説明

タイヤ用ゴム発泡体の製造方法

【課題】連続気泡を有するゴム発泡体を容易に成形するようにしたタイヤ用ゴム発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部に対し、充填剤を10〜150重量部、水溶性微粒子を10〜150重量部、化学発泡剤を0.5〜20重量部含むゴム組成物を成形した未加硫ゴムシートを使用して未加硫タイヤを成形し、この未加硫タイヤを前記化学発泡剤の分解温度以上で加硫成形した後、前記水溶性微粒子を溶解除去することにより連続気泡を形成するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム発泡体の製造方法に関し、さらに詳しくは連続気泡を有するゴム発泡体を容易に成形するようにしたタイヤ用ゴム発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤが騒音を発生させる原因の一つにタイヤ内部に充填された空気の振動による空洞共鳴音がある。この空洞共鳴音は、タイヤを転動させたときにトレッド部が路面の凹凸によって振動し、この振動がタイヤ内部の空気を振動させることによって生じる。
【0003】
このような空洞共鳴現象による騒音を低減する手法として、タイヤとホイールのリムとの間に形成される空洞部内に吸音材を配設することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、吸音材としては、連続気泡を有する発泡ポリウレタンなどのスポンジ材が使用され、吸音性能を高くするようにしている。しかし、発泡ポリウレタンなどの吸音材は、円環状の凹部の底に相当するタイヤ内腔のトレッド部内面に組み入れるという作業性が悪く手間がかかり、しかも接着剤を使用して貼り付けるようにしているので、その作業が煩わしいことや、接着剤が固まるまでに時間がかかることなどの問題があった。
【0004】
一方、通常のゴム発泡体は、一般に独立気泡構造であり連続気泡構造をしていないため吸音性能が不十分で吸音材として使用することができなかった。また、連続気泡を有するようにゴム発泡体を製造しようとすると、成形加工性が悪く工業生産に適さないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−252003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、連続気泡を有するゴム発泡体を容易に成形するようにしたタイヤ用ゴム発泡体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のゴム発泡体の製造方法は、ジエン系ゴム100重量部に対し、充填剤を10〜150重量部、水溶性微粒子を10〜150重量部、化学発泡剤を0.5〜20重量部含むゴム組成物を成形した未加硫ゴムシートを使用して未加硫タイヤを成形し、この未加硫タイヤを前記化学発泡剤の分解温度以上で加硫成形した後、前記水溶性微粒子を溶解除去することにより連続気泡を形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、化学発泡剤及び水溶性微粒子を含むゴム組成物を成形した未加硫ゴムシートを使用した未加硫タイヤを成形し、これを化学発泡剤の分解温度以上で加硫することにより、化学発泡剤を含む未加硫ゴムシートの加硫と発泡及び隣接するタイヤ部材との加硫接着を同時に行った後、水溶性微粒子を水で溶解除去するようにしたので、連続気泡を有するゴム発泡体を容易に成形することができる。しかも、未加硫タイヤのグリーン成形時に未加硫ゴムシートを組み入れるため成形が容易で、加硫接着するため接着剤を使用することなく、タイヤを構成するゴム部材に容易に固定することができる。
【0009】
前記未加硫ゴムシートを使用して未加硫タイヤのタイヤ内腔の表面を成形し、これにより吸音材を形成することができる。この吸音材は、連続気泡構造を有し吸音性能が優れると共に、加硫接着により固定するので、トレッド部、ショルダー部、サイドウォール部のいずれにも配設することができる。
【0010】
前記未加硫ゴムシートを使用して未加硫タイヤのトレッド部の表面を成形し、これにより連続気泡を有するトレッド面を形成することができる。このように連続気泡を有するゴム発泡体をトレッド部の表面に配置することにより、トレッドの摩耗を促進するため、タイヤの使用開始後、早期にタイヤ本来のグリップ性能を発現することが可能になる。また、踏面の吸水性・排水性を改良するので、ウェット性能、ウェットオンアイス性能を高くすることができる。
【0011】
水溶性微粒子は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1種を含む水溶性微粒子であることが好ましく、その平均粒子径は、1〜500μmであるとよい。また、化学発泡剤としては、ニトロソ系発泡剤が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム発泡体の製造方法は、先ず化学発泡剤及び水溶性微粒子を含むゴム組成物を調製する。ゴム組成物の調製方法は、通常の化学発泡剤を含むゴム組成物の調製と同じ方法を適用することができる。
【0013】
ゴム組成物のゴム成分としては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンイソプレンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴム等を例示することができる。これらのゴム成分は単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム発泡体は、充填剤を配合することにより、ゴム発泡体の強度を強くする。充填剤の配合量はジエン系ゴム100重量部に対し、10〜150重量部、好ましくは20〜120重量部にする。充填剤の配合量が10重量部未満であるとゴム発泡体の強度が弱くなる。また充填剤の配合量が150重量部を超えると未加硫ゴムの加工が困難になる。
【0015】
本発明において、タイヤ用ゴム発泡体を構成するゴム組成物は化学発泡剤を含むものとする。化学発泡剤を含むことにより、水溶性微粒子の配合量を削減可能にし、ゴム組成物のロール成形や押出し成形時の加工性を低下しないようにすることができる。化学発泡剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部にするとよい。化学発泡剤の配合量が0.5重量部未満であると、加硫時の発泡が不十分になり、最終的に連続気泡を形成することができない。また化学発泡剤の配合量が20重量部を超えると、コストが増えるが、発泡倍率の上昇の効果は頭打ちになる。
【0016】
化学発泡剤としては、例えばカルボンジアミド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、アジド系発泡剤及びアゾ系発泡剤等を例示することができる。なかでもニトロソ系発泡剤が好ましい。これらの化学発泡剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0017】
ニトロソ系発泡剤としてはN,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド等が例示される。カルボンジアミド系発泡剤としてはアゾジカルボンアミド(ADCA)等、スルホニルヒドラジド系発泡剤としては、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、p,p′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホニルヒドラジド等、アジド系発泡剤としてはカルシウムアジド、4,4′−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジド等、アゾ系発泡剤としてはアゾビスイソブチロニトリル(AZBN)、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等が例示される。
【0018】
化学発泡剤の分解温度は、好ましくは130℃〜190℃、より好ましくは150℃〜170℃にするとよい。化学発泡剤の分解温度をこのような範囲内にすることにより、化学発泡、加硫及び加硫接着の制御が容易になる。本明細書において、化学発泡剤の分解温度は、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量測定(TGA)から選ばれる熱分析を使用して分解熱や重量減少を測定することにより求められる温度である。
【0019】
本発明において、タイヤ用ゴム発泡体を構成するゴム組成物は水溶性微粒子を含むものとする。化学発泡剤及び水溶性微粒子を含むゴム組成物からなる未加硫ゴムシートを加硫・発泡すると、独立気泡構造の加硫ゴムのマトリックスに水溶性微粒子が存在する。この加硫ゴムを水に浸漬したり水洗したりすることにより、隣接する独立気泡間を仕切る加硫ゴム中の水溶性微粒子が溶解・除去され、独立気泡が連通して、連続気泡が形成される。水溶性微粒子の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、好ましくは10〜150重量部、より好ましくは20〜100重量部にするとよい。水溶性微粒子の配合量が10重量部未満であると、連続気泡を安定して形成することができない。また水溶性微粒子の配合量が100重量部を超えると、未加硫ゴム組成物の溶融体がぼそぼその状態でまとまりが損なわれ、ロール成形、押出し成形等の加工性が悪化する。
【0020】
水溶性微粒子としては、水に溶解する微粒子であれば特に制限されるものでなく、例えば水溶性塩や水溶性ポリマーから形成された微粒子が例示される。なかでも水溶性塩の微粒子が好ましい。水溶性塩としては、例えば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムが例示される。水溶性ポリマーとしては、例えばデンプン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミドが例示される。これらの水溶性微粒子は単独又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0021】
本発明において、水溶性微粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜500μm、より好ましくは1〜50μmであるとよい。水溶性微粒子の平均粒子径が1μm未満であると製造コストが高くなるにもかかわらず、極性の差でゴムの中で凝集してしまい、最終的に数μm大の平均粒子を配合したときと同程度の効果しか得られない。また水溶性微粒子の平均粒子径が500μmを超えると、欠陥点となり得られる発泡体の強度が大幅に低下する。
【0022】
タイヤ用ゴム発泡体を構成するゴム組成物は、化学発泡剤、水溶性微粒子と共に、尿素系発泡助剤を含むとよい。尿素系発泡助剤を配合することにより、化学発泡剤が熱分解する温度を低く調節することが可能になる。尿素系発泡助剤の配合量は、配合した化学発泡剤に対し、好ましくは0.1〜2当量、より好ましくは0.3〜1.5当量にするとよい。
【0023】
ゴム組成物は、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、ゴム補強剤、充填剤、軟化剤(可塑剤)、老化防止剤、加工助剤、発泡助剤、脱泡剤、活性剤、金型離型剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、増粘剤等のタイヤ用ゴム組成物やゴム発泡体に通常用いられる配合剤を添加することができる。これらの配合剤は本発明の目的に反しない限り、通常用いられる配合量を適用することができ、また通常の調製方法で添加、混練又は混合することができる。
【0024】
本発明のタイヤ用ゴム発泡体の製造方法は、上述したゴム組成物を使用して未加硫ゴムシートを成形し、これを使用して未加硫タイヤ(生タイヤ)を成形する。未加硫ゴムシートの形状、大きさ、厚さは、加硫成形後のゴム発泡体の形状、大きさ、厚さに応じて適宜、調節することができる。未加硫ゴムシートの厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜20mm、より好ましくは0.5〜15mmにするとよい。未加硫ゴムシートの厚さをこのような範囲内にすることにより、取り扱いが容易になる。また、未加硫ゴムシートの成形方法は、通常用いられる成形加工方法を適用することができる。
【0025】
未加硫タイヤにおいて、未加硫ゴムシートを適用する部分としては、例えばタイヤ内腔のタイヤ径方向内側の表面やトレッド部の径方向外側の表面を例示することができる。未加硫ゴムシートをタイヤ内腔の表面に配置するときは、予めタイヤ成形ドラムに未加硫ゴムシートを巻き付け、その外側にインナーライナー層、カーカス層等を配置することができる。このように通常の未加硫タイヤを成形する前に、タイヤ成形ドラムに未加硫ゴムシートを巻き付けるため成形加工の負担が少ない。なお、未加硫ゴムシートを巻き付ける位置は、タイヤトレッド部に相当する部分に限定されるものではなく、ショルダー部やサイドウォール部に相当する部分にすることができる。また、未加硫ゴムシートをトレッド部の外周表面に配置するときは、成形ドラム上に巻き付けたトレッドゴムの外側に巻き付けることができる。またグリーン成形した未加硫タイヤ(生タイヤ)のトレッド部の外側に未加硫ゴムシートを巻き付けることもできる。
【0026】
この未加硫タイヤは、加硫金型に挿入し化学発泡剤の分解温度以上の温度で加硫成形する。加硫成形の温度は、好ましくは130℃〜190℃、より好ましくは150℃〜170℃にするとよい。タイヤの加硫成形により、化学発泡剤を含む未加硫シートの加硫と発泡が同時に進行すると共に、この未加硫シートが隣接するゴム部材と加硫接着する。これにより化学発泡剤で形成された独立気泡を有するゴム発泡体を加硫接着した空気入りタイヤが製作される。このゴム発泡体は、水溶性微粒子を含有し、隣接する独立気泡間を仕切る加硫ゴム中に水溶性微粒子が存在する。
【0027】
本発明では、空気入りタイヤの水溶性微粒子を含有するゴム発泡体で構成された部分に対して、水溶性微粒子を溶解除去することにより、連続気泡を形成する。水溶性微粒子を溶解除去する方法は、特に限定されるものではないが、好ましくはゴム発泡体で構成された部分を水に浸漬する方法及び/又は水洗する方法を例示することができる。これにより隣接する独立気泡間を仕切る加硫ゴム中の水溶性微粒子が溶解して独立気泡間を連通したり、金型の内表面やブラダーの外表面に押しつけられて加硫成形されたゴム発泡体の外表面から水溶性微粒子が溶解して内部の独立気泡が開口したりする。また多数の独立気泡及び連通した独立気泡を通って水が浸透し、水との接触面積が広くなるので、水溶性微粒子を溶解除去する時間を短くすることができる。
【0028】
本発明において、ゴム発泡体を空気入りタイヤに配置する部位は、特に限定されるものではないが、例えばタイヤ内腔の径方向内側の表面やトレッド部の径方向外側の表面を例示することができる。ゴム発泡体をタイヤ内腔の表面に配置すると吸音材として作用する。このゴム発泡体は連続気泡を有するため優れた吸音性能を有する。また、上述した通りタイヤ成形ドラムに未加硫ゴムシートを巻き付けて未加硫タイヤを成形し、これを加硫して水処理すればよいので、従来の発泡ポリウレタンなどのスポンジ材を吸音材として装着するときのように、スポンジ材をトロイダル状の凹部に形成された加硫後のタイヤ内腔に挿入し接着剤を使用して固定するという多大な労力を必要としない。また、接着剤では曲率半径が比較的小さい曲面からなるショルダー部やサイドウォール部に相当するタイヤ内面へ吸音材を固定することが困難であった。しかし、本発明ではゴム発泡体を加硫接着により固定するため、トレッド部に限定することなく、ショルダー部やサイドウォール部に相当するタイヤ内面へ確実に固定することができる。
【0029】
トレッド部の径方向外側の表面に連続気泡を有するゴム発泡体を配置することにより、タイヤを使用開始した初期の摩耗を促進するために配置する細溝を省略することができる。この細溝は、トレッドの陸部に形成されサイプより細く浅い溝であり、空気入りタイヤの使用を開始したとき、製造直後のトレッド表面の摩耗を促進することにより、所期のグリップ性能が早期に得られるようにしたり、氷雪路走行用タイヤ(スタッドレスタイヤ)の表面にミクロエッジの出現を早くしたりするために配置されている。しかしこのような多数の細溝をトレッド面に形成することは、これに対応する多数の微細なブレードを加硫金型の内表面に隆起させなければならず多大の労力を要する。これに対し、本発明のように、トレッド部の外周表面に連続気泡からなるゴム発泡体を配置すれば、細溝を配置するのを省略することができ、かつ使用初期の摩耗を促進することができる。また、連続気泡により吸水性能及び排水性能を高くすることができるため、空気入りタイヤのウェットグリップ性能やスタッドレスタイヤのウェットグリップ性能やウェットオンアイス性能を優れたものにすることができる。
【0030】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
ゴム組成物の調製及び未加硫ゴムシートの作成
表1に示す配合からなる3種類のゴム組成物(比較例1,2、実施例1)について、それぞれ硫黄、加硫促進剤、化学発泡剤及び尿素系発泡助剤を除く配合成分を秤量し、1.7L密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。その後このマスターバッチを加熱ロールに供し、硫黄、加硫促進剤、化学発泡剤及び尿素系発泡助剤を加えて混合し、3種類のゴム組成物を調製すると共に、これらゴム組成物からなる未加硫ゴムシートを成形した。
【0032】
なお加熱ロールにかけたとき、それぞれのゴム組成物の成形加工性を下記の判断基準により評価し、その結果を表1に示した。
・OK: ロール成形加工性が良好で実用上問題がない。
・NG: 混練り物がぼそぼそでロール成形加工性が不良で工業的実施が困難。
【0033】
ゴム成形体の加硫成形
得られた3種類のゴム組成物(比較例1,2、実施例1)からなる未加硫ゴムシートを、実施例1及び比較例1では厚さが約10mm、比較例2では厚さが約15mmになるように、所定形状(縦100mm、横100mm)の金型に充填した。これらを温度170℃、20分間加熱し加硫成形した。これにより実施例1及び比較例1の未加硫ゴムシートは、加硫と発泡が同時に進行し、厚さが約15mmの発泡ゴムシートが形成された。
【0034】
次いで、実施例1の発泡ゴムシート及び比較例2の加硫シートを、表1に示した浸漬時間、水に浸漬し水溶性微粒子を溶解除去した。その後、水分を拭き取り120℃で乾燥した。なお、比較例2の加硫シートについては1時間の水浸漬と乾燥を6回繰り返すことにより、水浸漬時間の合計を18時間にした。
【0035】
ゴム発泡成形体の評価(気泡形態及び吸水率)
発泡ゴムシートを厚さ方向に切断し、その断面を光学顕微鏡(倍率350倍)で観察し、独立気泡、連続気泡のどちらの形態であるかを判断し、その結果を表1に示した。
【0036】
また得られた3種類の発泡ゴムシートの吸水率を、それぞれの発泡ゴムシートの乾燥時の重量に対する吸水した水の重量比(重量%)として測定し、得られた結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
なお、表1で使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、SIR20
・CB:カーボンブラック、新日化カーボン社製HTC#100
・化学発泡剤:ニトロソ系発泡剤、永和化成工業社製セルラーD、下記の尿素系発泡助剤と組み合わせて分解開始温度を125℃に調節
・尿素系発泡助剤:永和化成工業社製セルペースト
・水溶性微粒子、塩化ナトリウム、平均粒子径=80μm
・オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・老化防止剤:住友化学社製アンチゲン6C
・硫黄:鶴見化学社製金華印微粉硫黄150mesh
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーM
【0039】
表1の結果から、実施例1の製造方法で得られた発泡ゴムシートは、連続気泡を有し吸水率が高い。またロール成形性も良好で水溶性微粒子を溶解除去する時間も短い時間で済むことが確認された。比較例1の製造方法で得られた発泡ゴムシートは、独立気泡を有し吸水率も低い。比較例2の製造方法で得られたゴムシートは、連続気泡を有し吸水率が高いものの、ロール成形性が悪いと共に、水溶性微粒子を溶解除去する時間が長いため生産性が劣ることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に対し、充填剤を10〜150重量部、水溶性微粒子を10〜150重量部、化学発泡剤を0.5〜20重量部含むゴム組成物を成形した未加硫ゴムシートを使用して未加硫タイヤを成形し、この未加硫タイヤを前記化学発泡剤の分解温度以上で加硫成形した後、前記水溶性微粒子を溶解除去することにより連続気泡を形成するようにしたことを特徴とするタイヤ用ゴム発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記未加硫ゴムシートを使用して未加硫タイヤのタイヤ内腔の表面を成形し、これにより吸音材を形成することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記未加硫ゴムシートを使用して未加硫タイヤのトレッド部の表面を成形し、これにより連続気泡を有するトレッド面を形成することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記水溶性微粒子が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1種を含む水溶性微粒子であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のタイヤ用ゴム発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記水溶性微粒子の平均粒子径が、1〜500μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記化学発泡剤が、ニトロソ系発泡剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2012−25816(P2012−25816A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163901(P2010−163901)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】