説明

センタピラー下部構造

【課題】車両側突時にセンタピラーの変形を抑制すると共に空調ダクトによる車室内空間の減少を防止する。
【解決手段】ガセット42の空調ダクト用上面開口部43とセンタピラー12の車幅方向内壁部12Bとの間に、ピラーダクト58の下部58Aが挿入されている。また、ガセット42と、センタピラー12と、フロア部を構成するガセットベース40とフロアパネル30と、で囲まれた三角部が空調ダクト用側面開口部60となっており、この空調ダクト用側面開口部60にフロアダクト62の後部62Aが挿入されている。更に、ピラーダクト58の下部58Aとフロアダクト62の後部62Aとはガセット42とガセットベース42との車幅方向外側、即ち、車室外側において互いに連結されており、空調された空気流がフロアダクト62からピラーダクト58へ送風されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両におけるセンタピラーの下部に空調用のダクトを配置するセンタピラー下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両におけるセンタピラーの下部に空調ダクトを配置するセンタピラー下部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、センタピラーの下端部位置に上方を向いて配置されたフロアダクトの起立部の開口部にピラーダクトの下端部を接続している。
【特許文献1】特開2003−285622号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のセンタピラー下部構造では、フロアダクトの起立部がセンタピラーの下部とロッカ(サイドシルともいう)の車幅方向内側部(車室内側部)に配置されている。このため、車両側突時にセンタピラーの車室内側方向への変形を抑制するための補強部材をセンタピラーの車幅方向内側に設けた構成では、フロアダクトの起立部を補強部材の車幅方向内側(車室内側)に配置する必要がある。この結果、車室内空間が狭くなる。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、車両側突時にセンタピラーの変形を抑制できると共に空調ダクトによる車室内空間の減少を防止できるセンタピラー下部構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明のセンタピラー下部構造は、車両側部の前後方向中間部にその長手方向を車両上下方向に沿って配置されたセンタピラーと、前記センタピラーの根元部に隣接するフロア部の上面に固定され、側面に空調ダクト用側面開口部が設けられ、上部に空調ダクト用上面開口部が設けられたガセット本体と、を有することを特徴とする。
【0006】
車両側部の前後方向中間部にその長手方向を車両上下方向に沿って配置されたセンタピラーの根元部に隣接するフロア部の上面に固定されたガセット本体の側面に空調ダクト用側面開口部が設けられており、ガセット本体の上部に空調ダクト用上面開口部が設けられている。このため、空調ダクトをガセット本体の空調ダクト用側面開口部と空調ダクト用上面開口部とに挿入することで、空調ダクトをガセット本体の車幅方向外側に配置できる。この結果、ガセット本体によって車両側突時にセンタピラーの変形を抑制できると共に空調ダクトが車室内に突出することがない。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載のセンタピラー下部構造において、前記空調ダクト用側面開口部は、前記ガセット本体と前記センタピラーと前記フロア部とで囲まれたコーナ部に形成されていることを特徴とする。
【0008】
空調ダクト用側面開口部がガセット本体とセンタピラーとフロア部とで囲まれたコーナ部に形成されている。このため、車両側突時にセンタピラーに作用する荷重をガセット本体を介してフロア部に伝達できる。この結果、ガセット本体による車両側突時のセンタピラーの変形抑制効果を損なうことなく、車室の車幅方向外側下部に配置された空調ダクトを空調ダクト用側面開口部に挿入できる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載のセンタピラー下部構造において、前記空調ダクト用上面開口部は、前記ガセット本体における車幅方向外側部の車両前後方向中間部に形成されていることを特徴とする。
【0010】
空調ダクト用上面開口部が、ガセット本体における車幅方向外側部の車両前後方向中間部に形成されている。このため、車両側突時にセンタピラーに作用する荷重をガセット本体の車両前後方向両端部を介してフロア部に伝達できる。この結果、ガセット本体による車両側突時のセンタピラーの変形抑制効果を損なうことなく、センタピラーに配置された空調ダクトを空調ダクト用上面開口部に挿入できる。
【0011】
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載のセンタピラー下部構造において、前記フロア部の上面へ固定されたガセットベースを有し、該ガセットベースに前記ガセット本体が取付けられることを特徴とする。
【0012】
フロア部の上面へ固定されたガセットベースにガセット本体が取付けられている。このため、車両側突時のセンタピラーからガセット本体に作用する荷重を、ガセットベースを介して車両のフロア部に確実に伝達できる。この結果、車両側突時のセンタピラーの変形を効果的に抑制できる。
【0013】
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載のセンタピラー下部構造において、前記ガセット本体と前記ガセットベースとが内部が連通された一体構造とされ、前記空調ダクト用側面開口部が車幅方向内側部に形成されていると共に前記空調ダクト用上面開口部が車幅方向外側部の車両前後方向中央部に形成されていることを特徴とする。
【0014】
ガセット本体とガセットベースとが一体構造とされているため、部品点数を低減できる。また、内部が連通された一体構造とされているガセット本体とガセットベースとの車幅方向内側部に空調ダクト用側面開口部が形成されていると共に車幅方向外側部の車両前後方向中央部に空調ダクト用上面開口部が形成されている。このため、車室の車幅方向中央下部に配置された空調ダクトを空調ダクト用側面開口部に挿入できると共にセンタピラーに配置された空調ダクトを空調ダクト用上面開口部に挿入できる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明のセンタピラー下部構造は、車両側突時にセンタピラーの変形を抑制できると共に空調ダクトによる車室内空間の減少を防止できる。
【0016】
請求項2記載の本発明のセンタピラー下部構造は、ガセット本体による車両側突時のセンタピラーの変形抑制効果を損なうことなく、車室の車幅方向外側下部に配置された空調ダクトを空調ダクト用側面開口部に挿入できる。
【0017】
請求項3記載の本発明のセンタピラー下部構造は、ガセット本体による車両側突時のセンタピラーの変形抑制効果を損なうことなく、センタピラーに配置された空調ダクトを空調ダクト用上面開口部に挿入できる。
【0018】
請求項4記載の本発明のセンタピラー下部構造は、車両側突時のセンタピラーの変形を効果的に抑制できる。
【0019】
請求項5記載の本発明のセンタピラー下部構造は、車両側突時のセンタピラーの変形抑制効果を損なうことなく、車室の車幅方向中央下部に配置された空調ダクトを空調ダクト用側面開口部に挿入できると共にセンタピラーに配置された空調ダクトを空調ダクト用上面開口部に挿入できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明におけるセンタピラー下部構造の第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0021】
なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印UPは車両上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0022】
図1に示される如く、本実施形態では、自動車車体の車幅方向両端下部に車両前後方向に沿って一対のロッカ10が配設されており、ロッカ10の車両前後方向中間部には、センターピラー12が車両上方へ向って立設されている。なお、図1では、車両右側のロッカ10とセンタピラー12を示している。
【0023】
ロッカ10はロッカ10の車幅方向外側部を構成するロッカアウタ14とロッカ10の車幅方向内側部を構成するロッカインナ16とを備えており、センターピラー12はセンターピラー12の車幅方向外側部を構成するセンタピラーアウタ18とセンターピラー12の車幅方向内側部を構成するセンタピラーインナ20とを備えている。
【0024】
図3に示される如く、センターピラー12の下部におけるセンタピラーアウタ18とセンタピラーインナ20との間にはシートベルトリトラクタ21が配置されている。また、ロッカ10の車幅方向内側には、ロッカ10と車幅方向に所定の間隔を開けてフロアメンバ22が長手方向を車両前後方向に沿って配置されおり、フロアメンバ22の車両前後方向から見た断面形状は、開口部を車両上方へ向けたハット断面形状となっている。
【0025】
ロッカインナ16とフロアメンバ22とはセンタピラー12の車幅方向内側において、フロアクロスメンバアウタ24によって連結されている。フロアクロスメンバアウタ24は長手方向を車幅方向に沿って配置されており、車幅方向外側端部24Aがロッカ10の車幅方向内側壁部10Aに、車幅方向内側端部24Bがフロアメンバ22の車幅方向外側壁部22Aにそれぞれ溶接等によって結合されている。
【0026】
図1に示される如く、フロアメンバ22の車幅方向内側におけるフロアクロスメンバアウタ24の車幅方向内側への延長線上には、フロアクロスメンバ26が長手方向を車幅方向に沿って配置されている。フロアクロスメンバ26の車幅方向から見た断面形状は、開口部を車両上方へ向けたハット断面形状となっており、車幅方向外側端部26Aがフロアメンバ22の車幅方向内側壁部22Bに溶接等によって結合されている。また、フロアメンバ22のフランジ22C、22Dの上面は、図1に二点鎖線で示すようにフロアパネル30の下面に溶接等によって結合されており、フロアパネル30の車幅方向外側端部30Aはロッカインナ16の上壁部16Aの上面に溶接等によって結合されている。
【0027】
図4に示される如く、フロアクロスメンバ26のフランジ26B、26Cの上面は、フロアパネル30の下面に溶接等によって結合されている。なお、図示を省略したが、フロアクロスメンバアウタ24の車幅方向から見た断面形状も開口部を車両上方へ向けたハット断面形状となっており、フロアクロスメンバアウタ24のフランジの上面もフロアパネル30の下面に溶接等によって結合されている。
【0028】
図1に示される如く、センタピラー12の根元部12Aに隣接するフロア部としてのフロアパネル30の上面にはガセット取付部を構成するセンタピラーガセットベース(以下ガセットベースという)40が設けている。また、センタピラー12とガセットベース40との間にはガセット本体としてのセンタピラーガセット(以下ガセットという)42が斜めに架設されている。
【0029】
図2に示される如く、ガセット42の取付面となっているガセットベース40の上壁部40Aは、略水平に配置された矩形状平面となっており、車両前後方向中央に車両下方へ凹んだ凹部41が車幅方向に沿って形成されている。また、ガセットベース40の上壁部40Aの前端からは車両下方へ向かって前壁部40Bが形成されており、前壁部40Bの下端からは車両前方へ向かってフランジ40Cが形成されている。同様に、ガセットベース40の上壁部40Aの後端からは車両下方へ向かって後壁部40Dが形成されており、後壁部40Dの下端からは車両後方へ向かってフランジ40Eが形成されている。
【0030】
ガセットベース40の上壁部40Aの車幅方向内側には、車幅方向内側下方へ向かって傾斜壁部40Fが形成されており、傾斜壁部40Fの車両前後方向両端部には、それぞれ車幅内側方向へ突出した凸部40G、40Hが長手方向を車幅方向外側上部から車幅方向内側下部に向かって斜めに形成されている。また、ガセットベース40の傾斜壁部40Fの下端からは車幅内側方向へ向かってフランジ40Jが形成されている。フランジ40Jの前端部はフランジ40Cの車幅方向内側端部に連結しており、フランジ40Jの後端部はフランジ40Eの車幅方向内側端部にそれぞれ連結している。
【0031】
一方、ガセットベース40の上壁部40Aの車幅方向外側には、車幅方向外側下方へ向かって傾斜壁部40Kが形成されており、傾斜壁部40Kの下端からは車幅外側方向へ向かってフランジ40Lが形成されている。また、フランジ40Lの前端部はフランジ40Cの車幅方向外側端部に連結しており、フランジ40Lの後端部はフランジ40Eの車幅方向外側端部に連結している。
【0032】
なお、ガセットベース40の各フランジ40C、40E、40J、40Lは、それぞれフロアパネル30の上面に溶接等によって結合されている。
【0033】
ガセット42における車両上側部は傾斜壁部42Aとなっている。この傾斜壁部42Aは車幅方向外側上方から車幅方向内側下方へ向かって傾斜しており、ガセットベース40の傾斜壁部40Fに連結されている。ガセット42の傾斜壁部42Aの前端からは車両下方へ向かって幅W1の前壁部42Bが形成されており、前壁部42Bの下端からは車両前方へ向かって下壁部42Cが形成されている。更に、下壁部42Cの前端からは車両下方へ向ってフランジ42Dが形成されている。同様に、ガセット42の傾斜壁部42Aの後端からは車両下方へ向かって幅W2の後壁部42Eが形成されており、後壁部42Eの下端からは車両後方へ向かって下壁部42Fが形成されている。更に、下壁部42Fの後端からは車両下方へ向ってフランジ42Gが形成されている。
【0034】
ガセット42の傾斜壁部42Aの車両前後方向両端部には、それぞれ車幅内側方向へ突出した凸部42H、42Jが長手方向を車幅方向外側上部から車幅方向内側下部に向かって斜めに形成されている。即ち、これらの凸部42H、42Jは車幅方向外側上方から車幅方向内側下方へ向かって傾斜しており、ガセットベース40の凸部40G、40Hに連結されている。
【0035】
ガセット42の傾斜壁部42Aの下端からは車幅方向内側へ向かってフランジ42Kが形成されている。フランジ42Kの前端部はフランジ42Cの車幅方向内側端部に連結しており、フランジ42Kの後端部はフランジ42Fの車幅方向内側端部に連結している。
【0036】
図1に示される如く、ガセット42の下壁部42C、42Fはガセットベース40の上壁部40Aの車両前後方向両端縁部に、フランジ42Kはガセットベース40の上壁部40Aの車幅方向内側部にそれぞれボルト等の締結部材(図示省略)によって取付け及び取外し可能に結合されている。また、ガセット42のフランジ42Dはガセットベース40の前壁部40Bにボルト等の締結部材(図示省略)によって取付け及び取外し可能に結合されており、図5に示される如く、ガセット42のフランジ42Gはガセットベース40の後壁部40Dにボルト等の締結部材(図示省略)によって取付け及び取外し可能に結合されている。
【0037】
従って、ガセット42は、ガセットベース40とフロアパネル30を介して、ロッカ10、フロアメンバ22、フロアクロスメンバアウタ24及びフロアクロスメンバ26に結合されている。
【0038】
図2に示される如く、ガセット42の前壁部42Bの車幅方向外側端からは車両前方へ向かってフランジ42Lが形成されており、ガセット42の後壁部42Eの車幅方向外側部には車幅方向外側へ向かってフランジ42Mが形成されている。また、ガセット42の傾斜壁部42Aの上端からは車両上方へ向かってフランジ42Nが形成されている。フランジ42Nの前端部はフランジ42Lの上端部に連結しており、フランジ42Nの後端部はフランジ42Mの上端部に連結している。
【0039】
図1に示される如く、ガセット42のフランジ42Lとフランジ42Nはセンタピラー12の車幅方向内壁部12Bの車幅方向内側面にボルト等の締結部材(図示省略)によって取付け及び取外し可能に結合されており、図5に示される如く、ガセット42のフランジ42Mは、センタピラー12の後壁部12Cの後面にボルト等の締結部材(図示省略)によって取付け及び取外し可能に結合されている。
【0040】
従って、車両側突時にセンタピラー12に作用する衝突荷重(図1の矢印F1)は、ガセット42の凸部42H、42Jとガセットベース40の凸部40G、40Hとを介して車両のフロア部に確実に伝達されるようになっている。
【0041】
図2に示される如く、ガセット42における上部の車両前後方向中央部には、車両上方から空調ダクト用上面開口部43が形成されている。この空調ダクト用上面開口部43はフランジ42Nから、ガセット42の傾斜壁部42Aの上部における凸部42Hと凸部42Jとの間となる部位まで形成されており、長手方向から見た断面形状が断面コ字状とされた凸部42H、42Jの各稜線Sを切らない位置に形成されている。
【0042】
なお、凸部42H、42Jの各稜線Sには、車両側突時にセンタピラー12に作用する衝突荷重F1が集中する。このため、ガセット42の前壁部42Bの幅W1と後壁部42Eの幅W2が狭くなると衝突荷重F1によってガセット42が変形し易くなる。従って、ガセット42の前壁部42Bの幅W1と後壁部42Eの幅W2は、それぞれ衝突荷重F1が所定値を超えない状態では、ガセット42の変形を防止できる幅以上に設定されている。
【0043】
図1に示される如く、ガセット42の空調ダクト用上面開口部43とセンタピラー12の車幅方向内壁部12Bとの間には、空調ダクトとしてのピラーダクト58の下部58Aが挿入されており、ピラーダクト58は長手方向を車両上下方向に沿って配置されている。
【0044】
また、ガセット42と、センタピラー12と、フロア部を構成するガセットベース40とフロアパネル30と、で囲まれた車両前方側のコーナ部である三角部は空調ダクト用側面開口部60となっており、空調ダクト用側面開口部60には空調ダクトとしてのフロアダクト62の後部62Aが挿入されている。なお、フロアダクト62の後部62Aは長手方向を車両前後方向に沿って配置されている。
【0045】
図5に示される如く、ピラーダクト58の下部58Aとフロアダクト62の後部62Aとはガセット42とガセットベース40との車幅方向外側、即ち、車室外側において互いに連結されており、空調された空気流がフロアダクト62からピラーダクト58へ送風されるようになっている。
【0046】
従って、ピラーダクト58とフロアダクト62との連結部が、ガセット42とガセットベース42との車幅方向内側、即ち、車室内側に突出しないようになっている。
【0047】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0048】
本実施形態では、ガセット42の空調ダクト用上面開口部43とセンタピラー12の車幅方向内壁部12Bとの間に、ピラーダクト58の下部58Aが挿入されている。また、ガセット42と、センタピラー12と、フロア部を構成するガセットベース40とフロアパネル30と、で囲まれた車両前方側の三角部が空調ダクト用側面開口部60となっており、この空調ダクト用側面開口部60にフロアダクト62の後部62Aが挿入されている。更に、ピラーダクト58の下部58Aとフロアダクト62の後部62Aとはガセット42とガセットベース42との車幅方向外側、即ち、車室外側において互いに連結されており、空調された空気流がフロアダクト62からピラーダクト58へ送風されるようになっている。
【0049】
この結果、本実施形態では、ピラーダクト58とフロアダクト62とを、ガセット42とガセットベース42との車幅方向外側に配置でき、ピラーダクト58とフロアダクト62とが、ガセット42とガセットベース42との車幅方向内側、即ち、車室内側に突出することがない。このため、ピラーダクト58とフロアダクト62による車室内空間の減少を防止できる。また、ピラーダクト58とフロアダクト62とシート等の車室内の内装品との干渉を防止できる。
【0050】
また、本実施形態では、車室の車幅方向外側下部に配置されたフロアダクト62を空調ダクト用側面開口部60に挿入できると共にセンタピラー12に配置されたピラーダクト58をガセット42の空調ダクト用上面開口部43に挿入できる。このため、フロアダクト62とピラーダクト58とを容易に連結できる。
【0051】
また、本実施形態では、センタピラー12の根元部12Aに隣接するフロアパネル30の上面にガセットベース40が設けられており、センタピラー12とガセットベース40との間にガセット42が架設されている。更に、ガセット42の空調ダクト用上面開口部43が、凸部42H、42Jの各稜線Sを切らないように形成されており、空調ダクト用側面開口部60が、ガセット42の前壁部42Bの幅W1を狭くしないように形成されている。このため、車両側突時に、他車両のフロントバンパ等がセンタピラー12に衝突し、センタピラー12に衝突荷重(図1の矢印F1)が作用した場合には、衝突荷重F1をガセット42の凸部42H、42Jとガセットベース40の凸部40G、40Hとを介して車両のフロア部に確実に伝達できる。この結果、車両側突時のセンタピラー12の車幅方向内側への変形を確実に抑制できる。
【0052】
次に、本発明におけるセンタピラー下部構造の第2実施形態を図6に従って説明する。
【0053】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図6に示される如く、本実施形態では、ガセット42の凸部42Hの上端部に空調ダクト用上面前側開口部70が形成されており、凸部42Jの上端部に空調ダクト用上面後側開口部72が形成されている。また、ガセット42の傾斜壁部42Aの上部42Pがセンタピラー12の車幅方向内壁部12Bにボルト等の締結部材(図示省略)によって取付け及び取外し可能に結合されている。
【0055】
この結果、ガセット42の凸部42Hと凸部42Jの各上部において、ガセット42とセンタピラー12とによって断面矩形状の閉断面部74と閉断面部76とがそれぞれの長手方向を車両上下方向に沿って形成されている。このため、これらの閉断面部74、76によって、ガセット42とセンタピラー12との結合部の剛性を向上できるようになっている。
【0056】
また、空調ダクト用上面前側開口部70には、空調ダクトとしてのヒータ用のピラーダクト78の下部78Aが挿入されており、例えば、空調ダクト用側面開口部60に挿入された空調ダクトとしてのヒータ用のフロアダクト80からの温風を、ピラーダクト78を介してセンタピラー12の下方の部位から後席に着座した乗員の膝部に送風できるようになっている。
【0057】
一方、空調ダクト用上面後側開口部72には、空調ダクトとしてのエアコン用のピラーダクト84の下部84Aが挿入されており、例えば、空調ダクト用側面開口部60に挿入された空調ダクトとしてのエアコン用のフロアダクト86からの冷風を、ピラーダクト84を介してセンタピラー12の上方の部位からリヤサイドドアガラスに送風してドアガラスの曇りを消すことができるようになっている。
【0058】
また、ガセット42における凸部42Hと凸部42Jとの間にダクトを配置しないため、凸部42Hと凸部42Jとの間の部位をシートベルトの経路として使用できるようになっている。この結果、シートベルトリトラクタ21から車両上方へ延びるシートベルトの経路を車室内側部から覆うセンタピラーガーニッシュ(図示省略)の車室内側面を車幅方向外側、即ち、車室外側へ配置できるようになっている。
【0059】
従って、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、ガセット42とセンタピラー12とによって形成された閉断面部74と閉断面部76とによって、ガセット42とセンタピラー12との結合部の剛性を向上でき、車両側突時のセンタピラー12の車幅方向内側への変形を更に抑制できる。
【0060】
また、ガセット42に形成された空調ダクト用上面前側開口部70と空調ダクト用上面後側開口部72とを利用して異なる空調が行われた空気流をセンタピラー12に設けられた異なる吹出し口へそれぞれ送風できる。
【0061】
更に、ガセット42における凸部42Hと凸部42Jとの間の部位をシートベルトの経路として使用できるため、シートベルトの経路を車室内側部から覆うピラーガーニッシュの車室内側面を車室外側へ配置できる。この結果、車室内空間を拡大できる。
【0062】
次に、本発明におけるセンタピラー下部構造の第3実施形態を図7に従って説明する。
【0063】
なお、第2実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図7に示される如く、本実施形態では、第2実施形態における空調ダクト用上面前側開口部70を無くし、空調ダクト用上面後側開口部72のみを形成した構成になっている。即ち、ガセット42の凸部42Jの上部において、ガセット42とセンタピラー12とによって断面矩形状の閉断面部76が形成されており、空調ダクト用上面後側開口部72には、ピラーダクト84の下部84Aが挿入されている。
【0065】
従って、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、ガセット42とセンタピラー12とによって形成された閉断面部76とによって、ガセット42とセンタピラー12との結合部の剛性を向上でき、車両側突時のセンタピラー12の車幅方向内側への変形を更に抑制できる。また、ガセット42における凸部42Hと凸部42Jとの間の部位をシートベルトの経路として使用できるため、シートベルトの経路を車室内側部から覆うピラーガーニッシュの車室内側面を車室外側へ配置できる。この結果、車室内空間を拡大できる。
【0066】
次に、本発明におけるセンタピラー下部構造の第4実施形態を図8に従って説明する。
【0067】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0068】
図8に示される如く、本実施形態のガセット90は、ガセット90の上部を構成するガセット42と、ガセット90の下部を構成するガセットベース40とが、プレス成形等によって内部が連通された一体構造となっている。また、ガセット90における凸部42Hと凸部42Jとの間は、車両下方側に凹んだ凹部90Aとなっており、ガセット90の車幅方向内側部には、車幅方向内側に向って延びる延設部90Bが形成されている。
【0069】
ガセット90の延設部90Bでは、凸部42Hと凸部42Jとの前後方向の間隔が狭くなっており、延設部90Bの車幅方向内側端部には、車幅方向内側下方へ向かって傾斜壁部90Cが形成されている。また、傾斜壁部90Cの下端からは車幅内側方向へ向かってフランジ90Dが形成されている。フランジ90Dの前端部はフランジ40Cの車幅方向内側端部に連結しており、フランジ90Dの後端部はフランジ40Eの車幅方向内側端部に連結している。
【0070】
なお、ガセット90のフランジ90Dとフランジ40C、40Eはフロアパネル30の上面にボルト等の締結部材(図示省略)によって取付け及び取外し可能に結合されている。
【0071】
ガセット90の凹部90Aにおける底部の車幅方向外側部には、車幅方向外側から矩形状の空調ダクト用上面開口部93が形成されており、空調ダクト用上面開口部93とセンタピラー12の車幅方向内壁部12Bとの間には、ピラーダクト58の下部58Aが挿入されている。また、ピラーダクト58の下部58Aとフロアダクト62の後部62Aとはガセット90の内側において互いに連結されており、空調された空気流がフロアダクト62からピラーダクト58へ送風されるようになっている。
【0072】
従って、本実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、ガセット90の上部を構成するガセット42と、ガセット90の下部を構成するガセットベース40とを一体構造としたため部品点数を低減できる。
【0073】
次に、本発明におけるセンタピラー下部構造の第5実施形態を図9に従って説明する。
【0074】
なお、第4実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図9に示される如く、本実施形態では、ガセット90における車幅方向内側端部90Eに空調ダクト用側面開口部92が形成されており、空調ダクト用側面開口部92とフロアパネル30の間には車室の車幅方向中央下部に配置された空調ダクトとしてのフロアダクト94の車幅方向外側部94Aが挿入されている。また、ピラーダクト58の下部58Aとフロアダクト94の車幅方向外側部94Aとがガセット90内において互いに連結されており、空調された空気流がフロアダクト94からピラーダクト58へ送風されるようになっている。
【0076】
従って、本実施形態では、第4実施形態と同様の作用効果が得られると共に、車室の車幅方向中央下部に配置されたフロアダクト94の車幅方向外側部94Aを空調ダクト用側面開口部92に挿入できる。このため、フロアダクト94とピラーダクト58とを容易に連結できる。
【0077】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1〜3実施形態では、フロアパネル30の上面にガセットベース40を取付けたが、これに代えて、フロアパネル30にプレス加工等によってガセットベース40を一体成型した構成としても良い。
【0078】
また、ガセット42の形状は上記第1〜3実施形態に限定されず、センタピラー12とガセットベース40との間に架設可能な形状であれば他の形状であっても良い。
【0079】
また、上記各実施形態では、空調された空気流の方向を、空調ダクト用側面開口部から空調ダクト用上面開口部へ流れる構成としたが、これに代えて、空調された空気流の方向を、空調ダクト用上面開口部から空調ダクト用側面開口部へ流れる構成としても良い。
【0080】
また、上記各実施形態では、ガセット42と、センタピラー12と、フロア部を構成するガセットベース40とフロアパネル30と、で囲まれた車両前方側のコーナ部を空調ダクト用側面開口部60としたが、ガセット42と、センタピラー12と、フロア部を構成するガセットベース40とフロアパネル30と、で囲まれた車両後方側のコーナ部を空調ダクト用側面開口部としても良い。
【0081】
また、上記各実施形態における各ダクトの材料は、金属板、合成樹脂などの材料で構成されており、特に限定されない。また、各ダクトの断面形状も矩形、丸形など特に限定されない。
【0082】
また、上記各実施形態における各ダクトはガセット42と一体構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセンタピラー下部構造を示す車両斜め前方内側から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るセンタピラー下部構造のガセットとガセットベースを示す車両斜め前方内側から見た分解斜視図である。
【図3】図1の3−3線に沿った拡大断面図である。
【図4】図1の4−4線に沿った拡大断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るセンタピラー下部構造の要部を示す車両斜め後方内側から見た斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るセンタピラー下部構造を示す図5に対応する斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るセンタピラー下部構造を示す図5に対応する斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るセンタピラー下部構造を示す図2に対応する斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係るセンタピラー下部構造を示す図2に対応する斜視図である。
【符号の説明】
【0084】
10 ロッカ
12 センターピラー
12A センタピラーの根元部
22 フロアメンバ
24 フロアクロスメンバアウタ
26 フロアクロスメンバ
30 フロアパネル(フロア部)
40 センタピラーガセットベース(ガセットベース)
42 センタピラーガセット(ガセット本体)
43 空調ダクト用上面開口部
58 ピラーダクト(空調ダクト)
60 空調ダクト用側面開口部
62 フロアダクト(空調ダクト)
70 空調ダクト用上面前側開口部
72 空調ダクト用上面後側開口部
78 ピラーダクト(空調ダクト)
80 フロアダクト(空調ダクト)
84 ピラーダクト(空調ダクト)
86 フロアダクト(空調ダクト)
90 ガセット
92 空調ダクト用側面開口部
93 空調ダクト用上面開口部
94 フロアダクト(空調ダクト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部の前後方向中間部にその長手方向を車両上下方向に沿って配置されたセンタピラーと、
前記センタピラーの根元部に隣接するフロア部の上面に固定され、側面に空調ダクト用側面開口部が設けられ、上部に空調ダクト用上面開口部が設けられたガセット本体と、
を有することを特徴とするセンタピラー下部構造。
【請求項2】
前記空調ダクト用側面開口部は、前記ガセット本体と前記センタピラーと前記フロア部とで囲まれたコーナ部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンタピラー下部構造。
【請求項3】
前記空調ダクト用上面開口部は、前記ガセット本体における車幅方向外側部の車両前後方向中間部に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンタピラー下部構造。
【請求項4】
前記フロア部の上面へ固定されたガセットベースを有し、該ガセットベースに前記ガセット本体が取付けられることを特徴とする請求項1に記載のセンタピラー下部構造。
【請求項5】
前記ガセット本体と前記ガセットベースとが内部が連通された一体構造とされ、前記空調ダクト用側面開口部が車幅方向内側部に形成されていると共に前記空調ダクト用上面開口部が車幅方向外側部の車両前後方向中央部に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のセンタピラー下部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−190992(P2007−190992A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9619(P2006−9619)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】