説明

ティリロサイドとペプチドとの組合せ

本発明は、少なくとも1つのビオフラボノイド、特にティリロサイドと、少なくとも1つのペプチド、特にパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸とを含む、組合せに関する。本発明は、上記組合せを含有する美容組成物又は皮膚科学組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのビオフラボノイド、特にティリロサイドと、少なくとも1つのペプチド、特にパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸とを含む、組合せに関する。本発明は、上記組合せを含有する美容組成物又は皮膚科学組成物、並びに肌老化及び/又肌老化の徴候の出現を予防、遅延又は処置するそれらの使用にも関する。本組成物は特に、I型コラーゲンの合成を加速及び/又は刺激し、さらに皮膚瘢痕形成を促進する。
【0002】
本発明は、皮膚を美容的に処置する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトでは、解剖学的観点から、皮膚は2つの主要な部分を含む。表皮と呼ばれる薄く浅い部分が、さらに薄い内側の部分である真皮に密着している。
【0004】
表皮(epidermis)(語源的には「epi」(上の)及び「derma」(皮膚)というギリシャ語に由来する)とは、真皮を覆う上皮性の組織を指す。表皮は主に3種類の細胞:ケラチン生成細胞、メラニン形成細胞及びランゲルハンス細胞から成る。表皮には全く血管が通っていない。表皮を構成する細胞には真皮からの拡散によって栄養が供給される。他方、表皮は多くの神経終末を含有する。
【0005】
真皮は、「真皮・表皮接合部」によって表皮とは明確に区別されており、該真皮の下には、はっきりした境界はないが、皮下組織が存在する。
【0006】
真皮は、細胞外物質の合成及び維持を担う様々な細胞型、特に線維芽細胞から構成される。これらは、コラーゲン、エラスチン、基質及び構造糖タンパク質を合成する間葉系由来の細胞である。これらの活性は瘢痕形成現象において強い。
【0007】
真皮は、無定形基質に入った膠原線維、弾性線維及び様々な細胞を組み合わせる結合組織から構成される。真皮には、毛嚢脂腺小胞(follicles)及び汗腺である皮膚付属器、さらには血管及び神経がある。真皮は、その線維及びその基質を通じて、まず第1に皮膚への機械的特性(弾力、衝撃耐性等)の付与に貢献する。
【0008】
真皮の線維は膠原線維及び弾性線維を含む。膠原線維及び弾性線維は、真皮の量的に最も支配的な構造タンパク質である(すなわち、これらの乾燥重量はそれぞれ75%及び5%である)。これらの相対比率及びこれらの配置は真皮の浅い領域か深い領域かによって異なる。
【0009】
コラーゲンは非常に大きなファミリーを形成する。コラーゲンは以下の3アミノ酸反復:−Gly−X−Y(式中、X及びYはプロリン及びヒドロキシプロリンである場合が多い)を有する3つのポリペプチド鎖から成る細胞外マトリクス分子である。
【0010】
真皮の「膠原線維」はコラーゲンVから成る軸の周囲のコラーゲンI及びコラーゲンIIIからそれぞれ構成される。これらのコラーゲンは原線維コラーゲン群に属する。成人では、コラーゲンIは平均でコラーゲンIIIよりも6倍豊富に存在する。コラーゲンIの比率は皮下組織に向かって増加する。
【0011】
老化の際、コラーゲンI/コラーゲンIII比が減少する。非酵素的なメイラード糖化反応に起因する膠原線維間の化学的架橋が指数関数的に増加することが観察される。このように老化コラーゲンが化学的に架橋する結果、線維の硬直化が増大し、コラゲナーゼ及びフリーラジカルによる攻撃に対する耐性がより高くなる。したがって、その分解及びその再生の速度は低下する。
【0012】
線維芽細胞は弾性線維の形成及び安定化だけでなく、該線維の形成異常及び溶解にも関与する結合組織の重要な細胞である。老化の際、線維芽細胞はその活性が減少し、この休止細胞は線維細胞と呼ばれる場合が多い。線維芽細胞はその細胞質が減少し、その小胞体が不足してくるにつれて球状になる(その小胞は非常に分散している(disperse))。細胞骨格は束生の(fascicled)見た目を呈する。この細胞はもはやコラーゲンと接触していない。
【0013】
上記を通読すると、真皮の構造中のコラーゲンの重要性、並びに結果として、肌老化を予防、遅延又は処置するために、また、瘢痕形成プロセスを促進するために、コラーゲンの合成を刺激及び加速することの必要性が理解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、哺乳動物、特にヒトにおいてI型コラーゲンの合成を刺激及び/又は加速することができる製品を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、概して哺乳動物、特にヒトにおいて肌老化及び/又は肌老化の徴候の出現を予防的に又は治癒的に治療することができる製品を提供することである。
【0016】
最近、審美を目的とした皮膚科学技法、例えばピール、レーザ、パルスフラッシュランプ、高周波治療、LED治療等が肌老化の予防又は治療のために開発されている。
【0017】
これらの美容治療技法又は皮膚科学治療技法は、抗老化を目的とした真皮再構築効果のために瘢痕形成及び/又は線維の新合成を後に必要とする皮膚剥離(skin abrasion)を生じる場合がある。
【0018】
本発明の目的は、哺乳動物、特にヒトの皮膚の瘢痕形成を促進する製品を提供することである。
【0019】
本発明の目的はまた、上述した治療から選択される美容治療及び/又は皮膚科学治療に際し、哺乳動物、特にヒトにおいて、コラーゲン新合成を促進し、皮膚再構築を最適化することができる製品を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、レーザ治療、パルスフラッシュランプ治療、高周波治療、LED治療、ピール及びマイクロダーマブレーションから選択される皮膚科学治療に際して、老化の徴候の出現及び/又は加齢に関連する肌障害を予防、遅延又は処置し、及び/又はコラーゲン新合成を促進し、及び/又は皮膚再構築(skin remodeling)を最適化する、皮膚を美容的に治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
これらの目的を達成するために、本出願人は、有利な特性を有する、少なくとも1つのビオフラボノイド、より詳細にはティリロサイドと、少なくとも1つのペプチド、パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸、すなわち、Palm−Lys−Val−Dab−OHとを含む、組合せを発見した。
【0022】
Palm−Lys−Val−Dab−OHペプチドは従来技術においてラミニンV合成の刺激及びコラーゲンI合成の刺激等の生物学的作用を有することが知られている。抗老化、抗しわ及び回復有効成分としてこのペプチドを用いることが記載されている。
【0023】
ティリロサイドは既に従来技術において敏感肌に対する抗老化有効成分として、また、酸化ストレスプロセス及び微小炎症(microinflammation)プロセスから保護する薬剤として記載されている。ティリロサイドは抗アレルギー性、抗エラスターゼ性及び抗コラゲナーゼ性を有することも知られている。
【0024】
したがって、米国特許出願公開第2004/0081675号において、ティリロサイドは、紫外線遮断剤、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、酸化ストレスに対する有効成分、抗老化有効成分、抗アレルギー有効成分、抗炎症有効成分、及び紫外線遮断剤を安定化させる有効成分として記載及び特許請求されている。
【0025】
欧州特許第1393733号には、アトピー性湿疹を治療するためのティリロサイドが記載されている。さらに、コラーゲンに影響を及ぼす病的状態を治療するためのティリロサイドを含有する組成物の使用が記述されている。
【0026】
しかしながら、これらの文献はいずれも、ティリロサイドがコラーゲンI合成刺激活性を有することを記述も示唆もしていない。
【0027】
ティリロサイドとパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸とを含む、組合せ及びそのコラーゲン合成刺激活性についても全く記載されていない。
【0028】
具体的には、驚くべきことに、本出願人は、ティリロサイドとパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸との組合せがコラーゲンI合成刺激活性を有し、この活性がこれらの有効成分のそれぞれを別個に施用した場合の効果の合計よりもはるかに大きいことを発見した。
【0029】
本発明の組合せの注目すべき特性は、これらの化合物のそれぞれを別個に施用した場合の効果の単純和から合理的に予想される比率よりも大きい比率で効果を示すことである。
【0030】
本特性の利点は、美容組成物又は皮膚科学組成物において、これらの製品のそれぞれを一般的な使用許容量よりも少ない量で使用できることである。
【0031】
したがって、本発明の主題は、少なくとも1つのビオフラボノイド、ティリロサイドと、少なくとも1つのペプチド、パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸とを含む、組合せである。
【0032】
ティリロサイド(C3026)は市販されている既知の化合物である。本発明を遂行する目的では、ティリロサイドは純品又は植物抽出物の形態で用いることができる。Merck KgaAによって販売されているものは95%超の精製形態である。国際公開第2006/099930号には、植物からのティリロサイドの調製が記載されている。
【0033】
パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸はPentapharm社から0.2%の水/グリセロール溶媒溶液で販売されている。
【0034】
好ましくは、パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸(P)に対するティリロサイド(T)の重量パーセント(T/P)は、0.1〜1000、有利には0.25〜200である。
【0035】
本発明の主題はまた、美容的に又は皮膚科学的に許容される担体に上記の組合せを含有する美容組成物及び/又は皮膚科学組成物である。
【0036】
美容的に許容される担体、すなわち、皮膚に適合性のある担体は、当業者に既知の全ての形態であり、特に水中油型若しくは油中水型エマルション、水性、油性若しくは水−アルコール溶液、水性若しくは油性ゲル、液体、ペースト若しくは固体無水物製品、又は水相への油分散液で局所用途に用いられる。
【0037】
本発明の組成物はまた、化粧品及び皮膚科学分野において通常用いられる補助剤、例えば親水性又は親油性ゲル化剤、親水性又は親油性有効成分、防腐剤、酸化防止剤、溶媒、香料、遮断剤、充填剤、顔料、キレート剤及び色素等を含有してもよい。
【0038】
本発明の組成物はクリーム、ゲル、セラム、ローション、ミルク又はオイルの形態であり得る。適宜、エアロゾルの形態で皮膚に塗布してもよい。また、固体形態、例えばスティックの形態であってもよい。
【0039】
好ましくは、本組成物は、0.01重量%〜10重量%のティリロサイドと0.0001重量%〜1重量%のパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸とを含有する。有利には、本組成物は、0.01重量%〜1重量%のティリロサイドと0.005重量%〜0.5重量%のパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸とを含有する。さらにより有利には、本組成物は、0.05重量%〜0.5重量%のティリロサイドと0.001重量%〜0.1重量%のパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸とを含有する。
【0040】
本発明に係る組成物は、I型コラーゲンの合成の刺激及び/又は加速に用いられる。このコラーゲンIの合成の刺激及び/又は加速は、ティリロサイドとパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸との組合せの相乗効果に起因する。
【0041】
本発明の組成物のこの性質は、コラーゲン新合成が望ましい全ての環境で用いることができる。
【0042】
結果的に、本発明に係る組成物は、肌老化及び/又は肌老化の徴候の出現の予防、遅延又は処置に用いることができる。
【0043】
本発明の文脈において、「肌老化の徴候」という表現は、時間生物学的老化又は光誘発性老化に起因する肌の外観変化の全てを意味するものとする。これらの肌老化の徴候は例えば、しわ及び小じわ、肌のゆるみ、変色した(weathered)肌、薄くなった肌及びつやのない及び/又は活力のない肌の出現、並びに肌の弾力及び/又は張りの欠如である。肌老化の徴候には、組織的には外観変化を生じない肌の任意の内的な変化、例えば肌の任意の内的な分解、特にコラーゲン分解を挙げることもできる。
【0044】
さらに、特に極めて急速かつ極めて急激な皮膚の伸張後の膠原線維及び弾性線維の破壊に起因する妊娠線の出現も、本発明の組成物により予防及び/又は治療することができる。
【0045】
妊娠線は妊娠の際又は相当な体重変化ひいては急速な成長の後に出現する場合が多い。
【0046】
審美を目的とした美容処置及び/又は皮膚科学処置の中には、皮膚再構築を最適化するために瘢痕形成及び/又はコラーゲン新合成を必要とする皮膚剥離を誘発する可能性があるものが存在する。これらの治療には、レーザ治療、パルスフラッシュランプ治療、高周波治療、発光ダイオード(LED)治療、ピール及びマイクロダーマブレーションを挙げることができる。
【0047】
皮膚科学レーザ治療又は美容レーザ治療の目的は、肌老化の予防及び治療である。
【0048】
概して、様々な種類のレーザが達成すべき目的に応じて用いられる。用いるレーザの種類に関係なく、皮膚再構築に対する有益な効果が観察される。
【0049】
アブレーション(ablative)レーザの原理は、皮膚の非常に薄い層を破壊することである。治療の際、レーザ光が表皮と真皮の最浅部とを揮発させる。したがって、これらの2つの厚みが失われる。真皮においては、主に失われるのは改変されたエラスチン線維であるが、新たな膠原線維の形成をもたらす熱的効果もある。
【0050】
ここで用いるレーザはCOレーザ及び/又はエルビウムレーザである。
【0051】
連続モードで用いるCOレーザ(10600nm)は、凝固により皮膚剥離を誘発し、優先的には著しい光老化を対象とする。瘢痕形成にはおよそ7日必要である。
【0052】
純粋にアブレーションする(凝固しないため、出血を誘発する)パルスEr:Yagレーザ(2950nm)は、リサーフェイシングの誘発がより僅かであるため、それほど著しくない光老化を対象とする。瘢痕形成はより迅速である(およそ7日の修復(eviction))。
【0053】
再構築レーザ及び若返りランプが与える結果はさらに控えめであるが、事実上副作用がない。
【0054】
再構築レーザは表皮の障害を引き起こすことなくコラーゲン新合成を誘発する。再構築レーザにより、肌の張り及びきめが向上し、起伏(小じわ)が伸びる。
【0055】
波長が好ましくは真皮の水又は真皮の浅い血管のいずれかによって吸収される装置を用いる。赤外域(1064nm、1320nm、1450nm、1540nm)又は可視域(パルス色素レーザ、KTPレーザ)及びパルスランプの光を発するレーザを用いることができる。
【0056】
新たな技法であるフラクショナルスムージング(フラクショナル光熱分解)は、上記2つの方法の利点と、より具体的には肌のたるみに作用する新たな技法の利点とを組み合わせることができる。この技法は表面全体をスキャンするのではなく、直径100μmの衝撃を与えるレーザ(1500nm)に基づく。各セッションで、真皮の20%が治療される。瘢痕形成は迅速である(日焼けに近い(pseudo-tanned)見た目を伴う中等度の紅斑)。
【0057】
高周波RF治療(有痛性)及び1100nm〜1800nmの範囲の赤外線装置は、肌のたるみの予防及び/又は治療に用いられる。
【0058】
ピールは、正確かつ制御された皮膚の厚みを除去し、破壊された層の健常再生及び下にある層のアナボリック刺激を誘発することができる別の非外科的技法である。ピールは、破壊された皮膚層に応じて軽いピール、中程度のピール及び深いピールに分類される。深いピールほど、ピールに起因する合併症が重篤になる。
【0059】
マイクロダーマブレーションは水酸化アルミナ結晶の射出及び吸引を含む。吸引力、射出速度及び同一領域の通過数は剥離を調節するように調整することができ、これは表皮剥離(角質層の剥脱)、真皮浅層剥離(出血あり又はなし)又は真皮剥離(出血あり)であり得る。
【0060】
美容及び/又は皮膚科学を目的としたこれらの技法は全て、引き続いて瘢痕形成を必要とする様々な程度の皮膚剥離を引き起こす場合があることは上記の内容から自明である。
【0061】
本発明に係る組成物は、瘢痕形成の刺激及び/又は促進に用いることができる。
【0062】
本発明に係る組成物は特に、例えば上記のような美容治療又は皮膚科学治療の後の瘢痕形成の促進又は刺激に用いることができる。しかしながら、本発明に係る組成物は、傷又は外科的手順に起因する病変の瘢痕形成の促進又は刺激に用いることもできる。
【0063】
本発明の主題である組成物はまた、レーザ治療、パルスフラッシュランプ治療、高周波治療、LED治療、ピール及びマイクロダーマブレーションから選択される皮膚科学治療又は美容治療に際して、コラーゲン新合成の促進及び皮膚再構築の最適化に用いることができる。
【0064】
本組成物は特に、レーザ治療、ピール、マイクロダーマブレーション等の治療に付随させる瘢痕形成製品として用いることができる。この場合、本組成物は美容治療後又は皮膚科学治療後の皮膚に塗布し、塗布は、1日1回〜5回の範囲であり得る頻度で満足な結果が得られるまで繰り返し新しくする。
【0065】
本発明に係る組成物は、治療(例えば:若返り)のパフォーマンスレベルの最適化を目的として、上述した治療のうちの1つの際に治療領域に対して用いることもできる。本発明の組成物は、皮膚科学治療又は美容治療の作用を補強する増強効果を有する。この場合、組成物は、各美容治療作用又は皮膚科学治療作用が始まる直前(数分間又は数時間)に、治療する皮膚の領域に塗布する。
【0066】
本発明の組成物は、審美的治療の有効性を最適化するために、各作用と交互に及び/又は治療後に用いることもできる。本組成物による治療の頻度及び継続期間は、個体及び適用される美容治療及び/又は皮膚科学治療に応じて調整される。
【0067】
さらに、本発明の組成物は抗老化又は瘢痕形成を促進する製品として毎日用いることができる。
【0068】
本発明の主題はまた、レーザ治療、パルスフラッシュランプ治療、高周波治療、LED治療、ピール及びマイクロダーマブレーションから選択される皮膚科学治療に際して、加齢に関連する肌障害及び/又は肌老化の徴候の出現を予防、遅延又は処置し、瘢痕形成及び/又はコラーゲン新合成を促進し、皮膚再構築を最適化する、皮膚を美容的に治療する方法であって、皮膚に対して本発明の主題である組成物を塗布することを含む、方法である。この塗布は皮膚科学治療又は美容治療の前に行うことができ、この治療の2つの作用の間に行ってもよく、又はこの治療の後で行ってもよい。この対象となる皮膚領域への塗布は、個体及び関連する皮膚科学治療又は美容治療に応じたその調整の仕方を当業者が知っている頻度及び継続期間で反復することができる。
【0069】
目的とは関係なく、1日に1回又は2回、数日〜数ヶ月の期間、毎日塗布することを提案することができる。
【0070】
以下に続き、健常成人線維芽細胞におけるI型コラーゲンの合成に対するティリロサイドとパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸との組合せの相乗効果を示す図1に言及する実施例を通読することで、本発明がより明確に理解され、その他の本発明の特徴がより明確に現れるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】真皮の細胞外マトリクスの主要タンパク質であるI型コラーゲンの合成に対するティリロサイドとパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸との組合せの相乗効果を示す。P1:2×10−3%パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸、P2:5×10−4%ティリロサイド、P1×P2:P1及びP2の組合せ、C:対照。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0072】
実施例1
健常成人線維芽細胞におけるI型コラーゲンの免疫局在性を可視化することによって、真皮の細胞外マトリクスの主要タンパク質であるI型コラーゲンの合成に対するティリロサイドとパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸との組合せの相乗効果を実証することができた。
試験品:
本発明者らは2×10−3%パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸(P1)、5×10−4%ティリロサイド(P2)、上記2つの有効成分の組合せ(P1×P2)及び対照(C)を用いた。
【0073】
線維芽細胞を、最小必須培地(MEM)中、シャーレ1枚当たり70000細胞の比率で、カバーガラスを備える6ウェルプレートに播種した。
【0074】
48時間後、細胞を、パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸若しくはティリロサイド又は2つの有効成分の組合せで処理し、又は処理せずに(対照)、37℃、5% COのインキュベーター内で72時間インキュベートした。
【0075】
次いで、各細胞層をメタノール(−20℃)ですすぎ、固定した後、I型コラーゲンを免疫蛍光法によって可視化した。
I型コラーゲンの免疫局在性
細胞を抗コラーゲンI一次抗体(Sigma、1:100希釈)(供給源:マウス)と共にインキュベートした後、TRITC(Abcys、1:100希釈)に結合した抗マウス二次抗体と共にインキュベートする。各抗体間のインキュベーション時間は1時間である。細胞核をDapi標識を用いて可視化する。
【0076】
スライドガラス上にカバーガラスを載せた後、蛍光顕微鏡(Nikon、Eclipse 50i)下で観察する。細胞集団の幾つかのフィールドの写真を撮影する。TRITC蛍光画像はI型コラーゲンの局在の領域を示す。DAPI蛍光画像は細胞核、よって1フィールド当たりの細胞数を示す。写真画像はLucia画像解析ソフトウェアを用いて解析する。
【0077】
統計分析及び結果
コラーゲン標識の強度を、条件に応じて写真画像14枚〜15枚で観察した。
【0078】
この蛍光強度は、1画像当たりの細胞数に関連する。
【0079】
集団間の平均値の差を分散分析(Anova)によって検討した。この方法では、集団に対して測定した平均値の差の有意性又は非有意性を判定するために分散の測定結果を用いる。
【0080】
図1に示す得られた結果から、パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸は、未処理対照と比較して、ヒト皮膚線維芽細胞によって産生されるコラーゲンを統計的に有意(p<0.0001)に増加させることが示される。
【0081】
ティリロサイドは、それほどではないが、統計的に有意に(p=0.0015)I型コラーゲンの発現を刺激する。
【0082】
パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸及びティリロサイドが同時に存在すると、構成成分をそれぞれ別個に施用するよりもI型コラーゲンの合成が刺激される(有意な相互作用、p=0.0278)。
【0083】
この相乗効果はI型コラーゲンの過剰発現につながる。
組成物の例
以下に続く組成物の実施例において用いるペプチドは、パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸(Pentapharm社によって供給される0.2%の水/グリセロール溶媒溶液である市販形態)である。
【0084】
パーセントは組成物の全重量に対する重量パーセントである。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティリロサイド(tiliroside)とパルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸とを含む、組合せ。
【請求項2】
前記パルミトイルリジン−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸(P)に対する前記ティリロサイド(T)の重量パーセント(T/P)が、0.1〜1000、有利には0.25〜200である、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
美容的に又は皮膚科学的に許容される担体に請求項1又は2に記載の組合せを含有する、美容組成物及び/又は皮膚科学組成物。
【請求項4】
0.01重量%〜10重量%、有利には0.05重量%〜0.5重量%のティリロサイドと、
0.0001重量%〜1重量%、有利には0.001重量%〜0.1重量%のパルミトイルリジン−palm−lys−バリン−5ジアミノヒドロキシ酪酸と、
を含有する、美容科学(cosmetological)組成物及び/又は皮膚科学組成物。
【請求項5】
クリーム、ゲル、セラム、ローション、ミルク及びオイルから選択される形態である、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
I型コラーゲンの合成の刺激及び/又は促進に用いられる、請求項3〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
肌老化及び/又は肌老化の徴候の出現の予防、遅延又は処置に用いられる、請求項3〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記肌老化の徴候がしわ、小じわ、肌のたるみ、変色した肌、薄くなった肌及びつやのない及び/又は活力のない肌から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
妊娠線の予防又は処置に用いられる、請求項3〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
瘢痕形成の促進に用いられる、請求項3〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
レーザ治療、パルスフラッシュランプ治療、高周波治療、LED治療、ピール及びマイクロダーマブレーションから選択される皮膚科学治療又は美容治療に際して、コラーゲン新合成の促進及び皮膚再構築の最適化に用いられる、請求項3〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
レーザ治療、パルスフラッシュランプ治療、高周波治療、LED治療、ピール及びマイクロダーマブレーションから選択される皮膚科学治療に際して、加齢に関連する肌障害及び/又は老化の徴候の出現を予防、遅延又は処置し、及び/又はコラーゲン新合成を促進し、及び/又は皮膚再構築を最適化する、皮膚を美容的に治療する方法であって、請求項3〜5のいずれか一項に規定される組成物を皮膚に塗布することを特徴とする、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−524885(P2011−524885A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514087(P2011−514087)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000732
【国際公開番号】WO2009/153459
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510331618)
【Fターム(参考)】