説明

ディスク基板の製造方法

【要約書】
【課題】 本発明の目的は、ディスク基板を金型から抜き取る際のディスク基板の反りを極力抑え、ディスク基板成形に要するタクトタイムを短縮することができるディスク基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】 固定側金型部2又は可動側金型部3に、該可動側金型部3の移動方向に沿って往復移動可能な外周リング4を設け、溶融樹脂の充填時に外周リングを他方の金型部側へ突き出し、溶融樹脂が固化又は半固化したら、可動側金型部3を固定側金型部2から離隔して型開きを行い、同時に外周リング4を移動させディスク基板外周面の囲繞を解除し、次いで、ディスク基板を取り外すことを特徴とするディスク基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内に溶融樹脂を充填してディスク基板を成形するディスク基板の製造方法に関する。
特に、ディスク基板を金型から取り外す際に発生する、タクトタイムの削減に伴って増加するディスク基板の反り、を極力抑止することができるディスク基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な射出成形用の金型装置として図8に記載のようなものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この金型装置100は、固定側金型部101と、この固定側金型部101に対して接離動作される可動側金型部102とを備えている。
この固定側金型部101、可動側金型部102、及び固定側金型部101に取り付けられた外周リング103、によって構成される閉空間が、成形材料が充填されるキャビティー104とされる。
そして、外周リング103によってキャビティー104の外周部分を閉鎖することで、成形されるディスク基板の外周が規定される。
【0003】
固定側金型部101は、固定側取付板105と、この固定側取付板105に設けられる固定側ミラー106と、この固定側ミラー106の一方面、具体的にはキャビティー104側の面に取り付けられるスタンパ107とを備えている。
固体側取付板105の中央部には、キャビティー104内に成形材料を供給するためのスプルー108aが形成されたスプルーブッシュ108が設けられている。
【0004】
スタンパ107は、ディスク基板形成の際の原盤となるものであり、一方の面、具体的にはキャビティー104側の面に、ディスク基板に転写される凹凸パターンが形成されている。
可動側金型部102は、可動側取付板109と、この可動側取付板109に設けられる可動側ミラー110とを備えており、その中央部にはセンターピン111及びゲートカットパンチ112が設けられている。
【0005】
そして、固定側ミラー106と可動側ミラー110とにそれぞれ設けられた温調回路113,114によって、ディスク基板成形時の金型温度が調節される。
上述した金型装置100では、射出装置からの溶融樹脂がキャビティー104内に射出され、冷却固化されることによってディスク基板が成形される。
【特許文献1】特開2003−305756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年の光ディスク市場価格の低下に伴う製造コスト低減のためタクトタイム短縮化の要請により、ディスク基板成形の高速化が図られており、成形直後のディスク基板が十分に冷却されない内に金型から抜き取らなくてはならないという問題が発生した。
具体的には、ディスク基板が十分に冷却されなく屈曲し易い状態で金型から抜き取られるため、外周リングから抜き取る際の抵抗によりディスク基板が椀状に変形してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる背景技術をもとになされたもので、上記の背景技術の問題点を克服するためになされたものである。
すなわち、本発明は、ディスク基板を金型から抜き取る際のディスク基板の反りを極力抑え、ディスク基板成形に要するタクトタイムを短縮することができるディスク基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、外周リングによるディスク基板の囲繞を解除してから、ディスク基板を金型から取り外すことにより、上記の問題点を解決することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)、固定側金型部又は可動側金型部に、該可動側金型部の移動方向に沿って往復移動可能な外周リングを設け、溶融樹脂の充填時に外周リングを他方の金型部側へ突き出し、溶融樹脂が固化又は半固化したら、可動側金型部を固定側金型部から離隔して型開きを行い、同時に外周リングを移動させディスク基板外周面の囲繞を解除し、次いで、ディスク基板を取り外すディスク基板の製造方法に存する。
【0010】
また、本発明は、(2)、固定側金型部又は可動側金型部に、該可動側金型部の移動方向に沿って往復移動可能な外周リングを設け、溶融樹脂の充填時に外周リングを他方の金型部側へ突き出し、溶融樹脂が固化又は半固化したら外周リングを移動させディスク基板外周面の囲繞を解除し、次いで、可動側金型部を固定側金型部から離隔して型開きを行い、ディスク基板を取り外すディスク基板の製造方法に存する。
【0011】
また、本発明は、(3)、固定側金型部又は可動側金型部に、該可動側金型部の移動方向に沿って往復移動可能な外周リングを設け、溶融樹脂の充填時に外周リングを他方の金型部側へ突き出し、溶融樹脂が固化又は半固化したら、可動側金型部を固定側金型部から離隔して型開きを行い、次いで、外周リングを移動させディスク基板外周面の囲繞を解除し、ディスク基板を取り外すこと基板の製造方法に存する。
【0012】
また、本発明は、(4)、固定側金型部及び可動側金型部を備えた射出形成用金型であって、該可動側金型部の移動方向に沿って往復移動可能な外周リングを設け、該外周リングはディスク基板の外周面に接するキャビティを形成するものである射出形成用金型に存する。
【0013】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記請求項を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、射出成形直後の昇温状態のディスク基板外周面を囲繞する外周リングを移動させ、ディスク基板の囲繞を解除してからディスク基板を金型から取り外すので、ディスク基板取外し時に、昇温状態のディスク基板が外周リングと接触しその接触抵抗によりディスク基板が変形してしまうというようなことはなく、支障なくスムーズにディスク基板を取り外すことができ、ディスク基板の反りを抑止することができる。
従って、従来と同様の寸法精度を維持しつつ又はより高精度にしつつ、ディスク基板成形に要するタクトタイムを短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施の形態]
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るディスク基板の製造方法に用いる金型装置を示している。
この金型装置1は、固定側金型部2と、この固定側金型部2に対して接近又は離隔する可動側金型部3とを備えている。
この固定側金型部2(固定側ミラー含む)、可動側金型部3(可動側ミラー含む)、及び固定側金型部2に取り付けられた外周リング4、によって構成される閉空間が成形材料が充填されるキャビティー5となる。
このキャビティー5によりディスク基板が形成され、特に外周リング4によってキャビティー5の外周面を閉鎖することで、ディスク基板の外周面が規定される。
このように、外周リングはディスク基板の外周面に接するキャビティー5Aを形成しているのである。
【0016】
この外周リング4には一定距離を置いて4本の外周リング駆動ピストン6が連結されており、外周リング4は可動側金型部3の移動方向に沿って往復移動可能にされている。
なお、油圧による外周リング駆動ピストン6の押圧を解除すると、スプリング20により外周リング4は該ピストン6側に(図でいう左方向)に移動する。
可動側金型部3には固定プラテン7が設けられており、この固定プラテン7内には油圧シリンダ8が上記駆動ピストン6に対応して4箇所に設けられている。
そして、油圧シリンダ8により、駆動ピストン6及び外周リング4を前後移動(往復移動)させることができる。
これにより駆動ピストン6と一体化した外周リング4を任意の圧力及びタイミングで駆動させキャビティー5の一部を自由に開放又は閉鎖させることができる。
【0017】
固定側金型部2は、固定側取付板10と、この固定側取付板10に設けられる固定側ミラー11と、この固定側ミラー11の一方面、具体的にはキャビティー5側の面に取り付けられるスタンパ12とを備えている。
固体側取付板10の中央部には、キャビティー5内に成形材料を供給するスプルー13aを有するスプルーブッシュ13が配設されている。
【0018】
スタンパ129、ディスク基板成形の際の原盤となるものであり、一方の面、具体的にはキャビティー5側に配される面に、ディスク基板に転写するための凹凸パターンが形成されている。
可動側金型部3は、可動側取付板14と、この可動側取付板14に設けられる可動側ミラー15とを備えており、その中央部にはセンターピン16及びゲートカットパンチ17が配設されている。
そして、固定側ミラー11と可動側ミラー15とにそれぞれ備わっている温調回路18,19によって、ディスク基板成形時の金型の温度が適宜調節される。
【0019】
上述した金型装置1によりディスク基板を成形するにあたっては、先ず、図2に示すように、可動側金型部3を固定側金型部2へ向けて移動させる。
この際、外周リング4は後退した位置、外周リング4のディスク基板外周面に当接する部分は、具体的には可動側取付板14の可動側ミラー15表面よりも凹んだ位置(下がった位置)に配置する。
そして、図3に示すように、可動側金型部3を固定側金型部2へ当接させる。
【0020】
図4に示すように、図3の状態から油圧シリンダ8を作動させ、外周リング4を固定側金型部2側へ突き出させる。
これで外周リング4の外周当接部4Aによってディスク基板外周面を形成する部分が囲繞され、キャビティ5は閉じられたこととなる。
そして、図5に示すように、可動側ミラー15とスタンパ12と外周リング4とにより形成されるキャビティー5内にスプルー13aを介して溶融樹脂を充填させる。
【0021】
充填後、一定時間、例えば4秒放置し、溶融樹脂を固化又は半固化させる。
溶融樹脂が固化又は半固化しディスク基板Dが形成されたら図6に示すように、外周リング4を元の位置に後退移動させる。
この状態でディスク基板Dの外周面のみが開放されて露出することとなる。
次に、図7に示すように可動側金型部3を固定側金型部2から離隔して型開きを行う。
【0022】
最後に、図8に示すように吸着手段21をディスク基板に当接して、その後、図9に示すように可動側金型部3から取り外す。
【0023】
[第2実施の形態]
以上述べたような製造方法とは他に、図5に示す樹脂の充填後、外周リング4を後退させずに、可動側金型部3を固定側金型部2から離隔して型開きを行う方法もある(図10参照)。
この場合は、型開きを行った後、外周リング4を後退させディスク基板外周面を形成する部分の囲繞を解除する(図11参照)。
その後は、吸着手段21により上述した第1実施の形態のように取り外せばよい。
【0024】
[第3実施の形態]
また以上述べたような製造方法とは他に図5に示す樹脂の充填後、外周リング4を後退させると同時に、可動側金型部3を固定側金型部2から離隔して型開きを行う方法もある。
【0025】
以上述、実施形態のディスク基板の製造方法では、射出成形直後の昇温状態のディスク基板外周面を囲繞する外周リング4を移動させ、ディスク基板Dの囲繞を解除してからディスク基板Dを金型から取り外すので、ディスク基板を取り外した際に、昇温状態のディスク基板Dが外周リング4と接触しその接触抵抗によりディスク基板Dが変形してしまうというようなことはない。
そのためスムーズにディスク基板Dを取り外すことができ、ディスク基板Dの反りを抑止することができる。
従って、従来と同様の寸法精度を維持しつつディスク基板成形に要するタクトタイムを短縮することができる。
【0026】
また本発明の方法は、上述したように、外周リング4の移動を可動側金型部3を開く前でも、或いは後でも可能であり、極端には吸着手段21で取り外す直前に移動することも可能である。
また外周リング4の移動は従来のように外周リングに直接、エアーを加えて移動するものではなく、外周リング4の周辺の構造が極めて簡単なものとなる。
【0027】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した一実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、他の種々の変形が可能であることはいうまでもない。
例えば、上述した一実施形態では、油圧シリンダ8を用いて外周リング4を往復移動可能にした例について説明したが、外周リング4を直線的に往復移動させることができる機構であれば他の方法を用いても良い。
また、金型の構造として固定側金型部2、固定側ミラー、可動側金型部3、可動側ミラー、センターピン、ゲートカットパンチ、スプルーブッシュ等の構造は種々の変形例が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のディスク基板の製造方法は、光ディスク用のディスク基板に適用した例について説明したが、湾曲し易い薄板状の樹脂製品を使用する金型分野にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の光ディスクの製造方法を実施するための金型装置を示す説明図である。
【図2】図2は、図1の金型装置の型締め前の状態を示す説明図である。
【図3】図3は、図1の金型装置の型締め時の状態を示す説明図である。
【図4】図4は、型締め後に外周リングが押し出された状態を示す説明図である。
【図5】図5は、キャビティー内に樹脂が充填された状態を示す説明図である。
【図6】図6は、型締め後に外周リングが後退した状態を示す説明図である。
【図7】図7は、型開きした後の状態を示す説明図である。
【図8】図8は、吸着手段をディスク基板に当接した状態を示す説明図である。
【図9】図9は、吸着手段によりディスク基板を取り外す際の状態を示す説明図である。
【図10】図10は外周リングが後退する前に型開きした状態を示す説明図である。
【図11】図11は型開きした後に外周リングが後退した状態を示す説明図である。
【図12】図12は、従来の金型装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 金型装置
2 固定側金型部
3 可動側金型部
4 外周リング
4A 外周当接部
5 キャビティー
6 外周リング駆動ピストン
7 固定プラテン
8 油圧シリンダ
9 油道
10 固定側取付板
11 固定側ミラー
12 スタンパ
13 スプルーブッシュ
13a スプルー
14 可動側取付板
15 可動側ミラー
16 センターピン
17 ゲートカットパンチ
18,19 温調回路
20 スプリング
21 吸着手段
100 金型装置
101 固定側金型部
102 可動側金型部
103 外周リング
104 キャビティー
105 固定側取付板
106 固定側ミラー
107 スタンパ
108 スプルーブッシュ
108a スプルー
109 可動側取付板
110 可動側ミラー
111 センターピン
112 ゲートカットパンチ
113,114 温調回路
D ディスク基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側金型部又は可動側金型部に、該可動側金型部の移動方向に沿って往復移動可能な外周リングを設け、
溶融樹脂の充填時に外周リングを他方の金型部側へ突き出し、
溶融樹脂が固化又は半固化したら、可動側金型部を固定側金型部から離隔して型開きを行い、同時に外周リングを移動させディスク基板外周面の囲繞を解除し、
次いで、ディスク基板を取り外すことを特徴とするディスク基板の製造方法。
【請求項2】
固定側金型部又は可動側金型部に、該可動側金型部の移動方向に沿って往復移動可能な外周リングを設け、
溶融樹脂の充填時に外周リングを他方の金型部側へ突き出し、
溶融樹脂が固化又は半固化したら外周リングを移動させディスク基板外周面の囲繞を解除し、
次いで、可動側金型部を固定側金型部から離隔して型開きを行い、ディスク基板を取り外すことを特徴とするディスク基板の製造方法。
【請求項3】
固定側金型部又は可動側金型部に、該可動側金型部の移動方向に沿って往復移動可能な外周リングを設け、
溶融樹脂の充填時に外周リングを他方の金型部側へ突き出し、
溶融樹脂が固化又は半固化したら、可動側金型部を固定側金型部から離隔して型開きを行い、
次いで、外周リングを移動させディスク基板外周面の囲繞を解除し、ディスク基板を取り外すことを特徴とするディスク基板の製造方法。
【請求項4】
固定側金型部及び可動側金型部を備えた射出形成用金型であって、該可動側金型部の移動方向に沿って往復移動可能な外周リングを設け、該外周リングはディスク基板の外周面に接するキャビティを形成することを特徴とする射出形成用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−82274(P2006−82274A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267132(P2004−267132)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(394025913)北野エンジニアリング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】