説明

ゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素分離回収システム

【課題】 排ガス中の二酸化炭素(CO)の分離回収について、顕著な二酸化炭素の透過性・分離選択性を発揮する、ゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素の分離回収システムを提供する。
【解決手段】 排ガス中のCOを分離回収するシステムは、加圧された排ガス中の水分を水分離膜7の透過側へ分離除去し、水分濃度を低減させる膜型脱水器8と、除湿された非透過側ガスから、二酸化炭素分離膜10の透過側にCOを濃縮したガスを生成させる分離濃縮器11と、CO濃度が低減した非透過側の残留排ガスから、二酸化炭素分離膜13の透過側へCOを選択的に透過させ、非透過側ガスのCO濃度を低減させる分離除去器14とを具備し、二酸化炭素分離膜10、および二酸化炭素分離膜13のうち少なくとも1つが、ゼオライト膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素(CO)分離回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
代表的な地球温暖化ガスである二酸化炭素(CO)は、発電所、セメントプラント、鉄鋼プラント、化学プラントなどから排出されているが、地球温暖化防止の観点から二酸化炭素(CO)の高効率回収技術の開発が急務となっている。
【0003】
従来、二酸化炭素(CO)の回収法としては、化学吸収法、物理吸着法などが知られているが、吸収液または吸着剤の再生に伴うエネルギー消費が大きく、より高効率な二酸化炭素(CO)の分離回収システムの開発が期待されている。
【0004】
ところで、ゼオライト膜による膜分離法は、連続的操作が可能で、吸収液または吸着剤の再生が不要であることから、高効率な二酸化炭素(CO)の分離回収技術として期待が高まっている。
【0005】
例えば、下記の特許文献1では、排ガス中の二酸化炭素(CO)を高効率で回収するための膜分離プロセスが提案されている。
【0006】
また、下記の非特許文献1には、排ガスの主成分である窒素からの二酸化炭素分離に関しては、現在、種々の有機高分子膜が報告されている。
【0007】
さらに、下記の特許文献2と3には、有機高分子膜よりも耐久性に優れる無機膜として、例えばFAU型(Y型)などのゼオライト膜によっても二酸化炭素(CO)/窒素(N)の分離が可能であることが報告されている。
【0008】
下記の非特許文献2には、FAU型ゼオライト(X型およびY型)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US20110005272A1
【特許文献2】特許第3770504号公報
【特許文献3】特開2009−11980号公報
【非特許文献1】A. Brunetti et al. ‘Membrane technologies for CO2 separation’Journal of Membrane Science 359 (2010) 115-125.
【非特許文献2】小野嘉夫・八嶋建明/編 「ゼオライトの科学と工学」、談社サイエンティフィック(2000)p8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者らが特許文献1中で開示されている膜分離器への供給ガス条件、すなわち、特許文献1のTABLE4−10のMembrane Feed (108)、TABLE11、12のMembrane Feed (208)、およびTABLE13、14のFeed to CO Capture、具体的には、二酸化炭素(CO)濃度17.4−42.4%、窒素(N)濃度50.1−71.8%、水分(HO)濃度0.7−7.4%の範囲において、A型、FAU型、MOR型、ZSM−5型など、種々のゼオライト膜を用いて、二酸化炭素(CO)/窒素(N)の分離試験を行ったが、二酸化炭素(CO)の透過性が、既往の有機高分子膜に比べ低いのが実情であるという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、排ガス中の二酸化炭素(CO)の分離回収について、顕著な二酸化炭素(CO)の透過性・分離選択性を発揮する、ゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素の分離回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、二酸化炭素分離器へ供給される混合ガス中の水分濃度を2000ppm以下、好ましくは1000pp以下の状態に保つことによってゼオライト膜は既往の有機高分子を上回る透過分離性能を発揮しうること、一方で二酸化炭素分離膜雰囲気を乾燥状態に保つためのエネルギー消費を最小限に抑えるためは、種々の膜型二酸化炭素分離器、コンプレッサー、真空ポンプ、コンデンサー、およびリサイクルガスラインを効果的に組合せる必要があることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、窒素、酸素、水分、および10〜50%の二酸化炭素(CO)を含む排ガス(4)中の二酸化炭素(CO)を分離回収するシステムであって、排ガス(6)中の水分を水分離膜(7)の透過側へ分離除去し、非透過側ガス(9)の水分濃度を1〜2000ppmの範囲に低減させる膜型脱水器(8)と、膜型脱水器(8)により除湿された非透過側ガス(9)から、二酸化炭素分離膜(10)の透過側に二酸化炭素(CO)を濃度40〜99%まで濃縮したガス(19)を生成させる膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)と、濃縮器(11)により二酸化炭素濃度を5〜15%に低減した非透過側の二酸化炭素残留排ガス(12)から、二酸化炭素分離膜(13)の透過側へ二酸化炭素(CO)を選択的に透過させ、非透過側ガス(15)の二酸化炭素濃度を0.1〜5%に低減させる膜型二酸化炭素分離除去器(14)と、二酸化炭素分離膜(13)の非透過側ガス(15)を、上記膜型脱水器(8)の透過側のスウィープガスとして用い、水分離膜(7)を透過した水分を膜型脱水器(8)から系外へと排気するためのガス排出ライン(16)と、空気または酸素富化空気(17)を膜型二酸化炭素分離除去器(14)の透過側のスウィープガスとして用い、二酸化炭素分離膜(13)を透過した二酸化炭素(CO)を同伴させた混合スウィープガス(18)を燃料(1)とともに燃焼プロセス(3)へと供給する配管ライン(2)と、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)の透過側を減圧に保つための真空ポンプ(20)とを具備し、上記膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、および膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)のうち少なくとも1つが、ゼオライト膜であることを特徴としている。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、真空ポンプ(20)後段の二酸化炭素濃縮ガス(21)を加圧するためのコンプレッサー(22)と、コンプレッサー(22)により加圧された二酸化炭素濃縮ガス(23)から液化二酸化炭素(25)を生成させるコンデンサー(24)と、コンデンサー(24)より排出される加圧された二酸化炭素残留ガス(26)から二酸化炭素分離膜(27)の透過側に二酸化炭素(CO)を分離回収する膜型二酸化炭素分離回収器(28)と、回収器(28)により回収された二酸化炭素(CO)をコンプレッサー(22)の前段までリサイクルするガスリサイクルライン(30)とを具備し、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、および膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)のうち少なくとも1つが、ゼオライト膜であることを特徴としている。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、排ガス(4)を絶対圧0.1〜0.8MPaに加圧するコンプレッサー(5)を具備することを特徴としている。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、ゼオライト膜が、FAU(フォージャサイト)型ゼオライトを含有するゼオライト膜であることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明は、請求項4に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、FAU型ゼオライト膜が、乾燥条件下で、温度100〜600℃で加熱脱水処理された後、そのまま乾燥状態で保たれていることを特徴としている。
【0018】
請求項6の発明は、請求項4または5に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、FAU型ゼオライト膜を構成するFAU型ゼオライトの細孔内の結晶水の数が、単位胞あたり0〜96分子の状態で保たれていることを特徴としている。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、および膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)が、温度0〜60℃の範囲で使用されることを特徴としている。
【0020】
請求項8の発明は、請求項2に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、および膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)が、温度0〜60℃の範囲で使用されることを特徴としている。
【0021】
請求項9の発明は、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、膜型脱水器(8)の水分離膜(7)が、A型ゼオライト膜であることを特徴としている。
【0022】
請求項10の発明は、請求項1または8に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、さらに、回収器(28)より排出される加圧された二酸化炭素低減残留ガス(29)を、燃料供給配管ライン(2)上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(A)、同二酸化炭素低減残留ガス(29)を、除湿された混合ガス(9)の移送ライン上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(B)、および同二酸化炭素低減残留ガス(29)を、二酸化炭素分離膜(13)を透過した二酸化炭素(CO)を同伴させた混合スウィープガス(18)の移送ライン上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(C)のうちの少なくとも1つのリサイクルガス移送ラインを具備することを特徴としている。
【0023】
請求項11の発明は、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、排ガス(4)中の水分および不純物を低減するため、コンプレッサー(5)の前段および後段のうちの少なくともいずれか一方に、コンデンサーを設置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明は、窒素、酸素、水分、および10〜50%の二酸化炭素(CO)を含む排ガス(4)中の二酸化炭素(CO)を分離回収するシステムであって、排ガス(6)中の水分を水分離膜(7)の透過側へ分離除去し、非透過側ガス(9)の水分濃度を1〜2000ppmの範囲に低減させる膜型脱水器(8)と、膜型脱水器(8)により除湿された非透過側ガス(9)から、二酸化炭素分離膜(10)の透過側に二酸化炭素(CO)を濃度40〜99%まで濃縮したガス(19)を生成させる膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)と、濃縮器(11)により二酸化炭素濃度を5〜15%に低減した非透過側の二酸化炭素残留排ガス(12)から、二酸化炭素分離膜(13)の透過側へ二酸化炭素(CO)を選択的に透過させ、非透過側ガス(15)の二酸化炭素濃度を0.1〜5%に低減させる膜型二酸化炭素分離除去器(14)と、二酸化炭素分離膜(13)の非透過側ガス(15)を、上記膜型脱水器(8)の透過側のスウィープガスとして用い、水分離膜(7)を透過した水分を膜型脱水器(8)から系外へと排気するためのガス排出ライン(16)と、空気または酸素富化空気(17)を膜型二酸化炭素分離除去器(14)の透過側のスウィープガスとして用い、二酸化炭素分離膜(13)を透過した二酸化炭素(CO)を同伴させた混合スウィープガス(18)を燃料(1)とともに燃焼プロセス(3)へと供給する配管ライン(2)と、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)の透過側を減圧に保つための真空ポンプ(20)とを具備し、上記膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、および膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)のうち少なくとも1つが、ゼオライト膜であることを特徴とするもので、請求項1の発明によれば、排ガス中の二酸化炭素(CO)の分離回収について、二酸化炭素分離濃縮器(11)へ供給される混合ガス中の水分濃度を2000ppm以下、好ましくは1000pp以下の状態に保つことによって顕著な二酸化炭素(CO)の透過性・分離選択性を発揮する、ゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素の分離回収システムを提供することができるという効果を奏する。
【0025】
さらに、膜型脱水器(8)、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)、および膜型二酸化炭素除去器(14)のガスラインの組合せにより排ガス脱水を効率良く行えるという効果を奏する。
請求項2の発明は、請求項1に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、真空ポンプ(20)後段の二酸化炭素濃縮ガス(21)を加圧するためのコンプレッサー(22)と、コンプレッサー(22)により加圧された二酸化炭素濃縮ガス(23)から液化二酸化炭素(25)を生成させるコンデンサー(24)と、コンデンサー(24)より排出される加圧された二酸化炭素残留ガス(26)から二酸化炭素分離膜(27)の透過側に二酸化炭素(CO)を分離回収する膜型二酸化炭素分離回収器(28)と、回収器(28)により回収された二酸化炭素(CO)をコンプレッサー(22)の前段までリサイクルするガスリサイクルライン(30)とを具備し、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、および膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)のうち少なくとも1つが、ゼオライト膜であることを特徴とするもので、請求項2の発明によれば、回収した二酸化炭素濃縮ガスから、有価物として販売可能な液化二酸化炭素を製造できるという効果を奏する。
【0026】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、排ガス(4)を絶対圧0.1〜0.8MPaに加圧するコンプレッサー(5)を具備することを特徴とするもので、請求項3の発明によれば、排ガス(4)の絶対圧を上昇させることにより膜透過の駆動力が向上し、分離に必要な膜面積の低減による膜分離器の小型化という効果を奏する。
【0027】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、ゼオライト膜が、FAU型ゼオライトを含有するゼオライト膜であることを特徴とするもので、請求項4の発明によれば、ゼオライト膜の中でも二酸化炭素の高い透過性と分離選択性が得られるという効果を奏する。
【0028】
請求項5の発明は、請求項4に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、FAU型ゼオライト膜が、乾燥条件下で、温度100〜600℃で加熱脱水処理された後、そのまま乾燥状態で保たれていることを特徴とするもので、請求項5の発明によれば、二酸化炭素の高い透過性が得られるという効果を奏する。
【0029】
請求項6の発明は、請求項4または5に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、FAU型ゼオライト膜を構成するFAU型ゼオライトの細孔内の結晶水の数が、単位胞あたり0〜96分子の状態で保たれていることを特徴とするもので、請求項6の発明によれば、二酸化炭素の高い透過性が得られるという効果を奏する。
【0030】
請求項7の発明は、請求項1に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、および膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)が、温度0〜60℃の範囲で使用されることを特徴とするもので、請求項7の発明によれば、二酸化炭素の高い分離選択性が得られるという効果を奏する。
【0031】
請求項8の発明は、請求項2に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、および膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)が、温度0〜60℃の範囲で使用されることを特徴とするもので、請求項8の発明によれば、二酸化炭素の高い分離選択性が得られるという効果を奏する。
【0032】
請求項9の発明は、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、膜型脱水器(8)の水分離膜(7)が、A型ゼオライト膜であることを特徴とするもので、請求項9の発明によれば、有機高分子膜に比べ高い耐久性が得られるという効果を奏する。
【0033】
請求項10の発明は、請求項1または8に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、さらに、回収器(28)より排出される加圧された二酸化炭素低減残留ガス(29)を、燃料供給配管ライン(2)上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(A)、同二酸化炭素低減残留ガス(29)を、除湿された混合ガス(9)の移送ライン上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(B)、および同二酸化炭素低減残留ガス(29)を、二酸化炭素分離膜(13)を透過した二酸化炭素(CO)を同伴させた混合スウィープガス(18)の移送ライン上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(C)のうちの少なくとも1つのリサイクルガス移送ラインを具備することを特徴とするもので、請求項10の発明によれば、外部に排気される二酸化炭素量を低減できるという効果を奏する。
【0034】
請求項11の発明は、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムであって、排ガス(4)中の水分および不純物を低減するため、コンプレッサー(5)の前段および後段のうちの少なくともいずれか一方に、コンデンサーを設置することを特徴とするもので、請求項11の発明によれば、後段の分離膜の寿命が不純物汚染によって短縮するのを防止するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素分離回収システムの実施形態を示すフローシートである。
【図2】本発明の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムにおいて使用するゼオライト膜と、従来の非特許文献1に記載のゼオライト膜(抜粋)との性能を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
図1は、本発明のゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素分離回収システムの実施形態を示すフローシートである。
【0038】
同図を参照すると、本発明のゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素分離回収システムは、窒素(N)、酸素(O)、水分(HO)、および10〜50%の二酸化炭素(CO)を含む排ガス(4)中の二酸化炭素(CO)を分離回収するシステムであって、排ガス(4)を絶対圧0.1〜0.8MPaに加圧するコンプレッサー(5)と、コンプレッサー(5)により加圧された排ガス(6)中の水分を水分離膜(7)の透過側へ分離除去し、非透過側ガス(9)の水分濃度を1〜2000ppm、好ましくは1〜1000ppmの範囲に低減させる膜型脱水器(8)と、膜型脱水器(8)により除湿された非透過側ガス(9)から、二酸化炭素分離膜(10)の透過側に二酸化炭素(CO)を濃度40〜99%まで濃縮したガス(19)を生成させる膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)と、濃縮器(11)により二酸化炭素濃度を5〜15%に低減した非透過側の二酸化炭素残留排ガス(12)から、二酸化炭素分離膜(13)の透過側へ二酸化炭素(CO)を選択的に透過させ、非透過側ガス(15)の二酸化炭素濃度を0.1〜5%に低減させる膜型二酸化炭素分離除去器(14)と、二酸化炭素分離膜(13)の非透過側ガス(15)を、上記膜型脱水器(8)の透過側のスウィープガスとして用い、水分離膜(7)を透過した水分を膜型脱水器(8)から系外へと排気するためのガス排出ライン(16)と、空気または酸素富化空気(17)を膜型二酸化炭素分離除去器(14)の透過側のスウィープガスとして用い、二酸化炭素分離膜(13)を透過した二酸化炭素(CO)を同伴させた混合スウィープガス(18)を燃料(1)とともに燃焼プロセス(3)へと供給する配管ライン(2)と、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)の透過側を減圧に保つための真空ポンプ(20)と、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)の透過側を減圧に保つための真空ポンプ(20)とを具備し、上記膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、および膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)のうち少なくとも1つが、ゼオライト膜であることを特徴としている。
【0039】
本発明によれば、排ガス中の二酸化炭素(CO)の分離回収について、二酸化炭素分離濃縮器(11)へ供給される混合ガス中の水分濃度を2000ppm以下、好ましくは1000pp以下の状態に保つことによって顕著な二酸化炭素(CO)の透過性・分離選択性を発揮する、ゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素の分離回収システムを提供することができる。
【0040】
さらに、膜型脱水器(8)、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)、および膜型二酸化炭素除去器(14)のガスラインの組合せにより排ガス脱水を効率良く行える。
【0041】
本発明による排ガス中の二酸化炭素分離回収システムにおいては、さらに、
真空ポンプ(20)後段の二酸化炭素濃縮ガス(21)を加圧するためのコンプレッサー(22)と、コンプレッサー(22)により加圧された二酸化炭素濃縮ガス(23)から液化二酸化炭素(25)を生成させるコンデンサー(24)と、コンデンサー(24)より排出される加圧された二酸化炭素残留ガス(26)から二酸化炭素分離膜(27)の透過側に二酸化炭素(CO)を分離回収する膜型二酸化炭素分離回収器(28)と、回収器(28)により回収された二酸化炭素(CO)をコンプレッサー(22)の前段までリサイクルするガスリサイクルライン(30)とを具備し、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、および膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)のうち少なくとも1つが、ゼオライト膜であることが好ましい。これにより、回収した二酸化炭素濃縮ガスから、有価物として販売可能な液化二酸化炭素を製造できるものである。
【0042】
上記本発明の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムにおいて、排ガス(4)を絶対圧0.1〜0.8MPaに加圧するコンプレッサー(5)を具備しているのが好ましい。このように、排ガス(4)の絶対圧を上昇させることにより膜透過の駆動力が向上し、分離に必要な膜面積の低減による膜分離器の小型化を果たし得る。
【0043】
ここで、コンプレッサー(5)により加圧する排ガス(4)が絶対圧0.1MPa未満であれば、膜透過の駆動力であるガス分圧差が十分に得られないので、好ましくない。また、コンプレッサー(5)により加圧する排ガス(4)が絶対圧0.8MPaを超えると、ガス昇圧に伴う電力消費が大きくなりすぎて、膜分離による省エネ効果がほとんど得られないので、好ましくない。
【0044】
また、図示の実施形態においては、さらに、回収器(28)より排出される加圧された二酸化炭素低減残留ガス(29)を、燃料供給配管ライン(2)上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(A)、同二酸化炭素低減残留ガス(29)を、除湿された混合ガス(9)の移送ライン上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(B)、および同二酸化炭素低減残留ガス(29)を、二酸化炭素分離膜(13)を透過した二酸化炭素(CO)を同伴させた混合スウィープガス(18)の移送ライン上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(C)を具備している。
【0045】
なお、本発明の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムにおいては、これらのリサイクルガス移送ライン(A)(B)(C)のうちの少なくとも1つのリサイクルガス移送ラインを具備しておればよい。
【0046】
ここで、上記ゼオライト膜としては、管状または中空糸状の多孔質基体上に、ゼオライト膜を製膜させたものの、どちらも用いることができる。
【0047】
本発明の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムにおいては、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、および膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)のうち少なくとも1つが、FAU型ゼオライトを含有するゼオライト膜であることが好ましい。
【0048】
本発明の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムによれば、例えば、上記特許文献1で提案されている膜分離プロセスとの顕著な違いは、膜型二酸化炭素分離器に供給される排ガス中の水分量にある。
【0049】
すなわち、上記特許文献1で提案されている膜分離プロセスでは、排ガス中の水分量は4.3−7.4%程度、コンデンサー等による脱水工程を経た後でも、排ガス中の水分量は0.7%であるのに対し、本発明の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムによれば、排ガス中の水分量が、0.2%以下、好ましくは0.1%(1000ppm)以下になるように、脱水用膜分離工程、すなわち膜型脱水器(8)を組み込んでいる点にある。
【0050】
また一般に、FAU型ゼオライト(X型およびY型)は、Na型の場合、単位胞組成は、NaAlSi192−n384・X HOであり、nの増加とともに親水性が高まるが、n=58のFAUにおいても、X=240と多くの結晶水をもつ。
【0051】
FAU型ゼオライトの結晶水は、加熱器等により100〜600℃で加熱乾燥することで除去することができるが、水分共存下では平衡吸着量分だけ、容易に再吸着する。それゆえ、FAU型ゼオライト膜の細孔内の結晶水の数が、単位胞あたり0〜96分子の状態で保つためには、加熱乾燥後、水分濃度を2000 ppm以下に保つ必要がある。
【0052】
FAU型ゼオライト膜の使用温度については、0〜60℃の範囲が好ましく、低温ほど高い二酸化炭素分離選択性が得やすい。
【0053】
膜型脱水器(8)の水分離膜(7)については有機高分子膜を利用した市販の膜式エアドライヤーを用いることもできるが、耐久性に富むA型ゼオライト膜(例えば、Hitz日立造船社製)を用いることが好ましい。
【0054】
また、排ガス(4)中の水分および不純物が多い場合には、コンプレッサー(5)の前段か後段のどちらか一方、あるいは前段と後段の両方にコンデンサーを設置し、膜型脱水器(8)の水分離膜(7)へ導入される水分および不純物を低減させておくのが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
図1に示す本発明の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムの実施形態を示すフローシートに基づいて、排ガス中の二酸化炭素分離回収システムを実施した場合の一例を示す。
【0057】
本実施例では、模擬排ガスとして、排ガス(4)の組成を、窒素(N)70%、酸素(O)2%、水分(HO)8%、および二酸化炭素(CO)20%とした。まず、コンプレッサー(5)により絶対圧0.15MPaに加圧された排ガス(6)中の水分を、水分圧力差を利用して水分離膜(7)の透過側に移動させる。
【0058】
水分離膜(7)の透過側に移動した水分は、非透過ガス(15)によりスウィープされ、外部(16)へと連続的に除去されることによって、排ガス(6)中の水分は連続的に除去されることになる。その結果、非透過側ガス(9)の水分は常に1000ppm以下まで減少した状態に保つことができる。水分が除去された結果、非透過側ガス(9)の組成は、窒素(N)76%、酸素(O)2%、二酸化炭素(CO)22%となる。
【0059】
例えば、二酸化炭素濃縮器(11)から生成される濃縮したガス(19)の二酸化炭素(CO)濃度を95%、排出される残留排ガス(12)中の二酸化炭素(CO)濃度が10%とするためには、二酸化炭素(CO)/窒素(N)および二酸化炭素(CO)/酸素(O)の分離選択性が、ほぼ同等と見なすと、二酸化炭素分離膜(10)のCO分離性能は100以上必要であり、かつ非透過側ガス(9)に含まれている二酸化炭素(CO)の約6割透過回収させるだけの、高CO透過性が求められる。またこの場合においては、例えばコンプレッサー(5)により膜供給側を0.13MPaに加圧、および真空ポンプ(20)により膜透過側を0.01MPaに減圧させることで、膜透過に必要なCO分圧差を生じさせることができる。
【0060】
ここで、本発明の二酸化炭素分離回収システムにおける膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、および膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)において使用されるFAU型ゼオライト膜について、従来の例えば非特許文献1で提案されている膜分離プロセスに用いられる分離膜との性能の差異を比較するため、下記試験条件にて二酸化炭素(CO)/窒素(N)の分離試験を行った。
【0061】
なお、本実施例では、膜型脱水器(8)より後段の非透過側ガス(9)を想定し、水分濃度1000ppm以下の条件で膜透過分離性能の評価を行った。
【0062】
本発明の二酸化炭素分離回収システムにおける二酸化炭素分離膜(10)、二酸化炭素分離膜(13)、および二酸化炭素分離膜(27)としては、FAU型ゼオライト膜(商品名 NaY型ゼオライト膜、日立造船株式会社社製)を使用した。
【0063】
二酸化炭素(CO)/窒素(N)の分離試験は、管状の膜エレメントを3cmに切断分割し、ステンレス製の膜モジュールに取付けを行い、ゼオライト膜の外側から所定濃度の混合ガスを供給し、膜透過ガスの流量および組成を測定する方法により、実施した。
【0064】
二酸化炭素(CO)/窒素(N)の分離試験条件
・供給ガス全圧:絶対圧0.1 MPa
・供給ガス全流量:200mL(STP)/min
・供給ガス組成:二酸化炭素(CO)/窒素(N)=1:1
・供給ガス水分濃度:1000ppm以下
・膜分離試験温度:0〜20℃
なお、差圧を確保するためスウィープガスとして膜透過側にアルゴン(Ar)を100 mL(STP)/min 流した。また膜透過量は流量計により測定し、透過成分の濃度をガスクロマトグラフィ(GC)により測定することで、二酸化炭素透過係数、分離選択性を算出した。また、ゼオライト膜を構成するFAU型ゼオライト細孔内の吸着水量を低減させておくため、透過分離試験前に、温度150℃で3時間、乾燥処理を行った。熱分析(TG)試験結果より、150℃の乾燥処理にて、FAU型単位胞当りの残存吸着水分子数は40分子程度と推察された。得られた結果を、下記の表1および図2のグラフに示した。
【表1】

【0065】
ここで、図2のグラフの横軸は、二酸化炭素透過係数[10−15mol m/(m・s・Pa)]であり、同グラフの縦軸は、二酸化炭素(CO)/窒素(N)分離選択性[−]である。
【0066】
表1に示すように、本発明の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムにおいて使用されるFAU型ゼオライト膜の性能結果は、CO透過係数は1867[10−15mol m/(m・s・Pa)]、CO/N分離選択性は139であった。
【0067】
そして、図2のグラフでは、本発明の排ガス中の二酸化炭素分離回収システムにおいて使用されるFAU型ゼオライト膜の性能結果を、黒点(イ)で示した。
【0068】
これに対し、従来の膜分離プロセス用分離膜としては、非特許文献1より抜粋引用したPIMs膜、PVAm(FIMs)膜、PEBAX+silica膜、PEG+silica膜、PTMSP膜、PTMGP膜、PDMS修飾膜、PMEEP膜について、その透過分離試験性能を、下記の表1および図2のグラフにあわせて示した。
【0069】
図2のグラフでは、従来の膜分離プロセス用分離膜の性能結果を、白点で示した。
【0070】
図2のグラフに点線で示したように、従来の膜分離プロセス用分離膜の性能では、二酸化炭素透過係数と、二酸化炭素(CO)/窒素(N)分離選択性の間には、トレードオフの相関が見受けられる。
【0071】
一方で、本発明の二酸化炭素分離回収システムにおいて使用されるFAU型ゼオライト膜では、従来の膜分離プロセス用分離膜で同等の二酸化炭素透過係数をもつものよりも高い二酸化炭素(CO)/窒素(N)分離選択性を示し、また従来の膜分離プロセス用分離膜で同等の二酸化炭素(CO)/窒素(N)分離選択性を示すものよりも高い二酸化炭素透過係数を示すなど、従来の膜分離プロセスが示していた二酸化炭素透過係数−二酸化炭素(CO)/窒素(N)分離選択性のトレードオフラインの上限(図2中、点線で表示)を大きく越える、顕著な二酸化炭素透過分離性能が発揮された。
【0072】
それ故、上記実施例で示したように二酸化炭素分離膜(10)において、CO分離選択性が100以上必要な場合、表1を参照すると、従来膜ではPVAm(FTMs)膜(CO/N分離選択性160)が候補と考えられるが、CO透過係数が7.4 [10−15mol m/(m・s・Pa)]と極めて小さい。一方で、本発明ではCO透過係数は1867[10−15mol m/(m・s・Pa)]と非常に大きいため、従来と比較して高効率な分離が達成可能である。膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)においても同様に、本発明のシステムにおいて、ゼオライト膜(FAU型)を用いることで、二酸化炭素を高効率的に分離することが可能である。
【0073】
本発明の上記実施例による排ガス中の二酸化炭素分離回収システムによれば、コンプレッサー(5)により加圧された排ガス(6)中の水分を水分離膜(7)の透過側へ分離除去し、非透過ガス(9)の水分濃度を2000ppm以下に低減させる脱水用膜分離工程、すなわち膜型脱水器(8)を組み込んでいることに加え、二酸化炭素透過分離性能を有するFAU型ゼオライト膜を、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、あるいは膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)において使用したことにより、排ガス中の二酸化炭素(CO)の分離回収について、顕著な二酸化炭素(CO)の透過性・分離選択性を発揮する、ゼオライト膜による排ガス中の二酸化炭素の分離回収システムを提供することができた。
【符号の説明】
【0074】
1:燃料
2:配管ライン
3:燃焼プロセス
4:窒素、酸素、水分および二酸化炭素を含む排ガス
5:コンプレッサー
6:加圧された排ガス
7:水分分離膜
8:膜型脱水器
9:非透過ガス
10:二酸化炭素分離膜
11:膜型二酸化炭素分離濃縮器
12:二酸化炭素濃度を低減した残留排ガス
13:二酸化炭素分離膜
14:膜型二酸化炭素分離除去器
15:非透過側ガス
16:外部
17:空気または酸素富化空気
18:透過した二酸化炭素を同伴させた混合ガス
19:二酸化炭素を濃縮したガス
20:真空ポンプ
21:真空ポンプ後段の二酸化炭素濃縮ガス
22:コンプレッサー
23:加圧された二酸化炭素濃縮ガス
24:コンデンサー
25:液化二酸化炭素
26:加圧された残留ガス
27:二酸化炭素分離膜
28:膜型二酸化炭素分離回収器
29:加圧された二酸化炭素低減残留ガス
30:リサイクルガスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素、酸素、水分、および10〜50%の二酸化炭素(CO)を含む排ガス(4)中の二酸化炭素(CO)を分離回収するシステムであって、排ガス(6)中の水分を水分離膜(7)の透過側へ分離除去し、非透過側ガス(9)の水分濃度を1〜2000ppmの範囲に低減させる膜型脱水器(8)と、膜型脱水器(8)により除湿された非透過側ガス(9)から、二酸化炭素分離膜(10)の透過側に二酸化炭素(CO)を濃度40〜99%まで濃縮したガス(19)を生成させる膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)と、濃縮器(11)により二酸化炭素濃度を5〜15%に低減した非透過側の二酸化炭素残留排ガス(12)から、二酸化炭素分離膜(13)の透過側へ二酸化炭素(CO)を選択的に透過させ、非透過側ガス(15)の二酸化炭素濃度を0.1〜5%に低減させる膜型二酸化炭素分離除去器(14)と、二酸化炭素分離膜(13)の非透過側ガス(15)を、上記膜型脱水器(8)の透過側のスウィープガスとして用い、水分離膜(7)を透過した水分を膜型脱水器(8)から系外へと排気するためのガス排出ライン(16)と、空気または酸素富化空気(17)を膜型二酸化炭素分離除去器(14)の透過側のスウィープガスとして用い、二酸化炭素分離膜(13)を透過した二酸化炭素(CO)を同伴させた混合スウィープガス(18)を燃料(1)とともに燃焼プロセス(3)へと供給する配管ライン(2)と、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)の透過側を減圧に保つための真空ポンプ(20)とを具備し、上記膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、および膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)のうち少なくとも1つが、ゼオライト膜であることを特徴とする、排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項2】
真空ポンプ(20)後段の二酸化炭素濃縮ガス(21)を加圧するためのコンプレッサー(22)と、コンプレッサー(22)により加圧された二酸化炭素濃縮ガス(23)から液化二酸化炭素(25)を生成させるコンデンサー(24)と、コンデンサー(24)より排出される加圧された二酸化炭素残留ガス(26)から二酸化炭素分離膜(27)の透過側に二酸化炭素(CO)を分離回収する膜型二酸化炭素分離回収器(28)と、回収器(28)により回収された二酸化炭素(CO)をコンプレッサー(22)の前段までリサイクルするガスリサイクルライン(30)とを具備し、膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、および膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)のうち少なくとも1つが、ゼオライト膜であることを特徴とする、請求項1に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項3】
排ガス(4)を絶対圧0.1〜0.8MPaに加圧するコンプレッサー(5)を設置することを特徴とする、請求項1または2に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項4】
ゼオライト膜が、FAU(フォージャサイト)型ゼオライトを含有するゼオライト膜であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項5】
FAU型ゼオライト膜が、乾燥条件下で、温度100〜600℃で加熱脱水処理された後、そのまま乾燥状態で保たれていることを特徴とする、請求項4に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項6】
FAU型ゼオライト膜を構成するFAU型ゼオライトの細孔内の結晶水の数が、単位胞あたり0〜96分子の状態で保たれていることを特徴とする、請求項4または5に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項7】
膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、および膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)が、温度0〜60℃の範囲で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項8】
膜型二酸化炭素分離濃縮器(11)の二酸化炭素分離膜(10)、膜型二酸化炭素分離除去器(14)の二酸化炭素分離膜(13)、および膜型二酸化炭素分離回収器(28)の二酸化炭素分離膜(27)が、温度0〜60℃の範囲で使用されることを特徴とする、請求項2に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項9】
膜型脱水器(8)の水分離膜(7)が、A型ゼオライト膜であることを特徴とする、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項10】
さらに、回収器(28)より排出される加圧された二酸化炭素低減残留ガス(29)を、燃料供給配管ライン(2)上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(A)、同二酸化炭素低減残留ガス(29)を、除湿された混合ガス(9)の移送ライン上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(B)、および同二酸化炭素低減残留ガス(29)を、二酸化炭素分離膜(13)を透過した二酸化炭素(CO)を同伴させた混合スウィープガス(18)の移送ライン上の供給点にリサイクルするリサイクルガス移送ライン(C)のうちの少なくとも1つのリサイクルガス移送ラインを具備することを特徴とする、請求項1または8に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。
【請求項11】
排ガス(4)中の水分および不純物を低減するため、コンプレッサー(5)の前段および後段のうちの少なくともいずれか一方に、コンデンサーを設置することを特徴とする、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の排ガス中の二酸化炭素分離回収システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−236123(P2012−236123A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105448(P2011−105448)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】