説明

デバイス実装方法、並びに液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置

【課題】異方導電性ペーストのボンディング工具への付着を抑制して歩留まりを向上させた上で、簡便に実装し且つ接続の信頼性を向上させること。
【解決手段】複数の第1配線接続部47の端子部47a上に異方導電性ペースト79を塗布する塗布工程と、塗布された前記ペーストを加熱すると共にボンディング工具によりデバイス基板を被接続基板に対して加圧しながら押し付け前記端子部と第2配線接続部の端子部とを電気的に接続するボンディング工程と、を備え、塗布工程は、複数の第1配線接続部の端子部上において、該端子部のうち両外端に位置する2つの外端端子部47Aa上それぞれから内側に向けて延在する2つの外端領域R1に塗布する第1塗布工程と、前記複数の端子部上において、2つの外端領域の間に位置する中央領域R2に、2つの外端領域それぞれに塗布される前記ペーストよりも多量に塗布する第2塗布工程と、を備えるデバイス実装方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス実装方法、並びに液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロデバイスを製造する方法の一つとして液滴吐出法(インクジェット法)が提案されている。この液滴吐出法は、デバイスを形成するための材料を含む機能液を液滴状にして、液滴吐出ヘッドより吐出する方法である。特許文献1には、液滴吐出ヘッドに関する技術の一例が開示されており、ワイヤボンディングを用いて半導体チップの上面に設けられた端子と回路基板上の端子とを電気的に配線接続する技術が記載されている。
また、特許文献2には、駆動素子(圧電素子)が、駆動デバイス(ドライバIC)にワイヤボンディングで接続された液滴吐出ヘッドが記載されている。
【0003】
特に近年では、液滴吐出法に基づいてマイクロデバイスを製造する際、マイクロデバイスの更なる微細化の要求に応えるために、液滴吐出ヘッドに設けられたノズル開口部同士の間の距離(ノズルピッチ)をできるだけ小さく(狭く)することが望まれている。駆動素子はノズル開口部に対応して複数設けられるため、ノズルピッチを小さくすると、そのノズルピッチに対応して駆動素子同士の間の距離も小さく(短く)する必要がある。
【0004】
しかしながら、駆動素子同士の間隔を狭くすると、これら複数の駆動素子のそれぞれと駆動デバイスとをワイヤボンディングによって接続する際に、ワイヤの本数が大量であるため、隣接するワイヤ(配線)間で短絡が生じ易くなることからワイヤボンディングを行うためには配線(実装)が非常に難しくなり、作業性が著しく低下してしまう。また、このようなワイヤボンディング実装では接続部の強度が弱く、歩留まりが向上しないという問題がある。また、ワイヤの本数が大量であるため、ワイヤボンディング実装に長時間を要することになる。
【0005】
そこで、このようなワイヤボンディングによる接続に起因する問題を解消するため、アウターリードとして機能する配線パターンを予め形成したフレキシブル基板を用いて、アウターリードボンディング(OLB:Outer Lead Bonding)接続を行うことで、ワイヤ同士の短絡等の不都合を生じさせることなく、駆動素子と駆動デバイスとの間の電気的接続を行うことが考えられている(特許文献3参照)。
【0006】
一般に、OLB接続においては、異方導電性フィルム(ACF: Anisotropic Conductive Film)や異方導電性ペースト(ACP: Anisotropic Conductive Paste)のような異方導電性材料を利用してフレキシブル基板を被接続基板に実装する方法が好適に採用されている。以下、この方法について、駆動素子と電気的に接続された複数の端子部が一定方向に互いに間隔をあけて配列された被接続基板を用いる場合を例として説明する。
この方法では、まず、被接続基板の複数の端子部上に異方導電性材料を配置する。また、フレキシブル基板をボンディング工具で吸着する。次いで、塗布された異方導電性材料を間に挟んで、被接続基板の複数の端子部と、これらの端子部に対応して形成されると共にフレキシブル基板において駆動デバイスに電気的に接続された複数の端子部と、が対向するように、フレキシブル基板が吸着されたボンディング工具を被接続基板上に位置させる。そして、異方導電性材料を加熱すると共にボンディング工具によりフレキシブル基板を被接続基板に加圧しながら押し付けることで、フレキシブル基板と被接続基板との間に異方導電性材料が充填されて硬化する。これにより、フレキシブル基板の端子部と被接続基板の端子部とを電気的に接続させ、フレキシブル基板を被接続基板に実装することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−9235号公報
【特許文献2】特開2003−159800号公報
【特許文献3】特開2000−68989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述したような異方導電性材料を用いたOLB接続において異方導電性ペーストを用いる場合、被接続基板の端子部に異方導電性ペーストを塗布した後、ボンディング工具によりフレキシブル基板を被接続基板に加圧しながら押し付ける際に、フレキシブル基板と被接続基板との間に挟まれた異方導電性ペーストが、押し潰されることによりフレキシブル基板の内側から外側に向けて押し出されて前記一定方向の外端部から食み出し、ボンディング工具に付着してしまうという問題があった。
そして、異方導電性ペーストが付着したボンディング工具により実装作業を繰り返し行うと、ボンディング工具でフレキシブル基板を吸着する際にボンディング工具とフレキシブル基板との間に異方導電性ペーストが介在し、ボンディング工具がフレキシブル基板に片当たりしてしまうことがあった。この場合、ボンディング工具によりフレキシブル基板を被接続基板に加圧しながら押し付ける際に、被接続基板に対するフレキシブル基板の加圧にムラが生じるためにフレキシブル基板を被接続基板に実装できず、歩留まりが低下する恐れがあった。
【0009】
ここで、前記問題の対策として、以下の2つの手段が考えられる。
第1の手段として、ボンディング工具による加圧時に異方導電性ペーストの食み出しを確実に防止可能な程度に、被接続基板の端子部への異方導電性ペーストの塗布量を抑制することが考えられる。
第2の手段として、ボンディング工具による加圧時にフレキシブル基板の前記外端部から食み出した異方導電性ペーストが付着しないように、ボンディング工具をフレキシブル基板に対して小型化することが考えられる。
【0010】
しかしながら、第1の手段では、異方導電性ペーストの塗布量を抑制することから、ボンディング工具によりフレキシブル基板を加圧して異方導電性ペーストがフレキシブル基板と被接続基板との間で拡がった後であってもフレキシブル基板の前記外端部と被接続基板との間に異方導電性ペーストが十分に充填されず、フレキシブル基板において前記外端部に位置する端子部と被接続基板の端子部との電気的な接続が不安定となり、接続(電気的な接続)の信頼性が低下してしまうという問題がある。
【0011】
また、第2の手段では、ボンディング工具を小型化することからボンディング工具とフレキシブル基板との接触面積が小さくなるので、ボンディング工具によるフレキシブル基板の加圧時に、フレキシブル基板を加圧できる領域が減少してしまう。従って、フレキシブル基板の所望の部分を確実に加圧するためには、フレキシブル基板をボンディング工具で吸着する際にフレキシブル基板とボンディング工具との相対的な位置決めを極めて高精度に行った上で吸着する必要があり、実装に手間がかかってしまうという問題がある。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、異方導電性ペーストのボンディング工具への付着を抑制して歩留まりを向上させた上で、簡便に実装し且つ接続の信頼性を向上させることができるデバイス実装方法、並びに液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るデバイスの実装方法は、複数の第1配線接続部が形成されると共に該複数の第1配線接続部の端子部が一定方向に互いに間隔をあけて配列された被接続基板に、前記第1配線接続部に対応する複数の第2配線接続部が形成されたデバイス基板を、異方導電性ペーストを利用して実装し、両配線接続部を電気的に接続するデバイス実装方法であって、前記複数の第1配線接続部の端子部上に異方導電性ペーストを塗布する塗布工程と、前記デバイス基板をボンディング工具で吸着する吸着工程と、塗布された異方導電性ペーストを間に挟んで前記第1配線接続部の端子部と前記第2配線接続部の端子部とが対向するように、前記デバイス基板が吸着されたボンディング工具を前記被接続基板上に位置させるセット工程と、塗布された異方導電性ペーストを加熱すると共に前記ボンディング工具により前記デバイス基板を前記被接続基板に対して加圧しながら押し付け、前記第1配線接続部の端子部と前記第2配線接続部の端子部とを異方導電性ペーストを介して電気的に接続するボンディング工程と、を備え、前記塗布工程は、前記複数の第1配線接続部の端子部上において、該端子部のうち前記一定方向の両外端に位置する2つの外端端子部上それぞれから前記一定方向の内側に向けて延在する2つの外端領域に、異方導電性ペーストを塗布する第1塗布工程と、前記複数の第1配線接続部の端子部上において、前記2つの外端領域の間に位置する中央領域に前記2つの外端領域それぞれに塗布される異方導電性ペーストよりも多量の異方導電性ペーストを塗布する第2塗布工程と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、まず、被接続基板の端子部上に異方導電性ペーストを塗布する塗布工程を行う。この際、前記2つの外端領域に異方導電性ペーストを塗布する第1塗布工程を行うと共に、前記2つの外端領域それぞれに塗布される異方導電性ペーストよりも多量の異方導電性ペーストを前記中央領域に塗布する第2塗布工程を行う。
また、デバイス基板をボンディング工具で吸着する吸着工程を行う。
第1塗布工程および吸着工程の後、塗布された異方導電性ペーストを間に挟んで第1配線接続部の端子部と第2配線接続部の端子部とが対向するように、デバイス基板が吸着されたボンディング工具を被接続基板上に位置させるセット工程を行う。
【0015】
次いで、塗布された異方導電性ペーストを加熱すると共にボンディング工具によりデバイス基板を被接続基板に対して加圧しながら押し付けるボンディング工程を行う。これにより、異方導電性ペーストが、押し潰されて被接続基板とデバイス基板との間で流動しながら拡がり、その後硬化する。また、異方導電性ペーストの内部に含まれる導電性粒子により、第1配線接続部の端子部と第2配線接続部の端子部とが電気的に接続され、両配線接続部が導通される。
【0016】
ここで、ボンディング工程において異方導電性ペーストが拡がる過程について詳しく説明すると、異方導電性ペーストは、まず、前記中央領域に塗布されたもの及び前記外端領域に塗布されたもののそれぞれが、前記一定方向に沿って互いに接近するように拡がり、その後互いに接触する。この際、前記中央領域に塗布された異方導電性ペーストが、前記2つの外端領域それぞれに塗布された異方導電性ペーストよりも多量であることから、両者が接触した後、前記外端領域に塗布された異方導電性ペーストは、前記中央領域に塗布された異方導電性ペーストに引き込まれるように流動して前記一定方向の内側に向けて拡がるので、前記一定方向の外側に向けて拡がることを抑制される。従って、異方導電性ペーストがデバイス基板の前記一定方向の外端部から食み出すのを抑制することが可能となり、異方導電性ペーストがボンディング工具に付着するのを抑制することができる。
一方で、前記2つの外端領域が、2つの外端端子部上それぞれから前記一定方向の内側に向けて延在しているので、外端端子部上に異方導電性ペーストを確実に配置しこの異方導電性ペーストをデバイス基板の前記外端部と被接続基板との間に確実に充填させることが可能となり、デバイス基板の被接続基板への接続(電気的接続)の信頼性を向上させることができる。
【0017】
以上示したように、本発明によれば、塗布工程が第1塗布工程および第2塗布工程を備えているので、異方導電性ペーストのボンディング工具への付着を抑制して歩留まりを向上させた上で、デバイス基板の被接続基板への接続の信頼性を向上させることができる。
また、ボンディング工具の大きさに関わらず異方導電性ペーストの付着を抑制することができることから、異方導電性ペーストの付着抑制のためにボンディング工具を小型化する必要がないので、吸着工程の際、デバイス基板とボンディング工具との相対的な位置決め精度を緩和することが可能となり、吸着工程を簡便に行いデバイス基板を被接続基板に簡便に実装することができる。
【0018】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、前記本発明にかかるデバイス実装方法で得られた前記デバイス基板および前記被接続基板と、前記第1配線接続部に電気的に接続された状態で前記被接続基板に実装され、作動時に該被接続基板を変位させる駆動素子と、前記第2配線接続部に電気的に接続された状態で前記デバイス基板に実装された駆動デバイスと、前記被接続基板の下面側に配設され、液滴を吐出するノズル開口部が形成されたノズル基板と、前記ノズル基板と前記被接続基板との間に挟まれた状態で前記ノズル基板および前記被接続基板それぞれに接合され、前記被接続基板の変位に伴って前記液滴を吐出されるための圧力を発生させる圧力発生室を有する流路形成基板と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る液滴吐出ヘッドにおいては、デバイス基板に実装された駆動デバイスと、被接続基板に実装された駆動素子とが、第1配線接続部および第2配線接続部の接続によって電気的に接続されているので、駆動デバイスの指示に基づいて駆動素子が作動すると、被接続基板が変位して圧力発生室内に液滴を吐出させるための圧力が発生する。これにより、ノズル開口部から液滴を吐出することができる。
ここで、液滴吐出ヘッドは、接続の信頼性が向上したデバイス基板および被接続基板造を備えているので、作動の信頼性が高く高品質な液滴吐出ヘッドとすることができる。
【0020】
また、本発明に係る液滴吐出装置は、前記本発明に係る液滴吐出ヘッドを備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る液滴吐出装置によれば、作動の信頼性が高く高品質な液滴吐出ヘッドを備えているので、同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る液滴吐出ヘッドの斜視図である。
【図2】図1に示す液滴吐出ヘッドの分解斜視図である。
【図3】図1に示す液滴吐出ヘッドをノズル基板側から見た斜視図である。
【図4】図1に示す断面矢視A−A図である。
【図5】図4に示す断面矢視図における基体の凹部近傍の部分拡大図である。
【図6】図5に示す断面矢視B−Bにおける模式図である。
【図7】図1に示す液滴吐出ヘッドに備えられたフレキシブル基板の展開図である。
【図8】図1に示す液滴吐出ヘッドの製造方法を説明する一工程図であって、セット工程における模式的な斜視図である。
【図9】図8に示す断面矢視C−Cにおける模式図である。
【図10】図1に示す液滴吐出ヘッドの製造方法を説明する一工程図であって、図9に示す状態における凹部の底面の模式的な平面図である。
【図11】図1に示す液滴吐出ヘッドの製造方法を説明する一工程図であって、外端領域および中央領域それぞれに塗布された異方導電性ペーストが接触した状態を示す模式図である。
【図12】図1に示す液滴吐出ヘッドの製造方法を説明する一工程図であって、図9に示す状態の後にボンディング工程を行っている様子を示す模式図である。
【図13】図1に示す液滴吐出ヘッドの製造方法を説明する一工程図であって、図10に示す状態の後にボンディング工程を行っている様子を示す模式図である。
【図14】図1に示す液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(液滴吐出ヘッド)
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、液滴吐出ヘッドの短手方向(ノズルの配列方向)をX軸方向、液滴吐出ヘッドの長手方向(X軸方向と直交する方向)をY軸方向、液滴吐出ヘッドの厚さ方向(X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向)をZ軸方向とする。
【0024】
図1〜図4に示すように、液滴吐出ヘッド1は、ドライバIC(駆動デバイス)26が実装されたフレキシブル基板(デバイス基板)27と、圧電素子(駆動素子)23が実装され、この圧電素子23の作動時に変位する振動板(被接続基板)24と、この振動板24の上面に接合されたリザーバ形成基板25と、このリザーバ形成基板25の上面に接合されたケース部材101と、振動板24の下面側に配設され、液滴を吐出するノズル開口部31が形成されたノズル基板21と、このノズル基板21と振動板24との間に挟まれた状態で接合された流路形成基板22と、を備えたヘッド本体1Aを主体に構成されている。
なお、本実施形態においては、一つのヘッド本体1Aにより液滴吐出ヘッド1を構成しているが、複数のヘッド本体1Aをユニット化することで液滴吐出ヘッド1を構成するようにしてもよい。
【0025】
図3に示すように、ノズル基板21は、例えばステンレスやガラスセラミックスによって構成されており、このノズル基板21には、ノズル基板21を貫通する貫通孔であって機能液の液滴を吐出するノズル開口部31が複数形成されている。そして、Y軸方向に複数並んで形成されたノズル開口部31によって、第1から第4ノズル開口群31A〜31Dが構成されている。ここで、第1ノズル開口群31Aと第2ノズル開口群31BとはX軸方向に関して対向配置され、第3ノズル開口群31Cと第4ノズル開口群31DとはX軸方向に関して対向配置されている。また、第3ノズル開口群31Cは第1ノズル開口群31Aに対してY軸方向で隣り合うように形成され、第4ノズル開口群31Dは第2ノズル開口群31Bに対してY軸方向で隣り合うように形成されている。
なお、図3では、第1から第4ノズル開口群31A〜31Dがそれぞれ6個のノズル開口部31によって構成されているように示されているが、実際には、例えば720個程度のノズル開口部31が形成されている。
【0026】
流路形成基板22は、例えば剛体であるシリコン単結晶によって形成されており、この流路形成基板22には、複数の隔壁35が、流路形成基板22の母材であるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることで形成されている。
また、流路形成基板22の下面には例えば接着剤や熱溶着フィルムなどを介して前記ノズル基板21が固定されている一方、流路形成基板22の上面には前記振動板24が設けられている。
【0027】
そして、図3及び図4に示すように、複数の隔壁35を有する流路形成基板22と、ノズル基板21と、振動板24とで囲まれた空間によって、ノズル開口部31より吐出される機能液が配置される圧力発生室36が形成されている。図3に示すように、この圧力発生室36は、第1から第4ノズル開口群31A〜31Dのそれぞれを構成する複数のノズル開口部31に対応するようにして、Y軸方向に複数並んで形成されている。
【0028】
そして、第1ノズル開口群31Aに対応して形成された複数の圧力発生室36によって第1圧力発生室群36Aが構成される。同様に、第2ノズル開口群31Bに対応する複数の圧力発生室36によって第2圧力発生室群36Bが構成され、第3ノズル開口群31Cに対応する複数の圧力発生室36によって第3圧力発生室群36Cが構成され、第4ノズル開口群31Dに対応する複数の圧力発生室36によって第4圧力発生室群36Dが構成されている。第1圧力発生室群36Aと第2圧力発生室群36BとはX軸方向に関して互いに対向するように配置され、第3圧力発生室群36Cと第4圧力発生室群36DとはX軸方向に関して互いに対向するように配置されている。
【0029】
また、各圧力発生室群36A〜36Dに対してX軸方向の外側には、各圧力発生室群36A〜36Dに対応して設けられると共に流路形成基板22、振動板24及びリザーバ形成基板25を貫通する連通部39が形成されている。そして、図4に示すように、第1圧力発生室群36Aを構成する複数の圧力発生室36の一方の端部は、供給路38を介して連通部39に連通され、これにより、第1圧力発生室群36Aを構成する複数の圧力発生室36は、互いに連通されている。同様に、第2から第4圧力発生室群36B〜36Dを構成する圧力発生室36も、それぞれ供給路38及び連通部39を介して互いに連通されている。
【0030】
振動板24は、流路形成基板22の上面を覆うように設けられた弾性膜41と、弾性膜41の上面に設けられた下電極膜42と、を備えている。弾性膜41は、例えば厚さ1〜2μm程度の二酸化シリコンによって形成されており、下電極膜42は、例えば厚さ0.2μm程度の白金などによって形成されている。なお、本実施形態において、下電極膜42は、複数の圧電素子23に共通する電極となっている。
【0031】
図4及び図5に示すように、振動板24(下電極膜42)の上面には、リード電極(第1配線接続部)47が形成されている。このリード電極47は、圧電素子23に対して電気的に接続されている電極であると共に、後述する異方導電性ペースト79を介してフレキシブル基板27の後述する配線パターン(第2配線接続部)70に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、リード電極47が圧電素子23を構成する電極としても機能している。
【0032】
振動板24を変位させるための圧電素子23は、下電極膜42の上面に設けられた圧電体膜45と、圧電体膜45の上面に設けられた上電極膜46と、上電極膜46の引出配線である前記リード電極47と、を備えている。
圧電体膜45は、例えば厚さ1μm程度の金属酸化物によって構成されている。また、上電極膜46は、例えば厚さ0.1μm程度の白金などによって構成され、リード電極47は、例えば厚さ0.1μm程度の金などによって構成されている。なお、リード電極47と下電極膜42との間には、絶縁膜(図示略)が設けられている。
【0033】
圧電素子23は、複数のノズル開口部31及び圧力発生室36のそれぞれに対応するように複数設けられている。即ち、圧電素子23は、ノズル開口部31ごと(圧力発生室36ごと)に設けられている。そして、上述のように、下電極膜42が複数の圧電素子23の共通電極として機能し、上電極膜46及びリード電極47が複数の圧電素子23の個別電極として機能する。
【0034】
そして、図4に示すように、第1ノズル開口群31Aを構成する各ノズル開口部31と対応するようにY軸方向に複数並んで設けられた圧電素子23により、第1圧電素子群23Aが形成される。同様に、第2ノズル開口群31Bと対応する第2圧電素子群23Bが形成され、第3ノズル開口群31Cと対応する第3圧電素子群(図示略)が形成され、第4ノズル開口群31Dと対応する第4圧電素子群(図示略)が形成されている。これら第1圧電素子群23Aと第2圧電素子群23Bとは、X軸方向において互いに対向するように配置されている。また、第3圧電素子群と第4圧電素子群とは、X軸方向において互いに対向するように配置されている。
【0035】
なお、圧電素子23は、圧電体膜45、上電極膜46及びリード電極47に加えて下電極膜42を含むものであってもよい。即ち、下電極膜42は、圧電素子23としての機能と振動板24としての機能とを兼ね備える構成としてもよい。また、本実施形態では、弾性膜41及び下電極膜42によって振動板24が構成されているが、弾性膜41を省略して下電極膜42が弾性膜41の機能を兼ね備える構成としてもよい。
【0036】
リザーバ形成基板25は、例えば流路形成基板22と同一材料であるシリコン単結晶をエッチングすることで形成されている。また、リザーバ形成基板25は、例えば熱酸化により表面に絶縁膜が形成された状態となっている。なお、リザーバ形成基板25としては、流路形成基板22の熱膨張率とほぼ同一の熱膨張率を有する材料によって形成されていることが好ましく、例えばガラスやセラミックス材料などを用いてもよい。
【0037】
リザーバ形成基板25には、連通部39のそれぞれと対応するリザーバ部51がY軸方向に延びるように形成されている。そして、リザーバ部51と、連通部39と、によってリザーバ37が構成される。
また、リザーバ形成基板25には、各連通部39の側壁に接続されて各連通部39に機能液を導入する導入路52が形成されている。
【0038】
また、リザーバ形成基板25の上面には、コンプライアンス基板53が接合されている。このコンプライアンス基板53は、封止膜54及び固定板55を有する。
封止膜54は、例えば厚さ6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルムのような剛性が低く可撓性を有する材料によって形成されている。そして、封止膜54によってリザーバ部51の上部が封止されている。
【0039】
また、固定板55は、例えば厚さ30μm程度のステンレス鋼のような金属などの硬質の材料によって形成されている。この固定板55のうち、リザーバ部51に対応する領域は、Z軸方向に完全に除去された開口部56となっている。従って、リザーバ部51の上部は、可撓性を有する封止膜54のみによって封止されており、これにより、内部圧力の変化によって変形可能な可撓部57となっている。また、コンプライアンス基板53上には、前記ケース部材101が設けられている。
ケース部材101は、ステンレスによって構成されている。このケース部材101は、液滴吐出ヘッド1を後述するような液滴吐出装置IJに搭載する際の取付け部材として利用されるものである。
【0040】
また、コンプライアンス基板53及びケース部材101においてリザーバ部51よりもX軸方向の外側に位置する部分には、導入路52に連通してリザーバ部51に機能液を供給するための機能液導入口58が形成されている。通常、機能液導入口58からリザーバ部51に機能液が供給されると、例えば圧電素子23の駆動時の機能液の流れや周囲の熱などによってリザーバ部51内に圧力変化が生じる。しかしながら、上述のように、リザーバ部51の上部が封止膜54のみによって封止された可撓部57となっているので、この可撓部57が撓み変形してその圧力変化を吸収する。従って、リザーバ部51内は一定の圧力に保持される。なお、封止膜54の他の部分(可撓部57を除く部分)は固定板55によって十分な強度に保持されている。また、ケース部材101は、可撓部57の変形状態を損なわないように可撓部57に非接触状態で設けられている。
【0041】
また、図2に示すように、リザーバ形成基板25のX軸方向における中央部には、Y軸方向に延びる開口部60が2つ形成されている。図4に示すように、リザーバ形成基板25において開口部60のX軸方向外側に位置する領域には、第1圧電素子群23Aから第4圧電素子群を振動板24との間で封止する第1および第2封止部61A,61Bと、第3および第4封止部(図示略)とが形成されている。より詳しくは、第1封止部61Aは、第1圧力発生室群36Aに対応する第1圧電素子群23Aを振動板24との間で封止し、第2封止部61Bは第2圧電素子群23Bを封止している。第3封止部および第4封止部は、第3および第4圧電素子群を封止している。
【0042】
リザーバ形成基板25のうち、圧電素子23と対向する領域には、圧電素子23の運動を阻害しない程度の空間が確保されており、この空間を密封可能な圧電素子保持部62が形成されている。圧電素子保持部62は、第1および第2封止部61A,61Bと、第3および第4封止部のそれぞれに形成されており、第1圧電素子群23Aから第4圧電素子群を覆う大きさで形成されている。また、圧電素子23のうち、少なくとも圧電体膜45は、この圧電素子保持部62内に密封されている。
【0043】
このように、リザーバ形成基板25は、圧電素子23を外部環境から遮断し、圧電素子23を封止するための封止部材としての機能を有している。リザーバ形成基板25で圧電素子23を封止することにより、水分などの外部環境による圧電素子23の破壊を防止することができる。なお、本実施形態では、圧電素子保持部62の内部を密封した状態としただけであるが、例えば圧電素子保持部62内の空間を真空や、窒素またはアルゴン雰囲気などとすることで圧電素子保持部62内を低湿度に保持することができ、圧電素子23の破壊をより確実に防止することができる。
【0044】
また、第1封止部61Aの圧電素子保持部62によって封止されている圧電素子23のうち、リード電極47の一方の端部は、第1封止部61Aの外側まで延びており、開口部60において露出した振動板24上に配置されている。
同様に、第2封止部61Bの圧電素子保持部62によって封止される圧電素子23のうち、リード電極47の他方の端部は、第2封止部61Bの外側まで延びており、開口部60において露出した振動板24上に配置されている。また、第3及び第4封止部の圧電素子保持部62によって封止される圧電素子23のうち、リード電極47の一部が、第3及び第4封止部の外側まで延びており、第3及び第4封止部同士の間に設けられた開口部60において露出した振動板24上に配置されている。
【0045】
そして、図5に示すように、以上のように形成された振動板24及びリザーバ形成基板25は、凹部81が形成された基体80を構成している。即ち、この基体80において凹部81は、リザーバ形成基板25の開口部60を画成する部分を側壁82とし、振動板24においてこの開口部60に露出する部分を底面83として構成される。また、各封止部61A、61Bに封止されている圧電素子23のリード電極47において、前記底面83上に配置されている部分が、このリード電極47の端子部47aとして機能する。また、図6に示すように、複数の端子部47aは、Y軸方向に複数並んで設けられた圧電素子23と対応して、前記底面83上にY軸方向(一定方向)に互いに間隔をあけて配列されている。
【0046】
また、図1及び図2に示すように、ケース部材101のX軸方向における中央部には、Y軸方向に沿って形成される開口部102が形成されている。この開口部102は、少なくとも前記リザーバ形成基板25に形成された前記開口部60の開口領域を含む大きさとされており、開口部102には、ドライバIC26の保持領域103が切欠状に形成されている。
【0047】
ドライバIC26は、例えば回路基板や駆動回路を含む半導体集積回路(IC)を有するドライバICであり、第1から第4ノズル開口群31A〜31Dに応じて4つ設けられている。各ドライバIC26(第1から第4ドライバIC26A〜26D)は、4つのフレキシブル基板27A〜27Dの一方側の面である表面27aの実装領域(所定領域)にそれぞれフリップチップ実装されている。また、図5に示すように、ドライバIC26とフレキシブル基板27との間には、接続強度を高めるための樹脂(接着剤)78が設けられている。
【0048】
また、ドライバIC26は、ケース部材101に形成された開口部102の保持領域103の側壁面102aに放熱性樹脂65によってモールドされている。これにより、ドライバIC26は、ケース部材101の保持領域103の側壁面102aにリザーバ形成基板25の面方向(XY平面)に対して垂直状態で保持されている。
【0049】
図7に示すように、各フレキシブル基板27A〜27Dは、可撓性を有したフレキシブル回路基板からなるもので、フィルム基材71と、フィルム基材71の表面27aに実装された前記ドライバIC26と、フィルム基材71の表面27aに形成され振動板24のリード電極47と対応する前記配線パターン70と、を備えている。
各フレキシブル基板27A〜27Dは、平面視略L字状に形成されており、一端側の端部が一点鎖線Oにて略90度屈曲された接続部27bとなっている。そして、各フレキシブル基板27A〜27Dは、この接続部27bを介してリード電極47の端子部47aに接続されるようになっている。
なお、図7においてはフレキシブル基板27A,27Dを図示しているが、フレキシブル基板27B,27Cについては外部信号入力部77の延在方向が反対となる以外の構成については同様である。
【0050】
フィルム基材71は、例えば厚さ25μm程度のポリイミドからなる絶縁性のフィルムである。配線パターン70は、銅などの導電性材料からなり、プリント方式により電解メッキやエッチングなどの手法によって形成されている。この配線パターン70は、実装されたドライバIC26にそれぞれ電気的に接続される第1配線パターン72、第2配線パターン74、およびグランド配線76を備えている。
【0051】
第1配線パターン72は、ドライバIC26から接続部27bに向かって延在するパターンであり、接続部27bにおける一端側が、リード電極47の端子部47aに電気的に接続される配線パターン70の端子部73として機能する。この端子部73は、フィルム基材71の幅方向に互いに間隔をあけて配列されている。
一方、第2配線パターン74とグランド配線76は、外部コントローラCTと電気的に接続される外部信号入力部77として機能する。外部信号入力部77から入力された外部信号は、第2配線パターン74を介してドライバIC26へと入力される。
【0052】
なお、フィルム基材71の接続部27bにおいて前記端子部73が形成されている側の面、つまりフィルム基材71の接続部27bの表面27aである端子面75は、基体80の底面83の面積よりも小さくなっている。また、図7では、図面の見易さのため、第1配線パターン72を実際の数より少なく図示している。
【0053】
また、図5及び図7に示すように、液滴吐出ヘッド1には、凹部81の底面83と前記端子面75との間に介在し底面83と端子面75とを接着すると共に配線パターン70の端子部73とリード電極の端子部47aとを電気的に接続する異方導電性ペースト79が備えられている。
異方導電性ペースト79は、例えば熱硬化性樹脂と、この熱硬化性樹脂の粘度の調整や熱硬化性樹脂の補強を行うフィラーと、が混合されて構成されている。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ等を採用することができる。この異方導電性ペースト79は、後述するボンディング工程における加圧による圧縮応力が歪みとして蓄積されていると共に、後述するボンディング工程における加熱により硬化収縮されている。そして、異方導電性ペースト79では、これらの歪み及び硬化収縮が、端子面75と前記底面83とを強固に接着する接着力として作用している。
【0054】
また、異方導電性ペースト79には、導電性粒子が含まれており、この導電性粒子により、リード電極47の端子部47aと第1配線パターン70の端子部73とを電気的に接続している。
以上に説明した基体80、フレキシブル基板27及び異方導電性ペースト79により、フレキシブル基板27が基体80に実装されてなるデバイス実装構造85が構成される。
【0055】
次に、上述した構成の液滴吐出ヘッド1の製造方法について説明する。なお、以下の説明において、フレキシブル基板27を基体80に対して実装するデバイス実装方法を主に説明し、液滴吐出ヘッド1のうち、ノズル基板21、流路形成基板22、リザーバ形成基板25、ケース部材101、圧電素子23などの製造及び接続、配置作業はすでに完了しているものとする。
【0056】
はじめに、フレキシブル基板27を準備する準備工程を行う。
図7に示すように、フィルム基材71の表面27aに、端子部73を含む第1配線パターン72、第2配線パターン74、グランド配線76等の配線パターン70を形成する。これらは、フィルム基材71上に、プリント方式を用いた電解メッキやエッチングなどの手法を用いて形成する。ここで、配線パターン70における複数の端子部73は、ノズル開口部31同士の間隔(ノズルピッチ)、即ち圧電素子23同士の間隔に応じてフィルム基材71の幅方向に間隔をあけて精度よく形成される。
【0057】
そして、第1から第4フレキシブル基板27A〜27Dに、第1から第4ドライバIC26A〜26Dをそれぞれ実装する。この際、第1から第4ドライバIC26A〜26Dを、第1から第4フレキシブル基板27A〜27Dのフィルム基材71の表面27aの前記実装領域にそれぞれフリップチップ実装すると共に、樹脂78によって第1から第4フレキシブル基板27A〜27Dと第1から第4ドライバIC26A〜26Dとをそれぞれ固定する。そして、各フレキシブル基板27を一点鎖線Oにて折り曲げ加工(例えば、プレス加工)を施す。
以上で準備工程が終了する。
【0058】
次に、図9及び図10に示すように、振動板24の端子部47a上に異方導電性ペースト79を塗布する塗布工程を行う。この際、複数の端子部47a上において、該端子部47aのうちY軸方向の両外端に位置する2つの外端端子部47Aa上それぞれからY軸方向の内側に向けて延在する2つの外端領域R1に異方導電性ペースト79を塗布する第1塗布工程を行うと共に、2つの外端領域R1それぞれに塗布される異方導電性ペースト79よりも多量の異方導電性ペースト79を、複数の端子部47a上において、2つの外端領域R1の間に位置する中央領域R2に塗布する第2塗布工程を行う。
図9及び図10に示すように、本実施形態では、中央領域R2は、外端領域R1よりも広い領域となっている。そして、外端領域R1及び中央領域R2の各領域に塗布された異方導電性ペースト79の塗布高さ(振動板24からのZ軸方向に沿った大きさ)は、互いに等しくなっている。
【0059】
また、図8及び図9に示すように、フレキシブル基板27をボンディング工具Tで吸着する吸着工程を行う。図示の例では、ボンディング工具Tの外形状は、屈曲されたフレキシブル基板27の形状に倣うように直方体状に形成されている。また、このボンディング工具Tにおいてフレキシブル基板27を吸着する外表面は、平坦に形成されており、フィルム基材71の表面27aの反対側の面である裏面を吸着する。また、ボンディング工具Tは、その外表面においてフレキシブル基板27の端子面75の反対側の面を吸着する部分が、端子面75よりも面積が大きくなっており、これにより、ボンディング工具Tは、端子面75を全面に亘って加圧可能となっている。なお、図8では、図面の見易さのため、液滴吐出ヘッド1の各構成要素の図示を簡略化している。
【0060】
第1塗布工程および吸着工程の後、塗布された異方導電性ペースト79を間に挟んで基体80の凹部81の底面83(振動板24)とフレキシブル基板27の端子面75とが対向するように、フレキシブル基板27が吸着されたボンディング工具Tを基体80上に位置させるセット工程を行う。この際、前記底面83の端子部47a及び端子面75の端子部73それぞれにおいて、互いに対応するもの同士がZ軸方向で対向するようにボンディング工具Tを位置させる。
【0061】
次いで、塗布された異方導電性ペースト79を加熱すると共にボンディング工具Tによりフレキシブル基板27を振動板24に対して加圧しながら押し付けるボンディング工程を行う。これにより、図10に示すように、異方導電性ペースト79が、押し潰されて振動板24とフレキシブル基板27との間で流動しながら拡がり、その後硬化する。また、異方導電性ペースト79の内部に含まれる導電性粒子により、リード電極47の端子部47aと配線パターン70の端子部73とが電気的に接続され、リード電極47及び配線パターン70が導通される。
【0062】
ここで、図11に示すように、ボンディング工程において異方導電性ペースト79が拡がる過程について詳しく説明すると、異方導電性ペースト79は、まず、中央領域R2に塗布されたもの及び外端領域R1に塗布されたもののそれぞれが、Y軸方向に沿って互いに接近するように拡がり、その後互いに接触する。この際、中央領域R2に塗布された異方導電性ペースト79が、2つの外端領域R1それぞれに塗布された異方導電性ペースト79よりも多量であることから、両者が接触した後、外端領域R1に塗布された異方導電性ペースト79は、中央領域R2に塗布された異方導電性ペースト79に引き込まれるように流動してY軸方向の内側に向けて拡がるので、Y軸方向の外側に向けて拡がることを抑制される。従って、異方導電性ペースト79がフレキシブル基板27のY軸方向の外端部から食み出すのを抑制することが可能となり、異方導電性ペースト79がボンディング工具Tに付着するのを抑制することができる。
一方で、2つの外端領域R1が、2つの外端端子部47Aa上それぞれからY軸方向の内側に向けて延在しているので、図12及び図13に示すように、外端端子部47Aa上に異方導電性ペースト79を確実に配置しこの異方導電性ペースト79をフレキシブル基板27の前記外端部と振動板24との間に確実に充填させることが可能となり、フレキシブル基板27の振動板24への接続(電気的接続)の信頼性を向上させることができる。
【0063】
以上示したように、本実施形態に係るデバイス実装方法によれば、塗布工程が第1塗布工程および第2塗布工程を備えているので、異方導電性ペースト79のボンディング工具Tへの付着を抑制して歩留まりを向上させた上で、フレキシブル基板27の振動板24への接続の信頼性を向上させることができる。
また、ボンディング工具Tの大きさに関わらず異方導電性ペースト79の付着を抑制することができることから、異方導電性ペースト79の付着抑制のためにボンディング工具Tを小型化する必要がないので、吸着工程の際、フレキシブル基板27とボンディング工具Tとの相対的な位置決め精度を緩和することが可能となり、吸着工程を簡便に行いフレキシブル基板27を振動板24に簡便に実装することができる。
【0064】
また、本実施形態のように、凹部81の底面83にフレキシブル基板27を実装する場合であっても、異方導電性ペースト79を用いるので、塗布工程において、例えば異方導電性フィルムを用いる場合に比べて簡便に塗布(配置)することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、前述したフレキシブル基板27の基体80への実装と共に、フレキシブル基板27に実装されたドライバIC26のケース部材101への固定を行う。
以上により、液滴吐出ヘッド1を製造することができる。
次に、この液滴吐出ヘッド1を作動させて機能液の液滴を吐出させる場合について簡単に説明する。まず、外部信号入力部77を介して外部コントローラCTからドライバIC26に外部信号を入力する。すると、ドライバIC26は、各圧電素子23を作動させる。このようにドライバIC26の指示に基づいて圧電素子23が作動すると、振動板24が変位して圧力発生室36内に液滴を吐出させるための圧力が発生する。これにより、ノズル開口部31から液滴を吐出することができる。
以上に示した液滴吐出ヘッド1は、接続の信頼性が向上したフレキシブル基板27および振動板24を備えているので、作動の信頼性が高く高品質な液滴吐出ヘッド1とすることができる。
【0066】
(液滴吐出装置)
次に、上述した液滴吐出ヘッド1を備えた本発明の液滴吐出装置IJの一例について、図14を参照しながら説明する。
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、駆動軸4と、ガイド軸5と、外部コントローラCTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ6とを備えている。なお、液滴吐出ヘッド1は、不図示のキャッリッジにケース部材101が固定されることで液滴吐出装置IJに取付けられている。ステージ7は、液滴吐出ヘッド1によって機能液が吐出される基板Pを支持するもので、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えたものである。液滴吐出ヘッド1のノズル開口部31からは、ステージ7に支持されている基板Pに対し、機能液が吐出されるようになっている。
【0067】
駆動軸4には駆動モータ2が接続されている。駆動モータ2はステッピングモータ等からなるもので、外部コントローラCTからY軸方向の駆動信号が供給されると、駆動軸4を回転させるようになっている。駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はY軸方向に移動する。ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、駆動モータ3を備えている。駆動モータ3はステッピングモータ等からなるもので、外部コントローラCTからX軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をX軸方向に移動するようになっている。
【0068】
外部コントローラCTは、液滴吐出ヘッド1に対して液滴吐出を制御するための電圧を供給する。さらに、外部コントローラCTは、駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、駆動モータ3に対してステージ7のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0069】
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しない駆動モータを備えている。この駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はガイド軸5に沿ってX軸方向に移動する。クリーニング機構8の移動も外部コントローラCTにより制御される。ヒータ6は、ここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行うようになっている。このヒータ6の電源の投入及び遮断も、外部コントローラCTによって制御されるようになっている。
そして、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。
【0070】
以上に示した液滴吐出装置IJによれば、作動の信頼性が高く高品質な液滴吐出ヘッド1を備えているので、同様に作動の信頼性を高めて高品質化を図ることができる。
なお、本実施形態において、液滴吐出ヘッド1より吐出される機能液としては、液晶表示デバイスを形成するための液晶表示デバイス形成用材料、有機EL表示デバイスを形成するための有機EL形成用材料、電子回路の配線パターンを形成するための配線パターン形成用材料などを含むものとする。これにより、液滴吐出装置IJは、液滴吐出法に基づいて吐出した機能液によって、前記各デバイスを製造することができる。
【0071】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、液滴吐出ヘッド1および液滴吐出装置IJは、前記実施形態で示したデバイス実装方法で実装されたフレキシブル基板及び振動板を備えていれば、前記実施形態に示すものに限られるものではない。
【0072】
また、前記実施形態では、本発明に係るデバイス実装方法を、基体80の凹部81の底面83にフレキシブル基板27を実装させる場合に採用するものとしたが、これに限られるものではなく、例えば凹部のない被接続基板(基体)上にデバイス基板(フレキシブル基板)を実装させる際に前記実施形態に係るデバイス実装方法を採用することも可能である。
【0073】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 液滴吐出ヘッド
21 ノズル基板
22 流路形成基板
23 圧電素子(駆動素子)
24 振動板(被接続基板)
26、26A、26B、26C、26D ドライバIC(駆動デバイス)
27、27A、27B、27C、27D フレキシブル基板(デバイス基板)
31 ノズル開口部
36 圧力発生室
47 リード電極(第1配線接続部)
47a リード電極の端子部(第1配線接続部の端子部)
47Aa 外端端子部
70 配線パターン(第2配線接続部)
73 配線パターンの端子部(第2配線接続部の端子部)
79 異方導電性ペースト
T ボンディング工具
IJ 液滴吐出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1配線接続部が形成されると共に該複数の第1配線接続部の端子部が一定方向に互いに間隔をあけて配列された被接続基板に、前記第1配線接続部に対応する複数の第2配線接続部が形成されたデバイス基板を、異方導電性ペーストを利用して実装し、両配線接続部を電気的に接続するデバイス実装方法であって、
前記複数の第1配線接続部の端子部上に異方導電性ペーストを塗布する塗布工程と、
前記デバイス基板をボンディング工具で吸着する吸着工程と、
塗布された異方導電性ペーストを間に挟んで前記第1配線接続部の端子部と前記第2配線接続部の端子部とが対向するように、前記デバイス基板が吸着されたボンディング工具を前記被接続基板上に位置させるセット工程と、
塗布された異方導電性ペーストを加熱すると共に前記ボンディング工具により前記デバイス基板を前記被接続基板に対して加圧しながら押し付け、前記第1配線接続部の端子部と前記第2配線接続部の端子部とを異方導電性ペーストを介して電気的に接続するボンディング工程と、
を備え、
前記塗布工程は、
前記複数の第1配線接続部の端子部上において、該端子部のうち前記一定方向の両外端に位置する2つの外端端子部上それぞれから前記一定方向の内側に向けて延在する2つの外端領域に異方導電性ペーストを塗布する第1塗布工程と、
前記複数の第1配線接続部の端子部上において、前記2つの外端領域の間に位置する中央領域に、前記2つの外端領域それぞれに塗布される異方導電性ペーストよりも多量の異方導電性ペーストを塗布する第2塗布工程と、
を備えていることを特徴とするデバイス実装方法。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイス実装方法で得られた前記デバイス基板および前記被接続基板と、
前記第1配線接続部に電気的に接続された状態で前記被接続基板に実装され、作動時に該被接続基板を変位させる駆動素子と、
前記第2配線接続部に電気的に接続された状態で前記デバイス基板に実装された駆動デバイスと、
前記被接続基板の下面側に配設され、液滴を吐出するノズル開口部が形成されたノズル基板と、
前記ノズル基板と前記被接続基板との間に挟まれた状態で前記ノズル基板および前記被接続基板それぞれに接合され、前記被接続基板の変位に伴って前記液滴を吐出されるための圧力を発生させる圧力発生室を有する流路形成基板と、
を備えていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2記載の液滴吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−226019(P2010−226019A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74181(P2009−74181)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】