説明

デジタル閉ループ比例油圧制御装置

【課題】デジタル制御による電流−圧力変換器(CPC)を提供する。
【解決手段】デジタルCPCは、デジタル制御装置とオンボード圧力変換器とを利用して、入力アナログ制御信号に基づいて出力圧力を正確に制御する。デジタル制御装置は、CPCの3方向回動弁からシルト汚染物を弛緩させて噴流除去するよう、前記弁の衝撃運動を与えるシルティング防止アルゴリズムを含んでいる。油圧ドレインへの中間通路を含む冗長シールスタックが、アウトボードシール周りの圧力降下を確実に少なくし、漏れの可能性を最小にし、CPCの信頼性を高める。デジタル制御装置はまた、冗長性および欠陥管理アルゴリズムを含み、これによりCPC制御用に複数の入力およびフィードバック信号の使用が可能になる。マスター/スレーブ動作及びその移行もデジタル制御装置によって提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に蒸気弁と燃料弁とに用いる位置決め制御システムと、それらに関連するサーボ機構に関し、より詳細には、アナログ電流信号を油圧に変換して用いる電流−圧力変換器(CPC)に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント、ビルディング、およびその他の製造設備における多くの制御コンポーネントは、油圧を利用してアクチュエータ、制御弁、またはこれらコンポーネントの作動面の位置決めを行っている。そのようなコンポーネントは、蒸気制御弁、燃料弁、ダンパー、ベーン等を含む。アクチュエータを位置決めするための普通の手段の一つは、線形油圧アクチュエータのピストンまたは回転シリンダのベーンに作用する、線形に増加する可変油圧を供給することである。この可変圧力に対抗してバランスをとり、比例関係を生成するための対抗力は、対抗バネまたは油圧の形にすることができる。
【0003】
油圧のみによる弁操作や制御システムを用いてこれら制御コンポーネントの位置決めが行われてきたが、最近の電子制御はシステム制御の機能性と融通性とを高めた。そのようなコンポーネント、システム、およびプラント制御装置は、典型的にPLC(Programmable Logic Controller:プログラマブル論理制御装置)ベースまたはDCS(Distributed Control System:分散制御システム)ベースの計算システムを用いてシステム内の種々のコンポーネントの監視と制御とを行っている。従って、そのような制御装置を用いると、制御信号出力をそのような制御装置から取得して、それら電子制御信号を、油圧制御されるコンポーネントの位置決めと制御とを行うことのできる油圧制御信号に変換できるインターフェースコンポーネントを使用する必要が生じる。そのようなインターフェースコントロールの一つとして、電流−圧力変換器(CPC)が知られている。
【0004】
典型的なCPCは、システムまたはプラント制御装置からアナログの4mAないし20mAの制御信号を受信するよう構成されている。この4mAないし20mAの制御信号は、CPCによってこれに比例した油圧出力圧力に変換される。従って、CPCは電気油圧式の圧力調整弁と見なしてもよい。そのようなCPCは典型的に、3方向弁、アクチュエータ、圧力センサまたは圧力フィードバック機構、およびオンボードアナログ電子装置を含んでいる。カスケード制御ループが典型的に用いられて圧力の閉ループ制御を行っている。第1制御ループは、入力制御信号または圧力設定点を、測定されたフィードバックと比較する。次に、その差を回路またはアルゴリズムによって修正して位置デマンド信号を発生させ、これが第2制御ループへの入力となる。次に位置デマンド信号を測定位置と比較し、その差を回路または制御アルゴリズムで修正して駆動信号とし、これによってアクチュエータを開閉して、時間をかけて位置デマンドに合わせる。アクチュエータと弁とに協働するデュアル制御ループの組合せ動作により、時間をかけてフィードバックの測定値を確実に設定点に合わせることができる。
【0005】
CPCの内蔵弁は3方向制御弁である。中心位置において、制御ポートは供給ポートにも排出ポートにも連通していない。弁を中心位置よりわずかに上へ移動すると、制御ポートが供給ポートに連通し、その結果、圧力が上昇する。弁を中心位置より下へ移動すると、制御ポートが排出ポートに連通し、その結果、圧力が降下する。アセンブリ内に戻しバネが設けられ、停電または電気的故障の際、弁が「最低圧力」位置に移動するようになっており、これはほとんどの適用例においてタービンを停止させる方向である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在のCPCの性能は、多くの適用例において十分であるが、いくつかの設置例において、かかる制御の正確度が、CPC自体内のアナログ制御回路に付随する熱ドリフトによって悪影響を受けることがある。更に、長期間にわたって制御コンポーネントの位置決めを変えないことが普通であるいくつかのシステムにおいて、或いは主CPCが故障した場合にシステムの作動を確保するため、主レギュレータとバックアップレギュレータとを用いるシステムにおけるバックアップCPCにおいて、機能不全が見られた。そのような機能不全は、長期間にわたる滞留制御の期間中に弁要素上に堆積したシルトその他の汚染物によって生じたものと判定された。
【0007】
上記に鑑み、本願発明者は、アナログ制御回路の熱ドリフトに起因する不正確さを克服するとともに、機能不全を来すシルトを弁要素上に堆積するに至りかねない長期間の不使用後にも継続運転を保証する、新規かつ改良されたCPCの必要性を認識した。本発明の実施の形態はそのような新規かつ改良されたCPCを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑み、本発明の各実施の形態は、既存の技術に存在する諸問題の一つ以上を克服する新規かつ改良された電流−圧力変換器(CPC)を提供する。より詳細には、本発明の各実施の形態は、いくつかのCPCに用いられるアナログ制御コンポーネントの熱ドリフトに起因する不正確さをこうむらない、新規かつ改良されたCPCを提供する。更に本発明の各実施の形態は、CPC内の制御弁の位置決めから次の位置決めまでに長期間の不作動を経験する設置例において、CPCの機能不全の可能性を排除または大幅に低減することができる。
【0009】
本発明の一実施の形態は、制御ループと診断信号の完全デジタル処理を含み、これはCPCの制御に用いられる従来のアナログ制御システムに付随する熱ドリフトを有利に低減する。一実施の形態において、オンボード圧力センサも組み込まれて、出力圧力の閉ループ制御を提供する。そのようなオンボード圧力センサは、力フィードバック装置を利用した従来のCPCに優る、改良された直線性と精度とを提供する。
【0010】
一実施の形態は、冗長ダイナミックシーリングシステムを含み、油圧排出回路への中間通路を設けてアウトボードシール全体にわたる圧力低下を確実に極めて小さくし、それにより、漏れの可能性を最小にし、CPCの信頼性を改善している。本発明の一実施の形態はまた、改良された冗長性と障害管理とを備えて、内部コンポーネントの障害時におけるフェールセーフ運転を確保している。
【0011】
本発明の各実施の形態はまた、シルティング粒子の堆積を遅らせるシルティング防止アルゴリズムの採用により、信頼できる運転を提供する。そのような堆積は、油圧供給用にタービン潤滑油を用いる蒸気タービンに関して問題の多いものであったし、慢性的な問題であった。このアルゴリズムの実施の形態は、振幅の小さい、対称的に対向した衝撃を回動弁の位置に導入する。この衝撃は、弁要素をごくわずかに回動させ、弁要素上に堆積したシルトがあれば、それを弛緩させて噴流除去する。一実施の形態において、この衝撃は継続時間がごく短く、相対する負の成分に次いで正の成分を含んでいる。そのような実施の形態においては、CPCによって制御される出力回路内の流体の変位は結果的にゼロに近い。従って、シルティング防止衝撃の期間中、出力サーボの検出可能な挙動は全くないか極めて小さい。振幅の小さい対称的に対向したそのような衝撃は、一定の時間間隔において周期的に与えてもよく、使用する油の品質に応じて、ユーザーが容易に調節できる。
【0012】
本発明の他の実施の形態において、デジタル制御装置によって駆動電流レベルを監視し、汚染物の堆積の有無を示す駆動電流レベルの変動の検出に基づいて自動的に衝撃の間隔を増減させて、実際の必要性に基づいて、間隔のセルフチューニングを行ってもよい。
【0013】
本発明の実施の形態においてはまた、閉ループ制御に用いる圧力変換器または主制御設定点のいずれかに冗長制御入力を含めることによって、信頼できる運転を提供する。歴史的に、タービンの運転は、主制御装置、制御装置とCPCとの間の配線、または圧力フィードバックに用いる変換器の故障によって、しばしば悪影響を受けてきた。好ましい実施の形態において、第2の入力が提供され、これを用いた構成において、第2制御装置を監視するか,タービン制御装置または第2圧力フィードバック変換器から、独立した配線経路を介して第2のコマンド信号を受信する。従って、ユーザーは、これらの故障モードに対する堅牢さを増すようにCPCの設置を構成することができ、CPC内で実行されるロジックは、第2の入力信号を利用して故障の際、運転を維持することができる。
【0014】
最高レベルの信頼性が要求される用途において、時として2台のCPCをタンデムに配置して用いることがある。この構成において、タービン制御システムの故障モード、制御装置とCPCとの間の制御回線、またはCPC自体の故障を大幅に緩和できる。好ましい実施の形態において、2台のCPCは1台から他方へ直接配線されたステータスリンクを有する。従って、各CPCは他方の運転ステータスがわかり、システムを制御するCPC内に故障が発生すれば、バックアップユニットが、主タービンまたはプラント制御装置からの介入なしで、ごく短時間の間に制御を再開することができる。これにより、タービンの速度または負荷に悪影響を及ぼす恐れのある大きな状態遷移の可能性を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本明細書に組み込まれてその一部をなす付帯図面は、本発明のいくつかの態様を図解し、詳細な説明とともに本発明の原理を説明する。図において:
【図1】図1は、本発明の教示に従って構成したCPCの一実施の形態の典型的設置例のシステムレベルの略図である。
【図2】図2は、本発明に従って構成されたCPCの実施の形態の断面図である。
【図3】図3は、図2のCPCの油圧回路の略図である。
【図4】図4は、本発明の教示に従って構成した制御装置の実施の形態を示すCPC制御装置のブロック略図である。
【図5】図5は、本発明の教示に従って構成したマスター/スレーブCPCの設置例のシステムレベルの略図である。
【図6】図6は、冗長制御入力用として本発明の実施の形態に用いる冗長切替ロジックを示すブロック略図である。
【図7】図7は、冗長変換器フィードバック用として本発明の実施の形態に用いる冗長切替ロジックを示すブロック略図である。
【図8】図8は、本発明の一実施の形態から得られる出力圧力対コマンド入力を図解する図である。
【図9】図9は、本発明の一実施の形態によって実行される、対称的シルティング防止衝撃機能を図解する図である。
【図10】図10は、本発明の一実施の形態に用いる単一対称的シルティング防止衝撃イベントを図解する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を特定の好ましい実施の形態に関連して説明するが、本発明をそれら実施の形態に限定する意図はない。添付の特許請求の範囲によって定義するような本発明の精神と適用範囲内に含まれる全ての代替、修正、および同等のものを包含することが真意である。
【0017】
ここで図面に、特に図1に目を転ずると、本発明の実施の形態が特に適している典型的なタービン制御システム100が示されている。以下の説明は本発明の教示に従って構成したCPC102の実施の形態の設置例を用いるが、この設置は限定を意図するものではなく、そのようなCPC102が提供する機能性と利点とを理解するための一助である。本発明の他の設置形態と運転とは、当該技術に精通する者には以下の説明から認識されるであろうし、その応用は特に留保される。
【0018】
図1に示すような設置において、CPC102は、モデル505/505E蒸気タービンデジタル制御装置等の、本発明の譲受人から入手可能なタービン制御装置104にインターフェース経由で接続されてもよい。そのようなタービン制御装置104は、マイクロプロセッサベースであり、単一の抽気および/または吸入蒸気タービン等の蒸気タービン106を運転するよう設計されている。CPC102の実施の形態はまた、システムプラント制御装置108にインターフェース接続して、例えばCPC102からのフィードバック情報とともに故障情報を提供することができる。
【0019】
運転中、CPC102は、4mAないし20mAの間で変化するアナログ制御信号の形でタービン制御装置104から指令信号を受信する。CPC102内の制御ロジックは、この制御指令信号を処理し、タービンのサーボシステム110に対する油圧を増減させる。サーボシステム110を運転して蒸気制御弁112を変化させて、蒸気タービン106の運転速度を変化させる。図1に示すシステムにおいて、蒸気タービン106を用いて、ポンプ114、発電機(不図示)等の負荷を駆動する。以下更に詳しく考察するように、追加の油圧が必要になったことをCPC102が判定すると、CPC102は圧油をタンク116からポンプ118とフィルタ120とを経由してサーボシステム110へ供給する。より低い油圧が必要であることをCPC102が判定すると、CPCは圧油を排出してタンク116に戻すよう作動する。
【0020】
そのような運転制御を実行するため、CPC102は、図2に示すようなハウジング122の内部のデジタル電子アセンブリ(以下、デジタルプリント回路基板(PCB)124と称する)に取付けたデジタル制御を有する。このデジタルPCB124は、PCBカバー126によって保護され、アクセスカバー128を外せば手を入れることができる。アクセスカバー128はハウジング122に合体して、封止エンクロージャを形成する。
【0021】
このデジタルPCB124に取付けられた制御装置は、回転式リミテッドアングルトルク(LAT)アクチュエータ132を介して油圧式制御軸130の位置を制御する。特に、LAT132は、油圧式制御軸130に直接結合された永久磁石ロータ134を含む。ロータ134の位置は、デジタルPCB124上のソリッドステート集積回路によって測定され、デジタルPCB124は、油圧式制御軸130上の検出磁石136の方向を検出する。LAT132のH型ブリッジドライブは、デジタルPCB124上のマイクロプロセッサによって調整されて、油圧式制御軸の位置を正確に制御して、タービン制御装置104から入力される圧力設定点を維持する。
【0022】
油圧式制御軸130は、油圧式制御ブッシング138内で回動し、油圧式制御ブッシング138は3方向回動弁を構成するようにポートを有する。この3方向回動弁140は、供給側(不図示)から制御ポート142への圧油の流れと、制御ポート142からドレイン(不図示)への圧油の流れとを制御する。好ましい実施の形態において、油圧式制御軸130と油圧式制御ブッシング138とは共にステンレス製である。これにより、蒸気タービン潤滑に用いられる典型的なオイルによる、正確で、信頼性があり、汚染による支障のない運転を提供する。
【0023】
部品の故障または停電の際にフェールセーフ運転を提供するため、ハウジング122の下部キャビティ146内で、スパイラルパワースプリング144が、油圧式制御軸130の底部を操作する。スパイラルパワースプリング144へのアクセスは下部カバー148を介して行う。停電の場合、スパイラルパワースプリング144は、油圧式制御軸130を回動させてフェールセーフ状態にするための、十分な回動力を提供する。一実施の形態のこのフェールセーフ状態において、制御ポート142はドレインに連通する。
【0024】
ドライステータ150を保護するため、冗長ダイナミックシーリングシステム152を用いる。冗長ダイナミックシーリングシステム152は、油圧ドレイン回路への中間通路154を含んでいる。これにより、アウトボードシール156周りからの圧力低下が極めて小さく、漏れの可能性を低くし、CPC102の信頼性を高める。
【0025】
マイクロプロセッサに制御ポート142を介して供給される現在の油圧の正確な値を供給する圧力変換器158の組み込みにより、正確な油圧制御が達成される。このオンボード圧力変換器158によって、力フィードバック装置を用いた従来のCPCに比べて出力圧力の閉ループ制御の精度と直線性とが改善される。
【0026】
図3の油圧回路の略図は、CPC102内の油圧制御回路の作動に関する接続を示す。図から分かるように、デジタルPCB124が位置制御信号をLAT132へ供給して、3方向回動弁140を位置決めする。閉ループ制御用の位置フィードバックを、検出磁石136が供給する。以上簡単に考察したように、3方向回動弁140は、制御ポート142を供給ポート160または排出ポート162のいずれかへ接続するように設計され、圧力変換器158によって検出される、サーボシステム110への圧力を、タービン制御装置104(図1参照)から受信した制御信号に従って制御される。
【0027】
この図3の油圧回路の略図から分かるように、3方向回動弁140が中間位置にあるとき、制御ポート142は、供給ポート160にも排出ポート162にも連通しない。この構成において、出力油圧は制御ポート142において一定に保たれる。圧力が設定点圧力未満になると、PCB124は、制御ポート142を供給ポート160に接続して制御ポート142内の圧力を(圧力変換器158による検出に応じて)上げるように、弁を回動させるよう、LAT132に指令する。しかし、制御ポート142における油圧が設定値より高い場合、PCB124上の制御回路は、LAT132に、制御ポート142を排出ポート162に連通させて制御ポート142における圧力を下げるように、3方向回動弁140を位置決めするよう指令する。
【0028】
このダイナミック圧力制御は、今後参照する図4のブロック略図に示すようなデジタルPCB124内で実行されるデジタル制御アルゴリズム164によって制御される。このブロック略図から分かるように、デジタル制御装置164は、制御デマンド入力166を含み、一実施の形態において、冗長制御デマンド入力168を含んでいてもよい。これ、またはこれら入力の各々は、信号コンディショナ170を通過させられる。二つの制御されたデマンド入力を扱うための制御ロジックは、以下更に詳細に考察する。この制御デマンド入力が一旦確定すると、それは圧力比例積分微分(PID)制御ループ172において用いられる。図示のように、このPID制御ループ172は、圧力変換器158から制御油圧フィードバックを、また検出磁石136(不図示)からフィードバック位置信号を受信する。この情報に基づいて、デジタル制御装置164は、LAT132を介して弁140の位置を制御する。
【0029】
デジタル制御装置164は、実施の形態においてサービスポート通信モジュール178を介してCPC管理ロジック176にインターフェース接続されたサービスポート174も備えている。このサービスポートにより、PCまたはマイクロプロセッサベースのサービスツール経由で、例えば現場でのプログラム作成や診断を行うことができる。CPC管理ロジック176はCPCの作動を監視し、シャットダウンリレー180用の出力、アラームリレー又はレッドユニットステータス182、該当する機能を備えている場合にマスタースレーブ表示184(図5に関する下記説明を参照)、及び/または例えば制御圧力メータ188を駆動可能なアナログ出力186を備えている。
【0030】
図5に示すようなマスター/スレーブ環境において利用される、本発明のCPC102の実施の形態において、CPC管理ロジック176は、マスター/スレーブ入力190(複数)も備えている。これらマスター/スレーブ入力190は、外部ジャンパまたはリレーと共に用いて、設置場所に基づく特定のCPCに関する初期の役割を設定してもよい。しかし、初期の役割指定を利用するシステムであっても、CPC管理ロジック176は、制御移管が必要または望ましくなるような、マスターの故障またはその他の状況を検出した場合の、CPC同士間の制御移管を容易にするロジックを備えている。
【0031】
図4に示すように、マスター表示出力184は2本のステータス線を備え、これらは他のCPC(複数)に接続している。各CPC102におけるCPC管理ロジック176は、これらの線を監視する。もしいずれかのCPC102または信号線が故障すると、他のCPCが所定時間、すなわち10ミリ秒内に制御を引き継ぐ。これにより、サーボシステム110へのトランジションバンプを低減することができる。このバンプは従来のCPCで発生することがあり、マスターに故障が発生すると、スイッチングと新しいCPCによる制御との間の遅れは、主制御装置の計算速度次第で100ミリ秒以上であるかもしれない。そのような長い遷移時間は、制御圧力状態遷移を著しく長引かせ、それに応じて制御対象プラントの速度や負荷が変化することを、当業者は認識するであろう。
【0032】
マスターCPC102Bと付属マスタータービン制御装置104Bとに加えて、スレーブCPC102Aと付属スレーブタービン制御装置104Aとを利用するシステム100'の単線略図を図5に示す。以上考察したように、サーボシステム110への油圧の制御は、それによって故障が検出されるまで、マスターCPC102Bによって行われる。マスターCPC102Bが故障したと判定されると、セレクト弁210が油圧制御をスレーブCPC102Aへ切替える。本発明の実施の形態において、二つのCPC102A/102Bは、一つのCPC102Aのマスター表示回路184(図4参照)から他のCPC102Bへ直結されたステータスリンク212を有する。従って、各CPC102A/102Bは、他方のCPC102B/102Aの運転状態を認識している。システム100'を制御しているマスターCPC102B内に故障が発生すると、バックアップユニットまたはスレーブCPC102Aが、極めて短い時間間隔後に、主タービンまたはプラント制御装置からの介入なしで、制御を引受けることができる。これにより、タービン106に悪影響を及ぼす恐れのあるダイナミック遷移の可能性を低減する。
【0033】
図6は、複数制御入力166、168を含む本発明の実施の形態に用いられる、冗長切替ロジック196の機能ブロック図を示す。具体的には、各制御入力166、168は入力診断装置192、194によって監視されて、二つの制御入力166、168のそれぞれの値の合理性を評価する。もし、入力診断装置192、194が、制御入力166、168の一つが誤りである、例えば範囲外、不安定、などであると判定すると、それは冗長切替ロジック196によって、その連鎖外へ排除され、CPC102は、正しい入力のみに基づいて運転を続ける。もし、冗長切替ロジック196が、信号の両方が誤りであると判定すると、CPCはフェールセーフ位置へ移動するように指令され、適当なアラームまたは他の表示が提供される。もしも両方の入力信号が、異なっているが有効であると考えられると、冗長切替ロジック196は制御用として単に、二つの入力の一方を選ぶか、二つの入力を平均するか、大きい方を取るか、小さい方を取るか、または他の入力ロジック処理を選んでCPC102用の運転設定点信号を提供する。
【0034】
類似の冗長切替ロジック198をフィードバック信号診断装置200,202と共に用いて、複数のフィードバックを用いる、例えば複数フィードバック変換器、位置センサ等を用いる実施の形態において、複数のフィードバック信号204、206の合理性を評価することができる。この冗長切替ロジック198を図7に示す。
【0035】
図8に示すように、デジタル制御装置164は複数の調整を提供し、これによって本発明のCPC102の各設置内における設置タイプを増加し、機能性を大幅に向上させる。図8の出力圧力対指令入力スケーリンググラフに示すように、最低圧力レベルと最高圧力レベルとの調節を行うことができる。最低圧力レベルの調節は、出力圧力のレベルを設定する。最低圧力レベルを調節すると、出力圧力の全ての点が均一に変化する。すなわち、最低レベルの調節によってサーボシステム110(図1参照)の最短移動量が設定される。最大圧力調節によって、出力指令制御信号が20mAのときの最高出力圧力を設定する。このレベルを高くすると、線208の勾配と、入力信号の各値に関する出力サーボシステムの位置が上昇する。
【0036】
PID制御ループ172の設定を調節してCPC102のダイナミック性能をチューニングしてもよい。比例利得を調整して利得の量を設定してもよい(比例動作)。一実施の形態において、50%利得が用いられる。当該技術に精通する者が認識するように、高い利得は応答時間を速めるが、不安定性を生じる。積分利得を調節してPID制御ループ172の安定性を設定してもよい(積分動作)。この安定性は比例利得と協働して、安定した運転を提供する。最後に、PID制御ループ172の微分成分を調節して出力揺れの振幅を設定してもよい。
【0037】
以上考察したように、冗長CPCまたはバックアップCPCを用いる設備、または長期間油圧出力が変化しないシステムにおける故障は、微細なシルティング粒子の堆積の結果であると判断されている。これらの故障は、タービンの潤滑油が油圧制御流体として用いられる図1に示すような蒸気タービン用途において特に深刻な問題である。この問題を克服するため、本発明のCPC102の実施の形態は、その制御ロジックの一部として、対称的シルティング防止衝撃機能を含んでいる。具体的には、デジタル制御装置164は、3方向回動弁140の位置へ、小振幅で互いに対称的で反対方向の衝撃を導入するアルゴリズムを含んでいる。この衝撃が、3方向回動弁140を両方向へわずかに回動させる。
【0038】
図9に示すように、これら衝撃は一定の、または周期的な時間間隔で発生させてもよい。間隔の選定は、具体的な設置と、その中で普通に発生するシルトや汚染の量に基づいて設定してもよい。これらの小衝撃は、運転停止期間中に弁要素上に堆積したシルトを弛緩させて噴流除去するのに有効である。図9は、5時間間隔に設定した衝撃間隔を示す。しかしこの間隔は、CPC102内において手動または自動で変更してもよい。
【0039】
一実施の形態において、シルティング防止衝撃の自動変更を、3方向回動弁140を動かすのに要する駆動電流レベルの偏差の検出に基づいて行う。所要駆動電流の増加は、弁上の汚染の蓄積の表れである。そのような状態が検出された時、シルティング防止衝撃の頻度を上げればよい。同様に、駆動電流が、弁要素上の汚染の蓄積を表わすレベルにあることが検出されなければ、シルティング防止間隔を広げて内部のベアリングやシールの寿命を延ばすことができる。
【0040】
図10に示すように、各シルティング防止衝撃イベントは、その継続時間が極めて短く、振幅が極めて小さい。実際に、デジタル制御装置164を用いて、シルティング防止衝撃の種々のパラメータを、例えば振幅、頻度および継続時間等を、調節することができる。シルティング防止衝撃の振幅に関しては、CPC102から汚染物を噴流除去するのに、普通は1パーセント衝撃で十分である。しかしこれは、システム性能パラメータの範囲内でシルティング防止効果を達成するため、必要に応じて調節してもよい。一実施の形態において、5パーセントまでの振幅を、上記に考察したサービスツールインターフェースを介して、工場または現場で設定することができる。シルティング防止衝撃の頻度も、上記考察のように調節することができる。図9には5時間の間隔を示したが、他の実施の形態において、1日に1回のみの衝撃を用いてもよく、他の設置では、例えば1分ないし3か月の頻度で衝撃を発生させる必要があるかも知れない。この間隔は工場または現場で設定してもよい。最後に、各シルティング防止衝撃の継続時間も、変更してもよい。全体的システム性能問題によるが、4ミリ秒ないし100ミリ秒の継続時間を用いてもよく、サーボメカニズム110に不適当な動きをさせることなくシルトを弛緩させるためには、普通は40ミリ秒の継続時間で十分である。しかし、必要により、または要望により、より長いまたはより短い継続時間を設定してもよい。
【0041】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願および特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ限度で、ここで参照して組み込む。
【0042】
本発明の説明に関連して(特に以下のクレームに関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されるかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中の如何なる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0043】
本明細書中では、発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、好ましい実施の形態で考えられるすべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流−圧力変換器(CPC)であって、
制御ポート、供給ポート、およびそれらに流体連通する排出ポートを画成するハウジングと;
前記ハウジング内に収容されたデジタル制御装置と;
制御ポートを選択的に排出ポートまたは供給ポートに結合するか、または排出ポートと供給ポートのいずれにも結合しないように構成された3方向回動弁と;
前記デジタル制御装置に機能的に結合されるとともに、前記3方向回動弁に駆動可能に結合された制限角度トルク回動アクチュエータと;
制御ポートに流体連通するとともに、前記デジタル制御装置へ圧力フィードバックを与える圧力変換器と、を備え;
前記デジタル制御装置が、制御ポートによって供給される圧力を、4mAないし20mAの入力アナログ信号に比例して制御するよう構成されている;
CPC。
【請求項2】
前記3方向回動弁が、
前記制御ポート、供給ポート、および排出ポートのそれぞれに流体連通する油圧制御ブッシングと;
前記制御ポートの弁開閉を制御するよう前記油圧制御ブッシング内に回動可能に位置決めされた油圧制御軸と;
前記油圧制御ブッシングと前記油圧制御軸との間に機能的に位置決めされた冗長ダイナミックシーリングシステムと、を備え;
前記冗長ダイナミックシーリングシステムは、インボードダイナミックシールとアウトボードダイナミックシールと、前記インボードおよびアウトボードダイナミックシール間に位置決めされた中間通路とを有し、前記中間通路は、前記アウトボードダイナミックシール周りの圧力降下を減らすよう、前記排出ポートに流体連通する;
請求項1に記載のCPC。
【請求項3】
更に、前記油圧制御軸に機能的に結合され、前記油圧制御軸をフェールセーフ位置へ位置決めするよう構成された渦巻ぜんまいを備える;
請求項1に記載のCPC。
【請求項4】
前記フェールセーフ位置は、制御ポートを排出ポートに流体連通するように油圧制御軸を、位置決めする;
請求項3に記載のCPC。
【請求項5】
前記デジタル制御装置が、3方向回動弁にシルティング防止衝撃を周期的に与えるよう構成されている;
請求項1に記載のCPC。
【請求項6】
前記シルティング防止衝撃の周期をユーザーがプログラムできる;
請求項5に記載のCPC。
【請求項7】
前記シルティング防止衝撃の周期が、限定角度トルクロータリーアクチュエータを回動させるのに要する駆動電流の増加の検出に基づいて自動的に短くされる;
請求項6に記載のCPC。
【請求項8】
前記シルティング防止衝撃が、前記3方向回動弁に互いに対称的で反対方向の動きを与える;
請求項5に記載のCPC。
【請求項9】
前記シルティング防止衝撃が対称的に釣り合い、その結果前記CPCによって制御される外部構成部材の作動を混乱させない;
請求項8に記載のCPC。
【請求項10】
前記シルティング防止衝撃が、前記CPCによって制御される外部構成部材の作動を混乱させるのに不十分な大きさである;
請求項8に記載のCPC。
【請求項11】
前記デジタル制御装置が、前記3方向回動弁の位置の制御に用いる入力信号を診断して、その合理性を判定する;
請求項1に記載のCPC。
【請求項12】
前記デジタル制御装置が、マスター役またはスレーブ役で作動するよう構成され、前記デジタル制御装置が、マスター/スレーブ入力に基づいて、いずれの役割で作動するか当初に決定する;
請求項1に記載のCPC。
【請求項13】
前記デジタル制御装置は、マスター役のとき出力マスター信号を発生し、前記デジタル制御装置は、スレーブ役のとき出力マスター信号を監視し、前記デジタル制御装置は、スレーブ役のとき前記出力マスター信号の消失が検出されると、前記マスター役を引受けるよう構成されている;
請求項12に記載のCPC。
【請求項14】
電流−圧力変換器(CPC)であって、
制御ポート、供給ポート、およびそれらに流体連通する排出ポートを画成するハウジングと;
デジタル制御装置と;
制御ポートを選択的に排出ポートまたは供給ポートに結合するように、または排出ポートと供給ポートのいずれにも結合しないように構成された3方向回動弁と;
前記デジタル制御装置に機能的に結合されるとともに前記3方向回動弁に駆動可能に結合されたロータリアクチュエータと、を備え;
前記デジタル制御装置が前記3方向回動弁にシルティング防止衝撃を与えるよう構成されている;
CPC。
【請求項15】
前記前記デジタル制御装置が前記3方向回動弁に周期的にシルティング防止衝撃を与えるよう構成されている;
請求項14に記載のCPC。
【請求項16】
前記シルティング防止衝撃の周期をユーザーがプログラムできる;
請求項15に記載のCPC。
【請求項17】
前記シルティング防止衝撃の周期が、前記ロータリアクチュエータを回動させるのに要する駆動電流の増加の検出に基づいて自動的に短縮される;
請求項16に記載のCPC。
【請求項18】
前記シルティング防止衝撃が、前記3方向回動弁に、互いに対称的で反対方向の運動を与える;
請求項14に記載のCPC。
【請求項19】
前記シルティング防止衝撃が、前記CPCによって制御される外部構成部材の作動を混乱させるのに不十分な継続時間と大きさである;
請求項8に記載のCPC。
【請求項20】
前記CPCの制御弁の互いに対称的で反対方向の運動を周期的に与えて、堆積したシルトを弛緩させて前記制御弁から噴流除去するステップを有する;
前記CPCの機能不全を防止する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−187543(P2009−187543A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−11714(P2009−11714)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(503400008)ウッドワード・ガバナー・カンパニー (29)
【氏名又は名称原語表記】Woodward Governor Company
【住所又は居所原語表記】1000 E. Drake Road, P.O. Box 1519, Fort Collins, Colorado 80525, United States of America
【Fターム(参考)】