説明

セラミック基板、及びセラミック基板の製造方法

【課題】セラミック基板上の金属膜(第1の金属層、第2の金属層)のエッチング工程の歩留まりを向上させることのできるセラミック基板を提供する。
【解決手段】セラミック部2と、セラミック部2の少なくとも1面に、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属が拡散されためっき抑制層3と、から構成されるセラミック基板としたので、第1の金属層7を形成する際に、これらビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属が触媒毒として働き、第1の金属層7の成分がセラミック部2の表面深くから成長するのを抑制できるため、容易に金属膜(特に第1の金属膜7)をエッチングによって除去でき、その結果として、セラミック基板上の金属膜(第1の金属層7、第2の金属層8)のエッチング工程の歩留まりを向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板、及びセラミック基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック基板は、耐熱性・耐湿性に優れ、また、高周波回路において良好な周波数特性を有することから、モバイル機器のRF(Radio Frequency)モジュール、放熱性を利用した発光素子、(例えば、LED=Light Emitting Diode=発光ダイオード)用のセラミック基板や液晶のバックライト向けLED用のセラミック基板として用いられている。
【0003】
現在、これらセラミック基板としては、セラミック部と、前記セラミック部上に形成されたセラミックペースト層と、前記セラミックペースト層上に形成された無電界めっき法により第1の金属層と、とから構成されていた(例えば、これに類似する技術は下記特許文献1に記載されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−324522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したセラミック基板では、前述の第1の金属層を形成後、例えば、所望の回路パターンや発光素子等を電気的に接続するための外部端子を形成するため、その第1の金属層上に、比較的膜厚が厚い(数um〜100um程度)第2の金属層を電界めっき法にて形成し、その後、エッチング等を行い、所望のパターン(形状)に加工する。そのエッチングの際、第1の金属層や、第2の金属層が、セラミック部上から完全に除去されないという現象(一般にエッチング残りと呼ばれる)が発生していた。
【0006】
すなわち、従来のセラミック基板では、その表面に形成された金属膜(第1の金属層、第2の金属層)を所望の形状にエッチングする際、エッチング残りが発生するため、従来のセラミック基板では、このエッチング工程の歩留まりが低下するという課題を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、セラミック基板上の金属膜(第1の金属層、第2の金属層)のエッチング工程の歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そしてこの目的を達成するために本発明は、セラミック部と、 前記セラミック部の少なくとも1面に、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属が拡散されためっき抑制層と、から構成されるセラミック基板とした。
【0009】
また、本発明は、セラミック部を形成するための複数枚のセラミック部形成用グリーンシートを準備するセラミック部形成用グリーンシート準備工程と、複数枚の前記セラミック部形成用グリーンシートを積層し、その少なくとも1面にビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属を含有する第2の拘束層を積層し、その後、加圧加熱し、第1のグリーンシート積層体を形成する第1のグリーンシート積層体形成工程と、前記第1のグリーンシート積層体を加熱することによって、前記グリーンシート積層体内のバインダー成分を除去する脱バインダー工程と、バインダー成分が除去された第1のグリーンシート積層体を加熱することによって、第1のグリーンシート積層体を焼成する焼成工程と、前記第1のグリーンシート積層体の上下面の少なくとも1面に配置されている前記第2の拘束層を除去する拘束用グリーンシート除去工程と、からなるから構成されるセラミック基板の製造方法とした。
【0010】
これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、セラミック部と、 前記セラミック部の少なくとも1面に、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属が拡散されためっき抑制層と、から構成されるセラミック基板としたので、セラミック基板上の金属膜(第1の金属層、第2の金属層)のエッチング工程の歩留まりを向上させることができる。
【0012】
すなわち、本発明においては、前記セラミック部を焼成する際に、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属を前記セラミック部表面に拡散させ、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属の成分を含有するめっき抑制層を形成することによって、前記第1の金属層を形成する際に、これらビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属が触媒毒として働き、前記第1の金属層の成分が前記セラミック部の表面深くから成長するのを抑制できるため、容易に金属膜(特に前記第1の金属膜)をエッチングによって除去でき、その結果として、セラミック基板上の金属膜(第1の金属層、第2の金属層)のエッチング工程の歩留まりを向上させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1におけるセラミック基板の構成を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるモジュールの構成を示す断面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるモジュールの製造方法を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態1におけるセラミック基板製造工程を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態1におけるグリーンシートの断面図を示すものであり、図5(a)はグリーンシート11Aの断面図、図5(b)はグリーンシート11Bの断面図、図5(c)はグリーンシート11Cの断面図
【図6】本発明の実施の形態1の積層工程における積層手順を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態1の積層工程における第1のグリーンシート積層体の断面図
【図8】本発明の実施の形態1の積層工程における加圧加熱方法を説明する断面図
【図9】本発明の実施の形態1の脱バインダー工程を説明する断面図
【図10】本発明の実施の形態1の焼成工程における加圧加熱方法を説明する断面図
【図11】本発明の実施の形態1の焼成工程後におけるグリーンシート積層体の断面図
【図12】本発明の実施の形態1の拘束用グリーンシート除去工程後における第1のグリーンシート積層体14の断面図
【図13】本発明の実施の形態1の金属層形成工程後におけるセラミック基板の断面図
【図14】発明の実施の形態1の金属層加工工程後におけるセラミック基板の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態を図面とともに詳細に説明するが、これら実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0015】
(実施の形態1)
[1]セラミック基板の構成
まずはじめに、本実施形態におけるセラミック基板の構成に関して説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態1におけるセラミック基板の構成を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に置いては、セラミック基板1は、セラミック部2と、そのセラミック部2の少なくとも1面(図1中では、上面)に形成されたビスマス(Bi)が拡散されためっき抑制層3とから構成されている。
【0017】
また、本実施形態において、セラミック部2、めっき抑制層3の厚さは、それぞれ、セラミック部2は0.40[mm]、めっき抑制層3は2.9[um]としている。
【0018】
また、本実施形態におけるセラミック部2は、主成分がセラミックの成分から構成されている。本実施形態におけるセラミック部2は、アルミナ(Al2O3)粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物からなる、シート状の形状のグリーンシートと呼ばれるものを、複数枚(少なくとも2枚以上)積層し、加圧し、その後、900[℃]にて焼成することによって形成されたものである。さらに、図1に示すように、セラミック部2内部には、内部配線部4、ビア5が形成されている。
また、本実施形態における表面処理層3は、セラミック部2を焼成する際に、金属であるビスマス(Bi)成分をセラミック部2表面に拡散して形成している。このビスマス(Bi)成分をセラミック部2表面に拡散する方法は、後述で詳しく説明する。
【0019】
なお、本実施形態においては、ビスマス(Bi)成分をセラミック部2表面に拡散させることによって、めっき抑制層3を形成したが、ビスマス(Bi)の代わりに、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属を拡散させることによって、ビスマス(Bi)を拡散させた場合と同等の効果を得ることができる。
この発光素子搭載用セラミック基板1上に形成されためっき抑制層3の少なくとも1面に、後述にて詳しく説明するが、めっき抑制層3上に第1の金属層7(図2に図示)を形成し、更に、第1の金属層7上に第2の金属層8を形成し、その後、それら金属膜(第1の金属層7と第2の金属層8)を所望の形状にエッチングすることによって、外部電極9(図2に図示)や回路パターン19(図2に図示)を形成する。その後、発光素子10(例えば、LED=Light Emitting Diode=発光ダイオード、図2に図示)が実装されるのである・
以上が、本実施形態におけるセラミック基板1の構成に関する説明である。
【0020】
[2]モジュールの構成
次に、本実施形態におけるセラミック基板1を用いたモジュールの構成に関して説明する。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態1におけるモジュールの構成を示す断面図である。図2に示すように、本実施形態におけるモジュール6は、前述のセラミック基板1(図1に図示)を用い、そのめっき抑制層3の少なくとも1面(その一例として、図2中では、上面)に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層7と、その第1の金属層7の表面に、湿式めっき法によって形成された第2の導電性金属からなる第2の金属層8とから構成される外部電極9を有している。この外部電極9上には、発光素子10が実装されているのである。また、めっき抑制層3上には、この第1の金属層7と第2の金属層8とから構成される回路パターン19も配置されている。
【0022】
また、本実施形態においては、第1の金属層4は、湿式めっき法の一種である無電界めっき法によって銅(Cu)を形成し、その膜厚は0.5[um](=500[nm])とした。本実施形態においては、第1の金属層4は、無電界めっき法によって形成された銅(Cu)を用いたが、その他に、無電界めっき法によって形成されたニッケル−リン(Ni−P)や、乾式めっき法の一種であるRF(Radio Frequency)スパッタ法によって形成されたチタン(Ti)やニッケル(Ni)を用いることもできる。
【0023】
また、本実施形態においては、第2の金属層5は、湿式めっき法の一種である電界めっき法によって銅(Cu)を形成し、その膜厚は、50[um]としたが、この第2の金属層5は、5[um]から100[um]の間の膜厚で、適宜決定を行うことができるが、本実施形態において、第2の金属層5の膜厚は25[um]形成した。また、本実施形態においては、第2の金属層5は、電界めっき法によって形成された銅(Cu)を用いたが、その他に、無電界めっき法によって形成された金(Au)や銀(Ag)を用いることもできる。
【0024】
以上が、本実施形態におけるモジュール6の構成の構成に関する説明である。
【0025】
[3]セラミック基板の製造方法
次に、本実施形態における発光素子搭載モジュールの製造方法に関して説明する。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態1におけるモジュールの製造方法を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態におけるモジュールの製造方法は、
S1:セラミック基板製造工程と、
S2:金属層形成工程と、
S3:金属層加工工程と、
S4:発光素子実装工程と、
という4つの工程から構成されるものである。
【0027】
以下に、S1〜S4の製造工程の詳細を説明する。
【0028】
[2]−(1): セラミック部準備工程S1
図4は、本発明の実施の形態1におけるセラミック基板製造工程を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態におけるセラミック基板製造工程S1は、
S100:セラミック部形成用グリーンシート準備工程と、
S200:第1のグリーンシート積層体形成工程と、
S300:脱バインダー工程と、
S400:焼成工程と、
S500:拘束用グリーンシート除去工程と、
いう5つの工程から構成されるもので、この5つの工程によって、セラミック部2を形成し、さらに、そのセラミック部2の少なくとも片面(セラミック部2の表面、裏面両方でも良い)に、ビスマス(Bi)が拡散されためっき抑制層3を形成するのである。
【0029】
それでは、以下に、この5つの工程の順次説明を行う。
【0030】
[2]−(1)−(i):セラミック部形成用グリーンシート準備工程
まずはじめに、図5を用いて、セラミック部2の材料となるグリーンシート11を準備するセラミック部形成用グリーンシート準備工程S100に関して説明する。
【0031】
図5は、本発明の実施の形態1におけるグリーンシートの断面図を示すものであり、図5(a)はグリーンシート9Aの断面図、図5(b)はグリーンシート9Bの断面図、図5(c)はグリーンシート9Cの断面図を示すものである。
【0032】
本実施形態におけるグリーンシート11A、11B、11Cは、アルミナ粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物をシート状に形成し、その後、乾燥させたものから、図5(a)〜図5(c)に示すように、グリーンシート11A(図5(a))、グリーンシート11B(図5(b))、グリーンシート11C(図5(c))を作成する。
【0033】
まず、はじめに、図5(a)に示すグリーンシート11Aに関して説明する。グリーンシート11Aには、例えば、レーザー光による加工によってスルーホール(一般には穴とも呼ばれる)を形成し、その後、そのスルーホーに導体ペーストを充填することによって、ビア5を形成する。これにて、グリーンシート11Aが完成する。
【0034】
次に、図5(b)に示すグリーンシート11Bに関して説明する。グリーンシート11Bは、はじめに、グリーンシート11Aと同様に、スルーホールを形成し、その後、スルーホールに導体ペーストを充填することによって、ビア5を形成する。次に、グリーンシート11B上面に導体ペーストを、スクリーン印刷法を用いて所望のパターンに印刷して内部配線部4を形成する。これにて、グリーンシート11Bが完成する。
【0035】
次に、図5(c)に示すグリーンシート9Cに関して説明する。グリーンシート11Cは、はじめに、グリーンシート11Aと同様に、ビア5を形成する。これにて、グリーンシート11Cが完成する。
[2]−(1)−(ii):積層工程S200
次に、図6、図7、図8を用いて、積層工程S200について説明する。
【0036】
図6は、本発明の実施の形態1の積層工程における積層手順を示す断面図である。また、図7は、本発明の実施の形態1の積層工程における第1のグリーンシート積層体の断面図を示すものである。また、図8は、本発明の実施の形態1の積層工程における加圧加熱方法を説明する断面図を示すものである。
【0037】
まず、はじめに、図6、図7に示している第1の拘束層12、第2の拘束層13に関して説明する。
【0038】
一般に、アルミナ粉末とガラス粉末を配合したガラス・セラミックの組成物で、シート状の形状のグリーンシートを、高温を印加すると、アルミナ粉末とガラス粉末が焼成することによって、そのグリーンシートの体積(平面方向、および厚さ方向)に収縮する。
【0039】
本実施形態においても、本工程である積層工程S200、次の工程である脱バインダー工程S300、次々工程である焼成工程S400にて、第1のグリーンシート積層体14を、熱を印加するのであるが、その際、図6に示すように、それらグリーンシート11A、11B、11Cを挟み込むように、印加する温度では焼成しない成分のセラミックからなる第1の拘束層12、第2の拘束層13を上下面に配置しておく。
こうすることによって、グリーンシー11A、11B、11Cは、図6中に示す、X方向、およびY方向(すなわち、第1のグリーンシート積層体14の平面方向)には収縮せず、Z方向(すなわち、第1のグリーンシート積層体14の厚さ方向)にのみ収縮する。このX方向、Y方向に収縮させないために、この第1の拘束層12、第2の拘束層13を使用するのである。
【0040】
ここで、第1の拘束層12と第2の拘束層13の違いに関して説明する。
【0041】
本実施形態においては、第1の拘束層12は、アルミナ粉末の固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物をシート状に形成し、その後、乾燥させたものを用いた。
【0042】
また、本実施形態においては、第2の拘束層13は、アルミナ粉末を95[wt%]、ビスマス(Bi)の金属粉末を5[wt%]の割合で配合した固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物をシート状に形成したものを用いた。
即ち、第1の拘束層12はアルミナ製シートであり、第2の拘束層13は、微量のビスマス(Bi)を含有させたアルミナ製シートである。
【0043】
この第1の拘束層12はセラミック基板1の発光素子10を実装しない側の最外面(図6、図7では、下面)に配置し、第2の拘束層13はセラミック基板1の発光素子10を実装する側の最外面(図6、図7では、上面)に配置する。
即ち、図6、図7に示すように、第1のグリーンシート積層体14において、微量のビスマス(Bi)を含有させたアルミナ製シート(第2の拘束層13)を、セラミック基板1の発光素子10を実装(配置)し、もしくは(かつ)回路パターン19を形成する面側の最外面に配置するのである。こうすることによって、この後工程の焼成工程S400にて、セラミック基板1の発光素子10を実装する面上にビスマス(Bi)が拡散される、即ち、ビスマス(Bi)が拡散されためっき抑制層3を形成することができるのである。
【0044】
なお、本実施形態においては、発光素子10を実装する面は、図2に示すように、上面であるので、第2の拘束層13(=ビスマス(Bi)を含有させたアルミナ製シート)は、図6、図7における上面のみに配置したが、たとえば、発光素子10をセラミック基板1の両面に実装する場合は、この第2の拘束層13(=ビスマス(Bi)を含有させたアルミナ製シート)を両面に配置すればよい。
【0045】
次に、図6を用いて、グリーンシート11A、11B、11Cを積層し、その最も下の面に第1の拘束層12を配置し、その最も上の面に第2の拘束層13を配置した、第1のグリーンシート積層体14を準備する方法を説明する。
【0046】
まず、第1の拘束層12上に、グリーンシート11Cを積層する。次に、グリーンシート11C上にグリーンシート11Bを、グリーンシート11Aに形成されているビア5と、グリーンシート11Bに形成されているビア5の位置が合うように位置合わせを実施しながら積層する。
【0047】
次に、グリーンシート11B上のグリーンシート11Aを積層する。最後に、グリーンシート11A上に、第2の拘束層13を配置する。
【0048】
このようにして、図7に示すような、第1のグリーンシート積層体14が準備されるのである。
【0049】
次に、図8に示すように、第1のグリーンシート積層体14の上下面にステンレス板15を配置し、それを台座16上に配置し、その上面から加圧加熱をすることによって、第1のグリーンシート積層体14中のグリーンシート11A、11B、11C同士を仮接着する。
【0050】
ここで、図8中の第1のグリーンシート積層体14は、図7中の第1のグリーンシート積層体14と同一のものであるが、図8中の第1のグリーンシート積層体14は簡略化して図示している。
【0051】
また、本実施形態において、第1のグリーンシート積層体14上のステンレス板15上から加圧した圧力は15.2[MPa]とし、加熱温度は85[℃]を用いた。このようにして、第1のグリーンシート積層体14中のグリーンシート11A、11B、11C同士を仮接着する。
【0052】
なお、第1のグリーンシート積層体14と、第1のグリーンシート積層体14の上下面に配置したステンレス板15とは、ステンレス板15の材質がニッケルクロム合金(NiCr)であるため接着されることはない。
【0053】
[2]−(1)−(iii):脱バインダー工程S300
次に、図9を用いて、脱バインダー工程S300について説明する。
【0054】
図9は、本発明の実施の形態1の脱バインダー工程を説明する断面図を示すものである。この工程では、図9に示すように、第1のグリーンシート積層体14を台座17上に配置し、加熱をすることによって、第1のグリーンシート積層体14中のグリーンシート11A、11B、11C内部の有機バインダーを除去する。
【0055】
本実施形態において、第1のグリーンシート積層体14は、加熱温度は650[℃]にて加熱を行った。このようにして、第1のグリーンシート積層体14中のグリーンシート11A、11B、11C内部の有機バインダーを除去する。
【0056】
[2]−(1)−(iv):焼成工程S400
次に、図10を用いて、焼成工程S400について説明する。
図10は、本発明の実施の形態1の焼成工程における加圧加熱方法を説明する断面図を示すものである。また、図11は、本発明の実施の形態1の焼成工程後におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。第1のグリーンシート積層体14を台座15上に配置し、加熱をすることによって、第1のグリーンシート積層体14を焼成する。
本実施形態において、この加熱温度は900[℃]を用いた。
【0057】
このようにして、この焼成工程後、図11に示すように、第1のグリーンシート積層体14は、その厚さ方向に収縮するのである。
【0058】
また、この焼成工程S400を実施することによって、グリーンシート11A、11B、11Cがセラミック部2となるのである。
【0059】
更に、この焼成工程S400を実施することによって、第2の拘束層13とグリーンシート11Aとの界面Eでは、第2の拘束層13の成分であるビスマス(Bi)成分が拡散し、この界面Eにめっき抑制層3が形成されるのである。
【0060】
[2]−(1)−(v):拘束用グリーンシート除去工程S500
次に、拘束用グリーンシート除去工程 S500について説明する。
この工程では、サンドブラスター法(例えば、特許文献である国際公開第1999/56510号を参照)を用いて、第1のグリーンシート積層体14の上面と下面の第1の拘束層12、第2の拘束層13を除去する。
【0061】
本実施形態においては、水96gと平均粒径0.1〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、第1のグリーンシート積層体14の上下面の第1の拘束層12上、及び第2の拘束層13上から吹き付ける。
図12は、本発明の実施の形態1の拘束用グリーンシート除去工程後における第1のグリーンシート積層体14の断面図を示すものである。
【0062】
このように、水96gと平均粒径0.1〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、グリーンシート積層体11の上下面の拘束層23上から吹き付ける作業を行うことによって、アルミナ部2上に、0.1um以上(アルミナ粉末の最小の平均粒径)、30um以下(アルミナ粉末の最大の平均粒径)のめっき抑制層3を形成することができる。このめっき抑制層3の厚さは、この吹き付ける作業(吹き付け時間)を調整することによって調整可能である。本実施形態においては、前述の[1]で説明したように、めっき抑制層3が2.9umになるように、吹き付け時間を調整した。
【0063】
以上のように、本実施形態におけるセラミック基板製造工程S1は、図4に示す、セラミック部形成用グリーンシート準備工程S100、第1のグリーンシート積層体形成工程S200、脱バインダー工程S300、焼成工程S400、拘束用グリーンシート除去工程S500という5つの工程を実施することによって、セラミック部2を準備するとともに、このセラミック部2上に、ビスマス(Bi)が拡散されためっき抑制層3を形成する、即ち、本実施形態におけるセラミック基板1を形成することができるのである。
【0064】
[2]−(2):金属層形成工程S2
次に、図3中の金属層形成工程S2に関して説明する。
【0065】
図13は、本発明の実施の形態1の金属層形成工程後におけるセラミック基板の断面図を示すものである。
【0066】
金属層形成工程S2においては、前述のセラミック基板1のめっき抑制層3上に、第1の金属層7と第2の金属層8を形成する。
【0067】
まずはじめに、前処理として、セラミック部2上のめっき抑制層3の表面に付着している異物及び油分などを除去する。この前処理は、本発明に必須の工程ではなく、ポセラミック部2上のめっき抑制層3の表面がきれいな状態であれば不要である。次に、セセラミック部2上のめっき抑制層3の表面を、金属触媒を含む水溶液に接触させる。この金属触媒としては、第1の金属層4を形成するための触媒となり得るもの、例えばパラジウム(Pd)触媒、銅(Cu)触媒等を用いることができる。本実施形態においては、銅(Cu)触媒を用いた。また、触媒付与工程における触媒の濃度、処理時間、温度等の諸条件は、適宜変更可能である。こうして、めっき抑制層3の表面に、これら金属触媒(本実施形態においては銅(Cu)触媒)が結合する。
【0068】
次に、無電界めっき法によって第1の金属層7を形成するが、このとき無電解めっき液に含まれる還元成分により、反射改善層3の表面の金属触媒が還元されるため、触媒作用が働き、触媒金属を核として、無電解めっき膜が形成される。本実施形態においては、前述のように、無電界めっき法によって、銅(Cu)を形成した。また、この第1の金属層7の膜厚は、前述のように、0.5[um](500[nm])を用いた。
次に、この第1の金属層7の表面に、電界めっき法によって、第2の金属層8を形成する。本実施形態においては、上述したように、第2の金属層として銅(Cu)を用いた。また、この第2の金属層7の膜厚は、前述のように、25[um]を用いた。
このようにして、図13に示すように、セラミック基板1のめっき抑制層3上に、第1の金属層7と第2の金属層8を形成することができるのである。
【0069】
[2]−(3):金属層加工工程S3
次に、図3中の金属層加工工程S3に関して説明する。
図14は、本発明の実施の形態1の金属層加工工程後におけるセラミック基板の断面図を示すものである。
【0070】
金属層加工工程S3においては、第1の金属層7、及び第2の金属層8を加工し、図1に示すような、外部電極9や回路パターン19を形成する。本実施形態においては、必要な第1の金属層7、及び第2の金属層8上にレジストを塗布し、その後、エッチングを行うことによって、外部電極9を形成した。
【0071】
このようにして、図14に示すように、第1の金属層7、及び第2の金属層8を加工し、セラミック基板1上に外部電極9や回路パターン19を形成することができるのである。
[2]−(4):発光素子実装工程S4
次に、図3中の発光素子実装工程S4に関して説明する。
【0072】
金属層加工工程S3においては、セラミック基板1上の外部電極9上に発光素子10を実装(電気的に接続)する。
【0073】
この発光素子実装工程S4を実施し、セラミック基板1上の外部電極9上に発光素子10を実装(電気的に接続)することによって、図2に示すような、本実施形態におけるモジュール6を製造することができるのである。
【0074】
以上のように、本実施形態においては、セラミック基板製造工程S1と、金属層形成工程S2と、金属層加工工程S3と、発光素子実装工程S4と、いう4つの工程を実施することによって、図2に示すような、モジュール6を製造することができるのである。
[3]本発明の一実施形態における発明の効果
次に、本発明の一実施形態の発明の効果に関して説明する。
【0075】
従来のセラミック基板(セラミック部2上にめっき抑制層3が形成されていないもの)を用いた場合のモジュールの製造工程における金属層加工工程(前述のS4)におけるエッチング残りによる発光素子搭載モジュールの不良率は63[%]であった。
【0076】
一方、本実施形態におけるセラミック基板(セラミック部2上にビスマス(Bi)が拡散されためっき抑制層3を形成しているもの)を用いた場合のモジュールの製造工程における金属層加工工程(前述のS4)におけるエッチング残りによるモジュールの不良率は0.4[%]であった。
【0077】
以上のように、セラミック部2上にビスマス(Bi)が拡散されためっき抑制層3を形成することによって、エッチング残りによるモジュールの不良率は大幅に低減されたことが確認できた。すなわち、セラミック基板上の金属膜(第1の金属層、第2の金属層)のエッチング工程の歩留まりを向上させることができた、と確認できたといえる。
【0078】
また、セラミック部2上に、ビスマス(Bi)の代わりに、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属を拡散させることによって、ビスマス(Bi)を拡散させた場合と同等のエッチング残りによる発光素子搭載モジュールの不良率であること、すなわち、セラミック基板上の金属膜(第1の金属層、第2の金属層)のエッチング工程の歩留まりを向上させることができた、と確認している。
【0079】
以上のように、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属の成分を、前記セラミック部2表面に拡散させることによって、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)が、セラミック基板上の金属膜(第1の金属層7、第2の金属層8)のエッチング工程の歩留まりを向上に寄与しているといえる。
【0080】
[4]まとめ
以上のように、本実施形態においては、セラミック部と、 前記セラミック部の少なくとも1面に、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属が拡散されためっき抑制層と、から構成されるセラミック基板としたので、セラミック基板1上の金属膜(第1の金属層7、第2の金属層8)のエッチング工程(本実施形態における金属層加工工程S3)の歩留まりを向上させることができる。
【0081】
すなわち、本発明においては、セラミック部2を焼成する際に、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属をセラミック部2表面に拡散させ、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属の成分を含有するめっき抑制層3を形成することによって、第1の金属層7を形成する際に、これらビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属が触媒毒として働き、第1の金属層7の成分がセラミック部2の表面深くから成長するのを抑制できるため、容易に金属膜(特に第1の金属膜7)をエッチングによって除去でき、その結果として、セラミック基板上の金属膜(第1の金属層7、第2の金属層8)のエッチング工程の歩留まりを向上させることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明にかかるセラミック基板は、セラミック基板上の金属膜(第1の金属層7、第2の金属層8)のエッチング工程の歩留まりを向上させることができるので、特に、最近普及の進んでいる液晶テレビや携帯電話の液晶画面用のバックライト向けLED用基板として用いられるセラミック基板として用いられることが大いに期待されるものとなる。
【符号の説明】
【0083】
1 セラミック基板
2 セラミック部
3 めっき抑制層
4 内部配線部
5 ビア
6 モジュール
7 第1の金属層
8 第2の金属層
9 外部電極
10 発光素子
11A、11B、11Cグリーンシート
12 第1の拘束層
13 第2の拘束層
14 第1のグリーンシート積層体
15 ステンレス板
16、17、18 台座
19 回路パターン
S1 発光素子搭載用セラミック基板製造工程
S2 金属層形成工程
S3 金属層加工工程
S4 発光素子実装工程
S100 セラミック部形成用グリーンシート準備工程
S200 第1のグリーンシート積層体形成工程
S300 脱バインダー工程
S400 焼成工程
S500 拘束層除去工程
E 第2の拘束層とグリーンシートとの界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック部と、
前記セラミック部の少なくとも1面に、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属が拡散されためっき抑制層と、
から構成されるセラミック基板。
【請求項2】
前記めっき抑制層の膜厚は、1um以上30um以下であること、
を特徴とする請求項1に記載のセラミック基板。
【請求項3】
セラミック部を形成するための複数枚のセラミック部形成用グリーンシートを準備するセラミック部形成用グリーンシート準備工程と、
複数枚の前記セラミック部形成用グリーンシートを積層し、その少なくとも1面にビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)から選択された少なくとも1つの金属を含有する第2の拘束層を積層し、その後、加圧加熱し、第1のグリーンシート積層体を形成する第1のグリーンシート積層体形成工程と、
前記第1のグリーンシート積層体を加熱することによって、前記グリーンシート積層体内のバインダー成分を除去する脱バインダー工程と、
バインダー成分が除去された第1のグリーンシート積層体を加熱することによって、第1のグリーンシート積層体を焼成する焼成工程と、
前記第1のグリーンシート積層体の上下面の少なくとも1面に配置されている前記第2の拘束層を除去する拘束用グリーンシート除去工程と、
からなるから構成されるセラミック基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−199479(P2012−199479A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63835(P2011−63835)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】