説明

デフ・ケース及びその加工方法、デファレンシャル装置

【課題】リング・ギヤ剛性或いは設計の自由度を向上させることを可能とする。
【解決手段】ケース壁部5の外面にリング・ギヤ取り付け用のフランジ部7を周回状に有し、同内面に、ピニオン・ギヤ17,19及びピニオン・ギヤ17,19に噛み合うサイド・ギヤ23,25の球面状の凸背面部17a,19a、23a,25aをそれぞれ摺動可能に支持する同心球面状のピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15を形成したデフ・ケース3であって、サイド・ギヤ凹支持面部13,15の大きさを、サイド・ギヤ23,25の球面状の凸背面部23a,25aの摺動径の大きさよりも小さく設定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに供されるデファレンシャル装置のデフ・ケース及びその加工方法、デファレンシャル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデファレンシャル装置には、デフ・ケースの内面に同心球面状のピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を形成し、このピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部に、ピニオン・ギヤ及びサイド・ギヤの球状の凸背面部をそれぞれ自転摺動可能に支持させるものがある。
【0003】
このようなデファレンシャル装置では、デフ・ケースのピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を一度の旋削加工により形成できるため、加工を容易にすることができる。
【0004】
しかし、デフ・ケースに旋削工具を挿入できる窓を形成し、デフ・ケースを旋盤のチャック治具で挟み込み、デフ・ケースの窓から挿入した旋削工具回りでピニオン・ギヤ及びサイド・ギヤの回転軸心の交点を通る加工回転軸中心にデフ・ケースを回転させてピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を共に旋削する構造では、問題が残る。
【0005】
一般に加工回転軸中心は、リング・ギヤを取り付けるためのフランジ部又はデフ・ケースに一体に備えられたリング・ギヤの回転軸心に直交配置される形態となる。
【0006】
このため、リング・ギヤを取り付けるためのフランジ部がピニオン・ギヤ及びサイド・ギヤの回転軸心の交点に軸方向に近いと窓形成のためにフランジ部が周方向で分断されることになり、リング・ギヤ剛性が低下し、異音の原因となる恐れがある。
【0007】
デフ・ケースに一体に備えられたリング・ギヤの場合は、分断を避けるためにリング・ギヤとピニオン・ギヤ及びサイド・ギヤの回転軸心の交点とが軸方向に一定の距離を置く必要があり、設計の自由度が阻害される恐れがある。
【0008】
【特許文献1】特開2005−125473号公報
【特許文献2】EP1624229B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、フランジ部が周方向で分断されることになり、リング・ギヤ剛性が低下し、異音の原因となる恐れがあり、或いは設計の自由度が阻害されるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、リング・ギヤ剛性を向上させるため、或いは設計の自由度を拡大するため、ケース壁部の外面にリング・ギヤ取り付け用のフランジ部又はリング・ギヤを周回状に有し、同内面に、ピニオン・ギヤ及び該ピニオン・ギヤに噛み合うサイド・ギヤの球面状の凸背面部をそれぞれ摺動可能に支持する同心球面状のピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を形成したデフ・ケースであって、前記サイド・ギヤ凹支持面部の大きさを、前記サイド・ギヤの球面状の凸背面部の摺動径の大きさよりも小さく設定したことをデフ・ケースの最も主要な特徴とする。
【0011】
また、前記デフ・ケースを、前記ピニオン・ギヤの回転軸となる軸に直交する加工回転軸中心で回転させ、前記加工回転軸中心が通る窓から挿入した旋削工具により前記ピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を旋削することをデフ・ケースの加工方法の最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ケース壁部の外面にリング・ギヤ取り付け用のフランジ部又はリング・ギヤを周回状に有し、同内面に、ピニオン・ギヤ及び該ピニオン・ギヤに噛み合うサイド・ギヤの球面状の凸背面部をそれぞれ摺動可能に支持する同心球面状のピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を形成したデフ・ケースであって、前記サイド・ギヤ凹支持面部の大きさを、前記サイド・ギヤの球面状の凸背面部の摺動径の大きさよりも小さく設定した。
【0013】
このため、サイド・ギヤ凹支持面部の加工のための工具の移動量を小さくすることができ、工具の移動量に応じた加工用の窓を小さくすることが可能となる。
【0014】
したがって、リング・ギヤを取り付けるためのフランジ部、或いはデフ・ケースに一体に備えられたリング・ギヤを、ピニオン・ギヤ及びサイド・ギヤの回転軸心の交点に対し軸方向に近ずけても、窓によって分断されるがなく、リング・ギヤ剛性を向上させ、或いはリング・ギヤ配置の設計の自由度を拡大することができる。
【0015】
また、デフ・ケースを、ピニオン・ギヤの回転軸となる軸に直交する加工回転軸中心で回転させ、加工回転軸中心が通る窓から挿入した旋削工具によりピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を旋削する。
【0016】
このため、ピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を同一の旋削工程で旋削し、加工を容易に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
リング・ギヤ剛性或いは設計の自由度を向上させるという目的を、サイド・ギヤ凹支持面部の大きさを、サイド・ギヤの球面状の凸背面部の摺動径の大きさよりも小さく設定することにより実現した。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係り、図3のI−I矢視におけるデフ・ケースの断面図、図2は、デフ・ケースの正面図、図3は、デフ・ケースの側面図、図4は、サイド・ギヤ凹支持面部の正面図、図5は、ピニオン・ギヤ凹支持面部の正面図、図6は、サイド・ギヤ凹支持面部の変形例の正面図、図7は、デファレンシャル・ギヤを組み付けたデファレンシャル装置に係り、図3のVII−VII線矢視における90°異なる位置の断面図である。
【0019】
図1〜図7のように、デファレンシャル装置1のデフ・ケース3は、ケース壁部5の外面にリング・ギヤ取り付け用のフランジ部7を周回状に一体に有している。このデフ・ケース3の内面には、各一対のピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15が形成されている。なお、ピニオン・ギヤ凹支持面部11は、ピニオン・ギヤ凹支持面部9の対向位置に形成されているが、図示はされないので、ピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)としてピニオン・ギヤ凹支持面部9の形状を参照する。
【0020】
ピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15は、デフ・ケース3内の一対のピニオン・ギヤ17,19及びサイド・ギヤ23,25の回転軸心となる各軸の交点を曲率中心Cとする同心球面の一部を構成する。
【0021】
なお、フランジ部7に対して図示外のボルト又は熔接部等の固定手段を介してリング・ギヤを周回状に一体に形成するか、フランジ部7の外周にリング・ギヤを一体に形成することもできる。
【0022】
サイド・ギヤ凹支持面部13,15の大きさは、前記サイド・ギヤ23,25の球面状の凸背面部23a,25aの摺動径27(図4参照)の大きさよりも小さく設定されている。
【0023】
本実施例では、図1,図4のように、前記サイド・ギヤ凹支持面部13,15に、前記ピニオン・ギヤ17,19の回転軸となる軸に直交する方向の両側に二面幅13a,15aを形成して前記摺動径27の大きさよりも小さく設定されている。
【0024】
ピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)の大きさは、ピニオン・ギヤ17,19の凸背面部17a,19aの摺動径にほぼ等しく図5のように円形リング状に周回形成されている。
【0025】
なお、ピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15には、図4,図5に部分的に示すようにデフ・ケース3回転軸方向に沿った微細溝29,31がそれぞれ旋削痕により形成される。微細溝29,31のピッチ及び高低は後述する旋削工具の加工リードを調整することで広狭、高低自在に適宜設定し、オイルの流通機能を変化させることができる。
【0026】
図6のように、サイド・ギヤ凹支持面部13A,15Aを、前記摺動径27の大きさよりも小さな外周径で円形リング状に周回形成して前記摺動径27の大きさよりも小さく設定することもできる。
【0027】
ケース壁部5の回転軸方向両側には、サイド・ギヤ凹支持面部13,15の外側においてボス部33,35が形成され、図示しないデフ・キャリヤにベアリングを介して回転自在に支持可能となっている。
【0028】
ケース壁部5の対向する一対のピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)の中央には、ピニオン・シャフト23の支持穴37が貫通形成されている。
【0029】
ケース壁部5には、一対の窓41,43がフランジ部7に隣接して形成されている。窓41,43は、ピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15の加工範囲に対応した大きさであり、且つピニオン・ギヤ17,19、サイド・ギヤ23,25が組み込める大きさとなっている。
【0030】
デフ・ケース3の加工回転軸中心線Sは、ピニオン・ギヤ17,19、サイド・ギヤ23,25の回転軸となる各軸の交点となる曲率中心Cを通り、各軸に直交している。
【0031】
窓41,43は、対向するように形成され、重量バランスが採られている。窓41,43は、何れからも後述する旋削工具を挿入させ且つ該旋削工具回りで前記曲率中心Cを通る加工回転軸中心線Sを中心に回転可能であり、旋盤のチャック治具でデフ・ケース3を挟み込み、加工回転軸中心線Sを中心に回転させ得る構成となっている。
【0032】
ピニオン・ギヤ17,19は、凸背面部17a,19aがピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)に球面ワッシャ49,51を介して摺動回転可能に支持され、サイド・ギヤ23,25は、ピニオン・ギヤ17,19に噛み合い、凸背面部23a,25aがサイド・ギヤ凹支持面部13,15に球面ワッシャ53,55を介して摺動回転可能に支持されている。ピニオン・ギヤ17,19は、ピニオン・シャフト57に回転自在に支持され、ピニオン・シャフト57は、支持穴37,39に嵌合支持され、スプリング・ピン59により抜け止めが行われている。
[デファレンシャル・ギヤの組み込み]
デフ・ケース3に対して、球面ワッシャ53,55係合させたサイド・ギヤ23,25を窓41,43から先に挿入し、このサイド・ギヤ23,25を、球面ワッシャ53,55介してサイド・ギヤ凹支持面部13,15に配置する。
【0033】
ついで、球面ワッシャ49,51を凸背面部17a,19aに係合させたピニオン・ギヤ17,19を窓41,43から挿入して両サイド・ギヤ23,25に噛み合わせる。
【0034】
このピニオン・ギヤ17,19及びサイド・ギヤ23,25からなるデファレンシャル・ギヤをデフ・ケース3の回転軸回りでデフ・ケース3に対して90°回転させ、図7の上判断面の配置状態とする。
【0035】
図7の配置状態において、ピニオン・シャフト57を組み付け、デファレンシャル・ギヤの組み込みが完了する。その後、デフ・ケース3とピニオン・シャフト57との間に、スプリング・ピン59を組み付け、ピニオン・シャフト57の抜け止め、回り止めが行われる。
[デフ・ケースの加工方法]
本発明実施例のデフ・ケースの加工方法は、前記デフ・ケース3を、前記加工回転軸中心線Sで回転させ、前記窓41又は43から挿入した旋削工具により前記ピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15を旋削する。
【0036】
図8は、切削工具(バイト)61の移動形態を示す図1と同方向から見た概念断面図、図9は、図8のIX−IX線矢視の概念断面図である。
【0037】
図8,図9のように、デフ・ケース3の素材を加工回転軸中心線Sを中心に回転させ、サイド・ギヤ凹支持面部13,15およびピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)を切削工具61により同時に切削加工する。
【0038】
このとき、Lが切削工具61の移動量となる。窓41,43に対しては移動量Lの他に逃がし量Pを付加する。
【0039】
これを図1について説明すると、図1の矢印が切削工具61を概念的に示したもので、サイド・ギヤ凹支持面部13,15およびピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)を切削工具61により同時に切削加工するために、デフ・ケース3の回転軸方向で加工回転軸中心線Sの両側にT=L+Pの寸法をとる。
【0040】
このとき、サイド・ギヤ凹支持面部13,15の二面幅13a,15a、或いはサイド・ギヤ凹支持面部13A,15Aを摺動径27の大きさよりも小さな外周径での円形リング状の周回形成によりデフ・ケース3の回転軸方向で加工回転軸中心線Sの両側への切削工具61の移動量Lを減少させることができる。
【0041】
このため、窓41,43をデフ・ケース3の回転軸方向で幅を狭くすることができ、リング・ギヤを取り付けるためのフランジ部7がピニオン・ギヤ17,19及びサイド・ギヤ23,25の回転軸心の交点に軸方向に近くても窓41,43形成のためにフランジ部7が周方向で分断されることを避けることができる。
【0042】
図10〜図12は、比較例に係り、図10は、上半部が図2と同様なデフ・ケースの半正面図、下半部が図1と同方向から見たデフ・ケースの半断面図、図11は、サイド・ギヤ凹支持面部の正面図、図12は、デフ・ケースの側面図である。
【0043】
この比較例では、サイド・ギヤ凹支持面部13B,15Bの大きさが、前記サイド・ギヤ23B,25Bの球面状の凸背面部23a,25aの摺動径27の大きさと同等に形成されたものである。
【0044】
したがって、切削工具61Bの移動量Lはその分デフ・ケース3の回転軸方向で大きくなり、窓41B,43Bを大きくする必要からフランジ部7Bが切欠部65により分断される結果とになる。
[実施例の効果]
本発明実施例のデフ・ケース3は、ケース壁部5の外面にリング・ギヤ取り付け用のフランジ部7を周回状に有し、同内面に、ピニオン・ギヤ17,19及び該ピニオン・ギヤ17,19に噛み合うサイド・ギヤ23,25の球面状の凸背面部17a,19a、23a,25aをそれぞれ摺動可能に支持する同心球面状のピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15を形成したデフ・ケース3であって、前記サイド・ギヤ凹支持面部13,15の大きさを、前記サイド・ギヤ23,25の球面状の凸背面部23a,25aの摺動径の大きさよりも小さく設定した。
【0045】
このため、サイド・ギヤ凹支持面部13,15の加工のための切削工具61の移動量Lを小さくすることができ、切削工具61の移動量Lに応じた加工用の窓41,43を小さくすることが可能となる。
【0046】
したがって、リング・ギヤを取り付けるためのフランジ部7を、ピニオン・ギヤ17,19及びサイド・ギヤ23,25の回転軸心の交点に対し軸方向に近づけても、窓41,43によって分断されることがない。
【0047】
これにより、周方向に分断されないフランジ部7によりリング・ギヤを支持することができ、リング・ギヤの支持剛性を維持することができ、異音等を抑制することができる。
【0048】
また、デフ・ケース3を、ピニオン・ギヤ17,19の回転軸となる軸に直交する加工回転軸中心Sで回転させ、加工回転軸中心Sが通る窓41,43から挿入した旋削工具61によりピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15を旋削する。
【0049】
このため、ピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15を同一の旋削工程で旋削し、加工を容易に行わせることができる。
【実施例2】
【0050】
図13〜図16は、本発明の実施例2に係り、図13は、図7に対応したデファレンシャル装置の断面図、図14は、図1に対応したデフ・ケースの断面図、図15は、サイド・ギヤ凹支持面部の正面図、図16は、球面ワッシャの正面図である。なお、基本的な構成は、実施例1と同様であり、同一又は対応する構成部分には同符号又は導符号にCを付し、重複した説明は省略する。
【0051】
本実施例では、サイド・ギヤ23,25の凸背面部23a,25aをデフ・ケース3Cに回り止め結合した球面ワッシャ53C,55Cを介してサイド・ギヤ凹支持面部13C,15Cに支持させたものである。
【0052】
このため、デファレンシャル装置1Cのデフ・ケース3Cには、サイド・ギヤ凹支持面部13C,15Cの内周側に周方向所定間隔で複数箇所、本実施例では3箇所に係合凹部67,69が形成され、球面ワッシャ53C,55Cの内周には、前記係合凹部67,69に対応して係合突部71,73を形成した。
【0053】
したがって、球面ワッシャ53C,55Cは、係合突部71,73が係合凹部67,69に係合してデフ・ケース3Cに回り止め結合される。
【0054】
この球面ワッシャ53C,55Cの回り止め結合によりサイド・ギヤ23,25の凸背面部23a,25aを球面ワッシャ53C,55Cに対して摺動支持させることができ、サイド・ギヤ凹支持面部13C,15Cを、凸背面部23a,25aの摺動径27Cの大きさよりも小さな外周径で円形リング状に周回形成しても、サイド・ギヤ凹支持面部13C,15Cよりも摺接面積の大きな球面ワッシャ53C,55Cによりサイド・ギヤ凹支持面部13C,15Cに対して確実な支持を行わせることができる。
【0055】
なお、係合凹部67,69及び係合突部71,73は、球面ワッシャ53C,55Cをデフ・ケース3Cに回り止め結合させることができれば良く、より外周側に配置形成することもできる。
【0056】
その他、実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
[その他]
デフ・ケース3にリング・ギヤを一体に形成することもできる。この場合でも、リング・ギヤを、ピニオン・ギヤ凹支持面部9(11)及びサイド・ギヤ凹支持面部13,15の曲率中心に対しデフ・ケース3回転軸方向に近く配置することが可能となり、設計の自由度が増大する。
【0057】
さらに、本実施例とは逆になるが、治具に取り付けられ回転するデフ・ケース3を旋削工具61に対し旋削軌跡に沿って移動させながら加工を行っても良い。
【0058】
また、デフ・ケース3の各凹支持面部9(11),13,15とピニオン・ギヤ17,19又はサイド・ギヤ23,25の各凸背面部17a,19a,23a,25aは、ワッシャ49,51,53,55を介さずに直接接触配置して摺動させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図3のI−I矢視におけるデフ・ケースの断面図である。(実施例1)
【図2】デフ・ケースの正面図である。(実施例1)
【図3】デフ・ケースの側面図である。(実施例1)
【図4】サイド・ギヤ凹支持面部の正面図である。(実施例1)
【図5】ピニオン・ギヤ凹支持面部の正面図である。(実施例1)
【図6】サイド・ギヤ凹支持面部の変形例の正面図である。(実施例1)
【図7】図3のVII−VII線矢視における90°異なる位置のデファレンシャル装置の断面図である。(実施例1)
【図8】切削工具(バイト)の移動形態を示す図1と同方向から見た概念断面図である。(実施例1)
【図9】図8のIX−IX線矢視の概念断面図である。(実施例1)
【図10】上半部が図2と同様なデフ・ケースの半正面図、下半部が図1と同方向から見たデフ・ケースの半断面図である。(比較例)
【図11】サイド・ギヤ凹支持面部の正面図である。(比較例)
【図12】デフ・ケースの側面図である。(比較例)
【図13】図7に対応したデファレンシャル装置の断面図である。(実施例2)
【図14】図1に対応したデフ・ケースの断面図である。(実施例2)
【図15】サイド・ギヤ凹支持面部の正面図である。(実施例2)
【図16】球面ワッシャの正面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0060】
1,1C デファレンシャル装置
3,3C デフ・ケース
5 ケース壁部
7 フランジ部
9(11) ピニオン・ギヤ凹支持面部
13,13A,13C,15,15A,15C サイド・ギヤ凹支持面部
17,19 ピニオン・ギヤ
17a,19a,23a,25a 凸背面部
23,25 サイド・ギヤ
53C,55C 球面ワッシャ
61 旋削工具
67,69 係合凹部
71,73 係合凸部
S 加工回転軸中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース壁部の外面にリング・ギヤ取り付け用のフランジ部又はリング・ギヤを周回状に有し、同内面に、ピニオン・ギヤ及び該ピニオン・ギヤに噛み合うサイド・ギヤの球面状の凸背面部をそれぞれ摺動可能に支持する同心球面状のピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を形成したデフ・ケースであって、
前記サイド・ギヤ凹支持面部の大きさを、前記サイド・ギヤの球面状の凸背面部の摺動径の大きさよりも小さく設定した、
ことを特徴とするデフ・ケース。
【請求項2】
請求項1記載のデフ・ケースであって、
前記サイド・ギヤ凹支持面部に、少なくとも前記ピニオン・ギヤの回転軸となる軸に直交する方向の両側に二面幅を形成して前記摺動径の大きさよりも小さく設定した、
ことを特徴とするデフ・ケース。
【請求項3】
請求項1記載のデフ・ケースであって、
前記サイド・ギヤ凹支持面部を、前記摺動径の大きさよりも小さな外周径で形成して前記摺動径の大きさよりも小さく設定した、
ことを特徴とするデフ・ケース。
【請求項4】
請求項1〜3記載のデフ・ケースであって、
前記サイド・ギヤ凹支持面部に、凸背面部が球面ワッシャを介して相対回転自在に支持され前記ピニオン・ギヤに噛み合う一対のサイド・ギヤを備え、
前記球面ワッシャを、前記デフ・ケースに回り止め結合した、
ことを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項5】
請求項1〜4記載のデフ・ケースを加工するためのデフ・ケースの加工方法であって、
前記デフ・ケースを、前記ピニオン・ギヤの回転軸となる軸に直交する加工回転軸中心で回転させ、
前記加工回転軸中心が通る窓から挿入した旋削工具により前記ピニオン・ギヤ凹支持面部及びサイド・ギヤ凹支持面部を旋削する、
ことを特徴とするデフ・ケースの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−32018(P2010−32018A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197038(P2008−197038)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000225050)GKN ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 (409)
【Fターム(参考)】