説明

タイヤ成型装置及びタイヤ製造方法

【課題】プライを積層するときに離型剤を使用することなく複数のプライを効率よく積層し、タイヤの生産性及び作業環境を向上させることのできるタイヤの成型装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】成型ドラムに配設された下層プライの外周面に円筒状に成型された上層プライを積層するタイヤの成型装置であって、上層プライを成型ドラムの回転軸と同軸上において保持するプライ供給手段と、プライ供給手段により保持された上層プライの一端側を把持し、当該上層プライを拡径させた状態で下層プライ側に搬送するプライ積層手段と、プライ積層手段によって搬送される上層プライと、下層プライとの間に空気を供給する空気供給手段とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの成型装置及び製造方法に関し、特に、円筒状に成型されたプライの積層を円滑に行うことを可能とするタイヤの成型装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤには、複数のプライを積層し、各プライにビードを配設した複数のビードを備える構造が知られている。
このような複数のビードを備える構造は、例えば、建設機械用タイヤや航空機用タイヤ等の大きな荷重が作用するタイヤに採用される。そしてこれらのタイヤは、成型ドラムに予め円筒状に成型されたプライを同心円状に複数重ねることにより成型される。
具体的には、ビードが配設された下層のプライの外周面に離型剤を塗布した上で、上層のプライを下層のプライの外周面を覆うように滑らせて積層し、積層した上層のプライにビードを配設する工程を繰り返すことで成型される。
しかしながら、複数のプライの積層工程において、下層となるプライの表面に塗布される離型剤は、作業者によって直接塗布されているため、プライの積層を自動化することができず、生産性を向上させる上での障害となっている。また、離型剤は、プライの表面全周に亘り塗布する必要があるため、成型装置の周囲に飛散して作業環境に悪影響を及ぼす虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−81132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するため、プライを積層するときに離型剤を使用することなく複数のプライを効率よく積層し、タイヤの生産性及び作業環境を向上させることのできるタイヤの成型装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の構成として、成型ドラムに配設された下層プライの外周面に円筒状に成型された上層プライを積層するタイヤの成型装置であって、上層プライを成型ドラムの回転軸と同軸上において保持するプライ供給手段と、プライ供給手段により保持された上層プライの一端側を把持し、当該上層プライを拡径させた状態で下層プライ側に搬送するプライ積層手段と、プライ積層手段によって搬送される上層プライと、下層プライとの間に空気を供給する空気供給手段とを備える構成とした。
本構成によれば、プライ積層手段により一端側が把持され、拡径された状態で下層プライ側に搬送される上層プライと、下層プライとの間に空気供給手段により空気が供給されることから、搬送中の上層プライと下層プライとの間に空気層が形成され、上層プライを下層プライに対して接触させることなく円滑に積層することができる。
また、他の構成として、空気供給手段をプライ積層手段に設けた構成とした。
本構成によれば、プライ積層手段が上層プライを下層プライ側に搬送する過程において下層プライの外側を上層プライが徐々に通過するときに、空気供給手段から供給される空気によって上層プライと下層プライとの間に常に空気層が形成されるので上層プライを下層プライに接触させることなく円滑に積層することができる。
本発明の他の構成として、空気供給手段をプライ供給手段に設けた構成とした。
本構成によれば、下層プライの外側を上層プライが徐々に通過するときに、空気供給手段から供給された空気がプライ積層手段に把持された上層プライの一側部を内周面側から押圧するので、上層プライが拡径し、上層プライと下層プライとが接触することをより抑制できる。
また、他の構成として、空気供給手段をプライ積層手段及びプライ供給手段に設けた構成とした。
本構成によれば、プライ積層手段が上層プライを下層プライ側に搬送する過程において下層プライの外側を上層プライが徐々に通過するときに、空気供給手段から供給される空気によって上層プライと下層プライとの間に常に空気層を形成し、下層プライの外側を上層プライが徐々に通過するときに、空気供給手段から供給された空気がプライ積層手段に把持された上層プライの一側部を内周面側から押圧するので、上層プライが拡径し、上層プライと下層プライとを接触させることなく円滑に積層することができる。
また、本発明に係る形態として、成型ドラムの回転軸と同軸上において保持された上層プライの一端側を把持し、当該上層プライを拡径させた状態で下層プライと上層プライとの間に空気を供給しながら成型ドラム側に搬送する形態とした。
本形態によれば、前記構成から生じる効果と同様の効果を奏することができる。
上記各発明の概要から明らかなように、本発明によれば、上層プライを下層プライに積層するときに、下層プライの外周面に離型剤等の潤滑剤を塗布する必要がなくなるので、作業環境を向上させるとともに、作業者の省力化及びプライの積層工程を自動化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】タイヤ成型装置の概略構成図。
【図2】成型ドラムの軸方向断面図及び正面図。
【図3】プライ積層装置の側断面図及び正面図。
【図4】把持装置の拡大図。
【図5】プライ供給装置の側面図、正面図及び正面図の拡大図。
【図6】保持アームの部分拡大図。
【図7】制御装置のブロック図。
【図8】タイヤ成型装置の動作を示す図。
【図9】タイヤ成型装置の動作を示す図。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るタイヤ成型装置1について説明する。図1は、タイヤ成型装置1の概略構成図を示す。
タイヤ成型装置1は、概略、タイヤの構成部材を配設してグリーンタイヤを成型するためのドラム成型装置2と、ドラム成型装置2にプライ10を搬送するプライ積層装置4と、プライ積層装置4にプライ10を供給するプライ供給装置7とを備える。
ドラム成型装置2は、例えば、バンド成型機と呼ばれ、工場等に設置される基台12の長手方向Eの一側に配置される。ドラム成型装置2は、駆動部を有する装置本体21と、当該駆動部に回転可能に支持され、拡縮可能な成型ドラム22を備える。
駆動部は、装置本体21に設けられ、成型ドラム22を回転可能とするモータ23と、装置本体21の一側面から基台12の長手方向Eに貫通するシャフト24と、モータ23の駆動をシャフト24に伝達する図外の動力伝達機構とにより構成される。
【0009】
図2(a)は、成型ドラム22の軸方向の断面図を示し、図2(b)は、成型ドラム22の正面図を示す。
成型ドラム22は、略円筒状の筒体であって、シャフト24の一端側に固着される。成型ドラム22は、成型ドラム22の外周面を構成する複数のドラムセグメント25と、ドラムセグメント25を半径方向に移動させる拡縮機構とを備える。ドラムセグメント25は、円筒体を円周方向に沿って均等に分割した樋形状に形成され、各ドラムセグメント25の外周面25aが成型面となる。また、ドラムセグメント25の内周面25b側には、拡縮機構と接続される突片26が配設される。
拡縮機構は、シャフト24の外周面24aに沿って軸方向に移動する円筒状のスライダ27と、スライダ27とドラムセグメント25とを接続する接続片28と、スライダ27を駆動するアクチュエータ30とにより構成される。スライダ27は、外周面27aから放射状に突設する突片29をドラムセグメント25と同数備える。接続片28は、一端側がドラムセグメント25の突片26に対して回転可能に軸支され、他端側がスライダ27の突片29に対して回転可能に軸支される。
アクチュエータ30は、例えば、パワーシリンダ等が挙げられ、動力部に対して駆動部が直動する直動機構を備える。アクチュエータ30はシャフト24の外周面24a上に動力部が固着され、駆動部がスライダ27の一側面に固着される。よって、動力部が駆動部を伸縮させることによってスライダ27がシャフト24に沿って移動し、スライダ27が接続片28を回転させることによりドラムセグメント25が半径方向外側に移動して成型ドラム22の直径DDが拡縮する。アクチュエータ30は、後述の制御装置9と接続され、制御装置9から出力される信号に基づいて駆動する。
【0010】
基台12上には、シャフト24の中心軸と平行に延長する一対のレール14が敷設される。当該レール14上には、プライ積層装置4とプライ供給装置7とが移動可能に搭載される。
図3(a)は、プライ積層装置4の側断面図を示し、図3(b)は、プライ積層装置4の正面図を示す。
プライ積層装置4は、成型ドラム22の回転軸としてのシャフト24の延長方向に沿ってプライ積層装置4を移動可能とする移動装置41と、拡縮装置42と、把持装置43、及び、空気供給手段44を備える。
移動装置41は、レール14上を転動する車輪45と、車輪45により支持される台座46と、図外の動力伝達機構を介して車輪45に駆動力を出力するモータ47とにより構成される。モータ47は、後述の制御装置9と接続され、制御装置9からモータ47に出力される搬送信号に基づいて、プライ積層装置4が成型ドラム22、プライ供給装置7間を移動する。
拡縮装置42は、成型ドラム22の最大外径よりも大径の円筒状の円環フレーム48と、円環フレーム48の円周方向に均等に配置される複数のアクチュエータ50とにより構成される。円環フレーム48は、円環フレーム48の中心Aと成型ドラム22の回転軸とが同心となるように移動装置41の台座46上に搭載される。円環フレーム48の一側面には、アクチュエータ50が取着される取着部48Aが円周方向に沿って均等に取り付けられる。アクチュエータ50は、例えば、サーボモータの駆動により伸縮するピストン50Aを有するパワーシリンダにより構成される。ピストン50Aの伸縮方向は円環フレーム48から放射状に延長する法線と一致し、かつ、円環フレーム48の中心Aにピストン50Aの先端が向くように取り付けられる。
各アクチュエータ50は、制御装置9と接続され、制御装置9の出力する拡径信号に基づき縮短し、縮径信号に基づき伸長する。各アクチュエータ50が伸縮動作すると、ピストン50Aの先端に取り付けられた把持装置43により把持されたプライ10は、拡径又は縮径する。
【0011】
図4は、把持装置43の拡大図を示す。
把持装置43は、アクチュエータ50のピストン50Aの先端に取り付けられる。把持装置43は、L字状の固定爪51と、固定爪51に対して可動する移動爪52と、移動爪52を駆動する駆動手段53とにより構成される。駆動手段53には、例えばソレノイド等が挙げられる。
固定爪51は、ピストン50Aと接続される円筒状の固定部51Aと、プライ10を保持する爪部51Bとからなる。
固定部51Aは、ピストン50Aの先端を包囲するように嵌合する有底円筒状に形成され、例えば、ピストン50Aを挿入した状態でネジ止め等の方法により固着される。また、固定部51Aの外周面には、円筒軸と平行な一対の溝部54が形成される。爪部51Bは、平板状に形成され、固定部51Aの底面と面一、かつ、固定部51Aの円筒軸と直交する方向に所定長さ延長する。
移動爪52は、固定爪51の固定部51A周りと摺動する摺動部52Aと、摺動部52Aより水平方向に延長し、固定爪51の爪部51Bとプライ10を挟み込む爪部52Bとを備える。摺動部52Aは、固定部51Aの外周面に沿って移動可能な摺動面52aと、溝部54に対応する凸部52bとを備える。よって、移動爪52は、溝部54の延長方向に沿って固定爪51に対して近接又は離間する。
固定爪51の爪部51Bと移動爪52の爪部52Bとの互いに対向する保持面51C,52Cには、例えば、鋸歯状やダイヤ目状等の滑り止め加工が施される。また、移動爪52の背面52Dには駆動手段53が設けられる。
駆動手段53は、駆動部53Aと可動部53Bとにより構成される例えば、ソレノイドである。駆動部53Aは固定部51Aの外周面に取着され、可動部53Bが移動爪52の背面52Dに固着される。駆動手段53は、制御装置9と接続され、制御装置9から出力される把持信号、又は開放信号によって駆動し、固定爪51の爪部51Bに対して移動爪52の爪部52Bを近接離間させる。
【0012】
また、各把持装置43には、空気を吐出する空気供給手段44を構成するエアノズル60が取り付けられる。エアノズル60は、基台12上に配設されるコンプレッサ62と配管を介して接続される。コンプレッサ62に蓄圧される空気圧は、制御バルブ63を介してエアノズル60から吐出される。即ち、空気供給手段44は、エアノズル60、制御バルブ63、コンプレッサ62及び配管により構成される。
エアノズル60は、エアノズル60から吐出される空気が、爪部51Bの先端方向を向き、爪部51B及び爪部52Bにより把持された状態のプライ10の内周面側に空気を供給するように固定部51Aに取り付けられる。
エアノズル60から吐出される空気圧は、例えば1.0MPa〜5.0MPaに設定される。エアノズル60が固定爪51の固定部51Aに取り付けられることにより把持装置43がプライ10の端部を把持したときに、プライ10の内周面に空気が吐出される。
なお、エアノズル60は、各把持装置43に取り付けられるとしたが、本例では、例えば、90°位置ずれする毎の把持装置43にエアノズル60を取り付けるようにしても良い。また、エアノズル60を把持装置43の固定部51Aに取り付けるとして説明したが、爪部51B及び爪部52Bにより把持された状態のプライ10の内周面側に空気を供給可能な位置に図外の取り付け方法により、プライ積層装置4のいずれかに取り付けても良い。
以上のとおり、プライ積層装置4は、移動装置41の駆動により成型ドラム22、プライ供給装置7間を移動可能な装置である。また、プライ積層装置4は把持装置43の移動爪52を固定爪51に対して離間した状態でプライ供給装置7側に移動し、プライ供給装置7により供給されるプライ10の端部を移動爪52を固定爪51に対して近接させることにより狭持する。
また、把持装置43により把持されたプライ10の端部は、拡縮装置42のピストン50Aが縮短動作することにより拡径する。以下、プライ供給装置7について説明する。
【0013】
図5(a)は、プライ供給装置7の側面図を示し、図5(b)は、プライ供給装置7の正面図及び拡大正面図を示す。図6は、プライを保持する保持アーム83の部分拡大図を示す。
プライ供給装置7は、成型ドラム22の回転軸としてのシャフト24の延長方向に沿ってプライ供給装置7を移動可能とする移動装置71と、円筒状のプライ10を保持する保持装置72とを備える。
移動装置71は、レール14上を転動する車輪75と、車輪75により支持される台座76と、図外の動力伝達機構を介して車輪75に駆動力を出力するモータ77とにより構成される。モータ77は、後述の制御装置9と接続され、制御装置9からモータ77に出力される搬送信号に基づいて、図外の待機位置から成型ドラム22の一側面側と所定距離近接する位置まで移動する。
保持装置72は、移動装置71の台座76上に配設され、保持装置72によって保持された円筒状のプライ10の軸心と、成型ドラム22の回転軸とが同軸となるようにプライ10を保持する。
具体的には、保持装置72は、装置本体78と、プライ10を保持する保持機構とにより構成される。装置本体78には、成型ドラム22の回転軸と同軸となるように円筒のガイド軸79が装置本体78を貫通する。ガイド軸79の延長方向の外周面79aには、突片80を備える。突片80は、外周面79aの軸方向において2箇所形成され、各箇所において円周方向に均等に形成される。突片80には、棒状のリンク片82の一端が取り付けられ、ガイド軸79の延長方向に回転自在に突片80に軸支される。リンク片82の他端側には、プライ10と当接する保持アーム83が取り付けられる。
保持アーム83は、プライ10の全幅を保持可能な長さを有し、断面H型の棒状体である。一方の凹部84側には、延長方向に回転自在なローラ85を延長方向に沿って複数備え、一方の縁面86よりもローラ85が外側に突出するように配置される。他方の凹部87には、軸方向に並ぶリンク片82が接続される。
【0014】
また、保持アーム83の先端側には、プライ10の内周面に空気を吐出する空気供給手段95を構成するエアノズル96が取り付けられる。
エアノズル96は、空気の吐出方向が成型ドラム22側のプライの内周面を向くように保持アーム83の一側面に取り付けられる。エアノズル96は、基台12上に配設されるコンプレッサ62と接続され、コンプレッサ62に蓄積される空気圧を電気的に制御する制御バルブ97を介して空気を吐出する。即ち、空気供給手段95は、エアノズル96、制御バルブ97、コンプレッサ62及び配管により構成される。制御バルブ97は、制御装置9から出力される吐出信号に基づいて空気の吐出圧力を制御する。エアノズル96から吐出される空気圧は、例えば1.0MPa〜5.0MPaに設定される。
なお、エアノズル96の空気の吐出方向は、保持アーム83の延長方向と同一又は交差するように保持アーム83の一側面に取り付けて、プライ10の内周面に空気圧が作用するように構成すれば良い。また、エアノズル96を保持アーム83の一側側に取り付けたが、成型ドラム22に位置するプライ10の一側側の内周面に空気が吐出可能であれば、保持アーム83にエアノズル96が含まれるように配置する等、どの位置に配置しても良く、全ての保持アーム83にエアノズル96を設けずに、例えば、90°位置ずれする毎の保持アーム83にエアノズル96を取り付けるようにしても良い。
【0015】
また、ガイド軸79には、ガイド軸79の軸方向に摺動する軸体89が内挿される。軸体89は、ガイド軸79の内周面の直径とほぼ等しい直径を有し、ガイド軸79よりも長く形成される。軸体89の成型ドラム22側の一端側にはリンク体90が固着される。リンク体90は、軸体89の外周面と嵌合する円筒状の筒体91と、筒体91の外周面から放射状に形成される突片92とを備える。突片92は、ガイド軸79の外周面に形成される突片80に対応する位置及び数量と一致するように形成される。リンク体90の突片92にリンク片82の一端が軸方向に回転可能に取り付けられ、他端が軸方向に回転可能に保持アーム83に取り付けられる。また、軸体89の他端側には、軸体89をガイド軸79に対して進退可能にする駆動機構93が装置本体78に設置される。
即ち、駆動機構93の駆動により軸体89がガイド軸79に対して進退することによりリンク体90が移動し、リンク体90の移動に伴って各リンク片82が各突片80,92周りを回転することによって、各保持アーム83がガイド軸79側に近接離間する。つまり、複数の保持アーム83によって形成される下層の円が縮径又は拡径する。
よって、プライ供給装置7は、円筒状のプライ10が保持アーム83に配置されるときには縮径し、保持アーム83にプライ10が配置された後には、保持アーム83を径方向外側に移動させることによりプライ10を円周方向に張力を負荷した状態で保持することができる。
【0016】
図7は、上記各装置と制御装置9との接続関係及び信号の入出力を示すブロック図である。
制御装置9は、所謂コンピュータであって、演算手段としてのCPU、記憶装置手段としてのROM,RAM、通信手段としての入出力インターフェースを備える。
制御装置9は、操作パネル、ドラム成型装置2と、プライ積層装置4と、プライ供給装置7と接続され、プライ10を積層する動作の全般を制御する。
操作パネルには、例えば、プライ10の積層を開始する積層開始スイッチが設けられ、スイッチの操作により成型開始信号を出力する。成型開始信号が制御装置9に入力されることにより、制御装置9は円筒状に成型されたプライ10を積層するための制御を開始する。
制御装置9は、成型ドラム22を拡縮するための拡径信号及び縮径信号をアクチュエータ30に出力し、成型ドラム22を回転又は停止させるための回転信号及び回転停止信号をモータ23に出力する。
また、制御装置9は、移動装置41のモータ47にプライ10を受け取るためにプライ積層装置4を所定の位置まで移動する受取移動信号と、受け取ったプライ10を成型ドラム22の所定の位置まで搬送する搬送信号とを出力する。また、プライ10の一端側を把持するために、拡縮装置42のアクチュエータ50にピストン50Aを伸長する縮径信号を出力し、プライ10の一端側を把持したときに、ピストン50Aを縮短する拡径信号を出力する。また、把持装置43の駆動手段53にプライ10を把持するための把持信号と、プライ10の積層が完了したときにプライ10を開放するための開放信号を出力する。また、プライ10の一端側を把持して成型ドラム22に搬送するときに、エアノズル60からプライ10の内周面に空気を吐出するための空気吐出信号と、空気の吐出を停止する空気吐出停止信号とを制御バルブ63に出力する。
また、制御装置9は、移動装置71のモータ77にプライ10を図外の供給手段からプライ10の供給を受ける供給位置までプライ供給装置7を移動する受給信号と、供給されたプライ10をプライ積層装置4の受け取り位置までプライ供給装置7を移動する搬送信号とを出力する。また、図外の供給手段からプライ10を受け取り易くするために保持アーム83を縮径するための縮径信号と、保持アーム83に供給されたプライ10に円周方向の張力を負荷しつつ保持するための拡径信号とを駆動機構93に出力する。
また、制御装置9は、プライ積層装置4が保持装置72からプライ10を受け取るときに、エアノズル96からプライ10の内周面に空気を吐出するための空気吐出信号と、空気の吐出を停止するための空気吐出停止信号を制御バルブ97に出力する。
【0017】
以下、本発明のタイヤ成型装置1によりプライ10を積層する動作の一例として、バイアスタイヤのプライを積層する工程について説明する。
なお、以下の説明において、プライ10をプライ10A,プライ10B等として示す。また、プライ10A,10Bは、予め円筒状に成型されたものである。
図8(a),(b),(c)は、タイヤ成型装置1によりインナーライナ11上に1層目のプライ10A(下層のプライ)を積層する工程を示す図である。
成型ドラム22には、図外の搬送手段によってインナーライナ11が搬送され、成型ドラム22の外周面にインナーライナ11が巻き回されている。インナーライナ11の巻回が完了すると、作業者は、操作パネルの積層開始スイッチを操作して制御装置9に成型開始信号を出力する。
インナーライナ11上に積層される1層目のプライ10Aの積層について図8を用いて説明する。
制御装置9は、プライ供給装置7にプライ10Aを供給する供給位置まで移動する移動信号をプライ供給装置7の移動装置71に出力し、プライ供給装置7を1層目のプライ10Aの供給位置まで移動させる。
次に制御装置9は、プライ供給装置7の駆動機構93に縮径信号を出力して保持アーム83を縮径させ、図外の搬送機構により1層目のプライ10Aが保持アーム83に供給される。保持アーム83にプライ10Aが供給されると、制御装置9は、駆動機構93に拡径信号を出力してプライ10Aの円周方向に所定の張力を負荷するように保持アーム83を拡径させ、続いて移動装置71に搬送信号を出力することによりプライ積層装置4にプライ10Aを供給する供給位置までプライ供給装置7を移動させる。
【0018】
次に、制御装置9は、プライ積層装置4のアクチュエータ50に縮径信号を出力し、ピストン50Aの先端に固着された把持装置43の固定爪51がプライ10Aの内径に位置するようにピストン50Aを伸長させた後に、移動装置41に把持位置信号を出力してプライ10Aの一端側を保持可能な位置までプライ積層装置4を移動させる。
次に制御装置9は、把持装置43の駆動手段53に把持信号を出力して固定爪51と移動爪52とにプライ10Aの一端側を挟み込ませ、アクチュエータ50に拡径信号を出力して成型ドラム22に巻き回されたインナーライナ11の外径よりもプライ10Aの一端側の直径が大きくなるようにピストン50Aを縮短させる(図8(a))。具体的には、プライ10Aの一端側を把持する把持装置43の固定爪51の内径側の面51Dが、インナーライナ11の外面よりも径方向外側に位置するようにピストン50Aを縮短させる。
【0019】
次に、制御装置9は、プライ10Aを成型ドラム22の所定の位置まで搬送するように移動装置41に搬送信号を出力するとともに、プライ積層装置4のエアノズル60から所定圧の空気が吐出されるように制御バルブ63に空気吐出信号を出力し、プライ供給装置7のエアノズル96から所定圧の空気が吐出されるように制御バルブ97に空気吐出信号を出力する。エアノズル60及びエアノズル96から吐出される空気は、プライ10Aの内周面に吹き付けられる。そして、プライ積層装置4がプライ10Aを把持した状態で成型ドラム22側に移動を開始すると、プライ10Aは、保持アーム83のローラ85の回転により滑るように保持アーム83上を移動し、保持アーム83から離れたプライ10Aの一端側は、プライ供給装置7のエアノズル96から吐出される空気圧によって拡径が維持される。プライ10Aの一端側が成型ドラム22の一側側と、重なる位置まで移動すると、プライ供給装置7のエアノズル96から吐出される空気が、成型ドラム22の外周面よりも半径方向外側にプライ10Aを押し上げ、成型ドラム22の外周面に流出する(図8(b))。
さらに、プライ10Aが成型ドラム22の外周面と重なる位置まで移動すると、プライ積層装置4のエアノズル60から吐出される空気が、成型ドラム22の外周面とプライ10Aの内周面との間に供給され、プライ供給装置7側に流出し、成型ドラム22の外周面とプライ10Aの内周面との間に空気層が形成される(図8(c))。
つまり、プライ10Aは、プライ積層装置4により成型ドラム22側に搬送される過程において、インナーライナ11の外周面と接触することはない。また、当該空気層は、プライ10Aがインナーライナ11に対して所定の位置に搬送されるまで維持される。
【0020】
プライ10Aがインナーライナ11回りを通過して所定位置まで搬送されると、制御装置9は、エアノズル60;96からの空気の吐出を停止するための空気吐出停止信号を制御バルブ63;97にそれぞれ出力する。エアノズル60;96からの空気の吐出を停止することにより、インナーライナ11とプライ10Aとの間の空気層がなくなり、空気層の厚さ分プライ10Aが縮径してインナーライナ11に密着する。
次に、制御装置9は、アクチュエータ50に縮径信号を出力してピストン50Aを伸長し、把持装置43の駆動手段53に開放信号を出力してプライ10Aを把持した状態から開放する。そして、把持装置43の固定爪51をプライ10Aの内周面側に入り込んだ分だけ、プライ10Aに対してプライ積層装置4を後退させることによりインナーライナ11に対するプライ10Aの積層が完了する。
【0021】
制御装置9は、積層が完了するとアクチュエータ50に拡径信号を出力してピストン50Aを縮短し、プライ10Aの上に積層するプライ10B(上層のプライ)を受け取る受取位置まで移動する移動信号を出力する。
プライ積層装置4が待機位置まで移動すると、図外のビード組み付け装置により、予め環状に成型されたビードがプライ10A上の両端側に配設され、さらに、ビードを包むようにプライ10Aの両端側が折り返される。
なお、制御装置9は、インナーライナ11に1層目のプライ10Aを積層する間に、プライ供給装置7に信号を出力して、プライ10Aの上に積層するプライ10Bをプライ積層装置4に供給する位置まで搬送させる。よって、1層目のプライ10Aの積層が完了したプライ積層装置4には、2層目のプライ10Bが速やかに供給される。
なお、1層目のプライ10Aをインナーライナ11上に配置するときには、プライ10Aを拡径せずに成型ドラム22を縮径してプライ10Aを所定の位置に配置した後に成型ドラム22を所定の直径に拡径しても良い。
【0022】
図9(a),(b),(c)は、タイヤ成型装置1により成型ドラム22に配設された1層目のプライ10Aの上に2層目のプライ10Bを積層する工程を示す図である。同図を用いてプライ10Aの上にプライ10Bを積層する工程について説明する。プライ供給位置まで移動したプライ積層装置4は、プライ供給装置7から2層目のプライ10Bの受け取りを開始する。
制御装置9は、プライ積層装置4のアクチュエータ50に縮径信号を出力してピストン50Aの先端に固着される把持装置43の固定爪51がプライ10Bの内径に位置するようにピストン50Aを伸長させた後に、移動装置41に把持位置信号を出力してプライ10Bの一端側を保持可能な位置までプライ積層装置4を移動させる。
次に制御装置9は、把持装置43の駆動手段53に把持信号を出力して固定爪51と移動爪52とにプライ10Bの一端側を挟み込ませ、アクチュエータ50に拡径信号を出力してプライ10Aのビード折返し端の直径よりも大きくなるようにピストン50Aを縮短させる(図9(a))。具体的には、プライ10Bの一端側を把持する把持装置43の固定爪51の内径側の面51Dが、プライ10Aのビード折返し端の外面10aよりも径方向外側に位置するようにピストン50Aを縮短させる。
【0023】
次に、制御装置9は、プライ10Bを成型ドラム22の所定の位置まで搬送するように移動装置41に搬送信号を出力するとともに、プライ積層装置4のエアノズル60から所定圧の空気が吐出されるように制御バルブ63に空気吐出信号を出力し、プライ供給装置7のエアノズル96から所定圧の空気が吐出されるように制御バルブ97に空気吐出信号を出力する。エアノズル60及びエアノズル96から吐出される空気は、プライ10Bの内周面に吹き付けられる。そして、プライ積層装置4がプライ10Bを把持した状態で積層方向に移動を開始すると、プライ10Bは、保持アーム83のローラ85の回転により保持アーム83上を滑るように移動し、保持アーム83から離れたプライ10Bの一端側は、プライ供給装置7のエアノズル96から吐出される空気圧によって拡径が維持される。
さらに、プライ10Bの一端側が成型ドラム22の一側側と重なる位置まで移動すると、プライ供給装置7のエアノズル96から吐出される空気が、成型ドラム22の外周面よりも半径方向外側にプライ10Bを押し上げ、成型ドラム22の外周面に流出する(図9(b))。
さらに、プライ10Bがプライ10Aのビード折返し端と重なる位置まで移動すると、プライ積層装置4のエアノズル60から吐出される空気が、プライ10Aの外周面とプライ10Bの内周面との間に供給され、プライ供給装置7側に流出し、プライ10Aの外周面とプライ10Bの内周面との間に空気層が形成される(図9(c))。つまり、プライ10Bは、プライ積層装置4により成型ドラム22側に搬送される過程において、プライ10Aの外周面と接触することはない。当該空気層は、プライ10Bが下層となるプライ10Aに対して所定の位置に搬送されるまで維持される。
【0024】
プライ10Bがプライ10Aに対して所定位置まで搬送されると、制御装置9は、エアノズル60;96からの空気の吐出を停止するための空気吐出停止信号を制御バルブ63;97にそれぞれ出力する。エアノズル60;96からの空気の吐出を停止することにより、プライ10Bとプライ10Aとの間の空気層がなくなり、空気層の厚さ分だけプライ10Bが縮径してプライ10Aに密着する。
次に、制御装置9は、アクチュエータ50に縮径信号を出力してピストン50Aを伸長し、把持装置43の駆動手段53に開放信号を出力してプライ10Bを把持した状態から開放する。そして、把持装置43の固定爪51をプライ10Bの内周面側に入り込んだ分だけ、プライ10Bに対してプライ積層装置4を後退させることにより下層のプライ10Aに対するプライ10Bの積層が完了する。
制御装置9は、積層が完了するとアクチュエータ50に拡径信号を出力してピストン50Aを縮短し、プライ10Bの上に積層するプライ10Cを受け取る受取位置まで移動する移動信号を出力する。
プライ積層装置4が待機位置まで移動すると、図外のビード組み付け装置により、環状のビード13が、プライ10Bのビード折返し端に対してプライ10B上の所定の位置にに配設され、ビード13を包むようにプライ10Bの両端側が折り返される。
【0025】
上記のプライ10のプライ供給装置7からの受取動作及び成型ドラム22への積層動作を所定の回数繰り返すことにより、バイアスタイヤのプライ積層工程が完了する。
上記実施形態では、プライ積層装置4とプライ供給装置7との両方にそれぞれ空気供給手段44,95を設けてプライの積層時に下層のプライの表面と、積層する上層のプライの内周面との間に空気を供給して、空気層を形成するようにしたが、プライ積層装置4又はプライ供給装置7のみに空気供給手段を設けるようにしても良い。
プライ積層装置4のみに空気供給手段44を設けた場合、下層のプライに対する上層のプライの重なり量が大きくなると、プライ供給装置7側から空気の供給がないためにプライ供給装置7側の下層のプライと上層のプライとの間の空気層が薄くなる場合や、部分的に空気層が維持されない場合があるので、プライ積層装置4に設けられた空気供給手段44のエアノズル60から吐出される空気の圧力を大きくするか、隣接する把持装置43の間にエアノズル60を追加すれば良い。なお、追加するエアノズル60は、プライの積層の妨げとならないような図外の保持方法により保持すれば良い。
また、プライ供給装置7のみに空気供給手段95を設けた場合、下層のプライに対する上層のプライの重なり量が大きくなると、プライ積層装置4の把持装置43側からの空気の供給がないために、把持装置43側の下層のプライと上層のプライとの間の空気層が薄くなる場合や、部分的に空気層が維持されない場合があるので、プライ供給装置7に設けられた空気供給手段95のエアノズル96から吐出される空気の圧力を大きくするか、隣接する保持アーム83の間にエアノズル96を追加すれば良い。なお、追加するエアノズル96は、プライの供給に妨げとならないような図外の保持方法により保持すれば良い。
【0026】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 タイヤ成型装置、2 ドラム成型装置、4 プライ積層装置、
7 プライ供給装置、9 制御装置、10;10A;10B プライ、
11 インナーライナ、12 基台、13 ビード、14 レール、
21 装置本体、22 成型ドラム、23 モータ、24 シャフト、
25 ドラムセグメント、25a 外周面、25b 内周面、26 突片、
27 スライダ、27a 外周面、28 接続片、29 突片、30 アクチュエータ、
41 移動装置、42 拡縮装置、43 把持装置、44;95 空気供給手段、
45 車輪、46 台座、47 モータ、48 円環フレーム、48A 取着部、
50 アクチュエータ、50A ピストン、51 固定爪、51A 固定部、
51B;52B 爪部、51C;52C 保持面、51D 内径側の面、52 移動爪、
52A 摺動部、52a 摺動面、52b 凸部、52D 背面、53 駆動手段、
54 溝部、60;96 エアノズル、62 コンプレッサ、63;97 制御バルブ、
71 移動装置、72 保持装置、75 車輪、76 台座、77 モータ、
78 装置本体、79 ガイド軸、80;92 突片、82 リンク片、
83 保持アーム、84 凹部、85 ローラ、86 縁面、87 凹部、89 軸体、
90 リンク体、91 筒体、93 駆動機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型ドラムに配設された下層プライの外周面に円筒状に成型された上層プライを積層するタイヤの成型装置であって、
前記上層プライを前記成型ドラムの回転軸と同軸上において保持するプライ供給手段と、
前記プライ供給手段により保持された上層プライの一端側を把持し、当該上層プライを拡径させた状態で前記下層プライ側に搬送するプライ積層手段と、
前記プライ積層手段によって搬送される上層プライと、下層プライとの間に空気を供給する空気供給手段とを備えることを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項2】
前記空気供給手段が前記プライ積層手段に設けられたことを特徴とする請求項1記載のタイヤ成型装置。
【請求項3】
前記空気供給手段が前記プライ供給手段に設けられたことを特徴とする請求項1記載のタイヤ成型装置。
【請求項4】
前記空気供給手段が前記プライ積層手段及び前記プライ供給手段に設けられたことを特徴とする請求項1記載のタイヤ成型装置。
【請求項5】
成型ドラムに配設された下層プライの外周面に円筒状に成型された上層プライを積層するタイヤの製造方法であって、
前記成型ドラムの回転軸と同軸上において保持された上層プライの一端側を把持し、当該上層プライを拡径させた状態で前記下層プライと前記上層プライとの間に空気を供給しながら前記成型ドラム側に搬送することを特徴とするタイヤ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166389(P2012−166389A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27607(P2011−27607)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】