説明

センサヘッド、および光学式センサ

【課題】センサヘッドに起こった環境状態の異常を検知することができる光学式センサを実現する。
【解決手段】本発明に係る光学式圧力センサ1のセンサヘッド2は、光源5から発せられた光を伝送する出射用光ファイバ10と、出射用光ファイバ10の端面に対する相対位置が圧力に応じて変位し、出射用光ファイバ10の端面から出射された光を反射する反射板15と、反射板15が反射した光が入射される端面を有し、入射した光をそれぞれ第1および第2光検出器6・7に伝送する第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12とを備え、さらに、センサヘッド2内の湿度の変化に応じて、出射用光ファイバ10の伝送損失を変化させる損失変化部16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式センサ、および光学式センサに用いるセンサヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被測定物の変位、温度、または圧力等の物理量を測定するセンサとして電気式センサが一般に良く知られている。電気式センサは、測定部(センサヘッド)で各物理量に応じて生成される電気信号を処理部に伝送して、処理部が電気信号を各物理量に換算する。そのため、測定部と処理部との距離が離れている場合、電気信号が電磁ノイズの影響を受けやすく、測定精度が低下するという問題を有している。また、電気式センサは、遠く離れた測定部に電力を供給する必要があるため、例えば、ダムの水位(水圧)、地下の排水管の水位(水圧)、または、可燃物である液化天然ガスの水位(圧力)等の測定には不向きであった。
【0003】
これに対して、光ファイバを用いる光学式センサでは、光ファイバを通して測定部に光を供給し、電気信号の代わりに物理量に応じた光信号を光ファイバによって測定部から処理部まで伝送する。そのため、光学式センサは、電磁ノイズの影響を受けることなく測定部からの信号を伝送することが可能であり、高精度の測定を行うことができる(例えば、特許文献1〜10参照)。
【0004】
図10は、例えば特許文献10等に記載された、従来の光学式圧力センサの構成を示す概略図である。光学式圧力センサ101は、センサヘッド102と、光学装置部103と、演算処理部104とを備える。光学装置部103は、光源105と、第1光検出器106と、第2光検出器107と、第1増幅器108と、第2増幅器109とを備える。
【0005】
センサヘッド102は、光源105から発せられた光をセンサヘッド102に伝送する出射用光ファイバ110と、センサヘッド102から光学装置部103へ光を伝送する第1受光用光ファイバ111および第2受光用光ファイバ112とを備える。出射用光ファイバ110、第1受光用光ファイバ111、および第2受光用光ファイバ112は、センサヘッド102の中の光ファイバ固定部113で固定されている。センサヘッド102は、出射用光ファイバ110の端面に相対する位置に、薄い金属板からなるダイアフラム114を備える。ダイアフラム114は、出射用光ファイバ110の端面に対向する面に反射板115を備える。ダイアフラム114は、その外側に加わる圧力によって変形し、それに伴い、反射板115の位置も変位する。
【0006】
図10に示す例では、センサヘッド102は水中に配置され、光学式圧力センサ101がダイアフラム114に加わる圧力(水圧)を計測することにより、水位の情報を得ることができる。光源105から出射された光は、出射用光ファイバ110によってセンサヘッド102まで伝送され、出射用光ファイバ110の端面から出射され、反射板115の反射面で反射され、第1受光用光ファイバ111および第2受光用光ファイバ112の端面に入射する。第1受光用光ファイバ111および第2受光用光ファイバ112の端面に入射した光は、第1受光用光ファイバ111および第2受光用光ファイバ112によってそれぞれ第1光検出器106および第2光検出器107まで伝送される。
【0007】
図11は、センサヘッドの要部を拡大して示す断面図である。図11では、ダイアフラムは省略している。第1受光用光ファイバ111および第2受光用光ファイバ112は、平行に並べて配置されており、出射用光ファイバ110と、第1受光用光ファイバ111および第2受光用光ファイバ112とは、反射板115の反射面の法線に対して対称になるよう(具体的には、反射面の法線に対する角度θが5°になるよう)、傾けて配置されている。出射用光ファイバ110、第1受光用光ファイバ111、および第2受光用光ファイバ112の端面は、反射板115の反射面に対向するよう配置されている。
【0008】
出射用光ファイバ110の端面から出射された光は、光軸を中心とした広がりを持って進み、反射板115の反射面で反射され、第1受光用光ファイバ111および第2受光用光ファイバ112にそれぞれの端面から入射する。このとき、反射板115の位置によって、反射された光の光軸の位置が変化する。そのため、第1受光用光ファイバ111に入射する光の強度および第2受光用光ファイバ112に入射する光の強度は、反射板115の位置によって変化する。
【0009】
第1光検出器106(図10参照)および第2光検出器107は、伝送された光を受光し、それぞれ受光した光の強度に対応する電気信号を生成する。第1光検出器106および第2光検出器107が生成した電気信号は、それぞれ第1増幅器108および第2増幅器109に出力される。
【0010】
第1増幅器108および第2増幅器109は、それぞれ入力された電気信号を増幅し、演算処理部104に出力する。
【0011】
ここで、第1光検出器106が受光した光の強度(すなわち、第1増幅器108が出力する電気信号が示す光の強度)をP1、第2光検出器107が受光した光の強度(すなわち、第2増幅器109が出力する電気信号が示す光の強度)をP2とする。P1およびP2を用いて、演算処理部104が求める光強度比をF値とする。F値はF(P1,P2)=(P1−P2)/(P1+P2)として算出する。このF値を、あらかじめ校正されたテーブル等と比較することで、ダイアフラム114の位置での圧力および水深を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平06−008724号公報(1994年2月2日公告)
【特許文献2】特開平02−057909号公報(1990年2月27日公開)
【特許文献3】特開平03−243822号公報(1991年10月30日公開)
【特許文献4】特開平02−049115号公報(1990年2月19日公開)
【特許文献5】特開昭63−169521号公報(1988年7月13日公開)
【特許文献6】特開平11−352158号公報(1999年12月24日公開)
【特許文献7】特開2004−301769号公報(2004年10月28日公開)
【特許文献8】特開平06−307858号公報(1994年11月4日公開)
【特許文献9】特開2008−298581号公報(2008年12月11日公開)
【特許文献10】特開2007−024826号公報(2007年2月1日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、光学式圧力センサ101を水位センサとして使用する場合、センサヘッド102の中に徐々に水分(湿気)が浸入し、浸入した水分が最終的に光学式圧力センサ101を故障に至らしめることがある。例えば、センサヘッド102内に浸入した水分が、センサヘッド102の内部の部材の固定に影響を与え、内部の部材の位置、または光ファイバの位置が変化してしまうことにより、光学式圧力センサ101の測定精度を悪化させることがある。センサヘッド102から各光ファイバ110・111・112(またはそれらをまとめた光ファイバケーブル)が出ている部分は、シールが弱くなりやすく、水分の浸入を完全に防止することは難しい(図10参照)。
【0014】
そこで、センサヘッド内に水分の浸入等の異常があった場合に備えて、湿度を検知する湿度センサをセンサヘッドに内蔵させることが考えられる。しかしながら、湿度センサをセンサヘッドに内蔵した場合、使用する部品が増加し、光学式圧力センサが高価なものになってしまう。また、湿度センサのためにセンサヘッドに電気配線する必要がある場合、センサヘッドに給電する必要がない光学式圧力センサの長所を犠牲にしてしまう。また、安価な湿度センサは、測定した湿度を確認するために、センサヘッドを水中から引き上げてセンサヘッドから湿度センサを取り出して確認しなければならず、測定した湿度を確認するための作業時間および作業費用が必要になる。
【0015】
近年、突発的な雷雨(ゲリラ豪雨)による水害等が多発しており、安定して水位等を測定できるセンサが求められている。センサヘッドに起こった異常(水分の浸入、湿度の上昇、温度の変動、ガスの浸入、またはオイルの浸入等)を早期に検知することができれば、センサが故障する前にセンサを修理または交換することができ、安定して測定を行うことができる。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサヘッドに起こった環境状態の異常を検知することができる光学式センサを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るセンサヘッドは、光源から発せられた光を伝送する第1光ファイバと、第1光ファイバの端面に対する相対位置が物理量に応じて変位し、第1光ファイバの上記端面から出射された光を反射する反射体と、上記反射体が反射した光が入射される端面を有し、入射した光をそれぞれ光検出器に伝送する第2光ファイバおよび第3光ファイバとを備える、上記物理量を測定する光学式センサ用のセンサヘッドであって、上記の課題を解決するために、上記センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、第1光ファイバの伝送損失を変化させる光強度変化部を備えることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、センサヘッド内の環境状態の変化に応じて第1光ファイバの伝送損失が変化し、第2光ファイバおよび第3光ファイバに入射する光の強度が、同じ程度で変化する。よって、上記センサヘッドを利用した光学式センサは、第2光ファイバおよび第3光ファイバが伝送する光の強度の比から物理量を測定することができ、かつ、第2光ファイバおよび第3光ファイバが伝送する光の強度からセンサヘッド内の環境状態の変化を検知することができる。それゆえ、利用者は、センサヘッドが故障して物理量の測定が行えなくなる前に、センサヘッド内の環境状態の異常を知ることができ、センサヘッドのメンテナンスを行うことができる。よって、突然センサヘッドが故障して物理量の測定が行えなくなる事態の発生を防ぐことができる。
【0019】
なお、測定する物理量の一例としては、物体の変位、圧力、または温度等を挙げることができる。また、環境状態の一例としては、温度、湿度、あるいはセンサヘッド内に浸入した特定の気体(天然ガス等)または液体(原油等)等を挙げることができる。
【0020】
また、上記光強度変化部は、上記センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、第1光ファイバの曲率を変化させる、第1光ファイバに加わる側圧を変化させる、または、第1光ファイバに加わる張力を変化させることにより、第1光ファイバの伝送損失を変化させる構成であってもよい。
【0021】
光ファイバの伝送損失は、光ファイバの曲率、光ファイバに加わる側圧、または光ファイバに加わる張力等によって変化する。そのため、センサヘッド内の環境状態の変化に応じて第1光ファイバの曲率、第1光ファイバに加わる側圧、または第1光ファイバに加わる張力を変化させることで、第1光ファイバの伝送損失を変化させることができる。なお、当然、光強度変化部は、第1光ファイバの曲率の変化、第1光ファイバに加わる側圧の変化、および第1光ファイバに加わる張力の変化を組み合わせて、第1光ファイバの伝送損失を変化させる構成であってもよい。
【0022】
また、第1光ファイバは、上記光強度変化部において分離されており、第1光ファイバの分離された端面同士は、間隔を空けて対向するよう配置されている構成であってもよい。
【0023】
上記の構成によれば、第1光ファイバの分離された端面の間の空間に、センサヘッド内に侵入した異物(例えば水滴)が入ることにより、第1光ファイバの分離された端面の間で伝送される光の散乱または吸収が起こり、第1光ファイバの伝送損失が変化する。
【0024】
また、上記光強度変化部は、第1光ファイバの上記分離された端面の間に配置される透過体を備え、上記透過体は、上記センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、特定波長の光に対する透過率が変化する構成であってもよい。
【0025】
上記の構成によれば、第1光ファイバの分離された端面の間に配置される透過体が、センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、通過する光の強度を変化させるので、第1光ファイバの伝送損失を変化させることができる。
【0026】
本発明に係る光学式センサは、上記のセンサヘッドと、光源と、上記センサヘッドから第2光ファイバが伝送する光を受光して、受光した光の強度を示す電気信号を生成する第1光検出器と、上記センサヘッドから第3光ファイバが伝送する光を受光して、受光した光の強度を示す電気信号を生成する第2光検出器と、第1光検出器が生成した電気信号が示す光の強度と第2光検出器が生成した電気信号が示す光の強度との比を用いて上記物理量を求め、第1光検出器が生成した電気信号が示す光の強度と第2光検出器が生成した電気信号が示す光の強度との和、または重みづけの和を用いて、あるいは、第1光検出器が生成した電気信号が示す光の強度または第2光検出器が生成した電気信号が示す光の強度を用いて、上記センサヘッド内の環境状態の変化を検知する処理部とを備えることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、第1光検出器が生成した電気信号が示す光の強度と第2光検出器が生成した電気信号が示す光の強度との比を用いることによって、光源の出力の変化および第1光ファイバの伝送損失に影響を受けることなく、物理量を測定することができ、かつ、第1光検出器が生成した電気信号が示す光の強度と第2光検出器が生成した電気信号が示す光の強度との和(または重みづけの和、または、第1光検出器が生成した電気信号が示す光の強度および第2光検出器が生成した電気信号が示す光の強度のいずれか)を用いることによって、第1光ファイバの伝送損失の変化を検知することができる。そのため、物理量の測定を継続しつつ、環境状態の変化を検知することができる。
【0028】
また、本発明に係る光学式センサは、上記のセンサヘッドと、第1の波長の光、および、第2の波長の光を出射する光源を備え、上記光強度変化部は、上記センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、一方の波長の光に対する第1光ファイバの伝送損失を変化させる構成であってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、環境状態の変化に応じて変化する一方の波長の光の強度を用いて、環境状態の変化を検知することができる。また、例えば、一方の波長の光に対する第1光ファイバの伝送損失が大きくなり過ぎて一方の波長の光が検出不可能になった場合でも、他方の波長の光の強度を用いて物理量の測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るセンサヘッドおよび光学式センサによれば、第2光ファイバおよび第3光ファイバが伝送する光の強度の比から物理量を測定することができ、かつ、第2光ファイバおよび第3光ファイバが伝送する光の強度からセンサヘッド内の環境状態の変化を検知することができる。それゆえ、利用者は、センサヘッドが故障して物理量の測定が行えなくなる前に、センサヘッド内の環境状態の異常を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光学式圧力センサの構成を示す概略図である。
【図2】図1に示すセンサヘッドの要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す損失変化部の構成例を示す断面図である。
【図4】反射板の位置と、光強度P1、P2、およびF値との関係の一例を示すグラフである。
【図5】図1に示す損失変化部の他の構成例を示す断面図である。
【図6】図1に示す損失変化部のさらに他の構成例を示す断面図である。
【図7】図1に示す損失変化部のさらに他の構成例を示す平面図である。
【図8】図1に示す損失変化部のさらに他の構成例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る光学式圧力センサの構成を示す概略図である。
【図10】従来の光学式圧力センサの構成を示す概略図である。
【図11】図10に示すセンサヘッドの要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下では光学式センサの一例として、圧力を測定する光学式圧力センサについて説明する。
【0033】
[実施の形態1]
(光学式圧力センサの構造)
図1は、本実施の形態の光学式圧力センサの構成を示す概略図である。光学式圧力センサ(光学式センサ)1は、センサヘッド2と、光学装置部3と、演算処理部(処理部)4と、アラーム発生部17とを備える。光学装置部3は、光源5と、第1光検出器6と、第2光検出器7と、第1増幅器8と、第2増幅器9とを備える。
【0034】
センサヘッド2は、内部に空間を有する容器からなり、光源5から発せられた光をセンサヘッド2に伝送する出射用光ファイバ10と、センサヘッド2から光学装置部3へ光を伝送する第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12とを備える。出射用光ファイバ10、第1受光用光ファイバ11、および第2受光用光ファイバ12は、センサヘッド2の中の光ファイバ固定部13で固定されている。センサヘッド2は、センサヘッド2の内部にある出射用光ファイバ10の端面に相対する位置に、薄い金属板からなるダイアフラム14を備える。ダイアフラム14は、出射用光ファイバ10の端面に対向する面に反射板(反射体)15を備える。ダイアフラム14は、その外側に加わる圧力によって変形し、それに伴い、出射用光ファイバ10の端面に対する反射板15の位置も変位する。また、センサヘッド2は、出射用光ファイバ10の周囲に配置される損失変化部(光強度変化部)16を備え、出射用光ファイバ10は、損失変化部16を通るように配置されている。
【0035】
図1に示す例では、センサヘッド2は水中に配置され、光学式圧力センサ1がダイアフラム14に加わる圧力を計測することにより、水深または水位の情報を得ることができる。光源5から発せられた光は、出射用光ファイバ10によってセンサヘッド2まで伝送され、損失変化部16を通過する。損失変化部16は、湿度または温度等の環境状態に応じて出射用光ファイバ10の伝送損失を変化させる機能を有す。損失変化部16の詳しい構成は後述する。損失変化部16を通過した出射用光ファイバ10中の光は、反射板15に対向する出射用光ファイバ10の端面から出射され、反射板15の反射面で反射され、第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12にそれぞれの端面から入射する。第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12の端面から入射した光は、第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12によってそれぞれ第1光検出器6および第2光検出器7まで伝送される。
【0036】
図2は、図1に示すセンサヘッドの要部を拡大して示す断面図である。図2では、ダイアフラムは省略している。第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12は、平行に並べて配置されており、出射用光ファイバ10と、第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12とは、反射板15の反射面の法線に対して対称に、より具体的には、それぞれ反射面の法線に対して、ある角度θになるよう、傾けて配置されている。ここでは、角度θ=5°とした。出射用光ファイバ10、第1受光用光ファイバ11、および第2受光用光ファイバ12の端面は、反射板15の反射面に対向するよう配置されている。
【0037】
出射用光ファイバ10の端面から出射された光は、光軸を中心とした広がりを持って進み、反射板15の反射面で反射され、第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12の端面から各受光用光ファイバ11・12に入射する。このとき、反射板15の位置によって、反射された光の光軸の位置と、出射用光ファイバ10の端面から第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12の端面までの光路長とが変化する。そのため、第1受光用光ファイバ11に入射する光の強度および第2受光用光ファイバ12に入射する光の強度は、反射板15の位置によって変化する。具体的には、出射用光ファイバ10の端面と反射板15との距離が近い場合(すなわちダイアフラムの外側の圧力が高い場合)は、第1受光用光ファイバ11に入射する光の強度が大きくなり、出射用光ファイバ10の端面と反射板15との距離が遠い場合(すなわちダイアフラムの外側の圧力が低い場合)は、第2受光用光ファイバ12に入射する光の強度が大きくなる。
【0038】
第1光検出器6(図1参照)および第2光検出器7は、第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12によって伝送された光を受光し、それぞれ受光した光の強度に対応する電気信号を生成する(受光した光を電気信号に変換する)。第1光検出器6および第2光検出器7が生成した電気信号は、それぞれ第1増幅器8および第2増幅器9に出力される。
【0039】
第1増幅器8および第2増幅器9は、それぞれ入力された電気信号を増幅し、演算処理部4に出力する。演算処理部4は、各電気信号から圧力等の物理量を求める。演算処理部4は、データの記憶手段を備え、この電気信号と物理量との対応関係のテーブル、および後述する閾値データをあらかじめ記憶している。
【0040】
(損失変化部の構成)
図3は、図1に示す損失変化部16の構成例を示す断面図である。損失変化部16は、直方体の容器20と、容器20の中に詰められた球状の吸水性樹脂21とを備える。出射用光ファイバ10は、容器20の一端から他端へ、吸水性樹脂21の隙間を通り、損失変化部16の中を通過する。また、容器20は水分(湿度)を通過させる。
【0041】
センサヘッド2(図1参照)内に水分が浸入した場合、吸水性樹脂21は、センサヘッド2内の水分を吸湿し、吸水性樹脂21が膨張する。出射用光ファイバ10は、吸水性樹脂21が膨張したときに出射用光ファイバ10が押されて曲がるようなテンションに設定する。膨張した吸水性樹脂21は、損失変化部16の中を通る出射用光ファイバ10を圧迫し、出射用光ファイバ10を屈曲させてその部分的な曲率を変化させる、または出射用光ファイバ10に部分的に側圧を加える。光ファイバは、曲率の増大(曲率半径の減少)、側圧の印加、または張力の印加等により、その伝送損失が大きくなる。そのため、センサヘッド2内に水分が浸入した場合、その水分の量に応じて、吸水性樹脂21が膨張し、出射用光ファイバ10の伝送損失が大きくなる。それゆえ、出射用光ファイバ10から出射される光の強度は、センサヘッド2内に浸入した水分の量によって変化し、センサヘッド2内の湿度が上昇した場合は、出射用光ファイバ10から出射される光の強度は小さくなる。なお、吸水性樹脂21としては、例えば、周知の吸水性の高分子ポリマー等を用いることができる。
【0042】
(圧力の測定と異常の検知)
ここで、第1光検出器6が受光した光の強度(すなわち、第1増幅器8が出力する電気信号が示す光の強度)をP1、第2光検出器7が受光した光の強度(すなわち、第2増幅器9が出力する電気信号が示す光の強度)をP2とする。P1およびP2を用いて、演算処理部4が求める光強度比をF値とする。F値はF(P1,P2)=(P1−P2)/(P1+P2)として算出する。このF値を、あらかじめ校正されたテーブル等と比較することで、ダイアフラム14の位置での圧力および水深を特定することができる。
【0043】
図4は、反射板の位置と、光強度P1、P2、およびF値との関係の一例を示すグラフである。横軸は、出射用光ファイバ10(図1参照)の端面と反射板15の反射面との距離Dを表す。縦軸は、光強度P1、P2、およびF値を表す。出射用光ファイバ10の端面と反射板15の反射面との距離Dが小さいところにP1のピークがあり、そこから距離Dが大きくなるにつれてP1は減少し、代わりにP2が増大する。さらに距離Dが大きくなるとP2も減少していく。通常、圧力(つまり反射板の変位)の測定は、P1が減少し、P2が増大する領域、特にF値が略線形に変化する領域を用いて行う。
【0044】
なお、光源5の出力は常に一定とは限らず、外乱等に応じてある程度揺らぎ、また、経時劣化によって出力は徐々に低下する。そのため、光強度P1、P2は、光源5の出力に応じて変化してしまう。ここで、F値は、F(P1,P2)=((P1/P2)−1)/((P1/P2)+1)、と書き換えることができる。すなわち、F値は、P1とP2との比から求められる量である。また、出射用光ファイバ10から出射される光の強度をP0とすると、P1=a×P0,P2=b×P0、とおける(a、bは0または正の実数)。P1/P2=a/b、であるので、F値は出射用光ファイバ10から出射される光の強度P0には依存しない。そのため、光源5の出力が変化しても、また、損失変化部16により出射用光ファイバ10の伝送損失が変化した場合でも、F値は影響を受けず、光学式圧力センサ1は、圧力を正確に測定することができる。このように、上記F値以外にも、P1とP2との比から計算できる量を用いることで、出射用光ファイバ10から出射される光の強度P0の変化に影響を受けずに圧力を正確に測定することができる。
【0045】
ここで、センサヘッド2内に水分が浸入した場合、損失変化部16により、出射用光ファイバ10から出射される光の強度P0が小さくなり、各光検出器が受光する光の強度P1およびP2もそれぞれ小さくなる。よって、(P1+P2)の値が所定の範囲外になった場合、センサヘッド2の環境状態に異常が発生している(センサヘッド2に許容値以上の水分が浸入している)と判断できる。
【0046】
そこで、演算処理部4は、第1光検出器6が受光した光の強度P1と第2光検出器7が受光した光の強度P2との和を強度参照値とし、強度参照値(P1+P2)が所定の閾値未満になった場合、異常を検知したことを示す信号をアラーム発生部17に出力する。アラーム発生部17は、異常を検知したことを示す信号が入力されると、音、光、または表示等の報知手段により、異常を検知したことを報知する。
【0047】
なお、P1およびP2は、距離Dの変化によって比較的大きく変化するが、距離Dの変化に対する(P1+P2)の変化は、通常の測定に使われる領域(通常の測定における反射板15の変位の範囲)においては、緩やかでフラットに近い。そのため、この閾値は、光学式圧力センサ1の使用が想定される圧力範囲における(P1+P2)の値の下限から所定のマージンを取った値にあらかじめ定められる。この閾値の設定のマージンは、光源5の経時劣化および外乱による出力の変化を考慮して定めることが好ましい。
【0048】
従来の光学式圧力センサでも、センサヘッド内に水分が浸入して反射板に水滴が付着すること等により、P1およびP2が減少することがある。しかしながら、このような場合、P1およびP2が等しい比で減少するとは限らず、P1またはP2の減少を検知できるほどに水分が浸入した場合、F値が変化し圧力の測定にも影響を及ぼす可能性が高い。また、P1またはP2の減少を検知できるほどに水分が浸入する前に、光学式圧力センサ自体が故障することも考えられる。
【0049】
本実施の形態では、損失変化部16が、センサヘッド2内の少量の水分(環境状態の変化)に反応して出射用光ファイバ10の伝送損失を増加(変化)させる。それゆえ、演算処理部4が、出射用光ファイバ10から出射される光の強度P0に依存する強度参照値(P1+P2)を参照することで、圧力の正確な測定が可能なまま、センサヘッド2内の環境状態の変化を検知できる。よって、光学式圧力センサ1は、故障して圧力の測定が不可能になる前に、環境状態の変化を検知することで異常の兆候を捉え、利用者に報知することができる。
【0050】
なお、出射用光ファイバとしてマルチモードファイバを用いた場合、光強度変化部で加える曲げ・応力等によりモードが変化し、出射光の遠視野パターン(FFP:Far Field Pattern)が変化してしまうと、安定した測定を行うことが難しくなる。そのため、本実施の形態の光学式圧力センサ1の出射用光ファイバ10の少なくとも、損失変化部16を通過する部分から光ファイバ固定部13の出射端までは、シングルモードファイバであることが好ましい。この間の出射用光ファイバ10がシングルモードファイバであることにより、損失変化部16において曲げ等の応力が加わった場合でも、損失変化部16でモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)が変化せず、光ファイバ固定部13の出射端からの出射パターンを一定に保持することができ、精度の高い環境状態の感知をすることができる。なお、シングルモードになるか否かは使用する光の波長に依存するので、上記シングルモードファイバは、光源から出射される光を、シングルモードで伝送する光ファイバを指す。
【0051】
なお、演算処理部4がP1およびP2のいずれか一方を強度参照値として閾値と比較することで、環境状態の異常を検知してもよい。また、P1とP2との重みづけの和(c×P1+d×P2:c,dは正の実数)を閾値と比較することで、環境状態の異常を検知してもよい。第1受光用光ファイバ11より、出射用光ファイバ10から離れて配置される第2受光用光ファイバ12は、入射する光の強度のピークが、第1受光用光ファイバ11の場合より小さくなる(図4のP1、P2参照)。そのため、P2の重みを大きくしたP1とP2との和(例えば、(P1+2×P2))は、通常の測定に使われる領域において変化が小さくなり、定数に近くなる。光学式センサが測定する物理量の変化(反射板15の変位)に対する強度参照値(P1およびP2の重みづけの和)の変化が小さくなれば、許容範囲(閾値)の設定におけるマージンを小さくし、環境状態の異常をより高感度に検知することができる。
【0052】
また、演算処理部4は、例えば、通常状態における各F値に対応するP1の値をあらかじめ(光学式センサを校正した段階で)テーブルに記憶しておき、あるF値のときに測定されたP1と、あらかじめ記憶していた通常状態のP1とを比較することにより、環境状態の異常を検知してもよい。すなわち、F値に応じて変化する閾値を、強度参照値(P1、P2、またはその重みづけの和)との比較に用いてもよい。
【0053】
また、特定の液体または気体に応じて性質が変化(変形)する部材を用いて損失変化部を構成することにより、当該液体または気体の変動を検知する光学式センサを構成することもできる。
【0054】
また、反射板の変位から圧力を測定する代わりに、温度(または他の物理量)の変化によって反射板の位置が変化するセンサヘッドを構成して、反射板の変位を測定することにより温度(または他の物理量)を測定する光学式センサを構成することもできる。
【0055】
(損失変化部のその他の構成例)
図5は、損失変化部の他の構成例を示す断面図である。損失変化部22は、図1に示す損失変化部16の代わりに、あるいは、図1に示す損失変化部16と共に用いられる損失変化部であり、金属製の凸部材23aと、金属製の凹部材23bとを備える。凸部材23aに形成された凸部と、凹部材23bに形成された凹部とは、対向して配置されている。また、凸部材23aは、凸部が形成されている面の反対側の面に吸水性樹脂24aを備え、吸水性樹脂24aは、凸部材23aと接する面の反対側の面でセンサヘッドの筐体に固定されている。同様に、凹部材23bは、凹部が形成されている面の反対側の面に吸水性樹脂24bを備え、吸水性樹脂24bは、凹部材23bと接する面の反対側の面がセンサヘッドの筐体に固定されている。出射用光ファイバ10は、凸部材23aに形成された凸部と、凹部材23bに形成された凹部との間を通過するよう配置されている。
【0056】
センサヘッド内に水分が浸入した場合、損失変化部22の吸水性樹脂24a・24bが水分を吸収して膨張し、凸部材23aと凹部材23bとを接近させる。このとき、凸部材23aの凸部と凹部材23bの凹部とが、出射用光ファイバ10を挟むように圧迫して側圧を印加し、屈曲させる。これにより出射用光ファイバ10の曲率が部分的に変化し、出射用光ファイバ10の伝送損失が大きくなる。
【0057】
図6は、損失変化部のさらに他の構成例を示す断面図である。損失変化部25は、図1に示す損失変化部16の代わりに、あるいは、図1に示す損失変化部16と共に用いられる損失変化部であり、間隔を開けて対向して配置される金属製の2つの対向部材26を備える。2つの対向部材26は、対向する面に互いに噛み合う凹凸部を有し、凹凸部が形成されている面の反対側の面がセンサヘッドに固定されている。出射用光ファイバ10は、2つの対向部材26の凹凸部の間を通過するよう配置されている。
【0058】
損失変化部25は、センサヘッド内の温度に応じて出射用光ファイバ10の伝送損失を変化させるものである。温度が高くなると、金属製の2つの対向部材26が熱膨張し、対向する凹凸の間の出射用光ファイバ10を挟み込み、出射用光ファイバ10を凹凸に沿ってジグザグに屈曲させる。これにより出射用光ファイバ10の曲率および印加される側圧が部分的に変化し、出射用光ファイバ10の伝送損失が大きくなる。
【0059】
図7は、損失変化部のさらに他の構成例を示す平面図である。損失変化部27は、図1に示す損失変化部16の代わりに、あるいは、図1に示す損失変化部16と共に用いられる損失変化部であり、センサヘッドに固定された平板28と、固定用樹脂29とを備える。出射用光ファイバ10は、平板28の上端と下端の2つの固定点30・31で平板28に固定手段(金属、樹脂または接着剤等)により固定されている。また、出射用光ファイバ10は、屈曲させられた状態を保持するように、固定用樹脂29によって上端と下端の2つの固定点30・31の間で固定されている。出射用光ファイバ10は、固定用樹脂29によって、弾性エネルギーを蓄えた状態で固定されている。シート状の固定用樹脂29は、出射用光ファイバ10を上端の固定点30寄りの位置で平板28に貼り付けて固定している。
【0060】
固定用樹脂29は、周囲の湿度が高くなると水分を吸収し、接着力が低下する樹脂(例えばアクリル樹脂等)からなる。センサヘッド内に水分が浸入した場合、損失変化部27の固定用樹脂29の接着力が低下して固定用樹脂29が剥離し、屈曲した状態で固定されていた出射用光ファイバ10が解放される。これにより、出射用光ファイバ10の弾性エネルギーが解放され、出射用光ファイバ10の曲率が小さくなり、出射用光ファイバ10の伝送損失が小さくなる。この場合、演算処理部は、例えば強度参照値(P1+P2)が所定の閾値より大きくなった場合に、センサヘッド内に水分が浸入したと判断し、異常を検知したことを示す信号をアラーム発生部に出力する。
【0061】
なお、他の構成例として、環境状態の変化によって径が変化する円筒状の部材の円筒面に凹凸を設け、凹凸を有する円筒面に出射用光ファイバを巻き付けたものを、損失変化部として構成してもよい。これにより、環境状態の変化によって円筒状の部材の径が大きくなると、円筒状の部材の一部(円筒面に設けられた凸部)が、出射用光ファイバを圧迫して、屈曲させる。これにより、出射用光ファイバの曲率半径が大きくなり、曲げ損失が増加して、出射用光ファイバの伝送損失が増加する。
【0062】
図8は、損失変化部のさらに他の構成例を示す断面図である。損失変化部36は、図1に示す損失変化部16の代わりに、あるいは、図1に示す損失変化部16と共に用いられる損失変化部である。図8において、出射用光ファイバ10を伝送する光の光軸を破線で示す。センサヘッド内の損失変化部36において、出射用光ファイバ10は2つに分断(分離)され、分断された出射用光ファイバ10の2つの分断面は、微小な間隔を空けて対向するよう配置されている。なお、損失変化部36は、出射用光ファイバ10の2つの分断面の間に、感湿体(透過体)37を備える。感湿体37は、周囲の湿度に応じて色が変化する物質(例えば塩化コバルト等)を含み、光源から発せられる波長の光を通過させる。
【0063】
ここで、センサヘッド内の湿度が上昇した場合、感湿体37の色が変化することにより、感湿体37における光源から発せられる光に対する透過率が減少する。そのため、センサヘッド内の湿度の変化に応じて、損失変化部36を含めた出射用光ファイバ10の伝送損失が変化する。例えば、センサヘッド内の湿度が上昇した場合は、出射用光ファイバ10から出射される光の強度は小さくなる。
【0064】
また、損失変化部は、感湿体を備えない構成であってもよい。例えば出射用光ファイバが2つに分断された損失変化部を、水分の浸入が想定されるセンサヘッドから光ファイバケーブルが出ている付近に配置する。センサヘッド内に水分の浸入があった場合に、出射用光ファイバの対向する分断面の隙間に水滴が付着すると、出射用光ファイバの伝送損失が大きくなる。
【0065】
[実施の形態2]
本実施の形態では、2波長の光を用いて物理量の測定および異常の検知を行う構成について説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材・構成については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
(光学式圧力センサの構造)
図9は、本実施の形態の光学式圧力センサの構成を示す概略図である。光学式圧力センサ(光学式センサ)41は、センサヘッド42と、光学装置部3と、演算処理部(処理部)4と、アラーム発生部17とを備える。光学装置部3は、光源43と、第1光検出器6と、第2光検出器7と、第1増幅器8と、第2増幅器9とを備える。光源43は、2つの異なる波長の光を発する。
【0067】
センサヘッド42は、図1の例の損失変化部16の代わりに、図5に示す損失変化部(光強度変化部)22を備える。光源43から発せられた第1の波長の光と第2の波長の光とは、共に同じ経路を通り、センサヘッド42に到達し、損失変化部22を通過して、センサヘッド42から第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12によって光学装置部3の第1光検出器6および第2光検出器7まで伝送される。光源43から各光検出器6・7までの光の経路は実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
第1光検出器6および第2光検出器7は、第1受光用光ファイバ11および第2受光用光ファイバ12によって伝送された2つの波長の光を受光する。各光検出器6・7は、各波長の感受率に応じて、2つの波長の光の合計の強度を示す電気信号を生成する。第1光検出器6および第2光検出器7が生成した電気信号は、それぞれ第1増幅器8および第2増幅器9に出力される。
【0069】
第1増幅器8および第2増幅器9は、それぞれ入力された電気信号を増幅し、演算処理部4に出力する。演算処理部4は、各電気信号から圧力等の物理量を求める。
【0070】
(損失変化部の構成)
ここで、図5に示す損失変化部22は、センサヘッド内の湿度が上昇すると出射用光ファイバ10の曲率を変化させる。一般に、特定の波長の光に対する光ファイバの曲げ損失は、ある曲率から急激に大きくなる。そのため、1つの波長のみの光を用いて圧力の測定と環境状態の異常(光ファイバの曲率の変化)の検知とを両立させようとすると、閾値の設定が難しくなる。しかしながら、短波長の光は、長波長の光に比べて、光ファイバの曲げ損失の急激な増大が起こる曲率が比較的大きい(曲率半径が比較的小さい)。すなわち、長波長の光は、光ファイバの比較的小さい曲げによって伝送損失が急激に大きくなる。そのため、センサヘッド内の湿度が上昇すると、損失変化部22において2つの波長の光のうち、先に長波長の光に対する伝送損失が大きくなり、光検出器が長波長の光を検出できなくなったときでも、短波長の光を用いて物理量の測定を行うことができる。そして、長波長の光の強度の変化(減少)を検知することで、環境状態の異常を検知することができる。このように、センサヘッド内の環境状態の変化に応じて出射用光ファイバの曲率を変化させる構成は、2つの波長の光を用いて物理量の測定と環境状態の変化の検知を行う光学センサに好適に用いることができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、第1の波長は、第2の波長よりも短いとする。すなわち、センサヘッド内の湿度が上昇した場合の、出射用光ファイバ10から出射される第2の波長の光の強度の減少率は、第1の波長の光の強度の減少率に比べて大きい。
【0072】
(圧力の測定と異常の検知)
第1光検出器6が受光した光の強度(すなわち、第1増幅器8が出力する電気信号が示す光の強度)をP1、第2光検出器7が受光した光の強度(すなわち、第2増幅器9が出力する電気信号が示す光の強度)をP2とする。P1およびP2を用いて、演算処理部4が求める光強度比をF値とする。F値はF(P1,P2)=(P1−P2)/(P1+P2)として算出する。このF値を、あらかじめ校正されたテーブル等と比較することで、ダイアフラム14の位置での圧力および水深を特定することができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、各光検出器6・7の各波長の光に対する感受率は同じであり、また、P1における第1の波長の光の寄与と第2の波長の光の寄与の比と、P2における第1の波長の光の寄与と第2の波長の光の寄与の比とは、略等しい(すなわち、各波長の光に対する受光用光ファイバ11・12の伝送損失および反射板15の反射率等が等しい)。すなわち、出射用光ファイバ10から出射される第1の波長の光の強度をPa0、第2の波長の光の強度をPb0とすると、P1=a×(Pa0+Pb0),P2=b×(Pa0+Pb0)、とおける(a、bは0または正の実数)。これにより、P1およびP2の比(a/b)を用いて、圧力を測定することができる。
【0074】
また、センサヘッド42内の湿度が上昇した場合、Pa0よりも先にPb0が大きく減少する。このとき例えば、Pb0が急激に減少して光検出器6・7が第2の波長の成分を検出できなくなったとしても、Pa0はPb0ほどは変化しないので、第1の波長を利用して圧力の測定を継続することができる。また、参照強度(P1+P2)は、Pb0の減少と共に減少するので、演算処理部4は、参照強度(P1+P2)を閾値と比較することにより、環境状態の変化を検知することができる。
【0075】
本実施の形態では、2つの波長の光を用いることで、センサヘッド42の環境状態に異常が発生した場合でも、一方の波長の光を用いて圧力の正確な測定を継続しつつ、センサヘッド42の環境状態の異常を検知することができる。
【0076】
なお、第1光検出器6および第2光検出器7は、各波長毎に光の強度を示す電気信号を生成する構成であってもよい。すなわち、第1光検出器6は、受光した第1の波長の光の強度を示す第1の電気信号と、受光した第2の波長の光の強度を示す第2の電気信号とを生成し、第2光検出器7は、受光した第1の波長の光の強度を示す第3の電気信号と、受光した第2の波長の光の強度を示す第4の電気信号とを生成する。
【0077】
この場合、演算処理部4は、第1の波長の光に対応する第1の電気信号と第3の電気信号とを用いて圧力等の物理量を求める。圧力の求め方は、実施の形態1と同様である。一方、演算処理部4は、第2の波長の光に対応する第2の電気信号と第4の電気信号とを用いて、センサヘッド42内の湿度の変化を検知する。
【0078】
第1の波長の光の強度は、第2の波長の光の強度に比べて、センサヘッド42内の湿度の変化による変化が小さい。そのため、センサヘッド42内の湿度が上昇した場合でも、正確に圧力の測定を行うことができる。一方、第2の波長の光の強度は、第1の波長の光の強度に比べて、センサヘッド42内の湿度の変化に応じて、大きく変化する。そのため、センサヘッド42内の湿度が上昇した場合、第2の波長の光に対する出射用光ファイバ10の伝送損失が大きくなり、第2の波長の光は減衰する。第1光検出器6が受光した第2の波長の光の強度(第2の電気信号が示す光の強度)と、第2光検出器7が受光した第2の波長の光の強度(第4の電気信号が示す光の強度)とを用いて、実施の形態1と同様の方法で閾値と比較することにより、センサヘッド42内の湿度の変化を検知することができる。
【0079】
上記の構成では、物理量の測定用に第1の波長の光のみを利用し、環境状態の変化の検知用に第2の波長の光のみを利用するので、センサヘッド42内に環境状態の変化があった場合でも、第1の波長の光を用いて正確に物理量を測定し続けることができる。
【0080】
(損失変化部のその他の構成例)
また、図8に示す出射用光ファイバの経路中に感湿体37を備える構成を、図9に示す損失変化部22の代わりに用いてもよい。この場合、感湿体37は、2つの波長の光を通過させ、センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、第1の波長の光または第2の波長の光に対する透過率が変化する構成であればよい。なお、感湿体37は、環境状態に応じて、第1の波長および第2の波長の両方の透過率が変化する構成であってもよい。
【0081】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、光学式センサ、および光学式センサに用いるセンサヘッドに利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1、41 光学式圧力センサ(光学式センサ)
2、42 センサヘッド
3 光学装置部
4 演算処理部(処理部)
5、43 光源
6 第1光検出器
7 第2光検出器
8 第1増幅器
9 第2増幅器
10 出射用光ファイバ
11 第1受光用光ファイバ
12 第2受光用光ファイバ
13 固定部
14 ダイアフラム
15 反射板(反射体)
16、22、25、27、36 損失変化部(光強度変化部)
17 アラーム発生部
20 容器
21、24a、24b 吸水性樹脂
23a 凸部材
23b 凹部材
26 対向部材
28 平板
29 固定用樹脂
37 感湿体(透過体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発せられた光を伝送する第1光ファイバと、第1光ファイバの端面に対する相対位置が物理量に応じて変位し、第1光ファイバの上記端面から出射された光を反射する反射体と、上記反射体が反射した光が入射される端面を有し、入射した光をそれぞれ光検出器に伝送する第2光ファイバおよび第3光ファイバとを備える、上記物理量を測定する光学式センサ用のセンサヘッドであって、
上記センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、第1光ファイバの伝送損失を変化させる光強度変化部を備えることを特徴とするセンサヘッド。
【請求項2】
上記光強度変化部は、上記センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、第1光ファイバの曲率を変化させる、第1光ファイバに加わる側圧を変化させる、または、第1光ファイバに加わる張力を変化させることにより、第1光ファイバの伝送損失を変化させることを特徴とする請求項1に記載のセンサヘッド。
【請求項3】
第1光ファイバは、上記光強度変化部において分離されており、
第1光ファイバの分離された端面同士は、間隔を空けて対向するよう配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサヘッド。
【請求項4】
上記光強度変化部は、第1光ファイバの上記分離された端面の間に配置される透過体を備え、
上記透過体は、上記センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、特定波長の光に対する透過率が変化することを特徴とする請求項3に記載のセンサヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサヘッドを備える光学式センサであって、
光源と、
上記センサヘッドから第2光ファイバが伝送する光を受光して、受光した光の強度を示す電気信号を生成する第1光検出器と、
上記センサヘッドから第3光ファイバが伝送する光を受光して、受光した光の強度を示す電気信号を生成する第2光検出器と、
第1光検出器が生成した電気信号が示す光の強度と第2光検出器が生成した電気信号が示す光の強度との比を用いて上記物理量を求め、第1光検出器が生成した電気信号が示す光の強度と第2光検出器が生成した電気信号が示す光の強度との和、または重みづけの和を用いて、あるいは、第1光検出器が生成した電気信号が示す光の強度または第2光検出器が生成した電気信号が示す光の強度を用いて、上記センサヘッド内の環境状態の変化を検知する処理部とを備えることを特徴とする光学式センサ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサヘッドを備える光学式センサであって、
第1の波長の光、および、第2の波長の光を出射する光源を備え、
上記光強度変化部は、上記センサヘッド内の環境状態の変化に応じて、一方の波長の光に対する第1光ファイバの伝送損失を変化させることを特徴とする光学式センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−37388(P2012−37388A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177932(P2010−177932)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】