説明

タービンエンジンコンポーネント及びタービンエンジンコンポーネントのコーティング方法

【課題】 砂漠環境で使用されるようなタービンエンジンコンポーネントにおいて、サーマルバリアコーティングに対して砂が浸透しないようなコーティング組成物を提供すること。
【解決手段】 タービンエンジンコンポーネントは、支持体(10)と、該支持体(10)に堆積されるサーマルバリアコーティング(14)と、溶融砂の浸透を制限するためにサーマルバリアコーティングの外表面におけるセラミック材料シールする手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルバリアコーティングへの溶融砂の浸透を妨げるためにサーマルバリアコーティングの表面に対してプラズマ溶射された外側層の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
砂漠環境で使用されるタービンエンジンのエアフォイルは、サーマルバリアコーティングに対する砂に関連した損傷に起因して、劣化する場合がある。かかる損傷の仕組みは、流動砂の堆積物が7YSZセラミックサーマルバリアコーティングに浸透し、これにより破損し、その後、むき出しの金属の酸化が進むことが原因であると考えられている。ガドリニア安定化ジルコニアコーティングが流動砂の堆積物と反応し、コーティングへの流動砂の浸透を妨げる反応生成物が形成することが観察されている。反応生成物は、ガドリニア、カルシア、ジルコニア、及びシリカを主として含むケイ酸オキシアパタイト/ガーネットとして同定された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、砂に関連する損傷を効果的に対処するコーティング組成物に対する要求が依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
サーマルバリアコーティングへの溶融砂の浸透を妨げるためにサーマルバリアコーティングの表面に対して空気プラズマ溶射される外側層を使用するタービンエンジンコンポーネントが提供される。
【0005】
本発明によれば、支持体と、該支持体に堆積されるサーマルバリアコーティングと、該サーマルバリアコーティングの外表面をシールし、これによりサーマルバリアコーティングへの溶融砂の浸透を制限する手段と、を含むタービンエンジンコンポーネントが提供される。
【0006】
更に、本発明によると、タービンエンジンコンポーネントの表面にサーマルバリアコーティングを形成するステップと、サーマルバリアコーティングにシール層をプラズマ溶射するステップと、を含むタービンエンジンコンポーネントにコーティングを形成する方法が提供される。
【0007】
本発明によるプラズマ溶射表面層を用いるサーマルバリアコーティングに関する他の詳細、並びにこれに伴う他の目的及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面に示され、図面において、同様の符号は、同様の構成要素を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1では、例えばブレード、ベーン、燃焼器パネル又はシールなどのタービンエンジンコンポーネント10が示されており、タービンエンジンコンポーネント10は、例えばブレードもしくはベーンのエアフォイル部又はプラットフォーム、燃焼器パネル部分又はシール部分などの支持体12と、支持体12の少なくとも一方の表面に対するサーマルバリアコーティング14と、を有する。支持体12は、当該分野で知られている好適な材料、例えばニッケルベースの超合金、コバルトベースの超合金、モリブデン、又はニオブから形成されていても良い。或いは、支持体12は、セラミックベースの支持体又はセラミックマトリックス複合支持体であっても良い。
【0009】
サーマルバリアコーティング14は、例えばイットリア安定化ジルコニア材料又はガドリニア安定化ジルコニア材料などの、1つまたは複数の層のセラミック材料を含む。イットリア安定化ジルコニアは、1.0〜25重量%のイットリア及び残部のジルコニアを含んでいても良い。ガドリニア安定化ジルコニアは、5.0〜99重量%、更に好ましくは30〜70重量%のガドリニア及び残部のジルコニアを含んでいても良い。セラミック材料の層は、当該分野で知られている好適な方法で堆積されても良い。
【0010】
サーマルバリアコーティング14は、当該分野で知られている好適な技術、例えば電子線物理的蒸着、溶射、ゾル−ゲル、スラリー、化学蒸着及びスパッタリングで施されても良い。種々のスプレー(溶射)パラメータを用いることにより、各層の間、すなわち密な表面シール層と多孔質な最下層との間において差異が認められるように、明らかに異なるミクロ構造が形成される。サーマルバリアコーティングを蒸着させる好ましい方法は、電子線物理的蒸着(EB−PVD)によって行われる。蒸着は、1700〜2000°Fの温度及び0.05〜2.0ミリトルの圧力の条件でのチャンバー内で行うことができる。セラミック原料は、20〜120分間のコーティング時間で、0.3〜2.0(インチ/時間)の送り速度で供給されても良い。
【0011】
必要により、サーマルバリアコーティング14の塗布前に、ボンディングコートを支持体に堆積させても良い。ボンディングコートは、MCrAlYコーティング(但し、Mがニッケル及び/又はコバルトを表す。)、アルミナイドコーティング、白金アルミナイドコーティング、セラミックベースのボンディングコート、又はシリカベースのボンディングコートであっても良い。ボンディングコートは、当該分野で知られている好適な技術で施される。
【0012】
サーマルバリアコーティング14が支持体12に施された後、サーマルバリアコーティングの表面に対して、プラズマ溶射層16が施される。プラズマ溶射層16は、セラミック材料、例えばイットリア安定化ジルコニア材料から形成されるのが好ましい。プラズマ溶射層16は、30〜70ボルト及び300〜900アンペアで操作するプラズマ溶射ガンを用いて形成されても良い。アルゴンとヘリウムとの混合物又はアルゴンと水素との混合物を、キャリアガスとして使用することが可能である。ガンは、2〜8インチのスタンドオフ距離(standoff distance)及び1分間あたりに30〜70グラムのセラミック粉末の流量を有していても良い。これにより得られる構造は、2層セラミックであり、プラズマ溶射層16が外表面上であるのが好ましい。2層、すなわちサーマルバリアコーティング層14及びプラズマ溶射層16は、所定の界面を有していなくても良く、一体となっていても良い。
【0013】
プラズマ溶射コーティングは、セラミック製又は金属製の粉末を、プラズマプルームに注入し、そこで、材料が加熱され、コーティングすべき支持体に向かって加速される。溶融又は半溶融の粒子が支持体に衝突し、スプラットつまりパンケーキ型の構造を形成する。コーティングの厚さは、さらなる溶融粒子が支持体に衝突し、スプラットを形成しつつ、構築される。かかるスプラットが構築されるので、コーティングに対して、例えば多孔性(ミクロ及びマクロの両方)、クラック、及びスプラットの境界などの欠陥が取り込まれる。溶射パラメータは、塗布に応じて極めて緻密な又は多孔質なコーティングをもたらすように調節することができる。これにより得られるプラズマ溶射表面層の構造は、その比較的低い多孔性及び蛇行通路に起因して、溶融砂が下のサーマルバリアコーティングに浸透するのを防ぐための障壁として作用する。EB−PVDコーティング層14の平均多孔率は、どこでも10〜20%であり、一方、プラズマ溶射コーティング層16の多孔率は、使用されるパラメータに応じて2.0〜30%とし得る。
【0014】
本発明により、タービンエンジンのエアフォイルに砂による損傷が生じるような環境下で、溶融シリケート材料の浸透を阻止し、耐久性を向上させるサーマルバリアコーティング組成物が生じるという利益が得られる。プラズマ溶射外側層は、サーマルバリアコーティングの表面をシールして、サーマルバリアコーティングにおける溶融砂の浸透を制限する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるサーマルバリアコーティング組成物の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体に堆積されるサーマルバリアコーティングと、
前記サーマルバリアコーティングの外表面をシールし、前記サーマルバリアコーティングに堆積される溶融砂の浸透を制限するシール手段と、
を含むことを特徴とするタービンエンジンコンポーネント。
【請求項2】
前記シール手段は、前記サーマルバリアコーティングに堆積されるプラズマ溶射外側セラミック層を含むことを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項3】
前記外側セラミック層は、イットリア安定化ジルコニアから構成されることを特徴とする請求項2に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項4】
前記外側セラミック層の多孔性は、2.0〜30%の範囲であることを特徴とする請求項2に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項5】
前記サーマルバリアコーティングは、少なくとも1層の、10〜20%の多孔性を有するセラミック材料からなる層を含むことを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項6】
前記セラミック材料は、1.0〜25重量%のイットリア及び残部がジルコニアからなるイットリア安定化ジルコニアを含むことを特徴とする請求項5に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項7】
前記セラミック材料は、5.0〜99重量%のガドリニア及び残部がジルコニアからなるガドリニア安定化ジルコニアを含むことを特徴とする請求項5に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項8】
前記ガドリニアは、30〜70重量%の量であることを特徴とする請求項7に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項9】
前記支持体と前記サーマルバリアコーティングとの間にボンディングコートをさらに含み、
前記ボンディングコートが、MCrAlYコーティング、アルミナイドコーティング、白金アルミナイドコーティング、セラミックベースの材料、及びシリカベースの材料からなる群から選択される材料から形成されることを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項10】
前記タービンエンジンコンポーネントは、ブレードを含むことを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項11】
前記タービンエンジンコンポーネントは、ベーンを含むことを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項12】
前記タービンエンジンコンポーネントは、燃焼器パネルを含むことを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項13】
前記タービンエンジンコンポーネントは、シールを含むことを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジンコンポーネント。
【請求項14】
タービンエンジンコンポーネントの表面にサーマルバリアコーティングを形成するステップと、
前記サーマルバリアコーティングにシール層をプラズマ溶射するプラズマ溶射ステップと、
を含むことを特徴とするタービンエンジンコンポーネントのコーティング方法。
【請求項15】
前記プラズマ溶射ステップでは、前記サーマルバリアコーティングにセラミック材料をプラズマ溶射することを特徴とする請求項14に記載のタービンエンジンコンポーネントのコーティング方法。
【請求項16】
前記プラズマ溶射ステップでは、前記サーマルバリアコーティングにイットリア安定化ジルコニアをプラズマ溶射することを特徴とする請求項14に記載のタービンエンジンコンポーネントのコーティング方法。
【請求項17】
前記プラズマ溶射ステップでは、30〜70ボルト及び300〜900アンペア並びに1分間あたりに30〜70グラムのセラミック粉末の流量で操作するプラズマ溶射ガンを用いて前記シール層を堆積させることを特徴とする請求項14に記載のタービンエンジンコンポーネントのコーティング方法。
【請求項18】
前記サーマルバリアコーティングを形成するステップでは、前記表面に少なくとも1層のイットリア安定化ジルコニアの層を堆積させることを特徴とする請求項14に記載のタービンエンジンコンポーネントのコーティング方法。
【請求項19】
前記サーマルバリアコーティングを形成するステップでは、前記表面に少なくとも1層のガドリニア安定化ジルコニアの層を堆積させることを特徴とする請求項14に記載のタービンエンジンコンポーネントのコーティング方法。
【請求項20】
前記サーマルバリアコーティングを形成するステップでは、1700〜2000°Fの温度、0.05〜2.0ミリトルの圧力及び1時間あたりに0.3〜2.0インチ(約7.6〜50mm)の送り速度の条件下でセラミック材料を堆積させることを特徴とする請求項14に記載のタービンエンジンコンポーネントのコーティング方法。
【請求項21】
前記サーマルバリアコーティングを形成するステップの前に、前記タービンエンジンコンポーネントの表面にボンディングコートを塗布するステップをさらに含み、
前記ボンディングコートを塗布するステップは、MCrAlYコーティング、アルミナイドコーティング、白金アルミナイドコーティング、セラミックベースの材料、及びシリカベースの材料からなる群から選択される材料を塗布することを含むことを特徴とする請求項14に記載のタービンエンジンコンポーネントのコーティング方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−45211(P2008−45211A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−212137(P2007−212137)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】