説明

セルフドーピングコンタクトを有した埋設コンタクト型太陽電池

埋設コンタクト型太陽電池、埋設コンタクト型太陽電池構成要素、及び埋設コンタクト型太陽電池太陽電池の製造方法であって、複数の埋設コンタクト面の溝内にセルフドーピングコンタクト材料が配置される。溝ドーピング処理とメッキ処理とを組み合わせることで、太陽電池をより単純な方法で経済的に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は2004年2月5日出願の米国仮特許願60/542454「セルフドーピングコンタクトを使用した埋設コンタクト型電池の製造方法」並びに2004年2月5日出願の米国仮特許願60/542390「バックコンタクト型シリコン太陽電池の製造法」の優先権を主張する。本願は米国特許願弁理士整理番号31474−1005−UT「エミッターラップスルーバックコンタクト型シリコン太陽電池のコンタクト製造法」(ピーター・ハッケ及びジェームス・M・ジー)並びに米国特許願弁理士整理番号31474−1006−UT「バックコンタクト型太陽電池並びその製造法」(ジェームス・M・ジー及びピータ
ー・ハッケ)に関連する。
【0002】
本発明は、天然光あるいは人工光を問わず光線から直接的に電気を発生させる太陽電池に関する。特に、本発明は電池の前面及び/又は背面に埋設させたコンタクトを含んだ太陽電池とその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
以下の説明はいくつかの出版物や参考資料に言及する。そのような出版物の説明は本発明の科学的原理のさらに完全な背景を提供するためであり、それらが本発明の特許性の判定に対する従来技術であるものと出願人が認めているとは解釈すべきではない。
【0004】
典型的な“埋設コンタクト”シリコン太陽電池では、電流回収グリッドは前面の溝内に埋設されている。グリッドコンタクトによって占められる表面積(グリッドオブスキュレーション)を最小化することで電流回収に利用できる面積を増量させることができる。しかし、たとえ表面コンタクト面積を少なくしようと、直列抵抗損失は増加しない。なぜなら、コンタクト面積はコンタクトの深度に関連して増加し、導電体のための大きな断面積が存在するからである。埋設コンタクト型電池の他の利点には、埋設コンタクト溝内のみでの重拡散(heavy diffusion)(電子とホールの再結合によりコンタクト抵抗と損失を減少させる)が含まれ、コンタクト金属化(メッキ)は溝内のみに選択的に提供される。埋設コンタクト型電池及びそのような電池の製造方法は、例えば米国特許4726850及び4748130において解説されている。高効率で大面積の埋設コンタクト型太陽電池は単結晶並びに多結晶のシリコン基板の両方で実現している。
【0005】
埋設コンタクト型太陽電池の製造のための代表的製造ステップは以下の通りである。
【0006】
1.アルカリエッチング
2.少量燐拡散(60から100Ω/sq)
3.HFエッチング
4.前面または両面への窒化ケイ素デポジション(着層)
5.前面でのレーザーによる溝形成及びエッチング
6.溝内の多量燐拡散(<20Ω/sq)
7.背面へのアルミ着層
8.背面の誘電層を通ったアルミ合金化
9.HFエッチング
10.無電メッキによる溝内への薄Ni層着層
11.Ni層の焼結
12.無電メッキによる溝内へのCu着層
図1Aで示すように、従来技術方法に従ったシリコン基板10製の埋設コンタクト型太陽電池は照射面の少量燐拡散層12と、前面上に積層された、あるいは熱的に成長した誘電層18と、その後に提供された溝20とを含んでいる。図1Bで示すように、溝20の形成後に多量燐拡散層30が気体拡散法等の手段で、好適にはPOCl、PH、PBrあるいは他の気体燐プリカーサーを使用して提供される。またアルミ層が提供され、続くステップで合金化されてアルミ合金ジャンクション50を電池の背面に提供する。その後に、重分散処理された溝20には、例えば薄Ni層42が無電メッキされ、続いてそのNi層が焼結処理され、さらにCu層40が無電メッキされることで金属充填される。図1Cで示すように、最終的には、コンタクト抵抗とコンタクト再結合を低減させるために内側面30には重ドープ処理(例えば、多量燐拡散層)が施された溝と、金属グリッドまたはコンタクト40、42が提供される。あるいは、米国特許4748130で開示されるように、銀(Ag)金属ペーストを重ドープ溝に提供して焼結処理することができる。
【0007】
従来技術の埋設コンタクト型電池はいくつかの利点を備えている。その利点には、高電流回収効率のための照射面上の少量燐拡散層、低コンタクト抵抗及び低コンタクト再結晶のための溝内の多量燐拡散層、並びに多量燐拡散層と無電メッキの溝に対する自己整合が含まれる。従来方法には単純バリエーションが存在する。例えば、ダイシング鋸またはダイヤモンド鋸をレーザースクライバーの代わりに使用して溝を形成する(レーザーパターン加工はさらに細い線を提供する)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術加工ステップの主たる弱点は、比較的に複雑であり、時間を要し、高コストなことである。いくつかのステップを排除することは有利である。例えば、溝内への気体燐の第2拡散ステップを排除し、改良した装置を実現することは有利である。さらに無電メッキステップの排除は有利である。なぜなら、無電メッキには厳格な管理を必要とする有害化学物質を含んだ廃水の問題が関与するからである。
【0009】
太陽電池の表面にセルフドーピング金属コンタクトを使用することはミエール他によって米国特許6180869において説明されている。ダニエル・ミエール他の「ドーパントソースでコーティングされた銀を使用したシリコンへのセルフドーピングコンタクト」(第28回IEEE光起電専門家会議)69ページ(2000年)参照。ドープされたシリコン層を提供し、同時にコンタクトを提供するために、Ag:ドーパントペーストをシリコン表面に直接的に提供するか、窒化ケイ素層を通して焼結処理することができる。後者の場合、ペーストは窒化物を溶解させる成分を含んでいなければならない(参照文献:M・ヒラリ他「100Ω/sqエミッターを使用したスクリーン印刷されたシリコン太陽電池で高充填率を達成するためのセルフドーピングAgペースト焼結の改良」第29回IEEE光起電専門家会議、ニューオーリンズ市、ルイジアナ州、2002年5月)しかし、セルフドーピング金属コンタクト法は表面にのみ提供され、電池の表面にセルフドーピングペーストが広がることによる高陰影
損失を蒙る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は太陽電池の製造方法を提供し、電池基板に少なくとも1本の溝を刻むステップと、その溝内にセルフドーピングコンタクト材料を提供するステップと、そのセルフドーピングコンタクト材料を加熱処理するステップとを含み、同時的に溝のドーピング処理とメッキ処理とを行うことができる。好適にはセルフドーピングコンタクト材料はシリコンドーパントを含んでおり、そのシリコンドーパントは好適には燐を含んでいる。セルフドーピングコンタクト材料は好適には銀を含んでおり、好適には銀粒子と燐とを含んだペーストである。好適には電池基板はp型シリコン基板を含んでおり、好適にはセルフドーピングコンタクト材料は銀とn型シリコンドーパントとを含んでいる。あるいは、電池基板はn型シリコン基板を含み、セルフドーピングコンタクト材料は銀とp型シリコンドーパントとを含む。
【0011】
好適には、加熱ステップは電池の背面のバックコンタクトを合金化するステップを含み、好適にはバックコンタクトはアルミニウムを含んでいる。この方法では、少なくとも1本の溝を刻むスクライブ処理は好適には複数の溝のスクライブ処理を含み、溝の深度は溝幅の倍数である。
【0012】
本発明は前述の方法で製造された太陽電池をも提供する。
【0013】
本発明は太陽電池を製造するための基板をも提供する。この基板は前面と背面とを有した平坦な半導体基板と、半導体基板の表面に刻まれた少なくとも1本の溝と、その溝内に提供されたセルフドーピングコンタクト材料を含んでいる。そのセルフドーピングコンタクト材料は好適にはペースト状であり、好適には銀を含んでいる。半導体基板は好適には結晶シリコンを含んでおり、セルフドーピングコンタクト材料は好適にはシリコンドーパントを含んでおり、シリコンドーパントは好適には燐を含んでいる。好適には半導体はp型シリコン基板を含んでおり、セルフドーピングコンタクト材料は好適には銀とn型シリコンドーパントとを含んでいる。半導体基板は好適には溝を有した面に燐拡散層を含んでいる。本発明の基板は好適には溝を有した面の反対面にアルミニウム層を含んでいる。
【0014】
本発明は少なくとも1本の溝と、溝内に提供されたコンタクトとを含んだ太陽電池を提供する。そのコンタクトはドーパントを含んでいる。コンタクトは好適には銀を含んでいる。ドーパントは好適にはシリコンドーパントを含んでおり、シリコンドーパントは好適には燐を含んでいる。
【0015】
本発明の主な目的は、埋設コンタクト型太陽電池の製造方法を単純化することである。
【0016】
本発明の別の目的は、埋設コンタクト型太陽電池内での金属コンタクトのドーピング処理と形成とを同時的に提供することである。
【0017】
本発明の主な利点は、より安価な太陽電池を最小のグリッドオブスキュレーションで提供することである。
【0018】
本発明の別の利点は、多量燐拡散ステップと、埋設コンタクトを形成するための無電メッキまたは1以上の金属を導入する分離したステップとを含んで埋設コンタクト型太陽電池の製造における数々のステップを省略することである。
【0019】
その他の目的、利点及び新規な特徴、並びに本発明の利用可能性については以下の詳細な説明で図面と共に説明するが、以下の説明で1部は当業者には明らかとなるであろうし、あるいは発明の実施によって明らかとなるであろう。本発明の目的及び利点は添付の請求の範囲によって理解及び実施ができるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
添付の図面は本発明の実施例を示しており、詳細な説明と共に本発明の原理について説明している。図面は本発明の好適実施例の説明のみを目的としており、本発明を限定するものではない。
【0021】
本発明では無電メッキステップの省略を可能にし、埋設コンタクト型太陽電池の製造を単純化することができる、セルフドーピングコンタクトを利用することで埋設コンタクト型構造を電池表面の前面、背面のいずれかあるいは両方に提供することができる。セルフドーピングコンタクトはAg:ドーパントペーストでよいが、これに限られない。
【0022】
シリコン基板は典型的には多結晶シリコンであるが、ガラスまたは他の基板上の単結晶、三結晶及び薄膜結晶‐シリコンフィルム等のタイプの他のシリコン基板を利用することもできる。典型的には、シリコンはp型半導体基板である。本発明をn型半導体基板に応用することもできる。
【0023】
本発明の1好適実施例は、多量燐拡散ステップを省略し、無電メッキステップ(2回のメッキステップ及び1回の焼結ステップ)を1回の印刷ステップと焼結処理ステップに代える埋設コンタクト型太陽電池の製造方法を提供する。これは主にセルフドーピングコンタクト材料を用いて溝を充填することで達成される。セルフドーピングコンタクト材料は、元素金属または合金、及びコンタクト形成中にシリコン基板表面をドーピングするシリコンドーパントの両方を含んでいる。シリコンドーパントは、燐(P)、アンチモン(Sb)、あるいはヒ素(As)等のn型ドーパントであり、n型層を形成する。あるいは、基板がn型である場合は、ドーパントは好適にはインジウム(In)、アルミニウム(Al),ホウ素(B)、あるいはガリウム(Ga)等のp型ドーパントであり、p型層を形成する。金属キャリアは好適にはシリコンと比較的低温合金となる良好な伝導体である。後者の特性によって、金属キャリアを太陽電池から電流を導くためのグリッドラインとして使用できる。候補材料には、Ag,Al,Cu,Sn及びAuが含まれ、その特性(大気内でほとんど酸化せず焼結できる)、良好な伝導性、及びSi材料との両立性(Agは太陽電池効率を下げる可能性があるSiでの強力な再結合中心ではない)の点からAgが好適である。
【0024】
1好適実施例では、セルフドーピングコンタクト型材料はペーストであり、好適にはPでドーピングされたAg粒子を含んでいる。ペーストは、スクリーン印刷、スキージ法あるいは他の印刷又は着層手段を含むあらゆる実行可能な手段によって溝に提供される。Ag:Pペーストの提供後、太陽電池はAg:Si共融温度(845℃)より高い温度で焼結処理されてドープされたコンタクトを有するAgグリッドを形成する。Agは、温度が共融点を超えた場合はSiを部分的に境界面で溶解させ、温度が下がった時に沈殿シリコンが燐でドーピングされる。SbまたはAs等、P以外のN型ドーパントを特に好適にAgと共に利用することもできる。同様に、セルフドーピングペーストの使用が好ましいものの、Agの他形態、特にAg:ドーパントを利用することもできる。
【0025】
別実施例では、Agペーストあるいは他のAg層を溝内にスクリーン印刷、スキージ法、あるいはスパッタリング又は蒸着法を含む他の印刷又は着層手段を含んだあらゆる実行可能な手段で提供する。その後Ag層を、燐化合物を含む層等、n型ドーパントを含む材料でコーティング処理する。あるいは、基板がn型の場合でp型層が望ましい時には、上に重なる層は、ホウ素(B),インジウム(In)、ガリウム(Ga),あるいはアルミニウム(Al)等のp型ドーパントを含む材料を含むことができ、スクリーン印刷又は他の印刷法、あるいはスパッタリング法又は蒸着法を含む着層手段を含んだあらゆる実行可能な手段で提供する。このドーパントを含む層を、キャリア金属(この場合はAg)とSiとの間に配置してもよい。金属‐Si共融点よりも温度が高くなった後に、このドーパントを含む層が金属‐Si液相線に溶解される。
【0026】
ペーストは、粒子形態のAgと液体形態のドーパントとの組み合わせで作られ、これによってセルフドーピングのスクリーン印刷可能なペーストを創出する。ペースト組成物は、バインダー、溶剤、及びスクリーン印刷可能なペーストの提供に従来使用される物等をさらに含むことができる。ガラスフリットを含むペースト等のフリットペースト組成物を使用してもよく、窒化ケイ素層を貫通する必要がある場合に特に利用できる。
【0027】
セルフドーピングAgメタリゼーションでは、従来技術の多量燐拡散ステップ及び3回の金属メッキと焼結ステップを、1回のステップ‐印刷ステップあるいは溝へのセルフドーピングコンタクト材料の着層ステップ、に代えることができる。その結果、ステップの回数が減り、実質的に同じ高効率性を提供しつつ従来の埋設型電池の製造ステップを相当程度単純化できる。
【0028】
図2Aは、本発明の、前面に少量燐拡散12層が提供されたシリコン基板10に刻まれた非ドープ溝20を示す。少量燐拡散12層は、溝の形成前に誘電層18で覆われていることが望ましい。誘電層18は太陽電池の反射防止コーティングとして作用し、溝外側に印刷された余剰金属と拡散層12との間の治金反応を最小限とする。シリコン基板10はp型半導体シリコンを含んでいることが望ましいが、n型シリコンといずれの導電性のゲルマニウムあるいはシリコン‐ゲルマニウム基板を含む他の基板を利用してもよい。少量燐拡散12層は、液体POClを使用した気体拡散法を含む従来手段で提供される。しかし、コーティング法、ディッピング法、あるいはスピン‐オン法等の従来法による液体ソースの提供、あるいはP等の固体ソース材料を高温に加熱する固体ソース法の提供等、その他の拡散ソース法でも利用できる。一般的に、普通の気体POCl拡散法が好ましい。
【0029】
溝20を所望の大きさに提供できるあらゆる方法で切断する又は刻むことができる。レーザースクライビングの使用が望ましいが、エッチング、機械的切削等他の方法を利用してもよい。溝20は、基板面上の両端部間で互いに実質的に平行に走行する縦方向の凹部である。
【0030】
図面では、特に図2Aから2Cでは、溝20の寸法、種々な層の厚み、及び他の寸法は実際の割合ではなく、説明と理解のために概略的に示されている。一般的に、埋設コンタクト溝20は幅よりも深さのほうが大きく、1実施例では幅の何倍かの深さで示されている。例えば、溝20の幅は約10μmと約50μmの間で、約20μmが好ましく、深さは約20μmと約60μmの間であり(部分的には基板10の厚みによる)、約40μmが好ましい。溝20は図2Aの如く直線で囲まれた形状の断面を有していないであろう。
【0031】
むしろ傾いた側壁等を有した丸形状の断面であろう。平行の溝20は、部分的な電池のデザインの観点から所定距離で離されている。あらゆる実用的な分離が可能であり、隣接する平行溝20は約1000μmから約3500μmの距離(中心線から中心線まで)で分離でき、約1500μmから約2500μmの距離で分離することが望ましい。完成した太陽電池(屈折率が約2の窒化ケイ素が使用された場合)の誘電層18の厚みは好適には約80nmであり、拡散層12の厚みは好適には約200から1500nmである。
【0032】
図2Bは、セルフドーピングコンタクト型材料60を充填した溝20を示す。セルフドーピング材料60は前述の材料でいずれでもよく、Agを含んだペーストとPであるシリコンドーパントを含んだものが望ましい。あるいはセルフドーピングコンタクト材料60は、Pまたは他のドーパントでコーティングされたAg粒子の乾燥組成物で、Agとドーパントが適用されるか(Agを先ず適用し次にドーパントを適用する、あるいはドーパントを先ず適用して次にAgを適用する)、溝に簡単且つ安価に選択的に適用できるセルフドーピングコンタクト材料の他の組成物であってもよい。
【0033】
セルフドーピングコンタクト材料60の適用後、そのセルフドーピングコンタクト材料を好適にはAg:Si共融点(845℃)よりも高い温度で加熱又は焼結してシリコンと合金し、セルフドーピングコンタクトを有するAgグリッドを形成し、図2Cに示す構造を得る。Agは温度が共融点を超えた時にSiをインターフェイスで部分的に溶解し、温度が下がった時に沈殿シリコンが燐でドーピングされ、溝の内面にシリコン70のドープ層が得られ、Agコンタクトが溝を埋める。
【0034】
1回の燐拡散ステップとグリッドにセルフドーピングペーストを用いた、本発明の製造ステップの1例は以下の通りである。
【0035】
1.アルカリエッチング
2.少量燐拡散(60から100Ω/sq)
3.HFエッチング
4.前面への窒化ケイ素デポジション(着層)
5.前面での(レーザーによる)溝形成
6.前面溝内へのセルフドーピングペースト(例:Ag:P)の着層
7.背面へのアルミ着層
8.AgとAlコンタクトを同時に合金化するための熱処理
前述のステップで、アルカリエッチングは表面を洗浄する。高温又は低温の水酸化ナトリウム等、あらゆる適したアルカリエッチング材料が利用できる。例として、約2重量%から50重量%の水酸化ナトリウム水溶液を好ましくは約60℃から約95℃で利用してもよい。
【0036】
少量燐拡散ステップは前述の如くである。拡散ステップに続いて、好適には2重量%から50重量%のフッ化水素(HF)酸の水溶液等を用いた酸エッチングステップが実施される。HF酸を含んだ溶液にウエハーを浸漬させるステップを含むあらゆる従来方法が利用できる。酸化物は、特にカプセル化光起電性モジュールで問題を生じるため、少量燐拡散からの酸化物が好適あるいはオプション的に、HF等の酸で除去される。HFエッチングに続き、好適あるいはオプション的に、誘電層の着層で露出シリコン面をパッシベーション処理する。窒化ケイ素(SiN)を、太陽電池製造においてシリコン面をパッシベーション処理するための技術として知られるプラズマ増強化学蒸着デポジション(PECVD)または低圧化学蒸着デポジション(LPCVD)で着層してもよい。望むなら、SiO層の熱成長、またはSiO,TiO,Ta等の他の誘電材料の着層等を、印刷法、スプレー法、PECVD法等の様々な手段で、パッシベーション処理のための方法及び材料として利用してもよい。
【0037】
SiNでのパッシベーション処理に続いて、望む場合には溝が前面に形成される。Q−スイッチ式Nd:YAGレーザー等のレーザーの利用が望ましい。機械的切削あるいは前述の手段等の他の手段を利用してもよい。オプションで、溝の形成後、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含む化学的溶液等での洗浄ステップを追加してもよい。
【0038】
続いて溝20をAg:Pペースト等のセルフドーピングコンタクト材料で充填する。この充填をスクリーン印刷法によって実施しても、他の手段を利用して実施してもよい。図2Bは、溝のみを基板10の上面レベルまで充填したセルフドーピングコンタクト材料60を示すが、セルフドーピングコンタクト材料60と得られたコンタクト80(図2Cに示す)は表面を超えてもよく、オプションとしてドーム形でもよい。
【0039】
従来型の電池には、あらゆる金属バックコンタクトが利用できる。好適実施例では前述の如くAlバックコンタクトが提供される。Ag:Pペーストの熱処理前にAlを提供することは、1回の熱処理ステップで、埋設コンタクトの1部を形成するAg:Pペースト中で同時にAgを合金化しAlでバックコンタクトを形成するには特に好ましい実施例である。Alバックコンタクトを、例えば、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷法または他の技術によって提供できる。
【0040】
マスキングとストリッピングを追加してメッキ処理の後に、高メッキ処理温度によって影響されることがあるステップ4をSiN層のパッシベーション維持のためにオプションで実施できる。あるいは、ステップ5を始めに実施することもできる。溝20がSiN等でパッシベーション処理される場合には、セルフドーピングコンタクト材料60はオプションでまたは好適にフリットを含んでいる。
【0041】
1実施例では、少量燐拡散ステップを溝20の形成に続けて提供することができる。この製法では必須意ではないが典型的にはSiN等でのパッシベーション処理は、好適にはフリットが利用できるようにセルフドーピングコンタクト材料60の提供前に実施されるであろう。しかしこのアプローチは、溝20内でn型ドーパントの追加的効果を提供するという利点がある。すなわち、少量燐拡散ステップは溝壁面内部の部分的なドーピングを提供し、セルフドーピングコンタクト材料60の使用によって実質的な追加n型ドーピングを提供する。この方法では、溝側壁内のドーピングは、連続ドーピングステップの追加的効果によって実質的には表面ドーピングよりも大きくなる。
【0042】
本発明の好適実施例について説明したが、他の実施例でも同じ結果を得ることができる。本発明の変形は当業者には明らかであり、本発明はそれら変形を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1A】図1Aは、製造過程での従来技術による、溝が刻まれたシリコン基板の断面図である。
【図1B】図1Bは、溝内の多量燐拡散後の従来技術によるシリコン基板を示す。
【図1C】図1Cは、無電メッキにより金属を追加して埋設コンタクト型太陽電池を形成した従来技術によるシリコン基板を示す。
【図2A】図2Aは、少量燐拡散と溝形成が施された本発明のシリコン基板の断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明に従って、セルフドーピングコンタクト材料を溝内に配置したシリコン基板を示す。
【図2C】図2Cは、熱処理ステップ後の本発明の埋設コンタクト型太陽電池の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の製造方法であって、
電池基板に少なくとも1本の溝を刻むステップと;
前記溝内にセルフドーピングコンタクト材料を提供するステップと;
前記セルフドーピングコンタクト材料を加熱処理して、同時的に溝のドーピング処理とメッキ処理とを行うステップと;
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項2】
セルフドーピングコンタクト材料はシリコンドーパントを含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
シリコンドーパントは燐を含んでいることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
セルフドーピングコンタクト材料は銀を含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
セルフドーピングコンタクト材料は銀粒子と燐とを含んだペーストであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
電池基板はp型シリコン基板を含んでおり、セルフドーピングコンタクト材料は銀とn型シリコンドーパントとを含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
電池基板はn型シリコン基板を含んでおり、セルフドーピングコンタクト材料は銀とp型シリコンドーパントとを含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
加熱ステップは電池の背面のバックコンタクトを合金化するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
バックコンタクトはアルミニウムを含んでいることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1本の溝を刻むステップは複数の溝を刻むステップを含み、溝の深度は溝幅の倍数であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法によって製造された太陽電池。
【請求項12】
太陽電池を製造するための基板であって、
前面と背面とを有した平坦な半導体基板と;
前記半導体基板の表面に刻まれた少なくとも1本の溝と;
前記溝内に提供されたセルフドーピングコンタクト材料と;
を含んでいることを特徴とする基板。
【請求項13】
セルフドーピングコンタクト材料はペーストを含んでいることを特徴とする請求項12記載の基板。
【請求項14】
セルフドーピングコンタクト材料は銀を含んでいることを特徴とする請求項12記載の基板。
【請求項15】
半導体基板は結晶シリコンを含んでおり、セルフドーピングコンタクト材料はシリコンドーパントを含んでいることを特徴とする請求項12記載の基板。
【請求項16】
シリコンドーパントは燐を含んでいることを特徴とする請求項15記載の基板。
【請求項17】
半導体基板はp型シリコン基板を含んでおり、セルフドーピングコンタクト材料は銀とn型シリコンドーパントとを含んでいることを特徴とする請求項1記載の基板。
【請求項18】
半導体基板は溝を有した面に燐拡散層をさらに含んでいることを特徴とする請求項12記載の基板。
【請求項19】
溝を有した面の反対面にアルミニウム層をさらに含んでいることを特徴とする請求項18記載の基板。
【請求項20】
太陽電池であって、
少なくとも1本の溝と、
実質的に前記溝内に提供され、ドーパントを含むコンタクトと、
を含んでいることを特徴とする太陽電池。
【請求項21】
コンタクトは銀を含んでいることを特徴とする請求項20記載の太陽電池。
【請求項22】
ドーパントはシリコンドーパントを含んでいることを特徴とする請求項20記載の太陽電池。
【請求項23】
ドーパントは燐を含んでいることを特徴とする請求項22記載の太陽電池。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2007−521669(P2007−521669A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552305(P2006−552305)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/003738
【国際公開番号】WO2005/086633
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(505471015)アドベント ソーラー,インク. (6)
【Fターム(参考)】