説明

ダイボンダ並びにダイピックアップ装置及びダイピックアップ方法

【課題】本発明は、確実にダイを剥離できるピックアップ装置を提供すること,または前記ピックアップ装置を用い、信頼性の高いダイボンダまたはピックアップ方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、ダイシングフィルムに貼り付けられた複数のダイのうち剥離対象のダイを突き上げて前記ダイシングフィルムから剥離する際に、前記ダイの周辺部のうちの所定部における前記ダイシングフィルムを突き上げて剥離起点を形成し、その後、前記所定部以外の部分の前記ダイシングフィルムを突き上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンダ並びにダイピックアップ装置及びダイピックアップ方法に係わり、特に信頼性の高い製品を製造するダイボンダ並びにピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイ(半導体チップ、以下、単にダイと称する)を配線基板やリードフレームなどの被実装対象基板(以下、単に、基板と称する)に搭載してパッケージを組み立て、半導体装置を生産する工程の一部に、半導体ウェハ(以下、単にウェハと称する)からダイを分割する工程と、分割したダイを基板上に搭載するダイボンディング工程とがある。
【0003】
ダイボンディング工程の中には、ウェハから分割されたダイを剥離する剥離工程がある。剥離工程では、ピックアップ装置に保持されたダイシングテープからダイを1個ずつ剥離し、コレットと呼ばれる吸着治具を使って基板上、またはパレット上に搬送する。
【0004】
剥離工程を実施する従来技術としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載する技術がある。特許文献1では、ダイの4コーナに設けた第1の突き上げピン群と、先端が第1の突き上げピンより低く、ダイの中央部または周辺部に設けた第2の突き上げピン群とをピンホルダに装着し、ピンホルダを上昇させることで剥離する技術が開示されている。
また、特許文献2では、ダイの中心部に行く程突き上げ高さを高くできる3つのブロックを設け、最も外側の外側ブロックの4コーナに一体形成されダイのコーナ方向に突き出た突起を設け、3つのブロックを順次突き上げていく技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−184836号公報
【特許文献2】特開2007− 42996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体装置の高密度実装化を実現するために、パッケージの薄型化が進められている。特に、メモリカードの配線基板上に複数枚のダイを三次元的に実装する積層パッケージ(例えば、スタックドMCP(Multi Chip Package))が実用化されている。このような積層パッケージを組み立てるに際しては、パッケージ厚の増加を防ぐために、ダイの厚さを20μm以下まで薄くすることが要求される。
【0007】
ダイが薄くなると、ダイシングテープの粘着力に比べてダイの剛性が極めて低くなる。
特許文献1の高さの異なる多段突き上げピン方式であっても、特許文献2の突起を有する多段ブロック方式であっても、ダイシングテープからダイを剥離する場合には、ダイの外周部またはコーナ部から一気に剥離する。
一気に剥離すると、剥離に対抗する力が発生する。この剥離に対抗する力は、まず、ダイの外周部またはコーナ部に発生する。即ち、ストレスがダイの外周部またはコーナ部に集中する。上述したように、ダイが薄くなるとダイの剛性が低くなるため、ダイの外周部またはコーナ部が変形してクラックが発生する。そして、発生したクラックは、ダイの辺に沿って中央部に向かって進行する。
特に、ダイとダイシングテープとの間にダイアタッチフィルムが介在している場合には、ダイアタッチフィルムとダイシングテープとの粘着力が、ダイとダイアタッチフィルムの粘着力よりも強くなることがある。または、粘着力が安定せず、ダイの剥離が一層困難となる。
【0008】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、本発明の第1の目的は、確実にダイを剥離できるピックアップ装置及びピックアップ方法を提供することである。
また、本発明の第2の目的は、第1の目的を達成するピックアップ装置またはピックアップ方法を用い、信頼性の高いダイボンダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するために、コーナ部が先にダイの裏面に接触し、辺の中央部が最後に接触するように、周辺ブロックを、コーナ部が頂上で、辺の中央部が底部となるような勾配を持たせ、ダイの辺方向にサポートを持たせた突き上げブロックとする。その結果、ダイシングテープの剥離をダイのコーナ部から開始するようにして、ダイの辺中央部まで、徐々に剥離が進行するようにすることを主な特徴とする。
【0010】
また、本発明のダイボンダは、上記の目的を達成するために、ダイの周辺部を角環状に形成した、前記ダイの周辺部のうちの所定部におけるダイシングフィルムを突き上げて剥離起点を形成する剥離起点形成手段と、前記所定部とは異なる部分の前記ダイシングフィルムを突き上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離する剥離手段と、前記剥離起点形成手段の前記突き上げと前記剥離手段の前記突き上げとを別々に駆動する駆動手段を有する突き上げユニットと、前記ダイを吸着するコレットと、前記コレットで吸着され前記突き上げられた前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離して基板に装着するボンディングヘッドと、を有することを本発明の第1の特徴とする。
【0011】
また、本発明の第1の特徴のダイボンダの前記剥離起点形成手段は、コーナ部分に前記剥離開始起点を形成する頂上部分と、前記角環状の縁辺部の中央部を底部とする勾配を有することを本発明の第2の特徴とする。
【0012】
また、本発明の第1の特徴または第2の特徴のダイボンダの前記所定部は、前記ダイの4コーナ部分のうち少なくとも1つのコーナ部分に設けられていることを第3の特徴とする。
【0013】
また、本発明の第1の特徴乃至第3の特徴のいずれかの特徴のダイボンダの前記駆動手段は、単一の駆動源で上下に駆動される作動体を有し、前記作動体の上昇時には前記2つの突き上げのうち一方を行い、前記作動体の下降時には前記下降を上昇に変える反転部を介して前記他方を行うことを本発明の第4の特徴とする。
【0014】
また、本発明のピックアップ装置は、ウェハリングを保持するエキスパンドリングと、前記ウェハリングに保持され複数のダイが貼り付けられたダイシングフィルムを保持する保持手段と、前記ダイの周辺部のうちの所定部におけるダイシングフィルムを突き上げて剥離起点を形成する剥離起点形成手段と、前記所定部とは異なる部分の前記ダイシングフィルムを突き上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離する剥離手段と、前記剥離起点形成手段の前記突き上げと前記剥離手段の前記突き上げとを別々に駆動する駆動手段を有する突き上げユニットと、を有することを本発明の第5の特徴とする。
【0015】
また、本発明の第5の特徴のピックアップ装置の前記剥離起点形成手段は前記剥離起点を形成する角環状のブロックを有することを本発明の第6の特徴とする。
【0016】
また、本発明の第5の特徴または第6の特徴のピックアップ装置の前記駆動手段は、単一の駆動源で上下に駆動される作動体を有し、前記作動体の上昇時には前記2つの突き上げのうち一方を行い、前記作動体の下降時には前記下降を上昇に変える反転部を介して前記他方を行うことを本発明の第7の特徴とする。
【0017】
また、本発明の第7の特徴のピックアップ装置において、前記他方は前記剥離起点形成手段の前記突き上げであることを第8の特徴とする。
【0018】
また、本発明のピックアップ方法は、ダイシングフィルムに貼り付けられた複数のダイのうち、剥離対象とするダイをコレットで吸着するステップと、剥離対象である前記ダイの周辺部のうちの所定部における前記ダイシングフィルムを突き上げて剥離起点を形成するステップと、前記所定部とは異なる部分の前記ダイシングフィルムを突き上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離するステップ有することを第9の特徴とする。
【0019】
また、本発明の第9の特徴のピックアップ方法は、前記剥離起点の形成を角環状のブロックで行うことを本発明の第10の特徴とする。
【0020】
また、本発明の第10の特徴のピックアップ方法は、前記剥離開始起点の形成を前記角環状のブロックのコーナ部分に設けた頂上部分で行うことを本発明の第11の特徴とする。
【0021】
また、本発明の第11の特徴のピックアップ方法は、前記角環状のブロックの前記頂上部分がダイシングフィルムを突き上げて剥離開始起点を形成し、前記角環状のブロックの底部が所定の位置で静止するステップを有することを本発明の第12の特徴とする。
【0022】
また、本発明の第12の特徴のピックアップ方法は、前記角環状のブロックが前記ダイシングフィルムを突き上げて剥離起点を形成する所定の位置に達した後、前記所定部とは異なる部分の前記ダイシングフィルムを突き上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離するステップが終了するまでに、前記ピンが前記所定の位置から前記突き上げとは逆の方向に移動するステップを有することを本発明の第13の特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ダイシングテープをダイから剥離するときに、ダイの撓みを軽減することができ、特に薄型のダイにおいて、確実にダイを剥離できるピックアップ装置及びピックアップ方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記のピックアップ装置またはピックアップ方法を用い、信頼性の高いダイボンダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態であるダイボンダを上から見た概念図である。
【図2】本発明の一実施形態であるピックアップ装置の外観斜視図を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態であるピックアップ装置の主要部を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態であるコレット部の構成を示した断面図である。
【図5】本発明の一実施形態における突き上げユニットの構成を示した図である。
【図6】本発明のピックアップ動作の処理手順の一実施例を示すフローチャートである。
【図7】図6に示す処理手順におけるドームヘッド付近部とコレット部の動作を示した図である。
【図8】図6に示す処理手順におけるダイのピックアップ動作時の突き上げユニットの駆動動作を主体に示した図である。
【図9】本発明の一実施形態における突き上げユニットの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の一実施形態を、図面等を用いて説明する。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を説明するためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素若しくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であり、これらの実施形態も本願発明の範囲に含まれる。
なお、本書では、各図の説明において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、説明の重複をできるだけ避ける。
【実施例1】
【0026】
図1によって本発明のダイボンダの一実施例を説明する。図1は、本発明のダイボンダの一実施例を上から見た概念図である。100はダイボンダ、1はウェハ供給部、2はワーク供給・搬送部、3はダイボンディング部、10はダイボンダの動作を制御する制御部である。
ダイボンダは大別してウェハ供給部1と、ワーク供給・搬送部2と、ダイボンディング部3とを有する。
また、ワーク供給・搬送部2において、21はスタックローダ、22はフレームフィーダ、23はアンローダである。さらに、ダイボンディング部3において、31はプリフォーム部、32はボンディングヘッド部である。またさらに、ウェハ供給部1において、11はウェハカセットリフタ、12はピックアップ装置である。
【0027】
ワーク供給・搬送部2において、基板は、スタックローダ21によりフレームフィーダ22に供給される。フレームフィーダ22に供給された基板は、フレームフィーダ22上の2箇所の処理位置を介してアンローダ23に搬送される。
ダイボンディング部3において、プリフォーム部31は、フレームフィーダ22により搬送されてきた基板にダイ接着剤を塗布する。ボンディングヘッド部32は、ピックアップ装置12からダイをピックアップして、ダイを上昇及び平行移動してフレームフィーダ22上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部32は、ダイを下降させダイ接着剤が塗布された基板上にボンディングする。
ウェハ供給部1において、ウェハカセットリフタ11は、ウェハリングが収納されたウェハカセット(図示せず)を有し、順次ウェハリングをピックアップ装置12に供給する。
なお、ダイボンディングするウェハの裏面に、ダイアタッチフィルム(ダイボンディングフィルム)が貼り付けられている場合には、基板にダイ接着剤を塗布するプリフォーム部31は、不要である。
【0028】
次に、図2および図3を用いてピックアップ装置12の構成を説明する。図2は、ピックアップ装置12の外観斜視図を示す図である。図3は、ピックアップ装置12の主要部を示す概略断面図である。ピックアップ装置12において、5はウェハ、4はウェハ5の個々のダイ、14はウェハリング、15はエキスパンドリング、16はダイシングテープ、17は支持リング、18はダイアタッチフィルム(ダイボンディングテープ)、50は突き上げユニットである。
【0029】
図2、図3に示すように、ウェハ5の裏面には、ダイアタッチフィルム18が貼り付けられ、更にその裏側にダイシングテープ16が貼り付けられている。さらに、ダイシングテープ16の縁辺は、ウェハリング14とエキスパンドリング15に挟み込まれて固定されている。
即ち、ピックアップ装置12は、ウェハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウェハリング14に保持され複数のダイ4(ウェハ5)が接着されたダイシングテープ16を水平に位置決めする支持リング17と、支持リング17の内側に配置されダイ4を上方に突き上げるための突き上げユニット50とを有する。突き上げユニット50は、図示しない駆動機構によって、上下方向に移動するようになっており、水平方向にはピックアップ装置12が移動するようになっている。
このように、ダイ4の薄型化に伴い、ダイボンディング用の接着剤は、液状からフィルム状に替わり、ウェハ5とダイシングテープ16との間に、ダイアタッチフィルム18と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けた構造としている。ダイアタッチフィルム18を有するウェハ5では、ダイシングはウェハ5とダイアタッチフィルム18に対して行なわれる。なお、近年は、ダイシングテープ16とダイアタッチフィルム18が一体化されたテープも存在する。
【0030】
ピックアップ装置12は、ダイ4の突き上げ時に、ウェハリング14を保持しているエキスパンドリング15を下降させる。この時支持リング17は下降しないため、ウェハリング14に保持されているダイシングテープ16が引き伸ばされダイ4同士の間隔が広がり、各ダイ4が認識し易くなると共に、個々のダイが離れ突上げ易くなる。
突き上げユニット50は、ダイ下方よりダイ4を突き上げ、コレットによるダイ4のピックアップ性を向上させている。なお、薄型化に伴い接着剤は液状からフィルム状となり、ウェハとダイシングテープ16との間にダイアタッチフィルム18と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けている。ダイアタッチフィルム18を有するウェハでは、ダイシングは、ウェハとダイアタッチフィルム18に対して行なわれる。従って、剥離(突き上げ)工程では、ダイ4とダイアタッチフィルム18をダイシングテープ16から剥離すると共に、コレットがダイ4を吸着してピックアップする。
【0031】
図4及び図5によって、本発明のピックアップ装置及びピックアップ方法の一実施例について説明する。図4は、本発明の一実施例で、ボンディングヘッド部のうちのコレット部との構成を示した断面図である。40はコレット部、41はコレットホルダ、42はコレット、41vはコレットホルダ41の吸着孔、42vはコレット42の吸着孔、42tはコレット42の鍔である。
図4に示すように、ボンドヘッドユニット32のうちのコレット部40は、コレット42と、コレット42を保持するコレットホルダ41と、それぞれに設けられダイ4を吸着するための吸引孔41v、42vとがある。図4中の矢印は、吸引する方向を示している。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態における突き上げユニットの構成を示した図である。
図5(a)は本発明の一実施形態である突き上げユニットとボンドヘッドユニットのうちコレット部40との構成を示した図である。図5(b)は、突き上げユニットの突き上げブロック部並びに、突き上げ用の内側ブロック、外側ブロック及び周辺ブロックが存在する部分を上部から見た図である。図5(c)は、図5(b)を横から見た図である。
50は突き上げユニット、58はドーム本体、59はブロック本体、54は内側ブロック、52は外側ブロック、51は周辺ブロック、52bは1/2切替えバネ、55は上下リンク、56はブロック駆動リンク、56aはブロック駆動リンク56の支点、57は図示しないモータによって上下移動する駆動軸、53は作動体、58aは吸着孔、58bはドームヘッド、54vは内側ブロック54と外側ブロック52との隙間、52vは内側ブロック54と周辺ブロック51との隙間、4dは隣のダイ、51vは分割された4つの周辺ブロック51間の隙間、51tは周辺ブロック51のコーナ部の位置、51bは周辺ブロック51の隙間51v側の位置である。
【0033】
図5において、突き上げユニット50は、大別して、突き上げブロック部と、周辺ブロック部と、突き上げブロック部と周辺ブロック部を駆動する駆動部と、それらを保持するドーム本体58とを有する。
【0034】
突き上げブロック部は、ブロック本体59と、ブロック本体59に直結した内側ブロック54、1/2切替えバネ52bを介して内側ブロック54の周囲に設けられ、ダイ4の外形より小さい外形を有する外側ブロック52とを有している。
【0035】
周辺ブロック部は、図5(b)に示すように、外側ブロック52の外側、即ちダイ4の周辺に設けられた隙間51vで分割された4つの周辺ブロック51と、周辺ブロック51を保持し、上下に移動可能な上下リンク55と、支点56aを中心に回転し上下リンク55を上下させる駆動リンク56とを有する。4つの周辺ブロック51は、ダイ4の縁辺を角環状(または、角ドーナツ状、または、釘抜き紋状)に囲った形状である。そして、その中の外側ブロック52も、周辺ブロック51の内側であって、内側ブロック54を角環状(または、角ドーナツ状、または、釘抜き紋状)に囲った形状である。
それぞれの周辺ブロック51は、コーナ部の位置51tを頂上とし(一番高くし)、隙間51v側の位置51bを山麓とする勾配を設けている。図5の実施例では、コーナ部の位置51tから隙間51v側の位置52bまで、リニアに低くするように設けている。
【0036】
駆動部は、モータによって上下に移動する駆動軸57と、駆動軸57の上下に伴い上下移動する作動体53とを有する。作動体53が下降すると、左右のピン駆動リンク56が回転し、上下リンク55が上昇し、周辺ブロック51を突き上げる。作動体53が上昇すると、ブロック本体59を上昇させ、外側ブロック52及び内側ブロック54を押し上げる。なお、上下リンク55と駆動リンク56は、作動体53の下降する動きを周辺ブロック51の突き上げ(上昇)の動きに変える反転部を構成する。
【0037】
ドーム本体58の上部には、ダイ4を吸着し保持するドームヘッド58bを有する。ドームヘッド58bは、多くの吸着孔58aを具備する。図5(b)では、ブロック部の周囲に一列のみ示しているが、ピックアップ対象でない隣のダイ4dを安定し保持するために複数列設けている。また、図5(b)に示すように、内側ブロック54と外側ブロック52との隙間54v、外側ブロック52と周辺ブロック51との隙間52v、周辺ブロック51とドームヘッド58bとの間(吸着孔58a)を吸引しダイシングテープ16をブロック部側(Z方向下側)に吸引、保持している。
【0038】
次に、上述した構成よる突き上げユニット50によるピックアップ動作を図6、図7、及び図8を用いて説明する。図6は、本発明のピックアップ動作の処理手順の一実施例を示すフローチャートである。図7は、図6に示す処理手順におけるドームヘッド58b付近部とコレット部40の動作を示した図である。図8は、図6に示す処理手順におけるダイ4のピックアップ動作時の突き上げユニット50の駆動動作を主体に示した図である。図7、図8において、(a)〜(d)は、同時期の動作を示す。また、これらの動作は、ダイボンダまたはピックアップ装置の制御部10が装置内の各機器を制御して実行する。
【0039】
ダイシングテープ吸着ステップS1では、まず、図7(a)に示すように、周辺ブロック51の頂上である位置51t、外側ブロック52の上面、内側ブロック54の上面がドームヘッド58bの表面と同一平面を形成するようにし、ドームヘッド58bの吸着孔58aと、ブロック間の隙間52v、54vとによってダイシングテープ16を吸着する。
次に、コレット下降/ダイ吸着ステップS2では、コレット部40を下降させ、ピックアップするダイ4の上に位置決めし、吸着孔41v、42vによってダイ4を吸着する。
【0040】
ステップS1とS2により、図7(a)に示す状態となる。このとき、駆動動作は、図8(a)に示すように、作動体53は周辺ブロック51、外側ブロック52及び内側ブロック54を動作させないニュートラル状態である。
コレットリーク流量検出ステップS3では、このような状態で、コレット42の流量を図示しない流量計によって測定する。このステップS3では、コレット42の鍔42tから漏れがないかを、空気流量を測定することで判定し、リーク(空気流量)が正常(空気流量)な範囲に収まるまで吸引する。
例えば、ステップS3では、測定される空気流量が所定の値L3を超える場合には、タイマー延長ステップS11に進み、ステップS11では、所定時間T11経過後、ステップS3を再度実行する。そして、測定される空気流量が所定の値L3以下の場合には、ステップS4に進む。
【0041】
次に、周辺ブロック上昇ステップS4では、周辺ブロック51を所定の距離、Z軸に沿って上方に上昇させる。周辺ブロック51は、図5(c)に示すように、コーナ部の位置51tを頂上とし各辺の中央部(隙間51v側の端部)の位置51bを底部とする勾配(テーパ)を持っている。
この周辺ブロック51の上昇が開始されると、周辺ブロック51のまず頂上部(コーナ部)の位置51tが突き上がり、ダイアタッチフィルム18及びダイシングテープ16が貼り付けられたダイ4の裏面に接触する。従って、図7(b)に示すように、周辺ブロック51のコーナ部の位置51tにおいてダイシングテープ16が盛り上がる。この結果、ダイシングテープ16とダイアタッチフィルム18の間に微小な空間、即ち剥離開始起点51aができる。この空間(剥離開始起点51a)により、ダイ4にかかるストレスが大幅に低減する。
【0042】
剥離開始起点51aが形成された後、さらに、周辺ブロック51は上昇を続け、勾配を持った辺(位置51tから位置51bを結ぶ線上)に沿って、ダイシングテープ16が盛り上がり、ダイシングテープ16がダイアタッチフィルム18から剥離されて、位置51bに至り、剥離開始起点51aを含む剥離起点が形成される。即ち、この剥離は、周辺ブロック51の上昇に応じて、頂上であるコーナ部の位置51tから底部である周辺ブロック51の辺のほぼ中央の位置51bに進行していく(図5(c)の矢印方向)剥離起点形成動作である。なお、図5(c)では、Y軸方向についてしか図示していないが、X軸方向でも同様の剥離起点形成動作が進行する。
この結果、位置51tから位置51bを結ぶ線上に沿って、位置51tからダイシングテープ16の剥離起点形成動作が進行するときに、剥がれていないダイ4の裏面が周辺ブロック51で徐々に押し上げられることによって、ダイ4に加えられるストレスが軽減される。この結果、以降のステップにおけるピックアップ動作が確実に遂行できる。
【0043】
図8(b)は、このときの駆動動作を示した図である。作動体53は下降し、56aを支点に駆動リンク56が回転し、上下リンク55を上昇させ、周辺ブロック51を突き上げるものである。
周辺ブロック51は、上述したように頂上部と底部を各コーナ部及び当該コーナ部に隣接する縁辺部に設ければ良いので、図5の実施例では、コーナ部の位置51tから隙間51v側の位置52bまで、リニアに低くするように設けているが、勾配の形状は、三角形の一辺でなくても良く、曲線状や階段状であっても良い。
【0044】
また、この突き上げでは、図7(b)に示すようにコレット42の鍔42tが若干変形し、空気の流入を防いでいる。
ステップS3と同様に、図示しない流量計によってコレット42の流量を測定する。即ち、空気流量を測定することで判定し、リーク(空気流量)が正常(空気流量)な範囲に収まるまで吸引する。
例えば、ステップS5では、測定される空気流量が所定の値L5を超える場合には、タイマー延長ステップS12に進み、ステップS12では、所定時間T12経過後、ステップS5を再度実行する。そして、測定される空気流量が所定の値L4以下の場合には、ステップS6に進む。
【0045】
次に、周辺ブロック下降ステップS6では、作動体53を上昇させ、周辺ブロック51の位置(高さ)を元の位置に戻す。周辺ブロック51は、次のステップ以降のダイ4の剥離動作には寄与しない。
【0046】
次に、外側ブロック52及び内側ブッロク54のダイ4の剥離動作に移る。
そのために、ステージ/コレット上昇ステップS7では、図8(c)に示すように、作動体53をさらに上昇させ、外側ブロック52及び内側ブッロク54による剥離動作を実施する。このときのドームヘッド58a付近部とコレット部40の状態は図7(c)となる。
【0047】
そしてこのときも、コレットリーク量検出ステップS8では、ステップS3、S5と同様に、コレットリークの検出処理を行う。即ち、ステップS8では、コレット42の流量を図示しない流量計によって測定する。このステップS8では、コレット42の鍔42tから漏れがないかを、空気流量を測定することで判定し、リーク(空気流量)が正常(空気流量)な範囲に収まるまで吸引する。
例えば、ステップS8では、測定される空気流量が所定の値L8を超える場合には、タイマー延長ステップS13に進み、ステップS13では、所定時間T13経過後、ステップS8を再度実行する。そして、測定される空気流量が所定の値L8以下の場合には、ステップS9に進む。
【0048】
次に、コレット上昇ステップS9では、図8(c)の状態から図8(d)に示すように、さらに作動体53を上昇させると、1/2切替えバネ52bの作用によって内側ブッロク54のみが上昇し、図7(d)の状態になる。
この状態では、ダイシングテープ16とダイ4との接触面積は、コレットの上昇により剥離可能な面積まで縮小するので、コレット42が上昇してダイ4を剥離することができる。
なお、図6の実施例において、所定のリーク量L3、L5、及びL8は、同一の値でも良いし、異なる値でも良い。同様に、所定時間T11、T12、及びT13も、同一の値でも良いし、異なる値でも良い。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施例1によれば、ダイ4の四隅(コーナ部)に相当する位置に剥離開始起点51aが形成可能な周辺ブロック51を設け、剥離起点動作の当初に周辺ブロック51を上昇させ、周辺ブロック51のコーナ部の位置51tが最初にダイ4の下面に到達してダイ4のコーナ部を突き上げることによって、剥離の開始起点となる空間を形成し、さらに、周辺ブロック51が上昇を続けて、周辺ブロック51の上昇に応じて、ダイ4の縁辺方向まで徐々に剥離起点が進行するようにしたことによって、ダイ4にかかるストレスを低減でき、ダイ4が割れることなくその以降による剥離動作処理を確実に行なうことができる。
この結果、特に薄型のダイ(例えば、厚みが30μm以下のダイ)に適用可能で、ピックアップミスを低減でき、信頼性の高いダイボンダまたはピックアップ方法を提供することができる。
なお、図5(b)、(c)では、周辺ブロック51はコーナ毎に4つに分割されていたが、2つに分割しても良く、また隙間51vを除去し、すべて一体化されていても良い。
【実施例2】
【0050】
本発明の実施例2は、実施例1の図5(b)の替わりに図9(a)を用い、図5(c)の替わりに図9(b)を用いたものである。
図5(b)、(c)の実施例では、周辺ブロックは、狭い隙間を除き、全周がほぼ繋がっていた。しかし、図9(a)に示すように、コーナ部をL字型、辺の部分は0または1または複数の突き上げ部に分割するようにしても良い。また、辺の突き上げ部の分割数及びテープに突き当たる面積を、ダイのサイズに応じて変更することができる。さらに、複数の辺の突き上げ部それぞれの間隔及び面積は同一でも良いし、異なるようにしても良いことは勿論である。
またさらに、辺部分の突き上げ量をコーナ部の突き上げ量に対して、任意に変更することで、ダイのサイズや、ダイシングテープ及びダイアタッチフィルム間の接着力に応じて最適な突き上げが可能となり、最適な剥離動作処理手段及び方法を提供することができる。
【0051】
本発明の実施例2によれば、ダイにかかるストレスを低減でき、ダイが割れることなくその以降による剥離処理を確実に行なうことができる。
この結果、特に薄型のダイ(例えば、厚みが30μm以下のダイ)に適用可能で、ピックアップミスを低減でき、信頼性の高いダイボンダまたはピックアップ方法を提供することができる。
【0052】
また、例えば、薄型のダイ4であれば、ダイ4’は、ダイシングテープ吸着ステップS1でダイシングテープ16は、同一平面を形成する周辺ブロック51の頂上である位置51t、外側ブロック52の上面、内側ブロック54の上面、及びドームヘッド58bの表面に吸着される。その後、周辺ブロック上昇ステップS4において、周辺ブロック51が徐々に上昇し、ダイシングテープ16の裏面と周辺ブロック51との接触面が徐々にコーナ部から辺の中央部に進行する際に、ダイ4は、周辺ブロック51の勾配に対応して、撓みが発生する。
もしも、ダイ4のサイズに比して、周辺ブロック51のコーナ部の高さと辺部分の高さの差が多きければ、撓みも大きくなり、ダイ4にクラックが発生する恐れがある。それは、辺部分に設ける突出部の数や間隔が適切でない場合も同様である。
従って、辺の部分の突き上げ量を任意に変更することで、撓みの発生を適切に行い、常に最適な剥離処理を実行する。
さらに、コーナ部をL字型、辺部分の突き上げ部の分割個数(0または1または複数)の突き上げ部に分割することで、撓みの発生を適切に行い、常に最適な剥離処理を実行するようにしても良い。
【0053】
さらに、本発明の実施例1および実施例2のピックアップ装置及びピックアップ方法を用いることによって、通常の厚みのダイであっても、薄型のダイであっても、確実にダイをピックアップ可能なダイボンダを提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:ウェハ供給部、 2:ワーク供給・搬送部、 3:ダイボンディング部、 4、4d:ダイ、 5:ウェハ、 10:制御部、 14:ウェハリング、 15:エキスパンドリング、 16:ダイシングテープ、 17:支持リング、 18:ダイアタッチフィルム、 21:スタックローダ、 22:フレームフィーダ、 23:アンローダ、 31:プリフォーム部、 32:ボンディングヘッド部、 11:ウェハカセットリフタ、 12:ピックアップ装置、 40:コレット部、 41:コレットホルダ、 42:コレット、 41v、42v:吸着孔、 42t:鍔、 50:突き上げユニット、 51:周辺ブロック、 51a:剥離開始起点、 51v:隙間、 51t、51b:位置、 52:外側ブロック、 52b:1/2切替えバネ、 52v:隙間、 53:作動体、 54:内側ブロック、 54v:隙間、 55:上下リンク、 56:駆動リンク、 56a:支点、 57:駆動軸、 58:ドーム本体、 58a:吸着孔、 58b:ドームヘッド、 59:ブロック本体、 100:ダイボンダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイの周辺部を角環状に形成した、前記ダイの周辺部のうちの所定部におけるダイシングフィルムを突き上げて剥離起点を形成する剥離起点形成手段と、前記所定部とは異なる部分の前記ダイシングフィルムを突き上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離する剥離手段と、前記剥離起点形成手段の前記突き上げと前記剥離手段の前記突き上げとを別々に駆動する駆動手段を有する突き上げユニットと、前記ダイを吸着するコレットと、前記コレットで吸着され前記突き上げられた前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離して基板に装着するボンディングヘッドと、を有することを特徴とするダイボンダ。
【請求項2】
前記剥離起点形成手段は、コーナ部分に前記剥離開始起点を形成する頂上部分と、前記角環状の縁辺部の中央部を底部とする勾配を有することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項3】
前記所定部は、前記ダイの4コーナ部分のうち少なくとも1つのコーナ部分に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダイボンダ。
【請求項4】
前記駆動手段は、単一の駆動源で上下に駆動される作動体を有し、前記作動体の上昇時には前記2つの突き上げのうち一方を行い、前記作動体の下降時には前記下降を上昇に変える反転部を介して前記他方を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のダイボンダ。
【請求項5】
ウェハリングを保持するエキスパンドリングと、前記ウェハリングに保持され複数のダイが貼り付けられたダイシングフィルムを保持する保持手段と、前記ダイの周辺部のうちの所定部におけるダイシングフィルムを突き上げて剥離起点を形成する剥離起点形成手段と、前記所定部とは異なる部分の前記ダイシングフィルムを突き上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離する剥離手段と、前記剥離起点形成手段の前記突き上げと前記剥離手段の前記突き上げとを別々に駆動する駆動手段を有する突き上げユニットと、を有することを特徴とするピックアップ装置。
【請求項6】
前記剥離起点形成手段は前記剥離起点を形成する角環状のブロックを有することを特徴とする請求項5に記載のピックアップ装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、単一の駆動源で上下に駆動される作動体を有し、前記作動体の上昇時には前記2つの突き上げのうち一方を行い、前記作動体の下降時には前記下降を上昇に変える反転部を介して前記他方を行うことを特徴とする請求項5または6に記載のピックアップ装置。
【請求項8】
前記他方は前記剥離起点形成手段の前記突き上げであることを特徴とする請求項7に記載のピックアップ装置。
【請求項9】
ダイシングフィルムに貼り付けられた複数のダイのうち、剥離対象とするダイをコレットで吸着するステップと、
剥離対象である前記ダイの周辺部のうちの所定部における前記ダイシングフィルムを突き上げて剥離起点を形成するステップと、前記所定部とは異なる部分の前記ダイシングフィルムを突き上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離するステップ有することを特徴とするピックアップ方法。
【請求項10】
前記剥離起点の形成を角環状のブロックで行うことを特徴とする請求項9に記載のピックアップ方法。
【請求項11】
前記剥離開始起点の形成を前記角環状のブロックのコーナ部分に設けた頂上部分で行うことを特徴とする請求項10に記載のピックアップ方法。
【請求項12】
前記角環状のブロックの前記頂上部分がダイシングフィルムを突き上げて剥離開始起点を形成し、前記角環状のブロックの底部が所定の位置で静止するステップを有することを特徴とする請求項10記載のピックアップ方法。
【請求項13】
前記角環状のブロックが前記ダイシングフィルムを突き上げて剥離起点を形成する所定の位置に達した後、前記所定部とは異なる部分の前記ダイシングフィルムを突き上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離するステップが終了するまでに、前記ピンが前記所定の位置から前記突き上げとは逆の方向に移動するステップを有することを特徴とする請求項12記載のピックアップ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−65628(P2013−65628A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202274(P2011−202274)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】