説明

ソルダーレジスト組成物およびその硬化物

【課題】プリント配線板、パッケージ基板、モジュール基板に用いられるソルダーレジストとして必要な現像性、解像性、耐熱性、めっき耐性に優れ、且つ硬化収縮が少なく反りの無い基板を提供できるソルダーレジスト組成物、及びその硬化物を提供すること。
【解決手段】式(1)により算出される硬化後の架橋密度が2×10〜1.2×10mol/mであり、且つガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とするソルダーレジスト組成物。
n=E’min/3ΦRT (1)
式中、nは架橋密度、E’minは貯蔵弾性率E’の最小値、Φはフロント係数≒1、Rは気体定数、TはE’minの絶対温度を表わす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、モジュール基板の製造に有用なソルダーレジスト組成物、およびその硬化物に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、ソルダーレジスト、モジュール基板用レジストとして必要な性能を維持しつつ、薄板化が進む基板における反りの発生を抑制することができるソルダーレジスト組成物、およびその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体部品の急速な進歩により、電子機器は小型軽量化、高性能化、多機能化の傾向にあり、これらに追従してプリント配線板の高密度化が進みつつある。また、このようなプリント配線板やパッケージ基板、モジュール基板に用いられる基材は薄板の基材が増えてきている。
【0003】
一般に広く普及しているソルダーレジスト組成物としては、ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸との反応物に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂、光重合開始剤、希釈剤、及びエポキシ化合物からなる光硬化性及び熱硬化性の液状レジストインキ組成物が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。また、硬化収縮の少ない組成物としては、例えば、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基および2個の水酸基を有する化合物と、ジオール化合物と、ポリイソシアネート化合物との反応物の末端イソシアネート化合物に、1分子中に重合性不飽和基、カルボキシル基および少なくとも1個の水酸基を有する化合物を反応させて得られた感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
しかしながら、このような硬化収縮の少ない感光性樹脂組成物では、ソルダーレジストとして必要な耐熱性に不足しているという問題があった。
【0005】
また、最近、基板の回路を見えにくくしたり、反射率を高めたい等の理由から黒色または白色のソルダーレジスト組成物の要求も増えてきている。しかしながら黒色または白色は光の透過が悪いため、このような組成物では露光のための光量を多くする必要があり、塗膜表層の架橋が深部に比べ架橋過多になり、反りを抑えることが困難であった。
【特許文献1】特開平1−141904号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−192760号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる背景技術が抱える問題点に鑑み開発されたものであり、その目的は、プリント配線板、パッケージ基板、モジュール基板に用いられるソルダーレジストとして必要な現像性、解像性、耐熱性、めっき耐性に優れ、且つ硬化収縮が少なく反りの無い基板を提供できるソルダーレジスト組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意研究した結果、硬化収縮が少なく反りの少ない基板を提供する為に、ソルダーレジスト組成物の硬化後のガラス転移温度(Tg)と架橋密度が技術的に密接な関連性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一態様として、式(1)により算出される硬化後の架橋密度が2×10〜1.2×10mol/mであり、且つガラス転移温度(Tg)が100℃以上であるソルダーレジスト組成物が提供される。
【0009】
n=E’min/3ΦRT (1)
式中、nは架橋密度、E’minは貯蔵弾性率E’の最小値、Φはフロント係数≒1、Rは気体定数、TはE’minの絶対温度を表わす。
【0010】
また他の態様として、(A−1)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と、1分子中に1個以上のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応する1個の反応基を有する化合物(b)と、不飽和モノカルボン酸(c)とを反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、(A−2)ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸とのエステル化物の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)希釈剤、及び(D)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物、を含有するソルダーレジスト組成物が提供される。
【0011】
さらに前記組成物に加えて白色または黒色の着色剤を含有するソルダーレジスト組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の他の態様として、上記式(1)により算出される架橋密度が2×10〜1.2×10mol/mであり、且つガラス転移温度が100℃以上である硬化物からなることを特徴とするソルダーレジスト層が提供される。
【0013】
さらに、他の態様として、上記ソルダーレジスト層を有するプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は、現像性、解像性、耐熱性、めっき耐性に優れ、且つ硬化収縮が少ないため、薄板化が進むプリント配線板やモジュール基板に用いられるソルダーレジストとして使用されることにより、反りの無い基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者らは、優れた耐熱性と反りの少ないソルダーレジスト層を得るために、硬化後の架橋密度とガラス転移温度(Tg)が技術的に密接な関係を有するとの知見に基づき完成されたものである。つまり硬化後の架橋密度が、2×10〜1.2×10mol/mであり、且つガラス転移温度(Tg)が100℃以上であるソルダーレジスト組成物が、優れた耐熱性と反りの少ないソルダーレジスト層を得るために有効であることを見出した。
【0016】
硬化後の架橋密度が、2×10〜1.2×10mol/mであり、且つガラス転移温度(Tg)が100℃以上であるソルダーレジスト組成物としては、特に限定はないが、カルボン酸含有樹脂として、光硬化性に劣るがそりが少なく、耐熱性,PCT耐性に優れたカルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)と、光硬化性に優れているがそりの多い耐熱性に優れたカルボキシル基含有感光性樹脂(A−2)を併用することが、上記課題を解決するために特に有効であることを見出した。白色または黒色のソルダーレジストの場合は、前述したように解像姓を得るために、露光量を増やす必要があり、特にこの樹脂の併用が有効である。
【0017】
以下に本発明のソルダーレジスト組成物の各成分について詳細に説明する。
【0018】
カルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と、1分子中に1個以上のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応する1個の反応基を有する化合物(b)と、不飽和モノカルボン酸(c)とを反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂である。
【0019】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)としては、公知慣用の多官能エポキシ化合物、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中で、得られた樹脂の耐熱性、感光性の面から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、特に軟化点が50℃以上のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)の特徴である1分子中に1個以上のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応する1個の反応基を有する化合物(b)としては、例えば、グリコール酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のヒドロキシ含有モノカルボン酸類;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のジアルカノールアミン類等;ヒドロキシメチル−ジ−t−ブチルフェノール、p−ヒドロキシフェネチルアルコール、p−ヒドロキシフェニル−3−プロパノール、p−ヒドロキシフェニル−4−ブタノール、ヒドロキシエチルクレゾール、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,4−ジヒドロキシメチル−2−シクロヘキシルフェノール、トリメチロールフェノール、3,5−ジメチル−2,4,6−トリヒドロキシメチルフェノール、ビス(ヒドロキシメチル)フェノール、ビス(ヒドロキシメチル)クレゾールなどのビス(ヒドロキシアルキル)フェノール類を挙げることができる。特に好ましいものは、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、及びp−ヒドロキシフェネチルアルコールである。
【0021】
このような化合物は、一級の水酸基を持つことから、エポキシ基と不飽和モノカルボン酸の反応で得られる二級の水酸基に比べ、この後、付加させる多塩基酸無水物(d)が、高温高湿下でも、外れ難くなる。
【0022】
本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)の合成に用いられる不飽和モノカルボン酸(c)としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、或いは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレート化合物に、二塩基酸無水物を付加した化合物などが挙げられる。これらの中で、アクリル酸、又はメタアクリル酸が反応性等の面から、好ましい。これら不飽和モノカルボン酸は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0023】
上記1分子中に1個以上のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応する1個の反応基を有する化合物(b)と不飽和モノカルボン酸(c)の総量は、前記1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対して、好ましくは0.8〜1.3当量、より好ましくは0.9〜1.1当量となる範囲である。上記範囲より少ない場合、この後付加する多塩基酸無水物から誘導される遊離カルボキシル基と反応するなど、保存安定性や分子量の増大に繋がるので好ましくない。一方、上記範囲を超えた場合、臭気が強くなったり、塗膜特性が低下するので好ましくない。
【0024】
また、前記1分子中に1個以上のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応する1個の反応基を有する化合物(b)と不飽和モノカルボン酸(c)の組み合わせる割合は、(b):(c)が、0.05:0.95〜0.5:0.5のとなる範囲が好ましい。前記(b)成分の割合が、前記範囲より少なくなると、エポキシ基と(c)成分の反応で得られた二級水酸基に、後述の多塩基酸無水物(d)が付加するため、高温高湿下での安定性が低下するので好ましくない。一方、前記(b)成分の割合が、前記範囲より多くなると、感光性の不飽和基の導入量が減少し、耐現像性が得られ難くなり、好ましくない。
【0025】
本発明のカルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)の合成に用いられる多塩基酸無水物(d)としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の二塩基酸又は三塩基酸の無水物、或いはビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族あるいは芳香族四塩基酸二無水物が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。これらの中で、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸が、現像性、硬化物の塗膜特性の面から、好ましい。
【0026】
これら多塩基酸無水物(d)の付加量は、本発明で用いられるカルボキシル基含有感光性樹脂(A)の酸価が、好ましくは30〜120mgKOH/gとなる範囲、より好ましくは40〜100mgKOH/gとなる範囲である。酸価が上記範囲より少なくなるように、多塩基酸無水物(d)を付加した場合、希アルカリ水溶液による現像性が低下したり、耐熱性が低下するので、好ましくない。一方、上記範囲より高くなるように、多塩基酸無水物(d)を付加した場合、耐現像性が低下したり、電気絶縁性、無電解めっき耐性等が低下するのに加え、熱硬化により発生する応力が大きくなるので、好ましくない。
【0027】
次に、(A−2)感光性樹脂について説明する。
感光性樹脂(A−2)は、ノボラック型エポキシ化合物(e)と不飽和モノカルボン酸(c)とのエステル化物の水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる感光性樹脂であり、これを更に詳細に説明すると、(e)ノボラック型エポキシ化合物のエポキシ基と(c)不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基をエステル化反応(全エステル化又は部分エステル化、好ましくは全エステル化)させ、生成した水酸基にさらに(d)飽和又は不飽和の多塩基酸無水物を反応させて得られたものである。
【0028】
ノボラック型エポキシ化合物(e)としては、例えば、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール、アルキルフェノール、ビスフェノールAなどのフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応させて得られるノボラック類に、エピクロルヒドリン、メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンを反応させて得られるものが挙げられる。市販品としては、東都化成(株)製YDCN−701、YDCN−704、YDPN−638、YDPN−602;ダウ・ケミカル社製DEN−431、DEN−439;チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製EPN−1138、EPN−1235、EPN−1299;大日本インキ化学工業(株)製N−730、N−770、N−865、N−665、N−673、N−695、VH−4150、VH−4240、VH−4440;日本化薬(株)製EOCN−120、EOCN−104、BRRN−1020;旭化成工業(株)製ECN−265、ECN−293、ECN−285、ECN−299、などが挙げられる。
【0029】
次に、感光性樹脂(A−2)の合成に用いられる不飽和モノカルボン酸(b)及び飽和又は不飽和の多塩基酸無水物(c)としては、前記感光性樹脂(A−1)で例示したものと同様である。
【0030】
前記エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸によるエポキシ基のエステル化は、エポキシ基の当量数/カルボキシル基の当量数が好ましくは0.8〜1.3、より好ましくは0.9〜1.1である。
【0031】
例えば、前記ノボラック型エポキシ 化合物をセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解し、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロールなどの熱重合禁止剤及び触媒としてベンジルジメチルアミン、トリエチルアミンなどの3級アミン類あるいはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩類を加え、前記不飽和モノカルボン酸を混合し、70〜140℃で加熱攪拌下に反応させて得られる。
【0032】
次に、前記ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸のエステル化反応によって生成する2級水酸基と前記多塩基酸無水物の付加反応は、常法により70〜120℃で加熱攪拌下に反応させて得られる。前記ノボラック型エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸の比率は、2級水酸基の当量数に対し酸無水物の当量数は0.1以上が好ましく、生成樹脂の酸価の範囲は好ましくは30〜150mgKOH/g、より好ましくは40〜100mgKOH/gである。
【0033】
上記二つの感光性樹脂成分(A−1)と(A−2)の配合率は、質量比で、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは85:15〜15:85であり、組成物の全質量に対する感光性樹脂成分(A−1)と(A−2)の合計配合率は、好ましくは10〜50%、より好ましくは15〜45%である。
【0034】
ところで、上記課題を解決する上で、本発明のソルダーレジスト組成物の硬化後におけるガラス転移温度(Tg)と架橋密度とが密接に係わることが本発明者等により見出されたことは記述の通りである。特に、基板の反り抑制、耐熱性、解像性等の観点から、本発明のソルダーレジスト組成物におけるガラス転移温度(Tg)は好ましくは100℃以上、より好ましくは100℃〜140℃であり、また、架橋密度は好ましくは2×10〜1.2×10mol/m、より好ましくは5×10〜1.2×10mol/mである。
【0035】
従って、上記二つの感光性樹脂成分(A−1)と(A−2)の配合率や、後掲の成分(B)〜(E)、並びに他の任意成分の配合率は、本明細書に記載の範囲内において、且つガラス転移温度及び架橋密度が上記範囲内となるよう調節することが好ましい。
【0036】
本発明において架橋密度(n)、及びガラス転移温度(Tg)は、後掲の実施例に記載のJIS K7244−4に記載の熱硬化性塗料の動的粘弾性試験方法及び計算式により求められる。すなわち、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7244−4に記載の試験方法に準拠し得られる動的粘弾性試験結果によるE’(貯蔵弾性率)、E”(損失弾性率)から下式:
Tanδ=E”/E’
に従い求められるTanδ(損失正接)の値が最大値のときの温度がガラス転移温度(Tg)である。
【0037】
また、架橋密度(n)は、E’(貯蔵弾性率)から式(1)に従い求められる。
【0038】
n=ρ/Mc=E’min/3ΦRT (1)
式(1)中、E’minは、貯蔵弾性率E’の最小値を表わし、Φはフロント係数≒1を表わし、ρは試料密度を表わし、Rは気体定数を表わし、TはE’minの絶対温度を表わし、Mcは架橋間分子量を表わす。
【0039】
次に、(B)光重合開始剤について説明する。
光重合開始剤(B)としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;ベンジル;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、リボフラビンテトラブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0040】
さらに、上記光重合開始剤(B)は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、ビス( η5−シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等のチタノセン類、2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類のような光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
【0041】
前記光重合開始剤(B)の好ましい組合せは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(例えばチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー369:イルガキュアーは登録商標)と、ビス( η5−シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(例えばチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー784)や2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(例えばBASF製ルシリンTPO)と2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン(例えばチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、CGI−325)または、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(例えばチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー819)等との組合せである。
【0042】
また、上記のような光重合開始剤(B)の使用量の好適な範囲は、カルボン酸含有感光性樹脂(A)(カルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)と感光性樹脂(A−2)の合計量)100質量部に対して好ましくは5〜30質量部、より好ましくは5〜25質量部となる割合である。光重合開始剤の配合割合が上記範囲よりも少ない場合、得られる組成物の光硬化性が悪くなる。一方、上記範囲よりも多い場合には、得られる硬化塗膜の特性が悪くなり、また、組成物の保存安定性が悪くなるので好ましくない。
【0043】
次に、(C)希釈剤について説明する。希釈剤(C)としては、有機溶剤及び/又は光重合性モノマーが使用できる。
【0044】
有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
有機溶剤の使用目的は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)および感光性樹脂(A−2)を溶解し、希釈せしめ、それによって液状として塗布し、次いで仮乾燥させることにより造膜せしめ、接触露光を可能とするためである。
【0046】
有機溶剤の使用量は特定の割合に限定されるものではなく、選択する塗布方法等に応じて適宜設定できる。
【0047】
一方、光重合性モノマーの代表的なものとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレグリコールジ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロペンタジエン モノ−あるいはジ−(メタ)アクリレート;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールの多価(メタ)アクリレート類又はこれら多価アルコールのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類;多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステルなどが挙げられる。これらの光重合性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
上記光重合性モノマーの使用目的は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)および感光性樹脂(A−2)を希釈せしめ、塗布しやすい状態にするとともに、光重合性を与えるものである。
【0049】
光重合性モノマーの好適な使用量は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)および感光性樹脂(A−2)の合計量100質量部当たり5〜40質量部の範囲が適当である。光重合性モノマーの使用量が上記範囲よりも少ない場合には、光硬化性付与効果が充分ではなく、一方、上記範囲を超えると塗膜の指触乾燥性が低下するため好ましくない。
【0050】
本発明に用いられる1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物(D)としては、例えば日本化薬(株)製EBPS−200、旭電化工業(株)製EPX−30、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンEXA−1514(エピクロンは登録商標)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;日本油脂(株)製ブレンマーDGT(ブレンマーは登録商標)等のジグリシジルフタレート樹脂;日産化学(株)製TEPIC(登録商標)、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製アラルダイトPT810(アラルダイトは登録商標)等の複素環式エポキシ樹脂;油化シェルエポキシ(株)製YX−4000等のビキシレノール型エポキシ樹脂;油化シェルエポキシ(株)製YL−6056等のビフェノール型エポキシ樹脂;東都化成(株)製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂などの希釈剤に難溶性のエポキシ樹脂や、油化シェルエポキシ(株)製エピコート−1009、−1031(エピコートは登録商標)、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−3050、N−7050、N−9050、旭化成工業(株)製AER−664、AER−667、AER−669、東都化成(株)製YD−012、YD−014、YD−017、YD−020、YD−002、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製XAC−5005、GT−7004、6484T、6099、ダウ・ケミカル社製DER−642U、DER−673MF、旭電化工業(株)製EP−5400、EP−5900等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;東都化成(株)製ST−2004、ST−2007等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;東都化成(株)製YDF−2004、YDF−2007、新日鉄化学(株)製GK−5079L等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;坂本薬品工業(株)製SR−BBS、SR−TBA−400、旭電化工業(株)製EP−62、EP−66、旭化成工業(株)製AER−755、AER−765、東都化成(株)製YDB−600、YDB−715等の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂;日本化薬(株)製EPPN−201、EOCN−103、EOCN−1020、EOCN−1025、BREN、旭化成工業(株)製ECN−278、ECN−292、ECN−299、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製ECN−1273、ECN−1299、東都化成(株)製YDCN−220L、YDCN−220HH、YDCN−702、YDCN−704、YDPN−601、YDPN−602、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−673、N−680、N−695、N−770、N−775等のノボラック型エポキシ 樹脂;旭電化工業(株)製EPX−8001、EPX−8002、EPPX−8060、EPPX−8061、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−880等のビスフェノールAのノボラック型エポキシ 樹脂;旭電化工業(株)製EPX−49−60、EPX−49−30等のキレート型エポキシ樹脂;東都化成(株)製YDG−414等のグリオキザール型エポキシ樹脂;東都化成(株)製YH−1402、ST−110、油化シェルエポキシ(株)製YL−931、YL−933等のアミノ基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製エピクロンTSR−601、旭電化工業(株)製EPX−84−2、EPX−4061等のゴム変性エポキシ樹脂;山陽国策パルプ(株)製DCE−400等のジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂;旭電化工業(株)製X−1359等のシリコーン変性エポキシ樹脂;ダイセル化学工業(株)製プラクセルG−402、G−710等のε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの希釈剤に可溶性のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に希釈剤に難溶性の微粒状のエポキシ樹脂、あるいは難溶性のエポキシ樹脂と可溶性のエポキシ樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
【0051】
上記熱硬化性成分としての多官能エポキシ化合物(D)の配合率は、前記カルボキシル基含有感光性樹脂(A−1)および感光性樹脂(A−2)の合計量質量部当たり10〜70質量部の範囲が好ましく、より好ましくは15〜50質量部である。
【0052】
さらに本発明に用いられる、白色または黒色の着色剤(E)としては、公知慣用の着色剤を用いることができる。カラーインデックス(C.I.;The Society ofDyers and Colourists 社発行) においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0053】
白色の着色剤としては、C.I.ピグメントホワイト4に示される酸化亜鉛、C.I.ピグメントホワイト6に示される酸化チタン、C.I.ピグメントホワイト7に示される硫化亜鉛があげられるが、着色力と無毒性という点から特に好ましいのは酸化チタンであり例えば、富士チタン工業(株)製TR−600、TR−700、TR−750、TR−840、石原産業(株)R−550、R−580、R−630、R−820、CR−50、CR−60、CR−90、チタン工業(株)製KR−270、KR−310、KR−380等のルチル型酸化チタン、富士チタン工業(株)製TA−100、TA−200、TA−300、TA−500、石原産業(株)製A100、A220、チタン工業(株)製KA−15、KA−20、KA−35、KA−90等のアナターゼ型酸化チタンがあげられる。配合率は特に限定されないが、有機溶剤を除く本発明のレジスト組成物の全成分中に、0.1〜50質量%、最適には0.5〜40質量%含まれていることが好ましい。0.1質量%未満の場合、十分な濃度が得られにくく、50質量%より多い場合には塗膜の強度不足等の問題が生じ易くなるので好ましくない。
【0054】
また黒色の着色剤としては、C.I.ピグメントブラック6、7、9および18等で示されるに示されるカーボンブラック系の顔料、C.I.ピグメントブラック8、10等に示される黒鉛系の顔料、C.I.ピグメントブラック11、12および27等で示される酸化鉄系の顔料:例えば戸田工業(株)製KN−370の酸化鉄、三菱マテリアル(株)製13Mのチタンブラック、C.I.ピグメントブラック20等で示されるアンスラキノン系の顔料、C.I.ピグメントブラック13、25および29等で示される酸化コバルト系の顔料、C.I.ピグメントブラック15および28等で示される酸化銅系の顔料、C.I.ピグメントブラック14および26等で示されるマンガン系の顔料、C.I.ピグメントブラック23等で示される酸化アンチモン系の顔料、C.I.ピグメントブラック30等で示される酸化ニッケル系の顔料、C.I.ピグメントブラック31、32で示されるペリレン系の顔料、および硫化モリブデンや硫化ビスマスも好適な顔料として例示できる。これらの顔料は、単独で、または適宜組み合わせて使用される。特に好ましいのは、カーボンブラックであり例えば、三菱化学(株)製のカーボンブラック、M−40、M−45、MA−8、MA−100、またペリレン系の顔料は有機顔料の中でも低ハロゲン化に有効である。配合量は特に限定されないが、有機溶剤を除く本発明のレジスト組成物の全成分中に、0.01〜20質量%、更には0.1〜10質量%、最適には0.2〜7質量%含まれていることが好ましい。0.01質量%未満の場合、十分な濃度が得られにくく、一方20質量%以上より多い場合には塗膜の強度不足等の問題が生じ易くなるので好ましくない。
【0055】
本発明では、前記多官能エポキシ化合物(D)とともにエポキシ硬化触媒を使用することができる。
【0056】
このような硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、密着性付与剤としても機能するグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0057】
また、本発明のソルダーレジスト組成物は、さらに硬化物の密着性、機械的強度、線膨張係数などの特性を向上させる目的で、無機充填材を配合することができる。例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉などの公知慣用の無機充填剤が使用できる。
【0058】
本発明のソルダーレジスト組成物は、さらに必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0059】
さらに本発明では、硬化物の白色または黒色が損なわれない範囲で、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー等の着色剤を配合することができる。
【0060】
本発明のソルダーレジスト組成物は、例えば前記希釈剤(C)で塗布方法に適した粘度に調整し、回路形成された基板上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により全面塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったものを基材上に張り合わせることによっても塗膜を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。
【0061】
さらに、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0062】
上記回路形成された基板に使用される基材としては、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0063】
また、活性エネルギー線照射に用いられる照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、レーザー光線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0064】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などの希アルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。なお、以下において「部」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」を表わす。
【0066】
<感光性樹脂の合成>
本発明の感光性樹脂(A−1)を下記合成例1、2に従い作製し、カルボキシル基含有感光性樹脂(A−2)を下記合成例3に従い作製した。
【0067】
(合成例1)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−104S、軟化点92℃、エポキシ当量220)220部、ジメチロールプロピオン酸13.4部、アクリル酸65部、メチルハイドロキノン0.46部、カルビトールアセテート113部及びソルベントナフサ48.5部を仕込み、90℃に加熱し撹拌し、反応混合物を溶解した。次いで反応液を60℃まで冷却し、トリフェニルホスフィン1.4部を仕込み、100℃に加熱し、約32時間反応させ、酸価が0.5mgKOH/gの反応物を得た。次に、これにテトラヒドロ無水フタル酸36.5部、カルビトールアセテート13.8部及びソルベントナフサ6.0部を仕込み、95℃に加熱し、約6時間反応させ、冷却し、固形物の酸価40mgKOH/g、不揮発分65%のカルボキシル基含有感光性樹脂を得た。以下、この反応溶液をワニス(A−1a)と称する。
【0068】
(合成例2)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−104S、軟化点92℃、エポキシ当量220)220部(1当量)を攪拌機及び還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、カルビトールアセテート218部を加え、加熱溶解した。次に重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.46部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.38部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸50.4部(0.7当量)、p−ヒドロキシフェネチルアルコール41.5部(0.3当量)を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物(水酸基:1.3当量)を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸91.2部(0.6当量)を加え、8時間反応させ、冷却後、反応溶液(ワニス(A−1b)と称する。)を取り出した。
【0069】
このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、固形物の酸価83mgKOH/g、不揮発分65%であった。
【0070】
(合成例3)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、“エピクロン”(登録商標)N−695、エポキシ当量:220)220部を撹拌機及び還流冷却器の付いた四つ口フラスコに入れ、カルビトールアセテート214部を加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.46部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン1.38部を加えた。この混合物を95〜105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸106部を加え、8時間反応させ、冷却後、反応溶液(ワニス(A−2)と称する。)取り出した。このようにして得られた感光性樹脂は、固形物の酸価100mgKOH/g、不揮発分65%であった。
【0071】
<実施例1〜12及び比較例1〜8>
前記合成例1〜3で得られたワニス(A−1a)、ワニス(A−1b)、およびワニス(A−2)と、表1に示す成分を同表に記載の配合比率において、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト組成物を得た。
【表1】

【0072】
実施例1〜12及び比較例1〜8のソルダーレジスト組成物について、下記評価基準に従い性能を評価した。結果を表2に示す。
【0073】
性能評価:
(1)フィラー残渣、熱かぶり
上記実施例1〜12及び比較例1〜8のソルダーレジスト組成物を、それぞれ銅張り基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、熱風循環式乾燥炉において80℃で60分乾燥させ、スプレー圧0.2MPaの1質量%NaCO水溶液で1分間現像し、その塗膜表面の現像性を以下の基準で評価した。
【0074】
○:塗膜が完全に除去され、残渣なし。
【0075】
△:ほんの僅かにフィラー残渣あり。
【0076】
×:塗膜の残渣あり。
【0077】
(2)解像性
(黒)ライン/スペースが300/300、銅厚50μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥した後、これに前記実施例1〜3、7〜9、比較例1、2、5、6の各ソルダーレジスト組成物をスクリーン印刷法により塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分乾燥させた。その後、メタルハライドランプで露光した。露光パタンーンは、ライン/スペースが100/300のネガフィルムを用い、露光量はソルダーレジスト組成物上500mJ/cmとなるように活性エネルギー線を照射した。露光後、現像(30℃、スプレー圧0.2MPa、1質量%NaCO)を60秒行って未露光部を除去することにより、パターンを形成し、次いで150℃×60分の熱硬化処理を施すことにより硬化塗膜を得た。このようにして得られた100μmラインパターンの線幅再現性を、アンダーカット/ネガ寸法として表わした。
【0078】
(白)ライン/スペースが300/300、銅厚50μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥した後、これに前記実施例4〜6、10〜12、比較例3、4、7、8の各ソルダーレジスト組成物をスクリーン印刷法により塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分乾燥させた。その後、メタルハライドランプで露光した。露光パタンーンは、ライン/スペースが100/300のネガフィルムを用い、露光量は感光性樹脂組成物上500mJ/cmとなるように活性エネルギー線を照射した。露光後、現像(30℃、スプレー圧0.2MPa、1質量%NaCO)を60秒行って未露光部を除去することにより、パターンを形成し、次いで150℃×60分の熱硬化処理を施すことにより硬化塗膜を得た。このようにして得られた100μmラインパターンの線幅再現性を、ハレーション/ネガ寸法として表わした。
【0079】
(3)耐熱性
上記実施例1〜12及び比較例1〜8のソルダーレジスト組成物を、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷でそれぞれ全面塗布し、熱風循環式乾燥炉で30分乾燥させた。これらの基板にソルダーレジストパターンが描かれたネガフィルムを当て、露光量は感光性樹脂組成物上500mJ/cmの露光条件で露光し、スプレー圧0.2MPa、1質量%NaCO水溶液で1分間現像し、ソルダーレジストパターンを形成した。この基板を、150℃で60分熱硬化し、評価基板を作製した。テープピールテストを行い、レジスト層の膨れ・剥がれ・変色について評価した。
【0080】
○:全く変化が認められない。
【0081】
△:ほんの僅か変色等の変化あり。
【0082】
×:レジスト層の膨れ、剥がれあり。
【0083】
(4)白化
実施例1〜3、7〜9、比較例1、2、5、6(黒色レジストのみ)について、耐熱性試験後、塗膜表面の白濁を目視で確認した。
【0084】
○:塗膜に変色なし。
【0085】
△:ほんの僅かに白濁変色あり。
【0086】
×:塗膜全体が白濁。
【0087】
(5)反り
上記実施例1〜12及び比較例1〜8のソルダーレジスト組成物を、それぞれ基材厚0.06mmBT材エッチアウト(340×340)基板上にスクリーン印刷で約25μm(ドライ)片面塗布し、熱風循環式乾燥炉で30分乾燥させ、露光量はソルダーレジスト組成物上500mJ/cmの露光条件で全面露光する。次いで、スプレー圧0.2MPa、1質量%NaCO水溶液で1分間現像し、熱風循環式乾燥炉において150℃×60分熱硬化し、評価基板を作製する。評価基板が充分に冷却されてから作製基板の反りを評価する。基板を平らな場所に置き、浮き上がっている基板端の高さを測定する。
【0088】
○:評価基板の反りがそのままスクリーン印刷機でマーキング印刷可能な反り
(浮き高さ20mm未満)
△:浮き高さ20mm以上、基板の端と端が合わさる(基板が1周する)以下。
【0089】
×:基板の端と端が合わさる。(基板が1周する)
(6)動的粘弾性試験
試験方法:塗膜作製方法
上記実施例1〜12及び比較例1〜8のソルダーレジスト組成物をスクリーン印刷法により、25〜50μm(ドライ)になるようにフィルム上に塗布し、熱風循環式乾燥炉において80℃×30分乾燥させ、露光量は感光性樹脂組成物上500mJ/cmの露光条件で全面露光する。次いで、スプレー圧0.2MPa、1質量%NaCO水溶液で1分間現像し、熱風循環式乾燥炉において150℃×60分熱硬化し、評価フィルムを作製する。フィルムから塗膜を採取し測定機器にセットする。
【0090】
測定装置/セイコーインスツルメンツ社製
形式:DMS6100
測定条件/測定温度:20〜300℃
昇温速度:5℃/分
周波数:1、10Hz
変形モード:引っ張り・正弦波モード
測定塗膜サイズ:10mm×5mm
JIS K7244−4に記載の試験方法により動的粘弾性試験を行い、E’(貯蔵弾性率)、E”(損失弾性率)を得、これらから上述した手法に従い本発明の架橋密度(n)、およびガラス転移温度(Tg)が求められる。結果を表2に示す。
【表2】

【0091】
表2から明らかなように、本発明のソルダーレジスト組成物は、薄板に関しても反りを最小限に抑えつつ、ソルダーレジストとして求められる性能に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)により算出される硬化後の架橋密度が2×10〜1.2×10mol/mであり、且つガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とするソルダーレジスト組成物。
n=E’min/3ΦRT (1)
式中、nは架橋密度、E’minは貯蔵弾性率E’の最小値、Φはフロント係数≒1、Rは気体定数、TはE’minの絶対温度を表わす。
【請求項2】
(A−1)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と、1分子中に1個以上のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応する1個の反応基を有する化合物(b)と、不飽和モノカルボン酸(c)とを反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(A−2)ノボラック型エポキシ化合物(e)と不飽和モノカルボン酸(c)とのエステル化物の水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる感光性樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)希釈剤、及び
(D)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物、
を含有することを特徴とする請求項1に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項3】
さらに、(E)白色または黒色の着色剤を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項4】
(A−1)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と、1分子中に1個以上のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応する1個の反応基を有する化合物(b)と、不飽和モノカルボン酸(c)とを反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(A−2)ノボラック型エポキシ化合物(e)と不飽和モノカルボン酸(c)とのエステル化物の水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる感光性樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)希釈剤、
(D)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物、及び
(E)白色または黒色の着色剤
を含有することを特徴とするソルダーレジスト組成物。
【請求項5】
式(1)により算出される架橋密度が2×10〜1.2×10mol/mであり、且つガラス転移温度が100℃以上である硬化物からなることを特徴とするソルダーレジスト層。
n=E’min/3ΦRT (1)
式中、nは架橋密度、E’minは貯蔵弾性率E’の最小値、Φはフロント係数≒1、Rは気体定数、TはE’minの絶対温度を表わす。
【請求項6】
請求項5に記載のソルダーレジスト層が、
(A−1)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と、1分子中に1個以上のアルコール性水酸基とエポキシ基と反応する1個の反応基を有する化合物(b)と、不飽和モノカルボン酸(c)とを反応させ、得られた反応生成物に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(A−2)ノボラック型エポキシ化合物(e)と不飽和モノカルボン酸(c)とのエステル化物の水酸基に多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる感光性樹脂、
(B)光重合開始剤、
(C)希釈剤、
(D)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物、及び
(E)白色または黒色の着色剤
を含有するソルダーレジスト組成物を硬化してなることを特徴とするソルダーレジスト層。
【請求項7】
請求項5または6に記載のソルダーレジスト層を有してなるプリント配線板。

【公開番号】特開2008−257044(P2008−257044A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100684(P2007−100684)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】