チューナブル共鳴格子フィルタ
【課題】選択的に可変である、共鳴波長の光線を反射することの出来るチューナブル共鳴格子フィルタを提供する。
【解決手段】フィルタは、回折格子3と、平面状導波路4と、フィルタをチューニングすることを許容し得るよう選択的に可変の屈折率を有する光透過性材料とを備え、該光透過性材料は、導波路に対するチューナブルクラッディング層5、好ましくは、液晶LC材料で形成する。回折格子3が平面状導波路4に対してチューナブル層5の反対側部に配置され、これによりフィルタのチューニング可能性に顕著に影響を与えずに、格子パラメータを所望のフィルタの帯域幅に特に合わせることができる。共鳴構造体1内にて、コア層4をチューナブル層と直接接触するか又はコアとチューナブル層との間に介在された相対的に薄い中間層と直接接触するチューナブル層5に近接する位置に配置することで、コア層4の有効屈折率を効率的に変化させることができる。
【解決手段】フィルタは、回折格子3と、平面状導波路4と、フィルタをチューニングすることを許容し得るよう選択的に可変の屈折率を有する光透過性材料とを備え、該光透過性材料は、導波路に対するチューナブルクラッディング層5、好ましくは、液晶LC材料で形成する。回折格子3が平面状導波路4に対してチューナブル層5の反対側部に配置され、これによりフィルタのチューニング可能性に顕著に影響を与えずに、格子パラメータを所望のフィルタの帯域幅に特に合わせることができる。共鳴構造体1内にて、コア層4をチューナブル層と直接接触するか又はコアとチューナブル層との間に介在された相対的に薄い中間層と直接接触するチューナブル層5に近接する位置に配置することで、コア層4の有効屈折率を効率的に変化させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、波長分割多重化光通信ネットワーク用に適応させたチューナブル共鳴格子フィルタに関する。特に、本発明は、波長分割多重化用の外部キャビティチューナブルレーザにおけるチューナブルミラーとして使用されるチューナブル共鳴格子フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
平面状導波路格子における誘導モード共鳴効果は、理想的な又はほぼ理想的な反射フィルタを製造するため利用することができる。フィルタのそれぞれの共鳴波長に等しい入射波長(又は周波数)の場合、入射光線は共鳴反射により支配され、また、装置を介しての伝送は阻止される。全てのその他の入射波長値に対し、装置は実質的に透明である。
【0003】
共鳴波長フィルタの性質は研究されている。アプライドオプティクス(Applied Optics)34巻(1995年)、p.2414にて出版されたワン(Wang)S.S.及びR.マグナッソン(Magnusson)による「多層導波路格子フィルタ(Multilayer waveguide−grating filters)」において、多層の薄膜層を有するような構造とされた共鳴反射フィルタが取り扱われている。J.Opt.Soc.Am.A(2000)、p.1241におけるドナルド(Donald)K.Jその他の者による「有限長さの狭小帯域誘電性共鳴格子反射フィルタの設計上の考慮事項(Design considerations for narrow−band dielectric resonant grating reflection filters of finite length)」において、共鳴格子反射フィルタの応答性を予見すべく多数散乱干渉導波路アプローチ法が開発されている。
【0004】
全体として、共鳴格子フィルタの構造体は、高屈折率領域及び低屈折率領域を有する回折格子であって、典型的に、層を支持する基層に配置された導波路層に設けられた上記回折格子を備えている。導波路層、すなわちコア層は、その内部にて離散モードが伝搬可能であるキャビティとして作用する。導波路の頂部における格子は入射照射平面波を導波路内の離散モードに結合する。
【0005】
IEEE量子エレクトロニクスジャーナル(Jounal of Quantum Electronics)33巻(1997年)p.2038にて出版されたローゼンブラッド(Rosenblatt)D、その他の者による「共鳴格子導波路構造体(Resonant Grating Waveguide Structures)」に説明されているように、共鳴格子導波路構造体が入射光ビームにて照射されたとき、そのビームの一部は直接、伝送され、また、一部は回折され、その後に導波路層内に実質的に取り込まれる。次に、導波路層内に取り込まれた光の一部は再回折され、このため、その光は光ビームの伝送された部分に干渉する。光ビームの特定の波長及び角度向きのとき、構造体は「共鳴する」、すなわち、直接、伝送された場と回折された寄与分との間にて完全な破壊的干渉が生じ、光は伝送されない。共鳴帯域幅は、深さ、負荷サイクル(ステップ幅対格子期間の比)、格子の屈折率の差及び導波路層の厚さのようなパラメータに基づく。帯域幅は、極めて狭小である(0.1nm程度)ような設計とすることができる。
【0006】
アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters)第77巻(2000年)p.1596にて出版された、G.レビ−ユリシタ(Levy−Yurista)及びA.A.フレーゼン(Friesem)による「多層構造の格子−導波路構造体を有する極狭小のスペクトルフィルタ(Very narrow spectral filters with multilayered grating−waveguide strctures)」において、格子層がエッチング過程の停止層としても機能する緩衝層により導波路層から分離される、共鳴格子導波路構造体が記載されている。導波路及び格子層を分離することにより、それらの厚さをより高度に最適化し且つ制御することが可能である。
【0007】
共鳴格子フィルタの共鳴波長は、構造体内の異なる層の屈折率を変化させることにより制御することができる。かかる屈折率の変化は、異なる位相の適合状態、従って、共鳴波長の偏位をもたらす。例えば、外部電界を印加することにより、屈折率の変化を誘発することができる。IEEE量子エレクトロニクスジャーナル、第37巻(2001年)、p.1030にて出版されたデュドビッチ エヌ(Dudovich N)その他の者による「活性な半導体利用の格子導波路構造体(Active Semiconductor−Based Grating Waveguide Structures)」には、InGaAsP/InP材料を有し且つ、逆電圧形態に基づく活性な格子導波路構造体が記載されている。
【0008】
チューナブル光フィルタは、光電気通信、特に、波長分割多重化(WDM)にて多数の用途を有する。WDMシステムにおいて、異なる波長を有する幾つかのチャネルが光ファイバを亙って伝送され、チャネルの各々が異なる情報を運ぶ。チューナブルフィルタは、1つの随意的なチャネルを選び且つろ過するため使用することができる。増大する光通信送信量に対応するため、50GHz、また最終的に25GHzのチャネル間隔を有する高密度WDM(DWDM)システムが開発中である。50GHzのチャネル間隔を有するDWDMシステムは、典型的に±2.5GHzの周波数精度を必要とする一方、25GHzを有するシステムは、全体として±1.25GHzの精度を必要とする。DWDMは、より狭小なチャネル間隔を使用するから、異なるチャネル間のクロストークを回避するため、フィルタの通過帯域も狭小でなければならない。
【0009】
共鳴格子フィルタは、共鳴状態から形成された固有波長の選択度が相対的に大きく、このため、原理上、狭小なFWHM(理想的には0.1nm又はより低い)を可能にするので、WDMシステムにて適用されるチューナブルフィルタとして特に適している。
【0010】
LEOS 2002年、会議録p.825にて出版されたフア・タン(Hua Tan)その他の者による「チューナブルサブ波長共鳴格子光フィルタ(A Tunable Subwavelength Resonant Grating Optical Filter)」には、フィルタのクラッディング層として配置された液晶(LC)層をチューニングすることにより、共鳴波長のチューニングが為される共鳴格子フィルタが記載されている。17nmのチューニング範囲が実現されたが、シミュレーションの結果、LCフィルタは、55nmのチューニング範囲及び0.1nmの帯域幅を実現する可能性を有することが分かった。
【0011】
チューナブル光源としてレーザを使用することは、WDM及びDWDMシステムの形態変更の可能性を大幅に向上させる。例えば、単に波長をチューニングするだけで異なるチャネルを1つのノードに割り当てることができる。
【0012】
チューナブルレーザ、分布ブラッグ反射器レーザ、可動の頂部ミラーを有するVCSELレーザ又は外部キャビティダイオードレーザを提供すべく異なる方策を使用することができる。外部キャビティチューナブルレーザは、高出力パワー、広いチューニング範囲、優れたサイドモードの抑制及び狭い帯域幅のような幾つかの有利な効果を提供する。機械的に調節可能であり又は電気的に起動されるキャビティ内セレクタ要素のような、外部キャビティ波長の選択を提供するための色々なレーザチューニング機構が開発されている。
【0013】
波長の選択及びレーザキャビティのチューニングは、能動的なチューナブルミラーを使用することにより実行することができる。米国特許明細書6,215,928号には、平面状導波路に形成された回折格子と、回折格子の隙間を少なくとも充填するクラッディング層とを有する能動的なチューナブルミラーが記載されている。クラッディングは、電子光学的にチューニング可能である液晶材料にて形成することができる。電子光学的に制御された要素に供給される電圧又は電流を変化させることにより、共鳴波長を偏位させることができる。
【0014】
米国特許明細書6,205,159号には、液晶ファブリー・ペロー(LC−FP)干渉計への電圧を変化させることにより、個別の組みの波長にチューニングする外部キャビティ半導体レーザが開示されている。チューニング可能である個別の組みの波長は、静止キャビティ内エタロンによって画成される。静止キャビティ内エタロンの自由スペクトル範囲(FSR)は、LC−FP干渉計の分解能帯域幅よりも広くなるような設計とされている。静止エタロンのFWHM線幅は、外部キャビティの長手方向モード間隔よりも狭くなければならない。
【0015】
当該出願人は、共鳴格子フィルタの導波路の厚さ、又は格子層の厚さ又は格子期間のような構造的パラメータは、例えば、30ないし40nm以上のような相対的に広いチューニング範囲及び100GHz(0.8nm)以下であることが好ましいFWHMにおける相対的に狭小な帯域幅を有するフィルタを得るために極めて重要であり、かかる相対的に狭小な帯域幅は、例えば、100GHzの隔てたチャネルを有するエルビウムC帯域内にて作動するWDMシステムのようなチューナブルレーザにおけるチューナブル要素として必要とされる。
【0016】
日本国特許出願明細書63−244004号には、偏向要素又は収束レンズを製造するため使用することができる導波路格子要素が記載されている。記載された装置において、光は、導波路に沿って横方向に入射する。LC材料の屈折率の変化は、光の偏向角度の変化を誘発させ、また、内部から印加された電圧によって、その出力光の角度を制御することが可能である。
【0017】
同様に、米国特許明細書5,193,130号には、電圧信号が導波路層の表面付近にてLC層の心合わせ方向を変化させる光偏向装置が開示されている。記載された装置において、導波路に沿って伝搬する導波路光は、LCに照射される第一の光と、格子が存在するため基層に向けて照射される第二の光という2つの光ビームに分離される。導波路層の外部にて照射した光の方向は、電圧信号を印加することにより変化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、選択的に可変である共鳴波長にて光線を反射することのできるチューナブル共鳴格子フィルタに関するものである。該フィルタは、低(屈折)率領域と、高屈折率領域とを有する、周期的構造体、すなわち回折格子と、平面状導波路と、フィルタをチューニングすることを許容し、また、導波路に対するチューナブルクラッディング層を形成する、選択的に可変の屈折率を有する光透過性材料とを備えている。光透過性材料は、電子光学的光透過性材料、より好ましくは、液晶(LC)材料であることが好ましい。
【0019】
共鳴格子フィルタの光学的性質は、格子層の厚さ、導波路層の厚さ、又は格子の低屈折率領域と高屈折率領域との間の屈折率の差のような構造的特徴によって支配される。当該出願人は、装置の構造的特徴を適宜に選ぶ結果、狭小な帯域幅と、広範囲のチューナビリティとの間にて有用な兼ね合いが得られることが分かった。
【0020】
当該出願人は、回折格子を平面状導波路に対してチューナブル層の反対側部に配置することにより、フィルタのチューニング可能性に顕著に影響を与えずに、格子の構造的パラメータをフィルタの応答性の所望の帯域幅に特別に合うようにすることが可能であること知った。換言すれば、導波路の下方にて回折格子を有する共鳴構造体は、所望のチューニング範囲を実現しつつ、帯域幅分解能に必要とされるように、相対的に小さい結合効率を有する適宜な格子構造体を選ぶときの自由度を可能にする。この共鳴構造体内にて、コア層、すなわち導波路は、チューナブル層と直接接触し、又はコアとチューナブル層との間に介在させた相対的に薄い中間層と直接接触してチューナブル層に近接する位置に配置することができる。コア層がチューナブル層に近接していることは、伝搬モードをチューナブル層内に顕著に伸ばして、導波路内の基本モードの有効屈折率がチューナブル層の屈折率の変化により、効率良く影響を受けるようにすることが可能であることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
当該出願人は、相対的に狭小な帯域幅を呈する共鳴フィルタを得るためには、相対的に低い結合効率を有する格子であることが望ましいことが知見した。好ましくは、FWHMにて約0.6nm以下の帯域幅(特に、50GHzチャネル間隔を有するチューナブルレーザDWDMシステムに適している)を得るためには、結合係数は、約0.0026以下でなければならない。より好ましくは、結合効率は、約0.001ないし0.002の範囲にあるものとする。
【0022】
チューニング範囲は格子パラメータの変化による影響を受ける度合いが小さいことが実証されているから、コア層が格子とチューナブル層との間に介在される共鳴格子構造体を製造することにより、構造的パラメータの幾つかの製造許容公差を緩和することができる。更に、弱い格子、すなわち0.0026以下の結合係数を有する格子を得るために、薄い厚さの格子、すなわち150ないし200nm以下の格子を製造する必要はない。
【0023】
本発明のチューナブル共鳴格子フィルタは、50GHz及び25GHzのチャネル間隔の設計を有するDWDMシステムに対し外部キャビティチューナブルレーザにて適用するのに特に適している。本発明のチューナブル共鳴格子フィルタは、エルビウムC帯域(1530ないし1570nm)の全体に亙ってチューナブルであるようにすることができる。
【0024】
その形態の1つにおいて、本発明は、チューナブル共鳴格子フィルタを備える外部キャビティチューナブルレーザに関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】共鳴格子フィルタの層構造体と、直角に入射する光線に対する関連する入射波及び回折波とを示す簡略図である。
【図2】図2(a)ないし図2(c)は、異なる値のコア層の厚さに対する回折格子の厚さの関数として共鳴格子フィルタのFWHMにおける計算帯域幅を示す図である。図2(a)において、屈折率の差ΔnG/nGは、0.26であり、図2(b)において、0.07、図2(c)において、0.04である。
【図3】コアと格子層との間に「空隙」層を備える共鳴格子フィルタを示す層構造体の概略図である。
【図4】0nm(空隙層無し)ないし300nm(コア層の厚さは全ての曲線について同一である)の範囲内の異なる値の空隙層の厚さに対する回折格子厚さの関数として、図3に示した型式の共鳴格子フィルタのFWMH計算帯域幅を示す図である。
【図5a】図5aは、異なる2つの値のチューナブル層の屈折率n1、すなわちn1=1.5(a)およびn1=1.7(b)に対する図1の型式の共鳴格子フィルタ構造体における異なる層に対して正規化した光モード分布状態(実線)の図である。
【図5b】図5bは、異なる2つの値のチューナブル層の屈折率n1、すなわちn1=1.5(a)およびn1=1.7(b)に対する図1の型式の共鳴格子フィルタ構造体における異なる層に対して正規化した光モード分布状態(実線)の図である。
【図6】コアとチューナブル層との間に「中間」層を備える共鳴格子フィルタの層構造体を示す簡略図である。
【図7】0nm(すなわち中間層無し)ないし200nmの範囲にある異なる厚さの中間層厚さに対するコア層の厚さの関数として、チューニング範囲の計算値を示す図である。
【図8】本発明の1つの実施の形態に従った共鳴格子フィルタの層構造体を示す概略図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、図1に示した型式の構造体の光学的性質と、中間層が無い図8に示した構造体の光学的性質とを比較する図である。図9(a)にて、FWHMにおける帯域幅は、格子の厚さの関数として示される一方、図9(b)にて、チューニング範囲は常に格子の厚さの関数として示されている。
【図10】本発明の更なる実施の形態に従った共鳴格子フィルタの層構造体を示す簡略図である。
【図11】回折格子の「強度」に依存するFWHMの一例としての結合効率の関数としてFWHMにおける帯域幅の計算値を示す図である。
【図12】図12(a)及び図12(b)は、異なる値の空隙層の厚さに対する回折格子の厚さの関数として、図10に示した型式の共鳴格子フィルタのFWHM帯域幅の計算値(a)及びチューング範囲(b)を示す図である。
【図13】0nm(すなわち空隙層無し)ないし300nmの範囲に亙る異なる値の空隙層の厚さに対する図3に示した型式の共鳴格子フィルタの格子の厚さの関数として、チューニング範囲の計算値の比較を示す図である。
【図14】本発明の1つの実施の形態に従った格子共鳴フィルタを有する外部キャビティチューナブルレーザの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
当該出願人は、図1に概略図にて示した型式の共鳴格子フィルタ構造体(共鳴構造体とも称される)を研究した。共鳴構造体1は、導波路、すなわち下方のクラッディング層5に形成されたコア層4と、それぞれ屈折率nL及びnHを有する低屈折率領域6及び高屈折率領域7を含む回折格子層3とを備えている。格子の低屈折率領域と高屈折率領域との間の屈折率の差、ΔnG/nG1は、次式のように画定される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、nGは格子の屈折率の平均値、Fは格子の負荷サイクルである。
クラッディング層2は、格子3上に形成され、該クラッディング層は、チューナブル材料、好ましくは、相対的に広範囲の選択可能な屈折率を有するLC材料にて形成されるものとする。コア層4の屈折率、nc、取り囲む層よりも大きく、光モードを導波路に沿って閉じ込めることを保証する。層5は、選択的に基層(図示せず)上にて成長させ又はそれ自体を基層とし成長させる(機能する)ようにしてもよい。例えば、コア層4は、Si3N4にて形成することができ、層5は(非添加)SiO2にて形成し、Si基層(図示せず)上にて成長させることが好ましい。これと代替的に、層5はガラス基層とし、該ガラス基層にてコア層が成長するようにしてもよい。
【0029】
フィルタの主方向を基準にするデカルト座標系(x、y、z)を画定し、Z軸が導波路の主要面に対して直角となるようにすることにより、光ビームが構造体1に衝突するとき、光は格子3によって回折される。図1に示した実施例において、入射は構造体に対し直角である、すなわちZ方向に沿う。格子は、ゼロ順位(zero order)及び第一回折順位(first diffracted order)のみが導波路内を伝搬するのを許容されるよう期間Λにて設計する。その他の全ての回折順位は一過性である。ゼロ順位は、多層構造体を亙ってZ方向に沿って伝搬する一方、第一の回折順位は、主として格子期間及びコアの屈折率に依存する回折角度にてコア領域内を伝搬する。回折角度がコア層4と取り囲む層(当該方策にて、格子は小さい摂動として取り扱われ、従って1つのインタフェースとみなされる)の間にてインタフェース8、9により画定された臨界角度を上廻るならば、その回折順位はx軸に沿って導波路内を伝搬する。異なる屈折率の2つの層間のインタフェースの臨界角度は、全反射が生じる最小角度として画定される、すなわち、図1において、sinΘ1,3=n1,3/nCである。
【0030】
共鳴状態下にて、入射光は、x軸に沿ってコア層内を伝搬する基本モードと結合される。x軸に沿って画定された伝搬定数β ̄(実際はバーはβの直上に位置する)にて伝搬する光は、周期的摂動(格子)により回折され、再度、導波路から出る。周期的摂動は、z方向に戻る光を共鳴波長にてz軸に沿って形成される反射と結合する。その他の全ての波長は、装置を通じて実質的に伝送される。共鳴時、共鳴キャビティのように振舞う定在波が導波路の層内に発生され、この共鳴キャビティ内にて光は、全内反射により閉じ込められ、これに伴ってエネルギーが蓄積する。
【0031】
共鳴が生じるためには、格子−コアのインタフェースにおける接線方向への、すなわちx軸に沿った基本モードのβ ̄の値は次式によって与えられる。
【0032】
【数2】
【0033】
ここで、kiXは入射ビームの波数のx方向に沿った成分であり、kgは次式により画定される格子の波数である。
【0034】
【数3】
【0035】
ここで、Λは格子期間である。当該事例におけるように、我々は、直角の入射kiX=0と考える。このため、基本モードの伝搬定数と格子期間との間の関係は、次式により与えられる。
【0036】
【数4】
【0037】
図1には、光ビームの直角の入射を示し且つ説明したが、直角の入射状態は必ずしも必要な条件ではない。角度θの入射と考えるならば、共鳴状態は、特定の共鳴波長λ0及び角度θ0にて生ずるビームの角度方向も考慮する必要がある。
【0038】
共鳴波長λ0は、次式によって与えられる固有値問題の自明解ではないことは解っている。
【0039】
【数5】
【0040】
ここで、tCは導波路(コア)の厚さ、uはコア内を伝搬する波のモードパラメータ、w2、w5はクラッディング層2、5(図1)のモードパラメータである。モードパラメータは、次の等式により表わすことができる。
【0041】
【数6】
【0042】
【数7】
【0043】
ここで、λは入射光の波長である。
横共鳴のマルチパス干渉アプローチ法に従い、共鳴時の構造体のスペクトル応答性の帯域幅の分析学的表現を格子及び導波路のパラメータの関数として、誘導することが可能である。コア層内の第一回折順位の反射効率は、次式のように、回折順位ηdが経験する有効な格子強度の項にて表現することができる。
【0044】
【数8】
【0045】
ここで、φ(λ)は、導波路領域内にて回折順位が経験する往復相であり、キャビティの光路と関係した相偏位、2つのコアのインタフェースにおける2つの境界反射及び回折に起因する結合を含む。このため、共鳴波長λ0付近の波長λ(及びθ0に近い角度)におけるスペクトル振舞いは、全体としてローレンツ関数である。
【0046】
有効格子強度ηdは、格子の回折順位への結合効率を表わし且つ、波長、回折順位、入射回折角度及び格子の厚さtG、屈折率の差ΔnG/nG及び格子期間Λのような格子のパラメータに依存する。回折が第一順位でのみ生じる場合、結合効率は、第一回折順位効率に相応し、また、入射光パワーに対する第一順位の伝搬モードの光パワーの比によって表現することができる。基本的に、結合効率は、光を空間内にて一方向に方向変更する格子(カプラー)の効果の程度を明らかにする。以下、有効格子強度を、結合効率として説明する。
【0047】
2分の1の強度を発生するφ(λ)の変化は、次式によるFWHMの位相の散逸帯域幅を与える。
【0048】
【数9】
【0049】
位相の散逸帯域幅は、次式のように接線方向成分の変化として表現することもできる。
【0050】
【数10】
【0051】
ここで、k0はピーク波長λ0における自由空間内の波数であり、dφ/dβはモード位相の散逸率として画定され、また、接線方向成分に対する位相の変化率を表す。モード位相の散逸率は、次式のように画定される。
【0052】
【数11】
【0053】
全体として、コアとクラッディング層との間の相対的に大きい屈折率の結果、モード位相の散逸率は相対的に大きい値となり、このため、FWHMにて相対的に小さい値の帯域幅となる[等式(10)を参照]。
【0054】
等式(10)は、帯域幅がηdの減少と共に減少し、また、モード位相の散逸率の減少を示す。このため、比較的小さい値のηdを有する格子を備える構造体は、スペクトル応答性の相対的に狭い帯域幅を呈する。回折されたモードへの結合効率ηdの値が小さいことを特徴とする格子は、「弱い」格子とも称し、これらの格子は伝搬する回折モードが経験するような相対的に低い格子強度を有することを示す。
【0055】
図2(a)ないし図2(c)には、3つの異なる値のコアの厚さ、すなわちtc=200nm(太い実線)、300(一点鎖線)及び400nm(四角を付した細い実線)の格子厚さtGの関数として、図1に示した型式の共鳴構造体のFWHMにおける計算帯域幅が示してある。計算するとき、次のパラメータを想定した。コア層4の屈折率nc=1.96である一方、格子3のクラッディング層5及び領域6(低屈折率領域)の双方の屈折率はnL=n3=1.445である。格子の高屈折率領域7の屈折率は、図2(a)ないし図2(c)のグラフにて3つの異なる値をとる。図2(a)は、屈折率の差ΔnG/nG=0.26である一方、図2(b)において、ΔnG/nG=0.07及び図2(c)においてΔnG/nG=0.04である。FWHMの計算は等式(10)から誘導した。計算したときの参照波長は1.55μmである。
【0056】
全体的な考慮として、FWHMは、格子厚さtGの増大と共に増大することが観察される。しかし、その増大は、相対的に小さい屈折率の差(ΔnG/nG=0.07、0.04)の場合よりも、相対的に大きい屈折率の差(ΔnG/nG=0.26)の場合の方が遥かに顕著である。ΔnG/nG=0.26の場合、tGは急激に増大することが観察され、例えば、格子の厚さが50nmから80nmまで増大する結果、FWHMの帯域幅は2倍以上、増大することになる[図2(a)]。図2(a)に図示しないが、ΔnG/nG=0.26の場合、格子の厚さが約200nmの値である結果、FWHMは20nmとなる。これに反して、ΔnG/nG=0.04の場合、200nm又はそれ以上の格子の厚さは、FWHMの値が0.5nm以上となることを保証する。
【0057】
図2(a)ないし図2(c)に示した結果から、我々は、FWHMにて相対的に小さい帯域幅、すなわち、例えば、50GHzチャネル間隔のDWDM用途用のチューナブルレーザにて必要とされるように、0.6nm以下の帯域幅を有するためには、格子は極めて薄い厚さとなる、すなわち格子の屈折率の差が相対的に大きいならば、30nm以下であり、又は屈折率の差が相対的に小さいならば、すなわち図示した例において、約0.07以下となるように選ぶ必要があるものと推定する。
【0058】
相対的に大きい屈折率の差ΔnG/nG(例えば、0.26)を許容するであろう、数10nm(例えば、30nm)のtGを有する図1の共鳴構造体にて格子を選ぶ第一の選択の結果、特に、化学的気相成長法又はエッチングのような殆どの技術は、数ナノメートルの製造許容公差を有することを考慮するならば、格子の製造は特に煩雑となるであろう。他方、0.05以下、好ましくは、0.03ないし0.04の範囲の小さい屈折率の差を選ぶことは、少なくとも150ないし200nmの厚さを有する格子を製造することを許容することになる。
【0059】
図2(a)ないし図2(c)には、コアの厚さtcの増大のため、格子の厚さ、及び格子の屈折率の差の所定の値に対するFWHMが減少することが示されている。より全体的には、コア層の相対的に厚い厚さ及び(又は)クラッディング層の屈折率と比較して大きいコアの屈折率は、FWHMにて相対的に小さい帯域幅を発生させることになる。しかし、屈折率の差が大きい場合[図2(a)]、コアの厚さが400nmで、FWHMの帯域幅が0.5nm以下のとき、格子厚さは、僅かに40nm以下の厚さとなる。
【0060】
より全体的には、FWHMにて小さい帯域幅によるスペクトルの応答性は、「弱い」格子、すなわち結合効率ηdが相対的に小さい値の格子を有する構造体にて実現することができる。薄い格子構造体(小さいtG)又は小さい屈折率の差(小さいΔnG/nG)を有する格子構造体を選ぶことにより、弱い構造体を得ることができる。双方の条件を満足させることは、格子の強度が低下することが理解される。
【0061】
空隙層と称される層をコア層と格子層との間に挿入することにより、小さい格子の結合効率を実現することができる。空隙層が存在することは、モードの場と周期的領域との重なり合いを減少させ、これによりその場の回折効果を低下させることになる。図3には、コア層と格子層との間に配置された空隙層10を含む共鳴構造体12が概略図的に示されている。該構造体は、チューナブル層2に対するカバー板として機能するガラスシート11も備えている。光透過性材料がLC材料である場合、カバー板が好まして。図1に示したものに相応する共鳴構造体の要素に対し同一の参照番号が使用されており、更なる詳細な説明は省略する。
【0062】
図4には、0nm(すなわち、空隙層が存在せず、このため構造体は図1に示したものと等価的である)ないし300nmの範囲に亙る空隙層t空隙の異なる厚さの値に対する、格子の厚さtGの関数として、図3の共鳴構造体のFWHMにおける帯域幅が示されている。FWHMの計算は等式(10)から誘導し、この場合、次のような構造的パラメータであると想定した。すなわちΔnG/nG=0.26、tc=200nm、Λ=950nm、nc=1.96(Si3N4)、n3=1.445(非添加SiO2)。当該実施例において、空隙層は、SiO2から成っている。t空隙=0nmのときの曲線は、tc=200nmのときの図2(a)に示した曲線に相応する。これらの結果は、FWHMの値は空隙層の厚さの増大と共に減少することを示す。例えば、tG=30nmの格子厚さの場合、t空隙=300nmに対するFWHMの値は、t空隙=0のときの値よりも約1.7倍小さい。
【0063】
適宜な帯域幅、例えば、DWDM用途に適合可能な帯域幅を有するスペクトル応答性を持つことに加えて、共鳴格子フィルタは、広範囲のチューニング可能性、すなわち大きいチューニング範囲を呈する必要がある。好ましくは、チューニング範囲は、例えば、エルビウムC帯域をカバーするチューニング範囲を必要とする用途の場合、10nm以上、より好ましくは、30ないし40nm以上であるものとする。
【0064】
チューニング可能性とは、共鳴格子フィルタ内にて共鳴波長が偏位することを意味する。共鳴波長を偏位させるためには、固有値問題(等式5)の解を偏位させる必要がある。共鳴状態を変化させる、すなわち共鳴波長を偏位させる1つの方法は、コア中の伝搬モードの有効屈折率neffに影響を与える共鳴構造体の層の1つにおける屈折率を変化させることによる。
【0065】
第1の近似法(a first approximation)に対し、共鳴帯域幅λ0は次式にて表わすことができる。
【0066】
【数12】
【0067】
ここで、Λは格子期間である。次に、共鳴波長のチューニング範囲Δλ0を次式によって与えることができる。
【0068】
【数13】
【0069】
これは、Δλ0と伝搬モードの有効屈折率Δneffの変化との直接的な比例関係を示す。
コア層及び周期的構造体(格子)は、チューナブル層、すなわち屈折率が共鳴帯域幅をチューニングし得るよう変化する層に対する優れた選択対象物ではなく、それは、それらの屈折率の変化は、FWHMにて帯域幅に強力に影響を与え、これにより、異なる共鳴帯域幅における構造体のスペクトル応答性の均一さを妨害するであろうからである。
【0070】
このため、共鳴構造体のクラッディング層の屈折率を変化させることにより、チューニングを実現し得ることが好ましい。図1の共鳴構造体において、チューナブル層は、広範囲に亙る選択可能な屈折率を有する液晶(LC)材料にて出来たものであることが好ましいクラッディング層2である。LCの屈折率n1は、該層に印加される電界に応答して変化し、共鳴格子構造体が電気的にチューナブルであるようにする。
【0071】
当該出願人は、効率的なチューニング可能性を実現するためには、伝搬モードの光学的モードプロフィールは、チューナブル層を顕著に重なり合わせ得るよう空間的に伸びる必要があることが分かった。この要領にて、チューナブル層の屈折率n1の変化は、導波路内の伝搬モードの有効屈折率neffが顕著に変化することになろう。図5(a)及び図5(b)には、図1に示した型式の共鳴構造体の異なる層に対する光学モードプロフィールの2つの例が示されている。図5(a)及び図5(b)において、共鳴構造体は、LC材料を覆うガラス板を備えている。モードの場は、有限差分時間領域技術に基づく商業的ソフトウェアにより計算した。基本的光学モードの大きさは、図5(a)及び図5(b)の頂部分に示されている。シミュレーションにて想定した構造的パラメータは次の通りとした。すなわち、ΔnG/nG=0.26、tc=200nm、Λ=950nm、nc=1.96(Si3N4)、n3=1.445(非添加SiO2)、tG=30nm。チューナブルクラッディング層(LC材料)の屈折率n1は、1.5から1.7に変化する。図5(a)において、n1=1.5である一方、図5(b)において、n1=1.7である。共鳴構造体の基本的伝搬モードは、偽ガウスであり、チューナブル層内に伸びて、層内へのモードの空間的重なりを表わす「テール」を呈する。LC層内への重なり合いの程度及び基本モード曲線の形状は、図5(a)及び図5(b)を比較することで理解し得るように、屈折率n1の変化による影響を受ける。n1=1.5のとき、計算有効屈折率neffは、1.5995となる一方、n1=1.7のとき、neffは、1.6505であった。等式(13)から、48.5nmに等しいチューニング範囲Δλ0を誘導することが可能である。
【0072】
格子の厚さtGを上記の実施例の場合のように30nmではなくて、200nmである点を唯一の相違点として、図5(a)及び図5(b)の実施例のものと等価的である構造体に対し、基本伝搬モードの有効屈折率の計算を行った。有効屈折率の変化は、計算によって0.02291であるとされ、これは、図5(a)及び図5(b)の実施例におけるよりも2倍以下の22.9nmのΔλ0に相応する。このことは、図1に示した型式の構造体内にて、コア層とチューナブル層との分離が増すに伴い、チューニング可能性を向上させ、これにより基本モードがチューナブル層内に重なり合う程度に影響を与え得るよう薄い厚さを有する格子であることが好ましい。上述したように、かかる薄い厚さ(例えば、30nm)のような格子は、技術的にしばしば臨界的である。
【0073】
当該出願人は、本明細書にて説明した層を格子層とチューナブル層との間の中間層として挿入することはチューニング可能性に影響を与える可能性があることが分かった。図6には、格子層3とチューナブル層2との間に配置された中間層13を有する共鳴格子構造体14が概略図的に示されている。中間層は、コア層よりも小さい屈折率を有する必要がある。図1に示したものに相応する共鳴格子構造体の要素に対し同一の参照番号が使用されており、それらの詳細な説明は省略する。
【0074】
格子とチューナブル層との間の中間層は、特定の共鳴フィルタの設計にて見ることができる。中間層は、例えば、チューナブル層を制御する電極として使用し得るよう例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)で出来たもののような光透明な導電層とすることができる。これと代替的に、チューナブル層を形成する光透過性材料のその下方の層への接着を向上させるよう中間層を介在させてもよい。光透過性材料がLC材料である場合、例えば、ポリイミドで出来た中間層を心合わせ層としてLCと接触するよう配置することができる。
【0075】
図7において、図6に示した型式の構造体のチューニング範囲は、導波路(コア)の厚さtcの関数として示されており、この厚さtcは、中間層の厚さの異なる値に対し、その値が0nm(すなわち中間層無し)ないし200nmの範囲にあるものとする。チューニング範囲は、有限差分時間領域ソフトウェアを使用し且つ等式(13)によって計算する。曲線を計算する際に考慮した構造的パラメータは、ΔnG/nG=0.26、Λ=950nm、nc=1.96、n3=1.445、tG=30nm、Δn1=0.2であり、ここで、n1は1.5ないし1.7の範囲にある。中間層は、この実施例にてSiO2にて出来ているものとした。結果から、チューニング範囲はコアの厚さの増大に伴い減少することが分かる。更に、所定のコア厚さのとき、チューニング範囲は、中間層の厚さの増大に伴い減少する。
【0076】
図7に示した結果から、チューニング可能性は、コアの厚さtcにより及び(又は)格子層とチューナブル層との間に配置された中間層が存在することにより顕著に影響を受けることが明確に分かる。その双方の場合、これは、導波路内の伝搬モードの中心がチューナブル層からより遠方となり(通常、基本モードの中心はほぼコアの中心にある)、このため、チューナブル層内に顕著に重なり合い、これにより有効屈折率を効率良く変化させることができないためである。
【0077】
図2(a)ないし図2(c)に示した結果を図7に示した結果と比較することにより、当該出願人は、相対的に厚いコア層はスペクトル応答性が相対的に狭い帯域幅にとって望ましい一方、相対的に薄いコア層は、広範囲のチューニング可能性にとって望ましいことが分かった。一例として、ΔnG/nG=0.04及びtG=200nmを有する格子を選ぶことにより、FWHMにて0.4nmの帯域幅を有するために必要とされるコア厚さtcは約220nmである。しかし、かかるコア厚さは、チューニング範囲が25nmであることを意味する(構造的パラメータは上述した図面に示した計算のものに等しいものと想定する)。このチューニング範囲は、例えば、少なくとも30nm及び好ましくは、40nm以上のチューニング範囲が必要とされる、C帯域の波長領域内にて作動するDWDMシステム内の適用例にとって適当ではないであろう。
【0078】
当該出願人は、回折格子を平面状導波路に対しチューナブル層の反対側部に配置することにより、フィルタのチューニング可能性に顕著に影響を与えることなく、格子の構造的パラメータをフィルタの応答性の所望の帯域幅に特に合わせることが可能であることが分かった。換言すれば、格子とチューナブル層との間に配置された導波路を含む共鳴構造体は、所望のチューニング範囲を実現しつつ、帯域幅の分解能に対し必要とされるように、相対的に小さい結合効率を有する適宜な格子構造体を選ぶとき、自由度を許容する。
【0079】
コア層は、チューナブル層と又はコアとチューナブル層との間の1つ又はより多数の介在された相対的に薄い中間層と直接的接触する、チューナブル層に近接する位置に配置することができる。中間層は、チューニング可能性に顕著に影響を与えないような厚さである必要があり、その許容される最大厚さは、導波路の屈折率及び厚さ並びに中間層の屈折率に依存する。例えば、Si3N4の200nm厚さのコア層及びITO(n=1.9)である中間層の場合、ITOの厚さは40nm以下でなければならない。コア層がチューナブル層に近接することは、伝搬モードが部分的にチューナブル層内まで伸びて、チューナブル層の屈折率の変化により有効屈折率が効率良く影響を受けることを意味する。
【0080】
図8には、本発明の1つの好ましい実施の形態に従った共鳴格子フィルタの層構造体が概略図的に示されている。共鳴構造体20は、低屈折率領域21及び高屈折率領域22を含む、回折格子層23上に形成されたコア層28を備えており、低及び高屈折率領域の間の屈折率の差はΔnG/nGである。格子層23は、基層25上に選択的に形成された緩衝層24の上に形成される。クラッディング層30がコア層28の上に形成され、該クラッディング層は、相対的に広範囲の選択可能な屈折率を有するLC材料であることが好ましいチューナブルな光透過性材料にて形成される。
【0081】
コア層28の屈折率ncは、取り囲む層よりも大きく、光学モードを導波路内に閉じ込めることを保証する。屈折率ncは格子の平均屈折率nGよりも大きい。
チューナブル材料の屈折率は、例えば、電圧(V)又は温度(T)を印加することにより提供される電界のような外部パラメータを変更することで変化させることができる。クラッディング層の適宜なチューナブルな材料は、装置の機能及びチューニング可能性に対し対象となる全体電圧(温度)範囲内でその屈折率N1(V)[又はn1(T)]がコアの屈折率よりも小さいままであるように選ばれる。
【0082】
チューナブル層が電子光学材料から成る場合、共鳴構造体は、LC層の両面に配置された透明な導電層26、29を有することが好ましい。これと代替的に、勿論、基層が導電性又は半導性である(例えば、シリコンで出来ている)と想定して、構造体と電気的に接触する2つの層は相29及び基層25としてもよい。好ましくは、ガラス板31がLC層のカバー板として配置されるものとする。
【0083】
図8を参照すると、1つの好ましい実施の形態において、格子の低屈折率領域21は緩衝層24と同一の材料で出来ている。
選択的に、中間層27がコア層上に形成される。中間層は、特に、スパッタリング又は蒸着法により形成されるとき、導電層26の接着性及び(又は)その厚さの均一さを向上させることができる。
【0084】
選択的に、クラッディング層30上の反射防止被覆及び(又は)基層25と緩衝層24との間の反射防止被覆(図示せず)が存在するようにしてもよい。
回折格子は、矩形の形態を有するものとして示されているが、格子が導波路領域内で光線を結合することを許容する限り、周期的構造体に対するその他の形態が考えられる。回折格子は、図8の共鳴構造体におけるように、一元的又は二元的な周期摂動を発生させることができよう。格子の周期は単一又は多数とし、また、入射光の偏光状態に依存し又は依存しないものとすることができる。
【0085】
チューナブルクラッディング20がLC材料のような電子光学的にチューナブルな材料で出来ている場合、波長の選択性は、電気信号により実現される。共鳴波長は、電子光学的に制御された材料に供給される電圧又は電流を変化させることにより偏位させることができる。電子光学的材料がLC材料であるとき、フィルタが機能するため提供される電気信号は、直流応力に起因するLCの劣化を防止するため交流電圧である。導体(図8において、導電層28、29)に印加された電圧の大きさに依存して、チューナブルフィルタは、所定の波長λ0の光線のみを反射する。その他の全ての波長の光線は共鳴フィルタを通過する。勿論、最小透過率はλ0にて生じる。
【0086】
理論的には、λ0における反射率は100%であるが、共鳴格子フィルタの実際の反射率は全体として70%ないし95%であり、それは、例えば、基層又は緩衝層から発する損失のため、入射光の(僅かな)一部分が透過することが許容されるからである。
【0087】
LC材料の厚さは、約5μm以下、より好ましくは、2μm以下であり、また、好ましい実施の形態において、約1μmである。
チューナブルクラッディングは電子光学的材料で出来たものであることが好ましいが、必ずしもその必要はない。例えば、ポリマーのような熱光学的材料を使用することも考えられる。チューナブルクラッディングを形成する材料の必要条件は、外部パラメータ、温度(T)又は電界が変化したとき相対的に広範囲にて変化する屈折率を有する必要があることである。熱光学的材料の場合、妥当な温度変化に対し数ナノメートルのチューニング可能性を実現するためには、熱光学的材料は、10-4/℃以上の熱光学的係数dn/dTを有する必要がある。LC材料の大多数は、典型的に、1ないし2V/μm以下である妥当な電界の変化に対して数10分の1のnmチューニング範囲を実現するのに十分に大きい電子光学的係数を呈する。電子光学的又は熱光学的の何れかの適宜な材料の選択は、勿論、用途、すなわち必要とされるチューニング範囲に依存する。
【0088】
熱光学的材料で出来たチューナブル層の場合、温度チューニングのため導体のみが必要であることを理解すべきである。図8を参照すると、フィルタをチューニングするため導電層29(導電層26ではなく)のみが必要とされよう。更に、層30が重合系層である場合、カバー板31は不要である。
【0089】
1つの好ましい実施の形態において、導波路内にて第一回折順位のみが発生される、すなわち次の条件、つまりΛ>λmax/nCが満足され、ここで、λmaxは対象とする範囲の最大波長であり、例えば、その範囲は、C帯域、λmax〜1570nmとなるように格子期間Λが選ばれる、好ましくは、第二順位回折が生ぜず、基本伝搬モードと第一順位回折モードとの間に導波路内にて結合が存在するように格子期間が選ばれるものとする。この最後の条件は、次式により表わすことができる。
【0090】
【数14】
【0091】
ここで、λminは対象とする範囲の最小波長であり、例えば、その範囲がC帯域である場合、λmin〜1530nmである。
一例として、tc=200nmの場合、Λは、約800ないし1050nmとすることができる。
【0092】
図9(a)及び図9(b)において、図3の型式の構造体の性能と図8に示した型式の構造体の性能との比較が示されており、その双方の構造体は、チューナブル層とコア層との間に何ら中間層を有しない。図3を参照すると、層10は存在せず、また、図8を参照すると、層27又は26は存在しない。図9(a)において、FWHMにおける帯域幅は、図3の型式の構造体(黒く塗った四角を付した細い実線は「コアの上方の格子」を特定する)、また、図8に示した型式の構造体(黒く塗った円を付した細い実線は「コアの下方の格子」を特定する)の格子の厚さの関数として示してある。図9(b)において、チューニング範囲は、格子の厚さの関数として示されている。計算するとき、双方の構造体は、次のパラメータ、すなわち低屈折率格子領域のようにnc=1.96、n3=1.445、tc=200nm、Λ=948nm、ΔnG/nG=0.04及びn1=1.5ないし1.7のパラメータを有する。2つの構造体の差は、勿論、格子層の位置である。コア層の上方に格子を有する構造体に対する図9(a)に示したデータは、tc=200nmのときの図2(c)に示したデータに相応する。図9(a)の結果は、任意の検討した格子の厚さのとき、格子がコア層の下方に配置された構造体に対するFWHMにおける帯域幅は格子がコア層とチューナブル層との間にある構造体の帯域幅よりも狭いことを明確に示す。図9(b)は、コアの上方に格子層を有する構造体よりもコア層の下方に配置された格子を有する構造体の方がチューニング範囲が著しく広いことを示す。
【0093】
コアの下方にある格子を有する構造体のチューニング範囲は、検討した格子の厚さの範囲内にてほぼ一定(約45nm)に止まることを認識することが重要である。これに反して、コアの上方に格子を有する構造体の場合、格子の厚さへの依存性が観察される。このことは、導波路の下方に格子を有する共鳴構造体において、例えば、製造過程に関係する限定された精度のため、チューニング可能性は格子の厚さの変動による影響が少ないことを意味する。このように、本発明に従った構造体の場合、格子の製造許容公差を緩和することができる。
【0094】
図10には、本発明の更なる実施の形態に従った共鳴格子フィルタが示されている。共鳴格子フィルタ40において、緩衝層47は基層49上に形成される。高屈折率領域50は緩衝層内に形成され、厚さtGの格子層を形成し、この場合、低屈折率領域53は、高屈折率領域に対し横方向に隣接する緩衝層の領域に相応する。選択的に、厚さt空隙を有する空隙層51が格子層上に形成され、該空隙層は、緩衝層と同一の材料で出来たものであることが好ましい。空隙層51(又は格子層)上にコア層46が形成される。選択的な中間層45をコア層上に形成することができる。電子光学的に制御されたチューナブル層43がコア層の上方に形成される。選択的な反射防止被覆層48が基層49と緩衝層47との間に形成される。透明な導電層42、44が好ましくは、LC材料で出来たチューナブル層の対向面に配置される。これと代替的に、構造体と電気的に接触する2つの層は層42及び基層49としてもよく、この場合、基層は、導電性又は半導性(例えば、シリコンで出来ている)ものとする。ガラスのような絶縁性基層の場合、導電層を基層上にて成長させることができ(図10において、選択可能な層48に相応する位置にて)、その導電層と導電層42(又は45)との間に電気的接触状態が形成されるようにすることができる。ガラスカバー板41はチューナブル層43上に配置される。
【0095】
格子にての基本モードの重なり合いを減少させ、これにより格子自体の特徴を変化させずに、格子の結合効率を減少させるため、空隙層を構造体内に含めることが好ましい。
好ましくは、本発明に従った共鳴格子フィルタは、相対的に小さい回折効率を有する格子を備えるものとする。図11には、図10に示した型式の構造体に対する結合波方程式の解に基づく商業的ソフトウェアを使用して計算した結合効率ηdの関数としてFWHMにおける帯域幅が示されている。検討したFWHMの領域内にFWHMがηdに依存することは第1の一次近似法(a first approximation linear)に対するものである。所望のFWHMが0.4nmである場合、結合効率は0.0015でなければならない。約0.001ないし0.002の範囲に亙る結合効率は、約0.2ないし0.5nmのFWHMに相応する。
【0096】
当該出願人は、これまで検討した実施例の全ての共鳴構造体に対し、FWHMにおける帯域幅対結合効率の曲線は、感知し得る程、変化しないことが分かった。計算する際、格子の厚さはΔnG/nGの異なる値に対して同一の結合効率を有するように変化すべきであることが理解される。例えば、0.0014の結合効率は、ΔnG/nG=0.26及びtG=25nmを有する、コアの上方に格子を有する共鳴構造体により、ΔnG/nG=0.04及びtG=200nmを有する、コアの下方に格子を備える構造体により、又はΔnG/nG=0.04、tG=50nm、t空隙=100nmである、コア及び空隙層の下方に格子を備える構造体により実現することができる。
【0097】
本発明の説明において、回折格子は「弱い」、すなわちηdが約0.0026以下であるならば、相対的に小さい結合効率を有するものと考えた。
図12(a)及び図12(b)には、0nmないし300nmの範囲に亙る空隙層の厚さt空隙の異なる値に対する、図10に示した型式の構造体の格子厚さの関数として、FWHMにおける帯域幅及びチューニング範囲がそれぞれ示されている。t空隙=0とする実線は、空隙層が存在しない、すなわち、コア層格子層上に直接、形成される構造体に相応する。構造的パラメータは次の通りとした。すなわち低屈折率格子層と同様、nc=1.96、n3=1.4455、tc=200nm、Λ=950nm、ΔnG/nG=0.26、n1=1.5ないし1.7とした。曲線は、少なくとも検討した範囲0ないし300nmにおいて、チューニング範囲が空隙層の厚さに相対的に僅かだけ依存することを示す。空隙の厚さの増大は、光学的性能の点にて、格子の厚さの増大と等価的であると考えることができることを認識すべきである。
【0098】
本発明の共鳴構造体において、弱い回折格子を得るため、相対的に薄い厚さ、すなわち150ないし220nm以下の格子を製造する必要はないことを認識すべきである。他方、相対的に薄い(例えば、50nm)の格子が望まれるならば、例えば、プラズマ増進化学的気相成長法のような蒸着法によって格子の厚さを画成することが可能であるから、格子層の形成を十分に制御し且つ再現することができる。格子の低(又は高)屈折率領域を製造するためには、一般に、エッチングステップが必要とされる。現在のエッチング技術は、一般に、少なくとも4ないし5nmの絶対精度を示す。コア層自体がエッチングによる影響を受けるため、格子層がコア層上に配置されるならば、このことは問題となる可能性がある。
【0099】
比較のため、格子の厚さの関数としてのチューニング範囲が図3に示したものの型式の構造体に対し図13に示されており、格子層はコア層の上方に配置され、また、コア層と格子との間に空隙層が存在する。曲線は、0nmないし300nmの範囲のコア層の厚さt空隙の異なる厚さを示す。構造的パラメータは、図4に示した計算値と同一である。所定の格子厚さの場合、空隙層の厚さの増大に伴いチューニング範囲の顕著な低下が観察される。
【0100】
実施例1
図8を参照すると、緩衝層及び低屈折率層は、1.445の屈折率を有する(非添加)SiO2で出来ている。高屈折率格子領域は1.54の屈折率を有するSiOxNyにて出来ている。コア層は1.96の屈折率を有するSi3N4にて出来ている。格子の厚さは、220nmである一方、コアの厚さは200nmである。チューニング層は1.5ないし1.7の範囲の屈折率を有するネマチックLCで出来ている。格子期間は、LC材料の屈折率が1.5であるとき、1526nm(C帯域の下限値)の共鳴波長を有するよう948.5nmである。
【0101】
構造体は、半導体デバイスの製造のための標準的な技術を利用して製造することができる。一例として、SiO2層は、Si基層上にPECVDにより堆積させて緩衝層を形成する。緩衝層の表面は、その後、例えば、ドライエッチングによりエッチングし、形成される高屈折率格子領域22に相応するトレンチ領域を形成する。トレンチを、その後、SiOxNyにて充填する。これと代替的に、SiOxNyの層を緩衝層として基層上に堆積させ、次に、低屈折率に相応するトレンチをその表面に形成し、該トレンチをその後、SiO2にて充填する。
【0102】
次に、形成される表面(すなわち、格子の上面)を平坦化する。後続のステップにおいて、Si3N4の層をPECVDにより堆積させ、コア層を形成する。SiO2の40nm以下の厚さの薄い層をPECVDによりコア層上に選択的に堆積させることができる。更なるステップにおいて、30nm厚さのITO層をコア層又は薄いSiO2層に堆積させる。LCセルを最終的に構造体の頂部に組み立て、ITO層及びガラス板にて完成させる。
【0103】
共鳴構造体のチューニング範囲は約40nmである。
実施例2
図10に示した型式の構造体を参照すると、緩衝層及び空隙層は1.445の屈折率を有する(非添加)SiO2にて出来ている。高屈折率格子領域は0.96の屈折率を有するSi3N4にて出来ている。コア層は1.96の屈折率を有するSi3N4にて出来ている。格子の厚さは50nmであり、コアの厚さは200nmであり、空隙層の厚さは300nmである。チューニング層は、1.5ないし1.7の範囲の屈折率を有するネマチックLCにて出来ている。格子期間は、LC材料の屈折率が1.5であるとき、1526nm(C帯域の下限値)の共鳴波長を有するよう950nmである。厚さ約1mmのガラス板がLCセルを覆う。ITOにて出来ており且つ、厚さ20nmの透明な導電層がLCセルの両面に配置される。コア層上に配置されたITO層の上方にて、LC材料を心合わせさせ得るよう20nm厚さのポリイミド層が形成される。
【0104】
この共鳴構造体のチューニング範囲は約40nmである。
この構造体は、半導体デバイスを製造するための標準的な技術を使用して製造することができる。一例として、緩衝層を形成し得るようSiO2層をSi基層上にPECVDにより堆積させる、その後、Si3N4層を緩衝層上に堆積させる。その後、例えば、ドライエッチングによりSi3N4層をエッチングし、形成すべき低屈折率の格子領域に形成するトレンチ領域を形成する。トレンチを充填し且つSiO2の空隙層を格子上に形成すべくSiO2層を堆積させる。
【0105】
この過程は、トレンチをエッチングするステップの高精度が不要であり、トレンチの僅かな過剰エッチングが可能であるという有利な効果を有する。この場合、格子の厚さの精度は、Si3N4の高屈折率領域の蒸着過程により画成される。
【0106】
1つの好ましい実施の形態において、本発明に従った共鳴格子フィルタは、外部キャビティチューナブルレーザにおけるチューニング要素として使用される。外部キャビティチューナブルレーザは、電気通信の用途、特に、WDM及びDWDMシステムのチューナブル光源として、国際電気通信連合(ITU)グリッドにおける全てのチャネルに対する中心波長を発生させるのに特に適している。
【0107】
図14には、本発明に従ったチューナブル共鳴反射フィルタを備える外部キャビティチューナブルレーザ60が概略図的に示されている。利得媒体61、好ましくは半導体レーザダイオードは、前側小面62と、後側小面63とを備えている。前側小面62は、部分反射型であり、外部キャビティの端部ミラーの1つとして機能する。後側小面63は低反射率を有する。該後側小面は、典型的に、反射防止被覆(図示せず)にて被覆されている。コリメートレンズ64は、利得媒体から放出された光ビームをITUチャネルグリッドに係止されたモードを有するファブリー・ペローエタロン(EP)65に収斂させる。FPエタロンは、複数の等間隔に隔てた伝送ピークを画成する構造及び形態とされたチャネル割り当てグリッド要素として機能する。FPエタロン65の後にて、ビームはチューナブル共鳴格子フィルタ66に衝突し、該フィルタは、外部キャビティの他端ミラーを形成し且つ、利得媒体の前側小面と共に、キャビティの物理的長さL0を画成する。チューナブルフィルタ66は、レーザキャビティの端部ミラーとして機能し、また、チューナブルミラーとも称される。チューナブルミラーは、エタロン伝送ピークの1つを選ぶことにより、所望のチャネル周期にチューニングされる。
【0108】
1つの好ましい実施の形態において、チューナブルミラー66は、電圧発生器67により供給された印加した電圧を変化させることにより、電気的にチューニングされる。印加される電圧は交流(AC)電圧である。レーザのレーザ作用出力波長は、チューナブルミラーの共鳴波長λ0に相応するように選ばれる。チューナブルミラー66は、本発明の好ましい実施の形態の1つに従った共鳴格子フィルタである。
【0109】
レーザシステムは、実質的に単一の長手方向、好ましくは、単一の横断モード光線を発生させる設計とされることが好ましい。長手方向モードは、レーザキャビティ内の幾つかの別個の周波数による同時的なレーザ作用を意味する。横断モードは、レーザ作用光線の横方向へのビーム強さの断面の空間的変化に相応する。全体として、例えば、導波路を含む商業的に利用可能な半導体レーザダイオードのような、利得媒体を適宜に選択することにより、空間的モード又は横単一モード作動が保証される。
【0110】
1つの好ましい実施の形態において、ビームの衝突は、チューナブルミラーの導波路の表面に対し実質的に垂直である。
図14のレーザシステムにおいて、チューナブルミラーは、グリッドエタロンのピーク間を判別する粗チューニング要素として作用する。チューナブルミラーのFWHM帯域幅は、グリッドエタロンのFWHM帯域幅よりも狭くない。長手方向単一モード作動の場合、特定のチャネル周波数に相応するFPエタロンの伝送ピークは、単キャビティモードを選ぶ、すなわち伝送しなければならない。このため、FPエタロンは、FWHMにより分割された自由空間範囲(FSR)として画成された微細度を有する必要がある。この微細度は、各チャネル間のキャビティの隣接するモードを抑制する。単一モードレーザ放出の場合、長手方向キャビティモードは、エタロン伝送ピーク(チューナブルミラーにより選ばれたもの)の1つの最大値の上に配置する必要がある。この要領にて、特定の周波数のみがエタロンを透過し、その他の競合する隣接するキャビティは抑制されよう。
【0111】
本発明に従ったレーザシステムは、ITU50GHz又は25GHzチャネルグリッドにてC帯域の全体に亙りスイッチ機能を提供するよう、特に設計されている。
レーザシステムが50−GHz間隔に対して設計されるならば、チューナブルミラーの反射帯域は、隣接するチャネルの間にて少なくとも5dBの消光比が得られるよう約0.6nm以下でなければならない。好ましくは、チューナブルミラーのFWHMにおける帯域幅は0.4nm以下である。C帯域に亙ってレーザシステムがチューニング可能であるためには、少なくとも40nmのチューニング範囲を有するチューナブルミラーが必要である。
【0112】
25GHzチャネル間隔を有するDWDMシステムに対して外部キャビティレーザ源におけるチューナブルミラーとして適用する場合、約0.2nmないし0.3nmの範囲のFWHMの帯域幅であることが好ましい。
【0113】
0.2ないし0.3nm以下のFWHMにおける帯域幅は、レーザ内でのミラーの心合わせ及び制御を一層、難しくするから、レーザシステムにて望ましくない。
これと代替的に、本発明に従った共鳴格子フィルタは、WDM及びDWDMシステムに対するチューナブルアド/ドロップ装置にて使用することができる。この用途の場合、広範囲のチューニングに加え、例えば、0.1ないし0.2nmな狭小な帯域幅に、及び−30dB以下であることが好ましい、横方向モードの消光比にて共鳴波長付近にて低サブ帯域に特に合うような設計としなければならない。
【0114】
本発明には下記の態様がある。
1.レーザ放出波長の光線(radiation)を放出する形態とされた外部キャビティチューナブルレーザ(external−cavity tunable laser)(60)であって、チューナブルレーザシステムが複数のキャビティモードを有する外部キャビティを備える、外部キャビティチューナブルレーザ(60)において、
光ビームを外部キャビティ内に放出する利得媒体(61)と、
共鳴波長の光ビームを反射するチューナブル光共鳴格子フィルタ(66;20;40)とを備え、該フィルタは、
回折格子と、
該回折格子と光学的に相互作用する平面状導波路(28;46)とを備え、回折格子及び平面状導波路は共鳴構造体を形成し、
フィルタをチューニングすることを許容する選択的に可変の屈折率を有する光透過性材料を備え、前記光透過性材料は、平面状導波路に対するチューナブルクラッディング層(30;43)を形成し、
平面状導波路は、回折格子とチューナブルクラッディング層との間に配置される、外部キャビティチューナブルレーザ。
2.上記1.に記載のレーザシステムにおいて、
放出された光線は長手方向単一モードである、レーザシステム。
3.上記1.に記載のレーザシステムにおいて、
選んだ波長グリッドの相応するチャネルと実質的に心合わせされた複数の通過帯域を画成し得るよう外部キャビティ内に配置されたチャネル割り当てグリッド要素を更に備える、レーザシステム。
4.上記3.に記載のレーザシステムにおいて、
チューナブル共鳴格子フィルタは、光ビームをチューニングすべきチャネルを選び得るよう通過帯域の1つをチューニング可能に選ぶべく外部キャビティ内に配置される、レーザシステム。
5.上記3.又は4.に記載のレーザシステムにおいて、
選んだ波長グリッドは、50GHz又は25GHzチャネル間隔を有する、レーザシステム。
6.上記1.に記載のレーザシステムにおいて、
チューナブル共鳴格子フィルタは、光ビームが平面状導波路の主要面に対し実質的に垂直にフィルタに衝突するよう、外部キャビティ内に配置される、レーザシステム。
7.共鳴波長の光線(optical radiation)を反射する光共鳴格子フィルタ(20;40)において、
低屈折率領域(21;53)と、高屈折率領域(22;50)とを備える周期的構造体を有し、0.0026以下の結合効率ηdを有する回折格子(23;52)と、
前記回折格子と光学的に相互作用する平面状導波路(28;46)とを備え、回折格子及び平面状導波路は共鳴構造体を形成し、
フィルタのチューニングを許容し得るよう選択的に可変の屈折率を有する、光透過性材料であって、平面状導波路に対するチューナブルクラッディング層(30;43)を形成する前記光透過性材料を備え、
平面状導波路は、回折格子とチューナブルクラッディング層との間に配置される、共鳴波長の光線を反射する光共鳴格子フィルタ。
8.上記7.に記載のフィルタにおいて、
光透過性材料は、その選択的に可変の屈折率が電気信号により制御される液晶材料である、フィルタ。
9.上記7.に記載のフィルタにおいて、
回折格子の結合効率は、0.001ないし0.002の範囲にある、フィルタ。
10.上記7.に記載のフィルタにおいて、
平面状導波路は、チューナブルクラッディング層の可変屈折率及び回折格子の平均屈折率よりも大きい屈折率ncを有する層である、フィルタ。
11.上記10.に記載のフィルタにおいて、
平面状導波路に対して回折格子と対向する位置に配置された緩衝層(24、47)を更に備え、
該緩衝層は、回折格子の平均屈折率よりも小さい屈折率n3を有する、フィルタ。
12.上記7.ないし11.の何れか1つの項に記載のフィルタにおいて、
平面状導波路と回折格子との間に配置された空隙層(51)を更に備え、
該空隙層は、導波路の屈折率及び回折格子の屈折率よりも小さい屈折率を有する、フィルタ。
13.上記11.又は12.に記載のフィルタにおいて、
平面状導波路は、窒化ケイ素材料にて出来ており、
窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素の高屈折率領域、低屈折率領域及び緩衝層は二酸化ケイ素にて出来ている、フィルタ。
14.上記12.に記載のフィルタにおいて、
空隙層は二酸化ケイ素にて出来ている、フィルタ。
15.上記8.ないし14.の何れか1つの項に記載のフィルタにおいて、
電気信号を光透過性材料に亙って印加し得るよう光透過性材料の両側部に配置された2つの光透明な導電層(26;42;29;44)を更に備える、フィルタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、波長分割多重化光通信ネットワーク用に適応させたチューナブル共鳴格子フィルタに関する。特に、本発明は、波長分割多重化用の外部キャビティチューナブルレーザにおけるチューナブルミラーとして使用されるチューナブル共鳴格子フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
平面状導波路格子における誘導モード共鳴効果は、理想的な又はほぼ理想的な反射フィルタを製造するため利用することができる。フィルタのそれぞれの共鳴波長に等しい入射波長(又は周波数)の場合、入射光線は共鳴反射により支配され、また、装置を介しての伝送は阻止される。全てのその他の入射波長値に対し、装置は実質的に透明である。
【0003】
共鳴波長フィルタの性質は研究されている。アプライドオプティクス(Applied Optics)34巻(1995年)、p.2414にて出版されたワン(Wang)S.S.及びR.マグナッソン(Magnusson)による「多層導波路格子フィルタ(Multilayer waveguide−grating filters)」において、多層の薄膜層を有するような構造とされた共鳴反射フィルタが取り扱われている。J.Opt.Soc.Am.A(2000)、p.1241におけるドナルド(Donald)K.Jその他の者による「有限長さの狭小帯域誘電性共鳴格子反射フィルタの設計上の考慮事項(Design considerations for narrow−band dielectric resonant grating reflection filters of finite length)」において、共鳴格子反射フィルタの応答性を予見すべく多数散乱干渉導波路アプローチ法が開発されている。
【0004】
全体として、共鳴格子フィルタの構造体は、高屈折率領域及び低屈折率領域を有する回折格子であって、典型的に、層を支持する基層に配置された導波路層に設けられた上記回折格子を備えている。導波路層、すなわちコア層は、その内部にて離散モードが伝搬可能であるキャビティとして作用する。導波路の頂部における格子は入射照射平面波を導波路内の離散モードに結合する。
【0005】
IEEE量子エレクトロニクスジャーナル(Jounal of Quantum Electronics)33巻(1997年)p.2038にて出版されたローゼンブラッド(Rosenblatt)D、その他の者による「共鳴格子導波路構造体(Resonant Grating Waveguide Structures)」に説明されているように、共鳴格子導波路構造体が入射光ビームにて照射されたとき、そのビームの一部は直接、伝送され、また、一部は回折され、その後に導波路層内に実質的に取り込まれる。次に、導波路層内に取り込まれた光の一部は再回折され、このため、その光は光ビームの伝送された部分に干渉する。光ビームの特定の波長及び角度向きのとき、構造体は「共鳴する」、すなわち、直接、伝送された場と回折された寄与分との間にて完全な破壊的干渉が生じ、光は伝送されない。共鳴帯域幅は、深さ、負荷サイクル(ステップ幅対格子期間の比)、格子の屈折率の差及び導波路層の厚さのようなパラメータに基づく。帯域幅は、極めて狭小である(0.1nm程度)ような設計とすることができる。
【0006】
アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters)第77巻(2000年)p.1596にて出版された、G.レビ−ユリシタ(Levy−Yurista)及びA.A.フレーゼン(Friesem)による「多層構造の格子−導波路構造体を有する極狭小のスペクトルフィルタ(Very narrow spectral filters with multilayered grating−waveguide strctures)」において、格子層がエッチング過程の停止層としても機能する緩衝層により導波路層から分離される、共鳴格子導波路構造体が記載されている。導波路及び格子層を分離することにより、それらの厚さをより高度に最適化し且つ制御することが可能である。
【0007】
共鳴格子フィルタの共鳴波長は、構造体内の異なる層の屈折率を変化させることにより制御することができる。かかる屈折率の変化は、異なる位相の適合状態、従って、共鳴波長の偏位をもたらす。例えば、外部電界を印加することにより、屈折率の変化を誘発することができる。IEEE量子エレクトロニクスジャーナル、第37巻(2001年)、p.1030にて出版されたデュドビッチ エヌ(Dudovich N)その他の者による「活性な半導体利用の格子導波路構造体(Active Semiconductor−Based Grating Waveguide Structures)」には、InGaAsP/InP材料を有し且つ、逆電圧形態に基づく活性な格子導波路構造体が記載されている。
【0008】
チューナブル光フィルタは、光電気通信、特に、波長分割多重化(WDM)にて多数の用途を有する。WDMシステムにおいて、異なる波長を有する幾つかのチャネルが光ファイバを亙って伝送され、チャネルの各々が異なる情報を運ぶ。チューナブルフィルタは、1つの随意的なチャネルを選び且つろ過するため使用することができる。増大する光通信送信量に対応するため、50GHz、また最終的に25GHzのチャネル間隔を有する高密度WDM(DWDM)システムが開発中である。50GHzのチャネル間隔を有するDWDMシステムは、典型的に±2.5GHzの周波数精度を必要とする一方、25GHzを有するシステムは、全体として±1.25GHzの精度を必要とする。DWDMは、より狭小なチャネル間隔を使用するから、異なるチャネル間のクロストークを回避するため、フィルタの通過帯域も狭小でなければならない。
【0009】
共鳴格子フィルタは、共鳴状態から形成された固有波長の選択度が相対的に大きく、このため、原理上、狭小なFWHM(理想的には0.1nm又はより低い)を可能にするので、WDMシステムにて適用されるチューナブルフィルタとして特に適している。
【0010】
LEOS 2002年、会議録p.825にて出版されたフア・タン(Hua Tan)その他の者による「チューナブルサブ波長共鳴格子光フィルタ(A Tunable Subwavelength Resonant Grating Optical Filter)」には、フィルタのクラッディング層として配置された液晶(LC)層をチューニングすることにより、共鳴波長のチューニングが為される共鳴格子フィルタが記載されている。17nmのチューニング範囲が実現されたが、シミュレーションの結果、LCフィルタは、55nmのチューニング範囲及び0.1nmの帯域幅を実現する可能性を有することが分かった。
【0011】
チューナブル光源としてレーザを使用することは、WDM及びDWDMシステムの形態変更の可能性を大幅に向上させる。例えば、単に波長をチューニングするだけで異なるチャネルを1つのノードに割り当てることができる。
【0012】
チューナブルレーザ、分布ブラッグ反射器レーザ、可動の頂部ミラーを有するVCSELレーザ又は外部キャビティダイオードレーザを提供すべく異なる方策を使用することができる。外部キャビティチューナブルレーザは、高出力パワー、広いチューニング範囲、優れたサイドモードの抑制及び狭い帯域幅のような幾つかの有利な効果を提供する。機械的に調節可能であり又は電気的に起動されるキャビティ内セレクタ要素のような、外部キャビティ波長の選択を提供するための色々なレーザチューニング機構が開発されている。
【0013】
波長の選択及びレーザキャビティのチューニングは、能動的なチューナブルミラーを使用することにより実行することができる。米国特許明細書6,215,928号には、平面状導波路に形成された回折格子と、回折格子の隙間を少なくとも充填するクラッディング層とを有する能動的なチューナブルミラーが記載されている。クラッディングは、電子光学的にチューニング可能である液晶材料にて形成することができる。電子光学的に制御された要素に供給される電圧又は電流を変化させることにより、共鳴波長を偏位させることができる。
【0014】
米国特許明細書6,205,159号には、液晶ファブリー・ペロー(LC−FP)干渉計への電圧を変化させることにより、個別の組みの波長にチューニングする外部キャビティ半導体レーザが開示されている。チューニング可能である個別の組みの波長は、静止キャビティ内エタロンによって画成される。静止キャビティ内エタロンの自由スペクトル範囲(FSR)は、LC−FP干渉計の分解能帯域幅よりも広くなるような設計とされている。静止エタロンのFWHM線幅は、外部キャビティの長手方向モード間隔よりも狭くなければならない。
【0015】
当該出願人は、共鳴格子フィルタの導波路の厚さ、又は格子層の厚さ又は格子期間のような構造的パラメータは、例えば、30ないし40nm以上のような相対的に広いチューニング範囲及び100GHz(0.8nm)以下であることが好ましいFWHMにおける相対的に狭小な帯域幅を有するフィルタを得るために極めて重要であり、かかる相対的に狭小な帯域幅は、例えば、100GHzの隔てたチャネルを有するエルビウムC帯域内にて作動するWDMシステムのようなチューナブルレーザにおけるチューナブル要素として必要とされる。
【0016】
日本国特許出願明細書63−244004号には、偏向要素又は収束レンズを製造するため使用することができる導波路格子要素が記載されている。記載された装置において、光は、導波路に沿って横方向に入射する。LC材料の屈折率の変化は、光の偏向角度の変化を誘発させ、また、内部から印加された電圧によって、その出力光の角度を制御することが可能である。
【0017】
同様に、米国特許明細書5,193,130号には、電圧信号が導波路層の表面付近にてLC層の心合わせ方向を変化させる光偏向装置が開示されている。記載された装置において、導波路に沿って伝搬する導波路光は、LCに照射される第一の光と、格子が存在するため基層に向けて照射される第二の光という2つの光ビームに分離される。導波路層の外部にて照射した光の方向は、電圧信号を印加することにより変化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、選択的に可変である共鳴波長にて光線を反射することのできるチューナブル共鳴格子フィルタに関するものである。該フィルタは、低(屈折)率領域と、高屈折率領域とを有する、周期的構造体、すなわち回折格子と、平面状導波路と、フィルタをチューニングすることを許容し、また、導波路に対するチューナブルクラッディング層を形成する、選択的に可変の屈折率を有する光透過性材料とを備えている。光透過性材料は、電子光学的光透過性材料、より好ましくは、液晶(LC)材料であることが好ましい。
【0019】
共鳴格子フィルタの光学的性質は、格子層の厚さ、導波路層の厚さ、又は格子の低屈折率領域と高屈折率領域との間の屈折率の差のような構造的特徴によって支配される。当該出願人は、装置の構造的特徴を適宜に選ぶ結果、狭小な帯域幅と、広範囲のチューナビリティとの間にて有用な兼ね合いが得られることが分かった。
【0020】
当該出願人は、回折格子を平面状導波路に対してチューナブル層の反対側部に配置することにより、フィルタのチューニング可能性に顕著に影響を与えずに、格子の構造的パラメータをフィルタの応答性の所望の帯域幅に特別に合うようにすることが可能であること知った。換言すれば、導波路の下方にて回折格子を有する共鳴構造体は、所望のチューニング範囲を実現しつつ、帯域幅分解能に必要とされるように、相対的に小さい結合効率を有する適宜な格子構造体を選ぶときの自由度を可能にする。この共鳴構造体内にて、コア層、すなわち導波路は、チューナブル層と直接接触し、又はコアとチューナブル層との間に介在させた相対的に薄い中間層と直接接触してチューナブル層に近接する位置に配置することができる。コア層がチューナブル層に近接していることは、伝搬モードをチューナブル層内に顕著に伸ばして、導波路内の基本モードの有効屈折率がチューナブル層の屈折率の変化により、効率良く影響を受けるようにすることが可能であることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
当該出願人は、相対的に狭小な帯域幅を呈する共鳴フィルタを得るためには、相対的に低い結合効率を有する格子であることが望ましいことが知見した。好ましくは、FWHMにて約0.6nm以下の帯域幅(特に、50GHzチャネル間隔を有するチューナブルレーザDWDMシステムに適している)を得るためには、結合係数は、約0.0026以下でなければならない。より好ましくは、結合効率は、約0.001ないし0.002の範囲にあるものとする。
【0022】
チューニング範囲は格子パラメータの変化による影響を受ける度合いが小さいことが実証されているから、コア層が格子とチューナブル層との間に介在される共鳴格子構造体を製造することにより、構造的パラメータの幾つかの製造許容公差を緩和することができる。更に、弱い格子、すなわち0.0026以下の結合係数を有する格子を得るために、薄い厚さの格子、すなわち150ないし200nm以下の格子を製造する必要はない。
【0023】
本発明のチューナブル共鳴格子フィルタは、50GHz及び25GHzのチャネル間隔の設計を有するDWDMシステムに対し外部キャビティチューナブルレーザにて適用するのに特に適している。本発明のチューナブル共鳴格子フィルタは、エルビウムC帯域(1530ないし1570nm)の全体に亙ってチューナブルであるようにすることができる。
【0024】
その形態の1つにおいて、本発明は、チューナブル共鳴格子フィルタを備える外部キャビティチューナブルレーザに関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】共鳴格子フィルタの層構造体と、直角に入射する光線に対する関連する入射波及び回折波とを示す簡略図である。
【図2】図2(a)ないし図2(c)は、異なる値のコア層の厚さに対する回折格子の厚さの関数として共鳴格子フィルタのFWHMにおける計算帯域幅を示す図である。図2(a)において、屈折率の差ΔnG/nGは、0.26であり、図2(b)において、0.07、図2(c)において、0.04である。
【図3】コアと格子層との間に「空隙」層を備える共鳴格子フィルタを示す層構造体の概略図である。
【図4】0nm(空隙層無し)ないし300nm(コア層の厚さは全ての曲線について同一である)の範囲内の異なる値の空隙層の厚さに対する回折格子厚さの関数として、図3に示した型式の共鳴格子フィルタのFWMH計算帯域幅を示す図である。
【図5a】図5aは、異なる2つの値のチューナブル層の屈折率n1、すなわちn1=1.5(a)およびn1=1.7(b)に対する図1の型式の共鳴格子フィルタ構造体における異なる層に対して正規化した光モード分布状態(実線)の図である。
【図5b】図5bは、異なる2つの値のチューナブル層の屈折率n1、すなわちn1=1.5(a)およびn1=1.7(b)に対する図1の型式の共鳴格子フィルタ構造体における異なる層に対して正規化した光モード分布状態(実線)の図である。
【図6】コアとチューナブル層との間に「中間」層を備える共鳴格子フィルタの層構造体を示す簡略図である。
【図7】0nm(すなわち中間層無し)ないし200nmの範囲にある異なる厚さの中間層厚さに対するコア層の厚さの関数として、チューニング範囲の計算値を示す図である。
【図8】本発明の1つの実施の形態に従った共鳴格子フィルタの層構造体を示す概略図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、図1に示した型式の構造体の光学的性質と、中間層が無い図8に示した構造体の光学的性質とを比較する図である。図9(a)にて、FWHMにおける帯域幅は、格子の厚さの関数として示される一方、図9(b)にて、チューニング範囲は常に格子の厚さの関数として示されている。
【図10】本発明の更なる実施の形態に従った共鳴格子フィルタの層構造体を示す簡略図である。
【図11】回折格子の「強度」に依存するFWHMの一例としての結合効率の関数としてFWHMにおける帯域幅の計算値を示す図である。
【図12】図12(a)及び図12(b)は、異なる値の空隙層の厚さに対する回折格子の厚さの関数として、図10に示した型式の共鳴格子フィルタのFWHM帯域幅の計算値(a)及びチューング範囲(b)を示す図である。
【図13】0nm(すなわち空隙層無し)ないし300nmの範囲に亙る異なる値の空隙層の厚さに対する図3に示した型式の共鳴格子フィルタの格子の厚さの関数として、チューニング範囲の計算値の比較を示す図である。
【図14】本発明の1つの実施の形態に従った格子共鳴フィルタを有する外部キャビティチューナブルレーザの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
当該出願人は、図1に概略図にて示した型式の共鳴格子フィルタ構造体(共鳴構造体とも称される)を研究した。共鳴構造体1は、導波路、すなわち下方のクラッディング層5に形成されたコア層4と、それぞれ屈折率nL及びnHを有する低屈折率領域6及び高屈折率領域7を含む回折格子層3とを備えている。格子の低屈折率領域と高屈折率領域との間の屈折率の差、ΔnG/nG1は、次式のように画定される。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、nGは格子の屈折率の平均値、Fは格子の負荷サイクルである。
クラッディング層2は、格子3上に形成され、該クラッディング層は、チューナブル材料、好ましくは、相対的に広範囲の選択可能な屈折率を有するLC材料にて形成されるものとする。コア層4の屈折率、nc、取り囲む層よりも大きく、光モードを導波路に沿って閉じ込めることを保証する。層5は、選択的に基層(図示せず)上にて成長させ又はそれ自体を基層とし成長させる(機能する)ようにしてもよい。例えば、コア層4は、Si3N4にて形成することができ、層5は(非添加)SiO2にて形成し、Si基層(図示せず)上にて成長させることが好ましい。これと代替的に、層5はガラス基層とし、該ガラス基層にてコア層が成長するようにしてもよい。
【0029】
フィルタの主方向を基準にするデカルト座標系(x、y、z)を画定し、Z軸が導波路の主要面に対して直角となるようにすることにより、光ビームが構造体1に衝突するとき、光は格子3によって回折される。図1に示した実施例において、入射は構造体に対し直角である、すなわちZ方向に沿う。格子は、ゼロ順位(zero order)及び第一回折順位(first diffracted order)のみが導波路内を伝搬するのを許容されるよう期間Λにて設計する。その他の全ての回折順位は一過性である。ゼロ順位は、多層構造体を亙ってZ方向に沿って伝搬する一方、第一の回折順位は、主として格子期間及びコアの屈折率に依存する回折角度にてコア領域内を伝搬する。回折角度がコア層4と取り囲む層(当該方策にて、格子は小さい摂動として取り扱われ、従って1つのインタフェースとみなされる)の間にてインタフェース8、9により画定された臨界角度を上廻るならば、その回折順位はx軸に沿って導波路内を伝搬する。異なる屈折率の2つの層間のインタフェースの臨界角度は、全反射が生じる最小角度として画定される、すなわち、図1において、sinΘ1,3=n1,3/nCである。
【0030】
共鳴状態下にて、入射光は、x軸に沿ってコア層内を伝搬する基本モードと結合される。x軸に沿って画定された伝搬定数β ̄(実際はバーはβの直上に位置する)にて伝搬する光は、周期的摂動(格子)により回折され、再度、導波路から出る。周期的摂動は、z方向に戻る光を共鳴波長にてz軸に沿って形成される反射と結合する。その他の全ての波長は、装置を通じて実質的に伝送される。共鳴時、共鳴キャビティのように振舞う定在波が導波路の層内に発生され、この共鳴キャビティ内にて光は、全内反射により閉じ込められ、これに伴ってエネルギーが蓄積する。
【0031】
共鳴が生じるためには、格子−コアのインタフェースにおける接線方向への、すなわちx軸に沿った基本モードのβ ̄の値は次式によって与えられる。
【0032】
【数2】
【0033】
ここで、kiXは入射ビームの波数のx方向に沿った成分であり、kgは次式により画定される格子の波数である。
【0034】
【数3】
【0035】
ここで、Λは格子期間である。当該事例におけるように、我々は、直角の入射kiX=0と考える。このため、基本モードの伝搬定数と格子期間との間の関係は、次式により与えられる。
【0036】
【数4】
【0037】
図1には、光ビームの直角の入射を示し且つ説明したが、直角の入射状態は必ずしも必要な条件ではない。角度θの入射と考えるならば、共鳴状態は、特定の共鳴波長λ0及び角度θ0にて生ずるビームの角度方向も考慮する必要がある。
【0038】
共鳴波長λ0は、次式によって与えられる固有値問題の自明解ではないことは解っている。
【0039】
【数5】
【0040】
ここで、tCは導波路(コア)の厚さ、uはコア内を伝搬する波のモードパラメータ、w2、w5はクラッディング層2、5(図1)のモードパラメータである。モードパラメータは、次の等式により表わすことができる。
【0041】
【数6】
【0042】
【数7】
【0043】
ここで、λは入射光の波長である。
横共鳴のマルチパス干渉アプローチ法に従い、共鳴時の構造体のスペクトル応答性の帯域幅の分析学的表現を格子及び導波路のパラメータの関数として、誘導することが可能である。コア層内の第一回折順位の反射効率は、次式のように、回折順位ηdが経験する有効な格子強度の項にて表現することができる。
【0044】
【数8】
【0045】
ここで、φ(λ)は、導波路領域内にて回折順位が経験する往復相であり、キャビティの光路と関係した相偏位、2つのコアのインタフェースにおける2つの境界反射及び回折に起因する結合を含む。このため、共鳴波長λ0付近の波長λ(及びθ0に近い角度)におけるスペクトル振舞いは、全体としてローレンツ関数である。
【0046】
有効格子強度ηdは、格子の回折順位への結合効率を表わし且つ、波長、回折順位、入射回折角度及び格子の厚さtG、屈折率の差ΔnG/nG及び格子期間Λのような格子のパラメータに依存する。回折が第一順位でのみ生じる場合、結合効率は、第一回折順位効率に相応し、また、入射光パワーに対する第一順位の伝搬モードの光パワーの比によって表現することができる。基本的に、結合効率は、光を空間内にて一方向に方向変更する格子(カプラー)の効果の程度を明らかにする。以下、有効格子強度を、結合効率として説明する。
【0047】
2分の1の強度を発生するφ(λ)の変化は、次式によるFWHMの位相の散逸帯域幅を与える。
【0048】
【数9】
【0049】
位相の散逸帯域幅は、次式のように接線方向成分の変化として表現することもできる。
【0050】
【数10】
【0051】
ここで、k0はピーク波長λ0における自由空間内の波数であり、dφ/dβはモード位相の散逸率として画定され、また、接線方向成分に対する位相の変化率を表す。モード位相の散逸率は、次式のように画定される。
【0052】
【数11】
【0053】
全体として、コアとクラッディング層との間の相対的に大きい屈折率の結果、モード位相の散逸率は相対的に大きい値となり、このため、FWHMにて相対的に小さい値の帯域幅となる[等式(10)を参照]。
【0054】
等式(10)は、帯域幅がηdの減少と共に減少し、また、モード位相の散逸率の減少を示す。このため、比較的小さい値のηdを有する格子を備える構造体は、スペクトル応答性の相対的に狭い帯域幅を呈する。回折されたモードへの結合効率ηdの値が小さいことを特徴とする格子は、「弱い」格子とも称し、これらの格子は伝搬する回折モードが経験するような相対的に低い格子強度を有することを示す。
【0055】
図2(a)ないし図2(c)には、3つの異なる値のコアの厚さ、すなわちtc=200nm(太い実線)、300(一点鎖線)及び400nm(四角を付した細い実線)の格子厚さtGの関数として、図1に示した型式の共鳴構造体のFWHMにおける計算帯域幅が示してある。計算するとき、次のパラメータを想定した。コア層4の屈折率nc=1.96である一方、格子3のクラッディング層5及び領域6(低屈折率領域)の双方の屈折率はnL=n3=1.445である。格子の高屈折率領域7の屈折率は、図2(a)ないし図2(c)のグラフにて3つの異なる値をとる。図2(a)は、屈折率の差ΔnG/nG=0.26である一方、図2(b)において、ΔnG/nG=0.07及び図2(c)においてΔnG/nG=0.04である。FWHMの計算は等式(10)から誘導した。計算したときの参照波長は1.55μmである。
【0056】
全体的な考慮として、FWHMは、格子厚さtGの増大と共に増大することが観察される。しかし、その増大は、相対的に小さい屈折率の差(ΔnG/nG=0.07、0.04)の場合よりも、相対的に大きい屈折率の差(ΔnG/nG=0.26)の場合の方が遥かに顕著である。ΔnG/nG=0.26の場合、tGは急激に増大することが観察され、例えば、格子の厚さが50nmから80nmまで増大する結果、FWHMの帯域幅は2倍以上、増大することになる[図2(a)]。図2(a)に図示しないが、ΔnG/nG=0.26の場合、格子の厚さが約200nmの値である結果、FWHMは20nmとなる。これに反して、ΔnG/nG=0.04の場合、200nm又はそれ以上の格子の厚さは、FWHMの値が0.5nm以上となることを保証する。
【0057】
図2(a)ないし図2(c)に示した結果から、我々は、FWHMにて相対的に小さい帯域幅、すなわち、例えば、50GHzチャネル間隔のDWDM用途用のチューナブルレーザにて必要とされるように、0.6nm以下の帯域幅を有するためには、格子は極めて薄い厚さとなる、すなわち格子の屈折率の差が相対的に大きいならば、30nm以下であり、又は屈折率の差が相対的に小さいならば、すなわち図示した例において、約0.07以下となるように選ぶ必要があるものと推定する。
【0058】
相対的に大きい屈折率の差ΔnG/nG(例えば、0.26)を許容するであろう、数10nm(例えば、30nm)のtGを有する図1の共鳴構造体にて格子を選ぶ第一の選択の結果、特に、化学的気相成長法又はエッチングのような殆どの技術は、数ナノメートルの製造許容公差を有することを考慮するならば、格子の製造は特に煩雑となるであろう。他方、0.05以下、好ましくは、0.03ないし0.04の範囲の小さい屈折率の差を選ぶことは、少なくとも150ないし200nmの厚さを有する格子を製造することを許容することになる。
【0059】
図2(a)ないし図2(c)には、コアの厚さtcの増大のため、格子の厚さ、及び格子の屈折率の差の所定の値に対するFWHMが減少することが示されている。より全体的には、コア層の相対的に厚い厚さ及び(又は)クラッディング層の屈折率と比較して大きいコアの屈折率は、FWHMにて相対的に小さい帯域幅を発生させることになる。しかし、屈折率の差が大きい場合[図2(a)]、コアの厚さが400nmで、FWHMの帯域幅が0.5nm以下のとき、格子厚さは、僅かに40nm以下の厚さとなる。
【0060】
より全体的には、FWHMにて小さい帯域幅によるスペクトルの応答性は、「弱い」格子、すなわち結合効率ηdが相対的に小さい値の格子を有する構造体にて実現することができる。薄い格子構造体(小さいtG)又は小さい屈折率の差(小さいΔnG/nG)を有する格子構造体を選ぶことにより、弱い構造体を得ることができる。双方の条件を満足させることは、格子の強度が低下することが理解される。
【0061】
空隙層と称される層をコア層と格子層との間に挿入することにより、小さい格子の結合効率を実現することができる。空隙層が存在することは、モードの場と周期的領域との重なり合いを減少させ、これによりその場の回折効果を低下させることになる。図3には、コア層と格子層との間に配置された空隙層10を含む共鳴構造体12が概略図的に示されている。該構造体は、チューナブル層2に対するカバー板として機能するガラスシート11も備えている。光透過性材料がLC材料である場合、カバー板が好まして。図1に示したものに相応する共鳴構造体の要素に対し同一の参照番号が使用されており、更なる詳細な説明は省略する。
【0062】
図4には、0nm(すなわち、空隙層が存在せず、このため構造体は図1に示したものと等価的である)ないし300nmの範囲に亙る空隙層t空隙の異なる厚さの値に対する、格子の厚さtGの関数として、図3の共鳴構造体のFWHMにおける帯域幅が示されている。FWHMの計算は等式(10)から誘導し、この場合、次のような構造的パラメータであると想定した。すなわちΔnG/nG=0.26、tc=200nm、Λ=950nm、nc=1.96(Si3N4)、n3=1.445(非添加SiO2)。当該実施例において、空隙層は、SiO2から成っている。t空隙=0nmのときの曲線は、tc=200nmのときの図2(a)に示した曲線に相応する。これらの結果は、FWHMの値は空隙層の厚さの増大と共に減少することを示す。例えば、tG=30nmの格子厚さの場合、t空隙=300nmに対するFWHMの値は、t空隙=0のときの値よりも約1.7倍小さい。
【0063】
適宜な帯域幅、例えば、DWDM用途に適合可能な帯域幅を有するスペクトル応答性を持つことに加えて、共鳴格子フィルタは、広範囲のチューニング可能性、すなわち大きいチューニング範囲を呈する必要がある。好ましくは、チューニング範囲は、例えば、エルビウムC帯域をカバーするチューニング範囲を必要とする用途の場合、10nm以上、より好ましくは、30ないし40nm以上であるものとする。
【0064】
チューニング可能性とは、共鳴格子フィルタ内にて共鳴波長が偏位することを意味する。共鳴波長を偏位させるためには、固有値問題(等式5)の解を偏位させる必要がある。共鳴状態を変化させる、すなわち共鳴波長を偏位させる1つの方法は、コア中の伝搬モードの有効屈折率neffに影響を与える共鳴構造体の層の1つにおける屈折率を変化させることによる。
【0065】
第1の近似法(a first approximation)に対し、共鳴帯域幅λ0は次式にて表わすことができる。
【0066】
【数12】
【0067】
ここで、Λは格子期間である。次に、共鳴波長のチューニング範囲Δλ0を次式によって与えることができる。
【0068】
【数13】
【0069】
これは、Δλ0と伝搬モードの有効屈折率Δneffの変化との直接的な比例関係を示す。
コア層及び周期的構造体(格子)は、チューナブル層、すなわち屈折率が共鳴帯域幅をチューニングし得るよう変化する層に対する優れた選択対象物ではなく、それは、それらの屈折率の変化は、FWHMにて帯域幅に強力に影響を与え、これにより、異なる共鳴帯域幅における構造体のスペクトル応答性の均一さを妨害するであろうからである。
【0070】
このため、共鳴構造体のクラッディング層の屈折率を変化させることにより、チューニングを実現し得ることが好ましい。図1の共鳴構造体において、チューナブル層は、広範囲に亙る選択可能な屈折率を有する液晶(LC)材料にて出来たものであることが好ましいクラッディング層2である。LCの屈折率n1は、該層に印加される電界に応答して変化し、共鳴格子構造体が電気的にチューナブルであるようにする。
【0071】
当該出願人は、効率的なチューニング可能性を実現するためには、伝搬モードの光学的モードプロフィールは、チューナブル層を顕著に重なり合わせ得るよう空間的に伸びる必要があることが分かった。この要領にて、チューナブル層の屈折率n1の変化は、導波路内の伝搬モードの有効屈折率neffが顕著に変化することになろう。図5(a)及び図5(b)には、図1に示した型式の共鳴構造体の異なる層に対する光学モードプロフィールの2つの例が示されている。図5(a)及び図5(b)において、共鳴構造体は、LC材料を覆うガラス板を備えている。モードの場は、有限差分時間領域技術に基づく商業的ソフトウェアにより計算した。基本的光学モードの大きさは、図5(a)及び図5(b)の頂部分に示されている。シミュレーションにて想定した構造的パラメータは次の通りとした。すなわち、ΔnG/nG=0.26、tc=200nm、Λ=950nm、nc=1.96(Si3N4)、n3=1.445(非添加SiO2)、tG=30nm。チューナブルクラッディング層(LC材料)の屈折率n1は、1.5から1.7に変化する。図5(a)において、n1=1.5である一方、図5(b)において、n1=1.7である。共鳴構造体の基本的伝搬モードは、偽ガウスであり、チューナブル層内に伸びて、層内へのモードの空間的重なりを表わす「テール」を呈する。LC層内への重なり合いの程度及び基本モード曲線の形状は、図5(a)及び図5(b)を比較することで理解し得るように、屈折率n1の変化による影響を受ける。n1=1.5のとき、計算有効屈折率neffは、1.5995となる一方、n1=1.7のとき、neffは、1.6505であった。等式(13)から、48.5nmに等しいチューニング範囲Δλ0を誘導することが可能である。
【0072】
格子の厚さtGを上記の実施例の場合のように30nmではなくて、200nmである点を唯一の相違点として、図5(a)及び図5(b)の実施例のものと等価的である構造体に対し、基本伝搬モードの有効屈折率の計算を行った。有効屈折率の変化は、計算によって0.02291であるとされ、これは、図5(a)及び図5(b)の実施例におけるよりも2倍以下の22.9nmのΔλ0に相応する。このことは、図1に示した型式の構造体内にて、コア層とチューナブル層との分離が増すに伴い、チューニング可能性を向上させ、これにより基本モードがチューナブル層内に重なり合う程度に影響を与え得るよう薄い厚さを有する格子であることが好ましい。上述したように、かかる薄い厚さ(例えば、30nm)のような格子は、技術的にしばしば臨界的である。
【0073】
当該出願人は、本明細書にて説明した層を格子層とチューナブル層との間の中間層として挿入することはチューニング可能性に影響を与える可能性があることが分かった。図6には、格子層3とチューナブル層2との間に配置された中間層13を有する共鳴格子構造体14が概略図的に示されている。中間層は、コア層よりも小さい屈折率を有する必要がある。図1に示したものに相応する共鳴格子構造体の要素に対し同一の参照番号が使用されており、それらの詳細な説明は省略する。
【0074】
格子とチューナブル層との間の中間層は、特定の共鳴フィルタの設計にて見ることができる。中間層は、例えば、チューナブル層を制御する電極として使用し得るよう例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)で出来たもののような光透明な導電層とすることができる。これと代替的に、チューナブル層を形成する光透過性材料のその下方の層への接着を向上させるよう中間層を介在させてもよい。光透過性材料がLC材料である場合、例えば、ポリイミドで出来た中間層を心合わせ層としてLCと接触するよう配置することができる。
【0075】
図7において、図6に示した型式の構造体のチューニング範囲は、導波路(コア)の厚さtcの関数として示されており、この厚さtcは、中間層の厚さの異なる値に対し、その値が0nm(すなわち中間層無し)ないし200nmの範囲にあるものとする。チューニング範囲は、有限差分時間領域ソフトウェアを使用し且つ等式(13)によって計算する。曲線を計算する際に考慮した構造的パラメータは、ΔnG/nG=0.26、Λ=950nm、nc=1.96、n3=1.445、tG=30nm、Δn1=0.2であり、ここで、n1は1.5ないし1.7の範囲にある。中間層は、この実施例にてSiO2にて出来ているものとした。結果から、チューニング範囲はコアの厚さの増大に伴い減少することが分かる。更に、所定のコア厚さのとき、チューニング範囲は、中間層の厚さの増大に伴い減少する。
【0076】
図7に示した結果から、チューニング可能性は、コアの厚さtcにより及び(又は)格子層とチューナブル層との間に配置された中間層が存在することにより顕著に影響を受けることが明確に分かる。その双方の場合、これは、導波路内の伝搬モードの中心がチューナブル層からより遠方となり(通常、基本モードの中心はほぼコアの中心にある)、このため、チューナブル層内に顕著に重なり合い、これにより有効屈折率を効率良く変化させることができないためである。
【0077】
図2(a)ないし図2(c)に示した結果を図7に示した結果と比較することにより、当該出願人は、相対的に厚いコア層はスペクトル応答性が相対的に狭い帯域幅にとって望ましい一方、相対的に薄いコア層は、広範囲のチューニング可能性にとって望ましいことが分かった。一例として、ΔnG/nG=0.04及びtG=200nmを有する格子を選ぶことにより、FWHMにて0.4nmの帯域幅を有するために必要とされるコア厚さtcは約220nmである。しかし、かかるコア厚さは、チューニング範囲が25nmであることを意味する(構造的パラメータは上述した図面に示した計算のものに等しいものと想定する)。このチューニング範囲は、例えば、少なくとも30nm及び好ましくは、40nm以上のチューニング範囲が必要とされる、C帯域の波長領域内にて作動するDWDMシステム内の適用例にとって適当ではないであろう。
【0078】
当該出願人は、回折格子を平面状導波路に対しチューナブル層の反対側部に配置することにより、フィルタのチューニング可能性に顕著に影響を与えることなく、格子の構造的パラメータをフィルタの応答性の所望の帯域幅に特に合わせることが可能であることが分かった。換言すれば、格子とチューナブル層との間に配置された導波路を含む共鳴構造体は、所望のチューニング範囲を実現しつつ、帯域幅の分解能に対し必要とされるように、相対的に小さい結合効率を有する適宜な格子構造体を選ぶとき、自由度を許容する。
【0079】
コア層は、チューナブル層と又はコアとチューナブル層との間の1つ又はより多数の介在された相対的に薄い中間層と直接的接触する、チューナブル層に近接する位置に配置することができる。中間層は、チューニング可能性に顕著に影響を与えないような厚さである必要があり、その許容される最大厚さは、導波路の屈折率及び厚さ並びに中間層の屈折率に依存する。例えば、Si3N4の200nm厚さのコア層及びITO(n=1.9)である中間層の場合、ITOの厚さは40nm以下でなければならない。コア層がチューナブル層に近接することは、伝搬モードが部分的にチューナブル層内まで伸びて、チューナブル層の屈折率の変化により有効屈折率が効率良く影響を受けることを意味する。
【0080】
図8には、本発明の1つの好ましい実施の形態に従った共鳴格子フィルタの層構造体が概略図的に示されている。共鳴構造体20は、低屈折率領域21及び高屈折率領域22を含む、回折格子層23上に形成されたコア層28を備えており、低及び高屈折率領域の間の屈折率の差はΔnG/nGである。格子層23は、基層25上に選択的に形成された緩衝層24の上に形成される。クラッディング層30がコア層28の上に形成され、該クラッディング層は、相対的に広範囲の選択可能な屈折率を有するLC材料であることが好ましいチューナブルな光透過性材料にて形成される。
【0081】
コア層28の屈折率ncは、取り囲む層よりも大きく、光学モードを導波路内に閉じ込めることを保証する。屈折率ncは格子の平均屈折率nGよりも大きい。
チューナブル材料の屈折率は、例えば、電圧(V)又は温度(T)を印加することにより提供される電界のような外部パラメータを変更することで変化させることができる。クラッディング層の適宜なチューナブルな材料は、装置の機能及びチューニング可能性に対し対象となる全体電圧(温度)範囲内でその屈折率N1(V)[又はn1(T)]がコアの屈折率よりも小さいままであるように選ばれる。
【0082】
チューナブル層が電子光学材料から成る場合、共鳴構造体は、LC層の両面に配置された透明な導電層26、29を有することが好ましい。これと代替的に、勿論、基層が導電性又は半導性である(例えば、シリコンで出来ている)と想定して、構造体と電気的に接触する2つの層は相29及び基層25としてもよい。好ましくは、ガラス板31がLC層のカバー板として配置されるものとする。
【0083】
図8を参照すると、1つの好ましい実施の形態において、格子の低屈折率領域21は緩衝層24と同一の材料で出来ている。
選択的に、中間層27がコア層上に形成される。中間層は、特に、スパッタリング又は蒸着法により形成されるとき、導電層26の接着性及び(又は)その厚さの均一さを向上させることができる。
【0084】
選択的に、クラッディング層30上の反射防止被覆及び(又は)基層25と緩衝層24との間の反射防止被覆(図示せず)が存在するようにしてもよい。
回折格子は、矩形の形態を有するものとして示されているが、格子が導波路領域内で光線を結合することを許容する限り、周期的構造体に対するその他の形態が考えられる。回折格子は、図8の共鳴構造体におけるように、一元的又は二元的な周期摂動を発生させることができよう。格子の周期は単一又は多数とし、また、入射光の偏光状態に依存し又は依存しないものとすることができる。
【0085】
チューナブルクラッディング20がLC材料のような電子光学的にチューナブルな材料で出来ている場合、波長の選択性は、電気信号により実現される。共鳴波長は、電子光学的に制御された材料に供給される電圧又は電流を変化させることにより偏位させることができる。電子光学的材料がLC材料であるとき、フィルタが機能するため提供される電気信号は、直流応力に起因するLCの劣化を防止するため交流電圧である。導体(図8において、導電層28、29)に印加された電圧の大きさに依存して、チューナブルフィルタは、所定の波長λ0の光線のみを反射する。その他の全ての波長の光線は共鳴フィルタを通過する。勿論、最小透過率はλ0にて生じる。
【0086】
理論的には、λ0における反射率は100%であるが、共鳴格子フィルタの実際の反射率は全体として70%ないし95%であり、それは、例えば、基層又は緩衝層から発する損失のため、入射光の(僅かな)一部分が透過することが許容されるからである。
【0087】
LC材料の厚さは、約5μm以下、より好ましくは、2μm以下であり、また、好ましい実施の形態において、約1μmである。
チューナブルクラッディングは電子光学的材料で出来たものであることが好ましいが、必ずしもその必要はない。例えば、ポリマーのような熱光学的材料を使用することも考えられる。チューナブルクラッディングを形成する材料の必要条件は、外部パラメータ、温度(T)又は電界が変化したとき相対的に広範囲にて変化する屈折率を有する必要があることである。熱光学的材料の場合、妥当な温度変化に対し数ナノメートルのチューニング可能性を実現するためには、熱光学的材料は、10-4/℃以上の熱光学的係数dn/dTを有する必要がある。LC材料の大多数は、典型的に、1ないし2V/μm以下である妥当な電界の変化に対して数10分の1のnmチューニング範囲を実現するのに十分に大きい電子光学的係数を呈する。電子光学的又は熱光学的の何れかの適宜な材料の選択は、勿論、用途、すなわち必要とされるチューニング範囲に依存する。
【0088】
熱光学的材料で出来たチューナブル層の場合、温度チューニングのため導体のみが必要であることを理解すべきである。図8を参照すると、フィルタをチューニングするため導電層29(導電層26ではなく)のみが必要とされよう。更に、層30が重合系層である場合、カバー板31は不要である。
【0089】
1つの好ましい実施の形態において、導波路内にて第一回折順位のみが発生される、すなわち次の条件、つまりΛ>λmax/nCが満足され、ここで、λmaxは対象とする範囲の最大波長であり、例えば、その範囲は、C帯域、λmax〜1570nmとなるように格子期間Λが選ばれる、好ましくは、第二順位回折が生ぜず、基本伝搬モードと第一順位回折モードとの間に導波路内にて結合が存在するように格子期間が選ばれるものとする。この最後の条件は、次式により表わすことができる。
【0090】
【数14】
【0091】
ここで、λminは対象とする範囲の最小波長であり、例えば、その範囲がC帯域である場合、λmin〜1530nmである。
一例として、tc=200nmの場合、Λは、約800ないし1050nmとすることができる。
【0092】
図9(a)及び図9(b)において、図3の型式の構造体の性能と図8に示した型式の構造体の性能との比較が示されており、その双方の構造体は、チューナブル層とコア層との間に何ら中間層を有しない。図3を参照すると、層10は存在せず、また、図8を参照すると、層27又は26は存在しない。図9(a)において、FWHMにおける帯域幅は、図3の型式の構造体(黒く塗った四角を付した細い実線は「コアの上方の格子」を特定する)、また、図8に示した型式の構造体(黒く塗った円を付した細い実線は「コアの下方の格子」を特定する)の格子の厚さの関数として示してある。図9(b)において、チューニング範囲は、格子の厚さの関数として示されている。計算するとき、双方の構造体は、次のパラメータ、すなわち低屈折率格子領域のようにnc=1.96、n3=1.445、tc=200nm、Λ=948nm、ΔnG/nG=0.04及びn1=1.5ないし1.7のパラメータを有する。2つの構造体の差は、勿論、格子層の位置である。コア層の上方に格子を有する構造体に対する図9(a)に示したデータは、tc=200nmのときの図2(c)に示したデータに相応する。図9(a)の結果は、任意の検討した格子の厚さのとき、格子がコア層の下方に配置された構造体に対するFWHMにおける帯域幅は格子がコア層とチューナブル層との間にある構造体の帯域幅よりも狭いことを明確に示す。図9(b)は、コアの上方に格子層を有する構造体よりもコア層の下方に配置された格子を有する構造体の方がチューニング範囲が著しく広いことを示す。
【0093】
コアの下方にある格子を有する構造体のチューニング範囲は、検討した格子の厚さの範囲内にてほぼ一定(約45nm)に止まることを認識することが重要である。これに反して、コアの上方に格子を有する構造体の場合、格子の厚さへの依存性が観察される。このことは、導波路の下方に格子を有する共鳴構造体において、例えば、製造過程に関係する限定された精度のため、チューニング可能性は格子の厚さの変動による影響が少ないことを意味する。このように、本発明に従った構造体の場合、格子の製造許容公差を緩和することができる。
【0094】
図10には、本発明の更なる実施の形態に従った共鳴格子フィルタが示されている。共鳴格子フィルタ40において、緩衝層47は基層49上に形成される。高屈折率領域50は緩衝層内に形成され、厚さtGの格子層を形成し、この場合、低屈折率領域53は、高屈折率領域に対し横方向に隣接する緩衝層の領域に相応する。選択的に、厚さt空隙を有する空隙層51が格子層上に形成され、該空隙層は、緩衝層と同一の材料で出来たものであることが好ましい。空隙層51(又は格子層)上にコア層46が形成される。選択的な中間層45をコア層上に形成することができる。電子光学的に制御されたチューナブル層43がコア層の上方に形成される。選択的な反射防止被覆層48が基層49と緩衝層47との間に形成される。透明な導電層42、44が好ましくは、LC材料で出来たチューナブル層の対向面に配置される。これと代替的に、構造体と電気的に接触する2つの層は層42及び基層49としてもよく、この場合、基層は、導電性又は半導性(例えば、シリコンで出来ている)ものとする。ガラスのような絶縁性基層の場合、導電層を基層上にて成長させることができ(図10において、選択可能な層48に相応する位置にて)、その導電層と導電層42(又は45)との間に電気的接触状態が形成されるようにすることができる。ガラスカバー板41はチューナブル層43上に配置される。
【0095】
格子にての基本モードの重なり合いを減少させ、これにより格子自体の特徴を変化させずに、格子の結合効率を減少させるため、空隙層を構造体内に含めることが好ましい。
好ましくは、本発明に従った共鳴格子フィルタは、相対的に小さい回折効率を有する格子を備えるものとする。図11には、図10に示した型式の構造体に対する結合波方程式の解に基づく商業的ソフトウェアを使用して計算した結合効率ηdの関数としてFWHMにおける帯域幅が示されている。検討したFWHMの領域内にFWHMがηdに依存することは第1の一次近似法(a first approximation linear)に対するものである。所望のFWHMが0.4nmである場合、結合効率は0.0015でなければならない。約0.001ないし0.002の範囲に亙る結合効率は、約0.2ないし0.5nmのFWHMに相応する。
【0096】
当該出願人は、これまで検討した実施例の全ての共鳴構造体に対し、FWHMにおける帯域幅対結合効率の曲線は、感知し得る程、変化しないことが分かった。計算する際、格子の厚さはΔnG/nGの異なる値に対して同一の結合効率を有するように変化すべきであることが理解される。例えば、0.0014の結合効率は、ΔnG/nG=0.26及びtG=25nmを有する、コアの上方に格子を有する共鳴構造体により、ΔnG/nG=0.04及びtG=200nmを有する、コアの下方に格子を備える構造体により、又はΔnG/nG=0.04、tG=50nm、t空隙=100nmである、コア及び空隙層の下方に格子を備える構造体により実現することができる。
【0097】
本発明の説明において、回折格子は「弱い」、すなわちηdが約0.0026以下であるならば、相対的に小さい結合効率を有するものと考えた。
図12(a)及び図12(b)には、0nmないし300nmの範囲に亙る空隙層の厚さt空隙の異なる値に対する、図10に示した型式の構造体の格子厚さの関数として、FWHMにおける帯域幅及びチューニング範囲がそれぞれ示されている。t空隙=0とする実線は、空隙層が存在しない、すなわち、コア層格子層上に直接、形成される構造体に相応する。構造的パラメータは次の通りとした。すなわち低屈折率格子層と同様、nc=1.96、n3=1.4455、tc=200nm、Λ=950nm、ΔnG/nG=0.26、n1=1.5ないし1.7とした。曲線は、少なくとも検討した範囲0ないし300nmにおいて、チューニング範囲が空隙層の厚さに相対的に僅かだけ依存することを示す。空隙の厚さの増大は、光学的性能の点にて、格子の厚さの増大と等価的であると考えることができることを認識すべきである。
【0098】
本発明の共鳴構造体において、弱い回折格子を得るため、相対的に薄い厚さ、すなわち150ないし220nm以下の格子を製造する必要はないことを認識すべきである。他方、相対的に薄い(例えば、50nm)の格子が望まれるならば、例えば、プラズマ増進化学的気相成長法のような蒸着法によって格子の厚さを画成することが可能であるから、格子層の形成を十分に制御し且つ再現することができる。格子の低(又は高)屈折率領域を製造するためには、一般に、エッチングステップが必要とされる。現在のエッチング技術は、一般に、少なくとも4ないし5nmの絶対精度を示す。コア層自体がエッチングによる影響を受けるため、格子層がコア層上に配置されるならば、このことは問題となる可能性がある。
【0099】
比較のため、格子の厚さの関数としてのチューニング範囲が図3に示したものの型式の構造体に対し図13に示されており、格子層はコア層の上方に配置され、また、コア層と格子との間に空隙層が存在する。曲線は、0nmないし300nmの範囲のコア層の厚さt空隙の異なる厚さを示す。構造的パラメータは、図4に示した計算値と同一である。所定の格子厚さの場合、空隙層の厚さの増大に伴いチューニング範囲の顕著な低下が観察される。
【0100】
実施例1
図8を参照すると、緩衝層及び低屈折率層は、1.445の屈折率を有する(非添加)SiO2で出来ている。高屈折率格子領域は1.54の屈折率を有するSiOxNyにて出来ている。コア層は1.96の屈折率を有するSi3N4にて出来ている。格子の厚さは、220nmである一方、コアの厚さは200nmである。チューニング層は1.5ないし1.7の範囲の屈折率を有するネマチックLCで出来ている。格子期間は、LC材料の屈折率が1.5であるとき、1526nm(C帯域の下限値)の共鳴波長を有するよう948.5nmである。
【0101】
構造体は、半導体デバイスの製造のための標準的な技術を利用して製造することができる。一例として、SiO2層は、Si基層上にPECVDにより堆積させて緩衝層を形成する。緩衝層の表面は、その後、例えば、ドライエッチングによりエッチングし、形成される高屈折率格子領域22に相応するトレンチ領域を形成する。トレンチを、その後、SiOxNyにて充填する。これと代替的に、SiOxNyの層を緩衝層として基層上に堆積させ、次に、低屈折率に相応するトレンチをその表面に形成し、該トレンチをその後、SiO2にて充填する。
【0102】
次に、形成される表面(すなわち、格子の上面)を平坦化する。後続のステップにおいて、Si3N4の層をPECVDにより堆積させ、コア層を形成する。SiO2の40nm以下の厚さの薄い層をPECVDによりコア層上に選択的に堆積させることができる。更なるステップにおいて、30nm厚さのITO層をコア層又は薄いSiO2層に堆積させる。LCセルを最終的に構造体の頂部に組み立て、ITO層及びガラス板にて完成させる。
【0103】
共鳴構造体のチューニング範囲は約40nmである。
実施例2
図10に示した型式の構造体を参照すると、緩衝層及び空隙層は1.445の屈折率を有する(非添加)SiO2にて出来ている。高屈折率格子領域は0.96の屈折率を有するSi3N4にて出来ている。コア層は1.96の屈折率を有するSi3N4にて出来ている。格子の厚さは50nmであり、コアの厚さは200nmであり、空隙層の厚さは300nmである。チューニング層は、1.5ないし1.7の範囲の屈折率を有するネマチックLCにて出来ている。格子期間は、LC材料の屈折率が1.5であるとき、1526nm(C帯域の下限値)の共鳴波長を有するよう950nmである。厚さ約1mmのガラス板がLCセルを覆う。ITOにて出来ており且つ、厚さ20nmの透明な導電層がLCセルの両面に配置される。コア層上に配置されたITO層の上方にて、LC材料を心合わせさせ得るよう20nm厚さのポリイミド層が形成される。
【0104】
この共鳴構造体のチューニング範囲は約40nmである。
この構造体は、半導体デバイスを製造するための標準的な技術を使用して製造することができる。一例として、緩衝層を形成し得るようSiO2層をSi基層上にPECVDにより堆積させる、その後、Si3N4層を緩衝層上に堆積させる。その後、例えば、ドライエッチングによりSi3N4層をエッチングし、形成すべき低屈折率の格子領域に形成するトレンチ領域を形成する。トレンチを充填し且つSiO2の空隙層を格子上に形成すべくSiO2層を堆積させる。
【0105】
この過程は、トレンチをエッチングするステップの高精度が不要であり、トレンチの僅かな過剰エッチングが可能であるという有利な効果を有する。この場合、格子の厚さの精度は、Si3N4の高屈折率領域の蒸着過程により画成される。
【0106】
1つの好ましい実施の形態において、本発明に従った共鳴格子フィルタは、外部キャビティチューナブルレーザにおけるチューニング要素として使用される。外部キャビティチューナブルレーザは、電気通信の用途、特に、WDM及びDWDMシステムのチューナブル光源として、国際電気通信連合(ITU)グリッドにおける全てのチャネルに対する中心波長を発生させるのに特に適している。
【0107】
図14には、本発明に従ったチューナブル共鳴反射フィルタを備える外部キャビティチューナブルレーザ60が概略図的に示されている。利得媒体61、好ましくは半導体レーザダイオードは、前側小面62と、後側小面63とを備えている。前側小面62は、部分反射型であり、外部キャビティの端部ミラーの1つとして機能する。後側小面63は低反射率を有する。該後側小面は、典型的に、反射防止被覆(図示せず)にて被覆されている。コリメートレンズ64は、利得媒体から放出された光ビームをITUチャネルグリッドに係止されたモードを有するファブリー・ペローエタロン(EP)65に収斂させる。FPエタロンは、複数の等間隔に隔てた伝送ピークを画成する構造及び形態とされたチャネル割り当てグリッド要素として機能する。FPエタロン65の後にて、ビームはチューナブル共鳴格子フィルタ66に衝突し、該フィルタは、外部キャビティの他端ミラーを形成し且つ、利得媒体の前側小面と共に、キャビティの物理的長さL0を画成する。チューナブルフィルタ66は、レーザキャビティの端部ミラーとして機能し、また、チューナブルミラーとも称される。チューナブルミラーは、エタロン伝送ピークの1つを選ぶことにより、所望のチャネル周期にチューニングされる。
【0108】
1つの好ましい実施の形態において、チューナブルミラー66は、電圧発生器67により供給された印加した電圧を変化させることにより、電気的にチューニングされる。印加される電圧は交流(AC)電圧である。レーザのレーザ作用出力波長は、チューナブルミラーの共鳴波長λ0に相応するように選ばれる。チューナブルミラー66は、本発明の好ましい実施の形態の1つに従った共鳴格子フィルタである。
【0109】
レーザシステムは、実質的に単一の長手方向、好ましくは、単一の横断モード光線を発生させる設計とされることが好ましい。長手方向モードは、レーザキャビティ内の幾つかの別個の周波数による同時的なレーザ作用を意味する。横断モードは、レーザ作用光線の横方向へのビーム強さの断面の空間的変化に相応する。全体として、例えば、導波路を含む商業的に利用可能な半導体レーザダイオードのような、利得媒体を適宜に選択することにより、空間的モード又は横単一モード作動が保証される。
【0110】
1つの好ましい実施の形態において、ビームの衝突は、チューナブルミラーの導波路の表面に対し実質的に垂直である。
図14のレーザシステムにおいて、チューナブルミラーは、グリッドエタロンのピーク間を判別する粗チューニング要素として作用する。チューナブルミラーのFWHM帯域幅は、グリッドエタロンのFWHM帯域幅よりも狭くない。長手方向単一モード作動の場合、特定のチャネル周波数に相応するFPエタロンの伝送ピークは、単キャビティモードを選ぶ、すなわち伝送しなければならない。このため、FPエタロンは、FWHMにより分割された自由空間範囲(FSR)として画成された微細度を有する必要がある。この微細度は、各チャネル間のキャビティの隣接するモードを抑制する。単一モードレーザ放出の場合、長手方向キャビティモードは、エタロン伝送ピーク(チューナブルミラーにより選ばれたもの)の1つの最大値の上に配置する必要がある。この要領にて、特定の周波数のみがエタロンを透過し、その他の競合する隣接するキャビティは抑制されよう。
【0111】
本発明に従ったレーザシステムは、ITU50GHz又は25GHzチャネルグリッドにてC帯域の全体に亙りスイッチ機能を提供するよう、特に設計されている。
レーザシステムが50−GHz間隔に対して設計されるならば、チューナブルミラーの反射帯域は、隣接するチャネルの間にて少なくとも5dBの消光比が得られるよう約0.6nm以下でなければならない。好ましくは、チューナブルミラーのFWHMにおける帯域幅は0.4nm以下である。C帯域に亙ってレーザシステムがチューニング可能であるためには、少なくとも40nmのチューニング範囲を有するチューナブルミラーが必要である。
【0112】
25GHzチャネル間隔を有するDWDMシステムに対して外部キャビティレーザ源におけるチューナブルミラーとして適用する場合、約0.2nmないし0.3nmの範囲のFWHMの帯域幅であることが好ましい。
【0113】
0.2ないし0.3nm以下のFWHMにおける帯域幅は、レーザ内でのミラーの心合わせ及び制御を一層、難しくするから、レーザシステムにて望ましくない。
これと代替的に、本発明に従った共鳴格子フィルタは、WDM及びDWDMシステムに対するチューナブルアド/ドロップ装置にて使用することができる。この用途の場合、広範囲のチューニングに加え、例えば、0.1ないし0.2nmな狭小な帯域幅に、及び−30dB以下であることが好ましい、横方向モードの消光比にて共鳴波長付近にて低サブ帯域に特に合うような設計としなければならない。
【0114】
本発明には下記の態様がある。
1.レーザ放出波長の光線(radiation)を放出する形態とされた外部キャビティチューナブルレーザ(external−cavity tunable laser)(60)であって、チューナブルレーザシステムが複数のキャビティモードを有する外部キャビティを備える、外部キャビティチューナブルレーザ(60)において、
光ビームを外部キャビティ内に放出する利得媒体(61)と、
共鳴波長の光ビームを反射するチューナブル光共鳴格子フィルタ(66;20;40)とを備え、該フィルタは、
回折格子と、
該回折格子と光学的に相互作用する平面状導波路(28;46)とを備え、回折格子及び平面状導波路は共鳴構造体を形成し、
フィルタをチューニングすることを許容する選択的に可変の屈折率を有する光透過性材料を備え、前記光透過性材料は、平面状導波路に対するチューナブルクラッディング層(30;43)を形成し、
平面状導波路は、回折格子とチューナブルクラッディング層との間に配置される、外部キャビティチューナブルレーザ。
2.上記1.に記載のレーザシステムにおいて、
放出された光線は長手方向単一モードである、レーザシステム。
3.上記1.に記載のレーザシステムにおいて、
選んだ波長グリッドの相応するチャネルと実質的に心合わせされた複数の通過帯域を画成し得るよう外部キャビティ内に配置されたチャネル割り当てグリッド要素を更に備える、レーザシステム。
4.上記3.に記載のレーザシステムにおいて、
チューナブル共鳴格子フィルタは、光ビームをチューニングすべきチャネルを選び得るよう通過帯域の1つをチューニング可能に選ぶべく外部キャビティ内に配置される、レーザシステム。
5.上記3.又は4.に記載のレーザシステムにおいて、
選んだ波長グリッドは、50GHz又は25GHzチャネル間隔を有する、レーザシステム。
6.上記1.に記載のレーザシステムにおいて、
チューナブル共鳴格子フィルタは、光ビームが平面状導波路の主要面に対し実質的に垂直にフィルタに衝突するよう、外部キャビティ内に配置される、レーザシステム。
7.共鳴波長の光線(optical radiation)を反射する光共鳴格子フィルタ(20;40)において、
低屈折率領域(21;53)と、高屈折率領域(22;50)とを備える周期的構造体を有し、0.0026以下の結合効率ηdを有する回折格子(23;52)と、
前記回折格子と光学的に相互作用する平面状導波路(28;46)とを備え、回折格子及び平面状導波路は共鳴構造体を形成し、
フィルタのチューニングを許容し得るよう選択的に可変の屈折率を有する、光透過性材料であって、平面状導波路に対するチューナブルクラッディング層(30;43)を形成する前記光透過性材料を備え、
平面状導波路は、回折格子とチューナブルクラッディング層との間に配置される、共鳴波長の光線を反射する光共鳴格子フィルタ。
8.上記7.に記載のフィルタにおいて、
光透過性材料は、その選択的に可変の屈折率が電気信号により制御される液晶材料である、フィルタ。
9.上記7.に記載のフィルタにおいて、
回折格子の結合効率は、0.001ないし0.002の範囲にある、フィルタ。
10.上記7.に記載のフィルタにおいて、
平面状導波路は、チューナブルクラッディング層の可変屈折率及び回折格子の平均屈折率よりも大きい屈折率ncを有する層である、フィルタ。
11.上記10.に記載のフィルタにおいて、
平面状導波路に対して回折格子と対向する位置に配置された緩衝層(24、47)を更に備え、
該緩衝層は、回折格子の平均屈折率よりも小さい屈折率n3を有する、フィルタ。
12.上記7.ないし11.の何れか1つの項に記載のフィルタにおいて、
平面状導波路と回折格子との間に配置された空隙層(51)を更に備え、
該空隙層は、導波路の屈折率及び回折格子の屈折率よりも小さい屈折率を有する、フィルタ。
13.上記11.又は12.に記載のフィルタにおいて、
平面状導波路は、窒化ケイ素材料にて出来ており、
窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素の高屈折率領域、低屈折率領域及び緩衝層は二酸化ケイ素にて出来ている、フィルタ。
14.上記12.に記載のフィルタにおいて、
空隙層は二酸化ケイ素にて出来ている、フィルタ。
15.上記8.ないし14.の何れか1つの項に記載のフィルタにおいて、
電気信号を光透過性材料に亙って印加し得るよう光透過性材料の両側部に配置された2つの光透明な導電層(26;42;29;44)を更に備える、フィルタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折格子と、光透過性のクラッディング層と、当該回折格子と当該クラッディング層との間に配置された平面状導波路とを有するチューナブルフィルタにおいて、
前記回折格子は、周期的構造体の中に整列された高屈折率領域と低屈折率領域とを有し、
前記回折格子の結合効率ηdは、0.0026より大きくなく、
前記平面状導波路は、前記回折格子と光学的に相互作用して共鳴構造体を形成し、
前記光透過性のクラッディング層は、選択的に可変の屈折率を有して前記チューナブルフィルタがチューニングされるようにする、フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記光透過性のクラッディング層は、熱光学的材料で形成されている、フィルタ。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記光透過性のクラッディング層は、液晶材料で形成されており、
前記光透過性のクラッディング層の前記屈折率は、電気信号によって制御される、フィルタ。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記回折格子の前記結合効率は、0.001から0.002の範囲にある、フィルタ。
【請求項5】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記平面状導波路の屈折率は、
前記光透過性のクラッディング層の前記可変の屈折率よりも大きく、
前記回折格子の平均屈折率よりも大きい、フィルター。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルタにおいて、
緩衝層を更に有し、
前記回折格子は、前記緩衝層と前記平面状導波路との間に配置され、
前記緩衝層の屈折率は、前記回折格子の前記平均屈折率よりも小さい、フィルタ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のフィルタにおいて、
前記平面状導波路と前記回折格子との間に配置された空隙層を更に有し、
前記空隙層の屈折率は、
前記平面状導波路の前記屈折率よりも小さく、
前記回折格子の平均屈折率よりも小さい、フィルタ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のフィルタにおいて、
前記平面状導波路は、窒化ケイ素で形成されており、
前記高屈折率領域は、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素で形成されており、
前記低屈折率領域及び前記緩衝層は、二酸化ケイ素で形成されている。フィルタ。
【請求項9】
請求項7に記載のフィルタにおいて、
前記空隙層は、二酸化ケイ素で形成されている、フィルタ。
【請求項10】
請求項3に記載のフィルタにおいて、
前記光透過性のクラッディング層の両側に配置された2つの光透明な導電層を更に有し、
電気信号が前記光透過性のクラッディング層に亙って印加される、フィルタ。
【請求項11】
複数のキャビティモードを有する外部キャビティと、
光ビームを前記外部キャビティ内に放出する利得媒体と、
前記外部キャビティ内にあり、共鳴波長の光ビームを反射するチューナブルフィルタと、
を有する外部キャビティレーザシステムにおいて、
前記チューナブルフィルタは、回折格子と、光透過性のクラッディング層と、当該回折格子と当該光透過性のクラッディング層との間に配置された平面状導波路と、を有し、
前記平面状導波路は、前記回折格子と光学的に相互作用して共鳴構造体を形成し、
前記光透過性のクラッディング層は、選択的に可変の屈折率を有して前記チューナブルフィルタがチューニングされるようにする、レーザシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
前記レーザシステムは、長手方向単一モードで光線を放出する、レーザシステム。
【請求項13】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
前記外部キャビティ内にグリッド要素を更に有し、
前記グリッド要素は、選択された波長グリッドの相応するチャネルと実質的に芯合わせされた複数の通過帯域を有する、レーザシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザシステムにおいて、
前記チューナブルフィルタは、光ビームをチューニングするために、通過帯域の1つをチューニング可能に選択する、レーザシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のレーザシステムにおいて、
前記選択された波長グリッドは、50GHz又は25GHzのチャネル間隔を有する、レーザシステム。
【請求項16】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
光ビームは、前記平面状導波路の主要面に対して垂直に前記チューナブルフィルタに衝突する、レーザシステム。
【請求項17】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
前記光透過性のクラッディング層は、熱光学的材料で形成されている、レーザシステム。
【請求項18】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
前記光透過性のクラッディング層は、液晶材料で形成されている、レーザシステム。
【請求項1】
回折格子と、光透過性のクラッディング層と、当該回折格子と当該クラッディング層との間に配置された平面状導波路とを有するチューナブルフィルタにおいて、
前記回折格子は、周期的構造体の中に整列された高屈折率領域と低屈折率領域とを有し、
前記回折格子の結合効率ηdは、0.0026より大きくなく、
前記平面状導波路は、前記回折格子と光学的に相互作用して共鳴構造体を形成し、
前記光透過性のクラッディング層は、選択的に可変の屈折率を有して前記チューナブルフィルタがチューニングされるようにする、フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記光透過性のクラッディング層は、熱光学的材料で形成されている、フィルタ。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記光透過性のクラッディング層は、液晶材料で形成されており、
前記光透過性のクラッディング層の前記屈折率は、電気信号によって制御される、フィルタ。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記回折格子の前記結合効率は、0.001から0.002の範囲にある、フィルタ。
【請求項5】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記平面状導波路の屈折率は、
前記光透過性のクラッディング層の前記可変の屈折率よりも大きく、
前記回折格子の平均屈折率よりも大きい、フィルター。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルタにおいて、
緩衝層を更に有し、
前記回折格子は、前記緩衝層と前記平面状導波路との間に配置され、
前記緩衝層の屈折率は、前記回折格子の前記平均屈折率よりも小さい、フィルタ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のフィルタにおいて、
前記平面状導波路と前記回折格子との間に配置された空隙層を更に有し、
前記空隙層の屈折率は、
前記平面状導波路の前記屈折率よりも小さく、
前記回折格子の平均屈折率よりも小さい、フィルタ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のフィルタにおいて、
前記平面状導波路は、窒化ケイ素で形成されており、
前記高屈折率領域は、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素で形成されており、
前記低屈折率領域及び前記緩衝層は、二酸化ケイ素で形成されている。フィルタ。
【請求項9】
請求項7に記載のフィルタにおいて、
前記空隙層は、二酸化ケイ素で形成されている、フィルタ。
【請求項10】
請求項3に記載のフィルタにおいて、
前記光透過性のクラッディング層の両側に配置された2つの光透明な導電層を更に有し、
電気信号が前記光透過性のクラッディング層に亙って印加される、フィルタ。
【請求項11】
複数のキャビティモードを有する外部キャビティと、
光ビームを前記外部キャビティ内に放出する利得媒体と、
前記外部キャビティ内にあり、共鳴波長の光ビームを反射するチューナブルフィルタと、
を有する外部キャビティレーザシステムにおいて、
前記チューナブルフィルタは、回折格子と、光透過性のクラッディング層と、当該回折格子と当該光透過性のクラッディング層との間に配置された平面状導波路と、を有し、
前記平面状導波路は、前記回折格子と光学的に相互作用して共鳴構造体を形成し、
前記光透過性のクラッディング層は、選択的に可変の屈折率を有して前記チューナブルフィルタがチューニングされるようにする、レーザシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
前記レーザシステムは、長手方向単一モードで光線を放出する、レーザシステム。
【請求項13】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
前記外部キャビティ内にグリッド要素を更に有し、
前記グリッド要素は、選択された波長グリッドの相応するチャネルと実質的に芯合わせされた複数の通過帯域を有する、レーザシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザシステムにおいて、
前記チューナブルフィルタは、光ビームをチューニングするために、通過帯域の1つをチューニング可能に選択する、レーザシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のレーザシステムにおいて、
前記選択された波長グリッドは、50GHz又は25GHzのチャネル間隔を有する、レーザシステム。
【請求項16】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
光ビームは、前記平面状導波路の主要面に対して垂直に前記チューナブルフィルタに衝突する、レーザシステム。
【請求項17】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
前記光透過性のクラッディング層は、熱光学的材料で形成されている、レーザシステム。
【請求項18】
請求項11に記載のレーザシステムにおいて、
前記光透過性のクラッディング層は、液晶材料で形成されている、レーザシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−158907(P2011−158907A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21690(P2011−21690)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【分割の表示】特願2005−512678(P2005−512678)の分割
【原出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(510157498)ピージーティー・フォトニクス・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【分割の表示】特願2005−512678(P2005−512678)の分割
【原出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(510157498)ピージーティー・フォトニクス・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (1)
【Fターム(参考)】
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