説明

ディスクブレーキ装置および制御装置

【課題】ディスクロータの温度を正確に推定する。
【解決手段】ブレーキユニットの電動モータは、ブレーキパッドをディスクロータに押し付けるように移動させるように構成される。摩擦係数推定部124は、ディスクロータの温度に対して予め準備されているマップを参照してディスクロータの摩擦係数を推定する。仕事量算出部114は、推定された摩擦係数と、ブレーキパッドのディスクロータへの押し付け力と、ブレーキパッドがディスクロータの摩擦摺動面上を移動した距離とを使用して、ブレーキパッドの仕事量を算出する。温度推定部118は、算出された仕事量と、予め準備されているディスクロータの熱容量とを使用して、ディスクロータの温度を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを使用してディスクロータに制動力を発生させるディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動ディスクブレーキ装置は、制動要求に応じて、電動モータを使用してブレーキパッドをディスクロータに押し付けて制動力を発生させる。このような電動ディスクブレーキ装置では、車両の制動を繰り返すことで、ブレーキディスクの温度が上昇してディスクロータやブレーキパッドが熱膨張したり、または熱によりブレーキパッドが摩耗したりして、ディスクロータとブレーキパッドの間のクリアランス距離が変化する。したがって、車両の走行中に、ブレーキパッドを移動させる基準となるゼロ点位置を随時修正する必要がある。ゼロ点位置が正確でないと、制動要求に対する応答性が低下したり、またはブレーキパッドの引き摺りが発生するなどの問題が生じるためである。
【0003】
上述のように、ゼロ点位置は熱膨張を考慮する必要があるので、車両走行中のディスクロータ温度をできるだけ正確に求めることが必要になる。例えば、特許文献1には、制動時に車両が失った運動エネルギーに基づき、ディスクロータ温度を推定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−213507号公報
【特許文献2】特開2002−067932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の重量変化および道路勾配の違い等によっても制動時に車両が失う運動エネルギーは変化するので、これらを考慮した上で運動エネルギーを算出しない限り、特許文献1に記載の技術ではディスクロータ温度を正確に推定することができない。ひいては、ブレーキパッドのゼロ点位置も正確に設定することができなくなる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動モータを使用してディスクロータに制動力を発生させるディスクブレーキ装置において、ディスクロータの温度を正確に推定するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、ディスクブレーキ装置である。この装置は、車輪とともに回転するディスクロータと、前記ディスクロータの摩擦摺動面に相対して配置されるブレーキパッドと、前記ブレーキパッドを前記ディスクロータに押し付けるように移動させるモータと、前記ブレーキパッドがブレーキペダル操作に応じた押し付け力を発生させるように前記モータに指令する駆動部と、前記ディスクロータの温度に対して予め準備されているマップを参照して前記ディスクロータの摩擦係数を推定する摩擦係数推定部と、前記摩擦係数推定部により推定された摩擦係数と、前記ブレーキパッドの前記ディスクロータへの押し付け力と、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータの摩擦摺動面上を移動した距離とを使用して、前記ブレーキパッドの仕事量を算出する仕事量算出部と、前記仕事量算出部により算出された仕事量と、予め準備されている前記ディスクロータの熱容量とを使用して、前記ディスクロータの温度を推定する温度推定部と、を備える。
【0008】
この態様によると、ブレーキパッドがディスクロータに対してなす仕事量に基づきディスクロータの温度を推定するので、車両の重量変化または道路勾配等に影響を受けずにディスクロータ温度を正確に推定することができる。
【0009】
前記温度推定部は、予め準備されている前記ディスクロータの冷却係数を使用して車両の走行中に失われる温度を考慮して前記ディスクロータの温度を推定してもよい。これによると、車両の走行中にディスクロータから熱が奪われることによる温度低下が考慮されるので、さらに正確なディスクロータ温度を推定することができる。
【0010】
前記温度推定部により推定されたディスクロータ温度に基づき、前記ディスクロータと前記ブレーキパッドのうち少なくとも一方の熱膨張量を算出する熱膨張量算出部と、前記熱膨張量算出部により算出されたディスクロータとブレーキパッドのうち少なくとも一方の熱膨張量を使用して、前記ブレーキパッドを移動させる際の基準となるゼロ点を設定するゼロ点設定部と、をさらに備えてもよい。これによると、ディスクロータまたはブレーキパッドの熱膨張量を使用して車両走行中に常にゼロ点が修正されるため、経時的なゼロ点のずれに起因する、制動要求に対するディスクブレーキの応答性低下またはブレーキパッドの引き摺り等を防止することができる。
【0011】
前記温度推定部により推定されたディスクロータ温度に対して予め準備されているマップを参照して前記ブレーキパッドの摩耗量を推定する摩耗量推定部と、前記摩耗量推定部により推定されたブレーキパッドの摩耗量を使用して、前記ブレーキパッドを移動させる際の基準となるゼロ点を設定するゼロ点設定部と、をさらに備えてもよい。これによると、ブレーキパッドの摩耗量を使用して車両走行中に常にゼロ点が修正されるため、経時的なゼロ点のずれに起因する、制動要求に対するディスクブレーキの応答性低下またはブレーキパッドの引き摺り等を防止することができる。
【0012】
本発明の別の態様は、ディスクブレーキユニットの制御装置である。この装置は、ブレーキパッドをディスクロータに押し付けるように構成されたモータに対して、ブレーキペダル操作に応じた押し付け力を発生させるように指令する駆動部と、前記ディスクロータの温度に対して予め準備されているマップを参照して前記ディスクロータの摩擦係数を推定する摩擦係数推定部と、前記摩擦係数推定部により推定された摩擦係数と、前記ブレーキパッドの前記ディスクロータへの押し付け力と、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータの摩擦摺動面上を移動した距離とを使用して、前記ブレーキパッドの仕事量を算出する仕事量算出部と、算出された仕事量と、予め準備されている前記ディスクロータの熱容量とを使用して、前記ディスクロータの温度を推定する温度推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電動モータを使用してディスクロータに制動力を発生させるディスクブレーキ装置において、ディスクロータの温度を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスクブレーキ装置の概略構成図である。
【図2】図1に示したパッド位置決定部の構成を示すブロック図である。
【図3】ディスクロータの温度と摩擦係数との関係を示すマップの例である。
【図4】ディスクロータの温度と摩耗率との関係を示すマップの例である
【図5】本実施形態によるディスクロータ温度の推定値と実測値とを対比したグラフである。
【図6】本実施形態によるゼロ点位置の計算値と実測値とを対比したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係るディスクブレーキ装置10の概略構成図である。
【0016】
車室内に設置されるドライバーが操作するブレーキペダル12には、ストロークセンサ14が設置される。ストロークセンサ14は、ブレーキペダル12の操作量を検知し、その値をブレーキECU100に与える。なお、ストロークセンサ14に加えて、またはストロークセンサ14の代わりに、ブレーキペダル12の踏み込み力を検出する踏力センサを使用してもよい。
【0017】
図1には、電動ブレーキユニット80の断面図が示されている。電動ブレーキユニット80は、いわゆるディスクブレーキの一種であり、ブレーキECU100からの指令により制動力を発生させるように構成されている。
【0018】
電動ブレーキユニット80は、図示しない車両の車輪とともに回転するディスクロータ50と、摩擦部材としてのブレーキパッド30と、ブレーキパッドを移動させるキャリパ82とを備える。
【0019】
ブレーキパッド30は、ディスクロータ50の両側に配置された一対のブレーキパッド30a、30bを含む。ブレーキパッド30a、30bは、ディスクロータの軸方向に摺動可能に車体側に支持されている。
【0020】
ブレーキパッド30aの背部には、キャリパ82のピストン22が取り付けられている。また、ブレーキパッド30bの背部には、キャリパ82の爪部74が配置されている。
【0021】
キャリパ82の内部には電動モータが配設されている。電動モータ20は、制動時にブレーキパッド30をディスクロータ50に向けて押し付けるとともに、非制動時にブレーキパッド30をディスクロータ50から離隔させるための駆動手段である。
【0022】
電動モータ20の出力軸には、上述のピストン22が連結される。図示しないが、ピストン22の内部には、電動モータ20の出力軸の回転運動をピストン22の直線運動に変換するためのボールねじ機構が配設されている。このような構造は周知なので、詳細な説明を省略する。
【0023】
ブレーキペダル12が操作されると、電動モータ20が作動してピストン22を図中の左方向に移動させ、ピストン22の先端のブレーキパッド30aがディスクロータ50の車体内側の面に押し付けられる。このとき、ピストン22の反力によって、キャリパ82がピストン22の移動方向とは反対の方向(図中の右方向)へ移動され、キャリパ82の爪部74によってブレーキパッド30bがディスクロータ50の車両外側の面に押し付けられる。これにより、ディスクロータ50が一対のブレーキパッド30により挟圧されて、車輪が制動される。
【0024】
ブレーキペダル12が操作されていない場合、電動モータ20は、一対のブレーキパッド30がディスクロータ50との間に所定のクリアランスを空けて位置するように、ピストン22をゼロ点に移動させる。ゼロ点の設定方法は、図2を参照して後述する。
【0025】
キャリパ82内には、エンコーダ24と荷重センサ26も設けられている。エンコーダ24は、電動モータ20の回転角を検出してブレーキECU100に送信する。荷重センサ26は、ディスクロータ50に対するブレーキパッド30の押し付け力Fを検出してブレーキECU100に送信する。荷重センサ26は、ボールねじの歪み量に基づき押し付け力Fを推定する構成であってもよいし、ブレーキパッドの押し付け量に基づき押し付け力Fを推定する構成であってもよい。
【0026】
車体の外部に設置される温度センサ52は、大気温を検出してパッド位置決定部104に送信する。
【0027】
図示しない車輪の近傍に設置される車輪速センサ54は、車輪の車輪速を検出してパッド位置決定部104に送信する。
【0028】
ブレーキECU100は、ドライバーによるブレーキペダル操作量に応じた制動力を発生させるように電動ブレーキユニット80を制御する。ブレーキECU100は、制動力計算部102、パッド位置決定部104およびモータ駆動部106を含む。
【0029】
制動力計算部102は、ストロークセンサ14によって検出されたストローク量に応じて、車輪に発生させる制動力を計算する。制動力計算部102は、ストローク量の代わりに、ブレーキペダルの踏み込み力に応じて制動力を計算してもよい。
【0030】
パッド位置決定部104は、ブレーキパッド30のディスクロータ50への押し付けにより発生する、ディスクロータ50の熱膨張量およびブレーキパッドの摩耗量を計算する。そして、これらの値に基づき、ブレーキパッドを移動させるときの基準位置となるピストン22のゼロ点を修正する。パッド位置決定部104の動作は、図2を参照して詳細に後述する。なお、パッド位置決定部104は、車両の走行中に所定の間隔(例えば1秒)でゼロ点の修正を繰り返し行うことが好ましい。
【0031】
モータ駆動部106は、制動力計算部102によって計算された制動力を発生させるように、電動モータ20に駆動信号を送る。すなわち、モータ駆動部106は、計算された制動力に対して予め設定されている押し付け量だけブレーキパッドをディスクロータに対して移動させるように、電動モータを制御する。
【0032】
車両の走行中、ディスクロータの熱膨張およびブレーキパッドの摩耗によって、非制動時すなわちブレーキパッド後退時のブレーキパッドとディスクロータ間のクリアランス距離は常に変化する。したがって、モータ駆動部106は、パッド押し付け量の基準となるゼロ点をパッド位置決定部104から受け取り、このゼロ点を始点として適切な押し付け量が実現されるように電動モータ20に駆動信号を発する。このとき、電動モータの絶対位置を出力するエンコーダ24から受け取る位置信号によるフィードバックループを構成することが好ましい。
【0033】
図2は、図1に示したパッド位置決定部104の構成を示すブロック図である。各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0034】
移動距離算出部110は、車輪速センサ54からの車輪速信号を使用して、前回の計算時から今回の計算時までのディスクロータの回転数Rを計算し、さらに、予め記憶されているディスクロータの有効径Dを用いて、ブレーキパッドのディスクロータ上での引き摺り距離L=πDRを計算する。
【0035】
摩擦係数推定部124は、前回温度保持部126に記憶されている前回演算時に推定されたディスクロータ温度を用いて、予め準備されているマップ(図3に示す)を参照して、ディスクロータの摩擦係数μを推定する。
【0036】
仕事量算出部114は、移動距離算出部110で計算されたL、摩擦係数推定部124で推定されたμ、および荷重センサ26で検出されたブレーキパッドの押し付け力Fを用いて、ディスクロータ上でのブレーキパッドの仕事量W=μFLを計算する。
【0037】
上昇温度算出部116は、仕事量算出部114で計算された仕事量Wがディスクロータの温度上昇にエネルギー変換されたものとして、予め記憶されているディスクロータの熱容量を使用して、上昇温度Tを計算する。
【0038】
冷却係数推定部112は、車輪速センサ54で検出される車輪速から車速を計算し、その車速におけるディスクロータの冷却係数kを推定する。車速と冷却係数との関係は予め実験により測定され、マップ、テーブルまたは変換式として冷却係数推定部112に記憶されている。
【0039】
温度推定部118は、前回温度保持部126に記憶されているディスクロータの前回温度Tp、上昇温度算出部116により計算された上昇温度T、現在の大気温T、冷却係数推定部112で推定された冷却係数kを使用して、ディスクロータの現在温度Tを次式に基づき推定する。
T=T+T+k(T−T
【0040】
温度推定部118によって推定された温度Tは、前回温度保持部126に記憶され、次回の演算時に摩擦係数推定部124および摩耗量推定部128によって利用される。
【0041】
摩耗量推定部128は、前回温度保持部126に記憶されている前回演算時に推定されたディスクロータ温度を用いて、予め準備されているマップ(図4に示す)を参照して、ブレーキパッドの摩耗率を推定する。そして、推定された摩耗率と、ブレーキパッドの移動距離Lとを用いて、ブレーキパッドの摩耗量Rを計算する。
【0042】
熱膨張量算出部120は、温度推定部118によって推定されたディスクロータ温度Tと、予め記憶されているディスクロータの熱膨張係数とを使用して、ディスクロータの熱膨張量Eを計算する。また、熱膨張量算出部120は、温度推定部118によって推定されたディスクロータ温度Tと、予め記憶されているブレーキパッドの熱膨張係数とを使用して、ブレーキパッドの熱膨張量Eを計算する。
【0043】
ゼロ点設定部122は、前回の演算時に設定されたゼロ点位置Lpに対して、熱膨張量算出部120により計算されたディスクロータの熱膨張量Eおよびブレーキパッドの熱膨張量Eを減算し、さらに摩耗量推定部128で計算された摩耗量を加えて、新たなゼロ点位置Lを設定する。すなわち、L=Lp−E−E+Rとなる。
【0044】
モータ駆動部106は、ゼロ点設定部122により設定されたゼロ点位置にピストンを移動させるように、電動モータ20に対し駆動信号を出力する。
【0045】
図3は、事前に実験により求められた、ディスクロータの温度と摩擦係数との関係を示すマップの例である。図3の横軸がディスクロータ温度を、縦軸が対応する摩擦係数を表す。このマップ上で、前回演算時のロータ温度推定値に対応する摩擦係数を求めることで、上述のように仕事量を算出することができる。
【0046】
図4は、事前に実験により求められた、ディスクロータの温度とブレーキパッドの摩耗率との関係を示すマップの例である。図4の横軸がディスクロータ温度を、縦軸が対応するブレーキパッドの摩耗率を表す。このマップ上で、前回演算時のロータ温度推定値に対応する摩耗率を利用することで、上述のようにブレーキパッドの摩耗量を算出することができる。
【0047】
図5は、所定の実験車両に対して本実施形態で述べた手順により推定されたディスクロータ温度と、ディスクロータの実測値とを対比したグラフである。図中、点線がディスクロータ温度の推定値を表し、実線が実測値を表す。図示するように、本実施形態の手法により、ディスクロータ温度を精度良く推定できることが分かる。
【0048】
図6は、所定の実験車両に対して本実施形態で述べた手順により計算されたピストンのゼロ点と、実験車両における実際のゼロ点とを対比したグラフである。図中、点線がゼロ点の計算値を表し、実線が実測値を表す。図示するように、本実施形態の手法により、ピストンのゼロ点を精度良く計算できることが分かる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両の走行中のディスクロータの温度変化によるディスクロータの熱膨張およびブレーキパッドの摩耗等を考慮して、ブレーキパッドを移動させるピストンのゼロ点を走行中に高精度で修正することができる。
【0050】
また、本実施形態では、従来技術のように車両の運動量に基づきディスクロータ温度を推定するのではなく、仕事量に基づき推定するようにした。この結果、車両の重量の変化または道路勾配等の影響を受けずに、正確に温度を推定することが可能になる。
【0051】
従来では、摩擦係数が温度依存であるため仕事量を正確に算出することができなかったが、本実施形態では、予め実験により測定されたマップを使用することで、ディスクロータ温度に対する摩擦係数を求めるので、仕事量を正確に算出することができる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態はあくまで例示であり、実施の形態どうしの任意の組み合わせ、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスの任意の組み合わせなどの変形例もまた、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0053】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能である。
【0054】
車両が長時間駐車していると、ディスクロータ温度が低下してディスクロータの熱膨張量が減少するが、この場合、イグニッションオン時には上述のゼロ点を正確に求めることができない。そこで、熱膨張量算出部は、イグニッションオン時に、タイマで測定された直前のイグニッションオフ時からの経過時間と大気温とを使用して現在のディスクロータ温度を推定し、推定した温度により熱膨張量を算出してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 ディスクブレーキ装置、 12 ブレーキペダル、 14 ストロークセンサ、20 電動モータ、 26 荷重センサ、 30 ブレーキパッド、 50 ディスクロータ、 52 温度センサ、 54 車輪速センサ、 80 電動ブレーキユニット、 82 キャリパ、 100 ブレーキECU、 102 制動力計算部、 104 パッド位置決定部、 106 モータ駆動部、 110 移動距離算出部、 112 冷却係数推定部、 114 仕事量算出部、 116 上昇温度算出部、 118 温度推定部、 120 熱膨張量算出部、 122 ゼロ点設定部、 124 摩擦係数推定部、 126 前回温度保持部、 128 摩耗量推定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪とともに回転するディスクロータと、
前記ディスクロータの摩擦摺動面に相対して配置されるブレーキパッドと、
前記ブレーキパッドを前記ディスクロータに押し付けるように移動させるモータと、
前記ブレーキパッドがブレーキペダル操作に応じた押し付け力を発生させるように前記モータに指令する駆動部と、
前記ディスクロータの温度に対して予め準備されているマップを参照して前記ディスクロータの摩擦係数を推定する摩擦係数推定部と、
前記摩擦係数推定部により推定された摩擦係数と、前記ブレーキパッドの前記ディスクロータへの押し付け力と、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータの摩擦摺動面上を移動した距離とを使用して、前記ブレーキパッドの仕事量を算出する仕事量算出部と、
前記仕事量算出部により算出された仕事量と、予め準備されている前記ディスクロータの熱容量とを使用して、前記ディスクロータの温度を推定する温度推定部と、
を備えることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記温度推定部は、予め準備されている前記ディスクロータの冷却係数を使用して車両の走行中に失われる温度を考慮して前記ディスクロータの温度を推定することを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記温度推定部により推定されたディスクロータ温度に基づき、前記ディスクロータと前記ブレーキパッドのうち少なくとも一方の熱膨張量を算出する熱膨張量算出部と、
前記熱膨張量算出部により算出されたディスクロータとブレーキパッドのうち少なくとも一方の熱膨張量を使用して、前記ブレーキパッドを移動させる際の基準となるゼロ点を設定するゼロ点設定部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項4】
前記温度推定部により推定されたディスクロータ温度に対して予め準備されているマップを参照して前記ブレーキパッドの摩耗量を推定する摩耗量推定部と、
前記摩耗量推定部により推定されたブレーキパッドの摩耗量を使用して、前記ブレーキパッドを移動させる際の基準となるゼロ点を設定するゼロ点設定部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のディスクブレーキ装置。
【請求項5】
ブレーキパッドをディスクロータに押し付けるように構成されたモータに対して、ブレーキペダル操作に応じた押し付け力を発生させるように指令する駆動部と、
前記ディスクロータの温度に対して予め準備されているマップを参照して前記ディスクロータの摩擦係数を推定する摩擦係数推定部と、
前記摩擦係数推定部により推定された摩擦係数と、前記ブレーキパッドの前記ディスクロータへの押し付け力と、前記ブレーキパッドが前記ディスクロータの摩擦摺動面上を移動した距離とを使用して、前記ブレーキパッドの仕事量を算出する仕事量算出部と、
算出された仕事量と、予め準備されている前記ディスクロータの熱容量とを使用して、前記ディスクロータの温度を推定する温度推定部と、
を備えることを特徴とする電動ブレーキユニットの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−192874(P2012−192874A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59333(P2011−59333)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】