説明

チタン−シリコン分子ふるいとその製造方法、及びその分子ふるいを用いたシクロヘキサノンオキシムの製造方法

【課題】チタン−シリコン分子ふるいとその製造方法、及びその分子ふるいを用いたシクロヘキサノンオキシムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法は、チタン源と、シリコン源と、遷移金属源と、テンプレート剤と、水と、を混合する工程と、前記混合物を加熱してゲル混合物を形成する工程と、水熱処理を行う工程と、前記水熱処理を経たゲル混合物を焼成し、チタン−シリコン分子ふるいを得る工程を含む。又、本発明のシクロヘキサノンオキシムの製造方法は、本発明のチタン−シリコン分子ふるいを触媒としてシクロヘキサノンオキシムを製造することで、高い転化率と選択率、並びに過酸化水素の高い使用率が得られる利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン−シリコン分子ふるいとその製造方法に関し、特に、遷移金属を有するチタン−シリコン分子ふるいとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶チタン−シリコン分子ふるい触媒は、チタン原子をシリカ(SiO)の網状構造中に導入したものであり、MFI構造の結晶形を有するものをTS-1分子ふるいと称し、MEL構造の結晶形を有するものをTS-2分子ふるいと称する。これら分子ふるいは、過酸化水素を酸化剤とした酸化反応において、すでに幅広く利用されている。その中、産業化された製造工程として、シクロヘキサノンアンモニアのオキシム化とフェノリックのヒドロオキシル化が挙げられる。
【0003】
工業上、シクロヘキサノンオキシムはカプロラクタムを生産する製造工程において、欠くことのできない中間体である。シクロヘキサノン、アンモニア及び過酸化水素を用い、チタン−シリコン分子ふるいを触媒とするシクロヘキサノンオキシムの製造方法が特許文献1(米国特許第4968842号)、特許文献2(米国特許第5227525号)、特許文献3(米国特許第5312987号)及び特許文献4(米国特許第6828459号)等に開示されている。これらの方法による製造は、簡単且つ酸性ヒドロキシルアンモニウム中間体を経由することを必要としないが、これらの製造方法のすべてにおいて過酸化水素の使用効率が89%〜90%の範囲に限定されており、この過酸化水素の使用効率を更に高め、製造コストを低減することが課題となっている。
【0004】
又、特許文献5(米国特許5290533号)と特許文献6(欧州特許第226258号)において、遷移金属を含有するチタン−シリコン分子ふるいを合成する方法が開示されている。しかしながら、この合成方法では、先に鉄源をアンモニア水で処理した後、水酸化物を沈殿させ、更に、この沈殿物を水洗、中和、濾過した後、テンプレート剤に溶解させた後、チタン−シリコン混合液と混合し、その後、加熱し、水を補給し、水熱により分子ふるいを製造する、というように、合成過程が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4968842号
【特許文献2】米国特許第5227525号
【特許文献3】米国特許第5312987号
【特許文献4】米国特許第6828459号
【特許文献5】米国特許第5290533号
【特許文献6】欧州特許第226258号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、これら先行技術の欠点を解消するために、有効な解決方法を提供し、分子ふるいの合成工程を簡素化し、シクロヘキサノンオキシムを製造する際に、シクロヘキサノンアンモニアオキシム化反応の性能と過酸化水素の使用効果を高めようとするものである。
【0007】
従って、分子ふるいの簡単な合成方法と、それにより得られた触媒を用いてシクロヘキサノンオキシムを製造する際に、オキシム化反応の性能と過酸化水素の使用効果を高めることは、急ぎ解決が望まれている課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上述の先行技術の欠点に鑑み、本発明は、チタン−シリコン分子ふるいの製造方法を提供する。この方法は、チタン源、シリコン源、遷移金属源、テンプレート剤及び水を有する混合物を準備する工程と、その混合物を加熱してゲル混合物を形成する工程と、そのゲル混合物に対して水熱工程を施す工程と、その水熱処理を経たゲル混合物を焼成し、チタン−シリコン分子ふるいを得る工程と、を含む。
【0009】
本発明の製造方法において、テンプレート剤とシリコンとのモル比は0.5以下である。使用される遷移金属源は、金属酸塩、アルコキシ金属化合物及び金属錯体から選ばれる。好ましくは、その遷移金属源は水中に溶解され、水溶液の形式でチタン源、シリコン源及びテンプレート剤を混入し、混合物を形成する。例えば、その遷移金属源は、アンモニアを含む水に可溶であるものが挙げられる。
【0010】
又、本発明のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法は、更に、ゲル混合物を形成した後、そのゲル混合物に水又はシリコンゾルを混入し、その後、水又はシリコンゾルを混入したゲル混合物に対して水熱処理を施す工程を含んでもよい。
【0011】
通常、前記シリコンゾルは、シリカゲルの水溶液であり、且つ、このシリカ(SiO)の含有量は、前記シリコンゾルの0.1〜50重量%の範囲である。又、前記シリコンゾルと、混合前の前記ゲル混合物の重量比は0.001〜0.5:1の範囲である。
【0012】
上記の製造方法により、本発明では、更に、チタン−シリコン分子ふるいを提供する。、この分子ふるいには、シリカ、酸化チタン、遷移金属酸化物が含まれ、チタン−シリコン分子ふるいのチタンとシリコンとのモル比は0.005〜0.1であり、遷移金属酸化物の遷移金属とシリコンとのモル比は0.00001〜0.05である。
【0013】
本発明は、他の態様として、更にシクロヘキサノンオキシムを製造する方法をも提供する。即ち、本発明のチタン−シリコン分子ふるいを触媒として用い、溶剤が存在する条件下で、シクロヘキサノン、アンモニア、過酸化水素を含む反応物を反応させて、シクロヘキサノンオキシムを形成する方法である。
【発明の効果】
【0014】
上記により本発明のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法は、ゲル混合物の形成前において、先に遷移金属源をチタン源、シリコン源及びテンプレート剤中に混入し、それにより得られたチタン−シリコン分子ふるいに遷移金属酸化物を含有させ、これによってこのチタン−シリコン分子ふるいを触媒として、シクロヘキサノンオキシムの製造に用いた際に、高い転化率と選択率、及び過酸化水素の高い使用率が得られる利点を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例2の触媒のX線スペクトルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、特定の具体的実施例により本発明の実施形態を説明する。これらの技術を熟知する者は、本発明の明細書に開示された内容により、簡単に本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、異なる形態により実施されることも可能であり、即ち、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明に異なる修正と変化を加えることも可能である。
【0017】
本発明は、チタン−シリコン分子ふるいの製造方法を提供するものであり、チタン源、シリコン源、遷移金属源、テンプレート剤及び水を有する混合物を準備する工程と、その混合物を加熱してゲル混合物を形成する工程と、そのゲル混合物に対して水熱処理を施す工程と、その水熱処理を経たゲル混合物を焼成してチタン−シリコン分子ふるいを得る工程と、を含む。
【0018】
通常、シリコン源とテンプレート剤を混合した後、チタン源と遷移金属源水溶液とを順次加える。ここで使用されるチタン源はテトラアルキルチタン酸エステルであり、例えば、テトラエチルチタン酸エステル、テトライソプロピルチタン酸エステル、又はテトラノルマルブチルチタン酸エステル等が挙げられる。シリコン源としては、テトラアルキルシリケート、又はポリエトキシシランが使用され、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラプロピルシリケート、テトラブチルシリケート等が挙げられ、ポリエトキシシランとしては、例えば、ES−28(n=1〜2)、ES−32(n=3〜4)、ES−40(n=4〜5)(Colcoat(株)社製品)等が挙げられる。本発明において使用されるチタン源とシリコン源の種類は上記に限定されるものではなく、本発明の製造方法においては、一種が選ばれ又は二種以上が組合されて使用される。
【0019】
本発明において使用されるテンプレート剤は、ノルマルプロピル水酸化アンモニウムの水溶液又はアルコール溶液であり、例えば、テトラノルマルプロピルアンモニウムブロマイドを水溶液又はアルコール溶液に溶解し、アニオン交換樹脂と接触させることによりテンプレート剤を得る。その中、アルコール溶液としては、炭素原子1〜5からなるアルコール類が使用され、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール及び第三ブタノールからなる群より一種又は二種以上の溶剤が選ばれて用いられる。又、溶剤中に溶解するテンプレート剤の濃度は5重量%〜50重量%の範囲であり、好ましくは20重量%〜40重量%の範囲である。尚、テンプレート剤とシリコンとのモル比は0.5以下である。
【0020】
上記の遷移金属源としては、金属酸塩、アルコキシ金属化合物と金属錯体などより選ばれ、水溶液の形態でチタン源、シリコン源及びテンプレート剤中に混入される。本発明において、遷移金属源の元素としては、周期表第IB〜VIIIBの一種又は二種以上の元素が使用され、好ましくは、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ルテニウム、パラジウム及びハフニウムが挙げられる。
【0021】
本発明の製造方法において、チタン源、シリコン源、遷移金属源、テンプレート剤及び水の混合物中、チタンとシリコンとのモル比は0.005〜0.1の範囲であり、好ましくは、0.015〜0.08の範囲であり、最も好ましくは0.02〜0.05の範囲である;遷移金属源とシリコンとのモル比は0.00001〜0.05の範囲であり、より好ましくは0.0003〜0.03の範囲であり、最も好ましくは0.0005〜0.02の範囲である;水とシリコンとのモル比は10〜80の範囲であり、より好ましくは20〜60の範囲であり、最も好ましくは30〜50の範囲である;テンプレート剤とシリコンとのモル比は0.1〜0.5の範囲であり、より好ましくは0.15〜0.45の範囲であり、最も好ましくは0.2〜0.4の範囲である。
【0022】
尚、本発明の製造方法は、ゲル混合物を形成した後、そのゲル混合物中に水又はシリコンゾルを混入し、次に、この水又はシリコンゾルを混入したゲル混合物に対して水熱処理を施す工程を更に含有してもよい。一般において、シリカゲルの水溶液の形態で混合され、且つ、そのシリカの含有量としては、そのシリコンゾルの0.1〜50重量%である。又、シリカゲル溶液としては、例えば、Dupont社が提供するLudox AS−40、Ludox AS−30、Ludox AM−30、Ludox TM−40、Ludox TM−50、Ludox HS−30、及びLudox HS−40、又は日産化学社が提供するSNOWTEX−40、SNOWTEX−50、SNOWTEX−C、SNOWTEX−N、SNOWTEX−20L、SNOWTEX−ZL、SNOWTEX−UP又はその組み合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、そのシリコンゾルと混合前のゲル混合物との重量比は、0.001〜0.5:1の範囲にある。
【0023】
上記の製造方法によると、本発明のチタン−シリコン分子ふるいは、シリカ;酸化チタン;及び遷移金属酸化物を含有するものであり、その中、チタン−シリコン分子ふるいのチタンとシリコンとのモル比は0.005〜0.1の範囲であり;遷移金属酸化物の遷移金属とシリコンとのモル比は0.00001〜0.05の範囲である。遷移金属酸化物の遷移金属原子は、分子ふるいの骨格構造内、又は骨格構造外に存在する。
【0024】
本発明は更に、シクロヘキサノンオキシムの製造方法を提供する。その方法としては、本発明のチタン−シリコン分子ふるいを触媒として用い、溶剤が存在する条件下、反応温度は40℃〜110℃の範囲で、より好ましくは50℃〜90℃の範囲において、1気圧の反応圧力で、シクロヘキサノン、アンモニア、過酸化水素を含む反応物を用いて反応させ、シクロヘキサノンオキシムを形成することを含むものであり、その中、アンモニアとシクロヘキサノンとのモル比は1.2:1〜2:1の範囲であり、より好ましくは1.4〜1.8の範囲である。過酸化水素とシクロヘキサノンとのモル比は0.7:1〜2.0:1の範囲であり、より好ましくは1.0〜1.5の範囲である。溶剤としては極性溶剤を用い、例えば、アルコール、ケトン及び水からなる群より一種又は二種以上の溶剤が選ばれ、最も好ましくは第三ブタノールが使用される。触媒の使用量は、反応物総重量の0.1〜10%を占める、より好ましくは1〜5%である。
【0025】
又、過酸化水素の濃度は、30〜70重量%の範囲であり、過酸化水素の供給方式としては、反応時間に従い段階的に反応系内に添加する。
【実施例】
【0026】
比較例1
この実例では、遷移金属源を添加せずチタン−シリコン分子ふるいを製造し、本発明の比較例とする。
【0027】
容量500mlの丸底フラスコに、真空システム内で窒素ガスを封入し、このフラスコにテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gを加え、温度を5℃まで冷却する。次に、無水イソプロパノール20gを加えると同時に攪拌を始め、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピル水酸化アンモニウム水溶液(20重量%)56gを一滴ずつ上記の溶液中に添加し、均一になるまで攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、次に、総重量が100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で水熱反応を120時間続ける。固体と液体を分離した後、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して触媒を得る。
【0028】
実施例
実施例1〜13は、各種金属酸化物のチタン−シリコン分子ふるいの合成について説明したものである。
【0029】
実施例1
V−TS−1(触媒A)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム下で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ内にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.932gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30.27gを一滴ずつ滴加し、1時間攪拌を続けた後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56.5gを一滴ずつ滴下し、反応完了後、酸化硫酸バナジウム0.19gを20mlの水中に溶かしてなるバナジウム源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量100gになるまで水を加えて、ゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離した後、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して触媒を得る。
【0030】
実施例2
Fe−TS−1(触媒B)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコにテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30gを一滴ずつ滴加し、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56gを一滴ずつ滴下し、完了後、三塩化鉄6水和物0.39gを20mlの水中に溶かしてなる鉄源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離する。固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。第1図にそのX線スペクトルを示す。本発明の実施例により製造された触媒は、測定の結果すべてMFI構造を有することが判った。
【0031】
実施例3
Co−TS−1(触媒C)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56gを一滴ずつ加え、完了後、酢酸コバルト4水和物0.0143gを20mlの水中に溶かしてなるコバルト源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離して、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0032】
実施例4
Ni−TS−1(触媒D)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.99gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30.6gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)57gを一滴ずつ加え、完了後、塩化ニッケル6水和物0.0012gを20mlの水中に溶かしてなるニッケル源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離して、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0033】
実施例5
Zn−TS−1(触媒E)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56gを一滴ずつ加え、完了後、硝酸亜鉛6水和物0.17gを20mlの水中に溶かしてなる亜鉛源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量が100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離して、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0034】
実施例6
Zr−TS−1(触媒F)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30.54gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)57gを一滴ずつ加え、完了後、硫酸ジルコニウム4水和物0.024gを20mlの水中に溶かしてなるジルコニウム源水溶液を一滴ずつ加え、均一になるまで攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量が100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離して、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0035】
実施例7
Ru−TS−1(触媒G)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30.14gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56gを一滴ずつ加え、完了後、含水塩化ルテニウム水和物0.016gを20mlの水中に溶かしてなるルテニウム源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量が100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離した後、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0036】
実施例8
Pd−TS−1(触媒H)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.94gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30.34gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56gを一滴ずつ加え、完了後、塩化パラジウム0.102gを20mlのアンモニア水中に溶かしてなるパラジウム源水溶液を一滴ずつ加え、完了後、更に1時間攪拌し、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量が100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離した後、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0037】
実施例9
Y−TS−1(触媒I)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30.05gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56gを一滴ずつ加え、完了後、酢酸イットリウム4水和物0.153gを20mlの水中に溶かしてなるイットリウム源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量が100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離した後、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0038】
実施例10
Hf−TS−1(触媒J)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.97gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30.13gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56gを一滴ずつ加え、完了後、硫酸ハフニウム0.154gを20mlの水中に溶かしてなるハフニウム源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離した後、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0039】
実施例11
Cr−TS−1(触媒K)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.97gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30.11gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56gを一滴ずつ加え、完了後、硝酸クロム9水和物0.002gを20mlの水中に溶かしてなるクロム源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離した後、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0040】
実施例12
Mn−TS−1(触媒L)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30.4gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)57gを一滴ずつ加え、完了後、硫酸マンガン0.001gを20mlの水中に溶かしてなるマンガン源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、総重量100gになるまで水を加えてゲル混合物を得る。このゲル混合物をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離した後、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、550℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0041】
実施例13
シリコンゾルを添加するFe−TS−1(触媒M)の製造
容量500mlの丸底フラスコに真空システム中で窒素ガスを封入し、この窒素ガスを封入した丸底フラスコ中にテトラノルマルブチルチタン酸エステル1.98gを加え、温度を5℃まで冷却し、温度が均一になった後、テトラエチルシリケート30gを一滴ずつ加え、1時間攪拌した後、テトラノルマルプロピルアンモニウム水酸化物のイソプロパノール溶液(20重量%含有量)56gを一滴ずつ加え、完了後、三塩化鉄6水和物0.23gを20mlの水中に溶かしてなる鉄源水溶液を一滴ずつ加え、均一に攪拌した後、85℃でアルコールを除去し、その後、Ludox AS-40 10.80gと水を総重量100gになるまで加えて混合溶液を得る。この混合溶液をオートクレーブ中に封入し、180℃で120時間水熱反応を行い、固体と液体とを分離した後、固体部分を中性になるまで水洗し、100℃で乾燥し、500℃で8時間焼成して標題の触媒を得る。
【0042】
実施例14
本実施例は、比較例1と実施例1〜8により合成した触媒を用いてシクロヘキサノンアンモニアのオキシム化反応を測定したものであり、その実施形態を下記に示す。
【0043】
触媒0.55gを三口フラスコ中に入れ、次に、シクロヘキサノン5g、第三ブタノール28.5g、及び28重量%濃度のアンモニア水溶液4.7gを加え、フラスコに冷却管と攪拌システムを取り付け、反応温度が60℃まで上昇した後、35重量%濃度の過酸化水素水溶液(ケトン:過酸化水素=1.0:1.0)4.96gを5時間の反応時間に従い反応系内に加え、過酸化水素の供給を完了した1時間後に、触媒と反応液を分離し、反応液の反応測定結果を分析し、その結果を下表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【数1】

【0046】
実施例15
本実施例は、比較例1、実施例2及び実施例9〜12により製造した触媒を用いてシクロヘキサノンアンモニアのオキシム化反応を測定したものであり、その実施形態を下記に示す。
【0047】
触媒0.55gを三口フラスコ内に入れ、シクロヘキサノン5g、第三ブタノール28.5g、及び濃度28重量%のアンモニア水4.7gを加え、冷却管と攪拌システムを取り付け、反応温度が60℃まで上昇した後、35重量%濃度の過酸化水素水溶液(ケトン:過酸化水素=1.00:1.05)5.20gを5時間の反応時間に従い反応系内に加え、過酸化水素の供給を完了した1時間後に、触媒と反応液を分離し、反応液について分析し、その反応測定の結果を下表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
実施例16
本実施例は、比較例1、実施例1、2、3、5及び13により製造した触媒を用いてシクロヘキサノンアンモニアのオキシム化反応を測定し、その実施形態を下記に示す。
【0050】
触媒0.55gを三口フラスコ中に入れ、シクロヘキサノン5g、第三ブタノール28.5g、及び濃度28重量%のアンモニア水4.7gを加え、冷却管と攪拌システムを取り付け、反応温度が60℃に上昇した後、濃度35重量%の過酸化水素水溶液(ケトン:過酸化水素=1.00:1.08)5.35gを5時間の反応時間に従い反応系内に加え、過酸化水素の供給を完了した1時間後に、触媒と反応液を分離し、反応液について分析し、その反応測定の結果を下表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
上記によると、本発明のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法は、ゲル混合物を形成する前に、先に遷移金属源をチタン源、シリコン源及びテンプレート剤中に混入し、これにより遷移金属酸化物を有するチタン−シリコン分子ふるいを得た。当該チタン−シリコン分子ふるいを触媒として、シクロヘキサノンオキシムを製造した際、高い転化率と選択率、ならびに過酸化物の高い使用率が得られる利点を示した。
【0053】
上記の明細書と実施例は、本発明に関する原理とその効果を例示的に説明するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明の特許権利範囲は特許請求の範囲に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン源と、シリコン源と、遷移金属源と、テンプレート剤と、水と、を有する混合物を準備する工程と、
前記混合物を加熱して、ゲル混合物を形成する工程と、
前記ゲル混合物に水熱処理を施す工程と、
前記水熱処理を経たゲル混合物を焼成し、チタン−シリコン分子ふるいを得る工程と、
を含むチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項2】
前記チタン源は、テトラアルキルチタン酸エステルである請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項3】
前記シリコン源は、テトラアルキルシリケート又はポリエトキシシランである請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項4】
前記テンプレート剤は、テトラプロピルアンモニウム水酸化物である請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項5】
前記テンプレート剤の濃度が5〜50重量%の範囲となるように前記テンプレート剤を溶剤に溶かし、且つ、前記溶剤はアルコール系溶剤であり、又、前記混合物を加熱する工程は、前記溶剤の除去を目的とする請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項6】
前記アルコール系溶剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール及び第三ブタノールからなる群より選択された一種又は二種以上である請求項5に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項7】
前記テンプレート剤とシリコンとのモル比は、0.5以下である請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項8】
前記遷移金属源は、金属酸塩、アルコキシ金属化合物及び金属錯体からなる群より選択される請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項9】
前記遷移金属源は、水に溶解した水溶液の状態で、チタン源、シリコン源及びテンプレート剤を混入して混合物を形成する請求項8に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項10】
前記遷移金属源は、アンモニアを含む水中に溶解した請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項11】
前記チタン−シリコン分子ふるいのチタンとシリコンとのモル比は0.005〜0.1であり、前記遷移金属とシリコンとのモル比は0.00001〜0.05である請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項12】
前記ゲル混合物を形成した後、更に水又はシリコンゾルを前記ゲル混合物に混入し、次に、この水又はシリコンゾルを混入したゲル混合物に水熱処理を施す請求項1に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項13】
前記シリコンゾルは、シリカ(SiO)ゲルの水溶液であり、且つ、前記シリカの含有量は、前記シリコンゾルの0.1〜50重量%の範囲である請求項12に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項14】
前記シリコンゾルと、混合前の前記ゲル混合物との重量比は、0.001〜0.5:1の範囲である請求項12に記載のチタン−シリコン分子ふるいの製造方法。
【請求項15】
シリカと、酸化チタンと、遷移金属酸化物と、を含み、チタンとシリコンとのモル比は0.005〜0.1であり、前記遷移金属酸化物の遷移金属とシリコンとのモル比は0.00001〜0.05であるチタン−シリコン分子ふるい。
【請求項16】
前記遷移金属酸化物の遷移金属原子は、前記分子ふるいの構造内又は構造外に存在する請求項15に記載のチタン−シリコン分子ふるい。
【請求項17】
請求項15に記載のチタン−シリコン分子ふるいを触媒として用い、溶剤の存在する条件下、シクロヘキサノンと、アンモニアと、過酸化水素と、を含む反応物を反応させてシクロヘキサノンオキシムを形成するシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項18】
前記アンモニアとシクロヘキサノンとのモル比は、1.2:1〜2:1の範囲である請求項17に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項19】
前記過酸化水素とシクロヘキサノンとのモル比は、0.7:1〜2.0:1の範囲である請求項17に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項20】
前記溶剤は極性溶剤であり、且つ前記極性溶剤は、アルコール、ケトン及び水からなる群より選択された一種又は二種以上である請求項17に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項21】
前記溶剤は、第三ブタノールである請求項20に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。
【請求項22】
前記触媒の使用量は、前記反応物の総重量当り0.1〜10%を占める請求項17に記載のシクロヘキサノンオキシムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−232891(P2012−232891A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−103479(P2012−103479)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(599004841)中國石油化學工業開發股▲分▼有限公司 (7)
【Fターム(参考)】