説明

ソルダーレジスト組成物及びこれを用いて形成するプリント配線板

【課題】高反射率で高解像度のソルダーレジスト組成物、及び当該組成物を用いて形成するソルダーレジストを有するプリント配線板を提供する。
【解決手段】本発明のソルダーレジスト組成物は、1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂と、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、光重合性モノマーと、酸化チタンと、エポキシ化合物と、有機溶剤とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の永久マスクとしての使用に適しており、且つ高反射率のソルダーレジストを形成できるソルダーレジスト組成物、及びこのソルダーレジスト組成物を用いて形成するソルダーレジストを有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板とは電子機器等に使用されるものであり、電子部品を載せる板(ボード)とその上に張り巡らされた回路から成り立つ。この回路を形成する方法としては様々なものがあり、例えば積層板に張り合わせた銅箔の不要な部分をエッチングにより除去して回路配線を形成する方法がある。そして、プリント配線板に電子部品をはんだ付けにより実装することで、電気的接続が行われる。尚、本明細書においては、プリント配線板とは、回路を形成したもの及び形成した回路に電子部品を実装したものの両方を指す。そして、この電子部品のはんだ付けの際に回路を保護する保護膜としてソルダーレジストが使用されている。このソルダーレジストは、ソルダーレジスト組成物を基材に塗布し、硬化させて形成する。
またソルダーレジストは、電子部品のはんだ付けの際、はんだ付けが必要な場所以外にはんだが付着するのを防止すると共に、プリント配線板上の導体を空気に曝さないようにするため、酸素や湿分による導体の劣化を防止する。更にソルダーレジストは、プリント配線板の永久保護膜としても機能する。従って、ソルダーレジストには密着性、電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性等の特性が要求される。
【0003】
また、プリント配線板は、配線の高密度化実現のため、微細化(ファイン化)、多層化及びワンボード化が進められており、その実装方式も表面実装技術(SMT)へと推移している。そのため、ソルダーレジストに対しても、ファイン化、高解像性、高精度、及び高信頼性の要求が高まっている。
【0004】
また近年、携帯端末、パソコン、及びテレビ等の液晶ディスプレイのバックライト、照明器具の光源等、並びに低電力で発光する発光ダイオード(LED)を、ソルダーレジストの被覆形成されたプリント配線板に直接実装する用途が増えてきている。従って、このLED等の光を効率よく利用するため、高反射率のソルダーレジストを有するプリント配線板が求められている。
この高反射率のソルダーレジストとしては、酸化チタン等の白色顔料を含有するものが挙げられる。
【0005】
ここで、ソルダーレジストのパターン(以下、「パターン」という。)を形成する方法には様々なものがあり、その中でも微細なパターンを正確に形成できるフォトリソグラフィー法がよく用いられる。そして、特に環境面への配慮等から、アルカリ現像型のフォトリソグラフィー法がその主流となっている。
特許文献1及び特許文献2には、ノボラック型エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させ、更に多塩基酸無水物を付加させた反応生成物をベースポリマーとする、アルカリ水溶液で現像可能なソルダーレジスト組成物が開示されている。
【0006】
このフォトリソグラフィー法では、樹脂組成物にUV光等を照射してパターニングを行う。しかし、上記高反射率のソルダーレジストを形成する場合、その形成に用いるソルダーレジスト組成物に含まれる酸化チタン等が露光時に光を吸収したり反射したりしてしまうため、ソルダーレジスト組成物が硬化に必要な光を十分に吸収することができず、その解像性が低下するという問題があった。そのため、このようなソルダーレジスト組成物については、フォトソグラフィー法による高精細なパターンの形成は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平1−54390号公報
【特許文献2】特公平7−17737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、酸化チタンを多量に含有しても解像性に優れており、更に高反射率のソルダーレジストを形成できるソルダーレジスト組成物を提供することである。
また、本発明の他の目的は、高反射率で高精細なソルダーレジストを有するプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、光重合開始剤としてビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を併用する。これにより、酸化チタンを多量に含有する、反射率が高いソルダーレジスト組成物であっても、解像性に優れ、高精細なパターンを形成することができる。
【0010】
即ち、本発明のソルダーレジスト組成物は、
(1)1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂と、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、光重合性モノマーと、酸化チタンと、エポキシ化合物と、有機溶剤とを含むことを特徴とする。
この場合、1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂100質量部に対して、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤との合計配合量は1〜30質量部であり、光重合性モノマーの配合量は10〜100質量部であり、酸化チタンの配合量は50〜450質量部であり、エポキシ化合物の配合量は5〜70質量部であり、有機溶剤の配合量は20〜300質量部であることが好ましい。
また本発明は、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合比率が90対10〜1対99であることを特徴とする。
(2)また、本発明のソルダーレジスト組成物は、(1)に加えチオキサントン系光重合増感剤を含むことを特徴とする。
(3)更に本発明のソルダーレジスト組成物は、(1)に加え酸化防止剤を含むことを特徴とする。
(4)具体的には、酸化チタンは、ルチル型酸化チタンであることを特徴とする。
(5)更に具体的には、1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂と1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により得られるカルボキシル基を有する共重合系樹脂であることを特徴とし、また、1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物は脂肪族重合性モノマーから生成される化合物であることが好ましい。
(6)また、本発明はこれらのソルダーレジスト組成物を用いて形成するソルダーレジストを有するプリント配線板であることを特徴とする。
(7)更には、本発明は、エチレン性不飽和基を有する化合物と、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、酸化チタンと、エポキシ化合物とカルボキシル基との反応物とを含むことを特徴とするプリント配線板に形成されたソルダーレジストであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多量に酸化チタンを含有し、反射率が高いにも関わらず解像性に優れており、且つ高精細なパターンを形成することができるソルダーレジスト組成物の提供を可能とする。
また、本発明によれば、高精細で、且つ樹脂の劣化を抑えて高反射率を長期間維持することができるソルダーレジストを有するプリント配線板の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の耐光耐熱変色性の評価で用いた加熱炉の温度の時間的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のソルダーレジスト組成物は、1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂と、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、光重合性モノマーと、酸化チタンと、エポキシ化合物と、有機溶剤とを含む。
尚、以下において本件塗膜とは、本発明のソルダーレジスト組成物を用いて形成した塗膜をいう。
【0014】
〔1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂〕
1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂(以下、「光硬化性樹脂」という。)としては、1分子内に光硬化性のためのエチレン性不飽和基と弱アルカリ水溶液による現像を可能にするカルボキシル基とを有する樹脂であればよく、特定のものに限定されない。このような光硬化性樹脂は、以下の(1)乃至(3)に列挙する樹脂(オリゴマー又はポリマーのいずれでもよい)を好適に使用することができる。即ち、
(1)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂と1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂。
(2)1分子中に1個のエポキシ基と1個の不飽和二重結合を有する化合物と不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に対し不飽和モノカルボン酸を反応させ、この反応により生成した第2級の水酸基に対し飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂。
(3)水酸基含有ポリマーに対し飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、この反応により生成したカルボン酸に対して1分子中に1個のエポキシ基と1個の不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性の水酸基及びカルボキシル基含有樹脂。
【0015】
これらの中でも、(1)の感光性のカルボキシル基含有樹脂のうち、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂と1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により得られるカルボキシル基を有する共重合系樹脂が、光硬化性樹脂として好ましく用いられる。
【0016】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと1分子中に1個の不飽和基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物とを共重合させて得られる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のグリコール変性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。尚、本明細書中において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0017】
また、1分子中に1個の不飽和基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、不飽和基とカルボン酸の間が鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸(β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性等によりエステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸)、マレイン酸等のカルボキシル基を分子中に複数含むもの等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
【0018】
1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物としては脂肪族モノマーから生成される化合物を用いることが好ましい。特に、脂肪族重合性モノマーから生成される化合物を用いると、光硬化性樹脂の芳香環を起因とする、光による硬化物の劣化を抑えられるので好ましい。脂肪族モノマーから生成される化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
【0019】
光硬化性樹脂は、その酸価が50〜200mgKOH/gの範囲にあることが必要である。光硬化性樹脂の酸価が50mgKOH/g未満の場合、弱アルカリ水溶液での本件塗膜の未露光部分の除去が難しい。また、光硬化性樹脂の酸価が200mgKOH/gを超えると、ソルダーレジストの耐水性、電気特性が劣る等の問題が生じる。また、光硬化性樹脂の重量平均分子量は、5,000〜100,000の範囲にあることが好ましい。光硬化性樹脂の重量平均分子量が5,000未満であると、本件塗膜の指触乾燥性が著しく劣る傾向がある。また、光硬化性樹脂の重量平均分子量が100,000を超えると、本件塗膜の現像性、及びソルダーレジスト組成物の貯蔵安定性が著しく悪化するために好ましくない。
【0020】
〔ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤〕
ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(以下、「BAPO」という。)としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。中でもビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、商品名;イルガキュア819)が入手しやすい。
【0021】
〔モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤〕
モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(以下、「MAPO」という。)としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。中でも2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、商品名;ダロキュアTPO)が入手しやすい。
【0022】
本発明は、BAPOとMAPOの併用により、酸化チタンを配合した高反射率のソルダーレジスト組成物の塗膜であっても、当該塗膜を透過する少量の光によりこれを硬化させることができるため、当該塗膜を用いて高反射率で且つ高精細なパターンを形成することができる。また更に、BAPOとMAPOの配合比率を変えることにより、本発明のソルダーレジスト組成物の感光性の微調整を行うことができる。即ち、基材に形成したパターンの断面形状において、当該パターンの基材面側の深部硬化性が不足してアンダーカットが出やすいときには、BAPOの配合比率を大きくする。また、本件塗膜の表面硬化性の不足により、現像後のパターンの表面状態が悪いときには、MAPOの配合比率を大きくする。BAPOとMAPOの配合比率は、90対10〜1対99、好ましくは80対20〜2対98である。この配合比率の範囲外では、BAPOとMAPOの併用による効果が少なくなり、本件塗膜が硬化に必要な光感度を得られないため、高精細なパターン形成ができなくなる。また、BAPOとMAPOの合計配合量は、光硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜25質量部である。BAPOとMAPOの合計配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して1質量部未満の場合、本件塗膜の光硬化性が低下し、露光・現像後のパターン形成が困難になるので好ましくない。また、BAPOとMAPOの合計配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して30質量部を超える場合、光重合開始剤由来の塗膜の色つきが大きくなり、更にコスト高の原因となるので好ましくない。
【0023】
〔光重合性モノマー〕
光重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコールのモノ又はジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート及び、これらのフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物等のアクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテルのアクリレート類;メラミンアクリレート;及び/又は上記アクリレート類に対応するメタクリレート類等が挙げられる。
【0024】
光重合性モノマーの配合量は、光硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜80質量部である。光重合性モノマーの配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して100質量部を超えると、形成したソルダーレジストの物性が低下するため好ましくない。また、光重合性モノマーの配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して10質量部未満であると、本件塗膜が充分な光硬化性を有さないため、高精細なパターンが得られない。
【0025】
〔酸化チタン〕
酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタンもルチル型酸化チタンも用いることができるが、特にルチル型酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンと比較して紫外線領域と可視光領域の境界付近の反射率が高いため、白色度と反射率の点では白色顔料として望ましい。しかし、アナターゼ型酸化チタンは光触媒活性を有するため、この光活性によりソルダーレジスト組成物の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対しルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型酸化チタンと比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないためにソルダーレジスト組成物の樹脂の劣化を抑えることができ、安定したソルダーレジストを得ることができる。
【0026】
ルチル型酸化チタンとしては、具体的には、タイペークR−820、タイペークR−830、タイペークR−930、タイペークR−550、タイペークR−630、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−780、タイペークR−850、タイペークCR−50、タイペークCR−57、タイペークCR−80、タイペークCR−90、タイペークCR−93、タイペークCR−95、タイペークCR−97、タイペークCR−60、タイペークCR−63、タイペークCR−67、タイペークCR−58、タイペークCR−85、タイペークUT771(石原産業(株)製)、タイピュアR−100、タイピュアR−101、タイピュアR−102、タイピュアR−103、タイピュアR−104、タイピュアR−105、タイピュアR−108、タイピュアR−900、タイピュアR−902、タイピュアR−960、タイピュアR−706、タイピュアR−931(デュポン(株)製)、TITON R−25、TITON R−21、TITON R−32、TITON R−7E、TITON R−5N、TITON R−61N、TITON R−62N、TITON R−42、TITON R−45M、TITON R−44、TITON R−49S、TITON GTR−100、TITON GTR−300、TITON D−918、TITON TCR−29、TITON TCR−52、TITON FTR−700(堺化学工業(株)製)等が挙げられる。
尚、アナターゼ型酸化チタンとしては、TA−100、TA−200、TA−300、TA−400、TA−500(富士チタン工業(株)製)、タイペークA−100、タイペークA−220、タイペークW−10(石原産業(株)製)、TITANIX JA−1、TITANIX JA−3、TITANIX JA−4、TITANIX JA−5(テイカ(株)製)、KRONOS KA−10、KRONOS KA−15、KRONOS KA−20、KRONOS KA−30(チタン工業(株)製)、A−100、A−100、A−100、SA−1、SA−1L(堺化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0027】
酸化チタンの配合量は、光硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは50〜450質量部、より好ましくは60〜350質量部である。酸化チタンの配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して450質量部を超えると、本発明のソルダーレジスト組成物の光硬化性が低下し、硬化深度が低くなるので好ましくない。一方、酸化チタンの配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して50質量部未満であると、当該ソルダーレジスト組成物の隠ぺい力が小さくなり、高反射率のソルダーレジストを得ることができない。
【0028】
〔エポキシ化合物〕
エポキシ化合物としては、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業(株)製のTEPIC−H(S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体)や、TEPIC(β体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体との混合物)等)等の複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂等の希釈剤に難溶性のエポキシ樹脂や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂等の希釈剤に可溶性のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0029】
エポキシ化合物の配合量は、光硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは5〜70質量部、より好ましくは5〜60質量部である。エポキシ化合物の配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して70質量部を超えると、本件塗膜について現像液での未露光部分の溶解性が低下し、現像残りが発生しやすくなるためパターンの形成が難しくなる。一方、エポキシ化合物の配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して5質量部未満であると、光硬化性樹脂のカルボキシル基が未反応の状態でソルダーレジストに残存するため、ソルダーレジストの電気特性、はんだ耐熱性、耐薬品性が充分に得られ難くなる。
【0030】
また、光硬化性樹脂のカルボキシル基とエポキシ化合物のエポキシ基とは開環重合により反応する。そしてこの場合、有機溶剤やソルダーレジスト組成物の他の物質に対して易溶性のエポキシ樹脂を当該組成物に配合すると、本件塗膜を形成する際の乾燥の熱によって、上記カルボキシル基とエポキシ基の架橋が進みやすくなる。従って、当該架橋反応を抑制して乾燥する時間を長くとりたい場合、有機溶剤や上記組成物の他の物質に対して難溶性のエポキシ樹脂を単独で、又は易溶性のエポキシ樹脂と共に配合することが望ましい。
【0031】
有機溶剤は、本発明のソルダーレジスト組成物を基材等に塗布しやすい状態にすること、及び有機溶剤を含有する当該組成物を基材等に塗布、乾燥させて塗膜を形成するために用いられる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0032】
有機溶剤は、単独で又は複数の混合物として用いることができる。有機溶剤の配合量は光硬化性樹脂100質量部に対して、20〜300質量部が好ましい。
【0033】
本発明のソルダーレジスト組成物には、露光時の光に対する感度を向上させる目的で、チオキサントン系光重合増感剤を配合することができる。
BAPOとMAPOを併用した組成物にチオキサントン系光重合増感剤を配合すると、当該組成物の光感度の向上という効果をより高めることができる。チオキサントン系光重合増感剤としては、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0034】
チオキサントン系光重合増感剤の配合量は、光硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは0.05〜2質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。チオキサントン系光重合増感剤の配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して0.05質量部未満では、本発明のソルダーレジスト組成物の感度向上の効果が少ない。また、チオキサントン系光重合増感剤の配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して2質量部を超えると、チオキサントン由来の塗膜の色つきが大きくなる。
【0035】
本発明のソルダーレジスト組成物には、ソルダーレジストの熱劣化による変色を少なくする目的で、酸化防止剤を配合することができる。酸化防止剤としては、好ましくはヒンダードフェノール系化合物が用いられるが、これに限定されない。ヒンダードフェノール系化合物としては、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上いずれも大内新興化学工業(株)製);MARK AO−30、MARK AO−40、MARK AO−50、MARK AO−60、MARK AO−616、MARK AO−635、MARK AO−658、MARK AO−15、MARK AO−18、MARK 328、MARK AO−37(以上いずれもアデカアーガス化学(株)製);イルガノックス245、イルガノックス259、イルガノックス565、イルガノックス1010、イルガノックス1035、イルガノックス1076、イルガノックス1081、イルガノックス1098、イルガノックス1222、イルガノックス1330、イルガノックス1425WL(以上いずれもチバ・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0036】
酸化防止剤の配合量は、光硬化性樹脂100質量部に対して好ましくは0.4〜25質量部、より好ましくは0.8〜15質量部である。酸化防止剤の配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して0.4質量部未満の場合、ソルダーレジストの熱劣化による変色防止効果が少ない。また、酸化防止剤の配合量が光硬化性樹脂100質量部に対して25質量部を超える場合、本件塗膜の現像性が低下し、パターニングに不具合がでる。
【0037】
更に、本発明のソルダーレジスト組成物には、光劣化の減少を目的として、ヒンダードアミン系光安定剤を配合することができる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、チヌビン622LD、チヌビン144;CHIMASSORB 944LD、CHIMASSORB 119FL(以上いずれもチバ・ジャパン(株)製);MARK LA−57、LA−62、LA−67、LA−63、LA−68(以上いずれもアデカア−ガス化学(株)製);サノールLS−770、LS−765、LS−292、LS−2626、LS−1114、LS−744(以上いずれも三共ライフテック(株)製)等が挙げられる。
【0038】
ヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、光硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0039】
また、本発明のソルダーレジスト組成物には、酸化チタンの分散性、沈降性の改善を目的として分散剤を配合することができる。分散剤としては、ANTI−TERRA−U、ANTI−TERRA−U100、ANTI−TERRA−204、ANTI−TERRA−205、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−110、DISPERBYK−111、DISPERBYK−112、DISPERBYK−116、DISPERBYK−130、DISPERBYK−140、DISPERBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−180、DISPERBYK−182、DISPERBYK−183、DISPERBYK−185、DISPERBYK−184、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2009、DISPERBYK−2020、DISPERBYK−2025、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2070、DISPERBYK−2096、DISPERBYK−2150、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−P105、BYK−9076、BYK−9077、BYK−220S(ビックケミー・ジャパン(株)製)、ディスパロン2150、ディスパロン1210、ディスパロンKS−860、ディスパロンKS−873N、ディスパロン7004、ディスパロン1830、ディスパロン1860、ディスパロン1850、ディスパロンDA−400N、ディスパロンPW−36、ディスパロンDA−703−50(楠本化成(株)製)、フローレンG−450、フローレンG−600、フローレンG−820、フローレンG−700、フローレンDOPA−44、フローレンDOPA−17(共栄社化学(株)製)が挙げられる。
上記目的を有効に達成するため、分散剤の配合量は、酸化チタン100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部とするのがよい。
【0040】
更に、本発明のソルダーレジスト組成物には、硬化促進剤、熱重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、難燃助剤等を配合することができる。
【0041】
以下に本発明のソルダーレジスト組成物の使用例として、当該組成物を用いて製造するプリント配線板について説明する。
【0042】
まず、本発明のソルダーレジスト組成物を塗布方法に適した粘度に調整する。
次に、粘度調整した組成物を、回路形成されたプリント配線板に、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、又はロールコート法等の方法により塗布する。その後、プリント配線板に塗布した組成物に含まれる有機溶剤を70〜90℃の温度で揮発乾燥させて、塗膜を形成する。
その後、この塗膜に対し、フォトマスクを通して、選択的に活性エネルギー線により露光を行う。そして、露光後の当該塗膜の未露光部をアルカリ水溶液を用いて現像し、パターンを形成する。更にその後、当該パターンを100℃〜200℃の熱で熱硬化することにより、本発明のソルダーレジスト組成物を用いて形成するパターンを有するプリント配線板、即ち、本発明のプリント配線板を製造することができる。
【0043】
また、上記塗膜を露光するための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等を用いることができる。その他、レーザー光線等も活性光線として利用できる。
また、上記塗膜の現像に用いる現像液としてのアルカリ水溶液は、0.5〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的であるが、他のアルカリ水溶液を使用することも可能である。他のアルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
樹脂溶液1の合成:
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を備えた2リットルセパラブルフラスコに、溶媒(ジエチレングリコールジメチルエーテル)900g、及び重合開始剤(t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、日本油脂(株)製、商品名;パーブチルO)21.4gを加えて90℃に加熱した。加熱後、上記フラスコに、メタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g、ラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名;プラクセルFM1)109.8g、及び重合開始剤(ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、日本油脂(株)製、商品名;パーロイルTCP)21.4gを3時間かけて滴下して加えた。更に当該混合物を6時間熟成することにより、カルボキシル基含有共重合樹脂を得た。尚、これらの反応は、窒素雰囲気下で行った。
【0046】
次に、このカルボキシル基含有共重合樹脂に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学(株)製、商品名;サイクロマーA200)363.9g、開環触媒(ジメチルベンジルアミン)3.6g、重合抑制剤(ハイドロキノンモノメチルエーテル)1.80gを加え、これらを100℃に加熱して、攪拌することによりエポキシの開環付加反応を行った。攪拌終了から16時間後、当該攪拌物から、固形分の酸価が108.9mgKOH/gであって重量平均分子量が25,000である芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を53.8質量%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この反応溶液を樹脂溶液1と呼ぶ。
【0047】
実施例1〜5及び比較例1〜3の配合:
表1の記載に従い各成分を配合したものを攪拌し、更にこれを3本ロールにて分散させてソルダーレジスト組成物(実施例1〜5、比較例1〜3)を作製した。尚、表1中の数字は、質量部を示す。
【表1】

【0048】
光重合開始剤1:ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド イルガキュア819(チバ・ジャパン(株)製)
光重合開始剤2:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド ダロキュアTPO(チバ・ジャパン(株)製)
光重合開始剤3:イルガキュア907(チバ・ジャパン(株)製)
光重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
酸化チタン(ルチル型):CR−Super70(石原産業(株)製)
エポキシ化合物(ビフェニル型):YX−4000(ジャパンエポキシレジン(株)製)
増感剤:2,4−ジエチルチオキサントン カヤキュアDETX−S(日本化薬(株)製)
酸化防止剤:イルガノックス1010(チバ・ジャパン(株)製)
有機溶剤:カルビトールアセテート
消泡剤:シリコーンオイル KS−66(信越化学工業(株)製)
【0049】
各ソルダーレジスト組成物を用いて形成されるソルダーレジストの諸性質を調べるため、以下の条件で試験を行い、評価をした。
【0050】
(1)解像性
各ソルダーレジスト組成物を、その塗膜の膜厚が40μmとなるよう、100メッシュポリエステル(バイアス製)の版を使用して、スクリーン印刷法にてFR−4銅張り積層板(大きさ:100mm×150mm、厚さ:1.6mm)にベタ(基板全面)で印刷した。そして、当該FR−4銅張り積層板を熱風循環式乾燥炉にて乾燥(温度:80℃、時間:10分)させて上記各ソルダーレジスト組成物の塗膜を形成した。更に、当該各塗膜に上記と同様の方法で各ソルダーレジスト組成物を重ねて印刷し、熱風循環式乾燥炉にて乾燥(温度:80℃、時間:20分)させ、試験用塗膜を形成した。その後、プリント配線板用露光機HMW−680GW((株)オーク製作所製)を用い、80μm及び100μmのラインを描画させるマスクパターンを使用して、500mJ/cmと700mJ/cmの2条件の積算光量で上記試験用塗膜を紫外線露光した。更にその後、この露光した試験用塗膜について、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(温度:30℃)を現像液として、プリント配線板用現像機を用いて60秒間現像した。続いて、現像した各試験用塗膜について熱風循環式乾燥炉にて熱硬化(温度:150℃、時間:60分)を行い、各試験片を作製した。これらの試験片に残存しているライン幅を確認し、以下の評価方法を用いて解像性を評価した。その結果を表2に示す。
◎ 500mJ/cmの露光条件で80μmのラインが残存しているもの
○ 700mJ/cmの露光条件で80μmラインが残存しているもの
△ 700mJ/cmの露光条件で100μmラインが残存しているが、現像時に膜減りが見られたもの
× 上記のいずれの条件でも100μmのラインが残存していないもの
【表2】

【0051】
表2に記載の通り、実施例1〜5はすべてラインが残存しているため、解像性が良いことが分かった。比較例1にはビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を使用し、比較例2ではモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を使用し、比較例3にはウレタン系の光重合開始剤を使用したが、十分にラインが残らない結果となった。
【0052】
(2)耐光耐熱変色性
実施例1〜5のソルダーレジスト組成物を、その塗膜の膜厚が40μmとなるよう、100メッシュポリエステル(バイアス製)の版を使用して、スクリーン印刷法にてFR−4銅張り積層板(大きさ:100mm×150mm、厚さ:1.6mm)にベタ(基板全面)でパターンを印刷した。そして、当該FR−4銅張り積層板を熱風循環式乾燥炉にて乾燥(温度:80℃、時間:30分)させて上記各ソルダーレジスト組成物の塗膜を形成した。更に、プリント配線板用露光機HMW−680GW((株)オーク製作所製)を用い、30mm角のネガパターンを残すように、700mJ/cmの積算光量で上記各塗膜を紫外線露光した。その後、この露光した各塗膜について、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(温度:30℃)を現像液として、プリント配線板用現像機を用いて60秒間現像した。続いて、現像した各塗膜について熱風循環式乾燥炉にて熱硬化(温度:150℃、時間:60分)を行い、特性試験用の各試験片を作製した。
上記各試験片について、色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング(株)製)を用いてXYZ表色系のY値及びL*a*b*表色系の各値を初期値として測定した。その後、コンベア型UV照射機QRM−2082−E−01((株)オーク製作所製)を用い、メタルハライドランプ、コールドミラー、80W/cm×3灯、コンベアスピード6.5m/分(積算光量1000mJ/cm)の条件で、上記各試験片にUVを20回繰り返して照射した。更にその後、部品実装用のコンベア式加熱炉を用いて、当該各試験片を2回繰り返し加熱した。加熱後の各試験片について初期値と同様の条件にて色差を測定し、各試験片の劣化状態を評価した。また、目視でも当該各試験片を評価した。その結果を表3に示す。尚、上記加熱炉の温度は図1に示す。
【0053】
表3において、YはXYZ表色系の反射率を示し、L*は、L*a*b*表色系の明度を表わす。ΔE*abはL*a*b*の各値について、劣化試験後の値と初期値の差の二乗を取り、その総和の平方根をとったものである。a*は赤方向、−a*は緑方向、b*は黄方向、−b*は青方向を示し、ゼロに近いほど彩度がないことを示す。ΔE*abは、色の変化を表し、この値が小さいほど色の変化も小さいことを示す。
【0054】
また、加熱後の目視評価は以下の通りである。
◎ 変色なし
○ ほぼ変色なし
△ やや変色あり
× 明らかな変色あり
【表3】

【0055】
表3に記載の通り、実施例1〜5は加熱後のΔE*abの値及び目視評価についても変色が少ない。
【0056】
(3)はんだ耐熱性
実施例1〜5について、(2)と同様の方法で作製した各試験片に、ロジン系フラックスを塗布して、260℃のはんだ槽で10秒間フローさせた。その後、当該各試験片をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄し、乾燥させた。その後、乾燥させた各試験片についてセロハン粘着テープによるピールテストを行い、硬化塗膜(以下、本実施例では「塗膜」という。)の剥がれについて以下の評価方法を用いて評価した。その結果を表4に示す。
○ 塗膜の剥がれや変色なし
× 塗膜の剥がれや変色あり
(4)耐溶剤性
実施例1〜5について、(2)と同様の方法で作製した各試験片を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、乾燥させた。その後、乾燥させた各試験片についてセロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれと変色について以下の評価方法を用いて評価した。その結果を表4に示す。
○ 塗膜の剥がれや変色がなかった
× 塗膜の剥がれや変色があった
(5)鉛筆硬度試験
実施例1〜5について、(2)と同様の方法で作製した各試験片に、芯の先が平らになるように研がれたBから9Hの鉛筆を約45°の角度で押し付けて塗膜の剥がれが生じない鉛筆の硬さを記録し、以下の評価方法を用いて評価した。その結果を表4に示す。
○・・・塗膜の剥がれや変色なし
×・・・塗膜の剥がれや変色あり
(6)絶縁抵抗試験
実施例1〜5について、FR−4銅張り積層板の代わりに、IPC B−25テストパターンのクシ型電極Bクーポンを用い、それ以外は(2)と同様の条件及び方法にて試験片を作製した。この各試験片に、DC500Vのバイアスを印加し、絶縁抵抗値を測定した。その結果を表4に示す。
【表4】

【0057】
表4の記載から明らかなように、本発明のソルダーレジスト組成物を用いた実施例1〜5は、ソルダーレジストに要求される良好な耐熱性、耐溶剤性、密着性及び電気絶縁性を有することがわかった。
【0058】
以上から、本実施例によれば、高反射率のソルダーレジストを形成できるソルダーレジスト組成物を得ることができた。また、当該組成物は、酸化チタンを多量に配合していても露光により高精細なパターンを形成することができ、良好な解像性を有することが分かった。更に、上記組成物を用いて形成したソルダーレジストは、光や熱による変色が少なく、はんだ耐熱性も有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂と、
ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、
モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、
光重合性モノマーと、
酸化チタンと、
エポキシ化合物と、
有機溶剤とを含むことを特徴とするソルダーレジスト組成物。
【請求項2】
酸化チタンがルチル型酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項3】
チオキサントン系光重合増感剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項4】
酸化防止剤を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項5】
1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂がカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂と1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により得られるカルボキシル基を有する共重合系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項6】
1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物が脂肪族重合性モノマーから生成される化合物であることを特徴とする請求項5に記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のソルダーレジスト組成物を用いて形成するソルダーレジストを有するプリント配線板。
【請求項8】
エチレン性不飽和基を含む反応物と、
ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、
モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、
酸化チタンと、
エポキシ化合物とカルボキシル基との反応物とを含むことを特徴とするプリント配線板に形成されたソルダーレジスト。

【図1】
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【公開番号】特開2010−117702(P2010−117702A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162299(P2009−162299)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】