説明

ターボチャージャ

【課題】導入される排気ガスの流量が少ないときでもタービンホイールの回転を適正に制御し、タービン効率を向上させることのできるターボチャージャを提供する。
【解決手段】排気導入口3と、排気排出口4と、該排気導入口3と該排気排出口4とを連通する渦巻き状のスクロール部5を有するタービンハウジング6と、スクロール部5に回転自在に収容されるタービンホイール8と、複数のベーン15の開度を調整することで該タービンホイール8に流入する排気ガスの流速を可変とする可変ノズル9と、スクロール部5を径方向に内側スクロール5aと外側スクロール5bとに分割する分割壁30と、排気ガスの流入量を制御する流入量制御手段31と、分割壁30の下流側端部からベーン15の近傍で、かつ、該ベーン15の作動範囲外まで延設される内側ガイド壁32を有するガイド部34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の過給システムとして用いられるターボチャージャに関し、特に、タービンホイールに流入する排気ガスの流速を可変とする可変ノズルを備えるターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用の内燃機関において、その出力向上のためには燃焼室へ充填される空気の量を増やすことが好ましい。そこで従来は、ピストンの移動に伴って燃焼室内に発生する負圧により空気を燃焼室に吸入するだけでなく、その空気を強制的に燃焼室へ送り込んで、同燃焼室への空気の充填効率を高めるターボチャージャが提案され、実用化されている。
【0003】
従来のターボチャージャは、軸受部を介して互いに連結されたタービン部とコンプレッサ部にて構成される。軸受部は、センタハウジングと、センタハウジング内にて軸受を介して回転可能に支持された回転軸を備える。この回転軸は、左右の各端部がセンタハウジングから突出している。また、この回転軸は、一端部にタービン部を構成するタービンホイールが一体回転可能に接合され、このタービンホイールはタービンハウジングに収容される。一方、回転軸は、他端部にコンプレッサ部を構成するコンプレッサホイールが一体回転可能に接合され、このコンプレッサホイールはコンプレッサハウジングに収容される。
【0004】
タービンホイールは、内燃機関の排気通路を流れる排気ガスが流入することによって回転し、その回転力は回転軸を介してコンプレッサホイールに伝達される。そして、コンプレッサホイールは、このタービンホイールの回転と共に一体となって回転し、内燃機関の吸気通路内の空気の圧力(過給圧)を高め、その結果、圧縮された空気が燃焼室に送り込まれるようになる。
【0005】
ところで、このようなターボチャージャでは、複数のノズルベーンの開閉によりタービンホイールへのガス流速を制御できるようにした可変ノズルベーン付きターボチャージャが知られている。この複数のノズルベーンは、タービンホイールの軸線を中心としてこのタービンホイールの外側に周方向に沿って等間隔に設けられ、互いに同期した状態で開閉動作する。タービンホイールに導入される排気ガスの流速は、上記ノズルベーンの開度を変更して、隣り合うノズルベーン間の流路面積を変化させることによって調整される。こうしてノズルベーンを開閉させて上記排気ガスの流速調整を行うことにより、タービンホイール及びコンプレッサホイールの回転速度が調整され、ひいては燃焼室に導入される空気の圧力が調整される。こうした燃焼室への吸入空気量の調整を行うことにより、内燃機関の出力向上と燃焼室内の異常燃焼防止との両立が可能となる。
【0006】
また、このような可変ノズルベーン付きターボチャージャでは、排気ガス流路を2つに分け、この2つの流路のいずれか一方、あるいは、両方を用いて排気ガスをタービンホイールに導入するものがある。さらに、このような2つの流路を有するターボチャージャとして、ノズルベーンを通過しタービンホイールに流入する排気ガスの動圧をより有効に利用するために、内燃機関の気筒に応じてタービンスクロール内を隔壁により2室に分割したツインエントリ型のタービンスクロールを有し、可変ノズルベーンの回動軸まわりに円板状の壁を設けることで、一方の流路から他方の流路への排気ガスの干渉を防止する構造を有するターボチャージャがある(例えば、特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】実開昭62−141636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているバリアブルノズル付ターボチャージャでは、回動軸まわりに設けられる壁により2流路を各々流れる排気ガスの干渉を防止して動圧をより有効に利用し、可変ノズルベーンにより排気ガスの流れを適切に制御しているものの、制御することのできる排気ガス量の最小流量に限度があり、ノズルベーンの開度を小さくしすぎると、ノズルベーンとハウジングとの間に設けられるクリアランスからの排気ガスの漏れ量が増大したり、また、排気ガスの流動方向に対してベーン角度が寝すぎていることによって流力性能が悪化したりすることで、適正なタービン性能を確保することができないことがあった。すなわち、導入される排気ガスの流量が少ないときにタービンホイールの回転を適正に制御することができないことがあった。
【0009】
そこで本発明は、導入される排気ガスの流量が少ないときでもタービンホイールの回転を適正に制御し、タービン効率を向上させることのできるターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明によるターボチャージャは、排気ガスを導入する排気導入口と、該排気ガスを排気する排気排出口と、該排気導入口と該排気排出口とを連通する渦巻き状のスクロール部を有するタービンハウジングと、前記スクロール部に回転自在に収容されるタービンホイールと、前記タービンホイールの外周に沿って設けられる複数のベーンの開度を調整することで、該タービンホイールに流入する排気ガスの流速を可変とする可変ノズルと、前記スクロール部を径方向に内側スクロールと外側スクロールとに分割する分割壁と、前記内側スクロール又は前記外側スクロールへの排気ガスの流入量を制御する流入量制御手段と、前記分割壁の下流側端部から前記ベーンの近傍で、かつ、該ベーンの作動範囲外まで延設される内側ガイド壁を有するガイド部とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明によるターボチャージャでは、前記タービンハウジングは、筒形状に形成され内側に前記排気導入口を形成する導入ノズルを有し、前記ガイド部は、前記導入ノズルの排気ガスの流動方向における下流側端部から前記ベーンの近傍で、かつ、該ベーンの作動範囲外まで延設される外側ガイド壁を有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明によるターボチャージャでは、前記内側ガイド壁及び前記外側ガイド壁は、前記ベーンの回動軸線と平行に立設されることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明によるターボチャージャでは、前記内側ガイド壁及び前記外側ガイド壁の前記ベーン側の端部は、該ベーンの最小開度におけるリーディングエッジと対向し、該端部に前記対向するベーンの回動軸線を中心とする円弧状に形成されるベーン側対向部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明によるターボチャージャでは、前記ベーン側対向部は、前記対向するベーンの最小開度から開放側に所定の範囲で形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明によるターボチャージャでは、前記タービンホイールが挿入される円形孔が形成され、該孔に沿って前記可変ノズルが設けられるノズルプレートを備え、前記ガイド部は、前記ノズルプレートに設けられることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明によるターボチャージャでは、前記ガイド部は、前記ノズルプレートと対向する前記タービンハウジングの内面と当接して、該タービンハウジングと前記ベーンとの間にクリアランスを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るターボチャージャによれば、タービンホイールに流入する排気ガスの流速を可変とする可変ノズルと、スクロール部を径方向に内側スクロールと外側スクロールとに分割する分割壁と、内側スクロール又は外側スクロールへの排気ガスの流入量を制御する流入量制御手段と、分割壁の下流側端面からベーンの近傍で、かつ、該ベーンの作動範囲外まで延設される内側ガイド壁を有するガイド部とを備えるので、導入される排気ガスの流量が少ないときでも、流入量制御手段により排気ガスの流入量を制御し、ガイド部により一方のスクロールから他方のスクロールへの排気ガスの流れ込みを防止することで、タービンホイールの回転を適正に制御し、タービン効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係るターボチャージャの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の実施例に係るターボチャージャのタービン部側の部分断面図、図2は、本発明の実施例に係るターボチャージャのタービン部の径方向断面図、図3は、本発明の実施例に係るターボチャージャにおけるノズルプレートの可変ノズル全閉時の正面図、図4は、本発明の実施例に係るターボチャージャにおけるノズルプレートの可変ノズル全開時の正面図である。ターボチャージャ1は、自動車用の内燃機関において、その出力や燃費の向上のために燃焼室へ充填される空気を圧縮してから燃焼室に送り込んで、同燃焼室への空気の充填効率を高めるものである。
【0020】
図1及び図2に示すように、ターボチャージャ1は、軸受部50を介して互いに連結されたタービン部2とコンプレッサ部(不図示)にて構成される。軸受部50は、センタハウジング51と、センタハウジング51内にて回転軸7を回転可能に支持する軸受を備える。この回転軸は、左右の各端部がセンタハウジング51から突出している。そして、回転軸7は、一端部にタービン部2を構成するタービンホイール8が一体回転可能に接合され、このタービンホイール8はタービンハウジング6に収容される。一方、回転軸7は、他端部にコンプレッサ部を構成するコンプレッサホイールが一体回転可能に接合され、このコンプレッサホイールはコンプレッサハウジング(不図示)に収容される。
【0021】
ターボチャージャ1のタービン部2は、排気導入口3、排気排出口4及び該排気導入口3と該排気排出口4とを連通するスクロール部5を有するタービンハウジング6と、スクロール部5に回転自在に収容されるタービンホイール8と、開度を調整することでタービンホイール8に流入する排気ガスの流速を可変とする可変ノズル9を備える。さらに、ターボチャージャ1のタービン部2は、スクロール部5を分割する分割壁30と、ターボチャージャ1への排気ガスの流入量を制御する流入量制御手段としての開閉バルブ31と、内側ガイド壁32を有するガイド部34を備える。本図に示すこのターボチャージャ1は、内燃機関の負荷や回転数に応じて可変ノズル9の開度を調整することで、排気ガスの流速を調節して最適な過給を図る可変容量型のターボチャージャである。
【0022】
タービンハウジング6は、スクロール壁61と、導入ノズル62と、排出ノズル63が一体となって形成される。スクロール壁61は、内部に流路面積が漸次減少する渦巻き状の排気流路としてのスクロール部5を形成する。導入ノズル62は、略円筒形状に形成され、内側に排気導入口3を形成する。排出ノズル63は、略円筒形状に形成され、内側に排気排出口4を形成する。導入ノズル62は、渦巻き状のスクロール部5の接線方向に排気ガスを導入するように形成され、一方、排出ノズル63は、円筒形の軸線がスクロール部5の渦巻きのほぼ中央に位置するように形成される。排出ノズル63の軸線は、円筒形の導入ノズル62の軸線に対してほぼ垂直となる。また、導入ノズル62と排出ノズル63は、各々がスクロール壁61から外側に突出するように形成される。導入ノズル62の中空部分としての排気導入口3と、排出ノズル63の中空部分としての排気排出口4とは、上述したように、スクロール部5を介して連通される。導入ノズル62には内燃機関から排気管が接続され、内燃機関の排気ガスは、この排気導入口3から導入され、スクロール部5を介して排気排出口4の方向(図1中矢印で示す方向)に流動し排出される。
【0023】
タービンホイール8は、図2に示すように、タービンハウジング6内に形成されるスクロール部5の渦巻きのほぼ中央に位置するように回転軸7の一端に固定される。タービンホイール8は、複数の羽根状のブレード14を有している。複数のブレード14は、タービンホイール8の外周面に、それぞれ周方向に均等に間隔をあけて設けられ、排気ガスが流入する流路を複数の空間に仕切る。タービンホイール8が固定されている回転軸7は、回転軸線7aを回転中心として回転可能にセンタハウジング51に支持され、該回転軸線7aは、タービンホイール8の軸線、排出ノズル63の円筒形状の軸線とほぼ一致する。タービンホイール8は、この回転軸線7aを回転中心として回転する。
【0024】
分割壁30は、スクロール部5を径方向に内側スクロール5aと外側スクロール5bとに分割する。この分割壁30は、スクロール部5において排気導入口3側からほぼ半周分に形成される。ここで、スクロール部5の径方向とは、スクロール部5に収容されているタービンホイール8の回転中心としての回転軸線7aに直交する方向である。すなわち、分割壁30は、スクロール壁61の内面に上述の回転軸線7aとほぼ平行となるように設けられ、スクロール部5を内側スクロール5aと外側スクロール5bとに分割する。また、分割壁30は、長手方向に対する両側部においてスクロール壁61の内面と一体に形成される。このように、スクロール壁61と分割壁30とを一体に形成することで、内側スクロール5aの空間と外側スクロール5bの空間とをより確実に分割することが可能となる。
【0025】
可変ノズル9は、複数のベーン15を有し、該ベーン15を回動して開度を調整することでタービンホイール8に流入する排気ガスの流速を可変とする。ベーン15は、タービンハウジング6とセンタハウジング51との間に設けられるノズルプレート16にピン15aを介して回動可能に支持される。ノズルプレート16は、円盤状に形成され、さらに、タービンホイール8が挿入される円形孔16aが形成される。各ベーン15は、ノズルプレート16のタービンハウジング6側の端面、すなわち、排気流路としてのスクロール部5中に設けられ、ノズルプレート16の円形孔16aに沿って、すなわち、タービンホイール8の外周面に沿ってそれぞれ周方向に均等に間隔をあけて環状に設けられる。
【0026】
各ベーン15は、ノズルプレート16とセンタハウジング51と間に設けられるベーン駆動機構17により前記ピン15aの軸線を回動軸線15bとして回動する。この回動軸線15bは、上述したタービンホイール8の回転軸線7aと平行である。ベーン駆動機構17は、ピン15aの他端部(ベーン15とは反対側の端部)に取り付けられる開閉レバー17aと、ノズルプレート16に対して相対的に回動するリングプレート17bを有する。リングプレート17bは、ノズルプレート16のセンタハウジング51側の面に設けられ、内周部に開閉レバー17aが連結される。開閉レバー17aは、このリングプレート17bの回動に基づいてピン15aを回動させ、そのピン15aの回動によってベーン15が開閉動作するようになる。また、ベーン駆動機構17は、ノズルプレート16のセンタハウジング51側の面に設けられるストッパローラ17cを有する。リングプレート17bの回動に基づいて回動される開閉レバー17aは、このストッパローラ17cと当接することによって、その回動範囲が規制される。つまり、隣り合うベーン15間の流路面積の大きさが制御される。また、各ベーン15は、開度がほぼ全閉側である際に、隣接するベーン15と部分的に重なるように配置される。各ベーン15は、排気ガスの流動方向に対して下流に行くにしたがって先細となるように形成され、上流側端部、つまり、厚い側の端部がリーディングエッジ15d(図3、図4参照)をなす。
【0027】
可変ノズル9が取り付けられたノズルプレート16は、その外周面16bがタービンハウジング6に形成される円形孔65の内側に挿入される。そして、このノズルプレート16は、複数のスペーサボルト20及びナット21等を介して、タービンハウジング6に固定されると共に、背面側(センタハウジング51側)がセンタハウジング51と当接し、このセンタハウジング51を取付プレート22、ボルト23等を介してタービンハウジング6に連結することで、タービンハウジング6に組み付けられる。
【0028】
ノズルプレート16と該ノズルプレート16と対向するタービンハウジング6の内面は、上述の複数のスペーサボルト20により所定の間隔が保持される。このノズルプレート16とタービンハウジング6の内面との間の空間は、タービンホイール8に排気ガスを導く排気流路としてのスクロール部5の一部を構成する。上述した可変ノズル9のベーン15は、このノズルプレート16とタービンハウジング6の内面との間の空間に位置する。また、スペーサボルト20は、このタービンハウジング6の内面と当接して、このタービンハウジング6の内面とベーン15との間に隙間をあけ、ノズルサイドクリアランスを形成する。このように、タービンハウジング6の内面とベーン15との間にノズルサイドクリアランスを形成することで、各ベーン15の作動がスムーズになる。ノズルサイドクリアランスは、この隙間からの排気ガスの漏洩を最小限に抑えるため、タービンハウジング6の内面とベーン15が当接しない範囲で最小に形成する。
【0029】
排気導入口3に導入される排気ガスは、スクロール部5を通過する間に加速され、可変ノズル9を通過して複数のブレード14にあたり、タービンホイール8を回転駆動させる。そして、タービンホイール8が回転することで、このタービンホイール8に固定される回転軸7も一体となって回転し、回転軸7の他端に固定されているコンプレッサホイールも一体となって回転する。これにより、内燃機関の吸気通路内の空気の圧力(過給圧)が高められ、その結果、圧縮された空気が燃焼室に送り込まれるようになる。
【0030】
また、可変ノズル9の各ベーン15は、ベーン駆動機構17により回動軸線15bを中心として回動することで、回転軸線7aと直交する方向に開閉し、隣接するベーン15同士の隙間としての流路面積が可変となり、タービンホイール8に流入する排気ガスの流速を変化させることができる。可変ノズル9のベーン15の開度を調整することで、タービンホイール8へ流入する排気ガスの流量を増減して流速を調節することになり、タービンホイール8、回転軸7及びコンプレッサホイールの回転速度が適宜に調節され、結果的に、吸気通路における空気の圧力が調節されることで充填効率が調整される。こうした燃焼室への吸入空気量の調整を行うことにより、内燃機関の出力向上と共に燃焼室内の異常燃焼防止も可能となる。
【0031】
すなわち、内燃機関の回転数が低い低速域では、排気量は比較的少ない。このとき、ターボチャージャ1において、可変ノズル9のベーン15の開度を閉側に調整する。これにより、スクロール部5を流れる排気ガスは可変ノズル9を通過する際に流速が速められ、タービンホイール8を高速回転させる。その後、排気ガスは、排気排出口4を経て外部へ排出される。この間、上述のようにタービンホイール8の回転により回転軸7が回転して、コンプレッサホイールを回転させる。この結果、内燃機関の吸気通路内の空気が圧縮されて、ターボチャージャ1の回転数に応じた過給圧となって、高い密度の吸気として内燃機関の吸気ポートへ導入される。
【0032】
一方、内燃機関の回転数が高い高速域では、排気量は多い。このとき、ターボチャージャ1において、可変ノズル9のベーン15の開度を開側に調整する。これにより、排気ガスは可変ノズル9を通過する際に流速がほとんど上昇せずに(ベーン15が閉状態のときよりも遅い)、タービンホイール8を回転させる。これにより、コンプレッサホイールの必要以上の回転を防止するように、タービンホイール8の回転は制御されて、内燃機関の運転領域において排気量が多い領域でも設定された過給圧に制御することができる。
【0033】
ところで、このターボチャージャ1では、上述したように、ターボチャージャ1への排気ガスの流入量を制御する開閉バルブ31と、内側ガイド壁32を有するガイド部34を備えることで、導入される排気ガスの流量が少ないときでもタービンホイールの回転を適正に制御することにより、タービン効率の向上を図っている。
【0034】
開閉バルブ31は、外側スクロール5b内の排気導入口3側に配設され、外側スクロール5bへの排気ガスの流入量を制御する。開閉バルブ31は、該開閉バルブ31が位置する部分における外側スクロール5bの流路断面とほぼ同様な形状をなし、不図示の駆動手段により回転軸31aを中心にして回転することで全閉位置又は全開位置に移行する。開閉バルブ31の全開位置は、図2に実線で示すように、排気ガスの流動方向に対して平行となる位置であり、このとき、開閉バルブ31を通過する排気ガスの圧力損失はほとんどない。開閉バルブ31の全閉位置は、図2に破線で示すように、排気ガスの流動方向に対して直交する位置であり、このとき、外側スクロール5bを閉止、すなわち、外側スクロール5bにおける排気ガスの流路面積をほぼゼロとし、外側スクロール5bへの排気ガスの流入を規制する。開閉バルブ31は、内燃機関から排出される排気量に応じて全閉位置又は全開位置に移行し、外側スクロール5bへの排気ガスの流入量を制御する。開閉バルブ31は、不図示の制御部に接続されており、この制御部により開閉バルブ31の開閉が制御されている。
【0035】
ガイド部34をなす内側ガイド壁32は、分割壁30の端部、さらに具体的には排気ガスの流動方向に対する下流側端部からベーン15の近傍で、かつ、該ベーン15の作動範囲外まで延設される。また、ガイド部34は、外側ガイド壁33を有し、この外側ガイド壁33は、導入ノズル62の下流側端部からベーン15の近傍、かつ、該ベーン15の作動範囲外まで延設される。内側ガイド壁32は、ベーン15の回動軸線15bと平行となるように立設される。すなわち、内側ガイド壁32は、上述した分割壁30が立設される方向とほぼ平行なるように形成され、この分割壁30の端面との隙間を最小限にして連続的に設けられる。外側ガイド壁33も同様に、分割壁30が立設される方向とほぼ平行なるように形成され、導入ノズル62の端面との隙間を最小限にして連続的に設けられる。また、この内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33は共に、図3、図4に示すように、上述したノズルプレート16の縁部に、このノズルプレート16と一体に形成される。また、内側ガイド壁32と外側ガイド壁33とは、ノズルプレート16の中心に向かって対向する位置に形成される。すなわち、内側ガイド壁32は、ノズルプレート16上の外側ガイド壁33とほぼ180°反対側に位置する。
【0036】
内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33のベーン15側の端部は、図3に示すように、各々複数のベーン15のうちの1つのベーン15と対向するベーン側対向部35が形成される。各ベーン側対向部35は、ベーン15が最小開度に位置する際に、向かい合うベーン15のリーディングエッジ15dと対向する。各ベーン側対向部35は、この対向するベーン15の回動軸線15bを中心とする円弧状に形成される。つまり、各ベーン側対向部35の円弧とリーディングエッジ15dの軌道は、回動軸線15b上の中心15cを共有する同心円となる。これにより、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33をベーン15の作動範囲外で、かつ、できる限り近い位置まで延設することができ、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33と各ベーン15との間隔をリーディングエッジ15dと接触しない範囲で最小限とすることができる。
【0037】
また、各ベーン側対向部35は、図4に示すように、対向するベーン15の最小開度から開放側に所定の範囲、具体的にはベーン15の作動範囲の半分程度の範囲で形成される。言い換えれば、各ベーン側対向部35は、ベーン15の回動範囲の中心角θ1が各ベーン側対向部35の円弧の中心角θ2とベーン15の閉位置側で重なり、開位置側では重ならないように形成される。これにより、ベーン15が上記の開度以上に開側に回動すると、ベーン側対向部35とリーディングエッジ15dとが対向する部分がなくなり、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33がベーン15間の流路を塞がずに、排気ガスが通過可能な流路として開放することができる。
【0038】
次に、図1及び図2を参照してターボチャージャ1の作用を説明する。上記のように構成されるターボチャージャ1では、内燃機関の回転数が低い低速域や急加速時において導入される排気ガス量は比較的少ない。このとき、ターボチャージャ1において、可変ノズル9のベーン15の開度を閉側に調整する。これにより、スクロール部5を流れる排気ガスは可変ノズル9を通過する際に流速が速められ、タービンホイール8を高速回転させる。しかしながら、ここで、ベーン15の開度を小さくしすぎると、ベーン15とタービンハウジング6の内面との間に形成されるノズルサイドクリアランスからの排気ガスの漏れ量が増大したり、また、排気ガスの流動方向に対してベーン15の角度が寝すぎていることによって排気ガスの流れを僅かに乱し、流力性能が悪化したりするおそれがある。
【0039】
そこで、ターボチャージャ1に導入される排気ガス量は比較的少ない際には、開閉バルブ31を全閉位置に移行させ、外側スクロール5bを閉止し、外側スクロール5bへの排気ガスの流入を規制する。すなわち、スクロール部5のうち内側スクロール5aのみに排気ガスを導入する。そして、内側ガイド壁32により内側スクロール5a内を流れる排気ガスが外側スクロール5b側へ流れ込むことを確実に防止し、該内側スクロール5a内を流れる排気ガスをこの内側ガイド壁32に沿ってベーン15側へ案内する。この結果、排気ガスが流れる空間を内側スクロール5a内に限定することで、スクロール部5における排気ガス流路の容積がほぼ半減される。導入された排気ガスは、この内側スクロール5a内のみを通過することから、可変ノズル9に至る前にある程度加速されるので、この可変ノズル9において排気ガスを大きく加速させる必要がない。したがって、排気ガスの流速は、ベーン15の開度を排気ガスの流動方向に対して極端に寝かせなくとも、タービンホイール8の回転を適正に制御するのに十分な流速となる。
【0040】
一方、このターボチャージャ1では、内燃機関の回転数が高い高速域において導入される排気ガス量は比較的多い。このとき、ターボチャージャ1において、可変ノズル9のベーン15の開度を開側に調整する。これにより、排気ガスは可変ノズル9を通過する際に流速がほとんど上昇せずに(ベーン15が閉状態のときよりも遅い)、タービンホイール8を回転させる。しかしながら、ここで、導入される排気ガスが多量になると、ベーンの開度調整だけでは流速を調節しきれないためタービン効率が低下するおそれがある。
【0041】
そこで、ターボチャージャ1に導入される排気ガス量が一定量に達した際には、開閉バルブ31を全開位置に移行させ、外側スクロール5bを開放し、外側スクロール5bへの排気ガスの導入を開始する。すなわち、スクロール部5の内側スクロール5a、外側スクロール5bの両方に排気ガスを導入する。この結果、排気ガスが流れる空間を内側スクロール5a及び外側スクロール5bに増加させることで、スクロール部5における排気ガス流路の容積が増加される。導入された排気ガスは、この内側スクロール5a及び外側スクロール5b内を通過することから、可変ノズル9に至る前でも加速され過ぎず、この可変ノズル9において速度の調整が可能となるため、タービンホイール8の回転を適正に制御するのに適した流速となる。また、この間、内側スクロール5a内を流れる排気ガスは、内側ガイド壁32によりこの内側ガイド壁32に沿ってベーン15側へ案内され、外側スクロール5b内を流れる排気ガスは、外側ガイド壁33によりこの外側ガイド壁33に沿ってベーン15側へ案内される。この結果、内側スクロール5a内を流れる排気ガスと外側スクロール5b内を流れる排気ガスとが互いに干渉することが抑制される。
【0042】
図5は、本発明の実施例に係るターボチャージャにおける排気ガス量とタービン効率との関係を示す線図である。本図では、横軸をターボチャージャ1に導入される排気ガス量、縦軸をタービン効率とする。また、本図中、開閉バルブ31が全閉位置にある際、すなわち、タービン容量が小さい状態における排気ガス量とタービン効率との関係を二点鎖線Aで示し、一方、開閉バルブ31が全開位置にある際、すなわち、タービン容量が大きい状態における排気ガス量とタービン効率との関係を一点鎖線Bで示す。ターボチャージャ1では、タービン容量が小さい状態である二点鎖線A、タービン容量が大きい状態である一点鎖線B共に、グラフの右に行くにしたがって、すなわち、ターボチャージャ1に導入される排気ガス量が多くなるにしたがって可変ノズル9のベーン15の開度を大きくする。
【0043】
ターボチャージャ1では、上述したようなノズルサイドクリアランスからの排気ガスの漏れや流力性能の悪化などの影響により、タービン容量が小さい状態である二点鎖線A、タービン容量が大きい状態である一点鎖線B共に、全閉側と全開側との中間部分でもっともタービン効率がよくなる。そして、導入される排気ガスの量が少ないときには、開閉バルブ31を全閉としてタービン容量を小さくしておき、排気ガスの量が増加し、二点鎖線Aと一点鎖線Bとが交差するC点において、開閉バルブ31を全開位置に移行させる。これにより、本図中太線で示すように、ターボチャージャ1のタービン効率が向上する。
【0044】
以上で説明した本発明の実施例に係るターボチャージャ1によれば、排気ガスを導入する排気導入口3と、該排気ガスを排気する排気排出口4と、該排気導入口3と該排気排出口4とを連通する渦巻き状のスクロール部5を有するタービンハウジング6と、スクロール部5に回転自在に収容されるタービンホイール8と、タービンホイール8の外周に沿って設けられる複数のベーン15の開度を調整することで、該タービンホイール8に流入する排気ガスの流速を可変とする可変ノズル9と、スクロール部5を径方向に内側スクロール5aと外側スクロール5bとに分割する分割壁30と、外側スクロール5bへの排気ガスの流入量を制御する開閉バルブ31と、分割壁30の排気ガスの流動方向における下流側端部からベーン15の近傍で、かつ、該ベーン15の作動範囲外まで延設される内側ガイド壁32を有するガイド部34とを備える。
【0045】
したがって、排気導入口3によりタービンハウジング6内に排気ガスが導入され、この排気ガスはスクロール部5で加速されながら可変ノズル9に至り、この可変ノズル9で流速が調整されてタービンホイール8に流入し、このタービンホイール8を回転させ、排気排出口4から排気される。タービンホイール8は、回転軸7と共にコンプレッサホイールを回転させ、内燃機関の吸気通路内の空気を圧縮する。ここで、排気ガスが通過するスクロール部5は、分割壁30により内側スクロール5aと外側スクロール5bとに分割され、ターボチャージャ1に導入される排気ガス量は比較的少ない際には、開閉バルブ31により外側スクロール5bを閉止し、内側スクロール5aのみに排気ガスを導入する。そして、内側スクロール5a内を流れる排気ガスは、分割壁30からベーン15に接触しない範囲でこのベーン15近傍まで延設される内側ガイド壁32により、外側スクロール5b側へ流れ込むことが確実に抑制される。この結果、スクロール部5における排気ガス流路の容積がほぼ半減され、排気ガスはこの内側スクロール5a内のみを通過することから、可変ノズル9に至る前にある程度加速されるので、導入される排気ガスの流量が少ないときでも、ノズルベーンの開度を小さくしすぎてノズルサイドクリアランスからの排気ガスの漏れ量が増大したり、また、排気ガスの流動方向に対してベーン角度が寝すぎていることによって流力性能が悪化したりすることなく、タービンホイールの回転を適正に制御することができ、特に内燃機関の低回転域でのタービン効率を高めることができる。
【0046】
さらに、導入される排気ガスの量が増加し一定量に達した段階で、開閉バルブ31を全開位置に移行させ、外側スクロール5bを開放し、内側スクロール5a、外側スクロール5bの両方に排気ガスを導入する。この結果、スクロール部5における排気ガス流路の容積が増加し、導入された排気ガスはこの内側スクロール5a及び外側スクロール5b内を通過することから、可変ノズル9に至る前でも加速され過ぎず、この可変ノズル9において速度の調整が可能となるので、タービンホイール8の回転を適正に制御し、タービン効率を向上させることができる。また、このターボチャージャ1で対応することのできる排気ガスの流量範囲も広くすることができる。
【0047】
また、開閉バルブ31を全閉位置又は全開位置として、排気ガスの流路容量を調節した上で、可変ノズル9によりタービンホイール8に流入する排気ガスの流速を微調整することで、開閉バルブ31を半開状態に維持することなく、タービンホイール8の回転を制御するので、この開閉バルブ31における排気ガスの圧力損失によるタービン効率の低下を抑制することができる。
【0048】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るターボチャージャ1によれば、タービンハウジング6は、筒形状に形成され内側に排気導入口3を形成する導入ノズル62を有し、ガイド部34は、導入ノズル62の排気ガスの流動方向における下流側端部からベーン15の近傍で、かつ、該ベーン15の作動範囲外まで延設される外側ガイド壁33を有する。したがって、開閉バルブ31を全開位置に移行させた際に、内側スクロール5a内を流れる排気ガスは、内側ガイド壁32によりこの内側ガイド壁32に沿ってベーン15側へ案内され、外側スクロール5b内を流れる排気ガスは、外側ガイド壁33によりこの外側ガイド壁33に沿ってベーン15側へ案内され、内側スクロール5a内を流れる排気ガスと外側スクロール5b内を流れる排気ガスとが互いに干渉することが抑制されるので、各スクロールを流れる排気ガスを好適な方向からタービンホイール8に流入させることができ、結果的に排気ガスの動圧を有効に利用することができる。
【0049】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るターボチャージャ1によれば、ガイド部34をなす内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33は、ベーン15の回動軸線15bと平行に立設される。したがって、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33をそれぞれ1つ設ければ、複数のベーン15各々にガイド壁を設ける必要がないので、簡易な構成で内側スクロール5a側から外側スクロール5b側へ排気ガスの流れ込みを抑制することができる。
【0050】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るターボチャージャ1によれば、ガイド部34をなす内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33のベーン15側の端部は、該ベーン15の最小開度におけるリーディングエッジ15dと対向し、該端部に前記対向するベーン15の回動軸線15bを中心とする円弧状に形成されるベーン側対向部35を有する。したがって、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33をベーン15の作動範囲外で、かつ、できる限り近い位置まで延設することができ、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33と各ベーン15との間隔をリーディングエッジ15dと接触しない範囲で最小限とすることができので、内側スクロール5a側から外側スクロール5b側へ排気ガスの流れ込みを最小限にすることができる。
【0051】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るターボチャージャ1によれば、ベーン側対向部35は、対向するベーン15の最小開度から開放側に所定の範囲で形成される。したがって、ベーン15が上記の開度以上に開側に回動すると、ベーン側対向部35とベーン15のリーディングエッジ15dとが対向する部分がなくなり、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33がベーン15間の流路を塞がずに、排気ガスが通過可能な流路として開放することができるので、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33における排気ガスの圧力損失によるタービン効率の低下を抑制することができる。
【0052】
さらに、以上で説明した本発明の実施例に係るターボチャージャ1によれば、タービンホイール8が挿入される円形孔16aが形成され、該孔16aに沿って可変ノズル9が設けられるノズルプレート16を備え、ガイド部34をなす内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33は、ノズルプレート16に設けられる。したがって、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33をノズルプレート16を一体に形成し、可変ノズル9をノズルプレート16に設置してからこのノズルプレート16をタービンハウジング6に組み付けることで、ガイド部34及び可変ノズル9をタービンハウジング6内に設けることができるので製作が容易となる。
【0053】
なお、上述した本発明の実施例に係るターボチャージャ1は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、ガイド部34として外側ガイド壁33を備えるものとして説明したがこれを備えなくても、本発明の構成によれば、導入される排気ガスの流量が少ないときでもタービンホイール8の回転を適正に制御し、タービン効率を向上させることができる。
【0054】
また、以上の説明では、分割壁30とスクロール壁61とを継ぎ目なく一体に形成するものとして説明したが、それぞれ別体に形成し、分割壁30をスクロール壁61に固定するようにしてもよい。さらに、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33は、ノズルプレート16と一体に形成されるものとして説明したが、各々別体に形成してもよい。また、ノズルプレート16を備えない構成としてもよく、この場合、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33や可変ノズル9は、例えば、タービンハウジング6の内面に直接組み付ければよい。
【0055】
さらに、以上の説明では、開閉バルブ31は、外側スクロール5b内の排気導入口3側に配設され、外側スクロール5bへの排気ガスの流入量を制御するものとして説明したが、内側スクロール5a内に設け、内側スクロール5aへの排気ガスの流入量を制御するように構成してもよい。また、開閉バルブ31は、全開位置又は全閉位置に移行することで排気ガスの流量を調整するものとして説明したが、この開閉バルブ31を半開状態に維持して排気ガスの流量を調整するようにしてもよい。この場合、排気ガスの流量をよりフレキシブルに調整することができる。また、以上の説明では、スクロール部5を内側スクロール5aと外側スクロール5bの2流路に分割するものとして説明したが、内側スクロール5aと外側スクロール5bとの間に中央スクロールを設けて3流路としてもよいし、さらに複数の流路に分割してもよい。
【0056】
さらに、以上の説明では、スペーサボルト20によりタービンハウジング6の内面とベーン15との間にクリアランスを形成するものとして説明したが、ガイド部34をなす内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33によりこのクリアランスを形成するようにしてもよい。すなわち、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33をベーン15よりも若干高く形成することで、内側ガイド壁32及び外側ガイド壁33をスペーサとして兼用し、スペーサボルト20を省略する。これにより、このスペーサボルト20による排気ガス圧力損失がなくなり、また、ターボチャージャ1を構成する部品点数を削減することができるので、より安価なターボチャージャとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明に係るターボチャージャは、排気ガスを可変ノズルに導くスクロール部を分割壁により径方向に分割し、この分割壁から可変ノズルのベーン近傍までガイド部を形成することで、導入される排気ガスの流量が少ないときでもタービンホイールの回転を適正に制御し、タービン効率を向上させたものであり、可変ノズルを備えるターボチャージャに用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例に係るターボチャージャのタービン部側の部分断面図である。
【図2】本発明の実施例に係るターボチャージャのタービン部の径方向断面図である。
【図3】本発明の実施例に係るターボチャージャにおけるノズルプレートの可変ノズル全閉時の正面図である。
【図4】本発明の実施例に係るターボチャージャにおけるノズルプレートの可変ノズル全開時の正面図である。
【図5】本発明の実施例に係るターボチャージャにおける排気ガス量とタービン効率との関係を示す線図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ターボチャージャ
2 タービン部
3 排気導入口
4 排気排出口
5 スクロール部
5a 内側スクロール
5b 外側スクロール
6 タービンハウジング
7 回転軸
8 タービンホイール
9 可変ノズル
15 ベーン
15d リーディングエッジ
16 ノズルプレート
17 ベーン駆動機構
20 スペーサボルト
30 分割壁
31 開閉バルブ(流入量制御手段)
32 内側ガイド壁(ガイド部)
33 外側ガイド壁(ガイド部)
34 ガイド部
35 ベーン側対向部
61 スクロール壁
62 導入ノズル
63 排出ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを導入する排気導入口と、該排気ガスを排気する排気排出口と、該排気導入口と該排気排出口とを連通する渦巻き状のスクロール部を有するタービンハウジングと、
前記スクロール部に回転自在に収容されるタービンホイールと、
前記タービンホイールの外周に沿って設けられる複数のベーンの開度を調整することで、該タービンホイールに流入する排気ガスの流速を可変とする可変ノズルと、
前記スクロール部を径方向に内側スクロールと外側スクロールとに分割する分割壁と、
前記内側スクロール又は前記外側スクロールへの排気ガスの流入量を制御する流入量制御手段と、
前記分割壁の排気ガスの流動方向における下流側端部から前記ベーンの近傍で、かつ、該ベーンの作動範囲外まで延設される内側ガイド壁を有するガイド部とを備えることを特徴とする、
ターボチャージャ。
【請求項2】
前記タービンハウジングは、筒形状に形成され内側に前記排気導入口を形成する導入ノズルを有し、
前記ガイド部は、前記導入ノズルの排気ガスの流動方向における下流側端部から前記ベーンの近傍で、かつ、該ベーンの作動範囲外まで延設される外側ガイド壁を有することを特徴とする、
請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記内側ガイド壁及び前記外側ガイド壁は、前記ベーンの回動軸線と平行に立設されることを特徴とする、
請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記内側ガイド壁及び前記外側ガイド壁の前記ベーン側の端部は、該ベーンの最小開度におけるリーディングエッジと対向し、該端部に前記対向するベーンの回動軸線を中心とする円弧状に形成されるベーン側対向部を有することを特徴とする、
請求項2又は請求項3に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記ベーン側対向部は、前記対向するベーンの最小開度から開放側に所定の範囲で形成されることを特徴とする、
請求項4に記載のターボチャージャ。
【請求項6】
前記タービンホイールが挿入される円形孔が形成され、該孔に沿って前記可変ノズルが設けられるノズルプレートを備え、
前記ガイド部は、前記ノズルプレートに設けられることを特徴とする、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のターボチャージャ。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記ノズルプレートと対向する前記タービンハウジングの内面と当接して、該タービンハウジングと前記ベーンとの間にクリアランスを形成することを特徴とする、
請求項6に記載のターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−309140(P2007−309140A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136972(P2006−136972)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】