説明

ターボ機械のシャフトの案内

【課題】ターボ機械のシャフトを案内する軸受のための支持体を提供する。
【解決手段】ケーシング(32)に固定される、ターボ機械(10)のシャフト(24)を案内する軸受(28)のための支持体(56)であって、印加される負荷が閾値より小さい時に最初の形状を保持し、印加される負荷が少なくとも閾値に等しくなる時に変形し、エネルギーを吸収する形状記憶材料からなる環状部(58)を備え、この環状部(58)は、印加される負荷が閾値より小さい値に戻る時に、少なくともほぼ最初の形状に戻ることが可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機バイパスターボジェットエンジンなどのターボ機械のロータのシャフトを案内する軸受のための支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボジェットエンジンのファンブレードは、例えば、鳥または氷の塊などの異物の吸い込みにより、損傷される場合がある。
【0003】
一般に、ファンは、このような吸い込みの影響に耐え、場合によってはより低速で作動し続けるように十分堅牢である。
【0004】
しかし、異物の吸い込みは1つまたは複数のファンブレードを破損させる場合がある。このことが、少なくともエンジンが大気中を移動した結果、空転速度や自転速度、つまり自由回転速度に減速される間、エンジンを停止させるのに必要な大きなアンバランスを生じさせる傾向があり、ターボジェットエンジンの構造物に相当な循環力を受けさせる可能性がある。
【0005】
ターボジェットエンジンの構造物に移されるアンバランス力を避けるために、ファンを担持する低圧圧縮機シャフトがステータから外されることが提案されてきた。
【0006】
このシャフトは、ステータにより支持される2つの軸受により略径方向に案内される。第1の軸受は、上流側軸受またはスラスト軸受としても知られていることがあり、シャフトの上流側端部に位置決めされ、ターボジェットエンジンの中間ケーシングに連結される環状支持体により支持される転がりボール軸受を備えるが、第2の軸受は、通常下流側軸受として知られており、第1の軸受の下流側に位置決めされる転がりローラ軸受を備える。
【0007】
上流側軸受を外し、この軸受の支持体を中間ケーシングに連結する「破断」ねじを備える装置と同様に、所定の負荷を超える負荷が印加された時に支持体を変形させるように設計された局所歪を有する軸受支持体を備える他の装置が提案されてきたが、提案された他の装置は、特定の負荷の条件で曲がることを目的とした波形軸受支持体を含む。上流側軸受の領域に「破断」ピンを備える装置も、提案されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上流側軸受がステータから外された時に、上流側軸受は低圧圧縮機シャフトをセンタリングすることができなくなり、自転速度に達した後、アンバランスから生じた負荷がそれほど大きくなくても、その後これらの負荷は基本的に下流側軸受により担持され、したがって、下流側軸受を破損させてしまうリスクがある。
【0009】
この欠点を避けるために、例えば、この下流側軸受を破損しないで、シャフトが中心から外れるように連接される支持体に下流側軸受が取り付けられる装置が提案されたが、これらの装置は、ターボジェットエンジンの性能を不利にする質量の増加につながる。
【0010】
さらに、知られている装置に関しては、低圧圧縮機シャフトが破損すれば、その上流側部は、上流側軸受により軸方向に保持されなくなり、したがって、ターボジェットエンジンを危険にさらすことになりかねない。
【0011】
本発明の特定の目的は、これらの問題に対する簡単で経済的で効果的な解決策を提供し、同時に上述の欠点を避けることである。
【0012】
本発明の特定の目的は、ターボジェットエンジンが自転速度に達するとすぐに、低圧圧縮機シャフトをその案内軸受のうちの1つが外された時点で再びセンタリングされるようにして、他方の案内軸受が破損されるのを防ぎ、ターボジェットエンジンの構造物を保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このために、本発明は、ターボジェットエンジンなどのターボ機械のシャフトを案内する軸受のための支持体を提案するものである。前記支持体は、印加される負荷が閾値より小さい時に最初の形状を保持し、印加される負荷が少なくとも閾値に等しくなる時に変形してエネルギーを吸収する形状記憶材料からなる環状部を備え、前記環状部は、印加される負荷が閾値より小さくなる時には、少なくともほぼ最初の形状に戻ることが可能であることを特徴とする。
【0014】
形状記憶環状部は、シャフトが所定の閾値を越える負荷を軸受に伝えている時に、変形により、ケーシングから環状部が支持する軸受を外して、これらの負荷により生成される機械的エネルギーを吸収し、これらの負荷がケーシングに伝わるのを防ぎ、したがって、負荷がターボジェットエンジンの構造物全体に伝わるのを防ぐ。
【0015】
これらの負荷は、典型的には、ターボ機械のファンを損傷する鳥や氷の塊などの異物の吸い込みにより生じるアンバランス負荷である。
【0016】
エンジンが停止した時点で、ターボジェットエンジンがシャフトにより伝えられる負荷が小さい自転速度に達するとすぐに、環状部はほぼ最初の形状にもどり、したがって、再度軸受がシャフトをセンタリングできるようにする。
【0017】
さらに、軸受は、外された時でも確実にシャフトの上流側端部を軸方向に保持することができる。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、軸受支持体は、印加される負荷が閾値より小さい時に、形状記憶環状部を加熱して、形状記憶環状部をその最初の形状に戻させる制御された手段を備える。
【0019】
加熱手段は、特に、以下のシナリオに適合される。それによれば、形状記憶材料は「単動(single−acting)」式の材料であり、最初は、軸受支持体を外すことができるようにほぼ負荷の影響下で変形し、それにより機械的エネルギーを吸収できるマルテンサイト状態であり、その後、形状記憶材料をほぼ最初の形状に等しい記憶した形状に戻すために、加熱手段により形状記憶材料がオーステナイト相に切り替える命令で切り替えられ、その結果、軸受支持体が最初の形状に戻り、再度シャフトをセンタリングすることができる。
【0020】
有利には、加熱手段は、高温空気を形状記憶環状部の方に向けて搬送する手段を備える。
【0021】
例えば、高温空気は、ターボジェットエンジンの高圧圧縮機から取り出され得る。
【0022】
本発明による軸受支持体は、有利には、高温空気を形状記憶環状部の方へ案内する手段を備え、これらの手段は、例えば、形状記憶環状部の周囲に取り付けられるシートメタルデフレクタを備える。
【0023】
「単動」式の材料の場合、シートメタルデフレクタにより、形状記憶材料のオーステナイト相への遷移を誘発する高温空気をより良好に案内できるようになる。
【0024】
代替形態として、形状記憶材料は、印加される負荷が閾値より小さい時にオーステナイト相であり、印加される負荷が少なくとも閾値に等しくなる時に弾性変形を伴うマルテンサイト相に変化する超弾性式の材料である。
【0025】
これは、超弾性式の形状記憶材料の変形する実質的な能力が軸受支持体の環状部を加熱する手段を用いる必要性を避けるのに有効に使用されるということである。
【0026】
2つの代替形態のうちのいずれが選択されるかは、機械的エネルギーを吸収する種々の形状記憶材料のそれぞれの能力に基づいて決められてもよい。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、形状記憶環状部は、支持体の上流側端部と下流側端部とを互いに連結し、好適にはターボ機械の軸周りに均一に分布する長手方向の薄いブレードを備える。
【0028】
このような薄いブレードは、形状記憶部品の市場では比較的一般的で、予め記憶された形状に戻る優れた能力を有する。
【0029】
本発明の別の特徴によれば、薄いブレードの両端部は、支持体の端部にろう付けまたは溶接される。
【0030】
本発明による軸受支持体は、有利には、形状記憶環状部の内側に径方向に位置決めされた環状封止エンベロープを備える。
【0031】
この環状封止エンベロープは、形状記憶環状部が上述したタイプの長手方向の薄いブレードを備える場合に、軸受間の空間を封止し、その空間からオイルが漏れ出すのを防ぐために特に役立つ。
【0032】
エンベロープはさらに高温空気を形状記憶環状部の方へ案内する手段を構成し、このことは、形状記憶材料が「単動」式の材料である場合に特に有益である。
【0033】
本発明はさらに、ケーシングに固定される支持体により支持される上流側軸受および下流側軸受に案内されるシャフトを備えるターボ機械であって、支持体の少なくとも1つは、上述したタイプの軸受支持体であることを特徴とするターボ機械に関する。
【0034】
本発明は、添付図面を参照して非限定的な例として示された以下の説明を読むことにより、より良く理解され、さらにその詳細や利点、特徴もより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】知られているタイプのターボ機械の軸方向断面における部分概略図である。
【図2】本発明によるターボ機械の軸方向断面における拡大した部分概略図である。
【図3】図2のターボ機械の部分概略斜視図である。
【図4】本発明の作動状態を示す熱機械的変形の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、ブレード16を担持するディスク14の形状を成し、低圧圧縮機18の上流側に装着されるファン12を備える航空機バイパスターボジェットエンジン10を示す図である。ディスク14は、周知の方法で、ターボジェットエンジンの軸26周りのファン12の回転を駆動するための低圧圧縮機のシャフト24の上流側端部のフランジ22に環状フランジ20により連結される。
【0037】
シャフト24は、中間ケーシング32により支持される2つの軸受28、30により、径方向に案内され、軸方向に保持される。
【0038】
シャフト24の上流側端部近くに位置決めされる第1の軸受28は、一般に「スラスト軸受」または「上流側軸受」と呼ばれるが、原則的には、ボール38が自由に通る略円環状キャビティを画定する径方向内側環状ケージ34および径方向外側環状ケージ36の形状を成す転がりボール軸受を備える。
【0039】
径方向外側環状ケージ36は、軸受支持体40を形成する略環状またはやや円錐台状のエンベロープの上流側端部に連結され、その下流側端部には、中間ケーシング32に連結される部品46にねじ44で固定された環状フランジ42を有する。
【0040】
第2の軸受30は、第1の軸受28の下流側に位置決めされ、原則的には、ローラ50を担持する径方向内側環状リング48の形状を成し、ローラ50上に径方向外側環状リング52が載った転がりローラ軸受を備える。
【0041】
径方向外側環状リング52は、中間ケーシング32に取り付けるためのフランジ54を有する。
【0042】
作動時に、軸受28、30は、低圧圧縮機シャフト24を径方向にセンタリングし、軸方向に保持する。特に、シャフトの上流側端部で軸方向に保持する軸受28を、このシャフトが離すべきである。
【0043】
ファンを損傷し、例えば、異物をターボジェットエンジンに吸い込んだ結果生じるファンブレードの損失などのアンバランスをもたらす事故の場合には、軸受28、30は、相当な循環力を受け、この力のかなりの割合を中間ケーシング32に伝える。
【0044】
事故が発生するとすぐに、エンジンがほぼ停止されるが、それでもターボジェットエンジンが自転速度、つまり、大気中を移動した結果、ターボジェットエンジンが自由に回転する速度に達するのに一定の時間がかかる。
【0045】
この時間の間、ファン12に最も接近しており、そのため大部分のアンバランス力を受ける上流側軸受28は、損傷されるリスクおよび連結される中間ケーシング32、ひいてはターボジェットエンジンの構造物全体を損傷するリスクがある。
【0046】
したがって、上流側軸受28を保護し、アンバランス力からターボジェットエンジンの構造物を守るために、この上流側軸受28と中間ケーシング32とが外れるようにすること、すなわち、低圧ロータのシャフト24により中間ケーシングに伝えられる力を最小限に抑えることは有益である。
【0047】
しかし、ターボジェットエンジンが自転速度に達する時、アンバランス負荷が自由回転の条件下ではより小さくても、長期的に見て下流側軸受30を損傷する傾向があるので、下流側軸受30が単独で全てのアンバランス負荷に耐えることにならないように、シャフトをセンタリングする手段が再度利用可能であることが望ましい。
【0048】
この要求を満たすために、本発明は、上流側軸受に印加される負荷が大きすぎる時に上流側軸受28が外れるようにし、印加される負荷が十分に低減された時に最初の形状に近い形状に戻ることができるようにして、上流側軸受28が再度シャフト24をセンタリングし、軸方向に保持するように働くために、ターボ機械10の上流側軸受支持体40を変形可能な軸受支持体と置き換えることを提案する。
【0049】
図2および図3に示されるように、符番56で表されるこの新しい上流側軸受支持体は、薄いブレード58の形状を成す環状またはやや円錐台状の部分を備え、例えば、これらブレードのうち10枚は、ターボジェットエンジンの軸周りに均一に分布し、上流側軸受28の径方向外側ケージを担持する軸受支持体56の上流側端部36を、中間ケーシング32に連結される部品46に取り付けるためのフランジ42を担持する下流側端部60に連結する。これらの薄いブレードは、例えば、軸受支持体56の両端部36、60に溶接またはろう付けされる。
【0050】
第1の実施形態では、薄いブレード58は、一般的にはニチノールとして知られているニッケルとチタンとの合金などの「単動」式の形状記憶材料からなる。
【0051】
最初にマルテンサイト相である形状記憶材料は、薄いブレード58に、変形する優れた能力を付与し、加熱された時にオーステナイト相に変化して記憶した形状に戻る可能性を付与する。
【0052】
図4を参照して、本発明の操作に関して、より詳細には、形状記憶材料の「一方向(one−way)」記憶効果の使用に関して以下の段落で詳細に説明するように、軸受支持体56が変形した後に、その最初の形状に戻るために、薄いブレードは、オーステナイト相では、変形前の最初の形状と同じ形状をとるように予め準備される。
【0053】
薄いブレード58を加熱するために、ターボジェットエンジン10は、薄いブレードを形成する形状記憶材料のオーステナイト相遷移温度より高温の空気を薄いブレードの方に方向づけるための手段を備え、この高温空気は、例えば、低圧圧縮機18の下流側に配置される高圧圧縮機から取り出されることが可能である。
【0054】
これらの手段は、原則的に、薄いブレード58を囲む略円筒状のシートメタルエンベロープの形状を成すデフレクタ62を備え、デフレクタの下流側端部には、軸受支持体56のフランジ42に取り付けるための環状フランジ64を有する。
【0055】
高温空気を案内するためのダクト66は、下流側のデフレクタ62の円錐台状部68内に形成され、フランジ42内に形成される開口部に面して位置決めされて、高温空気が上流側の方向に流れるようにする。
【0056】
軸受間の空間、すなわち上流側軸受28と下流側軸受30と軸受支持体56との間の体積を封止するために、軸受支持体56のブレード状構造を考えれば、エラストマーなどの可撓性材料製の円筒状エンベロープが、エプロン70を形成するように軸受支持体56の上流側端部36と下流側端部60とを互いに接合する。
【0057】
このエプロン70は、軸受支持体の内側で径方向に位置決めされ、必要に応じて、高温空気を薄いブレード58近くに保つ。
【0058】
図4は、上述したようにターボジェットエンジンの作動時の形状記憶材料の薄いブレードの変形εをブレードに印加された機械的応力σと温度Tの関数として示した図である。
【0059】
薄いブレード58の準備過程で、薄いブレードが高温のオーステナイト相にある時、通常の形状の軸受支持体56に対応する形状にされる。この状態は、図4のAで示されている。その後、薄いブレードを図4の状態Mに終わる遷移72で、変形させずにマルテンサイト相に変化させるために、薄いブレードは応力を全く印加されないで冷却される。
【0060】
通常の作動時に、薄いブレード58は、ほぼこの状態Mにあるので、上流側軸受28は、低圧圧縮機シャフト24をセンタリングし、軸方向に保持する機能を実行する。薄いブレードに印加される機械的応力σが閾値σより小さい限り、ブレードの剛性は比較的高いままで、変形εは比較的低い値εを超えないので、ブレードは正確にシャフト24の上流側部を案内できる。
【0061】
例えば、異物を吸い込んだ結果、ファンが損傷を受けると、特に、ブレードの損失がある場合、かなりのアンバランス力がシャフト24を案内する軸受に、とりわけファンに最も接近した上流側軸受28に伝えられる。
【0062】
次に、薄いブレード58に印加される機械的応力が閾値σを超える。これは、図4の曲線74で示されるように、薄いブレードの剛性が急に低下し、同時に機械的エネルギーを吸収する能力が増大することを意味する。
【0063】
その後、上流側軸受28に伝えられた力は、薄いブレード58の変形により散逸され、したがって、この力はこの軸受28が連結される中間ケーシング32へは伝わらない。
【0064】
印加される負荷の影響を受けて、薄いブレードは点Mで示される外された状態になる。
【0065】
同時に、エンジンは自動制御システムにより、または航空機パイロットの命令で停止され、したがって、エンジンの速度は、大気中を航空機が移動することにより生じる自転速度まで徐々に低減される。つまりアンバランス負荷も低減されることになる。
【0066】
応力のこの変化は、図4の曲線76で示され、印加される負荷がほぼ0に戻る特別な場合に対応する。
【0067】
負荷がかなり低減され、航空機の構造物への危険がなくなるとすぐに、自動制御システムまたはパイロットが、ターボジェットエンジン高圧圧縮機から取り出された高温空気が薄いブレードに送られるように命令を出す。
【0068】
遷移温度Tより高い温度を受けると、薄いブレードは曲線78に沿ってオーステナイト相に変化し、記憶効果で最初の形状に戻り、その結果、低圧圧縮機シャフト24を再センタリングする。
【0069】
したがって、本発明により提案される軸受支持体56は、低圧圧縮機シャフト24により伝えられる負荷が大きすぎると、上流側軸受28と中間ケーシング32との間を外せるようにし、同時に負荷が許容レベルまで小さい値に戻るとすぐに、このシャフトを再センタリングする可能性をもたらす。
【0070】
薄いブレードの形状記憶材料は、通常の作動条件下では、薄いブレードは、印加される負荷に関わらず薄いブレードの剛性がほぼ一定であるマルテンサイト相の弾性範囲にとどまり、印加される負荷がターボジェットエンジンに危険を及ぼす傾向のある閾値σを超えるとすぐに、この弾性範囲から離れるように選択される。形状記憶材料は、さらに、上述した弾性範囲で、その剛性で軸受支持体56の全体の可撓性要件を満たすことができるように選択される。
【0071】
軸受支持体56を備える装置、デフレクタ62およびエプロン70はさらに、ターボジェットエンジンの質量をあまり増大させず、部品の数が限られているという利点がある。
【0072】
第2の実施形態では、本発明による軸受支持体56は、一方向形状記憶効果を使用するのではなく、薄いブレード58が製造される形状記憶材料の超弾性効果により機能してもよい。
【0073】
この実施形態では、形状記憶材料は、ターボジェットエンジンの通常の作動温度ではオーステナイト相であるように選択される。
【0074】
軸受支持体56に印加されるアンバランス力により、形状記憶材料は応力を受けてマルテンサイト相に移る。マルテンサイト相では、形状記憶材料は非常に大きな弾性変形能力を有する。
【0075】
印加された負荷がなくなる、または十分に低減されるとすぐに、形状記憶材料はオーステナイトの弾性範囲に戻り、最初の形状に戻る。
【0076】
本発明のこの第2の実施形態は、形状記憶材料を加熱する手段を必要としないという利点があり、したがって、上述した第1の実施形態よりも実施するのは簡単であることがわかる。
【0077】
しかし、どの変形例が選択されるかは、原則的には、形状記憶材料の種々のタイプのコストや利用可能性によって決まる。
【符号の説明】
【0078】
10 ターボジェットエンジン
12 ファン
14 ディスク
16 ブレード
18 低圧圧縮機
20、42、64 環状フランジ
22、54 フランジ
24 シャフト
26 ターボジェットエンジンの軸
28 上流側軸受
30 下流側軸受
32 中間ケーシング
34、36 環状ケージ
38 ボール
40、56 軸受支持体
44 ねじ
46 中間ケーシングに連結される部品
48、52 環状リング
50 ローラ
58 薄いブレード、環状部
60 下流側端部
62 デフレクタ
66 ダクト
68 円錐台状部
70 エプロン、環状封止エンベロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械(10)のシャフト(24)を案内する軸受(28)のための支持体(56)であって、印加される負荷σが閾値σより小さい時に最初の形状を保持し、印加される負荷σが少なくとも閾値σに等しくなる時に変形し、エネルギーを吸収する形状記憶材料からなる環状部(58)を備え、この環状部(58)が、印加される負荷σが閾値σより小さい値に戻る時に、少なくともほぼ最初の形状に戻ることが可能であることを特徴とする、軸受支持体(56)。
【請求項2】
印加される負荷σが閾値σより小さい時に、形状記憶環状部(58)を加熱して、この環状部(58)をその最初の形状に戻させる制御された手段(62、70)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の軸受支持体(56)。
【請求項3】
加熱手段が、高温空気を形状記憶環状部(58)の方に向けて搬送する手段(62、70)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の軸受支持体(56)。
【請求項4】
高温空気を形状記憶環状部(58)の方へ案内する手段(62、70)を備えることを特徴とする、請求項3に記載の軸受支持体(56)。
【請求項5】
案内手段が、形状記憶環状部(58)の周囲に取り付けられたシートメタルデフレクタ(62)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の軸受支持体(56)。
【請求項6】
形状記憶材料が、印加される負荷σが閾値σより小さい時にオーステナイト相であり、印加される負荷σが少なくとも閾値σに等しくなる時に弾性変形を伴うマルテンサイト相に変化する超弾性タイプの材料であることを特徴とする、請求項1に記載の軸受支持体(56)。
【請求項7】
形状記憶環状部(58)が、支持体(56)の上流側端部(36)と下流側端部(60)とを互いに連結することを特徴とする、請求項1に記載の軸受支持体(56)。
【請求項8】
形状記憶環状部が、ターボ機械の軸(26)周りに均一に分布した薄い長手方向のブレード(58)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の軸受支持体(56)。
【請求項9】
薄いブレード(58)の両端部が、支持体(56)の末端部(36、60)にろう付けまたは溶接されることを特徴とする、請求項8に記載の軸受支持体(56)。
【請求項10】
形状記憶環状部(58)の内側で径方向に位置決めされる環状封止エンベロープ(70)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の軸受支持体(56)。
【請求項11】
ケーシング(32)に固定される支持体(40、52、56)により支持される上流側軸受(28)と下流側軸受(30)で案内されるシャフト(24)を備えるターボ機械(10)であって、支持体の少なくとも1つが、請求項1に記載の軸受支持体(56)であることを特徴とする、ターボ機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−174532(P2009−174532A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−9568(P2009−9568)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】