説明

テレビ放送通信システム

【課題】施設建物の各フロア構造が同一ではなく、非常口の位置も各フロア毎に異なる場合を考慮して、火災等の非常時に補助的ながらも的確な避難誘導に寄与する。
【解決手段】ホテルの客室内毎に設置し、モニタ装置(9)に接続するテレビ放送受信装置8が、複数の避難経路画像のテレビ放送を含んだ多数のテレビ放送を受信するテレビ放送受信部21と、上記避難経路画像のテレビ放送の選局情報を記憶し、避難経路画像の表示を指示するリモコンパッド10からの指示に応じて、上記記憶した選局情報を読出し、テレビ放送受信部21で読出した選局情報に該当する避難経路画像のテレビ放送を選局受信してモニタ装置(9)で表示させる制御部31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホテルや旅館等の旅客宿泊施設に好適なテレビ放送通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホテルや旅館等の旅客宿泊施設、病院等の入院施設などでは、火災時等の避難時に備えた非常口の上部の壁や天井付近に避難誘導表示を設置している。また、ホテルや旅館等の客室では、館内の全フロアの避難口を建物の平面図等で表記したパンフレット等を配備して利用者に告知している。
【0003】
ところで、上述した施設で一般に利用されているテレビ放送受信装置は、各客室や病床毎に設置され、利用者は地上波テレビ放送や施設内案内番組等を行なう自主放送と、BS及び地上波デジタル放送等のテレビ放送を任意に選局して視聴することが主たる機能であり、そのシステム運用の一環として、上記施設内の案内番組で火災発生等の非常時の避難非常口を示した画像を一連の案内に入れ、利用者の選択で視聴可能なものとしているものもある。
【0004】
また、一部の施設では、火災等の発生時において、各客室または病床毎に設置された上記テレビ放送受信装置と通信接続されてそれらを統括、管理しているフロントまたはセンターに設置されているコンピュータの操作で、上記テレビ放送受信装置の電源及び選択チャンネルを強制的に制御して、火災発生を利用者に告知する方法が採られている。(例えば、特許文献1,特許文献2)
【特許文献1】特開平10−289390号公報
【特許文献2】特開2001−184583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、避難誘導の表示は、上記特許文献1,2に記載された技術も含めて、一般的に客室内や病室内でその内容を確認できるものではない。また、非常口等を記したパンフレットも、全フロア、全客室に共通したすべての内容を網羅したものであって、実際の非常時には、各客室の利用者が自分のいるフロアがどこであるのか、をまず確認した上で当該フロアの非常口を探す、という煩雑な作業が必要となり、現実の災害に即したものとは言えない。
【0006】
さらに、テレビ放送受信装置を利用した館内案内番組で避難非常口を示した画像等を表示させるものは、視覚的には効果が高いが、利用者の選択操作により視聴可能となるものであり、且つ一連の案内の一部であることから、必要に応じてすぐにその内容を確認することができない。
【0007】
また、統括管理を行なうコンピュータからの強制的な告知は、火災等の発生を画面表示させるものであり、避難経路を表示させるものではない。
【0008】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ホテルや旅館、病院等の施設建物の各フロア構造が必ずしも同一ではなく、避難誘導する非常口の位置も各フロア毎に異なる場合を考慮して、火災等の非常時に補助的ながらも的確な避難誘導に寄与することが可能なテレビ放送通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、施設構内で複数の避難経路画像のテレビ放送を含んだ多数のテレビ放送を送信する送信側装置と、上記多数のテレビ放送を受信する受信手段、選局したテレビ放送を表示する表示手段、上記避難経路画像のテレビ放送の選局情報を記憶する記憶手段、自装置の設置位置に対応した避難経路画像のテレビ放送の選局情報を上記記憶手段に設定する設定手段、避難経路画像の表示を指示する指示手段、及びこの指示手段での指示に応じて上記記憶手段から選局情報を読出し、上記受信手段で読出した選局情報に該当する避難経路画像のテレビ放送を選局受信して上記表示手段で表示させる選局制御手段を備えた、上記施設構内に設置される複数のテレビ放送受信装置とを有したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記避難経路画像は、上記施設構内のフロアの画像及び上記施設構内のフロア中の上記各テレビ放送受信装置が設置された位置の画像の少なくとも一方であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載の発明において、上記テレビ放送受信装置の指示手段は、上記送信側装置から与えられる信号に応答して動作することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、上記請求項1乃至3いずれかに記載の発明において、上記指示手段は、上記送信側装置から与えられる信号に応答して当該テレビ放送受信装置の電源の投入状態及びその時点での選局状態に拘わらず強制的に避難経路画像の表示を指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、テレビ放送受信装置側の利用者の任意の指示操作により自装置の設置位置に対応した避難経路画像を適宜選局して常時画像表示させることができるため、火災等の非常時に必要な避難誘導経路を事前に提示することで、火災等の非常時に補助的ながらも的確な避難誘導に寄与することが可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、例えばホテルや旅館、病院等の施設建物の各フロア構造が必ずしも同一ではなく、避難誘導する非常口の位置も各フロア毎に異なる場合を考慮して、より的確な避難誘導経路を事前に提示することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または2記載の発明の効果に加えて、テレビ放送受信装置側での指示操作のみならず、施設の管理側からも当該テレビ放送受信装置の設置位置に対応した避難経路画像を提示させることができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1乃至3いずれかに記載の発明の効果に加えて、各テレビ放送受信装置の電源投入状態及び選局状態に関係なく強制的にその設置位置に対応した避難誘導経路の画像を表示させることができるため、火災等の非常時に、より迅速且つ的確に避難誘導経路を提示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(本発明の実施の一形態)
以下本発明を例えばホテル施設館内に設置したテレビ放送受信装置を含むテレビ放送通信システムに適用した場合の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、ホテル館内の該テレビ放送通信システム全体の構成を示すものである。同図で、BS・CS放送アンテナ1で受信し、図示しないコンバータで周波数変換した中間周波信号と、地上波デジタル放送アンテナ2で受信した信号とが混合器3で同一周波数軸上に配列されて混合された後に、混合器6に送られる。
【0019】
この混合器6にはまた、フロントコンピュータ4からの双方向通信データ回線5が接続されており、この混合器6でも2つの入力信号を同一周波数軸上に配列して混合する。
【0020】
すなわち、フロントコンピュータ4は、ここでは図示しない自主放送装置が各種避難経路画像のアナログテレビ放送を双方向通信データ回線5に供給するのを管理しており、混合器6での混合信号がこのシステムの配信網を構成する同軸伝送ライン7を通じて、ホテル館内の各客室GR内に配置されたテレビ放送受信装置8まで伝送される。
【0021】
テレビ放送受信装置8は、リモコンパッド10でのキー操作に対応した選局動作を実行し、モニタ装置9で画像及び音声を再生出力させる。
【0022】
次いで図2により上記テレビ放送受信装置8の詳細な機能回路構成について説明する。
【0023】
図中、同軸伝送ライン7を介して送られてきた信号は分配器20で2分配され、その一方がテレビ放送受信部21に、他方が高周波モデム28に送出される。
【0024】
テレビ放送受信部21は、その内部にここでは図示しない地上波チューナ、地上波デジタルチューナ、BS・110°CSデジタルチューナを並列配置するもので、後述する制御部31からの信号に基づいて、上記リモコンパッド10での選局操作に対応したチャンネルを上記各チューナのいずれか1つで選局する。
【0025】
この場合、地上波チューナでは該当するチャンネルのアナログ波形の映像信号及び音声信号を復調して出力する一方で、地上波デジタルチューナ、及びBS・110°CSデジタルチューナでは、該当するチャンネルのトランスポートストリーム(TS)を復調して出力する。
【0026】
しかるにテレビ放送受信部21内では、上記デジタルチューナから出力されたトランスポートストリームに対し、デマルチプレクサで多重化されている映像等の情報と、個別情報のEMM(Entitlement Management Message)情報と番組情報、制御情報のECM(Entitlement Control Message)情報に分離する。
【0027】
さらに、分離したECM情報をデコードすることで映像等の情報のデスクランブル制御を行なった後に、このテレビ放送受信部11内で時間的に連続した映像信号とステレオ音声信号とを生成し、生成した映像信号をD出力端子22より、ステレオ音声信号を音声出力端子24より、映像の複合信号をコンポジット出力端子23より、それぞれ出力する。
【0028】
ここでは、例えばD出力端子22と音声出力端子14がそれぞれここでは図示しないケーブルを介して上記モニタ装置9と接続され、モニタ装置9で映像及び音声が再生出力されるものとする。
【0029】
また、上記出力端子22〜24と並列してこのテレビ放送受信装置8には、上記テレビ放送受信部21と接続されたD入力端子25、コンポジット入力端子26、及び音声入力端子27が設けられ、これらの端子に映像及び音声の各ケーブルを介して外部機器、例えばVTRやDVDプレーヤ等を接続し、上記リモコンパッド10で入力切換操作により当該端子に入力される信号を選択することにより、外部機器から入力される映像及び音声も上記モニタ装置9で再生出力させることができるものとする。
【0030】
上記分配器20で2分配された同軸伝送ライン7からの信号の他方は、上述した通り高周波モデム28に与えられる。この高周波モデム28は、上記同軸伝送ライン7を介して接続される上記フロントコンピュータ4と、高周波FSK変調で上り/下りの両データ通信による双方向通信機能を実現するもので、フロントコンピュータ4からの下りデータ通信で当該テレビ放送受信装置8に対する視聴制限等の制御情報、各種設定情報を受信し、テレビ放送受信装置8への上りデータ通信で有料番組を視聴した課金情報や応答情報等を送信する。
【0031】
この高周波モデム28及び上記テレビ放送受信部21を含めて、テレビ放送受信装置8全体の制御動作を実行するのが制御部31である。
制御部31は、CPUとこのCPUの動作プログラム等を不揮発的に記憶したフラッシュメモリ、及びワークメモリ等から構成されるもので、上記フラッシュメモリ内には、このテレビ放送受信装置8固有のアドレス番号が記憶され、上記フロントコンピュータ4が各客室GR毎にテレビ放送受信装置8を識別するのに利用している他、このテレビ放送受信装置8が設置された客室GRとそのフロアに対応した避難経路画像を放送しているアナログテレビ放送の選局データが設定記憶されており、この選局情報により、上記リモコンパッド10の特定キーの操作により任意のタイミングで必要な避難経路画像をモニタ装置9で表示させることが可能となっている。
【0032】
しかるに、上記制御部31には、上記テレビ放送受信部21と高周波モデム28の他に、操作キー部29、リモコン受光部30、通信インタフェース(I/F)32、磁気カードリーダ/ライタ(R/W)34、及びAC制御部35が接続される。
【0033】
操作キー部29は、電源キーなどを有しており、それらのキー操作による操作信号を直接上記制御部31へ送出する。
【0034】
リモコン受光部30は、上記リモコンパッド10でのキー操作に対応した赤外線信号を受光し、これを復調して対応するキーコード信号を制御部31へ送出する。
【0035】
通信インタフェース32は、通信入出力端子33を介して接続される図示しない外部機器との間でシリアル通信を行なうことにより、その制御とデータ交換とを実行する。
【0036】
磁気カードリーダ/ライタ34は、常時においてはこのホテルの客室GRを使用する宿泊客等の利用者が、有料番組を視聴するためにこのホテル施設構内で購入したプリペイドカードを挿入するもので、有料番組を視聴すると、その料金に応じた度数を減算し、プリペイドカードの排出が指示された時点で残度数データ等を該カードに書込んだ後に排出する。
【0037】
なお、この磁気カードリーダ/ライタ34は、ホテル利用者がプリペイドカードを挿入する他に、このホテルの施設管理側が各種の設定データを記録した設定カードや確認カード等を挿入することで、動作変更や記憶データの確認等を設定、実行することも可能であるものとする。
【0038】
AC制御部35は、電源端子36に上記モニタ装置9の電源プラグを接続することで、当該モニタ装置9への供給電源を投入/切断する。
【0039】
次に上記実施の形態の動作について説明する。
まず、このテレビ放送通信システムを付設しているホテルの客室があるフロアが1F〜3Fの計3フロアであり、1Fは101号室乃至103号室の3部屋、2Fも201号室乃至203号室の3部屋、3Fは301号室〜316号室(304号室と314号室はないものとする)の14部屋、計20部屋の客室が存在するものとする。
【0040】
図3は、アナログテレビ放送として上記自主放送装置が放送する避難経路画像のチャンネル番号を選局データとして示すものである。このように、図示しない自主放送装置はアナログテレビ放送でフロア毎、及び各客室毎の避難経路画像を常時放送出力し続けており、フロントコンピュータ4はこれを常時管理するものであり、一方の各客室GRのテレビ放送受信装置8では対応するチャンネルを選局することで、必要な避難経路画像をモニタ装置9に表示させることができる。
【0041】
加えて、各客室GRのテレビ放送受信装置8では、このホテル客室の管理者により制御部31内のフラッシュメモリにフロアと客室番号に対応した選局データが予め記憶設定されているものとする。
【0042】
図4は、ホテルの施設管理者が磁気カードリーダ/ライタ34に設定カードを挿入するか、あるいは施設管理者専用のリモコンパッドを用いることでモニタ装置9に表示される、避難経路画像の選局設定用の画面を例示するものである。
【0043】
この表示画面に対応して、そのテレビ放送受信装置8が設置された客室GRの該当するフロアと(客室毎の)個別の上記図3で示した選局データを操作、入力すると、その選局データは制御部31内のフラッシュメモリにテレビ放送受信装置8の電源の投入/切断状態に関係なく記憶されるものとなる。
【0044】
例えば、この客室GRが3Fの305号室であれば、施設管理者はフロアに対応する選局データとして「42(ch)」を、個別に対応する選局データとして「59(ch)」を設定登録する。
【0045】
なお、上記客室GR内で宿泊客等が使用する上記リモコンパッド10には、電源キーやチャンネルのアップ/ダウンキー、ボリュームのアップ/ダウンキーに加え、予めフロア毎、客室毎の避難経路画像を表示させるための「フロア」キー及び「個別」キーが設けられているものとする。
【0046】
図5は、客室GRの利用者である宿泊者等がチェックインし、フロントコンピュータ4でこれを設定登録してからテレビ放送受信装置8内の主として制御部31が処理する、避難経路画像の表示に関する制御の内容を示すものである。
【0047】
その当初には、フロントコンピュータ4から非常事態の発生に際して緊急信号が送られてきたか否か(ステップS01)、リモコンパッド10の「フロア」キーが操作されたか否か(ステップS02)、同じくリモコンパッド10の「個別」キーが操作されたか否か(ステップS03)を繰返し判断することで、これらいずれかの状態となるのを待機する。
【0048】
しかして、リモコン受光部30からのキーコード信号によりリモコンパッド10の「フロア」キーが操作された場合、上記ステップS02でこれを判断し、制御部31内のフラッシュメモリに記憶されている、その客室GRのフロアに対応する選局データを読出して(ステップS08)、モニタ装置9の電源を強制的に投入すると共に、テレビ放送受信部21において読出した選局データにしたがったチャンネルのアナログ放送を選局させ、当該フロアの避難経路画像をモニタ装置9画面で表示させながら(ステップS09)、この避難経路画像の表示を解除するためのなんらかのキー操作、例えばリモコンパッド10の電源キー、チャンネルアップ/ダウンキー等が操作されたか否かを判断する(ステップS10)、という処理を繰返し実行することで、リモコンパッド10の所定のキーにより解除が指示されるまで当該フロアの避難経路画像の表示を続行する。
【0049】
図6は、このときモニタ装置9画面に表示される当該フロアの避難経路画像を例示するものであり、例えばこのテレビ放送受信装置8が設置されている客室GRが3Fの305号室であった場合、記憶されている選局データ「42(ch)」により3Fの避難経路画像が自動的に選択されてモニタ装置9で表示されるため、この客室GRの利用者は当該フロアのどの非常口から避難すればよいのかを事前にリモコンパッド10の「フロア」キー操作によってモニタ装置9で表示される内容から、容易に認識しておくことができる。
【0050】
しかして、当該フロアの避難経路画像の表示を解除するリモコンパッド10でのキー操作がなされると、ステップS10でこれを判断し、上記ステップS02でリモコンパッド10の「フロア」キーが操作されたと判断した前の視聴状態にテレビ放送受信装置8及びモニタ装置9を復帰させ(ステップS11)、以上で一連の避難経路画像表示に関する処理を一旦終了して、再び上記ステップS01からの待機処理に戻る。
【0051】
また、上記ステップS01〜S03での待機状態でリモコン受光部30からのキーコード信号によりリモコンパッド10の「個別」キーが操作された場合、上記ステップS03でこれを判断し、制御部31内のフラッシュメモリに記憶されている、その客室GRの個別に対応する選局データを読出して(ステップS12)、モニタ装置9の電源を強制的に投入すると共に、テレビ放送受信部21において読出した選局データにしたがったチャンネルのアナログ放送を選局させ、当該フロア中の客室GRの位置の避難経路画像をモニタ装置9画面で表示させながら(ステップS13)、この避難経路画像の表示を解除するためのなんらかのキー操作、例えばリモコンパッド10の電源キー、チャンネルアップ/ダウンキー等が操作されたか否かを判断する(ステップS14)、という処理を繰返し実行することで、リモコンパッド10の所定のキーにより解除が指示されるまで当該フロアの避難経路画像の表示を続行する。
【0052】
図7は、このときモニタ装置9画面に表示される当該フロア中の当該客室GRに対応した避難経路画像を例示するものであり、例えばこのテレビ放送受信装置8が設置されている客室GRが3Fの305号室であった場合、記憶されている選局データ「59(ch)」により3Fの305号室の客室GRから最寄りの非常口に至る矢印を付加した避難経路画像が自動的に選択されてモニタ装置9で表示されるため、この客室GRの利用者は当該フロアのどの非常口から避難すればよいのかを、事前にリモコンパッド10の「個別」キー操作によってモニタ装置9で表示される内容から、容易に認識しておくことができる。
【0053】
しかして、当該フロアの避難経路画像の表示を解除するリモコンパッド10でのキー操作がなされると、ステップS14でこれを判断し、上記ステップS03でリモコンパッド10の「個別」キーが操作されたと判断した前の視聴状態にテレビ放送受信装置8及びモニタ装置9を復帰させ(ステップS15)、以上で一連の避難経路画像表示に関する処理を一旦終了して、再び上記ステップS01からの待機処理に戻る。
【0054】
さらに、リモコンパッド10の「フロア」キーまたは「個別」キーの操作ではなく、フロントコンピュータ4から非常事態の発生に際して緊急信号が送られてきた場合には、上記ステップS01でこれを判断し、上記緊急信号と共に送られくる選局データを抽出して(ステップS04)、モニタ装置9の電源を強制的に投入すると共に、テレビ放送受信部21において抽出した選局データにしたがったチャンネルのアナログ放送を選局させ、当該フロアまたは当該フロア中の客室GRの位置の避難経路画像をモニタ装置9画面で表示させながら(ステップS05)、この避難経路画像の表示を解除するためのなんらかのキー操作、例えばリモコンパッド10の電源キー、チャンネルアップ/ダウンキー等が操作されたか否かを判断する(ステップS06)、という処理を繰返し実行することで、リモコンパッド10の所定のキーにより解除が指示されるまで当該避難経路画像の表示を続行する。
【0055】
このとき避難経路画像のアナログテレビ放送を送信する送信元でもあるフロントコンピュータ4では、各フロア及び客室毎に予め複数パターンの避難経路画像を用意しておき、例えば災害が火災であればその火元の位置に対応してより適切な避難経路画像を選択して送信するものとすれば、避難誘導を効率的に実施して、少なくとも人的な被害を最小限に抑えることが可能となる。
【0056】
そして、当該避難経路画像の表示を解除するリモコンパッド10でのキー操作がなされると、ステップS06でこれを判断し、上記ステップS01でフロントコンピュータ4からの緊急信号を受信したと判断した前の視聴状態にテレビ放送受信装置8及びモニタ装置9を復帰させ(ステップS07)、以上で一連の避難経路画像表示に関する処理を一旦終了して、再び上記ステップS01からの待機処理に戻る。
【0057】
このように、テレビ放送受信装置8及びモニタ装置9が設置された客室GRの利用者のリモコンパッド10を用いた任意の指示操作により、当該装置の設置位置に対応した避難経路画像を適宜選局して画像表示させることができるため、例えばホテルや旅館、病院等の施設建物の各フロア構造が必ずしも同一ではなく、避難誘導する非常口の位置も各フロア毎に異なる場合を考慮して、火災等の非常時に必要な避難誘導経路を事前に提示することで、火災等の非常時に補助的ながらもより的確な避難誘導に寄与することが可能となる。
【0058】
加えて、テレビ放送受信装置8側のリモコンパッド10での所定のキー操作のみならず、施設の管理側であるフロントコンピュータ4からも必要に応じて、随時当該テレビ放送受信装置8及びモニタ装置9を設置した客室GRの位置に対応した避難経路画像を提示させることができる。
【0059】
さらに、上記実施の形態では、施設の管理側からの非常事態時の緊急信号やリモコンパッド10での「フロア」キー及び「個別」キーの操作により、テレビ放送受信装置8の電源投入状態及び電源投入時の選局状態に関係なく、強制的にその設置位置に対応した避難誘導経路の画像を表示させるものとした。これにより、特に火災等の非常時にあっても、より迅速且つ的確に避難誘導経路を提示することができる。
【0060】
なお、上記実施の形態では、フロントコンピュータ4から非常事態の発生に際して緊急信号が送られてきた時のみならず、リモコンパッド10の「フロア」キー及び「個別」キーの操作に際してもテレビ放送受信装置8の電源の投入/切断状態に関係なくモニタ装置9の電源を強制的に投入し、モニタ装置9で対応した内容の避難経路画像を表示させるものとしたが、本発明はこれに限らず、予めリモコンパッド10の電源キーのオン操作によりテレビ放送受信装置8がスタンバイ状態から完全に起動されており、且つモニタ装置9も電源が投入されている状態にのみ、リモコンパッド10の「フロア」キー及び「個別」キーの操作に応じてそれらのキー操作を有効とし、それまで視聴していた他のチャンネルの画像に代えて、対応する避難経路画像をチャンネル選択によりモニタ装置9画面で表示させるものとしても良い。
【0061】
なお、上記実施の形態は、必要な複数の避難経路画像を地上波アナログ放送のチャンネル周波数軸上に配列して提供するものとしたが、客室GRの室数の関係でチャンネル数が不足することも考えられるので、放送容量のより大きなデジタル放送で、例えばBML(Broadcast Markup Language:BSデジタルデータ放送用コンテンツの記述に使用されるマークアップ言語)を使用した避難経路画像を放送するものとしても良い。この場合、テレビ放送受信装置8側では選局チャンネルのデータとフロア及び個別の避難経路画像を識別する識別子のデータを記憶するものとすれば容易に実現が可能となる。
【0062】
なお、上記実施の形態では避難経路画像をモニタ装置9の画面で表示させるものとしてのみしか説明しなかったが、当該画像と併せて、必要により避難が必要であることの警告、及び避難先の非常口へ誘導するための音声を報知出力させるものとしても良い。
【0063】
(本発明の他の実施の形態1)
上記実施の形態では、避難経路画像をテレビ放送として提供する場合について説明したが、中央にサーバ機能を有するメインコンピュータを配し、このメインコンピュータに複数の避難経路画像を蓄積させると共に、各端末機のアドレス等を管理させ、一方で上記メインコンピュータとネットワーク(LAN)接続された複数の端末側でパーソナルコンピュータによる端末機をテレビ放送受信装置と接続しておくことで、上記実施の形態と同様に利用者の任意の避難経路画像の確認と非常発生時の強制的な避難経路画像の出力とが可能となる。
【0064】
その場合、端末側のテレビ放送受信装置及びそのリモコンパッドが上記図2に示したものと同様の構成をとるものとすると、リモコンパッド10の「フロア」キーまたは「個別」キーの操作信号をリモコン受光部30が受信し、そのキーコードを制御部31へ出力する。
【0065】
これを受けた制御部31は、避難経路画像の出力要求に、客室番号に対応したアドレス情報とフロア/個別の識別情報を付加し、通信インタフェース32を介して通信入出力端子33に接続された端末機であるパーソナルコンピュータに出力する。
【0066】
パーソナルコンピュータは、当該要求をネットワークを介してメインコンピュータに送信し、これに応答してメインコンピュータから避難経路画像の信号が送られてくると、D入力端子25またはコンポジット入力端子26によりテレビ放送受信装置8側に転送する。
【0067】
この避難経路画像の信号を受けたテレビ放送受信装置8では、入力切換えを行なってD出力端子22またはコンポジット出力端子23よりモニタ装置9側に避難経路画像を出力し、表示させる。
【0068】
また、メインコンピュータ側から強制的に避難経路画像が送られてきた場合も同様の処理系統を用いてテレビ放送受信装置8からモニタ装置9へ避難経路画像の信号を出力し、表示させることとなる。
【0069】
なお、上記モニタ装置9で表示させる避難経路画像の信号に、テレビ放送受信装置8内で地上波アナログ放送、デジタル放送、及び外部入力のいずれを使用するかは予めテレビ放送受信装置8内で設定しておくものとする。
【0070】
このように、テレビ放送の受信装置に外部接続されるコンピュータネットワークのシステムでも、その設置位置に対応した避難経路画像を得ることができる。
【0071】
(本発明の他の実施の形態2)
本発明の他の実施の形態2では、テレビ放送の受信装置は一切使用せず、施設構内に複数設置した端末側のパーソナルコンピュータと、これらとネットワーク(LAN)接続されたサーバ側のメインコンピュータとでなるシステム構成の場合について説明する。
【0072】
この場合、メインコンピュータは、施設構内の位置に対応した避難経路画像を蓄積すると共に、各パーソナルコンピュータの設置位置と対応するアドレス情報を管理することとなる。
【0073】
パーソナルコンピュータから避難経路画像の出力要求があった場合、メインコンピュータは、その要求に付加されているアドレス情報から必要な避難経路画像を選択し、選択した避難経路画像を対応するパーソナルコンピュータに返送する。
【0074】
また、非常事態の発生時にはメインコンピュータがこれを認識し、強制的にネットワーク接続されているすべてのパーソナルコンピュータにそれぞれの設置位置に対応した避難経路画像を送信する。
【0075】
このように、テレビ放送の受信に関与しないコンピュータネットワークのシステムでも、施設構内に設置した複数の端末側のコンピュータでその設置位置に対応した避難経路画像を得ることができる。
【0076】
その他、本発明は上記各実施の形態に限らず、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能であるものとする。
【0077】
さらに、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の一形態に係るテレビ放送通信システム全体の構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態に係るテレビ放送受信装置の機能回路構成を示すブロック図。
【図3】同実施の形態に係る避難経路画像と対応する選局データの関係を示す図。
【図4】同実施の形態に係る避難経路画像の選局設定用の画面を例示する図。
【図5】同実施の形態に係る避難経路画像表示に関する処理内容を示すフローチャート。
【図6】同実施の形態に係るフロア毎に表示される避難経路画像を例示する図。
【図7】同実施の形態に係る客室毎に個別に表示される避難経路画像を例示する図。
【符号の説明】
【0079】
1…BS・CS放送アンテナ、2…地上波デジタル放送アンテナ、3…混合器、4…フロントコンピュータ、5…双方向通信データ回線、6…混合器、7…同軸伝送ライン、8…デジタル放送受信装置、9…モニタ装置、10…リモコンパッド、20…分配器、21…テレビ放送受信部、22…D出力端子、23…コンポジット出力端子、24…音声出力端子、25…D入力端子、26…D入力端子、27…音声入力端子、28…高周波モデム、29…、30…、31…制御部、32…通信インタフェース(I/F)、33…通信入出力端子、34…磁気カードリーダ/ライタ(R/W)、35…AC制御部、36…電源端子、GR…客室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設構内で複数の避難経路画像のテレビ放送を含んだ多数のテレビ放送を送信する送信側装置と、
上記多数のテレビ放送を受信する受信手段、選局したテレビ放送を表示する表示手段、上記避難経路画像のテレビ放送の選局情報を記憶する記憶手段、自装置の設置位置に対応した避難経路画像のテレビ放送の選局情報を上記記憶手段に設定する設定手段、避難経路画像の表示を指示する指示手段、及びこの指示手段での指示に応じて上記記憶手段から選局情報を読出し、上記受信手段で読出した選局情報に該当する避難経路画像のテレビ放送を選局受信して上記表示手段で表示させる選局制御手段を備えた、上記施設構内に設置される複数のテレビ放送受信装置と
を有したことを特徴とするテレビ放送通信システム。
【請求項2】
上記避難経路画像は、上記施設構内のフロアの画像及び上記施設構内のフロア中の上記各テレビ放送受信装置が設置された位置の画像の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1記載のテレビ放送通信システム。
【請求項3】
上記テレビ放送受信装置の指示手段は、上記送信側装置から与えられる信号に応答して動作することを特徴とする請求項1または2記載のテレビ放送通信システム。
【請求項4】
上記指示手段は、上記送信側装置から与えられる信号に応答して当該テレビ放送受信装置の電源の投入状態及びその時点での選局状態に拘わらず強制的に避難経路画像の表示を指示することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のテレビ放送通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−49943(P2006−49943A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223692(P2004−223692)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(592205735)株式会社ケイティーエス (16)
【Fターム(参考)】