センサ付き転がり軸受装置
【課題】ABSセンサの配置スペースが小さくて、コンパクトで安価なセンサ付き転がり軸受装置を提供すること。
【解決手段】ABSセンサを、基板70と、基板70の一方の側の第1面75上に、第1軌道部材を全周に亘って取り巻くように配置される第1コイル71と、第1面75上に第1軌道部材を取り巻かないように配置される第2コイル72とで構成する。スリンガ51の円筒部77における第1コイル71に径方向に対向する部分に、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分81と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ51の円筒部77の周方向に交互に配置してなる被回転速度検出部を形成する。
【解決手段】ABSセンサを、基板70と、基板70の一方の側の第1面75上に、第1軌道部材を全周に亘って取り巻くように配置される第1コイル71と、第1面75上に第1軌道部材を取り巻かないように配置される第2コイル72とで構成する。スリンガ51の円筒部77における第1コイル71に径方向に対向する部分に、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分81と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ51の円筒部77の周方向に交互に配置してなる被回転速度検出部を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサと、軌道部材とを備えるセンサ付き転がり軸受装置に関し、例えば、変位センサを有する車輪用転がり軸受装置(ハブユニット)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪用転がり軸受装置としては、特開2007−127253号公報(特許文献1)に記載されているものがある。
【0003】
この車輪用転がり軸受装置は、インダクタンス型の変位センサを、軸方向に2列に配置し、車輪用転がり軸受装置の3つの並進荷重と、2つのモーメント荷重とを算出するようになっている。
【0004】
上記従来の車輪用転がり軸受装置では、上記インダクタンス型の変位センサを、軸方向に2列に配置しなくてはいけなくて、上記インダクタンス型の変位センサの配置スペースが大きいから、車輪用転がり軸受装置の小型化を行いにくい。
【0005】
特に、車輪用転がり軸受装置が、駆動輪用の車輪用転がり軸受装置である場合には、変位センサの配置スペースの確保が難しく、変位センサを、現在では装備が当たり前になっているABSセンサの配置空間に配置しなければならないから、従来の配置スペースが大きい変位センサでは、変位センサの配置が、ABSセンサの配置に影響を及ぼし好ましくない。
【特許文献1】特開2007−127253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、ABSセンサの配置スペースが小さくて、コンパクトで安価なセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
【0007】
また、特に、ABSセンサおよび変位センサを、容易に配置でき、かつ、コンパクトで安価なセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
【0008】
また、特に、回転速度、かつ、3つの並進荷重および2つのモーメント荷重を算出でき、かつ、コンパクトかつ安価な車輪用転がり軸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明のセンサ付き転がり軸受装置は、
外周面に軌道面を有する第1軌道部材と、
内周面に軌道面を有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置される複数の転動体と、
上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第1基板と、
上記第1基板の一方の側の第1面上に、上記第1軌道部材を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第1コイルと、
上記第1面上に配置された平面状の第2コイルと
を備え、
上記第1面において上記第2コイルが囲んでいる部分は、上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置し、
上記第1コイルの上記径方向の内方側で、かつ、上記第1コイルに上記径方向に対向する箇所に、上記第1軌道部材の周方向に延在する環状の被回転速度検出部を有し、
上記回転速度検出部の構造に基づく上記第1コイルが生成する磁場の変動を上記第2コイルで検出し、上記第2コイルが出力した信号に基づいて、上記第2軌道部材に対する上記第1軌道部材の回転速度を検出する回転速度検出部を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、ABSセンサ(この明細書では、ABSセンサを、回転速度を検出するセンサとして定義する)を、基板の一面に配置されたコイルで構成するから、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板の厚さ程度まで小さくできて、ABSセンサの軸方向の寸法を、従来使用されているパルサリングを使用するABSセンサ等と比較して、急激に小さくできる。
【0011】
また、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板の厚さ程度まで小さくできるから、ABSセンサの配置スペースに変位センサを容易に配置できる。
【0012】
また、本発明によれば、例えば、ABSセンサを、ガラス基板と、ガラス基板にプリントされた配線とで構成することができるから、ABSセンサとして、比較的高価なパルサリングを使用しているABSセンサ等を使用している従来のセンサ付き転がり軸受装置と比較して、ABSセンサの製造コストを急激に小さくすることができる。したがって、従来のセンサ付き転がり軸受装置を比較して、製造コストが小さくなる。
【0013】
また、一実施形態では、
上記第1基板は、上記第2軌道部材の径方向に略平行に配置され、
上記第1基板の上記第1面に略平行な面を有すると共に、上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第2基板と、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記第2基板の上記貫通穴よりも径方向の外方に位置している。
【0014】
上記実施形態によれば、上記第1コイルおよび第2コイルの組に対して軸方向に間隔をおいて、第3コイルおよび第4コイルの組を形成している。ここで、第3コイルおよび第4コイルの組は、実施形態で説明するようにギャップセンサとして機能させることができる。したがって、上記実施形態によれば、回転速度を検出できると共に、径方向の変位を測定できる。
【0015】
また、一実施形態では、
上記第1基板の他方の側の第2面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置している。
【0016】
上記実施形態によれば、上記第1コイルおよび第2コイルの組に対して軸方向に間隔をおいて、第3コイルおよび第4コイルの組を形成している。ここで、第3コイルおよび第4コイルの組は、実施形態で説明するようにギャップセンサとして機能させることができる。したがって、上記実施形態によれば、回転速度を検出できると共に、径方向の変位を測定できる。
【0017】
また、一実施形態では、
上記第1基板は、上記第2軌道部材の径方向に略平行に配置され、
上記第1基板の上記第1面に略平行な面を有すると共に、上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第2基板と、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記第2基板の上記貫通穴よりも径方向の外方に位置し、
上記第1基板の他方の側の第2面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第5コイルと、
上記第2面上に配置された平面状の第6コイルと
を備え、
上記第2面において上記第6コイルが囲んでいる部分は、上記第1基板の上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置している。
【0018】
上記実施形態によれば、回転速度を検出するのに使用する第1および第2コイル以外に、第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように形成されるコイルと、そのコイルと同じ基板の面に配置されると共に、コイルが囲んでいる部分が、基板の貫通穴よりも径方向の外方に位置しているコイルとの組が、軸方向に2列に配置されているから、回転速度の他に、転がり軸受に作用しているモーメント荷重を検出できる。
【0019】
また、一実施形態では、
上記第1軌道部材と上記第2軌道部材との間をシールするシール装置を備え、
上記第1基板は、上記シール装置に固定されている。
【0020】
上記実施形態によれば、ABSセンサを、シール装置に一体に配置できるから、センサ付き転がり軸受装置が、よりコンコンパクトになる。また、例えば、センサ付き転がり軸受装置が、駆動輪用の車輪用転がり軸受装置である場合、ABSセンサを、等速ジョイントに近接するシール装置に固定できるから、センサ付き転がり軸受装置が、センサの配置スペースが小さい駆動輪用の車輪用転がり軸受装置であっても、ABSセンサを容易に配置できる。
【0021】
また、一実施形態では、
上記シール装置は、金属製の芯金部と、上記芯金部に固着されたゴム製の弾性部とを有し、
上記第1基板は、上記弾性部に固定されている。
【0022】
上記実施形態によれば、上記第1基板は、ゴム製の上記弾性部に固定されるから、上記弾性部をクッションとして機能させることができて、第1基板の破損を防止しながら、第1基板を確実に固定することができる。
【0023】
また、上記実施形態によれば、第1基板が絶縁素材であるゴムの部材に固定されるから、回転速度信号を確実に検出できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、ABSセンサを、基板の一面に配置されたコイルで構成するから、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板の厚さ程度まで小さくできて、ABSセンサの軸方向の寸法を、従来使用されているパルサリングを使用するABSセンサ等と比較して、急激に小さくできる。また、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板の厚さ程度まで小さくできるから、ABSセンサの配置スペースに変位センサを容易に配置できる。
【0025】
また、本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、例えば、ABSセンサを、ガラス基板と、ガラス基板にプリントされた配線とで構成することができるから、ABSセンサとして、比較的高価なパルサリングを使用しているABSセンサ等を使用する従来のセンサ付き転がり軸受装置と比較して、ABSセンサの製造コストを急激に小さくすることができる。したがって、従来のセンサ付き転がり軸受装置を比較して、製造コストが小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明のセンサ付き転がり軸受装置の第1実施形態である駆動輪用ハブユニットの軸方向の断面図である。
【0028】
このハブユニットは、駆動輪用ハブ(以下単に、ハブという)1、内輪2、外輪3、転動体としての複数の第1の玉4、転動体としての複数の第2の玉5、および、シール装置の一例としてのパックシール10を備える。上記ハブ1および内輪2は、第1軌道部材を構成し、外輪3は、第2軌道部材を構成している。
【0029】
上記ハブ1は、筒部材で、内周面の一部に雌スプラインを有し、この雌スプラインは、等速ジョイント31のスプライン軸15にスプライン嵌合している。上記ハブ1は、小径軸部19と、大径軸部20とを有している。上記大径軸部20は、小径軸部19に段部18を介して連なると共に、小径軸部19の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部20の外周面は、軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝を有している。この軌道溝の外径は、小径軸部19から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0030】
上記ハブ1は、軸方向の大径軸部20側の端部に、ロータ(あるいは車輪)(図示せず)を取り付けるためのロータ取付用のフランジ(あるいは車輪取付用のフランジ)22を有している。
【0031】
上記内輪2は、ハブ1の小径軸部19の外周面に外嵌されて固定されている。上記内輪2の軸方向の大径軸部20側の端面は、上記段部18に当接している。上記内輪2は、その外周面の大径軸部20側に軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝を有している。この軌道溝の外径は、大径軸部20から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0032】
上記外輪3は、内軸1の小径軸部19および大径軸部20の径方向の外方に位置している。上記外輪3の内周面は、軌道面としてのアンギュラ型の第1軌道溝と、軌道面としてのアンギュラ型の第2軌道溝とを有している。上記第1軌道溝は、内輪2の軌道溝に径方向に対向し、上記第2軌道溝は、ハブ1の軌道溝に径方向に対向している。
【0033】
上記複数の第1の玉4は、内輪2の軌道溝と、外輪3の第1軌道溝との間に、保持器によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。また、上記複数の第2の玉5は、ハブ1の軌道溝と、外輪3の第2軌道溝との間に、保持器によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0034】
上記パックシール10は、内輪2と、外輪3との間をシールしている。尚、詳述しないが、図1において、30は、ナックルを示している。
【0035】
図2は、上記パックシール10の近傍の軸方向の拡大断面図である。
【0036】
上記パックシール10は、環状のシール部材50と、環状のスリンガ51とを有し、シール部材50は、SUS304L等の非磁性体の金属製の芯金部53と、弾性部54とを有している。上記芯金部53は、略筒状の筒部86と、径方向延在部87とを有し、筒部86は、外輪3に弾性部材80を介して固定されている一方、径方向延在部87は、筒部86の軸方向の玉4,5側の端部から径方向の内方に延在している。また、上記弾性部54は、芯金部53の表面に固着されている。
【0037】
一方、上記スリンガ51は、内輪2(図1参照)の外周面に締まり嵌めで外嵌されて固定されている。上記スリンガ51は、磁性体(例えば、SUS430)からなっている。上記スリンガ51は、内輪2に固定された円筒部77と、フランジ部78とを有し、フランジ部78は、円筒部77の軸方向の玉4,5側とは反対側の端部から径方向の外方に延在している。
【0038】
図2に示すように、上記弾性部54は、ブロック状の基部59、アキシアルリップ60、第1ラジアルリップ61、および、第2ラジアルリップ62を有し、基部59は、芯金部53に固着されている。上記基部59の軸方向の玉4,5側の面(以下、基板取付面という)83は、径方向に広がり、平面形状を有している。上記アキシアルリップ60は、フランジ部78に摺動する一方、第1および第2ラジアルリップ61,62は、円筒部77の外周面に摺動するようになっている。
【0039】
上記基板取付面83には、厚さが数mm程度の平板状の基板70が、接着剤で固着されている。上記基板70は、ガラス布基材エポキシ樹脂からなっている。上記基板70は、環状であり、径方向に延在している。上記基板70の基板取付面83側とは反対側の面(第1基板の一方の側の面に相当)75には、平面状の第1コイル71と、平面状の第2コイル72とが、パターン形成されている。
【0040】
上記スリンガ51の円筒部77における第1コイル71に径方向に対向する部分は、被回転速度検出部になっている。この被回転速度検出部は、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分81と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ51の円筒部77の周方向に交互に配置してなっている。
【0041】
図3は、上記スリンガ51、基板70、第1コイル71および第2コイル72の位置関係を示す模式図である。
【0042】
図3に示すように、上記スリンガ51は、環状の基板70の貫通穴89を貫通している(このことおよび図1から明らかなように、第1軌道部材も、貫通穴89を貫通している)。上記第1コイル71は、第1軌道部材(ハブ1および内輪2からなる)を全周に亘って取り巻くように基板70の一方の面75に形成されている。一方、第2コイル72は、第1コイル71に接触しないように、上記一方の面75に接触渦巻状に形成されている。上記第2コイル72は、上記第1軌道部材を取り巻かないように配置されている。上記基板70の上記一方の面75において第2コイル72が囲んでいる部分は、環状の基板70の貫通穴89よりも、基板70の径方向の外方に位置している。
【0043】
上記第2コイル72は、4つ存在し、4つの第2コイル72は、周方向に等間隔に配置されている。発振器90で、例えば、100KHzから10MHzまでの高周波電流が生成され、この高周波電流が、ケーブル91を介して第1コイル71に流れ込むようになっている。
【0044】
上記スリンガ51は、磁性体からなっているから、第1コイル71で生成された磁束が、スリンガ51を通過するようになっている。したがって、上記スリンガ51に荷重が作用して、スリンガ51が、ある第2コイル72に近づくと、第1コイル71が生成する高周波の磁場に基づいてその第2コイル72に発生する誘導起電力が大きくなる一方、スリンガ51に荷重が作用して、スリンガ51が、ある第2コイル72から遠ざかると、第1コイル71が生成する高周波の磁場に基づいて第2コイル72に発生する誘導起電力が小さくなる。
【0045】
したがって、上記スリンガ51が同一の磁性体で形成されている場合には、各第2コイル72が生成する誘導起電力を測定すれば、各第2コイル72とスリンガ51との距離を測定できる。
【0046】
また、上記第1実施形態のように、上記第1コイル71に径方向に対向するスリンガ51の部分が、周方向に交互に位置し、かつ、互いに透磁率が異なる二つの部分(第1部分81および第2部分)で形成されている場合、または、周方向に歯車状に凹凸が繰り返されている場合には、第2コイル72が生成する誘導起電力が、基板70に対するスリンガ51の相対回転速度(第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度)に依存する周期性を有する誘導起電力になり、この周期を検出することによって、第1軌道部材に対する第2軌道部材の回転速度を検出できる。
【0047】
第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、このように、各第2コイル72を、磁束密度の偏り(スリンガ(第1軌道部材)の偏り)を測定するABSセンサ(回転速度検出センサ)として使用し、第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度を検出するようになっている。
【0048】
再度、図2を参照して、各第2コイル72で発生する起電力は、信号線38を介して図示しない信号処理部に出力されている。この信号処理部では、4つの第2コイル72からの出力信号に基づいて、第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度を検出するようになっている。上記信号処理部は、回転速度検出部を構成している。尚、上記信号線38は、弾性部80によって防水されている。
【0049】
上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、ABSセンサを、基板70の一面に配置されたコイル71,72で構成するから、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板70の厚さ程度(一般的には数mm程度)まで小さくできて、ABSセンサの軸方向の寸法を、従来型のセンサと比較して、急激に小さくできる。したがって、センサ付き転がり軸受装置の配置スペースを小さくできる。また、変位センサを配置する場合において、ABSセンサおよび変位センサの両方を、如何なる障害もなく、容易に配置できる。
【0050】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、ABSセンサの本体部が、安価なガラス布基材エポキシ樹脂製の基板70と、その基板70にプリントされた配線とで構成されているから、ABSセンサの製造コストを急激に小さくすることができて、従来のセンサ付き転がり軸受装置を比較して、製造コストが小さくなる。
【0051】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、ABSセンサの本体部が、シール装置としてのパックシール10に一体に配置されているから、センサ付き転がり軸受装置が、よりコンコンパクトになる。そして、特に、第1実施形態では、センサ付き転がり軸受装置が、駆動輪用の車輪用転がり軸受装置であって、ABSセンサの本体(基板70、第1および第2コイル71,72で構成される)が、等速ジョイントのジョイント部に近接するパックシール10に固定されているから、センサ付き転がり軸受装置が、ABSセンサの配置スペースが小さい駆動輪用の車輪用転がり軸受装置であっても、ABSセンサ設置後のABSセンサ配置スペースに容易に変位センサを配置することができる。
【0052】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、上記基板70が、ゴム製の弾性部54に固定されているから、弾性部54をクッションとして機能させることができて、基板70の破損を防止しながら、基板70を確実に固定することができる。
【0053】
また、上記第1実施形態によれば、基板70が絶縁素材であるゴムの部材に固定されるから、ABSセンサが出力する変位信号が、劣化することがない。
【0054】
尚、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受では、第1コイル71を、スリンガ51の円筒部77に対向させて、第1コイル71に対向するスリンガ51の円筒部77の一部分に、周方向に交互に互いに透磁率が違う第1部分81および第2部分を配置したが、この発明では、第1コイルを、第1軌道部材の外周面に対向させて、第1コイルに対向する第1軌道部材の一部分に、周方向に交互に互いに透磁率が違う第1部分および第2部分を配置しても良い。すなわち、この発明では、被回転速度検出部を、スリンガでなくて、第1軌道部材の一部に形成しても良い。
【0055】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1コイル71が第2コイル72に間隔をおいて配置されていたが、この発明では、第1コイルと第2コイルとは、接触していても良い。要は、第1コイルは、環状の基板の穴を取り囲むように配置され、第2コイルが、環状の基板の穴を取り囲まないように配置されていれば良い。
【0056】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第2コイル72の数が4つであったが、この発明では、第2コイルの数は、4以外の如何なる数(1以上3以下、または、5以上)であっても良い。
【0057】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、被回転速度検出部を、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分81と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ51の円筒部77の周方向に交互に配置して構成した。
【0058】
しかしながら、この発明では、被回転速度検出部を、歯車状に凹凸を周方向に交互に繰り返すことにより形成しても良い。この場合においても、第2コイルに凹部が接近している際に、第2コイルが生成する誘導起電力と、第2コイルに凸部が接近している際に、第2コイルが生成する誘導起電力とに差が生じ、第2コイルが生成する誘導起電力に基づいて、第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度を検出することができるからである。
【0059】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、基板70をパックシール10に固定したが、この発明では、基板を、パックシール以外のシール装置、例えば、スリンガを有さない芯金部と弾性部とを有するシール装置に固定しても良い。また、本発明では、以下に説明する後述の実施形態のように、基板を、シール装置以外の部分に固定しても良い。
【0060】
図4は、第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図であり、第2実施形態のパックシール10の周辺の軸方向の断面図である。
【0061】
第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、基板170と、スリンガ151の構造のみが第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる。
【0062】
第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0063】
第2実施形態では、基板170の軸方向の芯金部53側とは反対側の一方の表面175に、平面状の第1コイル171と、4つの平面状の第2コイル172を形成する一方、基板170の軸方向の他方の表面185に、平面状の第3コイル181と、4つの平面状の第4コイル182を形成している。上記他方の表面185は、パックシール10の弾性部54の基板取付面83に接着剤や樹脂モールド等で固着されている。
【0064】
上記第1コイル171および第2コイル181は、第1軌道部材(ハブ1および内輪2からなる)を全周に亘って取り巻くように形成されている。上記第1コイル171および第2コイル181は、第1実施形態のように、高周波電流が付与されて、高周波磁場を生成するようになっている。
【0065】
上記第2コイル172は、基板170の第1コイル171よりも径方向の外方に、第1コイル171に接触しないように、渦巻状に形成されている(図3参照)。上記第2コイル172は、第1軌道部材(ハブ1および内輪2からなる)を取り巻かないように配置されている。上記第2コイル172は、4つ存在し、4つの第2コイル172は、周方向に等間隔に配置されている。
【0066】
また、上記第4コイル182は、基板170の第3コイル181よりも径方向の外方に、第3コイル181に接触しないように、渦巻状に形成されている(図3参照)。上記第4コイル182は、第1軌道部材(ハブ1および内輪2からなる)を取り巻かないように配置されている。上記第4コイル182は、4つ存在し、4つの第4コイル182は、周方向に等間隔に配置されている。
【0067】
上記第1コイル171と第3コイル181は、基板170の法線方向に略重なり、第2コイル172と第4コイル182は、基板170の法線方向に略重なっている。各第2コイル172が生成する誘導起電力は、信号線を介して信号処理部に出力され、巻く第4コイル182が生成する誘導起電力は、信号線を介して信号処理部に出力されるようになっている。
【0068】
上記スリンガ151の円筒部177における第1コイル171に径方向に対向する部分には、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分187と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とが、スリンガ151の円筒部177の周方向に交互に配置されている。
【0069】
上記スリンガ151の円筒部177における第1コイル171に径方向に対向する部分は、被回転速度検出部になっている。この被回転速度検出部は、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分187と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ151の円筒部177の周方向に交互に配置してなっている。
【0070】
上記第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、回転速度を検出できると共に、第1軌道部材に対する第2軌道部材の径方向の変位を測定できる。
【0071】
尚、上記第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、パックシール10に固定されない方の基板70の面に配置された第1コイル171に径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成する一方、パックシール10に固定される方の基板70の面に配置された第3コイル181に径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しなかった。
【0072】
しかしながら、この発明では、パックシールに固定されない方の基板の面に配置された第1コイルに径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しない一方、パックシールに固定される方の基板の面に配置された第3コイルに径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しても良く、基板のパックシール側の表面に形成されるコイルを、回転速度検出用のコイルとして使用し、基板のパックシール側とは反対側の表面に形成されるコイルを、変位検出用のコイルとして使用しても良い。
【0073】
また、上記第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第3コイル181をスリンガ151に対向させて、基板170と、スリンガ151との距離を測定したが、この発明では、第3コイルを第1軌道部材に対向させて、基板とスリンガとの径方向の距離ではなく、基板と第1軌道部材との径方向の距離を測定しても良い。
【0074】
図5は、本発明の第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図であり、第3実施形態のパックシール10の周辺の軸方向の断面図である。
【0075】
第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、複数の基板270,271が存在する点と、スリンガ251の構造のみが、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる。
【0076】
第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1〜2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1〜2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0077】
図5に示すように、第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、ガラス布基材エポキシ樹脂からなる第1基板270およびガラス布基材エポキシ樹脂からなる第2基板277を備えている。上記第1基板270は、第2基板277のパックシール10側とは反対側に位置している。上記第1基板270の第2基板277側とは反対側の一方の側の面には、平面状の第1コイル271と4つの平面状の第2コイル272とが配置されている。
【0078】
上記第2基板277は、第1基板270と同一な基板であり、第1基板270と略平行に配置されている。上記第2基板277の一方の側の面は、弾性部54の基板取付面83に固着されている。また、上記第2基板277の他方の側の面には、平面状の第3コイル281と4つの平面状の第4コイル282とが配置されている。
【0079】
上記第1基板270の他方の側の面は、第1基板270の一方の側の面に固着されている。
【0080】
上記第1コイル271と、4つの第2コイル272との位置関係は、図3における第1コイル71と、4つの第2コイル72との関係と同一であり、第3コイル281と、4つの第4コイル282との位置関係は、図3における第1コイル71と、4つの第2コイル72との関係と同一である。
【0081】
上記第1コイル271と第3コイル281は、基板270の法線方向に略重なり、第2コイル272と第4コイル282は、基板170の法線方向に略重なっている。
【0082】
上記スリンガ251の円筒部277における第1コイル271に径方向に対向する部分は、被回転速度検出部になっている。この被回転速度検出部は、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分287と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ251の円筒部277の周方向に交互に配置してなっている。
【0083】
第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置との比較において、基板の数が1枚から2枚に増加した点のみが、本質的に異なり、それ以外の点は、第2実施形態のセンサ付き転がり軸受と同一である。
【0084】
尚、上記第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、パックシール10に固定されない方の第1基板270の面に配置された第1コイル171に径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成する一方、パックシール10に固定される方の第2基板270の面に配置された第3コイル181に径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しなかった。
【0085】
しかしながら、この発明では、パックシールに固定されない方の第1基板の面に配置された第1コイルに径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しない一方、パックシールに固定される方の第2基板の面に配置された第3コイルに径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しても良い。
【0086】
図6は、本発明の第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図であり、第4実施形態のパックシール10の周辺の軸方向の断面図である。
【0087】
第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、2組のコイルからなるセンサを軸方向に2列ではなくて3列に配置し、以下に説明するように、3つのセンサのうちの2つのセンサで、5つの荷重を検出すると共に、残りの1つのセンサで、回転速度を検出する点が、第1〜3の実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる。
【0088】
第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1〜3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1〜3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0089】
第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、ガラス布基材エポキシ樹脂からなる第1基板370およびガラス布基材エポキシ樹脂からなる第2基板377を備え、第1基板370の一方の側の面は、弾性部54の基板取付面83に固着されている。上記第1基板270の他方の側の面に、平面状の第1コイル371と4つの平面状の第2コイル372とを配置している一方、第1基板270の一方の側の面に、平面状の第3コイル381と4つの平面状の第4コイル382とを配置している。
【0090】
上記第2基板377は、第1基板370と同一な基板であり、第1基板370と略平行に配置されている。上記第2基板377の一方の側の面は、第1基板370の他方の側の面に固着されている。上記第2基板377の他方の側の面には、平面状の第5コイル391と4つの平面状の第6コイル392とが配置されている。
【0091】
上記第1コイル371と、4つの第2コイル372との位置関係、第3コイル381と、4つの第4コイル382との位置関係は、および、第5コイル391と、4つの第6コイル392との位置関係は、図3における第1コイル71と、4つの第2コイル72との関係と同一である。
【0092】
上記第1コイル371、第3コイル381および第5コイル391は、基板370の法線方向に略重なり、第2コイル372、第4コイル382および第6コイル392は、基板370の法線方向に略重なっている。
【0093】
上記スリンガ351の円筒部376における第1コイル371に径方向に対向する部分は、被回転速度検出部になっている。この被回転速度検出部は、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分313と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ351の円筒部376の周方向に交互に配置してなっている。
【0094】
また、上記スリンガ351の筒状部376の外周面において第3コイル381に径方向に対向する部分は、周方向に延在する第1環状溝311を有し、スリンガ351の筒状部376の外周面において第5コイル391に径方向に対向する部分は、周方向に延在する第2環状溝312を有している。
【0095】
上記第1環状溝311および第2環状溝312は、同一の形状であり、軸方向に互いに間隔をおいて配置されている。第1環状溝311および第2環状溝312は、軸方向の断面において、断面矩形の形状を有している。
【0096】
図6に示すように、第1軌道部材および第2軌道部材に如何なる荷重も作用していない状態で、第1環状溝311は、第1基板370のパックシール10側の表面の延長面によって略垂直に二等分され、第2環状溝312は、第2基板377の第1基板370側とは反対側の表面の延長面によって略垂直に二等分されている。
【0097】
上記構成において、第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、上述のように、第1コイル371、第2コイル372および被回転速度検出部で、第1軌道部材に対する第2軌道部材の回転速度を検出する。
【0098】
また、第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、次のようにして、5つの荷重を検出するようになっている。
【0099】
すなわち、センサ付き転がり軸受装置に軸方向の荷重が作用して、スリンガ351が、図6に矢印Aで示す方向に変位すると、第1および第2基板370,377に対する第1環状溝311および第2環状溝312との相対位置が変位し、これに伴って磁場が変動し、第4および第6コイル382,392が検出する誘導起電力も変化する。第4実施形態では、この誘導起電力の変化に基づいて、軸方向の変位を検出し、軸方向に作用している荷重を検出するようになっている。
【0100】
また、センサ付き転がり軸受装置にモーメント荷重が作用して、スリンガ135の円筒部376が、図6に示す位置から図6に矢印Bで示す方向に傾いた場合には、第1基板370とスリンガ351の円筒部376との距離と、第2基板377とスリンガ351の円筒部376との距離が異なる値となり、これに伴って、第4コイル382が検出する誘導起電力と、第6コイル392が検出する誘導起電力との間に差が生成する。第4実施形態では、この誘導起電力の差に基づいて、モーメント荷重を検出するようになっている。
【0101】
例えば、第4実施形態の場合において、4つの第4コイル382および4つの第6コイル392からの信号を受けた信号処理部(図示せず、回転速度検出部を含む)が、次に示す演算を行って、車輪に作用する各方向のモーメント荷重及び並進荷重を、算出しても良い。
【0102】
図7は、方向について説明する図である。
【0103】
図7に示すように、第4実施形態では、車輪の前後水平方向をx軸方向、車輪の左右水平方向(軸方向)をy軸方向、車輪の上下方向をz軸方向と定義する。
【0104】
また、インナ側(車両の中心側)の第4コイル382t,382b,382f,382rの変位検出値に、添え字「i」を使用し、アウタ側(車輪側)の第6コイル392t,392b,392f,392rに添え字「o」を使用する。また、4つの第4コイル382を、第1基板370において、車両の前側、後側、上側および下側に配置すると共に、4つの第6コイル392を、第2基板377において、車両の前側、後側、上側および下側に配置し、前側のセンサの変位検出値を「f(front)」と定義し、後側のセンサの変位検出値を「r(rear)」と定義し、上側のセンサの変位検出値を「t(top)」と定義し、下側のセンサの変位検出値を「b(bottom)」と定義する。
【0105】
すなわち、合計8つの第4および第6コイル382,392(以下、各第4コイルおよび各第6コイルをセンサという)の変位検出値を、次のように定義する。
fi:変位センサ382fの変位検出値
ri:変位センサ382rの変位検出値
ti:変位センサ382tの変位検出値
bi:変位センサ382bの変位検出値
fo:変位センサ392fの変位検出値
ro:変位センサ392rの変位検出値
to:変位センサ392tの変位検出値
bo:変位センサ392bの変位検出値
【0106】
更に、5つの差動信号、x1、x2、z1、z2およびy1を、次のように定義する。
x1=fi−ri
x2=fo−ro
z1=bi−ti
z2=bo−to
y1=fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo)
【0107】
図8〜図12は、上記差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。図8〜図12において、縦軸は、差動信号の値(ここでは、差動信号は、電圧の値で示している)であり、横軸は、実際に、ハブユニットに作用している力、または、モーメントの値である。
【0108】
具体的には、図8は、ハブユニットに図7に矢印Fxで示す方向のみに力がかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものであり、図9は、ハブユニットに図7に矢印Fyで示す方向のみに力がかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものであり、図10は、ハブユニットに図7に矢印Fzで示す方向のみに力がかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものである。
【0109】
また、図11は、車輪に図7に矢印Mzで示すモーメント荷重のみがかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものであり、図12は、車輪に図7に矢印Mzで示すモーメント荷重のみがかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものである。
【0110】
図8に示すように、ハブユニットにx方向の力のみがかかっている場合、その力の大きさ(Fx)と、x方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示している。また、図9に示すように、ハブユニットにy方向の力のみがかかっている場合、その力の大きさ(Fy)と、y方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示している。また、図10に示すように、ハブユニットにz方向の力のみがかかっている場合、その力の大きさ(Fz)と、z方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示している。
【0111】
また、図11および図12に示すように、車輪にx軸の回りのモーメント荷重がかかっている場合、そのモーメントの大きさ(Mx)と、z方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示していると共に、車輪にz軸の回りにモーメント荷重がかかっている場合、そのモーメントの大きさ(Mz)と、x方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示している。
【0112】
図11および図12において、インナ側のセンサの方が、アウタ側(車輪側)のセンサよりも値が大きくなっているのは、車輪からの距離が大きいことによるものである。
【0113】
図8、10、11、12において、y方向の差動信号が0(ゼロ)でない値(クロストーク)を示している。これは、本来0(ゼロ)である筈の値である。このクロストーク信号は、センサの検出能力を、高くしたことによって発生すると考えられる誤信号であり、荷重の算出に何等影響を与えない信号である。
【0114】
図8〜図12に示すように、力(荷重)と、各差動信号とは、線形関係(比例関係)にある。
【0115】
したがって、図8〜図12より、下の関係(1)が成立する。
ここで、例えば、m11は、図8におけるx1の傾きを示す定数であり、他の行列要素も、図8〜12の各直線の傾きから決定される定数である。
【0116】
上記(1)から下の(2)式が導かれる。
【0117】
本実施形態のハブユニットの信号処理部は、記憶部を有し、この記憶部には、上記(2)式のnij(iとjの夫々は、1〜5の値をとる)で示された5行5列の定数行列の25個の要素が、ルックアップテーブルとして、予めインプットされている。
【0118】
本実施形態のハブユニットでは、各センサが、信号処理部に信号を出力すると、信号処理部が、それらの信号に基づいて、差動信号x1、x2、z1、z2およびy1を算出する。そして、その後に、その算出されたx1、x2、z1、z2およびy1と、上記記憶部に記憶されている5行5列の定数行列の25個の要素nijとから(2)式の演算を行って、ハブユニットに作用している実際の力(荷重)であるFx、Fy、Fz、MxおよびMzを算出するようになっている。
【0119】
上記実施形態のハブユニットによれば、上記nijを参照するだけで、簡単安価かつ正確に、車両の上下方向の並進荷重、車両の進行方向の並進荷重、車輪の軸方向の並進荷重、車両の上下方向の回りのモーメント荷重、車両の進行方向の回りのモーメント荷重を算出することができる。
【0120】
尚、上記実施形態のハブユニットでは、y方向の差動信号を、y1=fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo)としたが、この発明のセンサ付き転がり軸受装置では、y1=fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo)の代わりに、fi−fo、ri−ro、ti−to、bi−bo、fi+ri−(fo+ro)等、第1変位検出部を構成する4つのセンサのうちの少なくとも一つのセンサの出力と、この4つのセンサのうちの少なくとも一つのセンサに軸方向に略重なる上記第2変位検出部の少なくとも一つのセンサの出力との差を、y方向の差動信号として採用しても良い。
【0121】
上記実施形態では、5つの差動信号より、5つの荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを算出した。
【0122】
しかしながら、以下に説明するこの発明の他の実施形態のように、算出部としての信号処理部で、上記説明の演算の代わりに、以下に示す演算を行っても良い。
【0123】
車輪の半径は、動的に変動し固有値として扱うと誤差を生じる場合があるが、検出信号を車両制御に用いる場合、計測器レベルの精度(≦1〜2%)は必要がなく、タイヤ半径を固定値としても車両制御に大きな影響は出ない。また、実際の車両では、Mxのみが発生することは無く、Mxは、Fyによって発生する。したがって、タイヤ半径Rを、固定値と見なせばMx≒Fy×Rが成立する。
【0124】
このことから、fi−riと、ti−biと、fo−roと、to−roと、(fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo))とのうちの4つの値と、4行4列の定数行列と、Fy=Mx÷Rという関係式に基づいて、上記Fz、上記Fx、上記Fy、上記Mz、および、上記Mxを算出しても良い。
【0125】
具体的には、例えば、次の(4)式で、Fx、Fz、Mx、Mzを求め、その後、求められたMxから、Fy=Mx÷Rの式に基づいて、Fyを算出しても良い。
【0126】
先ず、上記図8〜図12より、下の関係(3)が成立する4行4列の定数行列を求める。
この4行4列の逆行列を使用して、
【0127】
尚、この場合、算出部としての信号処理部の記憶部には、ルックアップテーブルとして、上記pij(i,j=1〜4)の値が予めインプットされていることは言うまでもない。
【0128】
尚、上記(3)、(4)の代わりに、下の(5)、(6)式と、Fy=Mx÷Rとに基づいて、Fx、Fy、Fz、Mx、Mzを求めても良いことは、言うまでもない。
【0129】
先ず、上記図8〜図12より、下の関係(5)が成立する4行4列の定数行列を求める。
この4行4列の逆行列を使用して、
【0130】
尚、この場合、算出部としての信号処理部の記憶部には、ルックアップテーブルとして、上記qij(i,j=1〜4)の値が予めインプットされていることは言うまでもない。
【0131】
要は、以下のステップにより、Fx、Fy、Fz、Mx、および、Mzを算出することができる。
【0132】
すなわち、Fx、Fy、Fz、Mzの4元ベクトルか、または、Fx、Fz、Mz、Mxの4元ベクトルかいずれかを採用すると共に、5つの差動信号のうちの任意の4つの差動信号を採用する。その後、採用した4元ベクトルと、4つの差動信号に対して、上記(5)式に相当する式を作成して、4行4列の定数行列を求める。その後、その定数行列の逆行列から上記(6)式に相当する式を導き出す。最後に、採用した4つの差動信号の実際の値と、上記(6)式に相当する式と、Fy=Mx÷Rとから、上記Fx、Fy、Fz、Mx、および、Mzを算出する。
【0133】
この4行4列の定数行列を用いた、変形例によれば、4つの信号によって、5つの荷重を算出することができる。したがって、センサは、5つの信号でなくて、4つの信号を出力すれば良いから、センサ配置の自由度および被変位検出部の構造の自由度を格段に大きくすることができる。したがって、被変位検出部の加工を格段に簡略化できると共に、被変位検出部を、実装する形式の場合においては、被変位検出部の実装を格段に簡略化することができる。また、算出部としての信号処理部の演算を格段に簡略化することができる。
【0134】
尚、4行4列の定数行列を用いて、5つの荷重を算出する場合においても、(fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo))に代わりに、第1変位検出部の一つのセンサの出力から、その一つのセンサに上記軸方向に略重なる上記第2変位検出部の一つのセンサの出力を引いた値か、または、第1変位検出部の三つ以下のセンサの出力の和から、その三つ以下のセンサに上記軸方向に略重なる上記第2変位検出部の複数のセンサの出力の和を引いた値を使用しても良いことは、勿論である。尚、(fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo))を用いると、上下方向および前後方向を平均化することができて、好ましいことは言うまでもない。
【0135】
上記第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、第1軌道部材の外周面を全周に亘って取り巻くように形成されるコイル381,391と、そのコイル381,392と同じ基板の面に配置されると共に、磁場の変動を検出するコイル382,392との組が、軸方向に2列に配置されているから、回転速度の検出に加えて、センサ付き転がり軸受装置に作用している並進荷重およびモーメント荷重を検出できる。
【0136】
尚、上記第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、軸方向に3列に配置された2つのコイルからなる組のうちで、両端に位置する2つのコイルの組を変位センサとして使用する一方、中央に位置するコイルをABSセンサとして使用した。
【0137】
しかしながら、この発明では、環状溝331,332を形成する位置と、被回転速度検出部333を形成する位置とを、図13に示すように変えて、一端に位置するコイルの組をABSセンサとして使用する一方、他端と中央に位置する2つのコイルの組を変位センサとして使用しても良い。
【0138】
また、上記第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第4コイル382に径方向に対向する部分、および、第6コイル392に径方向に対向する部分に、環状溝311,312を形成したが、この発明では、第4コイルに径方向に対向する部分、および、第6コイルに径方向に対向する部分に、環状溝の替わりに、環状でない凹部(例えば、穴)を形成しても良い。また、本発明では、第4コイルに径方向に対向する部分、および、第6コイルに径方向に対向する部分に、環状溝の替わりに、周辺とは透磁率が異なる磁性体からなる領域(周方向に環状でも、周方向に環状でなくてもどちらでも良い)を形成しても良い。このような構成でも、軸方向の変位を検出できるからである。
【0139】
図14は、本発明の第5実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の軸方向の断面図である。
【0140】
第5実施形態のセンサ付き転がり軸受は、第1乃至第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置(駆動輪用の車輪用転がり軸受装置)と異なり従動輪用の車輪用転がり軸受装置である。
【0141】
このセンサ付き転がり軸受装置は、内軸401、内輪402、第2軌道部材としての外輪403、第1の転動体としての複数の第1の玉404、第2の転動体としての複数の第2の玉405、ケース部材6、および、センサ装置410を備える。
【0142】
上記内軸401は、小径軸部419と、中径軸部420と、大径軸部421とを有している。上記小径軸部419の外周面には、ネジが形成されている。上記中径軸部420は、小径軸部419に段部418を介して連なると共に、小径軸部419の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部421は、中径軸部420の小径軸部419側とは反対側に位置している。上記大径軸部421は、中径軸部420に段部422を介して連なると共に、中径軸部420の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部421の外周面は、外周軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝を有し、この軌道溝の外径は、中径軸部420から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0143】
上記内軸401は、軸方向の大径軸部421側の端部に、ブレーキディスク(図示せず)を取り付けるための、ブレーキディスク取付用のフランジ450を有している。
【0144】
上記内輪402は、内軸401の中径軸部420の外周面に外嵌されて固定されている。上記内輪402の軸方向の大径軸部421側の端面は、上記段部422に当接している。上記内輪402は、その外周面の大径軸部421側に、外周軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝を有している。この軌道溝の外径は、大径軸部422から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0145】
上記内輪402の軸方向の大径軸部421側の端面は、段部422に当接している。図13に示すように、ナット463が、小径軸部419のネジに螺合している。上記内輪402の軸方向の大径軸部421側とは反対側の端面は、ナット463の軸方向の大径軸部421側の端面に当接している。上記ナット463を、軸方向の大径軸部421側に所定距離ネジ込むことにより、内輪402を、内軸401に確実に固定するようになっている。
【0146】
上記外輪403は、大径軸部421の径方向の外方に位置している。上記外輪403の内周面は、第1の内周軌道面としてのアンギュラ型の第1軌道溝と、第2の内周軌道面としてのアンギュラ型の第2軌道溝とを有している。上記複数の第1の玉404は、内輪402の軌道溝と、外輪403の第1軌道溝との間に、保持器によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されており、上記複数の第2の玉405は、内軸401の軌道溝と、外輪403の第2軌道溝との間に、保持器によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0147】
上記ケース部材406は、筒部材452と、円板状の蓋部材453とで構成されている。筒部材452の外周面の外輪403側の端部は、外輪403の内周面の小径軸部419側の端部に締まり嵌めにより内嵌されて固定されている。一方、蓋部材453は、筒部材452の外輪403側とは反対側の開口を閉塞している。詳しくは、蓋部材453は、円板部480と、円板部480に連なる筒状部481を有し、この筒状部481の内周面を、筒部材452の外輪403側とは反対側の端部の外周面に締まり嵌めにより外嵌して固定している。このようにして、センサ付き転がり軸受装置の内部へ異物が侵入するのを防止している。また、上記センサ装置410は、ケース部材406に固定されている。
【0148】
図15は、図14におけるセンサ装置410の周辺の拡大断面図である。
【0149】
上記センサ装置410は、センサ本体460と、ターゲット部材461とを有する。上記ターゲット部材461は、筒形状を有している。上記ターゲット部材461の軸方向の一端部は、内輪402の円筒外周面における軸方向の端部426に圧入によって押しこまれている。換言すると、ターゲット部材461の軸方向の一端部は、内輪402の外周面の一端部としての円筒外周面426に締まり嵌めにより外嵌されて固定されている。第5実施形態のセンサ付き転がり軸受では、内軸401、内輪402およびターゲット部材461が、第1軌道部材を構成している。
【0150】
上記センサ本体460は、樹脂製の環状の固定部材498と、環状の固定部材498の内周側に軸方向に等間隔に固定された5列の基板と、各基板の両側の面に配置された2組の平面状のコイルとからなる。
【0151】
上記固定部材498は、筒部材452の内周面に内嵌されて固定されている。また、図15に示すように、上記固定部材498および5つの基板は、数カ所で、ボルト499によって、筒部材452に固定されている。
【0152】
上記各基板は、筒部材452の径方向に延在し、各基板の延在方向の端面488は、ターゲット部材461の外周面に対向している。
【0153】
上記ターゲット部材461の外周面は、軸方向に2列に亘って周方向に延在する環状溝494,495を有すると共に、また、軸方向の所定の領域に、透磁率が違う第1部分496と第2部分が周方向に交互に配置された部分を有している。上記第2部分は、ターゲット部材461の上記軸方向の所定の領域以外の部分と同一の材質からなっている。
【0154】
上記センサ装置410は、環状溝494,495や、透磁率が違う第1部分496と第2部分が周方向に交互に配置された部分を用いて、上記詳細に説明した方法を用いて5つの荷重や、第1軌道部材に対する第2軌道部材の回転速度を検出している。
【0155】
上記第5実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、センサ装置410が、内輪402に固定されたターゲット部材461と、筒状部452に固定されたセンサ本体460とからなっている。このように、本発明では、センサ装置は、第1乃至第4実施形態のように、シール装置に固定される必要はなく、如何なる部材にも固定されることができる。
【0156】
尚、上記第1乃至第5実施形態のセンサ付き転がり軸受の製造装置では、センサ付き転がり軸受の転動体が玉であったが、この発明では、センサ付き転がり軸受の転動体は、ころであっても良く、ころおよび玉を含んでいても良い。
【0157】
また、この発明のセンサ付き転がり軸受装置が、例えば、磁気軸受装置等の車輪用転がり軸受装置以外の如何なる軸受装置であっても良いことは言うまでもない。上記実施形態で説明した本発明の構成を、複数のモーメント荷重や並進荷重を測定するニーズのある各種軸受装置に適用することができるのは、言うまでもないからである。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明のセンサ付き転がり軸受装置の第1実施形態である駆動輪用ハブユニットの軸方向の断面図である。
【図2】第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置が有するパックシール10の近傍の軸方向の拡大断面図である。
【図3】第1実施形態において、スリンガ、基板、第1コイルおよび第2コイルの位置関係を示す模式図である。
【図4】第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図である。
【図5】第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図である。
【図6】第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図である。
【図7】本明細書で使用する方向について説明する図である。
【図8】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図9】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図10】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図11】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図12】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図13】第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の変形例における図2に対応する図である。
【図14】本発明の第5実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の軸方向の断面図である。
【図15】図14におけるセンサ装置の周辺の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0159】
1 ハブ
2 内輪
3 外輪
4,5 玉
10 パックシール
70 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサと、軌道部材とを備えるセンサ付き転がり軸受装置に関し、例えば、変位センサを有する車輪用転がり軸受装置(ハブユニット)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪用転がり軸受装置としては、特開2007−127253号公報(特許文献1)に記載されているものがある。
【0003】
この車輪用転がり軸受装置は、インダクタンス型の変位センサを、軸方向に2列に配置し、車輪用転がり軸受装置の3つの並進荷重と、2つのモーメント荷重とを算出するようになっている。
【0004】
上記従来の車輪用転がり軸受装置では、上記インダクタンス型の変位センサを、軸方向に2列に配置しなくてはいけなくて、上記インダクタンス型の変位センサの配置スペースが大きいから、車輪用転がり軸受装置の小型化を行いにくい。
【0005】
特に、車輪用転がり軸受装置が、駆動輪用の車輪用転がり軸受装置である場合には、変位センサの配置スペースの確保が難しく、変位センサを、現在では装備が当たり前になっているABSセンサの配置空間に配置しなければならないから、従来の配置スペースが大きい変位センサでは、変位センサの配置が、ABSセンサの配置に影響を及ぼし好ましくない。
【特許文献1】特開2007−127253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、ABSセンサの配置スペースが小さくて、コンパクトで安価なセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
【0007】
また、特に、ABSセンサおよび変位センサを、容易に配置でき、かつ、コンパクトで安価なセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
【0008】
また、特に、回転速度、かつ、3つの並進荷重および2つのモーメント荷重を算出でき、かつ、コンパクトかつ安価な車輪用転がり軸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明のセンサ付き転がり軸受装置は、
外周面に軌道面を有する第1軌道部材と、
内周面に軌道面を有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置される複数の転動体と、
上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第1基板と、
上記第1基板の一方の側の第1面上に、上記第1軌道部材を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第1コイルと、
上記第1面上に配置された平面状の第2コイルと
を備え、
上記第1面において上記第2コイルが囲んでいる部分は、上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置し、
上記第1コイルの上記径方向の内方側で、かつ、上記第1コイルに上記径方向に対向する箇所に、上記第1軌道部材の周方向に延在する環状の被回転速度検出部を有し、
上記回転速度検出部の構造に基づく上記第1コイルが生成する磁場の変動を上記第2コイルで検出し、上記第2コイルが出力した信号に基づいて、上記第2軌道部材に対する上記第1軌道部材の回転速度を検出する回転速度検出部を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、ABSセンサ(この明細書では、ABSセンサを、回転速度を検出するセンサとして定義する)を、基板の一面に配置されたコイルで構成するから、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板の厚さ程度まで小さくできて、ABSセンサの軸方向の寸法を、従来使用されているパルサリングを使用するABSセンサ等と比較して、急激に小さくできる。
【0011】
また、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板の厚さ程度まで小さくできるから、ABSセンサの配置スペースに変位センサを容易に配置できる。
【0012】
また、本発明によれば、例えば、ABSセンサを、ガラス基板と、ガラス基板にプリントされた配線とで構成することができるから、ABSセンサとして、比較的高価なパルサリングを使用しているABSセンサ等を使用している従来のセンサ付き転がり軸受装置と比較して、ABSセンサの製造コストを急激に小さくすることができる。したがって、従来のセンサ付き転がり軸受装置を比較して、製造コストが小さくなる。
【0013】
また、一実施形態では、
上記第1基板は、上記第2軌道部材の径方向に略平行に配置され、
上記第1基板の上記第1面に略平行な面を有すると共に、上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第2基板と、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記第2基板の上記貫通穴よりも径方向の外方に位置している。
【0014】
上記実施形態によれば、上記第1コイルおよび第2コイルの組に対して軸方向に間隔をおいて、第3コイルおよび第4コイルの組を形成している。ここで、第3コイルおよび第4コイルの組は、実施形態で説明するようにギャップセンサとして機能させることができる。したがって、上記実施形態によれば、回転速度を検出できると共に、径方向の変位を測定できる。
【0015】
また、一実施形態では、
上記第1基板の他方の側の第2面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置している。
【0016】
上記実施形態によれば、上記第1コイルおよび第2コイルの組に対して軸方向に間隔をおいて、第3コイルおよび第4コイルの組を形成している。ここで、第3コイルおよび第4コイルの組は、実施形態で説明するようにギャップセンサとして機能させることができる。したがって、上記実施形態によれば、回転速度を検出できると共に、径方向の変位を測定できる。
【0017】
また、一実施形態では、
上記第1基板は、上記第2軌道部材の径方向に略平行に配置され、
上記第1基板の上記第1面に略平行な面を有すると共に、上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第2基板と、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記第2基板の上記貫通穴よりも径方向の外方に位置し、
上記第1基板の他方の側の第2面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第5コイルと、
上記第2面上に配置された平面状の第6コイルと
を備え、
上記第2面において上記第6コイルが囲んでいる部分は、上記第1基板の上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置している。
【0018】
上記実施形態によれば、回転速度を検出するのに使用する第1および第2コイル以外に、第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように形成されるコイルと、そのコイルと同じ基板の面に配置されると共に、コイルが囲んでいる部分が、基板の貫通穴よりも径方向の外方に位置しているコイルとの組が、軸方向に2列に配置されているから、回転速度の他に、転がり軸受に作用しているモーメント荷重を検出できる。
【0019】
また、一実施形態では、
上記第1軌道部材と上記第2軌道部材との間をシールするシール装置を備え、
上記第1基板は、上記シール装置に固定されている。
【0020】
上記実施形態によれば、ABSセンサを、シール装置に一体に配置できるから、センサ付き転がり軸受装置が、よりコンコンパクトになる。また、例えば、センサ付き転がり軸受装置が、駆動輪用の車輪用転がり軸受装置である場合、ABSセンサを、等速ジョイントに近接するシール装置に固定できるから、センサ付き転がり軸受装置が、センサの配置スペースが小さい駆動輪用の車輪用転がり軸受装置であっても、ABSセンサを容易に配置できる。
【0021】
また、一実施形態では、
上記シール装置は、金属製の芯金部と、上記芯金部に固着されたゴム製の弾性部とを有し、
上記第1基板は、上記弾性部に固定されている。
【0022】
上記実施形態によれば、上記第1基板は、ゴム製の上記弾性部に固定されるから、上記弾性部をクッションとして機能させることができて、第1基板の破損を防止しながら、第1基板を確実に固定することができる。
【0023】
また、上記実施形態によれば、第1基板が絶縁素材であるゴムの部材に固定されるから、回転速度信号を確実に検出できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、ABSセンサを、基板の一面に配置されたコイルで構成するから、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板の厚さ程度まで小さくできて、ABSセンサの軸方向の寸法を、従来使用されているパルサリングを使用するABSセンサ等と比較して、急激に小さくできる。また、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板の厚さ程度まで小さくできるから、ABSセンサの配置スペースに変位センサを容易に配置できる。
【0025】
また、本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、例えば、ABSセンサを、ガラス基板と、ガラス基板にプリントされた配線とで構成することができるから、ABSセンサとして、比較的高価なパルサリングを使用しているABSセンサ等を使用する従来のセンサ付き転がり軸受装置と比較して、ABSセンサの製造コストを急激に小さくすることができる。したがって、従来のセンサ付き転がり軸受装置を比較して、製造コストが小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明のセンサ付き転がり軸受装置の第1実施形態である駆動輪用ハブユニットの軸方向の断面図である。
【0028】
このハブユニットは、駆動輪用ハブ(以下単に、ハブという)1、内輪2、外輪3、転動体としての複数の第1の玉4、転動体としての複数の第2の玉5、および、シール装置の一例としてのパックシール10を備える。上記ハブ1および内輪2は、第1軌道部材を構成し、外輪3は、第2軌道部材を構成している。
【0029】
上記ハブ1は、筒部材で、内周面の一部に雌スプラインを有し、この雌スプラインは、等速ジョイント31のスプライン軸15にスプライン嵌合している。上記ハブ1は、小径軸部19と、大径軸部20とを有している。上記大径軸部20は、小径軸部19に段部18を介して連なると共に、小径軸部19の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部20の外周面は、軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝を有している。この軌道溝の外径は、小径軸部19から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0030】
上記ハブ1は、軸方向の大径軸部20側の端部に、ロータ(あるいは車輪)(図示せず)を取り付けるためのロータ取付用のフランジ(あるいは車輪取付用のフランジ)22を有している。
【0031】
上記内輪2は、ハブ1の小径軸部19の外周面に外嵌されて固定されている。上記内輪2の軸方向の大径軸部20側の端面は、上記段部18に当接している。上記内輪2は、その外周面の大径軸部20側に軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝を有している。この軌道溝の外径は、大径軸部20から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0032】
上記外輪3は、内軸1の小径軸部19および大径軸部20の径方向の外方に位置している。上記外輪3の内周面は、軌道面としてのアンギュラ型の第1軌道溝と、軌道面としてのアンギュラ型の第2軌道溝とを有している。上記第1軌道溝は、内輪2の軌道溝に径方向に対向し、上記第2軌道溝は、ハブ1の軌道溝に径方向に対向している。
【0033】
上記複数の第1の玉4は、内輪2の軌道溝と、外輪3の第1軌道溝との間に、保持器によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。また、上記複数の第2の玉5は、ハブ1の軌道溝と、外輪3の第2軌道溝との間に、保持器によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0034】
上記パックシール10は、内輪2と、外輪3との間をシールしている。尚、詳述しないが、図1において、30は、ナックルを示している。
【0035】
図2は、上記パックシール10の近傍の軸方向の拡大断面図である。
【0036】
上記パックシール10は、環状のシール部材50と、環状のスリンガ51とを有し、シール部材50は、SUS304L等の非磁性体の金属製の芯金部53と、弾性部54とを有している。上記芯金部53は、略筒状の筒部86と、径方向延在部87とを有し、筒部86は、外輪3に弾性部材80を介して固定されている一方、径方向延在部87は、筒部86の軸方向の玉4,5側の端部から径方向の内方に延在している。また、上記弾性部54は、芯金部53の表面に固着されている。
【0037】
一方、上記スリンガ51は、内輪2(図1参照)の外周面に締まり嵌めで外嵌されて固定されている。上記スリンガ51は、磁性体(例えば、SUS430)からなっている。上記スリンガ51は、内輪2に固定された円筒部77と、フランジ部78とを有し、フランジ部78は、円筒部77の軸方向の玉4,5側とは反対側の端部から径方向の外方に延在している。
【0038】
図2に示すように、上記弾性部54は、ブロック状の基部59、アキシアルリップ60、第1ラジアルリップ61、および、第2ラジアルリップ62を有し、基部59は、芯金部53に固着されている。上記基部59の軸方向の玉4,5側の面(以下、基板取付面という)83は、径方向に広がり、平面形状を有している。上記アキシアルリップ60は、フランジ部78に摺動する一方、第1および第2ラジアルリップ61,62は、円筒部77の外周面に摺動するようになっている。
【0039】
上記基板取付面83には、厚さが数mm程度の平板状の基板70が、接着剤で固着されている。上記基板70は、ガラス布基材エポキシ樹脂からなっている。上記基板70は、環状であり、径方向に延在している。上記基板70の基板取付面83側とは反対側の面(第1基板の一方の側の面に相当)75には、平面状の第1コイル71と、平面状の第2コイル72とが、パターン形成されている。
【0040】
上記スリンガ51の円筒部77における第1コイル71に径方向に対向する部分は、被回転速度検出部になっている。この被回転速度検出部は、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分81と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ51の円筒部77の周方向に交互に配置してなっている。
【0041】
図3は、上記スリンガ51、基板70、第1コイル71および第2コイル72の位置関係を示す模式図である。
【0042】
図3に示すように、上記スリンガ51は、環状の基板70の貫通穴89を貫通している(このことおよび図1から明らかなように、第1軌道部材も、貫通穴89を貫通している)。上記第1コイル71は、第1軌道部材(ハブ1および内輪2からなる)を全周に亘って取り巻くように基板70の一方の面75に形成されている。一方、第2コイル72は、第1コイル71に接触しないように、上記一方の面75に接触渦巻状に形成されている。上記第2コイル72は、上記第1軌道部材を取り巻かないように配置されている。上記基板70の上記一方の面75において第2コイル72が囲んでいる部分は、環状の基板70の貫通穴89よりも、基板70の径方向の外方に位置している。
【0043】
上記第2コイル72は、4つ存在し、4つの第2コイル72は、周方向に等間隔に配置されている。発振器90で、例えば、100KHzから10MHzまでの高周波電流が生成され、この高周波電流が、ケーブル91を介して第1コイル71に流れ込むようになっている。
【0044】
上記スリンガ51は、磁性体からなっているから、第1コイル71で生成された磁束が、スリンガ51を通過するようになっている。したがって、上記スリンガ51に荷重が作用して、スリンガ51が、ある第2コイル72に近づくと、第1コイル71が生成する高周波の磁場に基づいてその第2コイル72に発生する誘導起電力が大きくなる一方、スリンガ51に荷重が作用して、スリンガ51が、ある第2コイル72から遠ざかると、第1コイル71が生成する高周波の磁場に基づいて第2コイル72に発生する誘導起電力が小さくなる。
【0045】
したがって、上記スリンガ51が同一の磁性体で形成されている場合には、各第2コイル72が生成する誘導起電力を測定すれば、各第2コイル72とスリンガ51との距離を測定できる。
【0046】
また、上記第1実施形態のように、上記第1コイル71に径方向に対向するスリンガ51の部分が、周方向に交互に位置し、かつ、互いに透磁率が異なる二つの部分(第1部分81および第2部分)で形成されている場合、または、周方向に歯車状に凹凸が繰り返されている場合には、第2コイル72が生成する誘導起電力が、基板70に対するスリンガ51の相対回転速度(第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度)に依存する周期性を有する誘導起電力になり、この周期を検出することによって、第1軌道部材に対する第2軌道部材の回転速度を検出できる。
【0047】
第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、このように、各第2コイル72を、磁束密度の偏り(スリンガ(第1軌道部材)の偏り)を測定するABSセンサ(回転速度検出センサ)として使用し、第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度を検出するようになっている。
【0048】
再度、図2を参照して、各第2コイル72で発生する起電力は、信号線38を介して図示しない信号処理部に出力されている。この信号処理部では、4つの第2コイル72からの出力信号に基づいて、第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度を検出するようになっている。上記信号処理部は、回転速度検出部を構成している。尚、上記信号線38は、弾性部80によって防水されている。
【0049】
上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、ABSセンサを、基板70の一面に配置されたコイル71,72で構成するから、ABSセンサの軸方向の寸法を、基板70の厚さ程度(一般的には数mm程度)まで小さくできて、ABSセンサの軸方向の寸法を、従来型のセンサと比較して、急激に小さくできる。したがって、センサ付き転がり軸受装置の配置スペースを小さくできる。また、変位センサを配置する場合において、ABSセンサおよび変位センサの両方を、如何なる障害もなく、容易に配置できる。
【0050】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、ABSセンサの本体部が、安価なガラス布基材エポキシ樹脂製の基板70と、その基板70にプリントされた配線とで構成されているから、ABSセンサの製造コストを急激に小さくすることができて、従来のセンサ付き転がり軸受装置を比較して、製造コストが小さくなる。
【0051】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、ABSセンサの本体部が、シール装置としてのパックシール10に一体に配置されているから、センサ付き転がり軸受装置が、よりコンコンパクトになる。そして、特に、第1実施形態では、センサ付き転がり軸受装置が、駆動輪用の車輪用転がり軸受装置であって、ABSセンサの本体(基板70、第1および第2コイル71,72で構成される)が、等速ジョイントのジョイント部に近接するパックシール10に固定されているから、センサ付き転がり軸受装置が、ABSセンサの配置スペースが小さい駆動輪用の車輪用転がり軸受装置であっても、ABSセンサ設置後のABSセンサ配置スペースに容易に変位センサを配置することができる。
【0052】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、上記基板70が、ゴム製の弾性部54に固定されているから、弾性部54をクッションとして機能させることができて、基板70の破損を防止しながら、基板70を確実に固定することができる。
【0053】
また、上記第1実施形態によれば、基板70が絶縁素材であるゴムの部材に固定されるから、ABSセンサが出力する変位信号が、劣化することがない。
【0054】
尚、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受では、第1コイル71を、スリンガ51の円筒部77に対向させて、第1コイル71に対向するスリンガ51の円筒部77の一部分に、周方向に交互に互いに透磁率が違う第1部分81および第2部分を配置したが、この発明では、第1コイルを、第1軌道部材の外周面に対向させて、第1コイルに対向する第1軌道部材の一部分に、周方向に交互に互いに透磁率が違う第1部分および第2部分を配置しても良い。すなわち、この発明では、被回転速度検出部を、スリンガでなくて、第1軌道部材の一部に形成しても良い。
【0055】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1コイル71が第2コイル72に間隔をおいて配置されていたが、この発明では、第1コイルと第2コイルとは、接触していても良い。要は、第1コイルは、環状の基板の穴を取り囲むように配置され、第2コイルが、環状の基板の穴を取り囲まないように配置されていれば良い。
【0056】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第2コイル72の数が4つであったが、この発明では、第2コイルの数は、4以外の如何なる数(1以上3以下、または、5以上)であっても良い。
【0057】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、被回転速度検出部を、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分81と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ51の円筒部77の周方向に交互に配置して構成した。
【0058】
しかしながら、この発明では、被回転速度検出部を、歯車状に凹凸を周方向に交互に繰り返すことにより形成しても良い。この場合においても、第2コイルに凹部が接近している際に、第2コイルが生成する誘導起電力と、第2コイルに凸部が接近している際に、第2コイルが生成する誘導起電力とに差が生じ、第2コイルが生成する誘導起電力に基づいて、第1軌道部材に対する第2軌道部材の相対回転速度を検出することができるからである。
【0059】
また、上記第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、基板70をパックシール10に固定したが、この発明では、基板を、パックシール以外のシール装置、例えば、スリンガを有さない芯金部と弾性部とを有するシール装置に固定しても良い。また、本発明では、以下に説明する後述の実施形態のように、基板を、シール装置以外の部分に固定しても良い。
【0060】
図4は、第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図であり、第2実施形態のパックシール10の周辺の軸方向の断面図である。
【0061】
第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、基板170と、スリンガ151の構造のみが第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる。
【0062】
第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0063】
第2実施形態では、基板170の軸方向の芯金部53側とは反対側の一方の表面175に、平面状の第1コイル171と、4つの平面状の第2コイル172を形成する一方、基板170の軸方向の他方の表面185に、平面状の第3コイル181と、4つの平面状の第4コイル182を形成している。上記他方の表面185は、パックシール10の弾性部54の基板取付面83に接着剤や樹脂モールド等で固着されている。
【0064】
上記第1コイル171および第2コイル181は、第1軌道部材(ハブ1および内輪2からなる)を全周に亘って取り巻くように形成されている。上記第1コイル171および第2コイル181は、第1実施形態のように、高周波電流が付与されて、高周波磁場を生成するようになっている。
【0065】
上記第2コイル172は、基板170の第1コイル171よりも径方向の外方に、第1コイル171に接触しないように、渦巻状に形成されている(図3参照)。上記第2コイル172は、第1軌道部材(ハブ1および内輪2からなる)を取り巻かないように配置されている。上記第2コイル172は、4つ存在し、4つの第2コイル172は、周方向に等間隔に配置されている。
【0066】
また、上記第4コイル182は、基板170の第3コイル181よりも径方向の外方に、第3コイル181に接触しないように、渦巻状に形成されている(図3参照)。上記第4コイル182は、第1軌道部材(ハブ1および内輪2からなる)を取り巻かないように配置されている。上記第4コイル182は、4つ存在し、4つの第4コイル182は、周方向に等間隔に配置されている。
【0067】
上記第1コイル171と第3コイル181は、基板170の法線方向に略重なり、第2コイル172と第4コイル182は、基板170の法線方向に略重なっている。各第2コイル172が生成する誘導起電力は、信号線を介して信号処理部に出力され、巻く第4コイル182が生成する誘導起電力は、信号線を介して信号処理部に出力されるようになっている。
【0068】
上記スリンガ151の円筒部177における第1コイル171に径方向に対向する部分には、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分187と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とが、スリンガ151の円筒部177の周方向に交互に配置されている。
【0069】
上記スリンガ151の円筒部177における第1コイル171に径方向に対向する部分は、被回転速度検出部になっている。この被回転速度検出部は、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分187と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ151の円筒部177の周方向に交互に配置してなっている。
【0070】
上記第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、回転速度を検出できると共に、第1軌道部材に対する第2軌道部材の径方向の変位を測定できる。
【0071】
尚、上記第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、パックシール10に固定されない方の基板70の面に配置された第1コイル171に径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成する一方、パックシール10に固定される方の基板70の面に配置された第3コイル181に径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しなかった。
【0072】
しかしながら、この発明では、パックシールに固定されない方の基板の面に配置された第1コイルに径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しない一方、パックシールに固定される方の基板の面に配置された第3コイルに径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しても良く、基板のパックシール側の表面に形成されるコイルを、回転速度検出用のコイルとして使用し、基板のパックシール側とは反対側の表面に形成されるコイルを、変位検出用のコイルとして使用しても良い。
【0073】
また、上記第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第3コイル181をスリンガ151に対向させて、基板170と、スリンガ151との距離を測定したが、この発明では、第3コイルを第1軌道部材に対向させて、基板とスリンガとの径方向の距離ではなく、基板と第1軌道部材との径方向の距離を測定しても良い。
【0074】
図5は、本発明の第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図であり、第3実施形態のパックシール10の周辺の軸方向の断面図である。
【0075】
第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、複数の基板270,271が存在する点と、スリンガ251の構造のみが、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる。
【0076】
第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1〜2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1〜2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0077】
図5に示すように、第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、ガラス布基材エポキシ樹脂からなる第1基板270およびガラス布基材エポキシ樹脂からなる第2基板277を備えている。上記第1基板270は、第2基板277のパックシール10側とは反対側に位置している。上記第1基板270の第2基板277側とは反対側の一方の側の面には、平面状の第1コイル271と4つの平面状の第2コイル272とが配置されている。
【0078】
上記第2基板277は、第1基板270と同一な基板であり、第1基板270と略平行に配置されている。上記第2基板277の一方の側の面は、弾性部54の基板取付面83に固着されている。また、上記第2基板277の他方の側の面には、平面状の第3コイル281と4つの平面状の第4コイル282とが配置されている。
【0079】
上記第1基板270の他方の側の面は、第1基板270の一方の側の面に固着されている。
【0080】
上記第1コイル271と、4つの第2コイル272との位置関係は、図3における第1コイル71と、4つの第2コイル72との関係と同一であり、第3コイル281と、4つの第4コイル282との位置関係は、図3における第1コイル71と、4つの第2コイル72との関係と同一である。
【0081】
上記第1コイル271と第3コイル281は、基板270の法線方向に略重なり、第2コイル272と第4コイル282は、基板170の法線方向に略重なっている。
【0082】
上記スリンガ251の円筒部277における第1コイル271に径方向に対向する部分は、被回転速度検出部になっている。この被回転速度検出部は、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分287と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ251の円筒部277の周方向に交互に配置してなっている。
【0083】
第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置との比較において、基板の数が1枚から2枚に増加した点のみが、本質的に異なり、それ以外の点は、第2実施形態のセンサ付き転がり軸受と同一である。
【0084】
尚、上記第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、パックシール10に固定されない方の第1基板270の面に配置された第1コイル171に径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成する一方、パックシール10に固定される方の第2基板270の面に配置された第3コイル181に径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しなかった。
【0085】
しかしながら、この発明では、パックシールに固定されない方の第1基板の面に配置された第1コイルに径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しない一方、パックシールに固定される方の第2基板の面に配置された第3コイルに径方向に対向する位置に被回転速度検出部を形成しても良い。
【0086】
図6は、本発明の第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図であり、第4実施形態のパックシール10の周辺の軸方向の断面図である。
【0087】
第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、2組のコイルからなるセンサを軸方向に2列ではなくて3列に配置し、以下に説明するように、3つのセンサのうちの2つのセンサで、5つの荷重を検出すると共に、残りの1つのセンサで、回転速度を検出する点が、第1〜3の実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる。
【0088】
第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略することにする。また、第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第1〜3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにし、第1〜3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置と異なる構成、作用効果および変形例についてのみ説明を行うことにする。
【0089】
第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、ガラス布基材エポキシ樹脂からなる第1基板370およびガラス布基材エポキシ樹脂からなる第2基板377を備え、第1基板370の一方の側の面は、弾性部54の基板取付面83に固着されている。上記第1基板270の他方の側の面に、平面状の第1コイル371と4つの平面状の第2コイル372とを配置している一方、第1基板270の一方の側の面に、平面状の第3コイル381と4つの平面状の第4コイル382とを配置している。
【0090】
上記第2基板377は、第1基板370と同一な基板であり、第1基板370と略平行に配置されている。上記第2基板377の一方の側の面は、第1基板370の他方の側の面に固着されている。上記第2基板377の他方の側の面には、平面状の第5コイル391と4つの平面状の第6コイル392とが配置されている。
【0091】
上記第1コイル371と、4つの第2コイル372との位置関係、第3コイル381と、4つの第4コイル382との位置関係は、および、第5コイル391と、4つの第6コイル392との位置関係は、図3における第1コイル71と、4つの第2コイル72との関係と同一である。
【0092】
上記第1コイル371、第3コイル381および第5コイル391は、基板370の法線方向に略重なり、第2コイル372、第4コイル382および第6コイル392は、基板370の法線方向に略重なっている。
【0093】
上記スリンガ351の円筒部376における第1コイル371に径方向に対向する部分は、被回転速度検出部になっている。この被回転速度検出部は、第1の透磁率を有する複数個の同一の第1部分313と、第1の透磁率と異なる第2の透磁率を有する複数個の同一の第2部分(図示せず)とを、スリンガ351の円筒部376の周方向に交互に配置してなっている。
【0094】
また、上記スリンガ351の筒状部376の外周面において第3コイル381に径方向に対向する部分は、周方向に延在する第1環状溝311を有し、スリンガ351の筒状部376の外周面において第5コイル391に径方向に対向する部分は、周方向に延在する第2環状溝312を有している。
【0095】
上記第1環状溝311および第2環状溝312は、同一の形状であり、軸方向に互いに間隔をおいて配置されている。第1環状溝311および第2環状溝312は、軸方向の断面において、断面矩形の形状を有している。
【0096】
図6に示すように、第1軌道部材および第2軌道部材に如何なる荷重も作用していない状態で、第1環状溝311は、第1基板370のパックシール10側の表面の延長面によって略垂直に二等分され、第2環状溝312は、第2基板377の第1基板370側とは反対側の表面の延長面によって略垂直に二等分されている。
【0097】
上記構成において、第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、上述のように、第1コイル371、第2コイル372および被回転速度検出部で、第1軌道部材に対する第2軌道部材の回転速度を検出する。
【0098】
また、第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置は、次のようにして、5つの荷重を検出するようになっている。
【0099】
すなわち、センサ付き転がり軸受装置に軸方向の荷重が作用して、スリンガ351が、図6に矢印Aで示す方向に変位すると、第1および第2基板370,377に対する第1環状溝311および第2環状溝312との相対位置が変位し、これに伴って磁場が変動し、第4および第6コイル382,392が検出する誘導起電力も変化する。第4実施形態では、この誘導起電力の変化に基づいて、軸方向の変位を検出し、軸方向に作用している荷重を検出するようになっている。
【0100】
また、センサ付き転がり軸受装置にモーメント荷重が作用して、スリンガ135の円筒部376が、図6に示す位置から図6に矢印Bで示す方向に傾いた場合には、第1基板370とスリンガ351の円筒部376との距離と、第2基板377とスリンガ351の円筒部376との距離が異なる値となり、これに伴って、第4コイル382が検出する誘導起電力と、第6コイル392が検出する誘導起電力との間に差が生成する。第4実施形態では、この誘導起電力の差に基づいて、モーメント荷重を検出するようになっている。
【0101】
例えば、第4実施形態の場合において、4つの第4コイル382および4つの第6コイル392からの信号を受けた信号処理部(図示せず、回転速度検出部を含む)が、次に示す演算を行って、車輪に作用する各方向のモーメント荷重及び並進荷重を、算出しても良い。
【0102】
図7は、方向について説明する図である。
【0103】
図7に示すように、第4実施形態では、車輪の前後水平方向をx軸方向、車輪の左右水平方向(軸方向)をy軸方向、車輪の上下方向をz軸方向と定義する。
【0104】
また、インナ側(車両の中心側)の第4コイル382t,382b,382f,382rの変位検出値に、添え字「i」を使用し、アウタ側(車輪側)の第6コイル392t,392b,392f,392rに添え字「o」を使用する。また、4つの第4コイル382を、第1基板370において、車両の前側、後側、上側および下側に配置すると共に、4つの第6コイル392を、第2基板377において、車両の前側、後側、上側および下側に配置し、前側のセンサの変位検出値を「f(front)」と定義し、後側のセンサの変位検出値を「r(rear)」と定義し、上側のセンサの変位検出値を「t(top)」と定義し、下側のセンサの変位検出値を「b(bottom)」と定義する。
【0105】
すなわち、合計8つの第4および第6コイル382,392(以下、各第4コイルおよび各第6コイルをセンサという)の変位検出値を、次のように定義する。
fi:変位センサ382fの変位検出値
ri:変位センサ382rの変位検出値
ti:変位センサ382tの変位検出値
bi:変位センサ382bの変位検出値
fo:変位センサ392fの変位検出値
ro:変位センサ392rの変位検出値
to:変位センサ392tの変位検出値
bo:変位センサ392bの変位検出値
【0106】
更に、5つの差動信号、x1、x2、z1、z2およびy1を、次のように定義する。
x1=fi−ri
x2=fo−ro
z1=bi−ti
z2=bo−to
y1=fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo)
【0107】
図8〜図12は、上記差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。図8〜図12において、縦軸は、差動信号の値(ここでは、差動信号は、電圧の値で示している)であり、横軸は、実際に、ハブユニットに作用している力、または、モーメントの値である。
【0108】
具体的には、図8は、ハブユニットに図7に矢印Fxで示す方向のみに力がかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものであり、図9は、ハブユニットに図7に矢印Fyで示す方向のみに力がかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものであり、図10は、ハブユニットに図7に矢印Fzで示す方向のみに力がかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものである。
【0109】
また、図11は、車輪に図7に矢印Mzで示すモーメント荷重のみがかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものであり、図12は、車輪に図7に矢印Mzで示すモーメント荷重のみがかかっている場合の上記差動信号の出力を示すものである。
【0110】
図8に示すように、ハブユニットにx方向の力のみがかかっている場合、その力の大きさ(Fx)と、x方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示している。また、図9に示すように、ハブユニットにy方向の力のみがかかっている場合、その力の大きさ(Fy)と、y方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示している。また、図10に示すように、ハブユニットにz方向の力のみがかかっている場合、その力の大きさ(Fz)と、z方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示している。
【0111】
また、図11および図12に示すように、車輪にx軸の回りのモーメント荷重がかかっている場合、そのモーメントの大きさ(Mx)と、z方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示していると共に、車輪にz軸の回りにモーメント荷重がかかっている場合、そのモーメントの大きさ(Mz)と、x方向の差動信号の値とが、線形関係(比例関係)を示している。
【0112】
図11および図12において、インナ側のセンサの方が、アウタ側(車輪側)のセンサよりも値が大きくなっているのは、車輪からの距離が大きいことによるものである。
【0113】
図8、10、11、12において、y方向の差動信号が0(ゼロ)でない値(クロストーク)を示している。これは、本来0(ゼロ)である筈の値である。このクロストーク信号は、センサの検出能力を、高くしたことによって発生すると考えられる誤信号であり、荷重の算出に何等影響を与えない信号である。
【0114】
図8〜図12に示すように、力(荷重)と、各差動信号とは、線形関係(比例関係)にある。
【0115】
したがって、図8〜図12より、下の関係(1)が成立する。
ここで、例えば、m11は、図8におけるx1の傾きを示す定数であり、他の行列要素も、図8〜12の各直線の傾きから決定される定数である。
【0116】
上記(1)から下の(2)式が導かれる。
【0117】
本実施形態のハブユニットの信号処理部は、記憶部を有し、この記憶部には、上記(2)式のnij(iとjの夫々は、1〜5の値をとる)で示された5行5列の定数行列の25個の要素が、ルックアップテーブルとして、予めインプットされている。
【0118】
本実施形態のハブユニットでは、各センサが、信号処理部に信号を出力すると、信号処理部が、それらの信号に基づいて、差動信号x1、x2、z1、z2およびy1を算出する。そして、その後に、その算出されたx1、x2、z1、z2およびy1と、上記記憶部に記憶されている5行5列の定数行列の25個の要素nijとから(2)式の演算を行って、ハブユニットに作用している実際の力(荷重)であるFx、Fy、Fz、MxおよびMzを算出するようになっている。
【0119】
上記実施形態のハブユニットによれば、上記nijを参照するだけで、簡単安価かつ正確に、車両の上下方向の並進荷重、車両の進行方向の並進荷重、車輪の軸方向の並進荷重、車両の上下方向の回りのモーメント荷重、車両の進行方向の回りのモーメント荷重を算出することができる。
【0120】
尚、上記実施形態のハブユニットでは、y方向の差動信号を、y1=fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo)としたが、この発明のセンサ付き転がり軸受装置では、y1=fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo)の代わりに、fi−fo、ri−ro、ti−to、bi−bo、fi+ri−(fo+ro)等、第1変位検出部を構成する4つのセンサのうちの少なくとも一つのセンサの出力と、この4つのセンサのうちの少なくとも一つのセンサに軸方向に略重なる上記第2変位検出部の少なくとも一つのセンサの出力との差を、y方向の差動信号として採用しても良い。
【0121】
上記実施形態では、5つの差動信号より、5つの荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを算出した。
【0122】
しかしながら、以下に説明するこの発明の他の実施形態のように、算出部としての信号処理部で、上記説明の演算の代わりに、以下に示す演算を行っても良い。
【0123】
車輪の半径は、動的に変動し固有値として扱うと誤差を生じる場合があるが、検出信号を車両制御に用いる場合、計測器レベルの精度(≦1〜2%)は必要がなく、タイヤ半径を固定値としても車両制御に大きな影響は出ない。また、実際の車両では、Mxのみが発生することは無く、Mxは、Fyによって発生する。したがって、タイヤ半径Rを、固定値と見なせばMx≒Fy×Rが成立する。
【0124】
このことから、fi−riと、ti−biと、fo−roと、to−roと、(fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo))とのうちの4つの値と、4行4列の定数行列と、Fy=Mx÷Rという関係式に基づいて、上記Fz、上記Fx、上記Fy、上記Mz、および、上記Mxを算出しても良い。
【0125】
具体的には、例えば、次の(4)式で、Fx、Fz、Mx、Mzを求め、その後、求められたMxから、Fy=Mx÷Rの式に基づいて、Fyを算出しても良い。
【0126】
先ず、上記図8〜図12より、下の関係(3)が成立する4行4列の定数行列を求める。
この4行4列の逆行列を使用して、
【0127】
尚、この場合、算出部としての信号処理部の記憶部には、ルックアップテーブルとして、上記pij(i,j=1〜4)の値が予めインプットされていることは言うまでもない。
【0128】
尚、上記(3)、(4)の代わりに、下の(5)、(6)式と、Fy=Mx÷Rとに基づいて、Fx、Fy、Fz、Mx、Mzを求めても良いことは、言うまでもない。
【0129】
先ず、上記図8〜図12より、下の関係(5)が成立する4行4列の定数行列を求める。
この4行4列の逆行列を使用して、
【0130】
尚、この場合、算出部としての信号処理部の記憶部には、ルックアップテーブルとして、上記qij(i,j=1〜4)の値が予めインプットされていることは言うまでもない。
【0131】
要は、以下のステップにより、Fx、Fy、Fz、Mx、および、Mzを算出することができる。
【0132】
すなわち、Fx、Fy、Fz、Mzの4元ベクトルか、または、Fx、Fz、Mz、Mxの4元ベクトルかいずれかを採用すると共に、5つの差動信号のうちの任意の4つの差動信号を採用する。その後、採用した4元ベクトルと、4つの差動信号に対して、上記(5)式に相当する式を作成して、4行4列の定数行列を求める。その後、その定数行列の逆行列から上記(6)式に相当する式を導き出す。最後に、採用した4つの差動信号の実際の値と、上記(6)式に相当する式と、Fy=Mx÷Rとから、上記Fx、Fy、Fz、Mx、および、Mzを算出する。
【0133】
この4行4列の定数行列を用いた、変形例によれば、4つの信号によって、5つの荷重を算出することができる。したがって、センサは、5つの信号でなくて、4つの信号を出力すれば良いから、センサ配置の自由度および被変位検出部の構造の自由度を格段に大きくすることができる。したがって、被変位検出部の加工を格段に簡略化できると共に、被変位検出部を、実装する形式の場合においては、被変位検出部の実装を格段に簡略化することができる。また、算出部としての信号処理部の演算を格段に簡略化することができる。
【0134】
尚、4行4列の定数行列を用いて、5つの荷重を算出する場合においても、(fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo))に代わりに、第1変位検出部の一つのセンサの出力から、その一つのセンサに上記軸方向に略重なる上記第2変位検出部の一つのセンサの出力を引いた値か、または、第1変位検出部の三つ以下のセンサの出力の和から、その三つ以下のセンサに上記軸方向に略重なる上記第2変位検出部の複数のセンサの出力の和を引いた値を使用しても良いことは、勿論である。尚、(fi+ri+ti+bi−(fo+ro+to+bo))を用いると、上下方向および前後方向を平均化することができて、好ましいことは言うまでもない。
【0135】
上記第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、第1軌道部材の外周面を全周に亘って取り巻くように形成されるコイル381,391と、そのコイル381,392と同じ基板の面に配置されると共に、磁場の変動を検出するコイル382,392との組が、軸方向に2列に配置されているから、回転速度の検出に加えて、センサ付き転がり軸受装置に作用している並進荷重およびモーメント荷重を検出できる。
【0136】
尚、上記第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、軸方向に3列に配置された2つのコイルからなる組のうちで、両端に位置する2つのコイルの組を変位センサとして使用する一方、中央に位置するコイルをABSセンサとして使用した。
【0137】
しかしながら、この発明では、環状溝331,332を形成する位置と、被回転速度検出部333を形成する位置とを、図13に示すように変えて、一端に位置するコイルの組をABSセンサとして使用する一方、他端と中央に位置する2つのコイルの組を変位センサとして使用しても良い。
【0138】
また、上記第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、第4コイル382に径方向に対向する部分、および、第6コイル392に径方向に対向する部分に、環状溝311,312を形成したが、この発明では、第4コイルに径方向に対向する部分、および、第6コイルに径方向に対向する部分に、環状溝の替わりに、環状でない凹部(例えば、穴)を形成しても良い。また、本発明では、第4コイルに径方向に対向する部分、および、第6コイルに径方向に対向する部分に、環状溝の替わりに、周辺とは透磁率が異なる磁性体からなる領域(周方向に環状でも、周方向に環状でなくてもどちらでも良い)を形成しても良い。このような構成でも、軸方向の変位を検出できるからである。
【0139】
図14は、本発明の第5実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の軸方向の断面図である。
【0140】
第5実施形態のセンサ付き転がり軸受は、第1乃至第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置(駆動輪用の車輪用転がり軸受装置)と異なり従動輪用の車輪用転がり軸受装置である。
【0141】
このセンサ付き転がり軸受装置は、内軸401、内輪402、第2軌道部材としての外輪403、第1の転動体としての複数の第1の玉404、第2の転動体としての複数の第2の玉405、ケース部材6、および、センサ装置410を備える。
【0142】
上記内軸401は、小径軸部419と、中径軸部420と、大径軸部421とを有している。上記小径軸部419の外周面には、ネジが形成されている。上記中径軸部420は、小径軸部419に段部418を介して連なると共に、小径軸部419の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部421は、中径軸部420の小径軸部419側とは反対側に位置している。上記大径軸部421は、中径軸部420に段部422を介して連なると共に、中径軸部420の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部421の外周面は、外周軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝を有し、この軌道溝の外径は、中径軸部420から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0143】
上記内軸401は、軸方向の大径軸部421側の端部に、ブレーキディスク(図示せず)を取り付けるための、ブレーキディスク取付用のフランジ450を有している。
【0144】
上記内輪402は、内軸401の中径軸部420の外周面に外嵌されて固定されている。上記内輪402の軸方向の大径軸部421側の端面は、上記段部422に当接している。上記内輪402は、その外周面の大径軸部421側に、外周軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝を有している。この軌道溝の外径は、大径軸部422から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0145】
上記内輪402の軸方向の大径軸部421側の端面は、段部422に当接している。図13に示すように、ナット463が、小径軸部419のネジに螺合している。上記内輪402の軸方向の大径軸部421側とは反対側の端面は、ナット463の軸方向の大径軸部421側の端面に当接している。上記ナット463を、軸方向の大径軸部421側に所定距離ネジ込むことにより、内輪402を、内軸401に確実に固定するようになっている。
【0146】
上記外輪403は、大径軸部421の径方向の外方に位置している。上記外輪403の内周面は、第1の内周軌道面としてのアンギュラ型の第1軌道溝と、第2の内周軌道面としてのアンギュラ型の第2軌道溝とを有している。上記複数の第1の玉404は、内輪402の軌道溝と、外輪403の第1軌道溝との間に、保持器によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されており、上記複数の第2の玉405は、内軸401の軌道溝と、外輪403の第2軌道溝との間に、保持器によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0147】
上記ケース部材406は、筒部材452と、円板状の蓋部材453とで構成されている。筒部材452の外周面の外輪403側の端部は、外輪403の内周面の小径軸部419側の端部に締まり嵌めにより内嵌されて固定されている。一方、蓋部材453は、筒部材452の外輪403側とは反対側の開口を閉塞している。詳しくは、蓋部材453は、円板部480と、円板部480に連なる筒状部481を有し、この筒状部481の内周面を、筒部材452の外輪403側とは反対側の端部の外周面に締まり嵌めにより外嵌して固定している。このようにして、センサ付き転がり軸受装置の内部へ異物が侵入するのを防止している。また、上記センサ装置410は、ケース部材406に固定されている。
【0148】
図15は、図14におけるセンサ装置410の周辺の拡大断面図である。
【0149】
上記センサ装置410は、センサ本体460と、ターゲット部材461とを有する。上記ターゲット部材461は、筒形状を有している。上記ターゲット部材461の軸方向の一端部は、内輪402の円筒外周面における軸方向の端部426に圧入によって押しこまれている。換言すると、ターゲット部材461の軸方向の一端部は、内輪402の外周面の一端部としての円筒外周面426に締まり嵌めにより外嵌されて固定されている。第5実施形態のセンサ付き転がり軸受では、内軸401、内輪402およびターゲット部材461が、第1軌道部材を構成している。
【0150】
上記センサ本体460は、樹脂製の環状の固定部材498と、環状の固定部材498の内周側に軸方向に等間隔に固定された5列の基板と、各基板の両側の面に配置された2組の平面状のコイルとからなる。
【0151】
上記固定部材498は、筒部材452の内周面に内嵌されて固定されている。また、図15に示すように、上記固定部材498および5つの基板は、数カ所で、ボルト499によって、筒部材452に固定されている。
【0152】
上記各基板は、筒部材452の径方向に延在し、各基板の延在方向の端面488は、ターゲット部材461の外周面に対向している。
【0153】
上記ターゲット部材461の外周面は、軸方向に2列に亘って周方向に延在する環状溝494,495を有すると共に、また、軸方向の所定の領域に、透磁率が違う第1部分496と第2部分が周方向に交互に配置された部分を有している。上記第2部分は、ターゲット部材461の上記軸方向の所定の領域以外の部分と同一の材質からなっている。
【0154】
上記センサ装置410は、環状溝494,495や、透磁率が違う第1部分496と第2部分が周方向に交互に配置された部分を用いて、上記詳細に説明した方法を用いて5つの荷重や、第1軌道部材に対する第2軌道部材の回転速度を検出している。
【0155】
上記第5実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、センサ装置410が、内輪402に固定されたターゲット部材461と、筒状部452に固定されたセンサ本体460とからなっている。このように、本発明では、センサ装置は、第1乃至第4実施形態のように、シール装置に固定される必要はなく、如何なる部材にも固定されることができる。
【0156】
尚、上記第1乃至第5実施形態のセンサ付き転がり軸受の製造装置では、センサ付き転がり軸受の転動体が玉であったが、この発明では、センサ付き転がり軸受の転動体は、ころであっても良く、ころおよび玉を含んでいても良い。
【0157】
また、この発明のセンサ付き転がり軸受装置が、例えば、磁気軸受装置等の車輪用転がり軸受装置以外の如何なる軸受装置であっても良いことは言うまでもない。上記実施形態で説明した本発明の構成を、複数のモーメント荷重や並進荷重を測定するニーズのある各種軸受装置に適用することができるのは、言うまでもないからである。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明のセンサ付き転がり軸受装置の第1実施形態である駆動輪用ハブユニットの軸方向の断面図である。
【図2】第1実施形態のセンサ付き転がり軸受装置が有するパックシール10の近傍の軸方向の拡大断面図である。
【図3】第1実施形態において、スリンガ、基板、第1コイルおよび第2コイルの位置関係を示す模式図である。
【図4】第2実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図である。
【図5】第3実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図である。
【図6】第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置における図2に対応する図である。
【図7】本明細書で使用する方向について説明する図である。
【図8】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図9】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図10】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図11】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図12】差動信号の値と、実際にハブユニットに係っている力または荷重との関係を調査した一実験例を示す図である。
【図13】第4実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の変形例における図2に対応する図である。
【図14】本発明の第5実施形態のセンサ付き転がり軸受装置の軸方向の断面図である。
【図15】図14におけるセンサ装置の周辺の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0159】
1 ハブ
2 内輪
3 外輪
4,5 玉
10 パックシール
70 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に軌道面を有する第1軌道部材と、
内周面に軌道面を有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置される複数の転動体と、
上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第1基板と、
上記第1基板の一方の側の第1面上に、上記第1軌道部材を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第1コイルと、
上記第1面上に配置された平面状の第2コイルと
を備え、
上記第1面において上記第2コイルが囲んでいる部分は、上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置し、
上記第1コイルの上記径方向の内方側で、かつ、上記第1コイルに上記径方向に対向する箇所に、上記第1軌道部材の周方向に延在する環状の被回転速度検出部を有し、
上記第2コイルは、上記回転速度検出部の構造に基づく上記第1コイルが生成する磁場の変動を検出し、
上記第2コイルが出力した信号に基づいて、上記第2軌道部材に対する上記第1軌道部材の回転速度を検出する回転速度検出部を備えることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1基板は、上記第2軌道部材の径方向に略平行に配置され、
上記第1基板の上記第1面に略平行な面を有すると共に、上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第2基板と、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記第2基板の上記貫通穴よりも径方向の外方に位置していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1基板の他方の側の第2面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項4】
請求項2に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1基板の他方の側の第2面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第5コイルと、
上記第2面上に配置された平面状の第6コイルと
を備え、
上記第2面において上記第6コイルが囲んでいる部分は、上記第1基板の上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1軌道部材と上記第2軌道部材との間をシールするシール装置を備え、
上記第1基板は、上記シール装置に固定されていることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記シール装置は、金属製の芯金部と、上記芯金部に固着されたゴム製の弾性部とを有し、
上記第1基板は、上記弾性部に固定されていることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項1】
外周面に軌道面を有する第1軌道部材と、
内周面に軌道面を有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置される複数の転動体と、
上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第1基板と、
上記第1基板の一方の側の第1面上に、上記第1軌道部材を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第1コイルと、
上記第1面上に配置された平面状の第2コイルと
を備え、
上記第1面において上記第2コイルが囲んでいる部分は、上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置し、
上記第1コイルの上記径方向の内方側で、かつ、上記第1コイルに上記径方向に対向する箇所に、上記第1軌道部材の周方向に延在する環状の被回転速度検出部を有し、
上記第2コイルは、上記回転速度検出部の構造に基づく上記第1コイルが生成する磁場の変動を検出し、
上記第2コイルが出力した信号に基づいて、上記第2軌道部材に対する上記第1軌道部材の回転速度を検出する回転速度検出部を備えることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1基板は、上記第2軌道部材の径方向に略平行に配置され、
上記第1基板の上記第1面に略平行な面を有すると共に、上記第1軌道部材が貫通している貫通穴を有する環状かつ板状の第2基板と、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2基板の上記第1面に略平行な面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記第2基板の上記貫通穴よりも径方向の外方に位置していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1基板の他方の側の第2面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第3コイルと、
上記第2面上に配置された平面状の第4コイルと
を備え、
上記第2面において上記第4コイルが囲んでいる部分は、上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項4】
請求項2に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1基板の他方の側の第2面上に、上記第1軌道部材の上記外周面を全周に亘って取り巻くように配置された平面状の第5コイルと、
上記第2面上に配置された平面状の第6コイルと
を備え、
上記第2面において上記第6コイルが囲んでいる部分は、上記第1基板の上記貫通穴よりも上記第1基板の径方向の外方に位置していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第1軌道部材と上記第2軌道部材との間をシールするシール装置を備え、
上記第1基板は、上記シール装置に固定されていることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記シール装置は、金属製の芯金部と、上記芯金部に固着されたゴム製の弾性部とを有し、
上記第1基板は、上記弾性部に固定されていることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−144897(P2009−144897A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325899(P2007−325899)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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