説明

タンク回路付高周波回路モジュール

【課題】出力電流Irefがリファレンス抵抗器Rrefに反比例する電流源を用いてリファレンス電流源を構成しても、高精度な出力電圧を得ることができるタンク回路付高周波回路モジュールを提供する。
【解決手段】高周波増幅器は、タンク回路1、増幅回路12、バッファ回路13、リファレンス電流源14を備える。タンク回路1は、インダクタLp、キャパシタCp、および調整用抵抗器Rpが並列接続されたLCR並列回路からなり、扱う高周波信号の周波数がタンク回路1の共振周波数に設定されている。このような構成とすることで、高周波信号に対して、タンク回路1のインピーダンスはRpとなる。ここで、調整用抵抗器Rpとリファレンス電流源14のリファレンス抵抗器Refとを、同一チップの同層に同じ素材で形成することで、抵抗比Rp/Rrefが高精度になり、この抵抗比により設定される電圧利得Avが高精度になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はタンク回路のインピーダンスを利用するアンプ、オシレータ等のタンク回路付高周波回路モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク回路を用いた高周波回路モジュールとして、例えば、特許文献1に示す電圧制御発振装置のようなものが各種存在する。
【0003】
図4(A)は従来のタンク回路を備えた高周波増幅器の主要構成を示す等価回路図であり、図4(B)は特許文献1に類似する従来のタンク回路を備えた発振器の主要構成を示す等価回路図である。
【0004】
図4(A)に示す高周波増幅器は、タンク回路11、増幅回路12、バイアス回路13、リファレンス電流源14を備える。
【0005】
リファレンス電流源14は、リファレンス抵抗器Rrefを備え、リファレンス抵抗器Rrefに反比例するリファレンス電流をバイアス回路13に与える。バイアス回路13はnpn型トランジスタ(以下、本明細書中において、全てのnpn型トランジスタを、単に「トランジスタ」と称する。)Trbiを備える。増幅回路12は、カスコード接続されたトランジスタTr0,Trbuを備える。トランジスタTr0のベースはキャパシタCi0を介して、高周波信号入力端子10に接続する。トランジスタTrbuのベースにはバイアス電圧入力端子が接続し、トランジスタTrbuのコレクタにはタンク回路11を介して駆動電圧入力端子が接続する。
【0006】
タンク回路11は、インダクタLp0とキャパシタCp0とを並列接続してなり、LC並列回路の一方端がトランジスタTrbuのコレクタに接続し、他方端が駆動電圧入力端子に接続する。
【0007】
このような高周波回路モジュールでは、トランジスタTr0のバイアス電流をIbiasとし、リファレンス電流源14の出力電流値をIrefとすると、式(1)で表すことができる。
【0008】
【数1】

【0009】
ここで、aはトランジスタTr0とトランジスタTrbiとのサイズ比であり、トランジスタTr0のエミッタ面積をSe(Tr0)とし、トランジスタTrbiのエミッタ面積をSe(Trbi)とすると、
【0010】
【数2】

【0011】
により決定される。
【0012】
この際、
【0013】
【数3】

【0014】
となるように、トランジスタTr0のベースとトランジスタTrbiのベースとの間に接続される抵抗器Rb1,Rb2の抵抗値を設定することで、トランジスタTr0とトランジスタTrbiとによるカレントミラー回路が構成される。
【0015】
一方、高周波増幅器の電圧利得Avは、トランジスタTr0の相互コンダクタンスをgmとし、タンク回路11のインピーダンスをZtankとすると、
【0016】
【数4】

【0017】
ここで、トランジスタTr0の相互コンダクタンスgmは、電荷をq、ボルツマン係数をk、絶対温度をTとすると、
【0018】
【数5】

【0019】
で表され、式(1),(3)を式(2)に代入すると、電圧利得Avは、
【0020】
【数6】

【0021】
となる。
【0022】
また、図4(B)に示す発振器は、タンク回路11A,11B、差動回路15、バイアス回路16、リファレンス電流源14を備える。
【0023】
リファレンス電流源14は、リファレンス抵抗器Rrefを備え、リファレンス抵抗器Rrefに反比例するリファレンス電流をバイアス回路16に与える。バイアス回路16はトランジスタTrbiを備える。差動回路15は、互いにエミッタが接続するトランジスタTr1,Tr2を備える。このエミッタ接続点がトランジスタTr10のコレクタに接続し、トランジスタTr10のエミッタがグランドに接続する。トランジスタTr1のベースはトランジスタTr2のコレクタに接続し、トランジスタTr2のベースはトランジスタTr1のコレクタに接続する。トランジスタTr10のベースはトランジスタTrbiのベース−コレクタ接続点に接続する。
【0024】
タンク回路11Aは、インダクタLp01とキャパシタCp01との並列回路からなり、一方端がトランジスタTr2のベースとトランジスタTr1のコレクタとの接続点に接続し、他方端が駆動電圧入力端子に接続する。タンク回路11Bは、インダクタLp02とキャパシタCp02との並列回路からなり、一方端がトランジスタTr1のベースとトランジスタTr2のコレクタとの接続点に接続し、他方端が駆動電圧入力端子に接続する。
【0025】
また、トランジスタTr2のベースとトランジスタTr1のコレクタとの接続点と、トランジスタTr1のベースとトランジスタTr2のコレクタとの接続点との間が出力端子21となる。
【0026】
このような高周波回路モジュールでは、トランジスタTr10のバイアス電流をIbiasとし、リファレンス電流源14の出力電流値をIrefとすると、式(5)で表すことができる。
【0027】
【数7】

【0028】
ここで、bはトランジスタTr10とトランジスタTrbiとのサイズ比であり、トランジスタTr10のエミッタ面積をSe(Tr10)とし、トランジスタTrbiのエミッタ面積をSe(Trbi)とすると、
【0029】
【数8】

【0030】
により決定される。
【0031】
そして、タンク回路11A,11BのインピーダンスをZtankとすると、発振器の出力電圧Voutは、
【0032】
【数9】

【0033】
となる。したがって、式(5)、(6)より、出力電圧Voutは、
【0034】
【数10】

【0035】
となる。
【特許文献1】特開2001−111341公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
ところが、図4(A)に示した高周波増幅器のリファレンス電流源14を、カスコードカレントミラー回路を備えたPTAT電流源等の、出力電流Irefがリファレンス抵抗器Rrefに反比例する電流源で構成すると、出力電流Irefは、
【0037】
【数11】

【0038】
で表される。なお、cは高精度な定数である。そして、この式(8)を式(4)に代入すると、高周波増幅器の電圧利得Avは、
【0039】
【数12】

【0040】
となる。
【0041】
ここで、aは各回路素子の相対的な比を表すパラメータであるので、本モジュールを備える高周波増幅器を同一IC内に集積化した場合には、aは高精度に実現される。また、cに温度特性を持たせることも可能であり、式(9)のTを打ち消すことが可能である。しかしながら、タンク回路のインピーダンスZtankとリファレンス抵抗器Rrefとの絶対値のバラツキは一般的に大きく、Ztank/Rrefのバラツキも大きくなる。このため、図4(A)に示すような従来の高周波増幅器では、電圧利得Avのバラツキも大きくなり、出力振幅を高精度にすることが困難である。
【0042】
また、図4(B)に示した発振器のリファレンス電流源14を、前述と同様の出力電流Irefがリファレンス抵抗器Rrefに反比例する電流源で構成すると、前述の高周波増幅器の場合と同様に、出力電流Irefは、
【0043】
【数13】

【0044】
となる。なお、cは高精度な定数である。この式(10)を式(7)に代入すると、発振器の出力電圧Voutは、
【0045】
【数14】

【0046】
となる。
【0047】
ここで、前述のように、b、cは高精度な定数であるが、タンク回路のインピーダンスZtankとリファレンス抵抗器Rrefとの絶対値のバラツキは一般的に大きく、Ztank/Rrefのバラツキも大きくなる。このため、図4(B)に示すような従来の発振器では、出力電圧Voutのバラツキも大きくなり、高精度にすることが困難である。
【0048】
したがって、本発明の目的は、出力電流Irefがリファレンス抵抗器Rrefに反比例する電流源を用いてリファレンス電流源を構成する場合に、高精度な出力電圧を得ることができるタンク回路付高周波回路モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0049】
この発明は、インダクタとキャパシタとが並列接続されたタンク回路と、該タンク回路のインピーダンスとバイアス電流とに基づき所定電圧を出力する高周波回路と、リファレンス抵抗器を備え、該リファレンス抵抗器の抵抗値に反比例するリファレンス電流を前記バイアス回路に与えるリファレンス電流源と、リファレンス電流に基づいてバイアス電流を設定するバイアス回路と、を備えたタンク回路付高周波回路モジュールにおいて、タンク回路に、インダクタおよびキャパシタに並列接続する調整用抵抗器を備え、該調整用抵抗器の抵抗値とリファレンス抵抗器の抵抗値との相対比を略一定にするように、両抵抗器を形成することを特徴としている。
【0050】
また、この発明は、インダクタとキャパシタとが並列接続されたタンク回路と、該タンク回路のインピーダンスとバイアス電流とに基づき所定電圧を出力する高周波回路と、リファレンス抵抗器を備え、該リファレンス抵抗器の抵抗値に反比例するリファレンス電流を前記バイアス回路に与えるリファレンス電流源と、リファレンス電流に基づいてバイアス電流を設定するバイアス回路と、を備えたタンク回路付高周波回路モジュールにおいて、タンク回路に、インダクタおよびキャパシタに並列接続する調整用抵抗器を備え、調整用抵抗器とリファレンス抵抗器とを同一チップの同層に同じ素材で形成することを特徴としている。
【0051】
この構成により、タンク回路の共振周波数では、タンク回路のインピーダンスZtankが調整用抵抗器Rpの値に略一致する。したがって、前述の式(9)、(11)に示す電圧利得Avや出力電圧Voutのバラツキは、リファレンス抵抗器Rrefの抵抗値と調整用抵抗器Rpの抵抗値との比に大きく依存する。ここで、リファレンス抵抗器と調整用抵抗器とを同一チップの同層で同一素材により形成することで、リファレンス抵抗器の抵抗値と調整用抵抗器の抵抗値との相対比は高精度で一定に決定される。ここで、相似比とは、各抵抗器の抵抗値のバラツキの度合いや傾向の類似性を示すものであり、相似比が高精度で一定な場合ほど、各抵抗器のバラツキ度合いや傾向が一致する。
【0052】
したがって、電圧利得Avや出力電圧Voutが高精度になる。
【発明の効果】
【0053】
この発明によれば、タンク回路のインダクタとキャパシタとに、リファレンス電流源のリファレンス抵抗器に対して相対比が略一定な抵抗器を挿入することで、電圧利得や出力電圧のバラツキを抑制し、安定した出力振幅を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明の第1の実施形態に係るタンク回路付高周波回路モジュールについて図1、図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態のタンク回路付高周波回路モジュールである高周波増幅器の主要構成を示す等価回路図である。
【0055】
図1に示す高周波増幅器は、タンク回路1、増幅回路12、バイアス回路13、リファレンス電流源14を備える。
【0056】
リファレンス電流源14は、リファレンス抵抗器Rrefを備え、リファレンス抵抗器Rrefに反比例するリファレンス電流Irefを出力する。すなわち、リファレンス電流Irefは、
【0057】
【数15】

【0058】
となる。
バイアス回路13はトランジスタTrbiを備え、トランジスタTrbiのコレクタがリファレンス電流源14に接続し、エミッタがグランドに接続する。トランジスタTrbiのベースは抵抗器Rb1を介して自身(トランジスタTrbi)のコレクタに接続する。また、トランジスタTrbiコレクタと抵抗器Rb1との接続点は、抵抗器Rb2を介して増幅回路12に接続する。
【0059】
本発明の「高周波回路」に相当する増幅回路12は、カスコード接続されたトランジスタTr0,Trbuを備える。トランジスタTr0のコレクタがトランジスタTrbuのエミッタに接続し、トランジスタTr0のエミッタがグランドに接続し、トランジスタTrbuのコレクタがタンク回路1および出力端子20に接続する。トランジスタTr0のベースはバイアス回路13の抵抗器Rb2に接続する。この構成により、増幅回路12のトランジスタTr0とバイアス回路13のトランジスタTrbiとがカレントミラー回路を構成する。
【0060】
また、トランジスタTr0のベースは、キャパシタCi0を介して、高周波信号入力端子10に接続する。トランジスタTrbuのベースにはバイアス電圧入力端子40が接続し、トランジスタTrbuのコレクタにはタンク回路1を介して駆動電圧入力端子30が接続する。
【0061】
本実施形態の特徴であるタンク回路1は、インダクタLpとキャパシタCpと調整用抵抗器Rpとを並列接続してなるLCR並列回路であり、一方端がトランジスタTrbuのコレクタに接続し、他方端が駆動電圧入力端子30に接続する。この構成により、タンク回路1のインピーダンスZtankは、
【0062】
【数16】

【0063】
(ωは高周波信号の角周波数)
となる。
【0064】
このような構成の高周波増幅回路では、増幅回路12のトランジスタTrbuにバイアス電圧V入力端子40からバイアス電圧Vbiasが供給され、駆動電圧入力端子から駆動電圧Vddが供給されることで、増幅回路12の各トランジスタTr0とTrbiが駆動する。
【0065】
バイアス回路13のトランジスタTrbiと、増幅回路12のトランジスタTr0とでカレントミラーが形成されており、トランジスタTr0には、リファレンス電流Irefにより設定されるバイアス電流Ibiasが流れる。このバイアス電流Ibiasと、タンク回路1のインピーダンスZtankとにより、前述の式(4)に示すように、電圧利得Avが決定され、増幅回路12は、高周波信号入力端子10から入力される高周波信号を電圧利得Avで増幅して、出力端子20から出力する。
【0066】
ここで、タンク回路1の共振周波数は、増幅する高周波信号の周波数に略一致するように設定されており、その周波数でのタンク回路1のインピーダンスZtankは、
【0067】
【数17】

【0068】
となる。
【0069】
これにより、電圧利得Avは、式(4)、(12)、(14)より、
【0070】
【数18】

【0071】
となる。aはトランジスタサイズ比であり、本実施形態のタンク回路付高周波回路モジュールが備えられた高周波増幅器を1チップの高周波モジュールとして形成すれば、高精度に決定される。また、dは高精度に設定される定数である。
【0072】
ここで、リファレンス抵抗器Rrefと調整用抵抗器Rpとの抵抗値の相対比が略一定となるように、リファレンス抵抗器Rrefと調整用抵抗器Rpとを形成する。例えば、前記1チップの高周波モジュールの同層に同じ素材で形成する。
【0073】
これにより、Rp/Rrefは高精度に決定される。この結果、各構成要素が高精度に設定されることにより、電圧利得Avも高精度に設定され、出力振幅を安定化させることができる。
【0074】
次に、本実施形態の高周波増幅器を用いたシミュレーション結果について、図2を参照して説明する。
図2は、少なくともインダクタとキャパシタとの並列回路を有するタンク回路を備えた高周波増幅器のコーナ解析結果を示す図であり、図2(A)が本実施形態の高周波増幅器を示す。また、図2(B)はタンク回路内に抵抗を有さない本発明の従来技術(図4(A)参照)の高周波増幅器を示し、図2(C)はタンク回路を構成するインダクタに抵抗器を直列接続した高周波増幅器を示す。なお、図2において、Slow曲線は、高周波増幅器を構成する各回路素子の素子値が全て大きくなる方向(トランジスタのgmが小さくなる方向)にずれた場合を示し、Fast曲線は、高周波増幅器を構成する各回路素子の素子値が全て小さくなる方向(トランジスタのgmが大きくなる方向)にずれた場合を示す。また、Typical曲線は、高周波増幅器を構成する各回路素子の素子値が規格値である場合を示す。
【0075】
図2(A)〜(C)に示すように、各回路素子の素子値にバラツキがあることで、所定周波数帯域内において電圧ゲインのバラツキが少なからず発生する。例えば、5GHz〜8GHzの周波数帯域において、従来例に相当する高周波増幅器では、図2(B)に示すように、最小で約0.2dBであり最大で約6dBの電圧ゲインバラツキが発生する。また、比較例である高周波増幅器では、図2(C)に示すように、最小で約1dBであり最大で約5.5dBの電圧ゲインバラツキが発生する。
【0076】
一方、本実施形態のタンク回路付高周波回路モジュールを備えた高周波増幅器では、図2(A)に示すように、最小でバラツキは殆ど発生せず、最大でも約3dBしかバラツキが発生しない。
【0077】
このように、本実施形態の高周波増幅器では、素子値のバラツキによる出力電圧のバラツキを大幅に減少することができる。また、本実施形態の高周波増幅器は、従来技術を含む他の構成の高周波増幅器と比較して、特性バラツキの抑制効果が広い周波数帯域にまで及ぶ。これにより、従来よりも広周波数帯域で安定した出力電圧特性を得ることができる。
【0078】
次に、第2の実施形態に係るタンク回路付高周波回路モジュールについて、図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態のタンク回路付高周波回路モジュールである高周波発振器の主要構成を示す回路図である。
図3に示す高周波発振器は、タンク回路1A,1B、差動回路15、バイアス回路16、リファレンス電流源14を備える。
【0079】
リファレンス電流源14は、リファレンス抵抗器Rrを備え、リファレンス抵抗器Rrに反比例するリファレンス電流Irefを出力する。
【0080】
バイアス回路16はトランジスタTrbiを備え、トランジスタTrbiのコレクタがリファレンス電流源14に接続し、エミッタがグランドに接続する。トランジスタTrbiのベースはコレクタに接続し、この接続点は差動回路15に接続する。
【0081】
本発明の「高周波回路」に相当する差動回路15は、互いにエミッタが接続するトランジスタTr1,Tr2を備える。このエミッタ接続点がトランジスタTr10のコレクタに接続し、トランジスタTr10のエミッタがグランドに接続する。トランジスタTr1のベースはトランジスタTr2のコレクタに接続し、トランジスタTr2のベースはトランジスタTr1のコレクタに接続する。トランジスタTr10のベースはトランジスタTrbiのベース−コレクタ接続点に接続する。
【0082】
本実施形態の特徴であるタンク回路1Aは、インダクタLp1とキャパシタCp1と調整用抵抗器Rp1とが並列接続するLCR並列回路からなり、一方端がトランジスタTr2のベースとトランジスタTr1のコレクタとの接続点に接続し、他方端が駆動電圧入力端子31に接続する。タンク回路1Bは、インダクタLp2とキャパシタCp2と調整用抵抗器Rp2とが並列接続するLCR並列回路からなり、一方端がトランジスタTr1のベースとトランジスタTr2のコレクタとの接続点に接続し、他方端が駆動電圧入力端子31に接続する。さらに、タンク回路1Aを構成する各構成要素と、タンク回路1Bを構成する各構成要素とは、同じに設定される。具体的に、タンク回路1AのインダクタLp1とタンク回路1BのインダクタLp2とは同じ特性であり、タンク回路1AのキャパシタCp1とタンク回路1BのキャパシタCp2とは同じ特性であり、タンク回路1Aの調整用抵抗器Rp1とタンク回路1Bの調整用抵抗器Rp2とは同じ特性である。
【0083】
この構成により、タンク回路1AのインピーダンスZtank1は、
【0084】
【数19】

【0085】
となり、
タンク回路1BのインピーダンスZtank2は、
【0086】
【数20】

【0087】
(ωは高周波信号の角周波数)
となる。これらタンク回路1AのインピーダンスZtank1とタンク回路1BのインピーダンスZtank2とは同じインピーダンスZtankとなる。
【0088】
また、トランジスタTr2のベースとトランジスタTr1のコレクタとの接続点と、トランジスタTr1のベースとトランジスタTr2のコレクタとの接続点との間が出力端子21となる。
【0089】
このような高周波発振器では、駆動電圧入力端子31から駆動電圧Vddが供給されて、トランジスタTr10にバイアス電流Ibiasが流れることにより、差動回路15のトランジスタTr10が駆動する。差動回路15のトランジスタTr10とバイアス回路16のトランジスタTrbiとはカレントミラーを構成しており、バイアス電流Ibiasは、バイアス回路16にリファレンス電流源14から供給されるリファレンス電流Irefにより設定される。トランジスタTr1,Tr2は駆動電圧Vddが供給されることにより差動し、出力端子21から所定周波数の出力電圧Voutを出力する。なお、出力電圧Voutは、リファレンス電流Irefすなわちリファレンス抵抗器Rrefにより設定されるバイアス電流Ibiasと、タンク回路1A,1BのインピーダンスZtankとにより、式(11)に示すように決定する。
【0090】
ここで、タンク回路1A,1Bの共振周波数は、出力信号の周波数、すなわち発振周波数に一致するように設定されており、その周波数でのタンク回路1A,1BのインピーダンスZtankは、
【0091】
【数21】

【0092】
となる。すなわち、出力電圧Voutは、式(11)、(19)より
【0093】
【数22】

【0094】
となる。ここで、cは定数であり、一般に高精度に設定される。また、bは前述のトランジスタサイズ比であって、本実施形態のタンク回路付高周波回路モジュールを備えた高周波増幅器を1チップの高周波モジュールとして形成すれば高精度に決定される。
【0095】
ここで、リファレンス抵抗器Rrefと調整用抵抗器Rp1,Rp2との抵抗値の相対比が略一定となるように、リファレンス抵抗器Rrefと調整用抵抗器Rp1,Rp2とを形成する。例えば、前記1チップの高周波モジュールの同層に同じ素材で形成する。
【0096】
これにより、Rc/Rrefは高精度に決定される。この結果、第1の実施形態と同様に各構成要素が高精度に設定されることにより、出力電圧Voutも高精度に設定され、出力振幅を安定化させることができる。
【0097】
なお、各実施形態では、高周波増幅器と高周波発振器とを例に説明したが、タンク回路を用いた高周波回路モジュールであれば、前述の構成を適用することができる。また、各実施形態では、PTAT電流源を例に示したが、バンドギャップリファレンス回路のように、電流源内の特定抵抗器の抵抗値に出力電流が反比例する電流源であれば、前述の構成を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1の実施形態の高周波増幅器の主要構成を示す回路図である。
【図2】本実施形態および従来のタンク回路を備えた高周波増幅器のコーナ解析結果を示す図である。
【図3】第2の実施形態の高周波発振器の主要構成を示す回路図である。
【図4】従来のタンク回路を備えた高周波増幅器の主要構成を示す回路図、および従来のタンク回路を備えた発振器の主要構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B,11,11A,11B−タンク回路、12−増幅回路、13,16−バイアス回路、14−リファレンス電流源、15−差動回路、10−高周波信号入力端子、20、21−出力端子、30,31−駆動電圧入力端子、40−バイアス電圧入力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタとキャパシタとが並列接続されたタンク回路と、
該タンク回路のインピーダンスとバイアス電流とに基づき、所定電圧を出力する高周波回路と、
リファレンス抵抗器を備え、該リファレンス抵抗器の抵抗値に反比例するリファレンス電流を前記バイアス回路に与えるリファレンス電流源と、
前記リファレンス電流に基づいて前記バイアス電流を設定するバイアス回路と、
を備えたタンク回路付高周波回路モジュールにおいて、
前記タンク回路は、前記インダクタおよび前記キャパシタに並列接続する調整用抵抗器を備え、
該調整用抵抗器の抵抗値と前記リファレンス抵抗器の抵抗値との相対比が略一定となるように両抵抗器が形成されていることを特徴とするタンク回路付高周波回路モジュール。
【請求項2】
インダクタとキャパシタとが並列接続されたタンク回路と、
該タンク回路のインピーダンスとバイアス電流とに基づき、所定電圧を出力する高周波回路と、
リファレンス抵抗器を備え、該リファレンス抵抗器の抵抗値に反比例するリファレンス電流を前記バイアス回路に与えるリファレンス電流源と、
前記リファレンス電流に基づいて前記バイアス電流を設定するバイアス回路と、
を備えたタンク回路付高周波回路モジュールにおいて、
前記タンク回路は、前記インダクタおよび前記キャパシタに並列接続する調整用抵抗器を備え、
前記調整用抵抗器と前記リファレンス抵抗器とが同一チップの同層に同じ素材で形成されていることを特徴とするタンク回路付高周波回路モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−184719(P2007−184719A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−712(P2006−712)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】