ダイヤモンド繊維及びそれを含む不織布並びにそれらの製造方法
【課題】取り扱い性に優れており、且つ、熱伝導性等のダイヤモンドが本来有する性能を発揮することができるダイヤモンド繊維及びそれを含む不織布、並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】前記ダイヤモンド繊維は、ダイヤモンドのみから実質的になり、アスペクト比が200以上である。前記不織布は、前記ダイヤモンド繊維を含む。前記ダイヤモンド繊維の製造方法では、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して紡糸液を調製し;前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成し;前記複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を形成し;前記ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維にCVDを行い、ダイヤモンド繊維を形成する。
【解決手段】前記ダイヤモンド繊維は、ダイヤモンドのみから実質的になり、アスペクト比が200以上である。前記不織布は、前記ダイヤモンド繊維を含む。前記ダイヤモンド繊維の製造方法では、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して紡糸液を調製し;前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成し;前記複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を形成し;前記ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維にCVDを行い、ダイヤモンド繊維を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド繊維及びそれを含む不織布、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは硬度、弾性率が地球上の物質の中で最も大きいため、ダイヤモンドを樹脂に混合すれば、樹脂の硬度、弾性率を向上させることができる。
また、ダイヤモンドは熱伝導性、絶縁性が高いため、放熱材料又は電気絶縁材料としての応用が期待されている。
このダイヤモンドは化学的安定性に優れているため、粒子状態又は薄膜状態で提供されるのが一般的であった。ダイヤモンド繊維からなる繊維シート(不織布)が存在すれば、前記性能(例えば、熱伝導性、絶縁性)及び通気性等に優れている。しかしながら、繊維状態のダイヤモンド繊維が提案されているに過ぎない。
【0003】
例えば、特開平1−246116号公報には、「プラズマ化学気相法あるいは化学気相法によって合成されたダイヤモンド又はその膜を、酸素、二酸化炭素、水蒸気、水素、ハロゲン化炭化水素、あるいはハロゲン化炭素を含んだ気流中でプラズマ処理するか、又は酸素、二酸化炭素、あるいは水蒸気を含んだ気流中で熱酸化処理することによってエッチングすることを特徴とする針状、繊維状、多孔質状ダイヤモンド又はそれらの集合体の製造法。」が開示されている。この製造方法によればダイヤモンド繊維を製造することができるが、このダイヤモンド繊維は繊維径が0.2〜5μm程度で、アスペクト比(=繊維長/繊維径)が高々150の短繊維であるため、繊維シート(不織布)とするには更なる製造工程が必要である。しかしながら、このように細い繊維は取り扱い性が悪く、また、繊維シート化するには接着剤を必要とし、しかも非常に短い短繊維であるため、繊維シートの熱伝導性等の性能が低下しやすい。
【0004】
【特許文献1】特開平1−246116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、取り扱い性に優れており、且つ、熱伝導性等のダイヤモンドが本来有する性能を発揮することができるダイヤモンド繊維及びそれを含む不織布、並びにそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明による、ダイヤモンドのみから実質的になり、アスペクト比が200以上であることを特徴とする、ダイヤモンド繊維により解決することができる。
【0007】
また、本発明は、(1)ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程(以下、紡糸液調製工程と称する)、
(2)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成する工程(以下、紡糸工程と称する)、及び
(3)前記複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を形成する工程(以下、除去工程と称する)
を含む、ダイヤモンド繊維の製造方法に関する。
また、本発明は、(4)前記除去工程で得られたダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維にCVD(chemical vapor deposition;化学気相蒸着法)を行い、ダイヤモンド繊維を形成する工程(以下、CVD工程と称する)
を更に含む、ダイヤモンド繊維の製造方法に関する。
【0008】
本発明のダイヤモンド繊維には、例えば、前記製造方法において、紡糸液調製工程、紡糸工程、及び除去工程を実施することにより得ることのできる、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維、あるいは、更にCVD工程を実施することにより得ることのできるダイヤモンド繊維が含まれる。
【0009】
また、本発明は、前記ダイヤモンド繊維を含む不織布に関する。
本発明の不織布の好ましい態様によれば、不織布を構成するダイヤモンド繊維同士が接着しており、更に好ましくは、ダイヤモンド繊維のみからなる。
【0010】
また、本発明は、(1)ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程、
(2)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成する工程、
(3)前記複合微細繊維を集積して繊維ウエブを形成する工程(以下、集積工程と称する)、及び
(4)前記繊維ウエブを形成する複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブを形成する工程(以下、除去工程と称する)
を含む、ダイヤモンド繊維からなる不織布の製造方法に関する。
また、本発明は、(5)前記ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブにCVDを行い、ダイヤモンド繊維を形成する工程(以下、CVD工程と称する)
を更に含む、ダイヤモンド繊維からなる不織布の製造方法に関する。
【0011】
本発明の不織布の一態様である、ダイヤモンド繊維からなる不織布には、例えば、前記製造方法において、紡糸液調製工程、紡糸工程、集積工程、及び除去工程を実施することにより得ることのできる、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる不織布、あるいは、更にCVD工程を実施することにより得ることのできる、ダイヤモンド繊維からなる不織布が含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダイヤモンド繊維は、基本的に連続繊維であるため、熱伝導性等の性能に優れている。また、本発明の不織布は、前記ダイヤモンド繊維を含むため、熱伝導性等の性能に優れている。本発明の不織布の好適態様である、不織布を構成するダイヤモンド繊維同士が接着した状態にある不織布では、自立性(形態保持性)があるため、取り扱い性に優れており、且つ、熱伝導性等の性能に優れている。本発明の製造方法によれば、前記ダイヤモンド繊維又は不織布を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のダイヤモンド繊維は、ダイヤモンドのみから実質的になり、アスペクト比が200以上、好ましくは500以上である。本明細書において「アスペクト比」とは、平均繊維長(L:単位=μm)を平均繊維径(D:単位=μm)で除した値(L/D)を意味し、「平均繊維長」は、2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した50本の繊維の長さの平均値を意味し、「平均繊維径」は、5000倍のSEM写真から測定した50本の繊維の横断面の直径の平均値を意味する。なお、「ダイヤモンドのみから実質的になり」とは、99%以上がダイヤモンドからなることを意味する。また、ダイヤモンド繊維は、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を含む。
【0014】
本発明のダイヤモンド繊維の平均繊維径は、通常、5μm以下であり、好ましくは2μm以下である。また、通常、10nm以上であり、好ましくは50nm以上である。
また、本発明のダイヤモンド繊維の平均繊維長は、通常、100μm以上であり、好ましくは500μm以上であり、より好ましくは連続繊維である。
本発明の不織布は、熱伝導性等に優れる点で、不織布中に含まれるダイヤモンド繊維が、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、ダイヤモンド繊維のみからなることが最も好ましい。ダイヤモンド繊維同士が接着している場合、その接着は、ダイヤモンド繊維の一部を介してなされていることが好ましい。
【0015】
本発明のダイヤモンド繊維又は不織布は、これに限定されるものではないが、例えば、本発明の製造方法により製造することができる。
本発明の製造方法は、静電紡糸技術に基づくものであり、ダイヤモンド繊維を製造する場合には、前記の紡糸液調製工程、紡糸工程、及び除去工程をこの順に実施するか、あるいは、これらの工程の後に、更にCVD工程を実施することを特徴とする。また、ダイヤモンド繊維からなる不織布を製造する場合には、前記の紡糸液調製工程、紡糸工程、集積工程、及び除去工程をこの順に実施するか、あるいは、これらの工程の後に、更にCVD工程を実施することを特徴とする。
【0016】
本発明の製造方法における紡糸液調製工程で用いるダイヤモンドナノ粒子としては、例えば、爆発法により得られるナノダイヤモンド(例えば、特開2005−1983号公報参照)を挙げることができる。爆発法では、酸素欠如組成をもつ火薬を不活性媒体中で、火薬以外に炭素源を添加することなく爆発させ、煤に高濃度で含まれるダイヤモンド炭素を取り出すことによって、ダイヤモンド粒子を得ることができる。但し、爆発法ナノダイヤモンドは顕著な凝膠体であり、例えば、市販のダイヤモンド粒子は、平均300nm又は/及び10ミクロン程度の粒子群である。爆発法ナノダイヤモンド凝膠体は、例えば、0.1〜0.05mmの直径を持つセラミックビーズ又は金属ビーズを用い、アジテーター周速5m/s以上のビーズミリングにより、平均4〜5nmのナノダイヤモンドに解膠することができる。
【0017】
紡糸液調製工程で用いるポリマーは、静電紡糸により紡糸可能であって、ダイヤモンドナノ粒子の分散を損なわない限り、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレングリコール、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアクリロニトリル(PAN)、 ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等を挙げることができ、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0018】
紡糸液調製工程では、ダイヤモンドナノ粒子と前記ポリマーとを、適当な溶媒と一緒に混合することにより、紡糸液を調製する。前記溶媒は、前記ポリマーを溶解可能であって、且つ、ダイヤモンドナノ粒子の凝集を生じさせない限り、特に限定されるものではなく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール等)、水などを挙げることができる。ポリマーとしてPANを用いる場合には、溶媒としてDMF又はDMSOが好ましい。
【0019】
ダイヤモンドナノ粒子、ポリマー、及び溶媒の混合順序は、静電紡糸可能な紡糸液が得られる限り、特に限定されるものではなく、任意の順序で、あるいは、2又は3成分を同時に混合することもできる。例えば、ダイヤモンドナノ粒子の凝集体を溶媒中で超音波分散し、100nm以下の粒子、好ましくは10nm以下のナノ粒子を分散させた後、ポリマーを混合して溶解させることができる。なお、ナノ粒子を分散させた後に、濾過や遠心分離により、大粒子径の凝集体(例えば、1μm超)を除去することもできる。また、ナノ粒子の分散液にポリマーを混合して溶解させにくい場合であっても、ナノ粒子分散液の溶媒を置換した後にポリマーを混合して溶解させることができる。
【0020】
ポリマーの分子量は、ポリマーの種類によって好ましい範囲が異なるため、静電紡糸可能な範囲であればよい。ポリアクリロニトリルの場合、重量平均分子量(Mw)が5万〜200万であることが好ましく、40万〜70万であることがより好ましい。
ポリマーに対するダイヤモンドナノ粒子の添加量は、5〜50wt%であることが好ましく、20〜30wt%であることがより好ましい。
紡糸液中のダイヤモンドナノ粒子の濃度は、0.1〜10wt%であることが好ましく、1〜5wt%であることがより好ましい。
紡糸液中のポリマー濃度は、1〜30wt%であることが好ましく、5〜20wt%であることがより好ましい。
紡糸液の粘度は、100〜5000mPa・sであることが好ましく、500〜2000mPa・sであることがより好ましい。
【0021】
本発明の製造方法における紡糸工程、あるいは、紡糸工程及び集積工程は、紡糸液調製工程で得られた紡糸液を用いること以外は、通常の静電紡糸法に基づいて実施することができる。静電紡糸法を実施することのできる公知の製造装置及びそれを用いる製造方法は、例えば、特開2003−73964号公報、特開2004−238749号公報、特開2005−194675号公報に開示されている。以下、特開2005−194675号公報に開示の製造装置を示す図1に沿って、本発明の製造方法における紡糸工程及び集積工程を説明する。
【0022】
図1に示す製造装置は、紡糸液をノズル2へ供給できる紡糸液供給装置1、紡糸液供給装置1から供給された紡糸液を紡糸空間5へ吐出するノズル2、ノズル2から吐出され、電界によって延伸された繊維を捕集するアースされた捕集体3、ノズル2とアースされた捕集体3との間に電界を形成するために、ノズル2に電圧を印加できる電圧印加装置4、ノズル2と捕集体3とを収納した紡糸容器6、紡糸容器6へ所定相対湿度の気体を供給できる気体供給装置7、及び紡糸容器6内の気体を排気できる排気装置8を備えている。
【0023】
紡糸液調製工程で得られた紡糸液は、紡糸液供給装置1によって、ノズル2へ供給される。この供給された紡糸液はノズル2から紡糸空間5へ押し出されるとともに、アースされた捕集体3と電圧印加装置4によって印加されたノズル2との間の電界による延伸作用を受け、繊維化しながら捕集体3へ向かって飛翔する(いわゆる静電紡糸法)。そして、この飛翔した繊維は直接、捕集体3上に集積し、繊維ウエブを形成する。なお、紡糸液供給装置1は特に限定されるものではないが、例えば、シリンジポンプ、チューブポンプ、ディスペンサ等を使用することができる。
【0024】
図1における紡糸液のノズル2からの押し出し方向は、重力と直交する方向、かつ捕集体3の方向であるため、捕集体3に紡糸液の滴下が生じない構成となっている。しかしながら、紡糸液のノズル2からの押し出し方向は、図1とは異なる方向であっても良い。
【0025】
この紡糸液を押し出すノズル2の直径は、得ようとする繊維の繊維径によって変化するため、特に限定するものではない。本発明においては、紡糸工程で得られる複合微細繊維の繊維径は、通常、10nm〜5μmであり、好ましくは50nm〜2μmであり、より好ましくは100nm〜1μmである。静電紡糸を安定して行うことができるように、ノズルの内径は0.2〜1mmであることが好ましい。
【0026】
また、ノズル2は金属製であっても、非金属製であっても良い。ノズル2が金属製であれば、電圧印加装置4から電圧を印加することにより、ノズル2を一方の電極として使用することができ、ノズル2が非金属製である場合には、ノズル2の内部に電極を設置し、この内部電極へ電圧印加装置4から電圧を印加することにより、押し出した紡糸液に電界を作用させることができる。
【0027】
図1においては、電圧印加装置4によりノズル2に電圧を印加するとともに、捕集体3をアースすることにより電界を形成しているが、図1とは逆に、ノズル2をアースするとともに、捕集体3に電圧を印加して電界を形成しても良いし、ノズル2と捕集体3の両方に電圧を印加するものの、電位差を設けるように印加して電界を形成しても良い。なお、この電界は、繊維の繊維径、ノズル2と捕集体3との距離、紡糸液の主溶媒、紡糸液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、0.2〜5kV/cmであるのが好ましい。電界強度が5kV/cmを超えると、空気の絶縁破壊が生じやすい傾向があり、0.2kV/cm未満であると、紡糸液の延伸が不十分で繊維形状となりにくい傾向があるためである。
【0028】
なお、電圧印加装置4は特に限定されるものではないが、例えば、直流高電圧発生装置やヴァン・デ・グラフ起電機を用いることができる。また、印加電圧は前述のような電界強度とすることができれば良く、特に限定するものではないが、5〜50KV程度であるのが好ましい。
【0029】
図1における捕集体3はドラムであるが、繊維を捕集できるものであれば良く、特に限定されるものではない。例えば、金属製や炭素などからなる導電性材料又は有機高分子などからなる非導電性材料からなる、不織布、織物、編物、ネット、平板、或いはベルトを、捕集体3として使用することができる。また、場合によっては水や有機溶媒などの液体を捕集体3として使用できる。
【0030】
図1のように、捕集体3を他方の電極として使用する場合には、捕集体3は体積抵抗が109Ω以下の導電性材料(例えば、金属製)からなるのが好ましい。一方、ノズル2側から見て、捕集体3よりも後方に対向電極として導電性材料を配置する場合には、捕集体3は必ずしも導電性材料からなる必要はない。後者のように、捕集体3よりも後方に対向電極を配置する場合、捕集体3と対向電極とは接触していても良いし、離間していても良い。
【0031】
本発明の製造方法における除去工程では、紡糸工程で得られた複合微細繊維からポリマーを除去することによって、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維(ダイヤモンド繊維の一態様)を形成する。あるいは、複合微細繊維からなる繊維ウエブの複合微細繊維からポリマーを除去すれば、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブを形成することができる。この繊維ウエブは、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を含んでいるため、本発明の不織布の一態様である。ポリマーの除去は、例えば、か焼によって行うことができる。
【0032】
か焼温度は、通常、400〜800℃であり、好ましくは500〜600℃である。昇温速度は、通常、10〜500℃/時間であり、好ましくは100〜400℃/時間であり、より好ましくは200〜300℃/時間である。か焼時間は、通常、1〜24時間であり、好ましくは2〜12時間であり、より好ましくは4〜6時間である。
【0033】
か焼後のダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維に、CVDによりダイヤモンドを成長させることにより、ダイヤモンドのみからなるダイヤモンド繊維を形成することができる。ダイヤモンドナノ粒子を結晶核として使用しているため、効率良くダイヤモンドを結晶成長させることができ、効率良くダイヤモンド繊維を製造することができる。なお、CVD法としては、例えば、プラズマCVD(例えば、直流、高周波、マイクロ波など)、熱CVDなどの公知のCVDを利用することができる。
同様に、か焼後のダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブに、CVDによりダイヤモンドを成長させることにより、ダイヤモンド繊維のみからなる不織布を形成することができる。ダイヤモンドナノ粒子を結晶核として使用しているため、効率良くダイヤモンドを結晶成長させることができ、効率良くダイヤモンド不織布を製造することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0035】
《実施例1》
(1)紡糸液の調製
ナノダイヤモンド[製品名「ナノアマンド」、株式会社ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション(製造元:株式会社ナノ炭素研究所)]のエタノール分散液(5%濃度)を、ポリアクリロニトリル(PAN)を溶解可能な溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)に置換した。溶媒の置換にはロータリーエバポレーターを使用した。溶媒置換後のナノダイヤモンド濃度は5%とした。ナノダイヤモンドのDMF又はDMSOに対する目視での分散性は良好であった。
【0036】
ナノダイヤモンドのDMF又はDMSO分散液に、PAN樹脂(Mw:50万)を溶解し、紡糸液を調製した。ナノダイヤモンドとPANとの比率は、重量比でそれぞれ、ナノダイヤモンド/PAN=1/10、3/10、5/10とした。溶液中のPAN樹脂の濃度は10wt%とした。配合条件および紡糸液の状態を表1に示す。
【0037】
[表1]
配合条件 溶液の状態
条件 溶媒 ナノダイヤ PAN 外観 粘度
1 DMF 1% 10% 白濁 1200cP
2 DMF 3% 10% 透明 ゲル状
3 DMF 5% 10% 透明 ゲル状
4 DMSO 1% 10% 白濁 3800cP
5 DMSO 3% 10% 透明 ゲル状
6 DMSO 5% 10% 透明 ゲル状
【0038】
ナノダイヤモンド/PAN=1/10の場合、溶媒の種類によらず、溶液に白濁が見られた。粒子の凝集が生じているのではないかと推測される。一方、ナノダイヤモンド/PAN=3/10、5/10の場合には、溶液は黒く着色しているものの、透明性があり、粒子の分散状態は良好と考えられる。但し、PAN濃度10%の場合、溶媒の種類によらず、ナノダイヤモンド/PAN=3/10以上では、溶液が流動性を失い、ゲル状になる様子が見られた。ゲル化はDMSO溶媒の方がより顕著であり、DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=5/10溶液は、均一な溶解が困難であった。ナノダイヤモンド/PAN=3/10の場合、溶媒の種類によらず、希釈によりPAN濃度を7%としたことにより、ゲルは流動性を回復し、静電紡糸可能な溶液となった。この際、希釈後も溶液の白濁は見られなかった。また、DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=5/10溶液も、希釈によりPAN濃度を5%としたことにより、ゲルは流動性を回復し、静電紡糸可能な溶液となった。
【0039】
(2)静電紡糸による繊維ウエブの作製
前記(1)で調製した各紡糸液(条件1〜5)を用いて、静電紡糸により繊維ウエブを作製した。なお、条件2(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)及び条件5(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液については、PAN濃度が7%となるように希釈したものを、また、条件3(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=5/10溶液)の紡糸液については、PAN濃度が5%となるように希釈したものを、それぞれ、静電紡糸に使用した。
【0040】
静電紡糸は、ノズル内径0.25mm、吐出量0.5g/時間、ノズル−捕集体間距離10cm、紡糸雰囲気の温湿度26℃/30%RH、印加電圧10kVの条件で実施した。
【0041】
得られた繊維ウエブの走査電子顕微鏡(SEM)写真を図2〜図11に示す。条件によっては液滴が見られる(例えば、条件1及び条件3)が、溶液が白濁していたナノダイヤモンド/PAN=1/10溶液でも液滴の少ない繊維ウエブを得ることができた。繊維ウエブの引張強度はナノダイヤモンドの添加量が増すとともに低下した。
【0042】
(3)か焼によるポリマー成分の除去
条件5(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液を用いて作製した前記繊維ウエブを、空気中でか焼することにより、ポリマー成分の除去を行った。か焼温度は500℃、昇温速度は250℃/hr、保持時間は4時間とした。か焼後のか焼繊維ウエブ(本発明の不織布の一態様)は脆いものであったが、ピンセット等での取り扱いは可能であり、SEM観察により、繊維形状を保持していることが確認された(図12〜図13)。か焼前後の重量保持率は、18〜21%であり、理論値(23%)よりやや低い値であった。か焼により繊維ウエブの面積は約30%収縮し、平均繊維径は、か焼前300nmからか焼後150nm程度に細径化した。
【0043】
(4)CVDによるダイヤモンド繊維の形成
ポリマー成分を除去したダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなるか焼繊維ウエブを、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて、ダイヤモンドを成長させ、ダイヤモンド繊維のみからなり、且つ繊維同士が接着した不織布を製造した。マイクロ波プラズマCVDは、マイクロ波電力3500W、処理温度700℃、水素/メタン=97/3%とした混合ガスを35Torrの圧力下で、30分間実施した。不織布構成ダイヤモンド繊維の平均繊維径は250nmで、アスペクト比は1000以上であった。また、この不織布は、熱伝導性及び取り扱い性の優れるものであった。
【0044】
《実施例2》
本実施例では、ダイヤモンドナノ粒子のDMSO分散液を直接作製し、紡糸する方法で実施した。
具体的には、ダイヤモンドナノ粒子[製品名「ナノアマンドフレーク」、株式会社ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション]7g、DMSO93gを、超音波装置(ブランソン社製超音波ホモジナイザー「ソニファイヤー450型」)を用いて、10分間超音波処理を行った。
続いて、10000rpmで遠心分離を行い、未分散の凝集体を除去し、ダイヤモンドナノ粒子の分散液を作製した。分散液は、黒色透明で、粒子の分散状態は良好であった。ダイヤモンドナノ粒子のDMSO分散液を用いて、濃度を調整すると共に、分子量50万のポリアクリロニトリル樹脂を溶解し、ダイヤモンドナノ粒子3wt%、PAN7wt%、DMSO90wt%からなる紡糸液を作製した。紡糸液は、黒色透明で、粒子の分散状態は良好であった。
【0045】
この紡糸液を用い、実施例1(2)と同じ条件で、静電紡糸により繊維ウエブを形成し、続いて、か焼によりポリマーを除去した後、マイクロ波プラズマCVDを行い、ダイヤモンド繊維のみからなり、且つ繊維同士が接着した不織布を作製した。
不織布構成ダイヤモンド繊維の平均繊維径は250nmで、アスペクト比は1000以上であった。また、この得られたダイヤモンド繊維不織布は、熱伝導性及び取り扱い性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のダイヤモンド繊維は、不織布の用途に適用することができる。また、本発明の不織布は、硬度、弾性率、熱伝導性、及び/又は絶縁性を必要とする用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の製造方法を実施可能な紡糸装置の概要を示す説明図である。
【図2】条件1(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=1/10溶液)の紡糸液を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図3】図2に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図4】条件2(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液(PAN濃度7%に希釈)を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図5】図4に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図6】条件3(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=5/10溶液)の紡糸液(PAN濃度5%に希釈)を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図7】図6に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図8】条件4(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=1/10溶液)の紡糸液を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図9】図8に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図10】条件5(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液(PAN濃度7%に希釈)を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図11】図10に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図12】条件5(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液(PAN濃度7%に希釈)を用いて作製した繊維ウエブを、空気中でか焼することにより、ポリマー成分の除去を行ったか焼繊維ウエブについて、それを構成するダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図13】図12に示すか焼繊維ウエブを構成する、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド繊維及びそれを含む不織布、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは硬度、弾性率が地球上の物質の中で最も大きいため、ダイヤモンドを樹脂に混合すれば、樹脂の硬度、弾性率を向上させることができる。
また、ダイヤモンドは熱伝導性、絶縁性が高いため、放熱材料又は電気絶縁材料としての応用が期待されている。
このダイヤモンドは化学的安定性に優れているため、粒子状態又は薄膜状態で提供されるのが一般的であった。ダイヤモンド繊維からなる繊維シート(不織布)が存在すれば、前記性能(例えば、熱伝導性、絶縁性)及び通気性等に優れている。しかしながら、繊維状態のダイヤモンド繊維が提案されているに過ぎない。
【0003】
例えば、特開平1−246116号公報には、「プラズマ化学気相法あるいは化学気相法によって合成されたダイヤモンド又はその膜を、酸素、二酸化炭素、水蒸気、水素、ハロゲン化炭化水素、あるいはハロゲン化炭素を含んだ気流中でプラズマ処理するか、又は酸素、二酸化炭素、あるいは水蒸気を含んだ気流中で熱酸化処理することによってエッチングすることを特徴とする針状、繊維状、多孔質状ダイヤモンド又はそれらの集合体の製造法。」が開示されている。この製造方法によればダイヤモンド繊維を製造することができるが、このダイヤモンド繊維は繊維径が0.2〜5μm程度で、アスペクト比(=繊維長/繊維径)が高々150の短繊維であるため、繊維シート(不織布)とするには更なる製造工程が必要である。しかしながら、このように細い繊維は取り扱い性が悪く、また、繊維シート化するには接着剤を必要とし、しかも非常に短い短繊維であるため、繊維シートの熱伝導性等の性能が低下しやすい。
【0004】
【特許文献1】特開平1−246116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、取り扱い性に優れており、且つ、熱伝導性等のダイヤモンドが本来有する性能を発揮することができるダイヤモンド繊維及びそれを含む不織布、並びにそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明による、ダイヤモンドのみから実質的になり、アスペクト比が200以上であることを特徴とする、ダイヤモンド繊維により解決することができる。
【0007】
また、本発明は、(1)ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程(以下、紡糸液調製工程と称する)、
(2)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成する工程(以下、紡糸工程と称する)、及び
(3)前記複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を形成する工程(以下、除去工程と称する)
を含む、ダイヤモンド繊維の製造方法に関する。
また、本発明は、(4)前記除去工程で得られたダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維にCVD(chemical vapor deposition;化学気相蒸着法)を行い、ダイヤモンド繊維を形成する工程(以下、CVD工程と称する)
を更に含む、ダイヤモンド繊維の製造方法に関する。
【0008】
本発明のダイヤモンド繊維には、例えば、前記製造方法において、紡糸液調製工程、紡糸工程、及び除去工程を実施することにより得ることのできる、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維、あるいは、更にCVD工程を実施することにより得ることのできるダイヤモンド繊維が含まれる。
【0009】
また、本発明は、前記ダイヤモンド繊維を含む不織布に関する。
本発明の不織布の好ましい態様によれば、不織布を構成するダイヤモンド繊維同士が接着しており、更に好ましくは、ダイヤモンド繊維のみからなる。
【0010】
また、本発明は、(1)ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程、
(2)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成する工程、
(3)前記複合微細繊維を集積して繊維ウエブを形成する工程(以下、集積工程と称する)、及び
(4)前記繊維ウエブを形成する複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブを形成する工程(以下、除去工程と称する)
を含む、ダイヤモンド繊維からなる不織布の製造方法に関する。
また、本発明は、(5)前記ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブにCVDを行い、ダイヤモンド繊維を形成する工程(以下、CVD工程と称する)
を更に含む、ダイヤモンド繊維からなる不織布の製造方法に関する。
【0011】
本発明の不織布の一態様である、ダイヤモンド繊維からなる不織布には、例えば、前記製造方法において、紡糸液調製工程、紡糸工程、集積工程、及び除去工程を実施することにより得ることのできる、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる不織布、あるいは、更にCVD工程を実施することにより得ることのできる、ダイヤモンド繊維からなる不織布が含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダイヤモンド繊維は、基本的に連続繊維であるため、熱伝導性等の性能に優れている。また、本発明の不織布は、前記ダイヤモンド繊維を含むため、熱伝導性等の性能に優れている。本発明の不織布の好適態様である、不織布を構成するダイヤモンド繊維同士が接着した状態にある不織布では、自立性(形態保持性)があるため、取り扱い性に優れており、且つ、熱伝導性等の性能に優れている。本発明の製造方法によれば、前記ダイヤモンド繊維又は不織布を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のダイヤモンド繊維は、ダイヤモンドのみから実質的になり、アスペクト比が200以上、好ましくは500以上である。本明細書において「アスペクト比」とは、平均繊維長(L:単位=μm)を平均繊維径(D:単位=μm)で除した値(L/D)を意味し、「平均繊維長」は、2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した50本の繊維の長さの平均値を意味し、「平均繊維径」は、5000倍のSEM写真から測定した50本の繊維の横断面の直径の平均値を意味する。なお、「ダイヤモンドのみから実質的になり」とは、99%以上がダイヤモンドからなることを意味する。また、ダイヤモンド繊維は、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を含む。
【0014】
本発明のダイヤモンド繊維の平均繊維径は、通常、5μm以下であり、好ましくは2μm以下である。また、通常、10nm以上であり、好ましくは50nm以上である。
また、本発明のダイヤモンド繊維の平均繊維長は、通常、100μm以上であり、好ましくは500μm以上であり、より好ましくは連続繊維である。
本発明の不織布は、熱伝導性等に優れる点で、不織布中に含まれるダイヤモンド繊維が、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、ダイヤモンド繊維のみからなることが最も好ましい。ダイヤモンド繊維同士が接着している場合、その接着は、ダイヤモンド繊維の一部を介してなされていることが好ましい。
【0015】
本発明のダイヤモンド繊維又は不織布は、これに限定されるものではないが、例えば、本発明の製造方法により製造することができる。
本発明の製造方法は、静電紡糸技術に基づくものであり、ダイヤモンド繊維を製造する場合には、前記の紡糸液調製工程、紡糸工程、及び除去工程をこの順に実施するか、あるいは、これらの工程の後に、更にCVD工程を実施することを特徴とする。また、ダイヤモンド繊維からなる不織布を製造する場合には、前記の紡糸液調製工程、紡糸工程、集積工程、及び除去工程をこの順に実施するか、あるいは、これらの工程の後に、更にCVD工程を実施することを特徴とする。
【0016】
本発明の製造方法における紡糸液調製工程で用いるダイヤモンドナノ粒子としては、例えば、爆発法により得られるナノダイヤモンド(例えば、特開2005−1983号公報参照)を挙げることができる。爆発法では、酸素欠如組成をもつ火薬を不活性媒体中で、火薬以外に炭素源を添加することなく爆発させ、煤に高濃度で含まれるダイヤモンド炭素を取り出すことによって、ダイヤモンド粒子を得ることができる。但し、爆発法ナノダイヤモンドは顕著な凝膠体であり、例えば、市販のダイヤモンド粒子は、平均300nm又は/及び10ミクロン程度の粒子群である。爆発法ナノダイヤモンド凝膠体は、例えば、0.1〜0.05mmの直径を持つセラミックビーズ又は金属ビーズを用い、アジテーター周速5m/s以上のビーズミリングにより、平均4〜5nmのナノダイヤモンドに解膠することができる。
【0017】
紡糸液調製工程で用いるポリマーは、静電紡糸により紡糸可能であって、ダイヤモンドナノ粒子の分散を損なわない限り、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレングリコール、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアクリロニトリル(PAN)、 ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等を挙げることができ、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0018】
紡糸液調製工程では、ダイヤモンドナノ粒子と前記ポリマーとを、適当な溶媒と一緒に混合することにより、紡糸液を調製する。前記溶媒は、前記ポリマーを溶解可能であって、且つ、ダイヤモンドナノ粒子の凝集を生じさせない限り、特に限定されるものではなく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール等)、水などを挙げることができる。ポリマーとしてPANを用いる場合には、溶媒としてDMF又はDMSOが好ましい。
【0019】
ダイヤモンドナノ粒子、ポリマー、及び溶媒の混合順序は、静電紡糸可能な紡糸液が得られる限り、特に限定されるものではなく、任意の順序で、あるいは、2又は3成分を同時に混合することもできる。例えば、ダイヤモンドナノ粒子の凝集体を溶媒中で超音波分散し、100nm以下の粒子、好ましくは10nm以下のナノ粒子を分散させた後、ポリマーを混合して溶解させることができる。なお、ナノ粒子を分散させた後に、濾過や遠心分離により、大粒子径の凝集体(例えば、1μm超)を除去することもできる。また、ナノ粒子の分散液にポリマーを混合して溶解させにくい場合であっても、ナノ粒子分散液の溶媒を置換した後にポリマーを混合して溶解させることができる。
【0020】
ポリマーの分子量は、ポリマーの種類によって好ましい範囲が異なるため、静電紡糸可能な範囲であればよい。ポリアクリロニトリルの場合、重量平均分子量(Mw)が5万〜200万であることが好ましく、40万〜70万であることがより好ましい。
ポリマーに対するダイヤモンドナノ粒子の添加量は、5〜50wt%であることが好ましく、20〜30wt%であることがより好ましい。
紡糸液中のダイヤモンドナノ粒子の濃度は、0.1〜10wt%であることが好ましく、1〜5wt%であることがより好ましい。
紡糸液中のポリマー濃度は、1〜30wt%であることが好ましく、5〜20wt%であることがより好ましい。
紡糸液の粘度は、100〜5000mPa・sであることが好ましく、500〜2000mPa・sであることがより好ましい。
【0021】
本発明の製造方法における紡糸工程、あるいは、紡糸工程及び集積工程は、紡糸液調製工程で得られた紡糸液を用いること以外は、通常の静電紡糸法に基づいて実施することができる。静電紡糸法を実施することのできる公知の製造装置及びそれを用いる製造方法は、例えば、特開2003−73964号公報、特開2004−238749号公報、特開2005−194675号公報に開示されている。以下、特開2005−194675号公報に開示の製造装置を示す図1に沿って、本発明の製造方法における紡糸工程及び集積工程を説明する。
【0022】
図1に示す製造装置は、紡糸液をノズル2へ供給できる紡糸液供給装置1、紡糸液供給装置1から供給された紡糸液を紡糸空間5へ吐出するノズル2、ノズル2から吐出され、電界によって延伸された繊維を捕集するアースされた捕集体3、ノズル2とアースされた捕集体3との間に電界を形成するために、ノズル2に電圧を印加できる電圧印加装置4、ノズル2と捕集体3とを収納した紡糸容器6、紡糸容器6へ所定相対湿度の気体を供給できる気体供給装置7、及び紡糸容器6内の気体を排気できる排気装置8を備えている。
【0023】
紡糸液調製工程で得られた紡糸液は、紡糸液供給装置1によって、ノズル2へ供給される。この供給された紡糸液はノズル2から紡糸空間5へ押し出されるとともに、アースされた捕集体3と電圧印加装置4によって印加されたノズル2との間の電界による延伸作用を受け、繊維化しながら捕集体3へ向かって飛翔する(いわゆる静電紡糸法)。そして、この飛翔した繊維は直接、捕集体3上に集積し、繊維ウエブを形成する。なお、紡糸液供給装置1は特に限定されるものではないが、例えば、シリンジポンプ、チューブポンプ、ディスペンサ等を使用することができる。
【0024】
図1における紡糸液のノズル2からの押し出し方向は、重力と直交する方向、かつ捕集体3の方向であるため、捕集体3に紡糸液の滴下が生じない構成となっている。しかしながら、紡糸液のノズル2からの押し出し方向は、図1とは異なる方向であっても良い。
【0025】
この紡糸液を押し出すノズル2の直径は、得ようとする繊維の繊維径によって変化するため、特に限定するものではない。本発明においては、紡糸工程で得られる複合微細繊維の繊維径は、通常、10nm〜5μmであり、好ましくは50nm〜2μmであり、より好ましくは100nm〜1μmである。静電紡糸を安定して行うことができるように、ノズルの内径は0.2〜1mmであることが好ましい。
【0026】
また、ノズル2は金属製であっても、非金属製であっても良い。ノズル2が金属製であれば、電圧印加装置4から電圧を印加することにより、ノズル2を一方の電極として使用することができ、ノズル2が非金属製である場合には、ノズル2の内部に電極を設置し、この内部電極へ電圧印加装置4から電圧を印加することにより、押し出した紡糸液に電界を作用させることができる。
【0027】
図1においては、電圧印加装置4によりノズル2に電圧を印加するとともに、捕集体3をアースすることにより電界を形成しているが、図1とは逆に、ノズル2をアースするとともに、捕集体3に電圧を印加して電界を形成しても良いし、ノズル2と捕集体3の両方に電圧を印加するものの、電位差を設けるように印加して電界を形成しても良い。なお、この電界は、繊維の繊維径、ノズル2と捕集体3との距離、紡糸液の主溶媒、紡糸液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、0.2〜5kV/cmであるのが好ましい。電界強度が5kV/cmを超えると、空気の絶縁破壊が生じやすい傾向があり、0.2kV/cm未満であると、紡糸液の延伸が不十分で繊維形状となりにくい傾向があるためである。
【0028】
なお、電圧印加装置4は特に限定されるものではないが、例えば、直流高電圧発生装置やヴァン・デ・グラフ起電機を用いることができる。また、印加電圧は前述のような電界強度とすることができれば良く、特に限定するものではないが、5〜50KV程度であるのが好ましい。
【0029】
図1における捕集体3はドラムであるが、繊維を捕集できるものであれば良く、特に限定されるものではない。例えば、金属製や炭素などからなる導電性材料又は有機高分子などからなる非導電性材料からなる、不織布、織物、編物、ネット、平板、或いはベルトを、捕集体3として使用することができる。また、場合によっては水や有機溶媒などの液体を捕集体3として使用できる。
【0030】
図1のように、捕集体3を他方の電極として使用する場合には、捕集体3は体積抵抗が109Ω以下の導電性材料(例えば、金属製)からなるのが好ましい。一方、ノズル2側から見て、捕集体3よりも後方に対向電極として導電性材料を配置する場合には、捕集体3は必ずしも導電性材料からなる必要はない。後者のように、捕集体3よりも後方に対向電極を配置する場合、捕集体3と対向電極とは接触していても良いし、離間していても良い。
【0031】
本発明の製造方法における除去工程では、紡糸工程で得られた複合微細繊維からポリマーを除去することによって、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維(ダイヤモンド繊維の一態様)を形成する。あるいは、複合微細繊維からなる繊維ウエブの複合微細繊維からポリマーを除去すれば、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブを形成することができる。この繊維ウエブは、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を含んでいるため、本発明の不織布の一態様である。ポリマーの除去は、例えば、か焼によって行うことができる。
【0032】
か焼温度は、通常、400〜800℃であり、好ましくは500〜600℃である。昇温速度は、通常、10〜500℃/時間であり、好ましくは100〜400℃/時間であり、より好ましくは200〜300℃/時間である。か焼時間は、通常、1〜24時間であり、好ましくは2〜12時間であり、より好ましくは4〜6時間である。
【0033】
か焼後のダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維に、CVDによりダイヤモンドを成長させることにより、ダイヤモンドのみからなるダイヤモンド繊維を形成することができる。ダイヤモンドナノ粒子を結晶核として使用しているため、効率良くダイヤモンドを結晶成長させることができ、効率良くダイヤモンド繊維を製造することができる。なお、CVD法としては、例えば、プラズマCVD(例えば、直流、高周波、マイクロ波など)、熱CVDなどの公知のCVDを利用することができる。
同様に、か焼後のダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブに、CVDによりダイヤモンドを成長させることにより、ダイヤモンド繊維のみからなる不織布を形成することができる。ダイヤモンドナノ粒子を結晶核として使用しているため、効率良くダイヤモンドを結晶成長させることができ、効率良くダイヤモンド不織布を製造することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0035】
《実施例1》
(1)紡糸液の調製
ナノダイヤモンド[製品名「ナノアマンド」、株式会社ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション(製造元:株式会社ナノ炭素研究所)]のエタノール分散液(5%濃度)を、ポリアクリロニトリル(PAN)を溶解可能な溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシド(DMSO)に置換した。溶媒の置換にはロータリーエバポレーターを使用した。溶媒置換後のナノダイヤモンド濃度は5%とした。ナノダイヤモンドのDMF又はDMSOに対する目視での分散性は良好であった。
【0036】
ナノダイヤモンドのDMF又はDMSO分散液に、PAN樹脂(Mw:50万)を溶解し、紡糸液を調製した。ナノダイヤモンドとPANとの比率は、重量比でそれぞれ、ナノダイヤモンド/PAN=1/10、3/10、5/10とした。溶液中のPAN樹脂の濃度は10wt%とした。配合条件および紡糸液の状態を表1に示す。
【0037】
[表1]
配合条件 溶液の状態
条件 溶媒 ナノダイヤ PAN 外観 粘度
1 DMF 1% 10% 白濁 1200cP
2 DMF 3% 10% 透明 ゲル状
3 DMF 5% 10% 透明 ゲル状
4 DMSO 1% 10% 白濁 3800cP
5 DMSO 3% 10% 透明 ゲル状
6 DMSO 5% 10% 透明 ゲル状
【0038】
ナノダイヤモンド/PAN=1/10の場合、溶媒の種類によらず、溶液に白濁が見られた。粒子の凝集が生じているのではないかと推測される。一方、ナノダイヤモンド/PAN=3/10、5/10の場合には、溶液は黒く着色しているものの、透明性があり、粒子の分散状態は良好と考えられる。但し、PAN濃度10%の場合、溶媒の種類によらず、ナノダイヤモンド/PAN=3/10以上では、溶液が流動性を失い、ゲル状になる様子が見られた。ゲル化はDMSO溶媒の方がより顕著であり、DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=5/10溶液は、均一な溶解が困難であった。ナノダイヤモンド/PAN=3/10の場合、溶媒の種類によらず、希釈によりPAN濃度を7%としたことにより、ゲルは流動性を回復し、静電紡糸可能な溶液となった。この際、希釈後も溶液の白濁は見られなかった。また、DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=5/10溶液も、希釈によりPAN濃度を5%としたことにより、ゲルは流動性を回復し、静電紡糸可能な溶液となった。
【0039】
(2)静電紡糸による繊維ウエブの作製
前記(1)で調製した各紡糸液(条件1〜5)を用いて、静電紡糸により繊維ウエブを作製した。なお、条件2(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)及び条件5(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液については、PAN濃度が7%となるように希釈したものを、また、条件3(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=5/10溶液)の紡糸液については、PAN濃度が5%となるように希釈したものを、それぞれ、静電紡糸に使用した。
【0040】
静電紡糸は、ノズル内径0.25mm、吐出量0.5g/時間、ノズル−捕集体間距離10cm、紡糸雰囲気の温湿度26℃/30%RH、印加電圧10kVの条件で実施した。
【0041】
得られた繊維ウエブの走査電子顕微鏡(SEM)写真を図2〜図11に示す。条件によっては液滴が見られる(例えば、条件1及び条件3)が、溶液が白濁していたナノダイヤモンド/PAN=1/10溶液でも液滴の少ない繊維ウエブを得ることができた。繊維ウエブの引張強度はナノダイヤモンドの添加量が増すとともに低下した。
【0042】
(3)か焼によるポリマー成分の除去
条件5(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液を用いて作製した前記繊維ウエブを、空気中でか焼することにより、ポリマー成分の除去を行った。か焼温度は500℃、昇温速度は250℃/hr、保持時間は4時間とした。か焼後のか焼繊維ウエブ(本発明の不織布の一態様)は脆いものであったが、ピンセット等での取り扱いは可能であり、SEM観察により、繊維形状を保持していることが確認された(図12〜図13)。か焼前後の重量保持率は、18〜21%であり、理論値(23%)よりやや低い値であった。か焼により繊維ウエブの面積は約30%収縮し、平均繊維径は、か焼前300nmからか焼後150nm程度に細径化した。
【0043】
(4)CVDによるダイヤモンド繊維の形成
ポリマー成分を除去したダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなるか焼繊維ウエブを、マイクロ波プラズマCVD装置を用いて、ダイヤモンドを成長させ、ダイヤモンド繊維のみからなり、且つ繊維同士が接着した不織布を製造した。マイクロ波プラズマCVDは、マイクロ波電力3500W、処理温度700℃、水素/メタン=97/3%とした混合ガスを35Torrの圧力下で、30分間実施した。不織布構成ダイヤモンド繊維の平均繊維径は250nmで、アスペクト比は1000以上であった。また、この不織布は、熱伝導性及び取り扱い性の優れるものであった。
【0044】
《実施例2》
本実施例では、ダイヤモンドナノ粒子のDMSO分散液を直接作製し、紡糸する方法で実施した。
具体的には、ダイヤモンドナノ粒子[製品名「ナノアマンドフレーク」、株式会社ニューメタルスエンドケミカルスコーポレーション]7g、DMSO93gを、超音波装置(ブランソン社製超音波ホモジナイザー「ソニファイヤー450型」)を用いて、10分間超音波処理を行った。
続いて、10000rpmで遠心分離を行い、未分散の凝集体を除去し、ダイヤモンドナノ粒子の分散液を作製した。分散液は、黒色透明で、粒子の分散状態は良好であった。ダイヤモンドナノ粒子のDMSO分散液を用いて、濃度を調整すると共に、分子量50万のポリアクリロニトリル樹脂を溶解し、ダイヤモンドナノ粒子3wt%、PAN7wt%、DMSO90wt%からなる紡糸液を作製した。紡糸液は、黒色透明で、粒子の分散状態は良好であった。
【0045】
この紡糸液を用い、実施例1(2)と同じ条件で、静電紡糸により繊維ウエブを形成し、続いて、か焼によりポリマーを除去した後、マイクロ波プラズマCVDを行い、ダイヤモンド繊維のみからなり、且つ繊維同士が接着した不織布を作製した。
不織布構成ダイヤモンド繊維の平均繊維径は250nmで、アスペクト比は1000以上であった。また、この得られたダイヤモンド繊維不織布は、熱伝導性及び取り扱い性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のダイヤモンド繊維は、不織布の用途に適用することができる。また、本発明の不織布は、硬度、弾性率、熱伝導性、及び/又は絶縁性を必要とする用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の製造方法を実施可能な紡糸装置の概要を示す説明図である。
【図2】条件1(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=1/10溶液)の紡糸液を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図3】図2に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図4】条件2(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液(PAN濃度7%に希釈)を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図5】図4に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図6】条件3(DMF溶媒のナノダイヤモンド/PAN=5/10溶液)の紡糸液(PAN濃度5%に希釈)を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図7】図6に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図8】条件4(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=1/10溶液)の紡糸液を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図9】図8に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図10】条件5(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液(PAN濃度7%に希釈)を用いて作製した繊維ウエブ(か焼前)を構成する複合微細繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図11】図10に示す繊維ウエブを構成する複合微細繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【図12】条件5(DMSO溶媒のナノダイヤモンド/PAN=3/10溶液)の紡糸液(PAN濃度7%に希釈)を用いて作製した繊維ウエブを、空気中でか焼することにより、ポリマー成分の除去を行ったか焼繊維ウエブについて、それを構成するダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維の構造を示す、図面に代わる顕微鏡写真(×1,000倍)である。
【図13】図12に示すか焼繊維ウエブを構成する、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維の構造を、更に高倍率で示す、図面に代わる顕微鏡写真(×10,000倍)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドのみから実質的になり、アスペクト比が200以上であることを特徴とする、ダイヤモンド繊維。
【請求項2】
請求項1に記載のダイヤモンド繊維を含む不織布。
【請求項3】
不織布を構成するダイヤモンド繊維同士が接着している、請求項2に記載の不織布。
【請求項4】
(1)ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程、
(2)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成する工程、及び
(3)前記複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を形成する工程
を含む、ダイヤモンド繊維の製造方法。
【請求項5】
(4)前記工程(3)で得られたダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維にCVDを行い、ダイヤモンド繊維を形成する工程
を更に含む、請求項4に記載のダイヤモンド繊維の製造方法。
【請求項6】
(1)ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程、
(2)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成する工程、
(3)前記複合微細繊維を集積して繊維ウエブを形成する工程、及び
(4)前記繊維ウエブを形成する複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブを形成する工程
を含む、ダイヤモンド繊維からなる不織布の製造方法。
【請求項7】
(5)前記工程(4)で得られたダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブにCVDを行い、ダイヤモンド繊維からなる不織布を形成する工程
を更に含む、請求項6に記載のダイヤモンド繊維からなる不織布の製造方法。
【請求項1】
ダイヤモンドのみから実質的になり、アスペクト比が200以上であることを特徴とする、ダイヤモンド繊維。
【請求項2】
請求項1に記載のダイヤモンド繊維を含む不織布。
【請求項3】
不織布を構成するダイヤモンド繊維同士が接着している、請求項2に記載の不織布。
【請求項4】
(1)ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程、
(2)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成する工程、及び
(3)前記複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維を形成する工程
を含む、ダイヤモンド繊維の製造方法。
【請求項5】
(4)前記工程(3)で得られたダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維にCVDを行い、ダイヤモンド繊維を形成する工程
を更に含む、請求項4に記載のダイヤモンド繊維の製造方法。
【請求項6】
(1)ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとを混合して、紡糸液を調製する工程、
(2)前記紡糸液を紡糸空間へ供給し、この紡糸液に電界を作用させることにより細径化して、ダイヤモンドナノ粒子とポリマーとの複合微細繊維を形成する工程、
(3)前記複合微細繊維を集積して繊維ウエブを形成する工程、及び
(4)前記繊維ウエブを形成する複合微細繊維からポリマーを除去して、ダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブを形成する工程
を含む、ダイヤモンド繊維からなる不織布の製造方法。
【請求項7】
(5)前記工程(4)で得られたダイヤモンドナノ粒子のみからなる繊維からなる繊維ウエブにCVDを行い、ダイヤモンド繊維からなる不織布を形成する工程
を更に含む、請求項6に記載のダイヤモンド繊維からなる不織布の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−191399(P2009−191399A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33253(P2008−33253)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【出願人】(502255047)株式会社ナノ炭素研究所 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【出願人】(502255047)株式会社ナノ炭素研究所 (4)
【Fターム(参考)】
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