズを含み、この第2の可変レンズの変形により焦点距離が変化する像側のレンズ群を有する。また、これら物体側及び像側の第1及び第2の可変レンズを含むレンズ群の間に、口径絞りを含むレンズ群を有する。そして、物体側のレンズ群及び像側のレンズ群に設けられる前記第1及び第2の可変レンズの変形を制御することによって変倍を行うとともに、変倍による像面移動補償及び焦点合わせが行われる構成とする。
【0011】
また、本発明によるカメラモジュールは上述の本発明構成によるズームレンズと、このズームレンズにより結像された像を撮像する撮像素子と、を備える構成とする。
更に、本発明による電子機器は、上述した本発明構成によるズームレンズと、このズームレンズにより結像された像を撮像する撮像素子と、ズームレンズの第1及び第2の可変レンズを制御する制御部と、を備える構成とする。
【0012】
上述したように、本発明においては、ズームレンズに用いる可変焦点レンズとして、可動機構を伴わず、レンズ屈折面の変形によって焦点距離を可変とする少なくとも第1及び第2の可変レンズを用いるものである。そして特にこの第1及び第2の可変レンズを、絞りを挟んでそれぞれ物体側と像側に配置するレンズ群に含む構成とする。これらのレンズ群は、第1及び第2の可変レンズの変形を制御することによって変倍を行うとともに、変倍による像面移動補償及び焦点合わせが行われる構成とするものである。
【0013】
このように、レンズ屈折面形状が変化する可変レンズのズームレンズ内での配置構成を物体側及び像側に配置することで、焦点距離を変えてズームを行う場合においても、収差を抑えることができ、光学特性の劣化が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レンズ屈折面形状が変化することで焦点距離が変化するレンズを用いて、収差が抑制されて光学特性の劣化が抑制されたズームレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズの一例の概略レンズ構成図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における構成を示す。
【図2】図2は比較例1によるズームレンズの概略レンズ構成図であり、(a)は広角端、(b)は望遠端における構成を示す。
【図3】図3は本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズの他の例の概略レンズ構成図である。
【図4】図4は図1に示すズームレンズの諸収差特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図5】図5は図1に示すズームレンズの空間周波数特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図6】図6は図1に示すズームレンズの周辺光線に対する各レンズ面への入射角特性(n×sin(i))を示す図である。
【図7】図7は図1に示すズームレンズの主光線に対する各レンズ面への入射角特性(n×sin(i))を示す図である。
【図8】図8は図2に示すズームレンズの周辺光線に対する各レンズ面への入射角特性(n×sin(i))を示す図である。
【図9】図9は図2に示すズームレンズの主光線に対する各レンズ面への入射角特性(n×sin(i))を示す図である。
【図10】図10は図1に示すズームレンズの各レンズ面における球面収差を示す図である。
【図11】図11は図1に示すズームレンズの各レンズ面におけるコマ収差を示す図である。
【図12】図12は図1に示すズームレンズの各レンズ面における非点収差を示す図である。
【図13】図13は図1に示すズームレンズの各レンズ面における軸上色収差を示す図である。
【図14】図14は図1に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における軸外光線入射角特性の平均値を示す図である。
【図15】図15は図1に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における主光線入射角特性の平均値を示す図である。
【図16】図16は図1に示すズームレンズの広角端における各波長の光の横収差特性を示す図である。
【図17】図17は図1に示すズームレンズの望遠端における各波長の光の横収差特性を示す図である。
【図18】図18は図1に示すズームレンズの広角端における横収差特性を示す図である。
【図19】図19は図1に示すズームレンズの望遠端における横収差特性を示す図である。
【図20】図20は本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズの他の例の概略断面構成図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における構成を示す。
【図21】図21は図20に示すズームレンズの諸収差特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図22】図22は図20に示すズームレンズの空間周波数特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図23】図23は図20に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における軸外光線入射角特性の平均値を示す図である。
【図24】図24は図20に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における主光線入射角特性の平均値を示す図である。
【図25】図25は図20に示すズームレンズの広角端における横収差特性を示す図である。
【図26】図26は図20に示すズームレンズの望遠端における横収差特性を示す図である。
【図27】図27は屈折面変形型レンズの径方向に対する球面との差分を示す図である。
【図28】図28は屈折面変形型レンズの曲率半径に対する球面からの最大乖離量を示す図である。
【図29】図29は図1に示すズームレンズにおける可変レンズの面形状を反映した参考例1によるズームレンズの諸収差特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図30】図30は図1に示すズームレンズにおける可変レンズの面形状を反映した参考例1によるズームレンズの空間周波数特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図31】図31は図1に示すズームレンズにおける可変レンズの面形状を反映した場合の他の固定レンズ面を最適化した参考例2によるズームレンズの概略断面構成図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における構成を示す。
【図32】図32は図31に示すズームレンズの諸収差特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図33】図33は図31に示すズームレンズの空間周波数特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図34】図34は第2の実施の形態に係るズームレンズの一例の概略断面構成図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における構成を示す。
【図35】図35は図34に示すズームレンズの諸収差特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図36】図36は図34に示すズームレンズの空間周波数特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図37】図37は図34に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における軸外光線入射角特性の平均値を示す図である。
【図38】図38は図34に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における主光線入射角特性の平均値を示す図である。
【図39】図39は図34に示すズームレンズの広角端における横収差特性を示す図である。
【図40】図40は図34に示すズームレンズの望遠端における横収差特性を示す図である。
【図41】図41は図1に示すズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における倍率色収差を示す図である。
【図42】図42は図1に示すズームレンズにおける可変レンズの面形状を反映した場合の広角端、中間焦点距離及び望遠端における倍率色収差を示す図である。
【図43】図43は図34に示すズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における倍率色収差を示す図である。
【図44】図44は第2の実施の形態に係るズームレンズの他の例の概略断面構成図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における構成を示す。
【図45】図45は図44に示すズームレンズの諸収差特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図46】図46は図44に示すズームレンズの空間周波数特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図47】図47は図44に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における軸外光線入射角特性の平均値を示す図である。
【図48】図48は図44に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における主光線入射角特性平均値を示す図である。
【図49】図49は図44に示すズームレンズの広角端における横収差特性を示す図である。
【図50】図50は図44に示すズームレンズの望遠端における横収差特性を示す図である。
【図51】図51は第3の実施の形態に係るズームレンズの一例の概略断面構成図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における構成を示す。
【図52】図52は図51に示すズームレンズの諸収差特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図53】図53は図51に示すズームレンズの空間周波数特性を示す図であり、(a)は広角端、(b)は中間焦点距離、(c)は望遠端における特性を示す。
【図54】図54は図51に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における軸外光線入射角特性の平均値を示す図である。
【図55】図55は図51に示すズームレンズの物体側レンズ群及び像側レンズ群における主光線入射角特性平均値を示す図である。
【図56】図56は図51に示すズームレンズの広角端における横収差特性を示す図である。
【図57】図57は図51に示すズームレンズの望遠端における横収差特性を示す図である。
【図58】図58は図1に示すズームレンズの可変レンズの口径絞りからの位置を説明するための図である。
【図59】図59は本発明の第3の実施の形態に係るズームレンズの他の例の概略断面構成図であり、中間焦点距離における構成を示す。
【図60】図60は図59に示すズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端における倍率色収差を示す図である。
【図61】図61は図59に示すズームレンズを基本設計として物体側のレンズ群に設ける可変レンズを口径絞りに近づけた比較例2によるズームレンズの概略断面構成図であり、中間焦点距離における構成を示す。
【図62】図62は図59に示すズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端における倍率色収差を示す図である。
【図63】図63は図59に示すズームレンズを基本設計として像側のレンズ群に設ける可変レンズを口径絞りに近づけた比較例3によるズームレンズの概略断面構成図であり、中間焦点距離における構成を示す。
【図64】図64は図59に示すズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端における倍率色収差を示す図である。
【図65】図65は屈折面変形型レンズにおける有効径率に対する球面乖離量を示す図である。
【図66】図66は屈折面変形型レンズにおける球面乖離量を有効径で割った無次元数と曲率半径Rを有効径で割った無次元数との関係を示す図である。
【図67】図67は本発明の第4の実施の形態に係る撮像装置の一例の概略ブロック構成図である。
【図68】図68は本発明の第5の実施の形態に係る電子機器の一例の概略ブロック構成図である。
【図69】図69は従来の屈折面変形型の可変レンズの一例の概略断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を実施するための最良の形態の各例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(ズームレンズ)
(1−1)ズームレンズの概略構成
(1−2)設計例1(基本設計例)
(1−3)比較例1(可動レンズを用いるズームレンズの従来例)
(1−4)設計例1と比較例1との比較検討結果
(1−5)設計例2(枚数削減例)
2.第2の実施の形態(非球面を用いたズームレンズ)
(2−1)参考例1(変形面の球面からの乖離が大きい例)
(2−2)参考例2(参考例1を非球面を用いずに最適化した例)
(2−3)設計例3(非球面1面追加例)
(2−4)設計例4(非球面2面追加例)
3.第3の実施の形態(非球面を用いて枚数削減する例)
(3−1)設計例5(非球面3面とし枚数削減する例)
4.可変レンズと絞りとの距離の検討
(4−1)設計例6(非球面3面とする例)
(4−2)比較例2(設計例6を基本として物体側可変レンズを絞りに近づけた例)
(4−3)比較例3(設計例6を基本として像側可変レンズを絞りに近づけた例)
5.有効径に関する検討
6.第4の実施の形態(カメラモジュール)
7.第5の実施の形態(電子機器)
【0017】
1.第1の実施の形態(ズームレンズ)
(1−1)ズームレンズの概略構成
先ず、本発明の第1の実施の形態に係るズームレンズについて説明する。本実施形態のズームレンズは少なくとも、第1の可変レンズを含むレンズ群、口径絞りを挟んで配置されるレンズ群、第2の可変レンズを含む像側のレンズ群を含む。第1及び第2の可変レンズは、変形する透明材料からなる変形面を有する構成であり、液体レンズやゲルレンズ等の屈折面変形型レンズ、またエレクトロウエッティングレンズを用いることが可能である。ここで可変レンズの媒質である透明材料とは、使用波長に対して所望の光透過性を有する材料であればよく、例えば可視光域や、可視広域を含む広い波長帯域、又は可視光域から一部ずれた波長帯域で透明である各種材料を含む。そして物体側のレンズ群は、第1の可変レンズの第1の変形面の変形により焦点距離を変化させ、すなわちバリエータとして機能し、像面に結像される被写体の大きさを決める。また、第2の可変レンズを含む像側のレンズ群はコンペンセータとしての機能をもち、バリエータの機能を有する物体側のレンズ群と連動して像面移動補償及び焦点合わせを行う構成とする。
【0018】
また、物体側レンズ群及び像側レンズ群の間の口径絞りを挟んで配置されるレンズ群は、可変レンズを含まない固定レンズより構成することができる。このレンズ群は、例えば概略色消しされた凸凹レンズを対称型に配置して、奇数次の収差、球面収差、及び色収差を効果的に補正しているいわゆるガウス型の、又は、ガウス型様の構成のレンズ群を用いることができる。このようなガウス型、又はガウス型様のレンズ群を設けることで、球面収差、奇数次の収差、色収差を良好に補正できる。
【0019】
また、これら物体側レンズ群、像側レンズ群、口径絞りを挟んで配置するレンズ群の他にも他のレンズやレンズ群を配置してもよい。このようなレンズやレンズ群としては、例えば後述するように軸上の色収差補正を行うレンズ群として、口径絞りを挟んで配置するレンズ群と像側の第2の可変レンズを含むレンズ群との間に配置することが可能である。
【0020】
このように、可変レンズを含む物体側のレンズ群、像側のレンズ群、口径絞りを挟んで配置するレンズ群に加えて、他のレンズ群を配置してもよい。ただし、最も物体側のレンズ群に第1の可変レンズを含むレンズ群を配置し、最も像側のレンズ群に第2の可変レンズを含むレンズ群を配置するものとする。
【0021】
また、可変レンズの数は限定されるものではなく、例えば上述した口径絞りを挟んだレンズ群に含むことも可能である。しかしながら、後述するように、最も物体側のレンズ群に一つの可変レンズ、最も像側のレンズ群において一つの可変レンズを配置する構成において、良好な収差特性が得られることが確認された。したがって、駆動機構を必要とする可変レンズはなるべく少ないことが好ましく、可変レンズは物体側、像側のレンズ群にそれぞれ一つずつ設ければよいといえる。なお、レンズ長に対する可変レンズと絞りとの距離は一定の範囲内であることが好ましいが、これについては後述する。
【0022】
本実施の形態に係るズームレンズは、物体側のレンズ群の屈折力を負の方向に強くするときに、像側のレンズ群の屈折力が正の方向に強くなるように制御することにより、望遠側から広角側へとズームする構成とすることが好ましい。すなわち、望遠側及び広角側の物体側の可変レンズを含むレンズ群の屈折力をそれぞれφAt及びφAw、望遠側及び広角側の像側の可変レンズを含むレンズ群の屈折力をそれぞれφBt、φBwとすると、
φAt>φAw・・・(1)
φBt<φBw・・・(2)
として構成する。このようにすることで、後述する設計例1及び2や、また第2の実施の形態に示す各設計例において詳細に説明するように、確実に収差を抑制することができる。
【0023】
また、像側のレンズ群の第2の可変レンズの変形面の曲率は、望遠側から広角側にズームするとき、正の方向に変化する構成とすることが好ましい。すなわち、望遠側及び広角側の第2の可変レンズの第2の変形面の曲率をそれぞれCt、Cwとすると、
Ct<Cw・・・・・(3)
として構成する。なお、ここで曲率の正負としては、物体側に凸の場合に正、像側に凸の場合に負と定義する。
【0024】
例えば、第2の可変レンズの第2の変形面が、物体側から空気、媒質(液体やゲル等の透明材料)の順に配置される場合、屈折力φは下記の式により表わされる。
φ=(n−1)C
ここでnは液体屈折率、Cは曲率であり、Rを曲率半径とするとC=1/Rと表される。
したがって、
φBt<φBw
とするとき
Ct<Cw
となる。このような構成とすることによって、上述したように収差の発生を抑制することができる。
【0025】
つまり、上述したように口径絞りを挟んでガウス型、又はガウス型様のレンズ群を設けることで球面収差、奇数次の収差、色収差を良好に補正することができる。その上で、上記式(1)及び(2)、また式(3)を満たす構成とすることで、後段の設計例1において詳細に説明するように、可変となっている物体側レンズ群と、像側レンズ群の収差を小さく、しかもズームによる変化も小さく抑えることが可能となる。
【0026】
上述したように、第1及び第2の可変レンズとしては、前述の液体レンズやゲルレンズ等の屈折面変形型レンズ、またエレクトロウエッティングレンズ等のレンズ面が変形する種々のレンズを用いることができる。液体レンズやゲルレンズ等の屈折面変形型レンズを用いる場合、光透過性の固体材料と、光透過性の弾性膜との間に光透過性の液体又はゲルが封入され、液体又はゲルと弾性膜との変形により焦点距離を変化させる構造とすることが好ましい。
【0027】
この屈折面変形型レンズの固体材料としては、ガラス、樹脂基板等の種々の光学素子に適用可能な透明材料を用いることができる。また、液体やゲルとしては、シリコーン系オイルやシリコーンゲル等、膜材料としてはシリコーン樹脂等が利用可能である。
【0028】
また本発明に適用する屈折面変形型レンズにおいて、変形面の変形態様は特に限定されるものではない。例えば前述の特許文献1に記載されているように、基板と変形面との封止部に液体やゲルを導出入する導管が配置され、外部のポンプ機構を利用してレンズ面間の液体やゲルの体積を変化させることで、変形膜の曲率を変化させるものが利用可能である。また、レンズ内部に区分された領域を設けて液体やゲルの各領域間の移動を可能に収容し、圧電素子等のアクチュエータを用いて領域間に液体やゲルの移動を生じさせることで、変形面への媒質からの圧力を変化させ、その曲率を変化させる構成としてもよい。この可変レンズの構成や変形面の変形態様は、変形面3及び18が望遠側から広角側に変形するにあたって球面からの乖離率を抑える構成が好ましい。すなわち、レンズ径や曲率変化の範囲等に応じて、レンズ面変形態様、変形面材料、レンズ媒質材料等を適宜選定することが好ましい。
【0029】
(1−2)設計例1(基本設計例)
次に、上述した第1の実施の形態に係るズームレンズの第1の設計例について図1を参照してレンズ構成及びレンズ諸元等について説明する。図1(a)においては広角端の状態、図1(b)においては中間焦点距離状態、図1(c)においては望遠端の状態をそれぞれ示す。図1に示すように、このズームレンズ101は、第1〜第4のレンズ群51〜54を有する構成とする例であり、第1のレンズ群51に第1の可変レンズ31、第4のレンズ群54に第2の可変レンズ41を含む。そして絞り11を挟んで物体側及び像側にガウス型の第2のレンズ群52を配置し、第2のレンズ群52と第4のレンズ群54との間に、主として軸上の色収差補正を目的とする第3のレンズ群53を配置するものである。面番号を物体側から順に1〜20として示す。
【0030】
第1のレンズ群51は全体として正の屈折力を有し、物体側より順に、正の屈折力を有する凸レンズ31、第1の可変レンズ32、負の屈折力を有する凹レンズ33を配置する。この例では、レンズ31と第1の可変レンズ32が一体化される。ここで変形面3は一体化されたダブレット構成のレンズの外側(最も像側)の面であり、第1の可変レンズ32に液体レンズやゲルレンズ等の屈折面変形型レンズを用いて像側の面(面番号3)に弾性材料よりなる変形膜を用いることが好ましい。レンズ31は、屈折面変形型レンズにおける変形膜を固定する光透過性の基板自体に曲率を設けることで代用可能である。
【0031】
また、第2のレンズ群52には、物体側から順に正の屈折力を有する凸レンズ34、正の屈折力を有する凸レンズ35、像側に凹面を有し正の屈折力を有するメニスカスレンズ36を配置する。更に、口径絞り11を挟んで、負の屈折力を有する凹レンズ37及び正の屈折力を有する凸レンズ38を配置する。この例では、レンズ35及び36、レンズ37及び38はダブレット構成とされる。口径絞り11の前のレンズ34、35及び36のレンズ群は全体として正の屈折力、口径絞り11の後のレンズ37及び38のレンズ群は全体として正の屈折力を有し、ガウスタイプの構成とされる。
【0032】
第3のレンズ群53には、正の屈折力を有する凹レンズ39及び凸レンズ40からなるダブレットが用いられる。このレンズ群53は前述したように主に軸上の収差を補正する機能をもたせることで、全体の収差を抑制することが可能である。
【0033】
更に、第4のレンズ群54には、第2の可変レンズ41及び正の屈折力を有し物体側に凸面を有するメニスカスレンズ42を配置し、ダブレット構成とする。そして変形面15は外側(最も物体側)の面であり、この第2の可変レンズ41も液体レンズ又はゲルレンズ等の屈折面変形型レンズとすることが好ましい。レンズ42もレンズ31と同様に、屈折面変形型レンズの光透過性基板自体に曲率を設けて代用することができる。
【0034】
なお、第4のレンズ群54と像面23との間には、例えば像面23に撮像素子44を配置することを想定して、カバーガラス43を配置する。この設計例1における数値データ例を下記の表1に示す。また、全体諸元及び各変形面の曲率、面間隔等の各種データを表2に示す。この例は、固定レンズのレンズ面を全て球面として構成するものである。なお、以下の表においてデータ中の曲率半径、面間隔及び有効径等特に単位の指定のない数値はmmである。可変レンズの変形面を構成する弾性膜としては、シリコーン製エラストマを用いている。
【0035】
[表1]面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(vd) 有効径
1 16.175 1.41 1.744 44.79 4.0607
2 -109.609 d12 1.506 34.90 3.6864
3 r13 d13 3.0238
4 -29.155 0.6 1.755 27.51 2.76
5 11.913 5.5 2.5976
6 15.091 1.02 1.744 44.78 1.9999
7 -20.457 0.8 1.9031
8 5.704 1.06 1.755 27.53 1.576
9 -89.490 0.8 1.523 59.84 1.3346
10 3.981 0.4 1.0366
11 絞り 1.2 0.9502
12 -4.818 0.8 1.755 27.53 1.1125
13 5.737 1.54 1.564 60.83 1.3166
14 -5.404 1.61 1.5993
15 20.749 0.8 1.741 27.79 2.1095
16 4.4 2.35 1.743 44.79 2.2475
17 -10.563 d117 2.4
18 r118 d118 1.506 34.90 2.5785
19 4.853 1.62 1.564 60.83 2.4557
20 24.274 1.94 2.3646
21 INFINITY 0.11 1.516 64.14
22 INFINITY 1.98
23(像面) INFINITY
【0036】
[表2]各種データ
ズーム比 3
広角 中間距離 望遠
焦点距離 3.73 6.46 11.19
Fナンバー 3.2 3.85 5.3
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 30.3(一定)
BF 3.9(但し、カバーガラス厚を除く)

d12 0.03042 0.84686 1.22928
r13 4.66935 9.17308 21.44583
d13 1.86958 1.05314 0.67072
d117 1.26741 1.69039 2.59977
r118 7.39776 12.94671 -16.42832
d118 1.63259 1.20961 0.30023
【0037】
(1−3)比較例1(可動レンズを用いるズームレンズの従来例)
次に、設計例1のズームレンズに対する比較例として、可変焦点レンズを用いず、可動レンズを用いる従来構成のズームレンズとその光学特性を説明する。図2は、この比較例1によるズームレンズのレンズ構成図である。図2(a)は広角端状態、図2(b)は望遠端状態を示す。当然ながらこのズームレンズにおいては一部のレンズ群が光軸に沿って移動するが、図2の中段の矢印でこの光軸上における移動軌跡を示す。
【0038】
このズームレンズ120は、物体側より順に、弱い正の屈折力を有する第1レンズ群GR1と、負の屈折力を有する第2レンズ群GR2と、正の屈折力を有する第3レンズ群GR3と、正の屈折力を有する第4レンズ群GR4が配列されて構成される。そして、広角端から望遠端への変倍に際し、第2レンズ群GR2が像側に凸の軌跡を描いて移動し、第3レンズ群GR3が物体側に単調に移動することでズーミングを行うように構成される。
【0039】
第1レンズ群GR1は、物体側より順に、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズG1と、光路を折り曲げるプリズムG2と、両凸形状で両面が非球面で構成された正レンズG3とが配列されて成り、負のメニスカスレンズG1とプリズムG2はガラス材料から、正レンズG3は樹脂材料から形成される。第2レンズ群GR2は、像側に凸面を向け物体側面が非球面で構成された負メニスカスレンズの単レンズG4から成り、負メニスカスレンズG4は樹脂材料から形成される。第3レンズ群GR3は、物体側より順に、両凸形状で両面が非球面で構成された正レンズG5と、物体側に凸面を向け像側面が非球面で構成された負のメニスカスレンズG6とが配列されて成り、正レンズG5と負のメニスカスレンズG6はガラス材料から形成される。第4レンズ群GR4は、物体側に凹面を向け両面が非球面で構成された正メニスカスの単レンズG7から成り、正メニスカスレンズG7は樹脂材料から形成される。なお、第4レンズ群GR4と像面IMGとの間にはカバーガラスSGが配置される。
【0040】
下記の表3に、このズームレンズ120に具体的数値を適用した数値比較例のレンズデータを示す。なお、非球面には*を付して示す。また、全体諸元及び面間隔等の各種データを表4に、非球面係数を表5に示す。
[表3]面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(vd)
1 93.027 0.60 1.834 37.3
2 6.516 1.29
3 INFINITY 5.50 1.834 37.3
4 INFINITY 0.20
5* 76.069 1.33 1.583 30.0
6* -8.017 d6
7* -5.286 0.50 1.530 55.8
8 -68.485 d8
9* 3.166 1.71 1.583 59.5
10* -5.144 0.40
11 10.688 1.40 1.821 24.1
12* 2.232 d12
13* -6.751 1.49 1.530 55.8
14* -3.004 1.10
15 INFINITY 0.50 1.517 64.2
16 INFINITY 0.50
17(像面) INFINITY
【0041】
[表4]各種データ
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.71 6.25 10.58
Fナンバー 2.87 3.82 5.51
画角[度] 64.9 38.5 23.7
全長 28
BF 2.1(1.1+0.5+0.5)
d6 1.10 2.78 1.10
d8 7.18 3.12 0.60
d12 3.20 5.58 9.78
【0042】
[表5]非球面係数
第5面
k=0, A4=-4.494×10-4, A6=-6.218×10-5, A8=9.711×10-6, A10=0
第6面
k=0, A4=-4.511×10-4, A6=-7.505×10-5, A8=1.610×10-5, A10=-5.048×10-7
第7面
k=0, A4=7.153×10-4, A6=1.131×10-5, A8=6.331×10-6, A10=-1.483×10-6
第8面
k=0, A4=-3.685×10-3, A6=-1.198×10-4, A8=-3.954×10-5, A10=-5.471×10-6
第10面
k=0, A4=8.412×10-3, A6=-8.762×10-4, A8=1.886×10-5, A10=0
第12面
k=0, A4=-4.032×10-3, A6=3.707×10-4, A8=1.720×10-3, A10=-5.972×10-4
第13面
k=0, A4=2.564×10-3, A6=0, A8=0, A10=0
第14面
k=0, A4=1.201×10-2, A6=-3.288×10-4, A8=3.939×10-6, A10=7.719×10-6
【0043】
(1−4)設計例1と比較例1との比較検討結果
次に、以上説明した設計例1及び比較例1によるズームレンズの構成及び光学的特性について比較検討した結果を説明する。
(a)レンズ厚総和のレンズ全長に対する比
まず、各ズームレンズにおけるレンズ厚総和のレンズ全長に対する比を求めると下記の通りである。なお、以下の式においてレンズ全長にバックフォーカスBFは含まず、またレンズ中の平行平板は、空気換算とする。
設計例1:レンズ厚の総和/レンズ全長=13.5/26.3(mm)=51%
比較例1:レンズ厚の総和/レンズ全長=7/23.4(mm)=30%
したがって、可変レンズを用いるズームレンズ101においては、レンズ枚数が比較的多くなるにも係わらず、レンズ全長の短い設計が達成されて小型化を図ることが可能である。これは、比較例におけるようなレンズの移動が必要ないためでもあるが、特に可変レンズを第1のレンズ群と第4のレンズ群と物体側、像側に配置して構成することで、収差を確実に抑えつつ面間隔も比較的短くすることができているためと考えられる。したがって、倍率や口径等の条件が同等であれば、全ズームレンズ長を短くするという効果が得られる。
【0044】
逆に、レンズ移動のための隙間を空ける必要がないことで、光路を折り曲げる光学素子を配置する場合においても、その分のスペースを確保するにもかかわらず、レンズ全長の大幅な増加を避けることができる。つまり、光路を折り曲げてレンズ全体の厚さを抑え、筐体の薄型化を図ると共に、長さ方向にも小型化を図ることが可能となる。
【0045】
なお、レンズ全長に対するレンズ厚の占める割合を40%以上とするとより好ましい。可変レンズを用いる場合は何らかのレンズ駆動機構を設けることが必要となるため、その分も含めると40%未満の場合は、十分に小型化を図ることが難しい。したがって、レンズ全長に対するレンズ厚の総和の割合が40%以上となる構成とすることが好ましい。
【0046】
(b)光路偏光素子
図3は、光路を折り曲げる光路偏光素子を追加する場合の一例の概略構成図である。図3において、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。このズームレンズ102では、物体側の第1のレンズ群51と像側の第2のレンズ群52との間にミラー等の光路偏向素子50を配置する。光路偏光素子50の配置位置は、いずれのレンズ群51〜54の間でもよく、面間隔が十分な位置であればよい。
【0047】
このように光路を折り曲げることで、最も口径を大きくすることが好ましい第1のレンズ群51のレンズ口径によらずに、第2のレンズ群52以降のレンズ群の口径により、ズームレンズ101全体の筐体の大きさ(厚みや幅)を決定することができる。このため、光路偏向素子50を設けない場合と比べて筐体の幅を小さくすることが可能となる。撮像装置、携帯電話等の電子機器に組み込む場合に有利となる。一方比較例のズームレンズでは、光路偏光素子を組み込むには別途スペースが必要であり、必要な面間隔を確保するために設計し直さないといけない。設計例1によれば、このような設計変更は必要なく、光路偏光素子の追加が容易という利点を有する。
【0048】
(c)収差特性
図4(a)〜(c)は、上記設計例1の無限遠合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図であり、それぞれ広角端、中間焦点距離、望遠端における各収差を示す。なお、球面収差図において、実線は波長670nm、一点鎖線は波長600nm、二点鎖線は波長555nm、太破線は波長510nm、細破線は波長470nmの球面収差を示す図である。また、非点収差図において実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示す。
【0049】
また、図5(a)〜(c)は、上記設計例1の空間周波数に対するMTF(Modulation Transfer Function)値を示す図であり、図5(a)は広角端、図5(b)は中間焦点距離、図5(c)は望遠端における参照波長555nmでのMTF値をそれぞれ示す。これら図5において線a、bは回折限界を示し、線c、dは像高30%、線e、fは像高50%、線g、hは像高70%、線i、jは像高100%におけるタンジェンシャル(接線)、ラジアル(半径)方向の変調度をそれぞれ示す。
図4及び図5の結果から、設計例1によるズームレンズでは収差が抑えられ、MTF値も乱れがなく、良好な光学特性を有することがわかる。なお、図示しないが比較例によるズームレンズにおいても、球面収差、非点収差及び歪曲収差は問題のない値となっている。
【0050】
一方、設計例1と比較例1において、主光線及び周辺光線に対する各レンズ面での入射角を解析した結果、設計例1の方が入射角を小さく、すなわち光軸に対しより小さい角度で光線が入射するため、収差抑制に有利であることがわかった。この結果を図6〜図9に示す。図6〜図9において縦軸は、レンズ媒質の屈折率をn、入射角又は出射角をiとするときn×sin(i)を求めたものである。図6及び図7は設計例1における周辺光線と主光線の結果、図8及び図9は比較例における周辺光線と主光線の結果をそれぞれ示す。各図共に、各レンズ面において広角端を白、中間焦点距離をグレー、望遠端を黒とした棒グラフでそれぞれn×sin(i)値を表している。なお、図6及び図7において、レンズ面3a、5a、7a、10a、14a、17a及び17bは、光線追跡解析に使用した仮想平面である。また、各図において、可変レンズ又は可動レンズを実線長方形の枠で囲って示している。
【0051】
図6及び図7の結果をみると、主光線の場合を示す図7の一部において、n×sin(i)>0.5となっている面があるが、これらは第2面、第13面、第16面及び第19面、すなわち貼り合わせ面であり、空気との界面ではないためである。
【0052】
一方、図8及び図9に示す比較例の結果から、周辺光線においても主光線においても一部のレンズ面でn×sin(i)>0.5となっていることがわかる。これらは図2に示す可動レンズ群GR2又はGR3内のレンズ面、又はレンズ群GR2に面するレンズの第6面である。この結果から、可動レンズを用いる場合では、周辺光線、主光線共に入射角が大きくなる面が存在することがわかる。
【0053】
したがって、設計例1においては、可動レンズを用いる従来のズームレンズと比べて入射角を低く抑えることができ、全てのレンズ面において、周辺光線及び主光線共に光軸に対してより小さい角度で光線が入射する構成を実現できる。このため、収差の増加をより抑えることができる。
【0054】
なお、上記設計例1においては、絞り11の位置、絞り11より像側のレンズパワーを適切に設定してあるので、像側がテレセントリックになっており、撮像素子44に対する光線入射角度が比較的垂直になっているという利点も有する。
【0055】
また、設計例1において、レンズ群52にガウス型、又はガウス型様のレンズ群を含む構成としている。設計例1における各レンズ面での球面収差、コマ収差、非点収差、軸上色収差について、それぞれ広角端、中間焦点距離、望遠端の計算値を図10〜図13に示す。図10〜図13においては、貼り合わせレンズ及び単レンズのレンズ面をそれぞれ枠で囲って示している。可変レンズの変形面は第3面及び第18面である。
【0056】
これら図10〜図13から明らかなように、球面収差、コマ収差については、この口径絞り11の前後に配置するレンズ群52によって補正されており、物体側の第1のレンズ群51と像側の第4のレンズ群54において略ゼロに近くなっていることがわかる。一方非点収差と軸上色収差は僅かに残っているが、やはり第2のレンズ群52によってある程度補正されており、第1及び第4のレンズ群51及び54では低く抑えられていることがわかる。
【0057】
なお、図14及び図15は、図6及び図7に示す周辺光線及び主光線において、第1のレンズ群51と第4のレンズ群54におけるn×sin(i)の平均値を求めた結果である。図14及び図15から、第1及び第2の可変レンズ32及び41を含む第1及び第4のレンズ群51及び54では、n×sin(i)の平均値は0.5未満となることがわかる。
【0058】
また、設計例1においては、倍率色収差が十分に補正されていない。これは、信号処理によって補正可能であるためである。これについて説明すると、上記設計例1では、使用波長において、横収差が画角によってリニアに、すなわち一次関数的に比例して変化しているので、信号処理による補正が容易であり、信号処理のみの補正でレンズを構成することができることを意味する。図16及び図17は、それぞれ広角端及び望遠端における、波長440nm、480nm、520nm、560nm、600nm、640nmの光線について、規格化されたフィールド(画角)に対する横収差を解析により求めた結果である。なお、図16及び図17は共に、波長530nmの光線の場合の像点との差分(単位μm)を示している。この結果から、特に望遠端において、どの波長の光線も横収差が画角に対してリニアに変化していることがわかる。
【0059】
また、図18及び図19においては、波長530nmの像点との差分(μm)を波長450nmと600nmの光線について解析した結果であり、図18は広角端の横収差、図19は望遠端の横収差である。図18及び図19から、特に望遠端については横収差が画角に対してリニアに変化しており、倍率色収差補正素子を追加しなくても信号補正による収差補正が可能であるといえる。広角端についてはややリニアな変化ではなくなっており、周辺光線についての倍率色収差はいわば残留する構成となっているが、上述したように信号補正によって収差補正が可能である。よって、そのための収差補正素子を更に追加する必要がなく、比較的簡素なレンズ構成を実現できる。
【0060】
(1−5)設計例2(枚数削減例)
次に、レンズ枚数を可能な限り削減して且つ良好な収差特性を得る設計例2について説明する。上記設計例1では、良好な光学特性を有するものの、レンズ第1面から像面までの距離は30.33mmであり、可変レンズを用いたズームレンズとしては光路長の短縮が望まれる。また、設計例1では、面形状を変えられるレンズの媒質として比較的屈折率が低い材料を用いる例である。このため第1のレンズ群51でのパワー変動がそれほど大きくなく、光路長を短縮するのは難しい。バリエータとして機能する第1のレンズ群51の屈折パワーを大きくするためには、曲率の変動領域を大きくする方法も考えられるが、曲率が大きくなることにより球面収差が劣化するという問題がある。また、可変レンズの媒質に液体を用いる場合には、例えば望遠端のように凹レンズとなり、且つ曲率が大きくなる状態があると、気泡が発生する恐れが生じる。
【0061】
このような問題を解決するために、設計例2においては、設計例1よりも光路長を短縮することを目的として、バリエータである第1のレンズ群51に屈折率の高いレンズ媒質の可変レンズを用いる構成とする。この例では、主光線の、撮像素子への入射角を制限しないことによって、設計の自由度を増やしていることに特徴をもつ光学系となっている。
【0062】
この例におけるズームレンズ103のレンズ構成を図20に示す。図20(a)においては広角端、図20(b)には中間焦点距離、図20(c)には望遠端における状態を示している。物体側より順に、第1の可変レンズ132を有する第1のレンズ群151、口径絞り11を挟んで配置される第2のレンズ群152、第2の可変レンズ141を有する第3のレンズ群154が配置される。第1のレンズ群151はバリエータとして面形状を変えられる第1の可変レンズ132を有し、第3のレンズ群154はフォーカスとコンペンセータの機能を有した面形状を変えられる第2の可変レンズ141を有して、変倍を行うズーム光学系となっている。具体的には、第1のレンズ群151には物体側に凸のメニスカスレンズ131、第1の可変レンズ132及び凹レンズ133が配置され、全体として正の屈折力を有する。第2のレンズ群152には口径絞りの前に正の屈折力を有する両凸レンズ134、ダブレット構成で全体として正の屈折力を有するレンズ135及び136を有する。また口径絞りの像側には凹レンズ137及び凸レンズ138がダブレット構成として配置され、両レンズで負の屈折力を有する構成とされる。そして第3のレンズ群154には、第2の可変レンズ141及びこれと貼りあわされた物体側に凸面をもつレンズ142が配置され、全体として正の屈折力をもつ構成とされる。像面との間には例えば像面20に撮像素子144を配置することを想定して、カバーガラス143を配置する。図20においても、面番号を物体側から順に1〜20として示す。
【0063】
この設計例2では、面形状を変えられるレンズである第1及び第2の可変レンズ132及び141には、d線の屈折率nd=1.5057、アッベ数νd=34.9の光学定数を有する液体を用いている。下記の表6に、設計例2におけるズームレンズのレンズ諸元を示し、また表7に各種データを示す。
【0064】
[表6]
面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(vd) 有効径
1 7.03737 1.41 1.747286 37.79 4.04
2 18.95952 d22 1.5057 34.9 3.7123
3 r23 d23 2.8498
4 123.36383 0.75 1.755201 27.58
5 4.58215 5.5 2.6492
6 37.18724 1.02 1.753021 29.78 2.3146
7 -14.01367 0.8 2.3554
8 6.30822 1.06 1.743972 44.85 1.9946
9 49.71571 0.8 1.535923 50.44 1.9447
10 5.41752 0.4
11 絞り 1.2
12 26.91075 0.8 1.755201 27.58 1.4806
13 3.4863 1.54 1.634968 57.58 1.2276
14 -9.39829 d214 1.2697
15 r215 d215 1.5057 34.90
16 3.62705 1.62 1.62041 60.32
17 -1395.48172 1.941048 1.642
18 INFINITY 0.105 1.51633 64.14 1.817
19 INFINITY 2.089027 1.8482
20(像面) INFINITY
【0065】
[表7]各種データ
ズーム比 3
広角 中間距離 望遠
焦点距離 3.73 6.46 11.19
Fナンバー 3.20 3.64 4.78
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 26.4(一定)
BF 4.03(但し、カバーガラス厚を除く)

d22 0.03042 0.84686 1.22928
r23 3.47577 5.91976 10.86437
d23 1.861958 1.05314 0.67072
d214 1.97739 2.41492 3.41536
r215 9.17703 25.95864 -7.93467
d215 1.63261 1.19508 0.19464
【0066】
このように、本設計例ではレンズ第1面から像までの距離が26.4mmとなっている。したがって、本設計例2を用いることによって設計例1と比較して13%程度光路長の短縮が図れる。また、バックフォーカスや平行平板(平行平板は空気換算)を含まない全長が22.45mmであり、ガラス総厚みが10.4mmで、その比は10.4/22.45≒46.4%である。すなわち設計例1よりもレンズ枚数を減らしつつ、空気部分の長さを短縮し、大幅な全長圧縮を達成した設計となっている。
【0067】
また、コンペンセータである第2の可変レンズ141の有効径が、設計例1に対して2.247/2.579≒12.9%程度小さくなる。このことから、第1のレンズ群151と第2のレンズ群152との間で折り返しミラー等の光偏向素子を挿入することにより、第2のレンズ群152以降の光学系の有効径でズームレンズ全体の筐体の厚さ及び幅が決まるので、全体としてズームレンズ筐体の薄型化が可能となる。また、設計例1よりもF値の小さい光学系が実現できるという利点も有する。
【0068】
この設計例2における広角端、中間焦点距離、望遠端における球面収差、非点収差及び歪曲収差を図21(a)〜(c)にそれぞれ示す。球面収差図において、実線は波長670nm、一点鎖線は波長600nm、二点鎖線は波長555nm、太破線は波長510nm、細破線は波長470nmの球面収差を示す図である。また、非点収差図において実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示す。また、参照波長555nmでの広角端、中間焦点距離、望遠端におけるMTF空間周波数特性をそれぞれ図22(a)〜(c)に示す。図22においても、線a、bは回折限界を示し、線c、dは像高30%、線e、fは像高50%、線g、hは像高70%、線i、jは像高100%におけるタンジェンシャル(接線)、ラジアル(半径)方向の変調度をそれぞれ示す。図21及び図22の結果から、この設計例2においても、良好な収差特性が得られることがわかる。
【0069】
また、図23及び図24は、軸外光線及び主光線において、第1のレンズ群151と第3のレンズ群153におけるn×sin(i)の平均値を求めた結果である。図23及び図24から、第1及び第2の可変レンズ132及び141を含む第1及び第3のレンズ群151及び153では、n×sin(i)の平均値は0.5未満となることがわかる。
【0070】
また、図25及び図26は、波長530nmの像点との差分(μm)を波長450nmと600nmの光線について、規格化されたフィールド(画角)に対する横収差を解析した結果であり、図25は広角端の横収差、図26は望遠端の横収差である。図25及び図26から、この例においても、特に望遠端については横収差が画角に対してリニアに変化しており、倍率色収差補正素子を追加しなくても信号補正による収差補正が可能であるといえる。広角端についてはややリニアな変化ではなくなっているが、問題のない範囲となっている。つまり、設計例2においては、倍率色収差はいわば残留する構成となっているが、上述したように信号補正によって収差補正が可能であり、そのための収差補正素子を追加する必要がなく、設計例1よりも更に簡素なレンズ構成を実現できる。
【0071】
2.第2の実施の形態(非球面を用いたズームレンズ)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るズームレンズについて説明する。第1の実施の形態に係るズームレンズとの違いは、固定レンズのうち少なくとも一面に非球面を有する構成とすることである。まず、プレッシャーレンズの変形面の球面からの乖離を考慮した場合の参考例から説明する。
【0072】
(2−1)参考例1(変形面の球面からの乖離量の説明)
上述の第1の実施の形態に係るズームレンズの光学系において、バリエータ及びコンペンセータに用いている可変レンズの面形状は球面としている。可変レンズとしてエレクトロウエッティングレンズではなく、上述したようなシリコーン樹脂等の透明弾性膜を液圧変化によって変形させる屈折面変形型レンズの場合、実際の面形状は球面形状からある程度乖離する。また屈折面変形型レンズのサグ量が大きくなる、すなわち曲率が大きくなるにつれてこの乖離量は顕著になり、光学特性に与える影響は無視できない。以下この球面からの乖離量を球面乖離量と呼ぶ。
【0073】
このため、実際の屈折面変形型レンズの面形状を反映した光学系は設計値と比較して特性が低下し、とりわけバリエータの曲率が最大になる広角端での光学性能の低下は顕著になる。また、ズーム率が高ければ、変形面での屈折パワー変動を稼ぐ必要が出てくるので、低倍率のものと比較すると曲率変化(変形量)は大きくなり、球面乖離量も大きくなると考えられる。更に、球面乖離量は変形面を構成する膜のテンション等にも依存する。
【0074】
したがって、可変レンズとして屈折面変形型レンズを用いたズームレンズの設計において、屈折面変形型レンズの非球面形状を考慮して光学系を組むことによって光学特性の改善が図れる。このため、第2の実施の形態に係るズームレンズにおいては、屈折面変形型レンズの面形状が非球面になることを考慮し、第1の実施の形態に係るズームレンズをもとにして固定レンズ群の諸元変更により光学特性の改善を図ることを目的とする。
【0075】
ここでは、面形状を変化させるレンズとして、屈折面変形型液体レンズを例に挙げて説明をする。なお、屈折面変形型ゲルレンズの場合も同様の形状変化の特性をもつと考えられる。
【0076】
図1に示す設計例1において、可変レンズ32及び41の変形面を非球面とした場合の面データを下記の表8に、また全体諸元及び面間隔、更に非球面データを下記の表9及び10に示す。
【0077】
[表8]面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(νd) 有効径
1 16.1754 1.41 1.7440 44.79 4.0607
2 -109.60855 d12 1.5057 34.90 3.6864
3* r13 d13 3.0238
4 -29.15474 0.6 1.7552 27.51 2.76
5 11.91251 5.5 2.5976
6 15.09107 1.02 1.7440 44.79 2.6296
7 -20.45717 0.8 1.9999
8 5.70415 1.06 1.7552 27.53 1.576
9 -89.48983 0.8 1.5225 59.84 1.3346
10 3.98084 0.4 1.0366
11 絞り 1.2 0.9502
12 -4.81816 0.8 1.7552 27.53 1.1125
13 5.7367 1.54 1.5638 60.83 1.3166
14 -5.40399 1.61 1.5993
15 20.74906 0.8 1.7408 27.79 2.1095
16 4.4 2.35 1.7434 44.79 2.2475
17 -10.56317 d117 2.4
18* r118 d118 1.5057 34.90 2.5785
19 4.85262 1.62 1.5638 60.83 2.4557
20 24.27371 1.941048 2.3646
21 INFINITY 0.105 1.5163 64.14
22 INFINITY 1.97763
23(像面) INFINITY
【0078】
[表9]各種データ
ズーム比 3
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.73 6.46 11.19
Fナンバー 3.2 3.85 5.3
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 30.3(一定)
BF 3.9(但し、カバーガラス厚を除く)

d12 0.03042 0.84686 1.22928
r13 4.70096 9.17627 21.45534
d13 1.86958 1.05314 0.67072
d117 1.26741 1.69039 2.59977
r118 7.40355 12.94742 -16.43472
d118 1.63259 1.20961 0.30023
【0079】
[表10]非球面係数
第3面 広角端 中間焦点距離 望遠端
k -1 -1 -1
1.5507×10-3 1.9793×10-4 -7.7287×10-6
6.4537×10-5 3.2942×10-6 9.1154×10-6
-1.4741×10-6 -2.5720×10-8 -1.5517×10-6
10 3.5145×10-7 -2.8353×10-9 9.3965×10-8
第18面 広角端 中間焦点距離 望遠端
k -1 -1 -1
3.3057×10-4 1.8181×10-5 3.3148×10-5
3.2447×10-5 2.3226×10-5 -4.0486×10-5
-4.5300×10-6 -4.0617×10-6 1.0280×10-5
10 2.7591×10-7 2.5643×10-7 -9.3530×10-7
【0080】
図27は、この参考例1においてバリエータとして搭載している屈折面変形型の可変レンズの変形面、つまり第3面の面中心を通る断面(径方向)に対する理想球面との差分を示す図である。また、図28はこの第3面の曲率半径Rに対する最大球面乖離量である。なお便宜上、フィッティングした理想球面は、設計例1におけるバリエータの広角端におけるレンズ有効径(φ6mm)としている。
【0081】
図27から、曲率半径が8.873mm(中間焦点距離)から7.47mm、6.47mm、4.7mm(広角端)となるにつれ、径方向の変化が大きくなることがわかる。また、図28からわかるように、屈折面変形型の可変レンズの曲率半径が小さく、すなわち曲率が大きくなるにつれて、屈折面変形型可変レンズ面の球面乖離量は顕著になり、広角端の曲率においては最大で13μm程度の球面乖離が生じる。
【0082】
この面形状を反映した例を参考例1として、設計例1においてバリエータ及びコンペンセータとして搭載している2つの可変レンズ32及び41の面形状の測定結果を多項式近似することによって反映させた光学特性を計算により求めた。この結果を以下に示す。図29(a)〜(c)に、広角端、中間焦点距離、望遠端における諸収差図を示し、球面収差図において、実線は波長670nm、一点鎖線は波長600nm、二点鎖線は波長555nm、太破線は波長510nm、細破線は波長470nmの球面収差を示す図である。また、非点収差図において実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示す。図30(a)〜(c)には参照波長555nmでの広角端、中間焦点距離、望遠端におけるMTF空間周波数特性を示す。図30においても、線a、bは回折限界を示し、線c、dは像高30%、線e、fは像高50%、線g、hは像高70%、線i、jは像高100%におけるタンジェンシャル(接線)、ラジアル(半径)方向の変調度をそれぞれ示す。
【0083】
図29及び30から明らかなように、屈折面変形型可変レンズの球面乖離量を反映すると、設計例1で期待される光学特性に対して特性が低下する。とりわけ広角端での光学特性の低下は顕著であり、非点収差、像面湾曲、歪曲収差が悪化し、また、MTFの空間周波数特性も低下している。なお、これは非球面を考慮せず設計した通常の弾性膜を用いた場合であり、変形膜材料の特性やテンション等の条件によっては、この結果よりも収差の低下を抑えることが可能である。
【0084】
(2−2)参考例2(参考例1を非球面を用いずに最適化した例)
次に、参考例1における固定レンズの面データを、非球面を用いずに最適化して光学性能の改善を図ることができるか検討した。この例における広角端、中間焦点距離、望遠端の概略レンズ構成を図31に示す。なお、レンズ群の数、屈折力、貼り合わせレンズとするレンズの個数や配置は設計例1とほぼ同様とし、面データのみ若干変更している。すなわち、図31に示すようにこの参考例2によるズームレンズ121においても、物体側から第1の可変レンズ432を含む第1のレンズ群451、口径絞りを挟んで物体側及び像側にガウスタイプの第2のレンズ群452を配置している。またその後段に、主として軸上収差補正を行う第3のレンズ群453、第2の可変レンズ441を含む第4のレンズ群454を配置している。固定レンズは物体側から順に431、433、434〜440、442を備える。また像面23に撮像素子444を配置することを想定してカバーガラス443を設けている。図31においても、面番号を物体側から順に1〜23として示す。下記の表17及び18に、参考例2におけるレンズ面データ、全体諸元及び面間隔を示す。なおこの参考例2でも、可変レンズに用いる屈折面変形型液体レンズの媒質として設計例1と同様に、d線の屈折率nd=1.5057、アッベ数νd=34.90の液体を用いている。
【0085】
[表17]面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(vd)
1 16.1754 1.41 1.7440 44.79
2 -18.82513 d52 1.5057 34.90
3* r53 d53
4 -15.6344 0.75 1.7552 27.51
5 12.10594 5.5
6 18.27895 1.02 1.7440 44.79
7 -15.83137 0.8
8 6.21915 1.06 1.7552 27.53
9 -13.78252 0.8 1.5225 59.84
10 5.07364 0.4
11 絞り 1.2
12 -4.58759 0.8 1.7552 27.53
13 4.07559 1.54 1.5638 60.83
14 -5.24593 1.61
15 -1809.13877 0.8 1.7408 27.79
16 4.4 2.35 1.7434 44.79
17 -7.83455 d517
18* r518 d518 1.5057 34.90
19 4.85262 1.62 1.5638 60.83
20 44.46226 1.941048
21 INFINITY 0.105 1.5163 64.14
22 INFINITY 1.97763
23(像面) INFINITY
【0086】
[表18]各種データ
ズーム比 3
広角 中間距離 望遠
焦点距離 3.74 6.46 11.18
Fナンバー 3.20 3.87 5.36
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 30.3(一定)
BF 3.9(但し、カバーガラス厚を除く)

d52 0.03042 0.84686 1.22928
r53 4.70096 9.17627 21.45534
d53 1.26741 1.69039 2.59977
d517 1.80536 0.80492 0.36739
r518 7.40355 12.94742 -16.43472
d518 1.63259 1.20961 0.30023
【0087】
[表19]非球面係数
第3面 広角端 中間焦点距離 望遠端
k -1 -1 -1
1.5507×10-3 1.9793×10-4 -7.7287×10-6
6.4537×10-5 3.2942×10-6 9.1154×10-6
-1.4741×10-6 -2.5720×10-8 -1.5517×10-6
10 3.5145×10-7 -2.8353×10-9 9.3965×10-8
第18面 広角端 中間焦点距離 望遠端
k -1 -1 -1
3.3057×10-4 1.8181×10-5 3.3148×10-5
3.2447×10-5 2.3226×10-5 -4.0486×10-5
-4.5300×10-6 -4.0617×10-6 1.0280×10-5
10 2.7591×10-7 2.5643×10-7 -9.3530×10-7
【0088】
この参考例2における広角端、中間焦点距離、望遠端における球面収差、非点収差及び歪曲収差を図32(a)〜(c)にそれぞれ示す。球面収差図において、実線は波長670nm、一点鎖線は波長600nm、二点鎖線は波長555nm、太破線は波長510nm、細破線は波長470nmの球面収差を示す図である。また、非点収差図において実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示す。また、参照波長555nmでの広角端、中間焦点距離、望遠端におけるMTF空間周波数特性をそれぞれ図33(a)〜(c)に示す。図33においても、線a、bは回折限界を示し、線c、dは像高30%、線e、fは像高50%、線g、hは像高70%、線i、jは像高100%におけるタンジェンシャル(接線)、ラジアル(半径)方向の変調度をそれぞれ示す。図32及び図33の結果から、このように、球面のみを用いて固定レンズの最適化を図っても、良好な収差特性が得られず、実用には供し難いことがわかる。したがって、このように変形面の球面乖離量が比較的多くなる場合は、固定レンズのいずれかの面1面以上に非球面を用いて設計することが好ましい。
【0089】
(2−3)設計例3(非球面1面追加例)
以上の結果をもとに、屈折面変形型液体レンズの球面乖離量を考慮して光学系の再設計を行った。
この設計例3においては、可変レンズとして用いる屈折面変形型液体レンズの面形状を反映し、固定レンズ群の曲率半径を変えて光学系を改善した。この例の広角端、中間焦点距離、望遠端における概略レンズ構成を図34に示す。なお、レンズ群の数、屈折力、貼り合わせレンズとするレンズの個数や配置は設計例1とほぼ同様とし、面データのみ若干変更している。すなわち、図34に示すようにこのズームレンズ104においても、物体側から第1の可変レンズ232を含む第1のレンズ群251、口径絞りを挟んで物体側及び像側にガウスタイプの第2のレンズ群252を配置している。またその後段に、主として軸上収差補正を行う第3のレンズ群253、第2の可変レンズ241を含む第4のレンズ群254を配置している。固定レンズは物体側から順に231、233、234〜240、242を備える。また像面23に撮像素子244を配置することを想定してカバーガラス243を設けている。図34においても、面番号を物体側から順に1〜23として示す。下記の表11、12及び13に、設計例3におけるレンズ面データ、全体諸元及び面間隔、非球面データを示す。なお、この設計例3では、可変レンズに用いる屈折面変形型液体レンズの媒質として設計例1と同様に、d線の屈折率nd=1.5057、アッベ数νd=34.90の液体を用いている。
【0090】
[表11]面データ
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(νd) 有効径
1 17.18464 1.41 1.7440 44.79 4.1556
2 -18.37532 d32 1.5057 34.90 3.9368
3* r33 d33 2.9956
4 -16.75079 0.6 1.7552 27.51 2.7599
5 12.82512 5.5 2.5775
6 15.6892 1.02 1.7440 44.79 2.0451
7 -19.45989 0.8 1.9568
8 6.05049 1.06 1.7552 27.53 1.6303
9 -20.91537 0.8 1.5225 59.84 1.4064
10 4.66761 0.4 1.0723
11 絞り 1.2 0.9593
12 -5.44351 0.8 1.7552 27.53 1.0949
13 4.16131 1.54 1.5638 60.83 1.2747
14 -7.11498 1.61 1.5406
15 24.23089 0.8 1.7408 27.79 2.0445
16 4.16923 2.35 1.7434 44.79 2.2185
17 -8.83975 d317 2.4018
18* r318 d318 1.5057 34.90 2.5893
19 4.85262 1.62 1.5638 60.83 2.4623
20* 23.95966 1.941048 2.3695
21 INFINITY 0.105 1.5163 64.14 2.298
22 INFINITY 1.988394 2.2955
23(像面) INFINITY 2.305
【0091】
[表12]各種データ
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.74 6.46 11.19
Fナンバー 3.20 3.86 5.34
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 30.3(一定)
BF 3.93(但し、カバーガラス厚を除く)

d32 0.03042 0.84686 1.22928
r33 4.70096 9.17627 21.45534
d33 1.86958 1.05314 0.67072
d317 1.26741 1.69039 2.599772
r318 7.40355 12.94742 -16.43472
d318 1.63259 1.20961 0.30023
【0092】
[表13]非球面係数
第3面(変形面)広角端 中間焦点距離 望遠端
k -1 -1 -1
A4 1.5507×10-3 1.9793×10-4 -7.7287×10-6
A6 6.4537×10-5 3.2942×10-6 9.1154×10-6
A8 -1.4741×10-6 -2.5720×10-8 -1.5517×10-6
A10 3.5145×10-7 -2.8353×10-9 9.3965×10-8
第18面(変形面)広角端 中間焦点距離 望遠端
k -1 -1 -1
A4 3.3057×10-4 1.8181×10-5 3.3148×10-5
A6 3.2447×10-5 2.3226×10-5 -4.0486×10-5
A8 -4.5300×10-6 -4.0617×10-6 1.0280×10-5
A10 2.7591×10-7 2.5643×10-7 -9.3530×10-7
第20面(固定)
k=-1, A4=4.7969×10-4, A6=-4.0486×10-5, A8=6.8513×10-6, A10=0
【0093】
この設計例3における広角端、中間焦点距離、望遠端における球面収差、非点収差及び歪曲収差を図35(a)〜(c)にそれぞれ示す。球面収差図において、実線は波長670nm、一点鎖線は波長600nm、二点鎖線は波長555nm、太破線は波長510nm、細破線は波長470nmの球面収差を示す図である。また、非点収差図において実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示す。また、参照波長555nmでの広角端、中間焦点距離、望遠端におけるMTF空間周波数特性をそれぞれ図36(a)〜(c)に示す。図36においても、線a、bは回折限界を示し、線c、dは像高30%、線e、fは像高50%、線g、hは像高70%、線i、jは像高100%におけるタンジェンシャル(接線)、ラジアル(半径)方向の変調度をそれぞれ示す。図35及び図36の結果から、この設計例3においても、良好な収差特性が得られることがわかる。
【0094】
また、図37及び図38は、軸外光線及び主光線において、第1のレンズ群151と第3のレンズ群153におけるn×sin(i)の平均値を求めた結果である。図37及び図38から、第1及び第2の可変レンズ232及び241を含む第1及び第4のレンズ群251及び254では、n×sin(i)の平均値は0.5未満となることがわかる。
【0095】
また、図39及び図40は、波長530nmの像点との差分(μm)を波長450nmと600nmの光線について、規格化されたフィールド(画角)に対する横収差を解析した結果であり、図39は広角端の横収差、図40は望遠端の横収差である。図39及び図40から、この例においても、特に望遠端については横収差が画角に対してリニアに変化しており、倍率色収差補正素子を追加しなくても信号補正による収差補正が可能であるといえる。広角端についてはややリニアな変化ではなくなっているが、この例においては、第3のレンズ群253を設けるため軸上の収差補正を行っている。よって設計例3においては、周辺光線の倍率色収差は残留する構成となっているが、上述したように信号補正によって収差補正が可能であり、設計例1と同様に、軸上収差補正のみを設けて良好な光学特性が得られている。
【0096】
また、図41、42及び43にそれぞれ、設計例1、参考例1及び設計例3における倍率色収差を示す。各図においてそれぞれ広角端、中間焦点距離、望遠端における倍率色収差を示している。また図中三角記号は波長670nm、四角記号は波長600nm、丸記号は波長550nm、記号×は波長510nm、記号+は波長470nmの倍率色収差を示す。図41〜43を比較すると明らかなように、設計例1において球面乖離量が十分小さく球面とみなせるような場合はスポットの歪みが少ないが、非球面形状として球面乖離量が大きくなると特に広角端で楕円状に歪み、非点収差が大きくなる。一方、設計例3において固定レンズのうち一面に非球面を組み込むことで、倍率色収差が大幅に改善され、非点収差、コマ収差も抑えられることがわかる。
【0097】
この場合、参考例1に示すような変形面の固定レンズ群に球面レンズを用いる制約条件下では大きな改善はみられないため、最も像側のレンズ面であるレンズ最終面(第20面)に非球面レンズを用いることによって性能の改善を実現している。
またこの設計例3では、固定レンズ群の一面の非球面化だけでなく、曲率半径、更にレンズ間隔、レンズ厚み、使用硝材を変えることによっても性能改善を図っている。
【0098】
なお、設計例3ではレンズ第1面から像までの距離が30.3mmとなっている。また、バックフォーカスや平行平板(平行平板は空気換算)を含まない全長が26.3mmであり、ガラス総厚みが13.5mmで、その比は13.5/26.3≒51%である。すなわち設計例3においても、設計例1と同様に、レンズ全長に対するレンズ厚の総和の割合を40%以上として構成し、小型化を図った設計となっている。
【0099】
このように、第2の実施の形態に係るズームレンズの構成、すなわち固定レンズに非球面を取り入れることで、第1の実施の形態に係るズームレンズと比較して、変形面の球面乖離量が大きくなる場合においても良好な光学特性を有する光学系が実現できる。
【0100】
(2−4)設計例4(非球面2面追加例)
次に、非球面枚数を変えて光学特性の改善を図る設計例4について検討した。この例における広角端、中間焦点距離、望遠端の概略レンズ構成を図44に示す。なお、レンズ群の数、屈折力、貼り合わせレンズとするレンズの個数や配置は設計例1及び3とほぼ同様とし、面データのみ若干変更している。すなわち、図44に示すようにこのズームレンズ105においても、物体側から第1の可変レンズ332を含む第1のレンズ群351、口径絞りを挟んで物体側及び像側にガウスタイプの第2のレンズ群352を配置している。またその後段に、主として軸上収差補正を行う第3のレンズ群353、第2の可変レンズ341を含む第4のレンズ群354を配置している。固定レンズは物体側から順に331、333、334〜340、342を備える。また像面23に撮像素子344を配置することを想定してカバーガラス343を設けている。図44においても、面番号を物体側から順に1〜23として示す。下記の表14、15及び16に、設計例4におけるレンズ面データ、全体諸元及び面間隔、非球面データを示す。またこの設計例4でも、可変レンズに用いる屈折面変形型液体レンズの媒質として設計例1及び3と同様に、d線の屈折率nd=1.5057、アッベ数νd=34.90の液体を用いている。
【0101】
[表14]面データ
(非球面2面追加、第1面、第20面)
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(νd) 有効径
1* 16.1754 1.41 1.7440 44.79 4.1028
2 -28.48612 d42 1.5057 34.90 3.8288
3* r43 d43 2.9699
4 -11.97721 0.6 1.7552 27.51 2.7615
5 24.54135 5.5 2.6345
6 23.96047 1.02 1.7440 44.79 2.6521
7 -20.28325 0.8 1.9603
8 5.07312 1.06 1.7552 27.53 1.8698
9 -52.55789 0.8 1.5225 59.84 1.5698
10 4.25199 0.4 1.341
11 絞り 1.2 1.0474
12 -4.60686 0.8 1.7552 27.53 1.0919
13 4.49736 1.54 1.5638 60.83 0.9587
14 -5.34143 1.61 1.1015
15 21.43089 0.8 1.7408 27.79 1.3084
16 4.4 2.35 1.7434 44.79 1.5866
17 -9.95388 d417 2.0997
18* r418 d418 1.5057 34.90 2.2449
19 4.85262 1.62 1.5638 60.83 2.4085
20* 22.2209 1.941048 2.582
21 INFINITY 0.105 1.5163 64.14 2.4506
22 INFINITY 1.968658 2.3533
23(像面) INFINITY
【0102】
[表15]各種データ
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.73 6.46 11.19
Fナンバー 3.20 3.85 5.30
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 30.3(一定)
BF 3.91(ただし、カバーガラス厚を除く)

d42 0.03042 0.84686 1.22928
r43 4.70096 9.17627 21.45534
d43 1.86958 1.05314 0.67072
d417 1.26741 1.69039 2.599772
r418 7.40355 12.94742 -16.43472
d418 1.63259 1.20961 0.30023
【0103】
[表16]非球面係数
第1面(固定) 広角端 中間焦点距離 望遠端
k=-1, A4 =1.61×10-4, A6=3.11×10-6, A8=-9.61×10-8, A10=0
第3面(変形面)
k -1 -1 -1
A4 1.5507×10-3 1.9793×10-4 -7.7287×10-6
A6 6.4537×10-5 3.2942×10-6 9.1154×10-6
A8 -1.4741×10-6 -2.5720×10-8 -1.5517×10-6
A10 3.5145×10-7 -2.8353×10-9 9.3965×10-8
第18面(変形面)広角端 中間焦点距離 望遠端
k -1 -1 -1
A4 3.3057×10-4 1.8181×10-5 3.3148×10-5
A6 3.2447×10-5 2.3226×10-5 -4.0486×10-5
A8 -4.5300×10-6 -4.0617×10-6 1.0280×10-5
A10 2.7591×10-7 2.5643×10-7 -9.3530×10-7
第20面(固定)
k=-1, A4=4.7969×10-4, A6=-4.0486×10-5, A8=6.8513×10-6, A10=0
【0104】
この設計例4における広角端、中間焦点距離、望遠端における球面収差、非点収差及び歪曲収差を図45(a)〜(c)にそれぞれ示す。球面収差図において、実線は波長670nm、一点鎖線は波長600nm、二点鎖線は波長555nm、太破線は波長510nm、細破線は波長470nmの球面収差を示す図である。また、非点収差図において実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示す。また、参照波長555nmでの広角端、中間焦点距離、望遠端におけるMTF空間周波数特性をそれぞれ図46(a)〜(c)に示す。図46においても、線a、bは回折限界を示し、線c、dは像高30%、線e、fは像高50%、線g、hは像高70%、線i、jは像高100%におけるタンジェンシャル(接線)、ラジアル(半径)方向の変調度をそれぞれ示す。図45及び図46の結果から、この設計例4においても、良好な収差特性が得られることがわかる。
【0105】
また、図47及び図48は、軸外光線及び主光線において、第1のレンズ群351と第4のレンズ群354におけるn×sin(i)の平均値を求めた結果である。図47及び図48から、この設計例4によるズームレンズ105においても、第1及び第2の可変レンズ332及び341を含む第1及び第4のレンズ群251及び254では、n×sin(i)の平均値は0.5未満となることがわかる。
【0106】
また、図49及び図50は、波長530nmの像点との差分(μm)を波長450nmと600nmの光線について、規格化されたフィールド(画角)に対する横収差を解析した結果であり、図49は広角端の横収差、図50は望遠端の横収差である。図49及び図50から、この例においても、特に望遠端については横収差が画角に対してリニアに変化しており、倍率色収差補正素子を追加しなくても信号補正による収差補正が可能であるといえる。広角端についてはややリニアな変化ではなくなっているが、この例においても設計例3と同様第3のレンズ群353を設けており、これにより軸上の収差補正を行っている。よって設計例4においては、周辺光線の倍率色収差は残留する構成となっているが、上述したように信号補正によって収差補正が可能であり、設計例1及び3と同様に、軸上収差補正のみを設けて良好な光学特性が得られている。
【0107】
この設計例4では、設計例3と同様最も像側のレンズ面であるレンズ最終面(第20面)に非球面レンズを用いると共に、最も物体側のレンズ面も非球面とすることによって性能の改善を実現している。
またこの設計例4でも、固定レンズ群の非球面化枚数の増加に加え、設計例1とは曲率半径、更にレンズ間隔、レンズ厚み、使用硝材を変えることによって、変形面の球面乖離量が大きくなる場合においても収差を抑え、光学特性を良好に保つことができる。
【0108】
なお、設計例4ではレンズ第1面から像までの距離が30.3mmとなっている。また、バックフォーカスや平行平板(平行平板は空気換算)を含まない全長が26.3mmであり、ガラス総厚みが13.5mmで、その比は13.5/26.3≒51%である。すなわち設計例4においても、設計例1及び3と同様に、レンズ全長に対するレンズ厚の総和の割合を40%以上として構成し、小型化を図った設計となっている。
【0109】
3.第3の実施の形態
(3−1)設計例5(非球面3面とし枚数削減する例)
次に、非球面を設けると共に枚数を削減して光学特性の改善と小型化を図る設計例5について検討した。この例における広角端、中間焦点距離、望遠端の概略レンズ構成を図51に示す。なお、レンズ群の数、屈折力、貼り合わせレンズとするレンズの個数や配置は設計例2とほぼ同様とし、面データのみ若干変更している。すなわち、図51に示すようにこのズームレンズ106においては、物体側から第1の可変レンズ532を含む第1のレンズ群551、口径絞りを挟んで物体側及び像側にガウスタイプの第2のレンズ群552を配置している。またその後段に、第2の可変レンズ538を含む第3のレンズ群553を配置している。固定レンズは物体側から順に531、533、534〜537、539を備える。また像面18に撮像素子544を配置することを想定してカバーガラス543を設けている。図51においても、面番号を物体側から順に1〜18として示す。下記の表20、21及び22に、設計例5におけるレンズ面データ、全体諸元及び面間隔、非球面データを示す。またこの設計例5でも、可変レンズに用いる屈折面変形型液体レンズの媒質として設計例1及び3と同様に、d線の屈折率nd=1.5057、アッベ数νd=34.90の液体を用いている。
【0110】
[表20]面データ
(非球面3面追加、第2面、第10面、第15面)
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(νd) 有効径
1 7.54899 1.5 1.743997 44.79 3.6697
2* -10.59909 d52 1.5057 34.90 3.5408
3 r53 d53 2.4304
4 3.67506 0.8 1.48749 70.41 1.9989
5 4.40199 0.8 1.7237
6 38.83283 1.06 1.755201 27.58 1.4738
7 -3.44066 0.8 1.551243 49.21 1.239
8 5.58805 0.4 1.7552 27.53 0.7903
9 絞り 0.8
10* -2.67752 0.8 1.696146 31.66 0.8246
11 12.31034 1.2 1.642457 56.31 1.2563
12 -2.22673 d512 1.51
13 r513 d513 1.5057 34.90 1.9679
14 2.89037 1.5 1.606736 61.05 2.2641
15* -11.15041 1.941048 2.2731
16 INFINITY 0.105 1.51633 64.14
17 INFINITY 1.898967
18(像面) INFINITY
【0111】
[表21]各種データ
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.74 6.46 11.18
Fナンバー 3.20 3.78 5.22
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 17.2(一定)
BF 3.84(ただし、カバーガラス厚を除く)

d52 1.24825 0.89009 0.01681
r53 6.37941 4.45693 3.08110
d53 0.50175 0.85991 1.73319
d512 1.83366 1.07571 0.52982
r513 -5.28355 53.97592 8.86056
d513 0.01634 0.77429 1.32018
【0112】
[表22]非球面係数
第2面(固定)
k=-1, A4 =1.6728×10-3, A6=-1.1612×10-5, A8=1.5511×10-6, A10=-5.4570×10-8
第10面(固定)
k=-1, A4 =-2.9369×10-2, A6=-1.8407×10-2, A8=1.5115×10-2, A10=-9.1391×10-3
第15面(固定)
k=-1, A4=-1.0445×10-3, A6=-7.2504×10-5, A8=2.1739×10-5, A10=7.9055×10-7
【0113】
この設計例5における広角端、中間焦点距離、望遠端における球面収差、非点収差及び歪曲収差を図52(a)〜(c)にそれぞれ示す。球面収差図において、実線は波長670nm、一点鎖線は波長600nm、二点鎖線は波長555nm、太破線は波長510nm、細破線は波長470nmの球面収差を示す図である。また、非点収差図において実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面を示す。また、参照波長555nmでの広角端、中間焦点距離、望遠端におけるMTF空間周波数特性をそれぞれ図53(a)〜(c)に示す。図53においても、線a、bは回折限界を示し、線c、dは像高30%、線e、fは像高50%、線g、hは像高70%、線i、jは像高100%におけるタンジェンシャル(接線)、ラジアル(半径)方向の変調度をそれぞれ示す。図52及び図53の結果から、この設計例4においても、良好な収差特性が得られることがわかる。
【0114】
また、図54及び図55は、軸外光線及び主光線において、第1のレンズ群551と第3のレンズ群553におけるn×sin(i)の平均値を求めた結果である。図54及び図55から、この設計例5によるズームレンズ106においても、第1及び第2の可変レンズ532及び538を含む第1及び第3のレンズ群551及び553では、n×sin(i)の平均値は0.5未満となることがわかる。
【0115】
また、図56及び図57は、波長530nmの像点との差分(μm)を波長450nmと600nmの光線について、規格化されたフィールド(画角)に対する横収差を解析した結果であり、図56は広角端の横収差、図57は望遠端の横収差である。図56及び図57から、この例においても、特に望遠端については横収差が画角に対してリニアに変化しており、倍率色収差補正素子を追加しなくても信号補正による収差補正が可能であるといえる。広角端についてはややリニアな変化ではなくなっているが、問題の内範囲となっている。よって設計例5においては、周辺光線の倍率色収差は残留する構成となっているが、上述したように信号補正によって収差補正が可能であり、且つ、設計例2と同様に、レンズ枚数を削減して、装置全体の小型化を図る構成を実現している。
【0116】
この設計例5では、最も像側のレンズ面であるレンズ最終面(第15面)に非球面レンズを用いる点は設計例3及び4と同じであるが、最も物体側から2番目の第2面を非球面とすることによって性能の改善を実現している。
またこの設計例5でも、固定レンズ群の非球面化枚数の増加に加え、設計例1とは曲率半径、更にレンズ間隔、レンズ厚み、使用硝材を変えることによって、変形面の球面乖離量が大きくなる場合においても収差を抑え、光学特性を良好に保つことができる。
【0117】
また、設計例5ではレンズ第1面から像までの距離が26.4mmとなっている。したがって、本設計例5を用いることによって設計例1と比較して13%程度光路長の短縮が図れる。また、バックフォーカスや平行平板(平行平板は空気換算)を含まない全長が22.26mmであり、ガラス総厚みが10.27mmで、その比は10.27/22.26≒46.1%である。すなわち設計例1よりもレンズ枚数を減らしつつ、空気部分の長さを短縮し、大幅な全長圧縮を達成した設計となっている。
【0118】
4.可変レンズと絞りとの距離の検討
(4−1)設計例6(非球面3面とする例)
次に、可変レンズを設ける最適な位置の範囲を求める一手法として、レンズ全長に対して、口径絞り位置から可変レンズの変形面までの距離の比について検討した結果を説明する。
先ず、設計例1におけるレンズ全長に対する口径絞りから可変レンズ変形面までの距離の比を図58を参照して説明する。図58において、図1と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。図58では望遠端と広角端の状態を示すが、ここでは望遠端及び広角端の両状態での各距離を規定した。すなわち図58に示すように、第1のレンズ31の物体側の面から口径絞りまでの距離をL1、口径絞りから物体側の可変レンズ32の可変面3までの距離をL2とする。同様に、口径絞りから像面23までの距離をL3、口径絞りから像側の可変レンズ41の可変面18までの距離をL4とする。
【0119】
このとき、
L2/L1(前側)=80.4%(望遠端)、89.3%(広角端)
L4/L3(後側)=64.7%(望遠端)、56.8%(広角端)
である。すなわち、
L2/L1≧0.55
L4/L3≧0.3
となっている。
【0120】
この範囲とすることで、収差が良好となり、特に倍率色収差に問題がない光学系が得られた。以下設計例6を参照してこれを説明する。
この設計例6においては、枚数削減を図ると共に固定レンズに非球面レンズを用いて設計した。中間焦点距離の状態での概略レンズ構成を図59に示す。
この例では、第1の可変レンズ632を含む物体側のレンズ群と、口径絞りを挟んでガウスタイプ構成として配置されるレンズ群と、第2の可変レンズ638を含む像側のレンズ群とを備える。物体側から順に負の屈折力を有する凸レンズ631、第1の可変レンズ632とで物体側のレンズ群が構成される。また、正の屈折力を有するメニスカスレンズ633と、正の屈折力を有するレンズ634及び負の屈折力を有する凹レンズ635とによる貼り合わせレンズ、絞り9を挟んで、負の屈折力を有する凹レンズ636及び凸レンズ637によってガウスタイプのレンズ群が構成される。像側のレンズ群として、正の屈折力を有する第2の可変レンズ638、正の屈折力を有する凸レンズ639が配置される。これらレンズ631及び632、638及び639は一体的に構成している。下記の表23、24及び25に、設計例6におけるレンズ面データ、各種データ及び面間隔、非球面データを示す。この設計例6では、可変レンズに用いる屈折面変形型液体レンズの媒質としてd線の屈折率nd=1.58、アッベ数νd=29.1の液体を用いている。またこの例では、第2面、第10面及び第15面を非球面レンズとしている。
【0121】
[表23]
面データ(単位:mm)
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(νd)
1 7.54899 1.5 1.743997 44.79
2* -10.5991 d62 1.58 29.1
3 r63 d63
4 3.67506 0.8 1.487490 70.41
5 4.40199 0.8
6 38.83283 1.06 1.755201 27.58
7 -3.44066 0.8 1.551243 49.21
8 5.58805 1.2
9 絞り 0.8
10* -2.67752 0.8 1.696146 31.66
11 12.31034 1.2 1.642457 56.31
12 -2.22673 d612
13 r613 d613 1.50570 34.9
14 2.89037 1.5 1.606736 61.05
15* -11.1504 1.941048
16 INFINITY 0.105 1.51633 64.1
17 INFINITY 1.898967
18(像面) INFINITY
【0122】
[表24]各種データ
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.73 6.46 11.19
Fナンバー 3.20 3.85 5.30
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 17.2(一定)
BF 3.84(ただし、カバーガラス厚を除く)
d62 0.01681 0.89009 1.24825
r63 3.0811 4.45693 6.37941
d63 1.73319 0.85991 0.50175
d612 0.52982 1.07571 1.83366
r613 8.86056 53.97592 -5.28355
d613 1.32018 0.77429 0.01634
【0123】
[表25]非球面係数
第2面(固定)
k=-1, A4 =0.167275×10-2, A6=-0.116120×10-4, A8=0.155110×10-5, A10=-0.545700×10-7
第10面(固定)
k=-1, A4=-0.293694×10-1, A6=-0.184065×10-1, A8=0.151149×10-1, A10=-0.913910×10-2
第15面(固定)
k=-1, A4=-0.104447×10-2, A6=-0.725035×10-4, A8=0.217394×10-4, A10=0.790550×10-6
【0124】
この設計例6において、図59に示すように、第1のレンズ631の物体側の面から口径絞りまでの距離をL1、第1の可変レンズ632の変形面3から口径絞りまでの距離をL2とする。同様に、口径絞りから像面18までの距離をL3、口径絞りから像側の可変レンズ638の変形面13までの距離をL4とする。
【0125】
このとき、
L2/L1(前側)=61%(望遠端)、79%(広角端)
L4/L3(後側)=46%(望遠端)、33%(広角端)
である。すなわち、
L2/L1≧0.55
L4/L3≧0.3
となっている。
【0126】
この場合の倍率色収差を図60に示す。図41〜43と同様に、広角端、中間焦点距離、望遠端における倍率色収差を示し、波長の記号も同様である。図60の結果から、倍率色収差が良好に抑えられ、非点収差、コマ収差も良好に抑えられることがわかる。
【0127】
(4−2)比較例2
この例では、設計例6によるレンズ構成を基本として、バリエータを構成する物体側のレンズ群を口径絞りに寄せる構成として設計した。図61は中間焦点距離の状態での概略レンズ構成を示す図である。この図61に示すように、この場合第1の可変レンズ732を含む物体側のレンズ群と、口径絞りを挟んでガウスタイプ構成として配置されるレンズ群と、第2の可変レンズ737を含む像側のレンズ群とを備える。物体側から順に負の屈折力を有する凸レンズ731、第1の可変レンズ732とで物体側のレンズ群が構成される。また、正の屈折力を有するレンズ733及び負の屈折力を有する凹レンズ734による貼り合わせレンズ、絞り7を挟んで、負の屈折力を有する凹レンズ735及び凸レンズ736によってガウスタイプのレンズ群が構成される。像側のレンズ群として、第2の可変レンズ737、正の屈折力を有する凸レンズ738が配置される。これらレンズ731及び732、737及び738は一体的に構成している。下記の表26、27及び28に、比較例2におけるレンズ面データ、各種データ及び面間隔、非球面データを示す。この比較例2においても、可変レンズに用いる屈折面変形型液体レンズの媒質としてd線の屈折率nd=1.58、アッベ数νd=29.1の液体を用いている。またこの例では、第2面、第8面及び第13面を非球面レンズとしている。
【0128】
[表26]
面データ(単位:mm)
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(νd) 有効径
1 7.54899 1.5 1.743997 44.79
2* -5.40283 d72 1.58 29.1
3 r73 d73
4 3.9399 0.8 1.710891 29.62
5 -14.5342 0.8
6 2.73163 1.06 1.530092 66.25
7 絞り 0.8
8* -3.92707 1.2 1.641483 34.32
9 1.95998 0.8 1.642896 56.24
10 -2.80214 d710 1.696146
11 r711 d711 1.505700 34.9
12 3.34364 1.5 1.744023 44.72
13* -13.9427 1.941048
14 INFINITY 0.105 1.51633 64.1
15 INFINITY 1.23868
16(像面) INFINITY
【0129】
[表27]各種データ
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.74 6.46 11.18
Fナンバー 3.20 3.85 5.30
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 15.0(一定)
BF 3.18(ただし、カバーガラス厚を除く)

d72 0.01681 0.89009 1.24825
r73 2.96505 4.41689 6.41903
d73 1.73319 0.85991 0.50175
d710 0.52982 1.07571 1.83366
r711 9.15216 -32.321 -3.02571
d711 1.32018 0.77429 0.01634
【0130】
[表28]非球面係数
第2面(固定)
k=-1, A4 =0.417449×10-2, A6=-0.210209×10-3, A8=0.754389×10-5, A10=-0.108528×10-6
第8面(固定)
k=-1, A4=-0.458388×10-2, A6=-0.212586×10-1, A8=0.326344×10-1, A10=-0.178517×10-1
第13面(固定)
k=-1, A4=-0.898835×10-4, A6=-0.128858×10-4, A8=0.203481×10-4, A10=-0.962441×10-6
【0131】
この比較例2において、図61に示すように、第1のレンズ731の物体側の面から口径絞りまでの距離をL1、第1の可変レンズ732の変形面3から口径絞りまでの距離をL2とする。同様に、口径絞りから像面16までの距離をL3、口径絞りから像側の可変レンズ737の変形面11までの距離をL4とする。
【0132】
このとき、
L2/L1(前側)=50%(望遠端)、73%(広角端)
である。すなわち、広角端においては、
L2/L1≧0.55
となっていないことがわかる。
【0133】
この場合の倍率色収差を図62に示す。図41〜43と同様に、広角端、中間焦点距離、望遠端における倍率色収差を示し、波長の記号も同様である。図58の結果から、望遠端でも各波長のスポットが楕円状となっており、非点収差が残留していることがわかる。また、中間焦点距離、広角端において歪が見られ、コマ収差が発生していることがわかる。
【0134】
以上の結果から、物体側に配置するレンズ群に設ける可変レンズの変形面を口径絞りに近づけた場合、設計例6と比べて収差が大きくなり好ましくない結果となっている。これは、バリエータの機能を担っている物体側の可変レンズと口径絞りとの距離が近いために、ズーム倍率が確保しにくい構成になってしまっているためである。また、可変レンズにおいて各像高の光束の分離が十分でないために収差補正が良好に行えないためと考えられる。更に、距離L2を大きくすることによって、レンズを追加することができ、これも収差補正に好ましい結果となる。よって、物体側のレンズ群に設ける可変レンズの変形面の口径絞りからの距離L2は、最も物体側のレンズ面と口径絞りとの距離L1に対して、
L2/L1≧0.55
とすることが好ましいことがわかる。
【0135】
(4−3)比較例3
この例では、設計例6によるレンズ構成を基本として、コンペンセータを構成する像側のレンズ群を口径絞りに寄せる構成として設計した。図63は中間焦点距離の状態での概略レンズ構成である。図63に示すように、この場合も第1の可変レンズ832を含む物体側のレンズ群と、口径絞りを挟んでガウスタイプ構成として配置されるレンズ群と、第2の可変レンズ838を含む像側のレンズ群とを備える。物体側から順に負の屈折力を有する凸レンズ831、第1の可変レンズ832とで物体側のレンズ群が構成される。また、正の屈折力を有するメニスカスレンズ833と、正の屈折力を有するレンズ834及び負の屈折力を有する凹レンズ835とによる貼り合わせレンズ、絞り9を挟んで、負の屈折力を有する凹レンズ836及び凸レンズ837によってガウスタイプのレンズ群が構成される。像側のレンズ群として、第2の可変レンズ838、正の屈折力を有する凸レンズ839が配置される。これらレンズ831及び832、838及び839は一体的に構成している。下記の表29、30及び31に、比較例3におけるレンズ面データ、各種データ及び面間隔、非球面データを示す。この比較例3では、可変レンズに用いる屈折面変形型液体レンズの媒質としてd線の屈折率nd=1.58、アッベ数νd=29.1の液体を用いている。またこの例では、第2面、第10面及び第15面を非球面レンズとしている。
【0136】
[表29]
面データ(単位:mm)
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率(nd) アッベ数(νd)
1 7.54899 1.5 1.743997 44.79
2* -10.0619 d82 1.58 29.1
3 r83 d83
4 3.02026 0.8 1.495893 69.49
5 3.50892 0.8
6 18.18931 1.06 1.743914 28.05
7 -3.58454 0.8 1.565822 44.01
8 5.48381 0.4
9 絞り 0.6
10* -2.07059 0.6 1.679758 39.42
11 18.9801 0.8 1.622701 59.87
12 -1.84544 d812
13 r813 d813 1.50570 34.9
14 2.61414 1.5 1.599339 61.46
15* -6.81503 1.941048
16 INFINITY 0.105 1.51633 64.1
17 INFINITY 1.769436
18(像面) INFINITY
【0137】
[表30]各種データ
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.73 6.46 11.19
Fナンバー 3.20 3.85 5.30
画角[度] 63.4 39.3 23.3
全長 16.1(一定)
BF 3.7(ただし、カバーガラス厚を除く)

d82 0.01681 0.89009 1.24825
r83 3.02812 4.37464 6.40603
d83 1.73319 0.85991 0.50175
d812 0.53000 0.90000 1.40000
r813 10.02573 -59.79449 -3.83702
d813 0.90000 0.53000 0.03000
【0138】
[表31]非球面係数
第2面(固定)
k=-1, A4 =0.162611×10-2, A6=-0.230613×10-4, A8=0.179689×10-5, A10=-0.678152×10-7
第10面(固定)
k=-1, A4=-0.428330×10-1, A6=-0.404108×10-1, A8=0.477848×10-1, A10=-0.341922×10-1
第15面(固定)
k=-1, A4=-0.201010×10-2, A6=-0.202190×10-4, A8=0.365219×10-4, A10=0.563284×10-5
【0139】
この比較例3において、図63に示すように、第1のレンズ831の物体側の面から口径絞りまでの距離をL1、第1の可変レンズ832の変形面3から口径絞りまでの距離をL2とする。同様に、口径絞りから像面18までの距離をL3、口径絞りから像側の可変レンズ838の変形面13までの距離をL4とする。
【0140】
このとき、
L2/L1(前側)=61%(望遠端)、79%(広角端)
L4/L3(後側)=39%(望遠端)、29%(広角端)
である。すなわち、前側では望遠端、広角端共に
L2/L1≧0.55
となっているが、広角端においては、
L4/L3<0.3
となっている。
【0141】
この場合の倍率色収差を図64に示す。図41〜43と同様に、広角端、中間焦点距離、望遠端における倍率色収差を示し、波長の記号も同様である。図64の結果から、望遠端において、特に非点収差が悪化しており、好ましくない。つまり、L4/L3<0.3では、各像高の光束が、第2の可変レンズ上で分離されていないために、収差補正が良好に行われないことがわかる。
【0142】
以上の結果から、本発明のズームレンズにおいては、
L2/L1≧0.55
L4/L3≧0.3
とすることが好ましいといえる。
【0143】
5.有効径に関する検討
次に、上述した第2の実施の形態に係るズームレンズに関して、レンズフレーム内径に対するレンズ有効径の割合に関して検討した結果を説明する。
一般にレンズ有効径を一定としたときに、フレーム径を大きくしても前述の図23において説明した屈折面変形型レンズの変形面の理想球面からの球面乖離量は殆ど変化しない。言い換えると、レンズ有効径とレンズの使用曲率半径が決まれば、球面乖離量が決まる。
【0144】
図65にこの様子を示す。図65において、横軸は有効径率=(有効径/フレーム内径、単位%)であり、縦軸は理想球面からの球面乖離量(広角端バリエータである第1の可変レンズの変形面の曲率半径で計算、単位μm)である。なおこの例では、一般的なシリコーン樹脂等の弾性膜を用いる場合を示している。図65から、有効径率に対して球面乖離量は殆ど変化が見られないことがわかる。
【0145】
ここで、球面乖離量Δzはフレーム内径Dに依存しないことから、使用曲率半径を有効径で割った無次元数(R/D)と球面乖離量を有効径で割った無次元数(Δz/D)をグラフ上にプロットし、近似曲線(y=0.8013x-3.323)を引いた結果を図66に示す。R/Dによって球面乖離量は決まることから、この曲線は、R/Dの値に対する球面乖離量を示したグラフとなっており、この曲線上に設計値のポイントがのることがわかる。
【0146】
図1に示すズームレンズにおける可変レンズの面形状を反映した場合の倍率色収差を示す図42より、広角端での光学特性は劣化し、中間焦点距離ではボーダーライン、望遠端ではほとんど光学特性は変化しない。したがって、この中間焦点距離位置を境に球面で設計するか、非球面で設計をするかを境界条件とすることができる。結局、屈折面変形型の可変レンズを点線よりも上の領域で設計するときは、可変レンズを非球面として設計する必要がでてくる。なお、変形膜の材料や初期テンション、フレーム径によってこの曲線は変化する。
【0147】
したがって、上述した第2の実施の形態に係るズームレンズのように、変形面を非球面とするレンズは、下記の場合に適用することが好ましい。すなわちズームレンズに設ける可変レンズのうち、いずれかの変形面の球面乖離量Δz、このときの有効径をDとしたとき、使用範囲内でのΔz/Dについて、
Δz/D>0.205
として使用する場合に、この変形面を非球面とすることが好ましい。
【0148】
このような条件として設計することで、上述の設計例3、4におけるように、良好に収差を抑えることが可能となる。
【0149】
6.第4の実施形態
第4の実施形態では、本発明のズームレンズを備える電子機器の一例について説明する。なお、ここでは、例えばカメラ等の撮像装置に本発明のズームレンズを適用する例を説明する。
【0150】
図67に、本実施形態の撮像装置の概略ブロック構成図を示す。本実施形態の撮像装置160は、ズームレンズ100と撮像素子161とを含むカメラモジュール170と、映像信号処理部162と、映像信号記録/再生部163と、内部メモリ164と、表示装置165と、制御部166とを備える。各部の機能及び構成は次の通りである。
【0151】
ズームレンズ100は、被写体光を取り込んで撮像素子161の撮像面(不図示)に結像させる。ズームレンズ10としては、上述した第1〜第3の実施形態で説明したズームレンズ101〜106のいずれかを用いることができる。
【0152】
撮像素子161は、ズームレンズ100により結像された被写体光を光電変換して画像信号を生成する。そして、撮像素子161の出力端子は映像信号処理部162の入力端子に接続されており、撮像素子161は、生成した画像信号を映像信号処理部162に出力する。なお、撮像素子161としては、例えば、CCD型、CMOS型等の各種タイプのイメージセンサを適用することができる。
【0153】
映像信号処理部162は、撮像素子161から入力された画像信号に対して例えば補正処理、ノイズ除去処理等の所定の画像処理を施す。そして、映像信号処理部162の出力端子は、映像信号処理部162の入力端子に接続され、映像信号処理部162は、画像処理が施された信号を映像信号記録/再生部163に出力する。
【0154】
映像信号記録/再生部163は、例えばマイクロコンピュータ(CPU:Central Processing Unit)等からなる演算回路等で構成され、映像信号処理部162から入力された画像信号の記録処理及び/又は再生処理の制御を行う。具体的には、映像信号記録/再生部163は、内部メモリ164に接続されており、映像信号処理部162から入力された画像信号を記録する場合にはその画像信号を内部メモリ164に出力する。また、映像信号記録/再生部163は、表示装置165に接続されており、映像信号処理部162から入力された画像信号を表示再生する場合にはその画像信号を表示装置165に出力する。
【0155】
内部メモリ164は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ、光ディスク等で構成することができる。そして、内部メモリ164は、映像信号記録/再生部163から入力された画像信号を格納する。
【0156】
表示装置165は、映像信号記録/再生部163から供給された画像信号を表示モニタで表示可能な形式の信号に変換して表示する。なお、表示装置165は、表示モニタだけでなく、表示モニタを駆動するモニタ駆動部も備える。また、表示モニタは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)パネル等で構成することができる。
【0157】
制御部166は、撮像装置160の各部の動作を制御する。また、制御部166は、例えばズームボタン等の操作により生成される操作信号(焦点距離に対応する信号)に基づいて、ズームレンズ100の動作、具体的には、ズームレンズ100内の物体側のレンズ群及び像側のレンズ群の曲率を制御する。
【0158】
上述のように、本実施形態の撮像装置160では、上記第1〜第3の実施形態で説明した本発明のズームレンズ100を備えているので、収差特性が良好で、且つより小型のズーム機能を備えた撮像装置160を提供することができる。
【0159】
7.第5の実施形態
上記第5の実施形態では、本発明のズームレンズを適用する電子機器として、撮像装置を例に挙げ説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明のズームレンズは、撮影機構部(カメラモジュール)を有する例えば、携帯通信端末装置、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)等の情報端末装置にも適用可能である。
【0160】
第5の実施形態では、本発明のズームレンズを、カメラモジュールを有する携帯通信端末装置に適用した例を説明する。なお、ここでいう携帯通信端末装置は、いわゆる携帯電話と称されるものであり、無線電話用の基地局と無線通信を行う端末装置である。
【0161】
[携帯通信端末装置の構成]
図68に、本実施形態の携帯通信端末装置の概略ブロック構成図を示す。携帯通信端末装置200は、制御部201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)と、アンテナ204と、通信制御部205と、表示制御部206と、表示部207とを備える。また、携帯通信端末装置200は、カメラモジュール209と、カメラ制御部208とを備える。
【0162】
また、携帯通信端末装置200は、通話時の音声データをデジタルアナログ変換する音声処理部211と、通話時の音声を出力するためのスピーカ212と、通話時の音声を吸音するためのマイクロフォン213とを備える。さらに、携帯通信端末装置200は、メモリカードインターフェース214と、メモリカード215と、操作部216と、赤外線インターフェース217と、赤外線通信部218とを備える。そして、上述した各部は、図68に示すように、信号バス210を介して電気的に直接的または間接的に接続される。各部の機能及び構成は次の通りである。
【0163】
制御部201は、例えばCPU等の演算制御装置からなり、携帯通信端末装置200全体の動作を制御する。具体的には、制御部201は、ROM202に記憶されている制御プログラムをRAM203に展開し、信号バス210を介して携帯通信端末装置200全体の動作を制御する。
【0164】
通信制御部205は、アンテナ204を介して携帯電話基地局(不図示)との間で送信信号の送信及び受信信号の受信を行う。なお、通信制御部205では携帯電話基地局とやり取りする電波の変調及び復調も行う。具体的には、通信制御部205は、音声通話モードにおいては、受信した音声情報に対して所定の処理を施し、その処理後の信号を音声処理部211を介してスピーカ212に出力する。また、通信制御部205は、マイクロフォン213が集音した音声を音声処理部211を介して取得し、その取得した情報に対して所定の処理を施した後、その処理後の信号をアンテナ204を介して送信する。
【0165】
表示制御部206は、信号バス210を介して供給された画像信号を、表示部207で表示可能な形式の信号に変換し、その変換した信号を表示部207に出力する。また、表示部207は、例えばLCD、有機ELパネル等で構成することができ、表示制御部206から供給された信号を画像として表示画面上に表示する。
【0166】
カメラモジュール209は、被写体光を取り込んで結像させ、その結像された被写体光を光電変換して画像信号を生成する。そして、カメラモジュール208は、その画像信号をカメラ制御部208に出力する。カメラモジュール209は、ズームレンズ20と、撮像素子とを備える。
【0167】
ズームレンズは、被写体光を取り込んで撮像素子の撮像面(不図示)に結像させる。ズームレンズとしては、上述した第1〜第3の実施形態で説明したズームレンズのいずれかを用いることができる。また、撮像素子は、ズームレンズにより結像された被写体光を光電変換して画像信号を生成する。なお、撮像素子としては、例えば、CCD型、CMOS型等の各種タイプのイメージセンサを適用することができる。
【0168】
メモリカード215は、例えば半導体メモリ等で構成することができる。そして、記メモリカード215は、カメラモジュール209で撮影した静止画、動画等の情報や、音声通話時の音声情報等をメモリカードインターフェース214を介して取得し格納する。
【0169】
操作部216は、ジョグダイアルやキーパッドなどから構成される。操作部216では、電話番号やメール文などの入力操作、各種モードの設定操作などの入力操作信号を入力することができる。また、カメラモジュール209での撮影操作及びモード設定操作もこの操作部216で行う。
【0170】
赤外線通信部218は、図示しないが、赤外線発光素子と赤外線受光素子とを備え、外部の赤外線通信可能な情報機器、例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、PDA等との間で情報の送受信を行うことができる。より具体的には、赤外線通信部218は、メモリカード215等に記憶された画像情報及び音声情報等を、赤外線インターフェース217を介して取得し、外部情報機器に送信する。また、赤外線通信部218は、外部情報機器から送信された情報を受信し、その受信信号を赤外線インターフェース217を介してメモリカード215等に出力する。
【0171】
なお、図68には示していないが、携帯通信端末装置200は電源部を備えており、電源部から各部に電力が供給される。
【0172】
[画像情報の記録及び再生動作]
ここで、本実施形態の携帯通信端末装置200におけるカメラモジュール209で撮影した画像信号の記録及び再生処理の動作を簡単に説明する。
【0173】
まず、カメラ制御部208は、カメラモジュール209を駆動制御して、静止画及び動画等の画像の撮影を行う。カメラ制御部208は、取得した画像情報に対して、例えばJPEG方式、MPEG方式等の圧縮技術を利用した圧縮加工等の処理を行う。そして、カメラ制御部208は、圧縮加工された画像情報を信号バス210に出力する。
【0174】
次いで、RAM203は、信号バス210を介して、画像情報を取得し、その情報を一時保存する。この際、RAM203は、撮影と同時にマイクロフォン213を通じて収録された音声情報を画像情報と共に取得し、一時的に保存してもよい。
【0175】
なお、この際、制御部201は、必要に応じて、画像情報及び/又は音声情報は、メモリカードインターフェース214を介してメモリカード215に保存されてもよい。さらに、この際、制御部201は、必要に応じて、画像情報を表示制御部206を介して表示部207に表示し、音声情報を音声処理部211を介してスピーカ212に出力してもよい。
【0176】
さらに、制御部201は、取得した画像情報や音声情報を、必要に応じて、赤外線通信部218を介して赤外線通信可能な外部機器に送信してもよい。
【0177】
なお、RAM202やメモリカード215に保存されている画像情報を読み出して、表示部207に動画あるいは静止画を表示する際には、カメラ制御部208が、RAM202やメモリカード215に保存されているデータを一旦読み出して、データのデコードや解凍を行う。そして、カメラ制御部208、処理後の画像データを通信バス210を介して表示制御部206に供給する。
【0178】
上述のように、本実施形態の携帯通信端末装置200では、上記第1及び第2の実施形態で説明した本発明のズームレンズ101〜106を含むカメラモジュール209を備えている。このため、本実施形態では、可変レンズを用いることでより小型であり、また収差特性の良好なズームの機能を備えた携帯通信端末装置200を提供することができる。
【0179】
なお、上記第5の実施形態では、カメラモジュール209と、カメラ制御部208とを別体とした例を説明しているが、本発明はこれに限定されず、カメラモジュール209がカメラ制御部208を含んでいてもよい。さらに、制御部201において、上述したカメラ制御部208の制御と同様の制御を行う場合には、カメラ制御部208を設けない構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0180】
1〜23…面番号、31,33〜40,42…レンズ、32…第1の可変レンズ、41…第2の可変レンズ、51…第1のレンズ群、52…第2のレンズ群、53…第3のレンズ群、54…第4のレンズ群、100〜106…ズームレンズ、160…撮像装置、161…撮像素子、166,201…制御部、170,209…カメラモジュール、200…携帯通信端末装置、208…カメラ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側に配置され、変形する透明材料からなる変形面を有する第1の可変レンズを含み、該第1の可変レンズの変形により焦点距離が変化する物体側のレンズ群と、
前記物体側のレンズ群に対して絞りを挟んで像側に配置され、変形する透明材料からなる変形面を有する第2の可変レンズを含み、該第2の可変レンズの変形により焦点距離が変化する像側のレンズ群と、
前記物体側のレンズ群と、像側のレンズ群との間に配置され、口径絞りを含むレンズ群と、を有し、
前記物体側のレンズ群及び像側のレンズ群に設けられる前記第1及び第2の可変レンズの変形を制御することによって変倍を行うとともに、変倍による像面移動補償及び焦点合わせが行われる
ズームレンズ。
【請求項2】
前記物体側のレンズ群の屈折力を負の方向に強くするときに、前記像側のレンズ群の屈折力が正の方向に強くなるように制御することにより、望遠側からワイド側へとズームする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記像側のレンズ群の前記第2の可変レンズの変形面は該像側のレンズ群の最も物体側に配置され、望遠端のときに物体側に凹面とされ、広角端のときに凸面とされる請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記像側のレンズ群の前記第2の可変レンズの変形面の曲率は、望遠側から広角側にズームするとき、正の方向に変化する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記口径絞りから最も物体側の光軸上のレンズ面までの距離をL1、前記口径絞りから前記第1の可変レンズの光軸上のレンズ面までの距離をL2、前記口径絞りから像面までの距離をL3、前記口径絞りから前記第2の可変レンズの光軸上のレンズ面までの距離をL4としたとき、
L2≧0.55×L1
L4≧0.3×L3
である請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記口径絞りを含むレンズ群が、球面収差、奇数次の収差及び色収差の少なくともいずれかを補正する機能を有するレンズ群を含む請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項7】
非球面レンズが含まれる請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記非球面レンズが、前記物体側のレンズ群又は前記像側のレンズ群の少なくともいずれかに含まれる請求項7に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記非球面レンズが、前記第1の可変レンズに対し物体側か、前記第2の可変レンズに対し像側、或いはその両方に配置される請求項7に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記非球面レンズが、前記像側のレンズ群の最も像側に配置される請求項7に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記非球面レンズが、更に、前記物体側のレンズ群の最も物体側に配置される請求項7に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記口径絞りを挟んで配置されるレンズ群と、前記第2の可変レンズを含む像側のレンズ群との間に、軸上の色収差を補正する機能を有するレンズ又はレンズ群が配置される請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項13】
前記第1及び第2の可変レンズは、光透過性の固体材料と、光透過性の弾性膜との間に光透過性の液体又はゲルが封入され、前記液体又はゲルと前記弾性膜との変形により焦点距離を変化させる構造である請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項14】
前記物体側のレンズ群と前記像側のレンズ群との間に、光路を折り曲げる光路偏向素子が配置されて成る請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項15】
少なくとも望遠端側で、使用波長において横収差が画角に対し略比例して変化する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項16】
前記第1及び第2の可変レンズの内部の透明材料の屈折率をnとし、入射角又は出射角をiとするとき、
n×sin(i)<0.5
である請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項17】
最も物体側のレンズ面から、最も像側のレンズ面までの距離に対する、全レンズ厚の占める割合が40%以上である請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項18】
前記第1、第2の可変レンズのいずれかの変形面において、球面乖離量をΔz、レンズ有効径をDとし、使用範囲内でのΔz/Dについて、
Δz/D>0.205
として使用する場合に、前記変形面を非球面とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項19】
物体側に配置され、変形する透明材料からなる変形面を有する第1の可変レンズを含み、該第1の可変レンズの変形により焦点距離が変化する物体側のレンズ群と、前記物体側のレンズ群に対して口径絞りを挟んで像側に配置され、変形する透明材料からなる変形面を有する第2の可変レンズを含み、該第2の可変レンズの変形により焦点距離が変化する像側のレンズ群と、前記物体側のレンズ群と像側のレンズ群との間に配置され、口径絞りを含むレンズ群と、を有し、前記物体側のレンズ群及び像側のレンズ群に設けられる前記第1及び第2の可変レンズの変形を制御することによって変倍を行うとともに、変倍による像面移動補償及び焦点合わせが行われるズームレンズと、
前記ズームレンズにより結像された像を撮像する撮像素子と、を備える
カメラモジュール。
【請求項20】
物体側に配置され、変形する透明材料からなる変形面を有する第1の可変レンズを含み、該第1の可変レンズの変形により焦点距離が変化する物体側のレンズ群と、前記物体側のレンズ群に対して口径絞りを挟んで像側に配置され、変形する透明材料からなる変形面を有する第2の可変レンズを含み、該第2の可変レンズの変形により焦点距離が変化する像側のレンズ群と、前記物体側のレンズ群と像側のレンズ群との間に配置され、口径絞りを含むレンズ群と、を有し、前記物体側のレンズ群及び像側のレンズ群に設けられる前記第1及び第2の可変レンズの変形を制御することによって変倍を行うとともに、変倍による像面移動補償及び焦点合わせが行われるズームレンズと、
前記ズームレンズにより結像された像を撮像する撮像素子と、
前記ズームレンズの前記第1及び第2の可変レンズを制御する制御部と、を備える
電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【公開番号】特開2011−13583(P2011−13583A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159348(P2009−159348)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】