センサシステム及びセンサシステムに用いるためのサンプリングセル組立体
容積が最大20mm3のサンプリングチャンバを保持する光サンプリングセルと、光エミッタと、光受信器とを含む、ガス状化学物質を検出するためのセンサシステムが提供される。サンプリングセルは、光線が自由空間で単一のモノモード伝搬するよう適合される。このセンサシステムでは、干渉雑音を排除することにより高感度が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステム及びセンサシステムに用いるためのサンプリングセル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
試験流体のパラメータを測定するためのセンサは、化学、生物学及び生理学の種々の分野で広く用いられる。
【0003】
このような分野の1つは、血液ガスの監視である。人工血液ガスパラメータの測定は、重症患者を監視する不可欠な部分である。動脈血液試料の分析は、患者の血液ガス状態を求めるのに最も正確な方法であると考えられているが、このような定時測定により提供される情報は、試料をサンプリングしたその時点での状態のみを反映する。特定の臨床状態において、詳細には不安定呼吸又は心肺状態の患者において血液ガス値が極めて急速に変化するときには、患者を最適に看護するために血液ガスパラメータを頻回に又は連続的に監視することが必要となる可能性がある。
【0004】
このような種類の監視が必要であることにより、血液ガスパラメータを評価するための幾つかの侵襲性及び非侵襲性の方法が開発されることになった。このうち、血液ガスの経皮的監視は、酸素及び二酸化炭素分圧の両方を同時に測定することができる、現在利用可能な唯一の非侵襲性技術である。この方法は、心肺システムを介して、酸素を組織に送達し且つ二酸化炭素を除去する身体能力を瞬時に認知できる独自の特徴を有する。
【0005】
好ましくは、センサは、高感度であり、すなわち、擬似信号から真のパラメータ信号を検出し区別するセンサ能力を有する必要がある。センサ感度は、試料容積要件及び応答時間に関連性がある。試料容量が多いと、感度は高くなるが、応答時間も長くなる可能性が高い。試料容量が少ないと、応答時間は短くなるが、センサ感度も低くなる可能性がある。一方、多くの場合、試料容積を多くすることができない可能性がある。
【0006】
少ない試料容積に関しては、液体試料を分析するためのセンサシステムが開示されている、Pandraud,G他の「Sensors and actuators B」、Chemical第85巻(2000年)158〜162頁を参照することができる。センサシステムは、読み出し原理としてランベルトベールの法則を適用した検出媒体の光吸収を強調するエバネセント波検知、及びサンプリング細胞構成及び小型化のためにマイクロ流体直接結合に基づく。結果として得られる試料細胞容積は、約0.8mm3であり、低容積分析に良好に適合する。
【0007】
しかしながら、多くの用途では、測定される分析物は、血液ガス監視の場合のように気相状態の可能性がある。よって、気体試料の試料密度は液体又は固体試料と比較して小さいので、これによって感度要件が付加される。
【0008】
英国特許第2 219 656号には、コリメート光線及び再帰反射器を用いた連続信号(DC)検出である、気体試料を分析するための検出原理が記載されている。入射光ファイバを通して戻る前に、光線は、コリメータとレフレクタとの間の距離で定められるセル長の2倍にわたってガス内で相互作用する。しかしながら、光が入射光ファイバ内に戻ると、前方伝搬モードは、後方伝搬モードと相互作用して、共鳴装置シグネチャ(干渉雑音)を生じ、これはシステム性能を低下させることになる。
【0009】
米国特許第6,599,253号に記載される呼吸ガス分析装置は、患者の呼吸ガスを監視する赤外線分光器に適合されている。分析装置は、ヒトの呼吸流量監視の要件に対応する1000mm3オーダーの試料容積中のガスを検出することができる。しかしながら、高頻度又は連続的な血液ガス監視では、サンプリング容積は、実際に必要なガス容積、すなわちmm3範囲よりも数十倍大きい。
【0010】
経皮的血液ガス検知の特定の分野では、センサシステムに対する要求事項は、(1)短い応答時間内にガス透過及び拡散に関してガス濃度にアクセスすること、(2)小容積で高感度及び高選択性を満たすこと、(3)血液ガスの高度に局所的な濃度にアクセスすること、及び(4)実時間監視で(1)〜(3)を行うことである。
【0011】
1993年にMicroGas 7650モニタが導入されると共に、新世代の経皮的モニタが導入された。このセンサは、Clark型pO2センサ及びSeveringhaus型pCO2センサという基本要素を含む。pCO2は、電解質のpHを求めることにより電位差滴定で測定される。pHの変化は、pCO2変化の対数に比例する。pHは、小型化pHガラス電極とAg/AgCl基準電極との間の電位を測定することにより求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】英国特許第2 219 656号公報
【特許文献2】米国特許第6,599,253号公報
【特許文献3】国際特許WO03/023374号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Pandraud,G、らの「Sensors and actuators B」、Chemical第85巻(2000年)158〜162頁
【非特許文献2】Saleh et Teich(1991年、ISBN 0−471−83965−5、81、100、及び104頁)
【非特許文献3】Fetzer、「Tunable diode laser absorption spectroscopy in coiled hollow optical waveguides」、Applied Optics、2002年6月、第41巻第18号
【非特許文献4】Grima、「A New Test Method for Determining Biodegradation of Plastic Material Under Controlled Aerobic Conditions in a Soil−Simulation Solid Environment」、Journal of Polymers and Environment第9巻第1号2002年1月
【非特許文献5】Lambrecht,A.ら、「Miniature infrared gas sensors using photonic crystals」、Proc.of SPIE第6480巻68400D−1〜68400D10頁、2007年2月
【非特許文献6】Ritari,T.他、「Gas sensing using air−guiding photonic bandgap fibers」、OPTICS EXPRESS第12巻第17号4080〜4087頁2004年8月
【非特許文献7】Kozodoy,R.他、「Small−Bore Hollow Waveguide Infrared Absorption Cells for Gas Sensing」、Applied Spectroscopy第50巻第3号415〜7頁1996年3月
【非特許文献8】Kong FanliangとDepeursinge,C.「Optical sensor for transcutaneous CO2 measurement: Design principle and feasibility study」、Chinese Journal of Biomedical Engineering第11巻第3号186〜198頁1992年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、これまでに低容積ガス、例えば透過性ガス(gas in permeation)を検出するためのセンサシステムが提案されているにも関わらす、高感度、低試料容積及び短い応答時間を組み合わせることができるセンサシステムが依然として必要とされている。従って、本発明の目的は、そのようなセンサシステムを提供することである。無較正作業、すなわち、製造中しか較正しないことも好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明の態様の1つでは、媒体中のガス状化学物質を検出するためのセンサシステムが提供され、該システムは、化学物質を含む試料を受け入れるための最大20mm3の容積のサンプリングチャンバを保持する光サンプリングセルと、サンプリングチャンバ内に保持される試料と相互作用させるためにサンプリングセル内の光線光学経路に沿って自由空間伝搬する光線を生成してサンプリングセルにカップリングするための光エミッタと、サンプリングセルからの光線を検出し、試料の化学物質を反映する出力信号を生成する光受信器と、を含み、光線がモノモード伝搬で伝搬することを特徴とする。
【0016】
本センサシステムは、極めて少量の試料容積のガスしか必要としない。更に、本システムは、操作が簡単であり、例えば、国際特許WO03/023374号に記載されるエバネセント波検知に基づくセンサ技術に比較してより高感度である。
【0017】
本発明のセンサシステムは、光学的測定の原理が、検出する化学物質の物理的特性に基づくため、正確に動作する。化学的反応は関与しない。
【0018】
経皮的血液ガス監視の分野では、このセンサシステムにより、予め較正し且つ使用が容易な監視システムを用いて非侵襲性に動脈pCO2を測定することにより、患者の換気を頻回又は場合によっては連続的に監視することができる。
【0019】
すなわち、これまで利用可能なシステムは、電気化学の原理に基づき、頻回に再較正する必要があり、従って、較正ユニットを含む必要があるが、新しいシステムは、光学技術、好ましくは変調分光法技術を用いることにより経皮的センサ表面の小さな光サンプリングセルで光学的手段により化学物質を検出する。センサは、好ましくは工場で予め較正され、狂いがない。
【0020】
しかしながら、センサシステムは、経皮的用途を超えて、他の臨床分野、化学及び食品産業、生物分解を含む多数の技術分野で化学物質を監視するために使用され、及び環境パラメータを監視するために用いることができる点は理解されたい。従って、化学、生物学、生理機能、ガス分析、ガス保安、ガス発生監視、及び微細構造処理では、自動車、環境、生物学及び食品産業の種々の分野、並びにガス及び液体クロマトグラフィーに用いることができる。
【0021】
本発明のセンサシステムにより、オペレータは、透過ガス及び極めて微量のガス流を測定することができる。例えば、数マイクロリットル/分のガスは、分程度の応答時間で測定することができ、これは、極めて少量のガス流が患者の皮膚を通って流れる経皮的血液ガスモニタの場合である。システムは、界面を意味する媒体(例えば、周囲に粘着剤を有するヒト皮膚、組み込み式バイオリアクタ壁、ガス拡散特性の特徴を示す箔)に付加されるか、或いはプローブを意味する媒体中に直接(例えば、胃内ガスを分析するためにヒト胃内部に、生物分解を監視するためにバイオリアクタの異なる深さに)付加されるガス濃度を求めることができる。
【0022】
本システムにより潜在的に測定可能な全ての化学物質及び同位体のうち、最も一般的な標的化学物質の非網羅的なリストには、CO2、O2、H2O、NO2、C2H4、NH3、CO、HBr、HF、C2H2、H2S、HI、CH、HCN、NO、SO2、HCHO、N2O、HCI、NO3、及びCH3COCH3(アセトン)が含まれる。医学的用途の分野では、CO2、O2、H2O、CO、麻酔ガス、N2O及びアセトンに特に関心がもたれている。
【0023】
本明細書で用いる場合、「光サンプリングセル」という用語は、光学的手段により分析するための試料を保持する本体を意味する。「セル」という用語は、セル内のあらゆるサンプリングチャンバ、並びにサンプリングセルの本体に関連する点は理解されたい。
【0024】
更に、本明細書で用いる場合、「サンプリングチャンバ」という用語は、化学物質を含む試料を受け入れるためのサンプリングセル内のチャンバを意味する。サンプリングチャンバは、特定の容積を有し且つ空洞とすることもでき、或いは多孔性材料で充填することもできるが、こうすると、ガス試料の拡散は妨げられないが、ガスが利用可能なサンプリングチャンバの容積が減少することになる。
【0025】
本発明によれば、サンプリングチャンバの容積は最大20mm3である。
【0026】
光ビームの伝搬は、サンプリングチャンバ内、並びに光サンプリングセルの本体内で起こることができる点は理解されたい。このような伝搬は、導波管コア又はクラッディングが自由空気又はガスよりも屈折率が高いバルク固体相材料に基づく導波管伝搬とは対照的に、自由空間伝搬と考えられる点も更に理解されたい。従って、導波管伝搬では、伝搬の方向とは垂直な指数関数型崩壊で定義されることが多い非伝搬波であるそのエバネセント波によって検知されるが、本発明のビーム伝搬は、伝搬方向内に伝搬する波により検知を行うことを意味する。
【0027】
従って、本明細書で用いる場合、「自由空間伝搬」という用語は、従来技術、例えば国際特許WO03/023374号に記載されるような何らかの種類の半導体導波管内ではなく、サンプリングチャンバの気相内、サンプリングチャンバのあらゆる多孔性材料内、又はサンプリングセル本体内を光が伝搬することを意味する。
【0028】
「光エミッタ」という用語は、光線をサンプリングセル内に供給、生成、形成及び伝達するあらゆる手段を意味するものとする。従って、光エミッタは、例えばファイバ、レンズ、コリメータ及びビームスプリッタなど、光源、光源制御装置、光トランスミッタを含むことになる。
【0029】
「光線光学経路」という用語は、光サンプリングセル内の光線の伝搬経路として理解される。伝搬は、サンプリングチャンバの気相内、そのあらゆる多孔性材料内並びに光サンプリングセルの本体内で起こる可能性がある。しかしながら、気体試料との相互作用が、サンプリングセルの本体内では起こらず、サンプリングチャンバの気相内でのみ起こり、光線と化学物質との間の相互作用が光線経路の一部のみに沿って現れることができるようになることは理解されたい。
【0030】
「光受信器」という用語は、サンプリングセルから光線を受け取り、伝達し、変換するあらゆる手段を意味するものとする。従って、光受信器は、光検出装置、光トランスミッタ(例えばファイバ)、トランスフォーマ(例えば、フィルタ、アナログ及び/又はデジタル電子機器、マイクロコントローラ、信号分析/フィッティング、正規化処理、較正アルゴリズム、安全性制御装置、通信制御装置)及び増幅器を含むものとする。
【0031】
本発明によれば、光線は、単一のモノモード伝搬により伝搬する。
【0032】
「モノモード伝搬」とは、個々の光学モードの間に相互作用又は干渉がない光線伝搬を意味する。従って、「モノモード伝搬」は、1つの光学モードのみがシステムに沿って伝搬すること、又は、複数の光学モードの場合には、各モードがそれ自体又はあらゆる他の伝搬モードと干渉することなく伝搬することを含む。例えば、光線を囲むサンプリングチャンバは、伝搬モノモードを維持し、自由空間伝搬モードが幾つかのモードに変換される点で光線を乱さない必要があり、そうでなければ、干渉及び寄生雑音が起こる。
【0033】
直交配向の分極モードは、互いに干渉せず、寄生雑音又は干渉雑音を生成することなくシステム全体に伝搬できる点は強調する必要がある。
【0034】
光線のモノモード伝搬は、全光線光学経路、すなわちサンプリングセル内に沿って起こることに留意されたい。しかしながら、好ましくは、光線伝搬は、光エミッタ及び同様に光受信器内のモノモードであり、従って、あらゆる光トランスミッタ、例えば光源から光検出装置までの導波管を通る。
【0035】
「単一の伝搬」とは、光線の反射、屈折、回折又は散乱が起こらない、又は光線自体と干渉しない光線の特異的な前方伝搬を意味する。
【0036】
典型的には、寄生雑音の主な原因であると考えられるエタロンフリンジは、ビームをそれ自体に折り返してこれと干渉する部分後方反射により生じる。本発明では、全システム及び詳細にはサンプリングセルは、高性能センサシステムの単一のモノモード伝搬を満たすために、ビーム形、ビーム断面、及び光学経路に適合される。例えば、サンプリングチャンバの形状は、無視できる摂動しか起こらないように、光エミッタにより形作られたガウスビームに従って作製することができる。
【0037】
実際には、モノモード伝搬は、好ましくは、分布帰還型(DFB)レーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)及び量子カスケードレーザのような狭帯域光エミッタを選択し、単一の縦方向モードとすることにより生成される。
【0038】
本発明の単一のモノモード伝搬により、屈折率不連続点、モード間干渉、ビーム伝搬摂動、ビーム部分散乱等により生じるあらゆる種類の寄生雑音を確実に低減させることができる。このような雑音の低減は、ビームがモノモードに維持され、一度に光エミッタから該エミッタに沿って光受信器までこれに沿って伝搬する場合に達成することができる。
【0039】
詳細には、本発明の低サンプリング容積では、あらゆる種類の寄生雑音を減少させ、従ってセンサシステムを高感度にするために、単一のモノモード伝搬は必要不可欠であることは理解されたい。
【0040】
自由空間伝搬の場合には、モノモード伝搬は、好ましくは、ヘルモルツ(Helmoltz)の式のゼロ次モードを選択することにより与えられ、その一般解は、エルミートガウス、ラゲールガウス及びベッセル強度分布がガウスビームにより近似された、Saleh et Teich(1991年、ISBN 0−471−83965−5、81、100、及び104頁)に記載されている。実際には、モノモード伝搬を得るために、狭帯域幅の光源を選択することが好ましく、すなわち、帯域幅は、気体吸収ラインよりも狭く、好ましくは単一の縦方向モードとする必要がある。
【0041】
サンプリング容積に関しては、Fetzerは、「Tunable diode laser absorption spectroscopy in coiled hollow optical waveguides」、Applied Optics、2002年6月、第41巻第18号にて、検知システムの流速が60cm3/分であることを開示している。このようなシステムは応答時間が短い。このシステムは、ほぼ4cm3のサンプリングチャンバ容積に対応するΦ=1mm及びほぼ4m長さの中空光ファイバに基づく。Fetzerの開示事項によれば、このようなシステムのサンプリング容積は、50mm3(Φ=0.25mm及び長さ1m)まで減少させることができるが、この数字を超えることはできない。このようにして、システムは、呼気分析には適合するが、mm3程度の容量及びガス拡散に関する輸送手段しか必要ではない経皮的血液ガス監視には適合しない可能性がある。本発明は、サンプリング容積を20mm3未満に減少させ、短い応答時間でガス濃度平衡を達成させることによりこの問題を解決する。例えば、移植皮膚の酸素化監視の用途では、皮膚を透過する血液ガスを局所的に検知し、移植の成功を示すことが必要である。この場合、皮膚を通る血液ガス流は皮膚拡散により制限され、20mm3より大きいあらゆるサンプリング容積で、応答時間がこの用途では許容不可能なレベルまで増大することになる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、サンプリングチャンバの容積は、最大5mm3である。
【0043】
本発明のセンサシステムの重要な用途は、新生児又は成人の連続的血液ガス監視である。このような換気測定では、例えば心肺疾患の場合において、大脳損傷(低酸素血症(hypoxeamia)又は高酸素血症(hyperoxeamia))を避けるために、1分未満の短い応答時間が必要である。本発明の好ましい実施形態では、この問題は、サンプリング容積を5mm3より小さく定め、要求される短い応答時間内にガス濃度平衡に到達できるようにすることによって解決される。このようにサンプリング容積を小さくすることは、サンプリングセルが光線を摂動させないように放出される光線の形状にサンプリングチャンバを適合させるか、或いは、光線が誘導されるが依然として自由空間を伝搬するようにサンプリングセルを適合させる何れかによる、少なくとも2つの方法で得ることができる。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、サンプリングチャンバの容積は、最大0.5mm3である。
【0045】
本発明のセンサシステムの用途のうち、生物分解監視及び制御には、0.5mm3未満又はそのオーダーの超微小サンプリング容積が必要である。このようにサンプリング容積を小さくすると、実時間解像が可能になり、従って、分解速度を最適にするためのバイオリアクタ基質及び酸素供給の連続制御が可能になる。
【0046】
例えば、Grimaは、「A New Test Method for Determining Biodegradation of Plastic Material Under Controlled Aerobic Conditions in a Soil−Simulation Solid Environment」、Journal of Polymers and Environment第9巻第1号2002年1月において、400cm3基質容積から10mm3/分(20μg/分)のCO2を生成する土壌でのセルロースの分解を開示する。総表面積326cm2の立方体基質を仮定すると、結果として得られるガス透過率は0.03mm3/(分cm2)である。従って、本発明のこの実施形態のセンサを取り付け、そのようなセルロースバイオリアクタの検知面積を15cm2にすると、0.5mm3のサンプリング容積は、60秒未満の本センサシステムの応答時間に対応し、これは、生物分解監視及び制御に許容可能である。分解監視に通常用いられる高価な質量分析又は液体クロマトグラフィーは、このような短い応答時間では決定されない。
【0047】
本発明では、サンプリングチャンバ(又はその一部)の設計は、光線を摂動させることなくサンプリングチャンバ容積(及びその結果としてシステム応答時間)を最適化するために光線経路及び経路に沿う光線断面に適合されることが好ましい。「光線を摂動させることなく」とは、光線摂動を生成する寄生雑音(干渉雑音)が、必要なセンサシステム性能、例えば解像度、安定性、及び精度に比べて無視できるように維持されることを意味する。例えば、このように適合させるためにガウスビーム方程式を用いることができる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、サンプリングチャンバの内部表面は、好ましくは化学的及び/又は光学的に活性コーティングでコーティンングされる。化学的コーティングは、化学物質を第1の化学物質よりも容易に検出可能な別の化学物質に変換することができる特定の化学反応を触媒することができる。光学的コーティングは、光線の誘導又は形状化の何れか、或いは干渉/寄生雑音を減少させるのを助けることができる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、センサシステムは、光線が伝搬する誘導構造を含む。
【0050】
本明細書で用いる場合、「誘導構造」という用語は、光線の延長を制限し、場合によっては光線と化学物質との間の相互作用長さを延長するために、サンプリングセル内及び任意的にこれを超えて光線の自由空間伝搬を誘導するよう動作する中空空洞を意味する。これとは対照的に、国際特許WO03/023374号に開示されている導波管は、誘導構造で意図されるように、誘導された光のほとんどが自由空間のような気相ではなく固体材料中を伝搬するバルク固相材料のコア又はクラッディングに基づく。
【0051】
誘導構造では、光線のモノモード伝搬は、狭帯域幅光源に別の方法で提供することができる。従って、誘導構造寸法は、光線のモノモード伝搬を促進するように選択することができる。
【0052】
従って、誘導構造の特定の幾何学的形状では、モノモード伝搬は、比率D/λ(式中、Dは、誘導構造の特徴寸法であり、λは、印加した光線の波長)の数値に左右される。
【0053】
従って、特徴寸法「Dmirror]を有する矩形鏡誘導構造では、モノモード伝搬を有するためにはDmirror/λ<(π)−0.5を満たす必要がある。この関係では、「鏡誘導構造」は、金コーティングのような反射内表面を備える構造である点は理解されたい。
【0054】
同様に、コア及び誘電クラッディング、特徴寸法「Ddielectric」及び(n12−n22)0.5(式中n1及びn2がそれぞれ誘電体コア及び誘電クラッディング屈折率を表す)で定義される開口数NAを有する矩形誘電体誘導構造では、モノモード伝搬を有するためにはDdielectric/λ<1/(π0.5*NA)を満たす必要がある。この関係では、「誘電体誘導構造」は、異なる屈折率を示す誘電体コア及び誘電クラッディングを備える誘電体で作られた構造であることは理解されたい。
【0055】
更に、直径Dcircular及び開口数CO2の円形誘電体誘導構造では、モノモード伝搬するためにはDcircular/λ<2.405/(π*NAcircular)を満たす必要がある。
【0056】
一般に、特徴寸法「D」は、誘導構造断面のより長い寸法、例えば矩形の長辺として考えることができる。従って、長い寸法に関してモノモード伝搬が起こると、短い寸法に関しても起こる。他方、短い寸法に関してモノモード伝搬が起こらない場合には、全て起こらない。
【0057】
特徴寸法「D」は、幾つかの従来技術の設定値について評価することができる。このような評価では、あらゆる断面の短い方の寸法が評価される。
【0058】
すなわち、Lambrecht(Lambrecht,A.ら、「Miniature infrared gas sensors using photonic crystals」、Proc.of SPIE第6480巻68400D−1〜68400D10頁、2007年2月)は、特徴寸法(区域)が400μmであるサンプリング容積を表示するフォトニック結晶に基づく赤外線ガスセンサを開示している。4.24μm波長の熱源を用いると、D/λ値は、100(400μm/4.24μm)の程度であり、これは、高度にマルチモーダルであり、従って、モノモード伝搬でないことを示している。
【0059】
同様に、Lambrechtが用いる熱源は、ガス吸収ラインと比べてより広い帯域幅を生じる。これはまた、結果として得られるマルチモーダル伝搬も反映する。
【0060】
Ritari(Ritari,T.他、「Gas sensing using air−guiding photonic bandgap fibers」、OPTICS EXPRESS第12巻第17号4080〜4087頁2004年8月)は、サンプリング容積(真空チャンバ)の特徴寸法Dが10μmのガスセンサを開示する。1.5μm波長では、D/λ値は、7(10μm/1.5μm)の程度である。D/λ値は、真空チャンバ内でマルチモーダル伝搬を示す。更に、Ritariは、真空チャンバと検出装置との間にマルチモーダルファイバを用いることに留意されたい。従って、Ritariの設定では、光源から検出装置までの全光学経路にわたってモノモード伝搬が生じない。
【0061】
Kozodoy(Kozodoy,R.他、「Small−Bore Hollow Waveguide Infrared Absorption Cells for Gas Sensing」、Applied Spectroscopy第50巻第3号415〜7頁1996年3月)は、サンプリング容積の特徴寸法Dが250μmのガスセンサを開示している。熱源からの4.26μm波長では、D/λ値は、60(250μm/4.26μm)の範囲である。広帯域幅熱源に沿うD/λ値は、結果として得られるマルチモーダル伝搬を反映する。
【0062】
Kong(Kong FanliangとDepeursinge,C.「Optical sensor for transcutaneous CO2 measurement: Design principle and feasibility study」、Chinese Journal of Biomedical Engineering第11巻第3号186〜198頁1992年9月)の同様の考慮事項は、50(200μm/4.2μm)の程度のD/λ値を適用している。従って、広帯域幅熱源に沿うD/λ値は、結果として得られるマルチモーダル伝搬を反映する。
【0063】
上で参照したFetzerは、Φ=0.25mmのサンプリング容積及び光源(slight source)として波長が1.5μmの分布帰還型レーザを開示している。従って、FetzerのシステムのD/λ値は、150(250μm/1.5μm)の程度である。従って、Fetzerのレーザは狭帯域幅型であり、適切なモノモード伝搬に適用可能とすることができるが、D/λ値は、マルチモーダル伝搬動作を反映する。
【0064】
従って、これらの参考文献の何れも本発明のモノモード伝搬を開示しない。
【0065】
好ましくは、サンプリングセルは、すなわち完全に又は少なくとも部分的にサンプリングセル内に配列される誘導構造を含む。
【0066】
本発明によれば、誘導構造も同様に、サンプリングセルを超えて延びることができる点は理解されたい。従って、誘導構造は、光エミッタの方向に延びることができ、すなわち、誘導構造は、サンプリングセルの前又は入口に光線を誘導することができる。同様に、誘導構造は、光受信器の方向に延びることができ、すなわち、誘導構造は、サンプリングセルの出口又はこれを超えて光線を誘導することができる。従って、誘導構造は、例えば接着又は接合することにより光エミッタ及び/又は光受信器に接続することができる。
【0067】
誘導構造は、円形、矩形又は楕円形であれ、少なくとも部分的に内側表面を反映するあらゆる断面のあらゆる管状装置とすることができる。「部分的に反射する」という用語は、誘導構造が、100%未満の光強度が誘導構造に沿って伝搬する間に失われるように光線を伝搬することができるように適合されることを意味するものとする。誘導構造の部分的反射は、典型的には、滑らかな表面を有することにより生じる。「滑らかな表面」とは、あらゆる表面多孔質を含むあらゆる表面構造が光波長よりも有意に小さく、そのような表面構造又は多孔質に関して光線の散乱が殆ど又は全く起こらないようにされることであると理解される。
【0068】
他方、誘導構造は、実際に、化学物質が誘導構造の表面にわたって拡散することができるように多孔性とすることができる点は理解されたい。従って、典型的な実施方法は、システム感度を増大させると共に、サンプリング容積を減少させて応答時間を短くするように相互作用長さを長くした磨き内部表面を備える小型金管体を用いる。好ましくは、誘導構造は、管体(毛管)、中空ファイバ、多穴ファイバ及びフォトニックバンドギャップ装置の群から選択される。しかしながら、あらゆる多孔性の誘導構造は分子レベルであり、すなわち、センサシステムの光の波長よりも数桁小さい大きさであることは理解されたい。
【0069】
特定の実施形態では、誘導構造に沿った自由空間伝搬では、95%以下又はこれを超える光が中空コアを進む中空コア光ファイバ及び中空コアフォトニック結晶ファイバ(中空コアPCF)が用いられる。このようなファイバによって実施される検知は、伝搬波により得られる。
【0070】
或いは、誘導構造は、ガス状化学物質に対して非多孔性である。
【0071】
多くの場合、誘導構造は、例えば、上記の金管体のように化学的に不活性である。しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、誘導構造は、化学的及び/又は光学的に活性のコーティングでコーティングすることができる。化学的コーティングは、化学物質を第1の化学物質よりも容易に検出することができる別の化学物質に変換することができる特定の化学反応を触媒することができる。光学的コーティングは、化学物質と相互作用し、検出可能な出力信号を生成することができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態では、誘導構造は、ガス状試料を受け入れる。従って、誘導構造は、少なくとも部分的にサンプリングセル内に配列され、そのサンプリングチャンバを横断して延びるので、誘導構造は、ガス状試料を受け入れる試料セルの一部とすることができる。誘導構造をこのように配列すると、試料チャンバの容積、及び化学物質を適切に検出するのに必要な応答時間が更に減少される。
【0073】
本発明の実施形態の1つでは、誘導構造は直線状である。このような直線状の誘導構造により、サンプリングチャンバ容量が最小になり、高感度のセンサシステム及び容易に検出可能な化学物質に適用可能とすることができる。
【0074】
本発明の別の実施形態では、誘導構造は、湾曲状、コイル状、折り畳み状、U字形状又は螺旋形状である。このような誘導構造では、サンプリングチャンバの容積及び全試料セル容積を依然として低レベルに維持しながら、光線光学経路が延長される。延長光線光学経路は、システムの感度を改善し、このため、検出可能性が低い化学物質に適用することができる。
【0075】
モノモード伝搬を得るため、更に干渉雑音を最適に減少させるために、光源は、好ましくは、狭帯域幅を有する供給源から選択され、すなわち、帯域幅は、ガス吸収ラインに比較して狭くする必要がある。
【0076】
従って、本発明の好ましい実施形態では、光エミッタは、狭帯域光エミッタであり、好ましくは、分布帰還型レーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザ及び量子カスケードレーザの群から選択される。
【0077】
バンド幅は、ガス状化学物質の関連吸収ラインに関連することができる。従って、光エミッタの−3dBのバンド幅は、好ましくは、多くても、ガス状化学物質吸収ラインのFWHM(半値全幅)である。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、光エミッタは、コリメータを含む。コリメータにより、光線は、方向及び角度発散に関して限定され、定めることができる。このようにして、寄生雑音を減少させることができる。
【0079】
光線伝搬を可能な限り最良のものにするため、及び干渉雑音を更に減少させるために、光エミッタ及び光受信器の少なくとも1つは、ビームシェーパを含むことが好ましい。「ビームシェーパ」とは、光線波面を修正するあらゆる装置、好ましくはコリメータ、レンズ、分布屈折率レンズ(GRIN、Selfoc)又は回折格子を意味する。好ましくは、光エミッタは、ビームシェーパを含む。
【0080】
本発明の実施形態の1つは、光エミッタ及び/又は光受信器の少なくとも1つに光導波管を用いる。好ましい実施形態では、光導波管は、光エミッタに用いられる。本発明の別の好ましい実施形態では、光導波管は、光エミッタ及び光受信器の両方に用いられる。好ましくは、光導波管は、ファイバ又はレンズファイバであり、後者は、コリメータ又はビームシェーパ機能も満たす。ファイバ及びレンズファイバは、最低限の損失及び雑音でエミッタからサンプリングセルまで及びサンプリングセルから受信器まで確実に適切に伝達する。
【0081】
本発明の実施形態の1つは、ファイバ先端内にコリメータ(レンズ)を含むレンズファイバを用いる(レンズファイバは、ファイバ先端に成形、接着又ははんだ付けされたガラスのドロップ様ボール(又は特定の形状)であるとみなすことができる)。レンズファイバ出力波面は、強集束させる(典型的にはビームウエスト直径が数ミクロン及びビームウエストまでの距離が数ミクロンの範囲)ことから、ほぼ平行にする(典型的にはビームウエスト直径が100ミクロン未満及びビームウエストまでの距離は数ミリメートル)ことまでカスタマイズすることができる。発散ビームもまた可能である。ビームを密接に囲むサンプリングセルと組み合わせると、結果として得られるセンサシステムは、多くの重大な応用分野に必要とされる短い応答時間を示す。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、光エミッタは、ビームスプリッタを含む。ビームスプリッタにより、光線は、サンプリングセル光線及び基準光線に分割される。サンプリングセル光線は、サンプリングチャンバを横断して通過するが、基準光線は、サンプリングチャンバを横断して通過しない点は理解されたい。その代わりに、基準光線は、例えば別個の導波管内を又はサンプリングセルを横断して光受信器に伝搬するが、化学物質とは相互作用しない。システム性能を良好にするために、例えば共通モード阻止性能のためにサンプリングセルビームと比較するように基準光線を用いることが好ましい。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、光エミッタは、波長又は周波数が変調される。更に、光受信器は、基本的及び/又は調波検出に適合させることができる。
【0084】
本発明の好ましい実施形態で、上記波長又は周波数変調光と組み合わせるか組み合わせない場合に、波長(又は周波数)は、化学物質の適切な吸収ピークの波長(又は周波数)にわたって掃引することができる。結果として得られる信号は、吸収ピークのサインに対応し、100%伝達及び/又は基準信号に比較して化学物質信号を生成することができる。波長変調(又は周波数変調)しなければ、直接吸収ガス信号が生成されるが、波長変調(又は周波数変調)と組み合わせると、吸収ピークの調波(導関数とも呼ばれる)サインが生成される。
【0085】
本発明の別の実施形態では、光受信器は、基本波及び/又は調波検出に適合することができる。光受信器による基本波及び調波検出では、吸収スペクトルの一次、二次又は高次導関数を検出することができる。波長変調周波数と等しい周波数で復調が行われる場合には、基本波検出(又は一次調波検出)と呼ばれる吸収スペクトルの一次導関数を観測することができる。波長変調周波数の2倍の周波数で復調が行われる場合には、二次調波検出と呼ばれる吸収スペクトルの二次導関数を観測することができる。同様の技術を用いて、高調波も検出することができる。また、システム性能を良好にするために異なる調波の組み合わせの検出も用いることができる。
【0086】
波長又は周波数調節分光法及び基本波及び調波検出により、効率よく雑音を減少させ、センサシステムを高感度にすることが可能になる。
【0087】
好ましい実施形態では、センサシステムは、電流又は温度を調節することによりレーザダイオードの波長変調を応用し、基本波又は/及び(各)調波の変調周波数で狭帯域幅検出を行う。
【0088】
従って、本発明の好ましい実施形態では、波長変調を用いて、変調技術により提供される信号の雑音混入を最小限にする。最先端技術から、高感度波長変調分光法での信号対雑音比は、2つ又は複数の部分的に反射する界面間の光干渉又はモード間干渉から生じるいわゆる「干渉雑音」により制限されることが知られている。例えば、光伝搬に沿う屈折率の非断熱的変化により、部分的に反射する界面が生じる。センサシステムに基づく個別要素は、干渉雑音を発生する複数の空気−ガラス界面(ファイバ−空気、空気−コリメータレンズ、その他)が生じやすい。
【0089】
変調分光法で高感度にするためには、干渉雑音を減少させる必要がある。好ましい実施形態では、このことは、DFBレーザダイオード又はVCSEL又はあらゆる種類の適切なレーザのようなモノモード光エミッタを用いて、狭スペクトル放射(ガス吸収ピーク幅に関する)を生じ、モノモードファイバに結合され、それ自体が自由空間でモノモードとして結合されてサンプリングセル内を伝搬することによって実施することができる。その結果、光線は、ガウスビーム(エルミート−ガウス、ラゲール−ガウス又はベッセルビーム)により説明することができ、これは、生成が容易で、更にレンズファイバにより収集することができる。
【0090】
更に、統計的処理を用いて残留干渉雑音を排除する。統計的処理は、例えば熱機械アクチュエータにより、残留干渉に影響を及ぼすパラメータを意図的に摂動又はスクランブルした後に、信号に用いることができる。スペクトルを平均化すると、干渉雑音排除に役立つ。
【0091】
本発明の好ましい実施形態では、光受信器において、化学物質信号を基準信号の直接伝達又は検知化学物質吸収スペクトルの外側で取得されるサンプリングセル信号と比較することにより、センサシステムの無較正作動を得ることができる。波長変調又は周波数変調の場合には、無較正動作は、調波信号をサンプリングセル直接伝達、基準信号の直接伝達、又は基準信号の調波信号と比較することによっても得ることができる。上記の比較のあらゆる組み合わせを適用することもでき、これは、本明細書では「正規化処理」と呼ばれる。
【0092】
センサシステムの無較正動作では、化学物質を反映する信号は、その場での較正工程により決定することができ、他の較正工程は全く必要ではない。詳細には、この決定には、他の場合には試料決定の前又は後に別個の段階として行う必要があったはずの較正工程が含まれない。
【0093】
本発明の好ましい実施形態では、光線光学経路の形状は、サンプリングセル内、サンプリングチャンバ内又は前記誘導構造内の反射、回折又は散乱により修正される。
【0094】
光線光学経路をこのように修正することにより、経路長さは、光線化学物質相互作用を増大させるために延長される。屈折、反射、回折及び散乱の各現象に関して、光線光学経路は、直線伝搬から逸脱し、同時に経路の長さが延長される。
【0095】
本発明によれば、屈折、反射、回折又は散乱に関する上述の光線経路修正は、どのような有意な干渉雑音をも導入しないように行われる点は理解されたい。従って、修正は、屈折、反射、回折又は散乱光線がそれ自体と干渉せず、屈折、反射、回折又は散乱に付加的な干渉光線モードが導入されないように行われる。
【0096】
例えば、サンプリングセル内を伝搬する光エミッタからの光線は、ビーム分割キューブを用いることにより分割し、屈折及び部分反射により基準信号及びサンプリングセル信号を生成することができる。次に、サンプリングセル内の光学経路は、サンプリングセルを小型に維持しながらガス光線相互作用が2倍になるように、鏡(平坦又は全反射凹面)を用いて折り畳むことができる。折り畳み光線は、後方反射干渉を避けるために傾ける必要がある。光受信器は、光エミッタに隣接して配置することができる。
【0097】
本発明によるセンサシステムのサンプリングセルは、膜を含むことが好ましい。膜は、試料チャンバに隣接してサンプリングセルと共に配列することができる。
【0098】
膜を用いることで、媒体と光線との間のあらゆる望ましくない相互作用を減少させることができる。実際に、多くの用途において、検知化学物質を媒体の残りから分離することが必要である。従って、ガス状化学物質を検知するために、膜は、媒体からの液体又は固体が光線と相互作用するのを防止し、同時にガス状化学物質が膜を横断してサンプリングチャンバ内に拡散することができるようにする。
【0099】
膜は、化学物質の拡散又は光線の伝搬に関して種々の特性を有することができる点は理解されたい。従って、膜は、コーティングすることができ、及び/又はバルク特性を有することができ、すなわち、膜材料自体が化学的又は光学的活性を有することができる。化学的活性により、化学物質は、検出することがより容易とすることができる別の物質に変換することができる。本発明の好ましい実施形態では、膜は、化学物質を検出が容易な別の物質に変換できる酵素を含む。従って、膜は、グルコースを過酸化水素に変換するグルコースオキシダーゼを含むことができる。膜の光学的コーティングは、サンプリングセル機能を支援するために光線と相互作用することができる。
【0100】
膜は、化学的に不活性とすることもでき、上述のように反応性であってもよい。好ましくは選択性である。このために、膜は、選択された多孔性及び/又は化学構造を有する。
【0101】
膜は更に、分離、汚れ防止、機械的剛性及び組立易さのような、幾つかの必要事項を満たすためにサンドウィッチ構造に基づくことができる。
【0102】
膜は更に、制御表面粗さ又は制御表面構造を有することができる。従って、膜は、ガス試料を受け入れるサンプリングセルのこの部分の容積をできるだけ小さくしながら、最大量の試料を受け入れることができるようにして、ガス試料を受け入れるサンプリングセルの一部を形作るよう適合することができる。サンプリングセルは、依然としてサンプリングセル内の化学物質を適切に拡散させる必要があることは理解されたい。これは、膜表面粗さ又は膜表面構造により、試料を受け入れるサンプリングセルの一部を定めるサンプリングセル構造により達成することができる。従って、膜は、膜とサンプリングセル壁との間の化学物質が拡散する唯一の空間が、膜構造粗さ又は構造が残した空間となるようにサンプリングセル壁に隣接して配列することができる。また、サンプリングセルの容積を小さく保ちつつ適切にガスを拡散させるために膜粗さ/構造とサンプリングセル壁粗さ/構造の組み合わせも用いられる。
【0103】
膜は、サンプリングセルに固定すること又は取り外すこともでき、或いは、サンプリングセルの一部に一体化し、システムの交換可能/ディスポーザブル部品を形成することもできる。
【0104】
本発明の好ましい実施形態では、膜、及びサンプリングセルの少なくとも一部は、サンプリングセル組立体に一体化される。この実施形態によれば、サンプリングセル組立体は、交換可能又はディスポーザブルとすることができる。
【0105】
交換可能サンプリングセル組立体の場合には、組立体は、サンプリング容積(例えば成人及び小児に測定値を適合させるため)、温度及び湿度のような種々の測定条件に適合させることができる。
【0106】
ディスポーザブルサンプリングセル組立体では、組立体は、試料間汚染を最小にするために1回の測定毎に交換することができる。
【0107】
本発明によるセンサシステムの別の好ましい実施形態では、システムは、光線を横断する媒体パイプを含む。
【0108】
「媒体パイプ」という用語は、これと相互作用する光線を横断して連続的に媒体を輸送するための流れ構造を意味するものとする。このような媒体パイプは、例えばガス生成環境で化学物質を連続的に監視するのに特に適用可能である。
【0109】
媒体パイプは、サンプリングセルの一体化された部品とすることもでき、化学物質が媒体パイプを流れるときにセンサシステムにより連続的に監視されるようにサンプリングセルに隣接して配列することもできることは理解されたい。
【0110】
好ましい実施形態では、サンプリングセルは、化学物質をサンプリングするためのサンプリング領域を有する。
【0111】
「サンプリング領域」という用語は、試料収集に割り当てられたサンプリングセルの領域を意味するものとする。好ましくは、サンプリング領域の面積は、比較的大きくすることができる。従って、典型的には、サンプリング領域は、例えば膜を横断して拡散するときに試料を収集して、その後、ガスがサンプリングチャンバに拡散するための小さい容積を定める高表面構造とすることができる。サンプリング領域により定められる容積は、センサシステムの応答時間を減少させるために最小にする必要がある。本発明の好ましい実施形態の1つでは、サンプリング領域は、膜とサンプリングセル壁との間の化学物質が拡散するための唯一の空間が、膜表面粗さ又は構造及びサンプリングセル壁粗さ又は構造により残される空間となるように、サンプリングセル壁に隣接して配列される膜により定められる。同様に、サンプリング領域の表面は、化学物質試料が拡散するのに利用可能な極めて小さな容積を定める制御表面粗さ又は制御表面構造を有することができる。
【0112】
サンプリング領域に対する光線光学経路の配列は、少なくとも2つの異なる方法で達成することができる。
【0113】
すなわち、光線光学経路は、光線光学経路がサンプリング領域と直接接触するようにサンプリング領域に隣接して位置付することができる。このようにして、ガス状試料は、サンプリング領域から光線光学経路まで直接拡散する。
【0114】
或いは、光線光学経路は、光学サンプリングセルに埋め込むことができる。このような場合、サンプリングセルは、更に、サンプリング領域と光線光学経路との間に、ガス状化学物質をサンプリング領域から光線光学経路まで拡散させるための少なくとも1つのダクトを含むことができる。
【0115】
本発明によるセンサシステムの光エミッタ及び光受信器は、光サンプリングセルと一体化されるのが好ましい。従って、光エミッタは、光サンプリングセルと一体化することができる。同様に、光受信器は、サンプリングセルと一体化することができる。好ましくは、光エミッタ及び光受信器の両方は、サンプリングセルと一体化される。
【0116】
「光サンプリングセルと一体化される」という用語は、光エミッタ及び/又は受信器がサンプリングセルにより保持され、例えば接着又は他の方法で取り付けられ、或いはこれと共に組み立てることもでき、又は完全に一体化することもできる、すなわち、1つの単一構造、例えば1つの単一ウェハーボードとして製造することもできることを意味する。本発明によれば、サンプリングセルは、あらゆる光電子検出回路、制御装置、光源を含む全センサシステム、あらゆる送信機を含むあらゆるビームスプリッタまで一体化することができる点は理解されたい。このような場合には、サンプリングセルは、シリコン又は第III〜V族成分のような半導体とし、ミクロ電子工学製造工程をうまく利用することができる。
【0117】
好ましくは、本発明によるセンサシステムは温度制御される。従って、センサシステムは、加熱コイル、ペルチェ素子及び/又は加熱電子装置のような加熱システムを含むことができる。同様に、センサシステムは、サーミスタ及び/又は電子チップセンサのような温度検知システムも含むことができる。
【0118】
本発明の多数の好ましい実施形態では、センサシステムは、多重検出に適合することができる。「多重検出」は、付加的な化学種又は同位体の検出、複数の試料中の同じ化学種の同時検出のほか、異なる試料の異なる化学物質の同時検出を含む。
【0119】
従って、センサシステムは、少なくとも1つの付加的な光サンプリングセルを更に含むことができ、次に、これを光サンプリングセルと直列又は並列に配列することができる。好ましくは、光サンプリングセル及び少なくとも1つの付加的なサンプリングセルは、単一のサンプリングセル本体に一体化される。
【0120】
付加的な化学物質を検出するため、又は付加的な試料の化学物質を検出するために、センサシステムは、少なくとも1つの付加的な光エミッタを含むことができる。同様に、センサシステムは、少なくとも1つの付加的な光受信器を含むことができる。好ましくは、センサシステムは、組み合わせて働くようにされた付加的な光エミッタ及び付加的な光受信器を含むことができる。或いは、付加的な光受信器は、光信号の例えば異なる調波を検出するか異なる波長変調又は周波数変調と組み合わせた光受信器と共に働くことができる。
【0121】
本発明の更に別の実施形態では、光エミッタは、複数の化学物質又は複数の同位体を検出するための波長可変の光エミッタである。
【0122】
本発明の別の態様によれば、本発明の第1の態様によるセンサシステムと用いるためのサンプリングセル組立体が提供され、前記サンプリングセルは、化学物質を含む試料を受け入れるためのサンプリングチャンバを保持する光サンプリングセルと、サンプリングチャンバに隣接する膜とを含む。
【0123】
上述のように、サンプリングセル組立体は、試料間汚染を最小にするためにディスポーザブルとすることができる。
【0124】
本発明の以下の種々の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明によるセンサシステムを示す概略図である。
【図2】ファイバベースの光エミッタ及び受信器を備えるセンサシステム及び膜を示す概略図である。
【図3】レンズファイバ光エミッタ及び光受信器を備えるセンサシステム及び基準光線を示す概略図である。
【図4a】偏位及び/又は分割光線経路を含む光線光学経路を示す概略図である。
【図4b】偏位及び/又は分割光線経路を含む光線光学経路を示す概略図である。
【図5】誘導構造を備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図6】埋め込み誘導構造及びダクトを備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図7】螺旋形誘導構造を備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図8】マイクロミラーを含む折り畳み光線光学経路を備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図9】媒体パイプを備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図10】サンプリング領域構造を備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図11】直列及び並列に接続された付加的なサンプリングセルを備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図12】複数の光エミッタを備えるセンサシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0126】
本発明によるセンサシステムを図1示す。センサシステムは、媒体(1)の化学物質を検出するよう適合され、光線(5)を生成して検出するように配列されたサンプリングセル(2)、光エミッタ(3)及び光受信器(4)を含む。
【0127】
光エミッタは、レーザ、レーザダイオード及び発光ダイオードのような光源に基づき、光がサンプリングセルに結合され、光線を生成するあらゆる装置とすることができる。同様に、光受信器は、サンプリングセルからの光を検出して媒体中の検知化学物質濃度を反映する出力信号(6)を生成するための光電子回路のようなあらゆる装置とすることができる。
【0128】
図2に示すセンサシステムは、光エミッタの光源(7)が、サンプリングセル(2)により保持され、送信機(8)を通して、例えば電流、電力及び/又は波長に関してレーザ制御装置(7a)により制御され、放射光線(5)の強度が処理されるようにすることができることを示す。
【0129】
図2に示すセンサシステムはまた、光受信器の検出回路がサンプリングセルに接続されることを示している。検出装置(9)の測定信号は、光学レンズファイバ、単純電気ワイヤ又はワイヤレス送信機のような送信機(11)を通して電子検出回路(10)に供給される。
【0130】
また、図2に示されるセンサシステムはまた、媒体(1)及びサンプリングセル(2)を分離する膜(12)を含む。膜は、媒体の一部が光線内で相互作用しないようにする。
【0131】
図3に示すセンサシステムの変形形態では、光エミッタ及び光受信器の両方は、光源からサンプリングセルまでの光を結合し、光線を生成し、及び電子検出回路に伝達される光線を検出するためのレンズファイバ(13a、13b)に基づく。光源及び電子検出回路は、サンプリングセルに近接するか場合によってはこれと一体化して位置付けることもでき、検知位置から遠隔位置に位置付けることもできる点は理解されたい。遠隔検知は、典型的には、患者の皮膚で検知を行い、光源及び/又は出力信号モニタが患者の枕元に位置決めされる場合の経皮的血液ガス監視の場合である。次いで、レンズファイバは、分極維持特性を有するか又は有さない、あらゆるファイバ様導波管で置き換えることができ、このファイバ様導波管先端は、出力ビーム波面を例えば発散、平行又は集束に変化させるためにレンズ又は同様の目的を果たすあらゆる装置として修正又は組み立てられる。
【0132】
また、図3に示すセンサシステムはまた、差動検出及び/又は平衡検出のための基準信号(15)を生成するファイバ光カプラ又は自由空間ビーム分割プリズムのようなビームスプリッタ(14)を示す。基準信号は、光エミッタにより与えられるか、又は検知化学物質相互作用の前又は同時に光線からサンプリングすることができ、これを光ファイバ、導波管、電気ワイヤ又は場合によってはワイヤレスシステムのような送信機(16)により光受信器に伝達することができる。
【0133】
図4aに示すセンサシステムは、屈折、反射、回折又はそのあらゆる組み合わせで光線を偏位することにより、光線光学経路を延長する利点を利用する。この場合、ビームスプリッタは、付加的な検出装置(17)により検出することができる基準信号(15)を生成する。この図及び図4bでは、実線は屈折を表し、破線は屈折及び反射を表す。
【0134】
図4bは、光線を偏位及び分割するプリズム(14)を部分レフレクタとして用いる検出装置(17)にどのようにして縮小し、基準信号及び光線偏位を同時に生じさせることができるかを示している。これは、ビームスプリッタに検出装置を一体化することと考えることができ、その逆も可能である。
【0135】
図5は、光線を誘導する手段として動作する中空空洞の誘導構造(18)を含むセンサシステムを示す。この誘導構造では、光線の延長は限定され、光線と化学物質との間の相互作用長さを延長することができる。
【0136】
誘導構造の内部表面は、微細構造自体又は反射コーティングのようなあらゆる付加的な表面処理により与えられる特定の吸収、反射又は散乱特性を有することができる。
【0137】
図6は、誘導構造が、サンプリングセルに埋め込まれ、1つ又は複数のダクト(21)によりサンプリング領域(20)に接続されるセンサシステムを示す。ダクトの目的は、相互作用を検知するために収集領域からダクトに沿ってサンプリングチャンバまで化学物質を拡散又は流動させることである。
【0138】
図7は、螺旋形誘導構造(22)を示す。光線経路は、センサシステムを小型に維持し状態で、光線と化学物質との間の相互作用長さを増大させるために広範囲の形状を有することができる。典型的な形状には、直線形、U字形又は螺旋形が含まれ、これらは、上部表面付近に、すなわち媒体及びサンプリング領域に近接して位置決めされることが好ましい。
【0139】
図8は、光線を反射する1つ又はそれ以上のマイクロミラー(23)により折り畳まれる折り畳み光学光線経路を備えたセンサシステムを示す。
【0140】
図9に示すセンサシステムは、検知媒体のパイプとして働き、光線を横断する中間空洞である媒体パイプ(24)を示す。媒体パイプの目的は、媒体(1)がサンプリングセル上ではなく、これを越えて流れ又は拡散できるようにすることである。媒体パイプは、媒体パイプを(マイクロ)流体システムパイプラインに単純に接続又は一体化することにより、(マイクロ)流体システムに沿って用いることができる。
【0141】
本発明のセンサシステムにおける重要なパラメータは応答時間である。応答時間は、サンプリング構造、すなわちサンプリング領域とサンプリングチャンバとの比を最適にすることに関連する。図10は、サンプリング微細構造(26)を有するサンプリング領域(20)を備えたセンサシステムを示す。サンプリング領域は、大きな表面からサンプリングチャンバ(25)に向かって検知化学物質を収集するためにできるだけ高くする必要がある。サンプリング領域は、直接的又は間接的にサンプリングチャンバに接続され、相互作用を検知するために、化学物質が光線に向かって拡散又は流動するようにする。従って、サンプリング領域は、サンプリングセル内に一体化することもでき、別個の要素として構築することもでき、膜と一体化することもできる。微細構造は、種々の断面とすることができるが、好ましくは、全サンプリング容積への寄与が最少になるように深さを浅くすることができる。サンプリング領域の構成は、微細構造の配列を意味し、マイクロチャネルの不在から、縞、交差又はフラクタル構成まで様々なものとすることができる。また、製造過程は、表面粗さを意味し、サンプリング領域の微細構造とみなすことができる。多孔性層もサンプリング領域微細構造として見ることができる。サンプリング領域は、全サンプリングセル上部表面、及び他の小平面及び/又はサンプリングセル内に組み入れられた適合要素にわたってより広く拡張することができる。
【0142】
図11に概略的に示したマルチポイント光センサシステムを形成して異なる位置の化学物質を検知するために、幾つかのサンプリングセルを直列及び/又は並列に組み合わせることができる。
【0143】
一体化のスケールを拡張し、直列及び/又は並列構造を単一の(又は減少させた数の)サンプリングセル本体(各本体)内に一体化又は組み立てて、小型センサシステムを形成することができる。
【0144】
異なる化学物質又は同位体を検知するために、可変又は固定波長を有する1つ又は複数の光源を用いて、図12に概略的に示すように複数の光源センサシステムを形成することができる。
【0145】
目的とする用途に応じて、上述の実施形態の全ては、最適に検知するために組み合わせることができる。
【0146】
以下には、サンプリングセルを含み且つ機器からのケーブルを介して遠隔に接続されるセンサヘッドをセンサシステムが有する、本発明の特定の実施形態を説明する。機器は、レーザ光源、レーザ制御装置、光エミッタのビームスプリッタ、及び基準検出光電子、光受信器の信号処理電子を含み、更に、電源装置及び出力信号ディスプレイを含む。これは、患者の皮膚が動脈分圧と経皮的分圧との間で良好な相関性を持つように加熱される経皮的血液ガス監視に用いられる(セヴェリングハウス補正を用いる)。この実施形態で監視されるガスは二酸化炭素である。
【0147】
レーザ源(20mW)は、CO2吸収ピークに従って1572nm、2004nm又は4260nmの波長変調光を放出する。レーザは、その駆動電流により500Hzで波長変調される。光線は、モノモード標準電気通信光ファイバ(SMF−28)に入射する。ビームスプリッタは、基準信号(10%)及び測定信号(90%)を生成し、後者は、2m長さケーブルに沿ってセンサヘッド内に誘導される。センサヘッドは、光サンプリングセル(<5mm3サンプリング容積)に基づき、患者の皮膚(Φ20mm検知領域)から透過したガスの収集及び光と検知ガスとの間の相互作用(Φ0.4mm×15mmの中心チャネルにわたる光吸収の物理的原理)の両方が可能になる。光ファイバの端部で、マイクロレンズすなわちレンズファイバが、テフロン膜及び直径0.2mmのダクトを通り拡散により検知ガスが収集されるサンプリングセルの中心チャネルの光線を平行にする。マイクロレンズは、信号対騒音比が高いシステム性能にするようにビームを形作る。これは、反射防止コーティングされ、サンプリングセルの中心チャネルに沿って単一のモノモード自由空間伝搬を維持する。これにより、光−ガス相互作用経路の全体で後方反射及び寄生雑音(干渉雑音)が避けられる。中心チャネルの端部で、InGaAs光検出器により光強度を測定し、その正規化変調が検知ガス濃度を反映する(フィッティング、線形化関数及び工場設定された較正係数により与えられる0〜760mmHgの範囲)。この光検出器配列では、後方反射が避けられ、低干渉雑音検知が可能になる。光を波長変調し、基準信号と比較して光検出器の後に復調することにより高感度が得られ、調波検出により、共通摂動が回避され、システム性能が改善される。検知ガスの単一の吸収ラインを標的にするレーザ元のスペクトル幅を極めて狭くすることにより(約10GHz幅)高選択性が得られる。信号処理により、光強度信号をガス分圧(pCO2又は経皮的tc−pCO2)に変換し、1秒毎に表示する。
【0148】
別の実施形態では、1572nm波長(D=11μm<(2.405*1.572μm/3.14*0.1)=12μm)を備えるモノモードに設計された中空コアファイバ(コア直径=11μm、開口数=0.1)は、上記の実施形態の中心チャネルに誘導構造として挿入され、標準電気通信ファイバに直接接続される。中空コアファイバは、電気通信ファイバビームをフィッティングし、単一のモノモード伝搬(低寄生雑音及び最適な信号対雑音比)を最適化するように選択される。90%を超える光が中空ファイバの空気コアを伝搬する。中空コアファイバを保持する中心チャネルは、中空ファイバに可撓性があるため、伝搬モノモードを維持しながら自由に湾曲することができる(90°、コイル、U字形)。
【0149】
経皮的分圧測定値は、0〜250mmHgの範囲である。患者の皮膚温度を41〜43°Cに加熱し(サンプリング領域の周りに加熱コイルを配置し、熱伝導のために金属サンプリングセルを用いる)、皮下血管を動脈血化することにより患者の血液ガスレベル(PaCO2)との良好な相関関係が得られる。従って、連続的に監視することにより、応答時間60秒未満で患者の心肺疾患を検出することができ、換気の欠乏又は過剰に起因して中枢神経系に損傷が起こる前に警戒態勢の医療従事者が対応することができる。
【符号の説明】
【0150】
1 媒体
2 サンプリングセル
3 光エミッタ
4 光受信器
5 光線
6 出力信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステム及びセンサシステムに用いるためのサンプリングセル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
試験流体のパラメータを測定するためのセンサは、化学、生物学及び生理学の種々の分野で広く用いられる。
【0003】
このような分野の1つは、血液ガスの監視である。人工血液ガスパラメータの測定は、重症患者を監視する不可欠な部分である。動脈血液試料の分析は、患者の血液ガス状態を求めるのに最も正確な方法であると考えられているが、このような定時測定により提供される情報は、試料をサンプリングしたその時点での状態のみを反映する。特定の臨床状態において、詳細には不安定呼吸又は心肺状態の患者において血液ガス値が極めて急速に変化するときには、患者を最適に看護するために血液ガスパラメータを頻回に又は連続的に監視することが必要となる可能性がある。
【0004】
このような種類の監視が必要であることにより、血液ガスパラメータを評価するための幾つかの侵襲性及び非侵襲性の方法が開発されることになった。このうち、血液ガスの経皮的監視は、酸素及び二酸化炭素分圧の両方を同時に測定することができる、現在利用可能な唯一の非侵襲性技術である。この方法は、心肺システムを介して、酸素を組織に送達し且つ二酸化炭素を除去する身体能力を瞬時に認知できる独自の特徴を有する。
【0005】
好ましくは、センサは、高感度であり、すなわち、擬似信号から真のパラメータ信号を検出し区別するセンサ能力を有する必要がある。センサ感度は、試料容積要件及び応答時間に関連性がある。試料容量が多いと、感度は高くなるが、応答時間も長くなる可能性が高い。試料容量が少ないと、応答時間は短くなるが、センサ感度も低くなる可能性がある。一方、多くの場合、試料容積を多くすることができない可能性がある。
【0006】
少ない試料容積に関しては、液体試料を分析するためのセンサシステムが開示されている、Pandraud,G他の「Sensors and actuators B」、Chemical第85巻(2000年)158〜162頁を参照することができる。センサシステムは、読み出し原理としてランベルトベールの法則を適用した検出媒体の光吸収を強調するエバネセント波検知、及びサンプリング細胞構成及び小型化のためにマイクロ流体直接結合に基づく。結果として得られる試料細胞容積は、約0.8mm3であり、低容積分析に良好に適合する。
【0007】
しかしながら、多くの用途では、測定される分析物は、血液ガス監視の場合のように気相状態の可能性がある。よって、気体試料の試料密度は液体又は固体試料と比較して小さいので、これによって感度要件が付加される。
【0008】
英国特許第2 219 656号には、コリメート光線及び再帰反射器を用いた連続信号(DC)検出である、気体試料を分析するための検出原理が記載されている。入射光ファイバを通して戻る前に、光線は、コリメータとレフレクタとの間の距離で定められるセル長の2倍にわたってガス内で相互作用する。しかしながら、光が入射光ファイバ内に戻ると、前方伝搬モードは、後方伝搬モードと相互作用して、共鳴装置シグネチャ(干渉雑音)を生じ、これはシステム性能を低下させることになる。
【0009】
米国特許第6,599,253号に記載される呼吸ガス分析装置は、患者の呼吸ガスを監視する赤外線分光器に適合されている。分析装置は、ヒトの呼吸流量監視の要件に対応する1000mm3オーダーの試料容積中のガスを検出することができる。しかしながら、高頻度又は連続的な血液ガス監視では、サンプリング容積は、実際に必要なガス容積、すなわちmm3範囲よりも数十倍大きい。
【0010】
経皮的血液ガス検知の特定の分野では、センサシステムに対する要求事項は、(1)短い応答時間内にガス透過及び拡散に関してガス濃度にアクセスすること、(2)小容積で高感度及び高選択性を満たすこと、(3)血液ガスの高度に局所的な濃度にアクセスすること、及び(4)実時間監視で(1)〜(3)を行うことである。
【0011】
1993年にMicroGas 7650モニタが導入されると共に、新世代の経皮的モニタが導入された。このセンサは、Clark型pO2センサ及びSeveringhaus型pCO2センサという基本要素を含む。pCO2は、電解質のpHを求めることにより電位差滴定で測定される。pHの変化は、pCO2変化の対数に比例する。pHは、小型化pHガラス電極とAg/AgCl基準電極との間の電位を測定することにより求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】英国特許第2 219 656号公報
【特許文献2】米国特許第6,599,253号公報
【特許文献3】国際特許WO03/023374号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Pandraud,G、らの「Sensors and actuators B」、Chemical第85巻(2000年)158〜162頁
【非特許文献2】Saleh et Teich(1991年、ISBN 0−471−83965−5、81、100、及び104頁)
【非特許文献3】Fetzer、「Tunable diode laser absorption spectroscopy in coiled hollow optical waveguides」、Applied Optics、2002年6月、第41巻第18号
【非特許文献4】Grima、「A New Test Method for Determining Biodegradation of Plastic Material Under Controlled Aerobic Conditions in a Soil−Simulation Solid Environment」、Journal of Polymers and Environment第9巻第1号2002年1月
【非特許文献5】Lambrecht,A.ら、「Miniature infrared gas sensors using photonic crystals」、Proc.of SPIE第6480巻68400D−1〜68400D10頁、2007年2月
【非特許文献6】Ritari,T.他、「Gas sensing using air−guiding photonic bandgap fibers」、OPTICS EXPRESS第12巻第17号4080〜4087頁2004年8月
【非特許文献7】Kozodoy,R.他、「Small−Bore Hollow Waveguide Infrared Absorption Cells for Gas Sensing」、Applied Spectroscopy第50巻第3号415〜7頁1996年3月
【非特許文献8】Kong FanliangとDepeursinge,C.「Optical sensor for transcutaneous CO2 measurement: Design principle and feasibility study」、Chinese Journal of Biomedical Engineering第11巻第3号186〜198頁1992年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、これまでに低容積ガス、例えば透過性ガス(gas in permeation)を検出するためのセンサシステムが提案されているにも関わらす、高感度、低試料容積及び短い応答時間を組み合わせることができるセンサシステムが依然として必要とされている。従って、本発明の目的は、そのようなセンサシステムを提供することである。無較正作業、すなわち、製造中しか較正しないことも好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明の態様の1つでは、媒体中のガス状化学物質を検出するためのセンサシステムが提供され、該システムは、化学物質を含む試料を受け入れるための最大20mm3の容積のサンプリングチャンバを保持する光サンプリングセルと、サンプリングチャンバ内に保持される試料と相互作用させるためにサンプリングセル内の光線光学経路に沿って自由空間伝搬する光線を生成してサンプリングセルにカップリングするための光エミッタと、サンプリングセルからの光線を検出し、試料の化学物質を反映する出力信号を生成する光受信器と、を含み、光線がモノモード伝搬で伝搬することを特徴とする。
【0016】
本センサシステムは、極めて少量の試料容積のガスしか必要としない。更に、本システムは、操作が簡単であり、例えば、国際特許WO03/023374号に記載されるエバネセント波検知に基づくセンサ技術に比較してより高感度である。
【0017】
本発明のセンサシステムは、光学的測定の原理が、検出する化学物質の物理的特性に基づくため、正確に動作する。化学的反応は関与しない。
【0018】
経皮的血液ガス監視の分野では、このセンサシステムにより、予め較正し且つ使用が容易な監視システムを用いて非侵襲性に動脈pCO2を測定することにより、患者の換気を頻回又は場合によっては連続的に監視することができる。
【0019】
すなわち、これまで利用可能なシステムは、電気化学の原理に基づき、頻回に再較正する必要があり、従って、較正ユニットを含む必要があるが、新しいシステムは、光学技術、好ましくは変調分光法技術を用いることにより経皮的センサ表面の小さな光サンプリングセルで光学的手段により化学物質を検出する。センサは、好ましくは工場で予め較正され、狂いがない。
【0020】
しかしながら、センサシステムは、経皮的用途を超えて、他の臨床分野、化学及び食品産業、生物分解を含む多数の技術分野で化学物質を監視するために使用され、及び環境パラメータを監視するために用いることができる点は理解されたい。従って、化学、生物学、生理機能、ガス分析、ガス保安、ガス発生監視、及び微細構造処理では、自動車、環境、生物学及び食品産業の種々の分野、並びにガス及び液体クロマトグラフィーに用いることができる。
【0021】
本発明のセンサシステムにより、オペレータは、透過ガス及び極めて微量のガス流を測定することができる。例えば、数マイクロリットル/分のガスは、分程度の応答時間で測定することができ、これは、極めて少量のガス流が患者の皮膚を通って流れる経皮的血液ガスモニタの場合である。システムは、界面を意味する媒体(例えば、周囲に粘着剤を有するヒト皮膚、組み込み式バイオリアクタ壁、ガス拡散特性の特徴を示す箔)に付加されるか、或いはプローブを意味する媒体中に直接(例えば、胃内ガスを分析するためにヒト胃内部に、生物分解を監視するためにバイオリアクタの異なる深さに)付加されるガス濃度を求めることができる。
【0022】
本システムにより潜在的に測定可能な全ての化学物質及び同位体のうち、最も一般的な標的化学物質の非網羅的なリストには、CO2、O2、H2O、NO2、C2H4、NH3、CO、HBr、HF、C2H2、H2S、HI、CH、HCN、NO、SO2、HCHO、N2O、HCI、NO3、及びCH3COCH3(アセトン)が含まれる。医学的用途の分野では、CO2、O2、H2O、CO、麻酔ガス、N2O及びアセトンに特に関心がもたれている。
【0023】
本明細書で用いる場合、「光サンプリングセル」という用語は、光学的手段により分析するための試料を保持する本体を意味する。「セル」という用語は、セル内のあらゆるサンプリングチャンバ、並びにサンプリングセルの本体に関連する点は理解されたい。
【0024】
更に、本明細書で用いる場合、「サンプリングチャンバ」という用語は、化学物質を含む試料を受け入れるためのサンプリングセル内のチャンバを意味する。サンプリングチャンバは、特定の容積を有し且つ空洞とすることもでき、或いは多孔性材料で充填することもできるが、こうすると、ガス試料の拡散は妨げられないが、ガスが利用可能なサンプリングチャンバの容積が減少することになる。
【0025】
本発明によれば、サンプリングチャンバの容積は最大20mm3である。
【0026】
光ビームの伝搬は、サンプリングチャンバ内、並びに光サンプリングセルの本体内で起こることができる点は理解されたい。このような伝搬は、導波管コア又はクラッディングが自由空気又はガスよりも屈折率が高いバルク固体相材料に基づく導波管伝搬とは対照的に、自由空間伝搬と考えられる点も更に理解されたい。従って、導波管伝搬では、伝搬の方向とは垂直な指数関数型崩壊で定義されることが多い非伝搬波であるそのエバネセント波によって検知されるが、本発明のビーム伝搬は、伝搬方向内に伝搬する波により検知を行うことを意味する。
【0027】
従って、本明細書で用いる場合、「自由空間伝搬」という用語は、従来技術、例えば国際特許WO03/023374号に記載されるような何らかの種類の半導体導波管内ではなく、サンプリングチャンバの気相内、サンプリングチャンバのあらゆる多孔性材料内、又はサンプリングセル本体内を光が伝搬することを意味する。
【0028】
「光エミッタ」という用語は、光線をサンプリングセル内に供給、生成、形成及び伝達するあらゆる手段を意味するものとする。従って、光エミッタは、例えばファイバ、レンズ、コリメータ及びビームスプリッタなど、光源、光源制御装置、光トランスミッタを含むことになる。
【0029】
「光線光学経路」という用語は、光サンプリングセル内の光線の伝搬経路として理解される。伝搬は、サンプリングチャンバの気相内、そのあらゆる多孔性材料内並びに光サンプリングセルの本体内で起こる可能性がある。しかしながら、気体試料との相互作用が、サンプリングセルの本体内では起こらず、サンプリングチャンバの気相内でのみ起こり、光線と化学物質との間の相互作用が光線経路の一部のみに沿って現れることができるようになることは理解されたい。
【0030】
「光受信器」という用語は、サンプリングセルから光線を受け取り、伝達し、変換するあらゆる手段を意味するものとする。従って、光受信器は、光検出装置、光トランスミッタ(例えばファイバ)、トランスフォーマ(例えば、フィルタ、アナログ及び/又はデジタル電子機器、マイクロコントローラ、信号分析/フィッティング、正規化処理、較正アルゴリズム、安全性制御装置、通信制御装置)及び増幅器を含むものとする。
【0031】
本発明によれば、光線は、単一のモノモード伝搬により伝搬する。
【0032】
「モノモード伝搬」とは、個々の光学モードの間に相互作用又は干渉がない光線伝搬を意味する。従って、「モノモード伝搬」は、1つの光学モードのみがシステムに沿って伝搬すること、又は、複数の光学モードの場合には、各モードがそれ自体又はあらゆる他の伝搬モードと干渉することなく伝搬することを含む。例えば、光線を囲むサンプリングチャンバは、伝搬モノモードを維持し、自由空間伝搬モードが幾つかのモードに変換される点で光線を乱さない必要があり、そうでなければ、干渉及び寄生雑音が起こる。
【0033】
直交配向の分極モードは、互いに干渉せず、寄生雑音又は干渉雑音を生成することなくシステム全体に伝搬できる点は強調する必要がある。
【0034】
光線のモノモード伝搬は、全光線光学経路、すなわちサンプリングセル内に沿って起こることに留意されたい。しかしながら、好ましくは、光線伝搬は、光エミッタ及び同様に光受信器内のモノモードであり、従って、あらゆる光トランスミッタ、例えば光源から光検出装置までの導波管を通る。
【0035】
「単一の伝搬」とは、光線の反射、屈折、回折又は散乱が起こらない、又は光線自体と干渉しない光線の特異的な前方伝搬を意味する。
【0036】
典型的には、寄生雑音の主な原因であると考えられるエタロンフリンジは、ビームをそれ自体に折り返してこれと干渉する部分後方反射により生じる。本発明では、全システム及び詳細にはサンプリングセルは、高性能センサシステムの単一のモノモード伝搬を満たすために、ビーム形、ビーム断面、及び光学経路に適合される。例えば、サンプリングチャンバの形状は、無視できる摂動しか起こらないように、光エミッタにより形作られたガウスビームに従って作製することができる。
【0037】
実際には、モノモード伝搬は、好ましくは、分布帰還型(DFB)レーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)及び量子カスケードレーザのような狭帯域光エミッタを選択し、単一の縦方向モードとすることにより生成される。
【0038】
本発明の単一のモノモード伝搬により、屈折率不連続点、モード間干渉、ビーム伝搬摂動、ビーム部分散乱等により生じるあらゆる種類の寄生雑音を確実に低減させることができる。このような雑音の低減は、ビームがモノモードに維持され、一度に光エミッタから該エミッタに沿って光受信器までこれに沿って伝搬する場合に達成することができる。
【0039】
詳細には、本発明の低サンプリング容積では、あらゆる種類の寄生雑音を減少させ、従ってセンサシステムを高感度にするために、単一のモノモード伝搬は必要不可欠であることは理解されたい。
【0040】
自由空間伝搬の場合には、モノモード伝搬は、好ましくは、ヘルモルツ(Helmoltz)の式のゼロ次モードを選択することにより与えられ、その一般解は、エルミートガウス、ラゲールガウス及びベッセル強度分布がガウスビームにより近似された、Saleh et Teich(1991年、ISBN 0−471−83965−5、81、100、及び104頁)に記載されている。実際には、モノモード伝搬を得るために、狭帯域幅の光源を選択することが好ましく、すなわち、帯域幅は、気体吸収ラインよりも狭く、好ましくは単一の縦方向モードとする必要がある。
【0041】
サンプリング容積に関しては、Fetzerは、「Tunable diode laser absorption spectroscopy in coiled hollow optical waveguides」、Applied Optics、2002年6月、第41巻第18号にて、検知システムの流速が60cm3/分であることを開示している。このようなシステムは応答時間が短い。このシステムは、ほぼ4cm3のサンプリングチャンバ容積に対応するΦ=1mm及びほぼ4m長さの中空光ファイバに基づく。Fetzerの開示事項によれば、このようなシステムのサンプリング容積は、50mm3(Φ=0.25mm及び長さ1m)まで減少させることができるが、この数字を超えることはできない。このようにして、システムは、呼気分析には適合するが、mm3程度の容量及びガス拡散に関する輸送手段しか必要ではない経皮的血液ガス監視には適合しない可能性がある。本発明は、サンプリング容積を20mm3未満に減少させ、短い応答時間でガス濃度平衡を達成させることによりこの問題を解決する。例えば、移植皮膚の酸素化監視の用途では、皮膚を透過する血液ガスを局所的に検知し、移植の成功を示すことが必要である。この場合、皮膚を通る血液ガス流は皮膚拡散により制限され、20mm3より大きいあらゆるサンプリング容積で、応答時間がこの用途では許容不可能なレベルまで増大することになる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、サンプリングチャンバの容積は、最大5mm3である。
【0043】
本発明のセンサシステムの重要な用途は、新生児又は成人の連続的血液ガス監視である。このような換気測定では、例えば心肺疾患の場合において、大脳損傷(低酸素血症(hypoxeamia)又は高酸素血症(hyperoxeamia))を避けるために、1分未満の短い応答時間が必要である。本発明の好ましい実施形態では、この問題は、サンプリング容積を5mm3より小さく定め、要求される短い応答時間内にガス濃度平衡に到達できるようにすることによって解決される。このようにサンプリング容積を小さくすることは、サンプリングセルが光線を摂動させないように放出される光線の形状にサンプリングチャンバを適合させるか、或いは、光線が誘導されるが依然として自由空間を伝搬するようにサンプリングセルを適合させる何れかによる、少なくとも2つの方法で得ることができる。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、サンプリングチャンバの容積は、最大0.5mm3である。
【0045】
本発明のセンサシステムの用途のうち、生物分解監視及び制御には、0.5mm3未満又はそのオーダーの超微小サンプリング容積が必要である。このようにサンプリング容積を小さくすると、実時間解像が可能になり、従って、分解速度を最適にするためのバイオリアクタ基質及び酸素供給の連続制御が可能になる。
【0046】
例えば、Grimaは、「A New Test Method for Determining Biodegradation of Plastic Material Under Controlled Aerobic Conditions in a Soil−Simulation Solid Environment」、Journal of Polymers and Environment第9巻第1号2002年1月において、400cm3基質容積から10mm3/分(20μg/分)のCO2を生成する土壌でのセルロースの分解を開示する。総表面積326cm2の立方体基質を仮定すると、結果として得られるガス透過率は0.03mm3/(分cm2)である。従って、本発明のこの実施形態のセンサを取り付け、そのようなセルロースバイオリアクタの検知面積を15cm2にすると、0.5mm3のサンプリング容積は、60秒未満の本センサシステムの応答時間に対応し、これは、生物分解監視及び制御に許容可能である。分解監視に通常用いられる高価な質量分析又は液体クロマトグラフィーは、このような短い応答時間では決定されない。
【0047】
本発明では、サンプリングチャンバ(又はその一部)の設計は、光線を摂動させることなくサンプリングチャンバ容積(及びその結果としてシステム応答時間)を最適化するために光線経路及び経路に沿う光線断面に適合されることが好ましい。「光線を摂動させることなく」とは、光線摂動を生成する寄生雑音(干渉雑音)が、必要なセンサシステム性能、例えば解像度、安定性、及び精度に比べて無視できるように維持されることを意味する。例えば、このように適合させるためにガウスビーム方程式を用いることができる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、サンプリングチャンバの内部表面は、好ましくは化学的及び/又は光学的に活性コーティングでコーティンングされる。化学的コーティングは、化学物質を第1の化学物質よりも容易に検出可能な別の化学物質に変換することができる特定の化学反応を触媒することができる。光学的コーティングは、光線の誘導又は形状化の何れか、或いは干渉/寄生雑音を減少させるのを助けることができる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、センサシステムは、光線が伝搬する誘導構造を含む。
【0050】
本明細書で用いる場合、「誘導構造」という用語は、光線の延長を制限し、場合によっては光線と化学物質との間の相互作用長さを延長するために、サンプリングセル内及び任意的にこれを超えて光線の自由空間伝搬を誘導するよう動作する中空空洞を意味する。これとは対照的に、国際特許WO03/023374号に開示されている導波管は、誘導構造で意図されるように、誘導された光のほとんどが自由空間のような気相ではなく固体材料中を伝搬するバルク固相材料のコア又はクラッディングに基づく。
【0051】
誘導構造では、光線のモノモード伝搬は、狭帯域幅光源に別の方法で提供することができる。従って、誘導構造寸法は、光線のモノモード伝搬を促進するように選択することができる。
【0052】
従って、誘導構造の特定の幾何学的形状では、モノモード伝搬は、比率D/λ(式中、Dは、誘導構造の特徴寸法であり、λは、印加した光線の波長)の数値に左右される。
【0053】
従って、特徴寸法「Dmirror]を有する矩形鏡誘導構造では、モノモード伝搬を有するためにはDmirror/λ<(π)−0.5を満たす必要がある。この関係では、「鏡誘導構造」は、金コーティングのような反射内表面を備える構造である点は理解されたい。
【0054】
同様に、コア及び誘電クラッディング、特徴寸法「Ddielectric」及び(n12−n22)0.5(式中n1及びn2がそれぞれ誘電体コア及び誘電クラッディング屈折率を表す)で定義される開口数NAを有する矩形誘電体誘導構造では、モノモード伝搬を有するためにはDdielectric/λ<1/(π0.5*NA)を満たす必要がある。この関係では、「誘電体誘導構造」は、異なる屈折率を示す誘電体コア及び誘電クラッディングを備える誘電体で作られた構造であることは理解されたい。
【0055】
更に、直径Dcircular及び開口数CO2の円形誘電体誘導構造では、モノモード伝搬するためにはDcircular/λ<2.405/(π*NAcircular)を満たす必要がある。
【0056】
一般に、特徴寸法「D」は、誘導構造断面のより長い寸法、例えば矩形の長辺として考えることができる。従って、長い寸法に関してモノモード伝搬が起こると、短い寸法に関しても起こる。他方、短い寸法に関してモノモード伝搬が起こらない場合には、全て起こらない。
【0057】
特徴寸法「D」は、幾つかの従来技術の設定値について評価することができる。このような評価では、あらゆる断面の短い方の寸法が評価される。
【0058】
すなわち、Lambrecht(Lambrecht,A.ら、「Miniature infrared gas sensors using photonic crystals」、Proc.of SPIE第6480巻68400D−1〜68400D10頁、2007年2月)は、特徴寸法(区域)が400μmであるサンプリング容積を表示するフォトニック結晶に基づく赤外線ガスセンサを開示している。4.24μm波長の熱源を用いると、D/λ値は、100(400μm/4.24μm)の程度であり、これは、高度にマルチモーダルであり、従って、モノモード伝搬でないことを示している。
【0059】
同様に、Lambrechtが用いる熱源は、ガス吸収ラインと比べてより広い帯域幅を生じる。これはまた、結果として得られるマルチモーダル伝搬も反映する。
【0060】
Ritari(Ritari,T.他、「Gas sensing using air−guiding photonic bandgap fibers」、OPTICS EXPRESS第12巻第17号4080〜4087頁2004年8月)は、サンプリング容積(真空チャンバ)の特徴寸法Dが10μmのガスセンサを開示する。1.5μm波長では、D/λ値は、7(10μm/1.5μm)の程度である。D/λ値は、真空チャンバ内でマルチモーダル伝搬を示す。更に、Ritariは、真空チャンバと検出装置との間にマルチモーダルファイバを用いることに留意されたい。従って、Ritariの設定では、光源から検出装置までの全光学経路にわたってモノモード伝搬が生じない。
【0061】
Kozodoy(Kozodoy,R.他、「Small−Bore Hollow Waveguide Infrared Absorption Cells for Gas Sensing」、Applied Spectroscopy第50巻第3号415〜7頁1996年3月)は、サンプリング容積の特徴寸法Dが250μmのガスセンサを開示している。熱源からの4.26μm波長では、D/λ値は、60(250μm/4.26μm)の範囲である。広帯域幅熱源に沿うD/λ値は、結果として得られるマルチモーダル伝搬を反映する。
【0062】
Kong(Kong FanliangとDepeursinge,C.「Optical sensor for transcutaneous CO2 measurement: Design principle and feasibility study」、Chinese Journal of Biomedical Engineering第11巻第3号186〜198頁1992年9月)の同様の考慮事項は、50(200μm/4.2μm)の程度のD/λ値を適用している。従って、広帯域幅熱源に沿うD/λ値は、結果として得られるマルチモーダル伝搬を反映する。
【0063】
上で参照したFetzerは、Φ=0.25mmのサンプリング容積及び光源(slight source)として波長が1.5μmの分布帰還型レーザを開示している。従って、FetzerのシステムのD/λ値は、150(250μm/1.5μm)の程度である。従って、Fetzerのレーザは狭帯域幅型であり、適切なモノモード伝搬に適用可能とすることができるが、D/λ値は、マルチモーダル伝搬動作を反映する。
【0064】
従って、これらの参考文献の何れも本発明のモノモード伝搬を開示しない。
【0065】
好ましくは、サンプリングセルは、すなわち完全に又は少なくとも部分的にサンプリングセル内に配列される誘導構造を含む。
【0066】
本発明によれば、誘導構造も同様に、サンプリングセルを超えて延びることができる点は理解されたい。従って、誘導構造は、光エミッタの方向に延びることができ、すなわち、誘導構造は、サンプリングセルの前又は入口に光線を誘導することができる。同様に、誘導構造は、光受信器の方向に延びることができ、すなわち、誘導構造は、サンプリングセルの出口又はこれを超えて光線を誘導することができる。従って、誘導構造は、例えば接着又は接合することにより光エミッタ及び/又は光受信器に接続することができる。
【0067】
誘導構造は、円形、矩形又は楕円形であれ、少なくとも部分的に内側表面を反映するあらゆる断面のあらゆる管状装置とすることができる。「部分的に反射する」という用語は、誘導構造が、100%未満の光強度が誘導構造に沿って伝搬する間に失われるように光線を伝搬することができるように適合されることを意味するものとする。誘導構造の部分的反射は、典型的には、滑らかな表面を有することにより生じる。「滑らかな表面」とは、あらゆる表面多孔質を含むあらゆる表面構造が光波長よりも有意に小さく、そのような表面構造又は多孔質に関して光線の散乱が殆ど又は全く起こらないようにされることであると理解される。
【0068】
他方、誘導構造は、実際に、化学物質が誘導構造の表面にわたって拡散することができるように多孔性とすることができる点は理解されたい。従って、典型的な実施方法は、システム感度を増大させると共に、サンプリング容積を減少させて応答時間を短くするように相互作用長さを長くした磨き内部表面を備える小型金管体を用いる。好ましくは、誘導構造は、管体(毛管)、中空ファイバ、多穴ファイバ及びフォトニックバンドギャップ装置の群から選択される。しかしながら、あらゆる多孔性の誘導構造は分子レベルであり、すなわち、センサシステムの光の波長よりも数桁小さい大きさであることは理解されたい。
【0069】
特定の実施形態では、誘導構造に沿った自由空間伝搬では、95%以下又はこれを超える光が中空コアを進む中空コア光ファイバ及び中空コアフォトニック結晶ファイバ(中空コアPCF)が用いられる。このようなファイバによって実施される検知は、伝搬波により得られる。
【0070】
或いは、誘導構造は、ガス状化学物質に対して非多孔性である。
【0071】
多くの場合、誘導構造は、例えば、上記の金管体のように化学的に不活性である。しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、誘導構造は、化学的及び/又は光学的に活性のコーティングでコーティングすることができる。化学的コーティングは、化学物質を第1の化学物質よりも容易に検出することができる別の化学物質に変換することができる特定の化学反応を触媒することができる。光学的コーティングは、化学物質と相互作用し、検出可能な出力信号を生成することができる。
【0072】
本発明の好ましい実施形態では、誘導構造は、ガス状試料を受け入れる。従って、誘導構造は、少なくとも部分的にサンプリングセル内に配列され、そのサンプリングチャンバを横断して延びるので、誘導構造は、ガス状試料を受け入れる試料セルの一部とすることができる。誘導構造をこのように配列すると、試料チャンバの容積、及び化学物質を適切に検出するのに必要な応答時間が更に減少される。
【0073】
本発明の実施形態の1つでは、誘導構造は直線状である。このような直線状の誘導構造により、サンプリングチャンバ容量が最小になり、高感度のセンサシステム及び容易に検出可能な化学物質に適用可能とすることができる。
【0074】
本発明の別の実施形態では、誘導構造は、湾曲状、コイル状、折り畳み状、U字形状又は螺旋形状である。このような誘導構造では、サンプリングチャンバの容積及び全試料セル容積を依然として低レベルに維持しながら、光線光学経路が延長される。延長光線光学経路は、システムの感度を改善し、このため、検出可能性が低い化学物質に適用することができる。
【0075】
モノモード伝搬を得るため、更に干渉雑音を最適に減少させるために、光源は、好ましくは、狭帯域幅を有する供給源から選択され、すなわち、帯域幅は、ガス吸収ラインに比較して狭くする必要がある。
【0076】
従って、本発明の好ましい実施形態では、光エミッタは、狭帯域光エミッタであり、好ましくは、分布帰還型レーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザ及び量子カスケードレーザの群から選択される。
【0077】
バンド幅は、ガス状化学物質の関連吸収ラインに関連することができる。従って、光エミッタの−3dBのバンド幅は、好ましくは、多くても、ガス状化学物質吸収ラインのFWHM(半値全幅)である。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、光エミッタは、コリメータを含む。コリメータにより、光線は、方向及び角度発散に関して限定され、定めることができる。このようにして、寄生雑音を減少させることができる。
【0079】
光線伝搬を可能な限り最良のものにするため、及び干渉雑音を更に減少させるために、光エミッタ及び光受信器の少なくとも1つは、ビームシェーパを含むことが好ましい。「ビームシェーパ」とは、光線波面を修正するあらゆる装置、好ましくはコリメータ、レンズ、分布屈折率レンズ(GRIN、Selfoc)又は回折格子を意味する。好ましくは、光エミッタは、ビームシェーパを含む。
【0080】
本発明の実施形態の1つは、光エミッタ及び/又は光受信器の少なくとも1つに光導波管を用いる。好ましい実施形態では、光導波管は、光エミッタに用いられる。本発明の別の好ましい実施形態では、光導波管は、光エミッタ及び光受信器の両方に用いられる。好ましくは、光導波管は、ファイバ又はレンズファイバであり、後者は、コリメータ又はビームシェーパ機能も満たす。ファイバ及びレンズファイバは、最低限の損失及び雑音でエミッタからサンプリングセルまで及びサンプリングセルから受信器まで確実に適切に伝達する。
【0081】
本発明の実施形態の1つは、ファイバ先端内にコリメータ(レンズ)を含むレンズファイバを用いる(レンズファイバは、ファイバ先端に成形、接着又ははんだ付けされたガラスのドロップ様ボール(又は特定の形状)であるとみなすことができる)。レンズファイバ出力波面は、強集束させる(典型的にはビームウエスト直径が数ミクロン及びビームウエストまでの距離が数ミクロンの範囲)ことから、ほぼ平行にする(典型的にはビームウエスト直径が100ミクロン未満及びビームウエストまでの距離は数ミリメートル)ことまでカスタマイズすることができる。発散ビームもまた可能である。ビームを密接に囲むサンプリングセルと組み合わせると、結果として得られるセンサシステムは、多くの重大な応用分野に必要とされる短い応答時間を示す。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、光エミッタは、ビームスプリッタを含む。ビームスプリッタにより、光線は、サンプリングセル光線及び基準光線に分割される。サンプリングセル光線は、サンプリングチャンバを横断して通過するが、基準光線は、サンプリングチャンバを横断して通過しない点は理解されたい。その代わりに、基準光線は、例えば別個の導波管内を又はサンプリングセルを横断して光受信器に伝搬するが、化学物質とは相互作用しない。システム性能を良好にするために、例えば共通モード阻止性能のためにサンプリングセルビームと比較するように基準光線を用いることが好ましい。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、光エミッタは、波長又は周波数が変調される。更に、光受信器は、基本的及び/又は調波検出に適合させることができる。
【0084】
本発明の好ましい実施形態で、上記波長又は周波数変調光と組み合わせるか組み合わせない場合に、波長(又は周波数)は、化学物質の適切な吸収ピークの波長(又は周波数)にわたって掃引することができる。結果として得られる信号は、吸収ピークのサインに対応し、100%伝達及び/又は基準信号に比較して化学物質信号を生成することができる。波長変調(又は周波数変調)しなければ、直接吸収ガス信号が生成されるが、波長変調(又は周波数変調)と組み合わせると、吸収ピークの調波(導関数とも呼ばれる)サインが生成される。
【0085】
本発明の別の実施形態では、光受信器は、基本波及び/又は調波検出に適合することができる。光受信器による基本波及び調波検出では、吸収スペクトルの一次、二次又は高次導関数を検出することができる。波長変調周波数と等しい周波数で復調が行われる場合には、基本波検出(又は一次調波検出)と呼ばれる吸収スペクトルの一次導関数を観測することができる。波長変調周波数の2倍の周波数で復調が行われる場合には、二次調波検出と呼ばれる吸収スペクトルの二次導関数を観測することができる。同様の技術を用いて、高調波も検出することができる。また、システム性能を良好にするために異なる調波の組み合わせの検出も用いることができる。
【0086】
波長又は周波数調節分光法及び基本波及び調波検出により、効率よく雑音を減少させ、センサシステムを高感度にすることが可能になる。
【0087】
好ましい実施形態では、センサシステムは、電流又は温度を調節することによりレーザダイオードの波長変調を応用し、基本波又は/及び(各)調波の変調周波数で狭帯域幅検出を行う。
【0088】
従って、本発明の好ましい実施形態では、波長変調を用いて、変調技術により提供される信号の雑音混入を最小限にする。最先端技術から、高感度波長変調分光法での信号対雑音比は、2つ又は複数の部分的に反射する界面間の光干渉又はモード間干渉から生じるいわゆる「干渉雑音」により制限されることが知られている。例えば、光伝搬に沿う屈折率の非断熱的変化により、部分的に反射する界面が生じる。センサシステムに基づく個別要素は、干渉雑音を発生する複数の空気−ガラス界面(ファイバ−空気、空気−コリメータレンズ、その他)が生じやすい。
【0089】
変調分光法で高感度にするためには、干渉雑音を減少させる必要がある。好ましい実施形態では、このことは、DFBレーザダイオード又はVCSEL又はあらゆる種類の適切なレーザのようなモノモード光エミッタを用いて、狭スペクトル放射(ガス吸収ピーク幅に関する)を生じ、モノモードファイバに結合され、それ自体が自由空間でモノモードとして結合されてサンプリングセル内を伝搬することによって実施することができる。その結果、光線は、ガウスビーム(エルミート−ガウス、ラゲール−ガウス又はベッセルビーム)により説明することができ、これは、生成が容易で、更にレンズファイバにより収集することができる。
【0090】
更に、統計的処理を用いて残留干渉雑音を排除する。統計的処理は、例えば熱機械アクチュエータにより、残留干渉に影響を及ぼすパラメータを意図的に摂動又はスクランブルした後に、信号に用いることができる。スペクトルを平均化すると、干渉雑音排除に役立つ。
【0091】
本発明の好ましい実施形態では、光受信器において、化学物質信号を基準信号の直接伝達又は検知化学物質吸収スペクトルの外側で取得されるサンプリングセル信号と比較することにより、センサシステムの無較正作動を得ることができる。波長変調又は周波数変調の場合には、無較正動作は、調波信号をサンプリングセル直接伝達、基準信号の直接伝達、又は基準信号の調波信号と比較することによっても得ることができる。上記の比較のあらゆる組み合わせを適用することもでき、これは、本明細書では「正規化処理」と呼ばれる。
【0092】
センサシステムの無較正動作では、化学物質を反映する信号は、その場での較正工程により決定することができ、他の較正工程は全く必要ではない。詳細には、この決定には、他の場合には試料決定の前又は後に別個の段階として行う必要があったはずの較正工程が含まれない。
【0093】
本発明の好ましい実施形態では、光線光学経路の形状は、サンプリングセル内、サンプリングチャンバ内又は前記誘導構造内の反射、回折又は散乱により修正される。
【0094】
光線光学経路をこのように修正することにより、経路長さは、光線化学物質相互作用を増大させるために延長される。屈折、反射、回折及び散乱の各現象に関して、光線光学経路は、直線伝搬から逸脱し、同時に経路の長さが延長される。
【0095】
本発明によれば、屈折、反射、回折又は散乱に関する上述の光線経路修正は、どのような有意な干渉雑音をも導入しないように行われる点は理解されたい。従って、修正は、屈折、反射、回折又は散乱光線がそれ自体と干渉せず、屈折、反射、回折又は散乱に付加的な干渉光線モードが導入されないように行われる。
【0096】
例えば、サンプリングセル内を伝搬する光エミッタからの光線は、ビーム分割キューブを用いることにより分割し、屈折及び部分反射により基準信号及びサンプリングセル信号を生成することができる。次に、サンプリングセル内の光学経路は、サンプリングセルを小型に維持しながらガス光線相互作用が2倍になるように、鏡(平坦又は全反射凹面)を用いて折り畳むことができる。折り畳み光線は、後方反射干渉を避けるために傾ける必要がある。光受信器は、光エミッタに隣接して配置することができる。
【0097】
本発明によるセンサシステムのサンプリングセルは、膜を含むことが好ましい。膜は、試料チャンバに隣接してサンプリングセルと共に配列することができる。
【0098】
膜を用いることで、媒体と光線との間のあらゆる望ましくない相互作用を減少させることができる。実際に、多くの用途において、検知化学物質を媒体の残りから分離することが必要である。従って、ガス状化学物質を検知するために、膜は、媒体からの液体又は固体が光線と相互作用するのを防止し、同時にガス状化学物質が膜を横断してサンプリングチャンバ内に拡散することができるようにする。
【0099】
膜は、化学物質の拡散又は光線の伝搬に関して種々の特性を有することができる点は理解されたい。従って、膜は、コーティングすることができ、及び/又はバルク特性を有することができ、すなわち、膜材料自体が化学的又は光学的活性を有することができる。化学的活性により、化学物質は、検出することがより容易とすることができる別の物質に変換することができる。本発明の好ましい実施形態では、膜は、化学物質を検出が容易な別の物質に変換できる酵素を含む。従って、膜は、グルコースを過酸化水素に変換するグルコースオキシダーゼを含むことができる。膜の光学的コーティングは、サンプリングセル機能を支援するために光線と相互作用することができる。
【0100】
膜は、化学的に不活性とすることもでき、上述のように反応性であってもよい。好ましくは選択性である。このために、膜は、選択された多孔性及び/又は化学構造を有する。
【0101】
膜は更に、分離、汚れ防止、機械的剛性及び組立易さのような、幾つかの必要事項を満たすためにサンドウィッチ構造に基づくことができる。
【0102】
膜は更に、制御表面粗さ又は制御表面構造を有することができる。従って、膜は、ガス試料を受け入れるサンプリングセルのこの部分の容積をできるだけ小さくしながら、最大量の試料を受け入れることができるようにして、ガス試料を受け入れるサンプリングセルの一部を形作るよう適合することができる。サンプリングセルは、依然としてサンプリングセル内の化学物質を適切に拡散させる必要があることは理解されたい。これは、膜表面粗さ又は膜表面構造により、試料を受け入れるサンプリングセルの一部を定めるサンプリングセル構造により達成することができる。従って、膜は、膜とサンプリングセル壁との間の化学物質が拡散する唯一の空間が、膜構造粗さ又は構造が残した空間となるようにサンプリングセル壁に隣接して配列することができる。また、サンプリングセルの容積を小さく保ちつつ適切にガスを拡散させるために膜粗さ/構造とサンプリングセル壁粗さ/構造の組み合わせも用いられる。
【0103】
膜は、サンプリングセルに固定すること又は取り外すこともでき、或いは、サンプリングセルの一部に一体化し、システムの交換可能/ディスポーザブル部品を形成することもできる。
【0104】
本発明の好ましい実施形態では、膜、及びサンプリングセルの少なくとも一部は、サンプリングセル組立体に一体化される。この実施形態によれば、サンプリングセル組立体は、交換可能又はディスポーザブルとすることができる。
【0105】
交換可能サンプリングセル組立体の場合には、組立体は、サンプリング容積(例えば成人及び小児に測定値を適合させるため)、温度及び湿度のような種々の測定条件に適合させることができる。
【0106】
ディスポーザブルサンプリングセル組立体では、組立体は、試料間汚染を最小にするために1回の測定毎に交換することができる。
【0107】
本発明によるセンサシステムの別の好ましい実施形態では、システムは、光線を横断する媒体パイプを含む。
【0108】
「媒体パイプ」という用語は、これと相互作用する光線を横断して連続的に媒体を輸送するための流れ構造を意味するものとする。このような媒体パイプは、例えばガス生成環境で化学物質を連続的に監視するのに特に適用可能である。
【0109】
媒体パイプは、サンプリングセルの一体化された部品とすることもでき、化学物質が媒体パイプを流れるときにセンサシステムにより連続的に監視されるようにサンプリングセルに隣接して配列することもできることは理解されたい。
【0110】
好ましい実施形態では、サンプリングセルは、化学物質をサンプリングするためのサンプリング領域を有する。
【0111】
「サンプリング領域」という用語は、試料収集に割り当てられたサンプリングセルの領域を意味するものとする。好ましくは、サンプリング領域の面積は、比較的大きくすることができる。従って、典型的には、サンプリング領域は、例えば膜を横断して拡散するときに試料を収集して、その後、ガスがサンプリングチャンバに拡散するための小さい容積を定める高表面構造とすることができる。サンプリング領域により定められる容積は、センサシステムの応答時間を減少させるために最小にする必要がある。本発明の好ましい実施形態の1つでは、サンプリング領域は、膜とサンプリングセル壁との間の化学物質が拡散するための唯一の空間が、膜表面粗さ又は構造及びサンプリングセル壁粗さ又は構造により残される空間となるように、サンプリングセル壁に隣接して配列される膜により定められる。同様に、サンプリング領域の表面は、化学物質試料が拡散するのに利用可能な極めて小さな容積を定める制御表面粗さ又は制御表面構造を有することができる。
【0112】
サンプリング領域に対する光線光学経路の配列は、少なくとも2つの異なる方法で達成することができる。
【0113】
すなわち、光線光学経路は、光線光学経路がサンプリング領域と直接接触するようにサンプリング領域に隣接して位置付することができる。このようにして、ガス状試料は、サンプリング領域から光線光学経路まで直接拡散する。
【0114】
或いは、光線光学経路は、光学サンプリングセルに埋め込むことができる。このような場合、サンプリングセルは、更に、サンプリング領域と光線光学経路との間に、ガス状化学物質をサンプリング領域から光線光学経路まで拡散させるための少なくとも1つのダクトを含むことができる。
【0115】
本発明によるセンサシステムの光エミッタ及び光受信器は、光サンプリングセルと一体化されるのが好ましい。従って、光エミッタは、光サンプリングセルと一体化することができる。同様に、光受信器は、サンプリングセルと一体化することができる。好ましくは、光エミッタ及び光受信器の両方は、サンプリングセルと一体化される。
【0116】
「光サンプリングセルと一体化される」という用語は、光エミッタ及び/又は受信器がサンプリングセルにより保持され、例えば接着又は他の方法で取り付けられ、或いはこれと共に組み立てることもでき、又は完全に一体化することもできる、すなわち、1つの単一構造、例えば1つの単一ウェハーボードとして製造することもできることを意味する。本発明によれば、サンプリングセルは、あらゆる光電子検出回路、制御装置、光源を含む全センサシステム、あらゆる送信機を含むあらゆるビームスプリッタまで一体化することができる点は理解されたい。このような場合には、サンプリングセルは、シリコン又は第III〜V族成分のような半導体とし、ミクロ電子工学製造工程をうまく利用することができる。
【0117】
好ましくは、本発明によるセンサシステムは温度制御される。従って、センサシステムは、加熱コイル、ペルチェ素子及び/又は加熱電子装置のような加熱システムを含むことができる。同様に、センサシステムは、サーミスタ及び/又は電子チップセンサのような温度検知システムも含むことができる。
【0118】
本発明の多数の好ましい実施形態では、センサシステムは、多重検出に適合することができる。「多重検出」は、付加的な化学種又は同位体の検出、複数の試料中の同じ化学種の同時検出のほか、異なる試料の異なる化学物質の同時検出を含む。
【0119】
従って、センサシステムは、少なくとも1つの付加的な光サンプリングセルを更に含むことができ、次に、これを光サンプリングセルと直列又は並列に配列することができる。好ましくは、光サンプリングセル及び少なくとも1つの付加的なサンプリングセルは、単一のサンプリングセル本体に一体化される。
【0120】
付加的な化学物質を検出するため、又は付加的な試料の化学物質を検出するために、センサシステムは、少なくとも1つの付加的な光エミッタを含むことができる。同様に、センサシステムは、少なくとも1つの付加的な光受信器を含むことができる。好ましくは、センサシステムは、組み合わせて働くようにされた付加的な光エミッタ及び付加的な光受信器を含むことができる。或いは、付加的な光受信器は、光信号の例えば異なる調波を検出するか異なる波長変調又は周波数変調と組み合わせた光受信器と共に働くことができる。
【0121】
本発明の更に別の実施形態では、光エミッタは、複数の化学物質又は複数の同位体を検出するための波長可変の光エミッタである。
【0122】
本発明の別の態様によれば、本発明の第1の態様によるセンサシステムと用いるためのサンプリングセル組立体が提供され、前記サンプリングセルは、化学物質を含む試料を受け入れるためのサンプリングチャンバを保持する光サンプリングセルと、サンプリングチャンバに隣接する膜とを含む。
【0123】
上述のように、サンプリングセル組立体は、試料間汚染を最小にするためにディスポーザブルとすることができる。
【0124】
本発明の以下の種々の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明によるセンサシステムを示す概略図である。
【図2】ファイバベースの光エミッタ及び受信器を備えるセンサシステム及び膜を示す概略図である。
【図3】レンズファイバ光エミッタ及び光受信器を備えるセンサシステム及び基準光線を示す概略図である。
【図4a】偏位及び/又は分割光線経路を含む光線光学経路を示す概略図である。
【図4b】偏位及び/又は分割光線経路を含む光線光学経路を示す概略図である。
【図5】誘導構造を備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図6】埋め込み誘導構造及びダクトを備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図7】螺旋形誘導構造を備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図8】マイクロミラーを含む折り畳み光線光学経路を備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図9】媒体パイプを備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図10】サンプリング領域構造を備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図11】直列及び並列に接続された付加的なサンプリングセルを備えるセンサシステムを示す概略図である。
【図12】複数の光エミッタを備えるセンサシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0126】
本発明によるセンサシステムを図1示す。センサシステムは、媒体(1)の化学物質を検出するよう適合され、光線(5)を生成して検出するように配列されたサンプリングセル(2)、光エミッタ(3)及び光受信器(4)を含む。
【0127】
光エミッタは、レーザ、レーザダイオード及び発光ダイオードのような光源に基づき、光がサンプリングセルに結合され、光線を生成するあらゆる装置とすることができる。同様に、光受信器は、サンプリングセルからの光を検出して媒体中の検知化学物質濃度を反映する出力信号(6)を生成するための光電子回路のようなあらゆる装置とすることができる。
【0128】
図2に示すセンサシステムは、光エミッタの光源(7)が、サンプリングセル(2)により保持され、送信機(8)を通して、例えば電流、電力及び/又は波長に関してレーザ制御装置(7a)により制御され、放射光線(5)の強度が処理されるようにすることができることを示す。
【0129】
図2に示すセンサシステムはまた、光受信器の検出回路がサンプリングセルに接続されることを示している。検出装置(9)の測定信号は、光学レンズファイバ、単純電気ワイヤ又はワイヤレス送信機のような送信機(11)を通して電子検出回路(10)に供給される。
【0130】
また、図2に示されるセンサシステムはまた、媒体(1)及びサンプリングセル(2)を分離する膜(12)を含む。膜は、媒体の一部が光線内で相互作用しないようにする。
【0131】
図3に示すセンサシステムの変形形態では、光エミッタ及び光受信器の両方は、光源からサンプリングセルまでの光を結合し、光線を生成し、及び電子検出回路に伝達される光線を検出するためのレンズファイバ(13a、13b)に基づく。光源及び電子検出回路は、サンプリングセルに近接するか場合によってはこれと一体化して位置付けることもでき、検知位置から遠隔位置に位置付けることもできる点は理解されたい。遠隔検知は、典型的には、患者の皮膚で検知を行い、光源及び/又は出力信号モニタが患者の枕元に位置決めされる場合の経皮的血液ガス監視の場合である。次いで、レンズファイバは、分極維持特性を有するか又は有さない、あらゆるファイバ様導波管で置き換えることができ、このファイバ様導波管先端は、出力ビーム波面を例えば発散、平行又は集束に変化させるためにレンズ又は同様の目的を果たすあらゆる装置として修正又は組み立てられる。
【0132】
また、図3に示すセンサシステムはまた、差動検出及び/又は平衡検出のための基準信号(15)を生成するファイバ光カプラ又は自由空間ビーム分割プリズムのようなビームスプリッタ(14)を示す。基準信号は、光エミッタにより与えられるか、又は検知化学物質相互作用の前又は同時に光線からサンプリングすることができ、これを光ファイバ、導波管、電気ワイヤ又は場合によってはワイヤレスシステムのような送信機(16)により光受信器に伝達することができる。
【0133】
図4aに示すセンサシステムは、屈折、反射、回折又はそのあらゆる組み合わせで光線を偏位することにより、光線光学経路を延長する利点を利用する。この場合、ビームスプリッタは、付加的な検出装置(17)により検出することができる基準信号(15)を生成する。この図及び図4bでは、実線は屈折を表し、破線は屈折及び反射を表す。
【0134】
図4bは、光線を偏位及び分割するプリズム(14)を部分レフレクタとして用いる検出装置(17)にどのようにして縮小し、基準信号及び光線偏位を同時に生じさせることができるかを示している。これは、ビームスプリッタに検出装置を一体化することと考えることができ、その逆も可能である。
【0135】
図5は、光線を誘導する手段として動作する中空空洞の誘導構造(18)を含むセンサシステムを示す。この誘導構造では、光線の延長は限定され、光線と化学物質との間の相互作用長さを延長することができる。
【0136】
誘導構造の内部表面は、微細構造自体又は反射コーティングのようなあらゆる付加的な表面処理により与えられる特定の吸収、反射又は散乱特性を有することができる。
【0137】
図6は、誘導構造が、サンプリングセルに埋め込まれ、1つ又は複数のダクト(21)によりサンプリング領域(20)に接続されるセンサシステムを示す。ダクトの目的は、相互作用を検知するために収集領域からダクトに沿ってサンプリングチャンバまで化学物質を拡散又は流動させることである。
【0138】
図7は、螺旋形誘導構造(22)を示す。光線経路は、センサシステムを小型に維持し状態で、光線と化学物質との間の相互作用長さを増大させるために広範囲の形状を有することができる。典型的な形状には、直線形、U字形又は螺旋形が含まれ、これらは、上部表面付近に、すなわち媒体及びサンプリング領域に近接して位置決めされることが好ましい。
【0139】
図8は、光線を反射する1つ又はそれ以上のマイクロミラー(23)により折り畳まれる折り畳み光学光線経路を備えたセンサシステムを示す。
【0140】
図9に示すセンサシステムは、検知媒体のパイプとして働き、光線を横断する中間空洞である媒体パイプ(24)を示す。媒体パイプの目的は、媒体(1)がサンプリングセル上ではなく、これを越えて流れ又は拡散できるようにすることである。媒体パイプは、媒体パイプを(マイクロ)流体システムパイプラインに単純に接続又は一体化することにより、(マイクロ)流体システムに沿って用いることができる。
【0141】
本発明のセンサシステムにおける重要なパラメータは応答時間である。応答時間は、サンプリング構造、すなわちサンプリング領域とサンプリングチャンバとの比を最適にすることに関連する。図10は、サンプリング微細構造(26)を有するサンプリング領域(20)を備えたセンサシステムを示す。サンプリング領域は、大きな表面からサンプリングチャンバ(25)に向かって検知化学物質を収集するためにできるだけ高くする必要がある。サンプリング領域は、直接的又は間接的にサンプリングチャンバに接続され、相互作用を検知するために、化学物質が光線に向かって拡散又は流動するようにする。従って、サンプリング領域は、サンプリングセル内に一体化することもでき、別個の要素として構築することもでき、膜と一体化することもできる。微細構造は、種々の断面とすることができるが、好ましくは、全サンプリング容積への寄与が最少になるように深さを浅くすることができる。サンプリング領域の構成は、微細構造の配列を意味し、マイクロチャネルの不在から、縞、交差又はフラクタル構成まで様々なものとすることができる。また、製造過程は、表面粗さを意味し、サンプリング領域の微細構造とみなすことができる。多孔性層もサンプリング領域微細構造として見ることができる。サンプリング領域は、全サンプリングセル上部表面、及び他の小平面及び/又はサンプリングセル内に組み入れられた適合要素にわたってより広く拡張することができる。
【0142】
図11に概略的に示したマルチポイント光センサシステムを形成して異なる位置の化学物質を検知するために、幾つかのサンプリングセルを直列及び/又は並列に組み合わせることができる。
【0143】
一体化のスケールを拡張し、直列及び/又は並列構造を単一の(又は減少させた数の)サンプリングセル本体(各本体)内に一体化又は組み立てて、小型センサシステムを形成することができる。
【0144】
異なる化学物質又は同位体を検知するために、可変又は固定波長を有する1つ又は複数の光源を用いて、図12に概略的に示すように複数の光源センサシステムを形成することができる。
【0145】
目的とする用途に応じて、上述の実施形態の全ては、最適に検知するために組み合わせることができる。
【0146】
以下には、サンプリングセルを含み且つ機器からのケーブルを介して遠隔に接続されるセンサヘッドをセンサシステムが有する、本発明の特定の実施形態を説明する。機器は、レーザ光源、レーザ制御装置、光エミッタのビームスプリッタ、及び基準検出光電子、光受信器の信号処理電子を含み、更に、電源装置及び出力信号ディスプレイを含む。これは、患者の皮膚が動脈分圧と経皮的分圧との間で良好な相関性を持つように加熱される経皮的血液ガス監視に用いられる(セヴェリングハウス補正を用いる)。この実施形態で監視されるガスは二酸化炭素である。
【0147】
レーザ源(20mW)は、CO2吸収ピークに従って1572nm、2004nm又は4260nmの波長変調光を放出する。レーザは、その駆動電流により500Hzで波長変調される。光線は、モノモード標準電気通信光ファイバ(SMF−28)に入射する。ビームスプリッタは、基準信号(10%)及び測定信号(90%)を生成し、後者は、2m長さケーブルに沿ってセンサヘッド内に誘導される。センサヘッドは、光サンプリングセル(<5mm3サンプリング容積)に基づき、患者の皮膚(Φ20mm検知領域)から透過したガスの収集及び光と検知ガスとの間の相互作用(Φ0.4mm×15mmの中心チャネルにわたる光吸収の物理的原理)の両方が可能になる。光ファイバの端部で、マイクロレンズすなわちレンズファイバが、テフロン膜及び直径0.2mmのダクトを通り拡散により検知ガスが収集されるサンプリングセルの中心チャネルの光線を平行にする。マイクロレンズは、信号対騒音比が高いシステム性能にするようにビームを形作る。これは、反射防止コーティングされ、サンプリングセルの中心チャネルに沿って単一のモノモード自由空間伝搬を維持する。これにより、光−ガス相互作用経路の全体で後方反射及び寄生雑音(干渉雑音)が避けられる。中心チャネルの端部で、InGaAs光検出器により光強度を測定し、その正規化変調が検知ガス濃度を反映する(フィッティング、線形化関数及び工場設定された較正係数により与えられる0〜760mmHgの範囲)。この光検出器配列では、後方反射が避けられ、低干渉雑音検知が可能になる。光を波長変調し、基準信号と比較して光検出器の後に復調することにより高感度が得られ、調波検出により、共通摂動が回避され、システム性能が改善される。検知ガスの単一の吸収ラインを標的にするレーザ元のスペクトル幅を極めて狭くすることにより(約10GHz幅)高選択性が得られる。信号処理により、光強度信号をガス分圧(pCO2又は経皮的tc−pCO2)に変換し、1秒毎に表示する。
【0148】
別の実施形態では、1572nm波長(D=11μm<(2.405*1.572μm/3.14*0.1)=12μm)を備えるモノモードに設計された中空コアファイバ(コア直径=11μm、開口数=0.1)は、上記の実施形態の中心チャネルに誘導構造として挿入され、標準電気通信ファイバに直接接続される。中空コアファイバは、電気通信ファイバビームをフィッティングし、単一のモノモード伝搬(低寄生雑音及び最適な信号対雑音比)を最適化するように選択される。90%を超える光が中空ファイバの空気コアを伝搬する。中空コアファイバを保持する中心チャネルは、中空ファイバに可撓性があるため、伝搬モノモードを維持しながら自由に湾曲することができる(90°、コイル、U字形)。
【0149】
経皮的分圧測定値は、0〜250mmHgの範囲である。患者の皮膚温度を41〜43°Cに加熱し(サンプリング領域の周りに加熱コイルを配置し、熱伝導のために金属サンプリングセルを用いる)、皮下血管を動脈血化することにより患者の血液ガスレベル(PaCO2)との良好な相関関係が得られる。従って、連続的に監視することにより、応答時間60秒未満で患者の心肺疾患を検出することができ、換気の欠乏又は過剰に起因して中枢神経系に損傷が起こる前に警戒態勢の医療従事者が対応することができる。
【符号の説明】
【0150】
1 媒体
2 サンプリングセル
3 光エミッタ
4 光受信器
5 光線
6 出力信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体中のガス状化学物質を検出するためのセンサシステムであって、
前記センサシステムが、
ガス状化学物質を含む試料を受け入れるための容積が最大20mm3のサンプリングチャンバを保持する光サンプリングセルと、
サンプリングチャンバに保持されるガス状試料と相互作用するためのサンプリングセル内の光線光学経路に沿って自由空間伝搬する光線をサンプリングセル内に生成し結合するための光エミッタと、
サンプリングセルから光線を検出し、試料のガス状化学物質を反映する出力信号を生成するための光受信器と、
を含み、
単一のモノモード伝搬により光線が伝搬する、
ことを特徴とするセンサシステム。
【請求項2】
前記サンプリングチャンバの容積が、最大5mm3である、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記サンプリングチャンバの容積が、最大0.5mm3である、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記サンプリングチャンバが、前記光線経路に沿って前記光線断面に相応する又は適合される、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記サンプリングチャンバの内部表面が、化学的及び/又は光学的活性コーティングでコーティングされる、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記光線が伝搬する誘導構造を更に含む、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記誘導構造が、特徴寸法Dmirrorを有する矩形鏡誘導構造であり、前記光線が波長「λ」を有し、Dmirror/λ<(π)−0.5である、
ことを特徴とする請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記誘導構造が、誘電体コア及び誘電クラッディング、特徴寸法Ddielectric及び(n12−n22)0.5(式中、n1及びn2がそれぞれ誘電体コア及び誘電クラッディング屈折率を表す)で定義される開口数NAを有する矩形誘電体誘導構造であり、前記光線が波長λを有し、Ddielectric/λ<1/(π0.5*NA)である、
ことを特徴とする請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記誘導構造が、直径Dcircular及び開口数NAcircularの円形誘電体誘導構造であり、前記光線が波長「λ」を有し、Dcircular/λ<2.405/(π*NAcircular)である、
ことを特徴とする請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記サンプリングセルが、前記誘導構造を含む、
ことを特徴とする請求項6〜請求項9の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項11】
前記誘導構造が、好ましくは化学的活性コーティングでコーティングされる、
ことを特徴とする請求項6〜請求項10の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項12】
前記誘導構造が、前記試料を受け入れる、
ことを特徴とする請求項6〜請求項11の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項13】
前記誘導構造が、好ましくは、管体、中空ファイバ、多穴ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、及びフォトニックバンドギャップ装置から成る群から選択される中空光学装置である、
ことを特徴とする請求項6〜請求項12の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項14】
前記誘導構造が直線状である、
ことを特徴とする請求項6〜請求項13の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項15】
前記誘導構造が、屈曲状、コイル状、折り畳み状、U字形又は螺旋形である、
ことを特徴とする請求項6〜請求項13の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項16】
前記光エミッタが、好ましくは、分布帰還型レーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザ、及び量子カスケードレーザから成る群から選択される狭帯域光エミッタである、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項17】
前記ガス状化学物質が、吸収線を有し、前記光エミッタの−3dBでの帯域幅が、前記ガス状化学物質吸収線の最大FWHM(半値全幅)である、
ことを特徴とする請求項16に記載のセンサシステム。
【請求項18】
前記光エミッタが、コリメータ又はビームシェーパを含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項19】
前記光エミッタ及び前記光受信器の少なくとも1つが、光導波管、好ましくはファイバ又はレンズファイバを含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項20】
前記光線をサンプリングセル光線及び基準光線に分割する少なくとも1つのビームスプリッタを更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項21】
前記光エミッタが、波長変調又は周波数変調され、前記光受信器が、基本波及び/又は調波検出に適合されている、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項22】
熱機械装置が、干渉雑音を統計的に減少させるために意図的に摂動又はスクランブルする、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項23】
前記光受信器信号処理を正規化工程に適用する、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項24】
前記光線光学経路の形状が、前記サンプリングセル内、前記サンプリングチャンバ内、又は前記誘導構造内の屈折、反射、回折又は散乱により変調される、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項25】
光線光学経路の長さが、前記サンプリングチャンバ内の屈折、反射、回折又は散乱により延長される、
ことを特徴とする請求項24に記載のセンサシステム。
【請求項26】
前記サンプリングセルが、前記試料チャンバに隣接する膜を含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項27】
前記膜が、好ましくは化学的又は光学的に活性コーティングでコーティングされる、
ことを特徴とする請求項26に記載のセンサシステム。
【請求項28】
前記膜材料自体が、化学的又は光学的に活性である、
ことを特徴とする請求項26及び請求項27の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項29】
前記膜が、制御表面粗さ又は制御表面構造を有する、
ことを特徴とする請求項26〜請求項28の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項30】
前記膜及び前記サンプリングセルの少なくとも一部が、サンプリングセル組立体に一体化され、前記サンプリングセル組立体がディスポーザブルである、
ことを特徴とする請求項26〜請求項29の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項31】
前記光線光学経路を横断する媒体パイプを更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項32】
前記サンプリングセルが、前記化学物質をサンプリングするためのサンプリング領域を有する、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項33】
前記光線光学経路の一部が、前記サンプリング領域に隣接して位置付けされる、
ことを特徴とする請求項32に記載のセンサシステム。
【請求項34】
前記光線光学経路の一部が、前記光サンプリングセル内に埋め込まれ、前記サンプリングセルが、前記サンプリング領域と前記光線光学経路との間に少なくとも1つのダクトを更に含む、
ことを特徴とする請求項32に記載のセンサシステム。
【請求項35】
前記サンプリング領域が、制御表面粗さ又は制御表面構造を有する、
ことを特徴とする請求項32〜請求項34の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項36】
前記光エミッタ及び前記光受信器の少なくとも1つが、前記光サンプリングセルに一体化される、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項37】
前記光エミッタが、前記光サンプリングセルと一体化される、
ことを特徴とする請求項36に記載のセンサシステム。
【請求項38】
加熱システム及び/又は温度検知システムを更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項39】
前記光サンプリングセルに直列又は並列に配列される少なくとも1つの付加的な光サンプリングセルを更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項40】
前記光サンプリングセル及び前記少なくとも1つの付加的なサンプリングセルが、単一のサンプリングセル本体に一体化される、
ことを特徴とする請求項39に記載のセンサシステム。
【請求項41】
少なくとも1つの付加的な光エミッタ及び/又は1つの付加的な光受信器を更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項42】
前記光エミッタが、複数の化学物質及び/又は複数の同位体を検出するための波長可変光エミッタである、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項43】
前記センサシステムが、経皮的センサシステムである、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項44】
前記ガス状化学物質が、二酸化炭素である、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項45】
前記請求項の何れかに記載のセンサシステムと共に用いるためのサンプリングセル組立体であって、
前記化学物質を含む試料を受け入れるためのサンプリングチャンバを保持する光サンプリングセルと、
前記サンプリングチャンバに隣接する膜と、
を含むことを特徴とする組立体。
【請求項1】
媒体中のガス状化学物質を検出するためのセンサシステムであって、
前記センサシステムが、
ガス状化学物質を含む試料を受け入れるための容積が最大20mm3のサンプリングチャンバを保持する光サンプリングセルと、
サンプリングチャンバに保持されるガス状試料と相互作用するためのサンプリングセル内の光線光学経路に沿って自由空間伝搬する光線をサンプリングセル内に生成し結合するための光エミッタと、
サンプリングセルから光線を検出し、試料のガス状化学物質を反映する出力信号を生成するための光受信器と、
を含み、
単一のモノモード伝搬により光線が伝搬する、
ことを特徴とするセンサシステム。
【請求項2】
前記サンプリングチャンバの容積が、最大5mm3である、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記サンプリングチャンバの容積が、最大0.5mm3である、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記サンプリングチャンバが、前記光線経路に沿って前記光線断面に相応する又は適合される、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記サンプリングチャンバの内部表面が、化学的及び/又は光学的活性コーティングでコーティングされる、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記光線が伝搬する誘導構造を更に含む、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記誘導構造が、特徴寸法Dmirrorを有する矩形鏡誘導構造であり、前記光線が波長「λ」を有し、Dmirror/λ<(π)−0.5である、
ことを特徴とする請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記誘導構造が、誘電体コア及び誘電クラッディング、特徴寸法Ddielectric及び(n12−n22)0.5(式中、n1及びn2がそれぞれ誘電体コア及び誘電クラッディング屈折率を表す)で定義される開口数NAを有する矩形誘電体誘導構造であり、前記光線が波長λを有し、Ddielectric/λ<1/(π0.5*NA)である、
ことを特徴とする請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記誘導構造が、直径Dcircular及び開口数NAcircularの円形誘電体誘導構造であり、前記光線が波長「λ」を有し、Dcircular/λ<2.405/(π*NAcircular)である、
ことを特徴とする請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記サンプリングセルが、前記誘導構造を含む、
ことを特徴とする請求項6〜請求項9の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項11】
前記誘導構造が、好ましくは化学的活性コーティングでコーティングされる、
ことを特徴とする請求項6〜請求項10の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項12】
前記誘導構造が、前記試料を受け入れる、
ことを特徴とする請求項6〜請求項11の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項13】
前記誘導構造が、好ましくは、管体、中空ファイバ、多穴ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、及びフォトニックバンドギャップ装置から成る群から選択される中空光学装置である、
ことを特徴とする請求項6〜請求項12の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項14】
前記誘導構造が直線状である、
ことを特徴とする請求項6〜請求項13の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項15】
前記誘導構造が、屈曲状、コイル状、折り畳み状、U字形又は螺旋形である、
ことを特徴とする請求項6〜請求項13の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項16】
前記光エミッタが、好ましくは、分布帰還型レーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザ、及び量子カスケードレーザから成る群から選択される狭帯域光エミッタである、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項17】
前記ガス状化学物質が、吸収線を有し、前記光エミッタの−3dBでの帯域幅が、前記ガス状化学物質吸収線の最大FWHM(半値全幅)である、
ことを特徴とする請求項16に記載のセンサシステム。
【請求項18】
前記光エミッタが、コリメータ又はビームシェーパを含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項19】
前記光エミッタ及び前記光受信器の少なくとも1つが、光導波管、好ましくはファイバ又はレンズファイバを含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項20】
前記光線をサンプリングセル光線及び基準光線に分割する少なくとも1つのビームスプリッタを更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項21】
前記光エミッタが、波長変調又は周波数変調され、前記光受信器が、基本波及び/又は調波検出に適合されている、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項22】
熱機械装置が、干渉雑音を統計的に減少させるために意図的に摂動又はスクランブルする、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項23】
前記光受信器信号処理を正規化工程に適用する、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項24】
前記光線光学経路の形状が、前記サンプリングセル内、前記サンプリングチャンバ内、又は前記誘導構造内の屈折、反射、回折又は散乱により変調される、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項25】
光線光学経路の長さが、前記サンプリングチャンバ内の屈折、反射、回折又は散乱により延長される、
ことを特徴とする請求項24に記載のセンサシステム。
【請求項26】
前記サンプリングセルが、前記試料チャンバに隣接する膜を含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項27】
前記膜が、好ましくは化学的又は光学的に活性コーティングでコーティングされる、
ことを特徴とする請求項26に記載のセンサシステム。
【請求項28】
前記膜材料自体が、化学的又は光学的に活性である、
ことを特徴とする請求項26及び請求項27の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項29】
前記膜が、制御表面粗さ又は制御表面構造を有する、
ことを特徴とする請求項26〜請求項28の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項30】
前記膜及び前記サンプリングセルの少なくとも一部が、サンプリングセル組立体に一体化され、前記サンプリングセル組立体がディスポーザブルである、
ことを特徴とする請求項26〜請求項29の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項31】
前記光線光学経路を横断する媒体パイプを更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項32】
前記サンプリングセルが、前記化学物質をサンプリングするためのサンプリング領域を有する、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項33】
前記光線光学経路の一部が、前記サンプリング領域に隣接して位置付けされる、
ことを特徴とする請求項32に記載のセンサシステム。
【請求項34】
前記光線光学経路の一部が、前記光サンプリングセル内に埋め込まれ、前記サンプリングセルが、前記サンプリング領域と前記光線光学経路との間に少なくとも1つのダクトを更に含む、
ことを特徴とする請求項32に記載のセンサシステム。
【請求項35】
前記サンプリング領域が、制御表面粗さ又は制御表面構造を有する、
ことを特徴とする請求項32〜請求項34の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項36】
前記光エミッタ及び前記光受信器の少なくとも1つが、前記光サンプリングセルに一体化される、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項37】
前記光エミッタが、前記光サンプリングセルと一体化される、
ことを特徴とする請求項36に記載のセンサシステム。
【請求項38】
加熱システム及び/又は温度検知システムを更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項39】
前記光サンプリングセルに直列又は並列に配列される少なくとも1つの付加的な光サンプリングセルを更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項40】
前記光サンプリングセル及び前記少なくとも1つの付加的なサンプリングセルが、単一のサンプリングセル本体に一体化される、
ことを特徴とする請求項39に記載のセンサシステム。
【請求項41】
少なくとも1つの付加的な光エミッタ及び/又は1つの付加的な光受信器を更に含む、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項42】
前記光エミッタが、複数の化学物質及び/又は複数の同位体を検出するための波長可変光エミッタである、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項43】
前記センサシステムが、経皮的センサシステムである、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項44】
前記ガス状化学物質が、二酸化炭素である、
ことを特徴とする前記請求項の何れかに記載のセンサシステム。
【請求項45】
前記請求項の何れかに記載のセンサシステムと共に用いるためのサンプリングセル組立体であって、
前記化学物質を含む試料を受け入れるためのサンプリングチャンバを保持する光サンプリングセルと、
前記サンプリングチャンバに隣接する膜と、
を含むことを特徴とする組立体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−522868(P2010−522868A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553235(P2009−553235)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001091
【国際公開番号】WO2008/110927
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SELFOC
2.テフロン
【出願人】(506385900)ラディオメーター・バーゼル・アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001091
【国際公開番号】WO2008/110927
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SELFOC
2.テフロン
【出願人】(506385900)ラディオメーター・バーゼル・アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
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