説明

デュアルクラッチ式自動変速機

【課題】走行中におけるスリーブとシフトフォークとの間の接触負荷による問題を発生させることなく、パーキングロック解除時にシフトアクチュエータの駆動力を低減することができるデュアルクラッチ式自動変速機を提供する。
【解決手段】パーキングの際には、第1入力軸15と第2入力軸16の一方と低速段のギヤ列S1とを係合させると共に、第1入力軸15と第2入力軸16の一方と後進段ギヤ列SRとを係合させることにより、パーキングロックを行う。そして、低速段切換クラッチ30Aおよび後進段切換クラッチ30Cの少なくとも何れか一方において、係合部材S1,SRのギヤの側面S1bにおける軸方向断面形状および当該側面に噛合するスリーブMのギヤの側面Mbにおける軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの入力軸それぞれに原動機の回転駆動力を伝達可能なデュアルクラッチを有するデュアルクラッチ式自動変速機において、パーキングロック機能を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デュアルクラッチ式自動変速機において、パーキングロック機能を有するものが、特許文献1に記載されている。特許文献1には、パーキングの際に、各ギヤ列のそれぞれに関連して設けられ係合及び離脱により対応する各ギヤ列による動力伝達を切り換える複数の係合部材のうち第1速ギヤ列による動力伝達を行う際に係合される第1速係合部材と後進段ギヤ列による動力伝達を行う際に係合される後進係合部材を同時に係合させることにより、パーキングロックを行うことが記載されている。
【0003】
また、特許文献1には、各ギヤ列の離脱係合を行うクラッチ機構として、クラッチハブ、係合部材およびスリーブを備えることが記載されている。すなわち、クラッチハブの外周ギヤとスリーブの内周ギヤとが常時噛合しており、スリーブが係合部材に対して軸方向に移動することによって、スリーブの内周ギヤと係合部材の外周ギヤとが離脱係合する構成からなる。
【0004】
そして、スリーブの内周ギヤと係合部材の外周ギヤとにおける噛合面の形状は、例えば、特許文献2に記載されているように、両者の抜け方向に係合するように、軸方向に傾斜した平面状に形成されている。このように形成することで、スリーブの内周ギヤと係合部材の外周ギヤとが噛合している状態から、スリーブと係合部材とに軸方向の抜け力が発生したとしても、スリーブの内周ギヤが係合部材の外周ギヤに噛合している状態から両者が容易に離脱できないように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−331654号公報(請求項1など)
【特許文献2】特開2008−185192号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されているスリーブと係合部材の構成を、特許文献1に記載されているパーキングロック機能を有するデュアルクラッチ式自動変速機に採用した場合には、以下の点で改善の余地があった。パーキングロックの際に、スリーブの内周ギヤと係合部材の外周ギヤとの噛合力が大きいため、パーキングロックを解除する際に、スリーブを軸方向へ移動させるシフトアクチュエータの駆動力が大きくなる。一方、走行中においては、スリーブが係合部材にしっかりと噛合していることが求められる。仮に、スリーブと係合部材とに発生する抜け力によって、スリーブと当該スリーブを駆動するためのシフトフォークとの間に接触負荷が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、走行中におけるスリーブとシフトフォークとの間の接触負荷による問題を発生させることなく、パーキングロック解除時にシフトアクチュエータの駆動力を低減することができるデュアルクラッチ式自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、
互いに同軸的に配置された第1入力軸および第2入力軸と、
前記第1入力軸および前記第2入力軸と平行に配置された第1副軸および第2副軸と、
原動機の回転駆動力を前記第1入力軸に伝達する第1クラッチと前記回転駆動力を前記第2入力軸に伝達する第2クラッチとを有するデュアルクラッチと、
前記両入力軸と前記第1副軸の間に設けられ、所定の低速段のギヤ列を含む複数段のギヤ列と、当該ギヤ列と前記両入力軸および前記第1副軸とを離脱係合させる第1切換クラッチとを有する第1歯車変速機構と、
前記両入力軸と前記第2副軸の間に設けられ、後進段ギヤ列を含む複数のギヤ列と、当該ギヤ列と前記両入力軸および前記第2副軸とを離脱係合させる第2切換クラッチとを有する第2歯車変速機構と、
前記両入力軸および前記両副軸の何れかの回転が伝達される出力軸と、
を備え、
前記第1入力軸と前記第2入力軸の何れか一方に、前記低速段のギヤ列の一部を構成するギヤと前記後進段ギヤ列の一部を構成するギヤを設け、
パーキングの際には、前記第1切換クラッチのうち前記第1入力軸と前記第2入力軸の一方と前記低速段のギヤ列とを係合させるための低速段切換クラッチを係合させると共に、前記第2切換クラッチのうち前記第1入力軸と前記第2入力軸の一方と前記後進段ギヤ列とを係合させるための後進段切換クラッチを係合させることにより、パーキングロックを行い、
前記第1切換クラッチおよび前記第2切換クラッチは、前記副軸に固定され外周面にギヤが形成されたクラッチハブと、前記副軸に対して相対回転可能に設けられ外周面にギヤが形成された係合部材と、前記クラッチハブおよび前記係合部材に対して軸方向に移動可能に設けられ、前記クラッチハブのギヤと常時係合し且つ前記係合部材のギヤと離脱係合するギヤが内周面に形成されたスリーブと、それぞれを有し、
前記低速段切換クラッチおよび前記後進段切換クラッチの少なくとも何れか一方において、前記係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状および当該側面に噛合する前記スリーブのギヤの側面における軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されていることである。
【0009】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、前記低速段切換クラッチおよび前記後進段切換クラッチの何れもにおいて、前記係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状および当該側面に噛合する前記スリーブのギヤの側面における軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されていることである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、前記低速段切換クラッチは、1速段切換クラッチであることである。
【0010】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、前記第1切換クラッチおよび前記第2切換クラッチのうち前記低速段切換クラッチおよび前記後進段切換クラッチ以外において、前記係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状および当該側面に噛合する前記スリーブのギヤの側面における軸方向断面形状は、軸方向に非平行な直線状に形成され、前記スリーブのギヤと前記係合部材のギヤとが噛合状態から離脱する方向において係合するように形成されていることである。
【0011】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、前記スリーブを前記係合部材に対して軸方向へ移動させ且つ逆戻り防止機能を有するシフトアクチュエータ機構を備えることである。
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、前記デュアルクラッチは、車両が停車した場合に係合状態を解除するタイプであることである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、パーキングロックの際に噛合する低速段切換クラッチおよび後進段切換クラッチの少なくとも何れか一方において、係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状および当該側面に噛合するスリーブのギヤの側面における軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されている。これにより、スリーブのギヤと係合部材のギヤとは、周方向に噛合しているが、軸方向には係合していない状態となる。従って、パーキングロックを解除する際に、スリーブを軸方向へ移動させるシフトアクチュエータの駆動力は従来に比べて小さくすることができる。
【0013】
ただし、スリーブのギヤと係合部材のギヤが噛合している状態において、軸方向に係合していないために、両者に抜け力が発生した場合に、スリーブとシフトフォークとの間に接触負荷が発生するおそれがある。しかし、本発明において、スリーブのギヤと係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状を軸方向に平行な直線状とするギヤ列は、低速段ギヤ列および後進段ギヤ列の少なくとも一方としている。走行中において、一般に、低速段ギヤおよび後進段ギヤの噛合継続時間は短時間である。従って、走行中にスリーブと係合部材とに抜け力が発生したとしても、スリーブとシフトフォークとの大きな接触負荷がかかる時間は短時間であるために、問題とならない。
【0014】
このように、本発明によれば、走行中におけるスリーブとシフトフォークとの間の接触負荷による問題を発生させることなく、パーキングロック解除時にシフトアクチュエータの駆動力を低減することができる。さらに、スリーブのギヤの側面における軸方向断面形状と係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状を軸方向に平行な直線状とすることによって、製造コストを低減することができる。なお、低速段ギヤ列とは、複数の前進段のうち中央よりも低速側のギヤ列を意味する。例えば、7速の前進段の場合には、低速段とは1〜3速段のギヤ列を意味する。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、低速段ギヤ列と後進段ギヤ列の両方において、スリーブのギヤの側面における軸方向断面形状と係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状を軸方向に平行な直線状とすることで、パーキングロック解除時にシフトアクチュエータの駆動力をさらに低減することができ、製造コストをさらに低減できる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、スリーブのギヤの側面における軸方向断面形状と係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状とを軸方向に平行な直線状とする低速段ギヤ列を1速段ギヤ列とすることで、走行中の問題の発生の抑制効果を確実に発揮することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、他の切換クラッチが噛合している状態においては、スリーブと係合部材との抜け力に対抗する力を発生することができる。つまり、走行中において、低速段ギヤ列および後進段ギヤ列以外の変速段ギヤ列が噛合している場合に、スリーブとシフトフォークとの間に接触負荷が発生することを抑制できる。つまり、走行中に、長時間使用させる変速段ギヤ列においては、スリーブとシフトフォークとの間に接触負荷が発生することによる問題発生を抑制できる。また、他の切換クラッチは、パーキングロックの際には噛合していないので、パーキングロック解除時におけるスリーブを軸方向へ移動させるシフトアクチュエータの駆動力には、何ら影響を与えるものではない。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、シフトアクチュエータ機構に逆戻り防止機能を適用することで、走行中、スリーブと係合部材とが噛合している際に抜け力が発生したとしても、逆戻り防止機構によって抜け力に対抗する力を発生できる。逆戻り防止機能は、例えば、ウォームギヤ機構やディテント機構である。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、エンジンを停止することなく、パーキングロックを実行することができる。さらに、エンジン停止時においてもクランクシャフトを回転させる必要がなく、ギヤ押し分け時の慣性が減少するため、パーキングロック時および解除時の双方においてシフトアクチュエータの駆動力を小さくすることができる。
【0020】
ここで、車両が停車した場合に係合状態を解除するタイプを、ノーマルオープンタイプと称することがある。このノーマルオープンタイプのデュアルクラッチとは、クラッチアクチュエータの駆動力が解除された時のみにクラッチの係合状態を解除するタイプと、クラッチアクチュエータの駆動力により積極的にクラッチの係合状態を解除するタイプの双方を含む。つまり、前者のタイプは、クラッチアクチュエータを何ら駆動することなく、車両が停車した場合にクラッチの係合状態を解除するタイプである。後者のタイプは、クラッチアクチュエータに駆動力を付与することによって、車両が停車した場合にクラッチの係合状態を解除するタイプである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態:デュアルクラッチ式自動変速機1の全体構造を示すスケルトン図である。
【図2】切換クラッチの示す軸方向断面図である。
【図3】係合部材S1,S3のギヤおよびスリーブMのギヤを周方向に展開した形状図である。
【図4】シフトアクチュエータ機構40を示す図である。
【図5】第一実施形態:変速動作の説明図である。
【図6】第二実施形態:デュアルクラッチ式自動変速機100の全体構造を示すスケルトン図である。
【図7】デュアルクラッチ式自動変速機100の軸方向から見た縮小図である。ただし、一部のギヤのみを示す。
【図8】第二実施形態:変速動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のデュアルクラッチ式自動変速機を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。第一実施形態として、FR(フロントエンジン・リアドライブ方式)について示し、第二実施形態として、FF(フロントエンジン・フロントドライブ方式)について示す。
【0023】
<第一実施形態>
第一実施形態のデュアルクラッチ式自動変速機1について、図1〜図5を参照して説明する。本実施形態のデュアルクラッチ式自動変速機1は、前進7段、後進1段のFRタイプの自動変速機である。このデュアルクラッチ式自動変速機1は、図1に示すように、軸として、第1入力軸15、第2入力軸16、第1副軸17、第2副軸18、後進アイドル軸27e、および、出力軸19を有している。
【0024】
第2入力軸16は、筒状に形成されており、第1入力軸15を同軸的に囲んで、第1入力軸15に対して相対回転可能に設けられる。ただし、第1入力軸15の車両後端は、第2入力軸16の車両後端よりも突出する長さに形成されている。第1副軸17および第2副軸18は、両入力軸15,16に対して平行に配置されている。後進アイドル軸27eは、第2副軸18に対して平行に配置されている。出力軸19は、第1入力軸15に対して車両後方に同軸的に配置されている。
【0025】
また、デュアルクラッチ式自動変速機1は、エンジンなどの原動機10により回転駆動されるデュアルクラッチCを有している。デュアルクラッチCは、車両が停車している状態で、エンジンが停止中および起動中の場合に、係合状態を解除するノーマルオープンタイプを構成している。
【0026】
このデュアルクラッチCは、第1摩擦クラッチC1と第2摩擦クラッチC2とを備えている。そして、それぞれ摩擦クラッチC1,C2が原動機10に連結されている。第1摩擦クラッチC1は、第1入力軸15に連結されており、第2摩擦クラッチC2は、第2入力軸16に連結されている。つまり、第1摩擦クラッチC1は、原動機10の回転駆動力を第1入力軸15に伝達し、第2摩擦クラッチC2は、原動機10の回転駆動力を第2入力軸16に伝達する。
【0027】
また、デュアルクラッチ式自動変速機1は、ギヤ列として、第1入力軸15または第2入力軸16と第1副軸17との間に設けられる第1歯車変速機構20Aと、第1入力軸15または第2入力軸16と第2副軸18との間に設けられる第2歯車変速機構20Bと、第1入力軸15と出力軸19とを離脱係合させる第4切換クラッチ30Dと、第1副軸17と出力軸19とを連結する第1リダクションギヤ列28a,28bと、第2副軸18と出力軸19とを連結する第2リダクションギヤ列29a,29bとを備えている。
【0028】
第1歯車変速機構20Aは、第1入力軸15と第1副軸17の間に設けられる第1歯車切換ユニット20A1と、第2入力軸16と第1副軸17の間に設けられる第2歯車切換ユニット20A2により構成されている。
【0029】
第1歯車切換ユニット20A1は、第1速ギヤ列21a,21bと、第3速ギヤ列23a,23bと、第1切換クラッチ30Aにより構成されている。第1速ギヤ列21a,21bは、第1入力軸15に固定された駆動ギヤ21a(後進段駆動ギヤ27aと共用)と、第1副軸17に回転自在に設けられた従動ギヤ21bとにより構成されている。第3速ギヤ列23a,23bは、第1入力軸15に固定された駆動ギヤ23aと、第1副軸17に回転自在に設けられた従動ギヤ23bとにより構成されている。
【0030】
第1切換クラッチ30Aは、図1および図2に示すように、クラッチハブLと、第1速係合部材S1と、第3速係合部材S3と、シンクロナイザリングOと、スリーブMとにより構成されている。クラッチハブLは、第1速従動ギヤ21bと第3速従動ギヤ23bとの軸方向間となる第1副軸17にスプライン固定される。第1速係合部材S1および第3速係合部材S3は、第1速ギヤ21bおよび第3速従動ギヤ23bのそれぞれに、例えば圧入などにより固定される部材である。シンクロナイザリングOは、クラッチハブLと軸方向両側の各係合部材S1,S3との間にそれぞれ介在される。スリーブMは、クラッチハブLの外周に軸方向移動自在にスプライン係合される。
【0031】
この第1切換クラッチ30Aは、第1速従動ギヤ21bおよび第3速従動ギヤ23bの一方と第1副軸17との係合を可能とし、かつ、第1速従動ギヤ21bおよび第3速従動ギヤ23bの両者を第1副軸17に対して離脱する状態にすることができる周知のシンクロメッシュ機構を構成している。
【0032】
第1切換クラッチ30AのスリーブMは、図2に示す中立位置では係合部材S1,S3の何れにも係合されていない。外周の環状溝に係合されたシフトフォークNによりスリーブMが第1速従動ギヤ21b側にシフトされれば、スリーブMは先ずそちら側のシンクロナイザリングOにスプライン係合して第1副軸17と第1速従動ギヤ21bの回転を同期させ、次いで第1速係合部材S1の外周の外歯スプラインと係合し、第1副軸17と第1速従動ギヤ21bを一体的に連結して第1速段を形成する。また、シフトフォークNによりスリーブMが第3速従動ギヤ23b側にシフトされれば、同様にして第1副軸17と第3速従動ギヤ23bの回転を同期させた後に、この両者を一体的に連結して第3速段を形成する。
【0033】
ここで、図3に、第1歯車切換ユニット20A1において、スリーブM、第1速係合部材S1および第3速係合部材S3について、周方向に展開した形状を示す。図3に示すように、第1歯車切換ユニット20A1を構成するスリーブMのギヤ形状は、第1速係合部材S1側の先端尖部Maと、スリーブMの周方向の側面に位置し第1速係合部材S1の側面に噛合する側部Mbと、第3速係合部材S3側の先端尖部Mcと、スリーブMの周方向の側面に位置し第3速係合部材S3の側面に噛合する側部Mdとから構成される。先端尖部Ma,Mcは、先端に向かって尖るように先細形状をなしている。第1速係合部材S1側の側部Mbにおける軸方向断面形状は、スリーブMが移動する軸方向に平行な直線状に形成されている。一方、第3速係合部材S3側の側部Mdにおける軸方向断面形状は、スリーブMが移動する軸方向に非平行な直線状に形成されている。具体的には、第3速係合部材S3側の側部Mdは、スリーブMが移動する軸方向に対して先端側ほど幅が大きくなるようなテーパ状に傾斜する平面状に形成されている。
【0034】
第1速係合部材S1は、スリーブMの先端尖部Maに対峙するように先端に向かって尖るように先細形状の先端尖部S1aと、第1速係合部材S1の周方向の側面に位置しスリーブMの側部Mbに噛合する側部S1bとから構成される。側部S1bにおける軸方向断面形状は、スリーブMの移動する軸方向に平行な直線状に形成されている。
【0035】
第3速係合部材S3は、スリーブMの先端尖部Mcに対峙するように先端に向かって尖るように先細形状の先端尖部S3aと、第3速係合部材S3の周方向の側面に位置しスリーブMの側部Mdに噛合する側部S3bとから構成される。側部S3bにおける軸方向断面形状は、スリーブMが移動する軸方向に非平行な直線状に形成されている。具体的には、側部S3bは、スリーブMが移動する軸方向に対して先端側(図3の右側)ほど幅が大きくなるようなテーパ状に傾斜する平面状に形成されている。
【0036】
つまり、スリーブMの側部Mbと第1速係合部材S1の側部S1bとが噛合する場合には、両者が軸方向に対して係合する状態とはならない。一方、スリーブMの側部Mdと第3速係合部材S3の側部S3bとが噛合する場合には、両者が軸方向に対して噛合状態から離脱する方向に係合するようになる。
【0037】
第2歯車切換ユニット20A2は、第2速ギヤ列22a,22bと、第4速ギヤ列24a,24bと、第2切換クラッチ30Bにより構成されている。第2速ギヤ列22a,22bは、第1歯車切換ユニット20A1の場合とほぼ同様、第2入力軸16に固定された駆動ギヤ22aと、第1副軸17に回転自在に設けられた従動ギヤ22bとにより構成されている。第4速ギヤ列24a,24bは、第2入力軸16に固定された駆動ギヤ24aと、第1副軸17に回転自在に設けられた従動ギヤ24bとにより構成されている。
【0038】
第2切換クラッチ30Bは、第2速従動ギヤ22bおよび第4速従動ギヤ24bの一方と第1副軸17との係合を可能とし、かつ、第2速従動ギヤ22bおよび第4速従動ギヤ24bの両者を第1副軸17に対して離脱する状態にすることができるシンクロメッシュ機構を構成している。
【0039】
第2切換クラッチ30Bは、第1切換クラッチ30Aとほぼ同じである。第1切換クラッチ30Aにおいては、第1速係合部材S1と第3速係合部材S3がそれぞれ第1速従動ギヤ21bおよび第3速従動ギヤ21cに固定されているのに対して、第2切換クラッチ30Bにおいては、第2速係合部材S2と第4速係合部材S4がそれぞれ第2速従動ギヤ22b及び第4速従動ギヤ24bに固定されている点が相違する。また、第2速係合部材S2および第4速係合部材S4のギヤ形状は、上述した第3速係合部材S3のギヤ形状と同一形状である。この第2切換クラッチ30Bを構成するスリーブMのギヤ形状は、軸方向の両側共に、第1切換クラッチ30Aを構成するスリーブMの第3速係合部材S3側のギヤ形状に形成されている。つまり、第2切換クラッチ30Bにおいて、スリーブMと第2速係合部材S2または第4速係合部材S4との噛合は、噛合状態から離脱する方向において係合する。
【0040】
この第2切換クラッチ30BのスリーブMは、図示の中立位置では何れの係合部材S2,S4とも係合されていない。外周の環状溝に係合されたシフトフォークNによりスリーブMが第2速従動ギヤ22b側にシフトされれば、スリーブMは第1副軸17と第2速従動ギヤ22bの回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて第2速段が形成される。また、シフトフォークNによりスリーブMが第4速従動ギヤ24b側にシフトされれば、第1副軸17と第4速従動ギヤ24bの回転を同期させた後に、この両者を一体的に連結して第4速段を形成する。
【0041】
第2歯車変速機構20Bは、第2入力軸16と第2副軸18の間および後進アイドル軸27eと第2副軸18の間に設けられる第3歯車切換ユニット20B1と、第1入力軸15と第2副軸18の間および第1入力軸15と出力軸19との間に設けられる第4歯車切換ユニット20B2により構成されている。
【0042】
第3歯車切換ユニット20B1は、第6速ギヤ列25a,25bと、後進段ギヤ列27a,27b,27c,27dと、第3切換クラッチ30Cにより構成されている。第6速ギヤ列25a,25bは、第2入力軸16に固定された駆動ギヤ25aと、第2副軸18に回転自在に設けられた従動ギヤ25bとにより構成されている。後進段ギヤ列27a,27b,27c,27dは、第1入力軸15に固定された駆動ギヤ27a(第1速駆動ギヤ21aと共用)と、第2副軸18に回転自在に設けられた従動ギヤ27dと、互いに一体形成され後進アイドル軸27eに回転自在に設けられて駆動ギヤ27aと従動ギヤ27dを連結する1対のアイドルギヤ27b,27cとにより構成されている。
【0043】
第3切換クラッチ30Cは、実質的に第1切換クラッチ30Aと同じ構造で、第6速従動ギヤ25bおよび後進段従動ギヤ27dの一方と第2副軸18との係合を可能とし、かつ、第6速従動ギヤ25bおよび後進段従動ギヤ27dの両者を第2副軸18に対して離脱する状態にすることができるシンクロメッシュ機構を構成している。
【0044】
第3切換クラッチ30CのスリーブMは、図示の中立位置では何れの係合部材S6,SRとも係合されていない。外周の環状溝に係合されたシフトフォークNによりスリーブMが第6速従動ギヤ25b側にシフトされれば、スリーブMは第2副軸18と第6速従動ギヤ25bの回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて第6速段が形成される。また、シフトフォークNによりスリーブMが後進段従動ギヤ27d側にシフトされれば、第2副軸18と後進段従動ギヤ27dの回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて後進段が形成される。
【0045】
そして、第3切換クラッチ30Cにおいて、第6速係合部材S6、スリーブMおよび後進係合部材SRは、図3に示すような第3速係合部材S3、スリーブMおよび第1速係合部材S1のそれぞれと同一形状からなる。
【0046】
第4歯車切換ユニット20B2は、第7速ギヤ列26a,26bと、第4切換クラッチ30Dにより構成されている。第7速ギヤ列26a,26bは、第1入力軸15の後部に回転自在に設けられた駆動ギヤ26aと第2副軸18に固定された従動ギヤ26bとにより構成されている。第4切換クラッチ30Dは、第1入力軸15の後部に回転自在に設けられた第7速ギヤ列の駆動ギヤ26aと、これと同軸的に出力軸19の前端に固定された第1および第2リダクションギヤ列に共通な1個の従動ギヤ28b,29bの間に設けられている。
【0047】
第4切換クラッチ30Dは、第2切換クラッチ30Bと同一のシンクロメッシュ機構であり、クラッチハブLが第1入力軸15の後端に固定され、第5速係合部材S5と第7速係合部材S7がそれぞれ共通従動ギヤ28b,29bと第7速駆動ギヤ26aに固定されている点が異なっているだけである。第4切換クラッチ30Dは、図示の中立位置では何れの係合部材S5,S7とも係合されていない。外周の環状溝に係合されたシフトフォークNによりスリーブMが第7速駆動ギヤ26a側にシフトされれば、第1入力軸15と第7速駆動ギヤ26aの回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて第7速段が形成される。また、シフトフォークNによりスリーブMが共通従動ギヤ28b,29b側にシフトされれば、第1入力軸15と出力軸19の回転が同期された後に、この両者が直結されて第5速段が形成される。
【0048】
シフトフォークNを軸方向に移動させるシフトアクチュエータ機構40は、図4に示すように、回転軸にウォームギヤ42が形成されたモータ41、ウォームギヤ42に噛合するウォームホイール43、ウォームホイール43に同心に一体的に形成されたピニオンギヤ44、ピニオンギヤ44に噛合するラック軸45を備えている。このラック軸45には、各シフトフォークNが一体に設けられている。つまり、それぞれのシフトアクチュエータ機構40のモータ41を回転することで、そのモータ41に連結されているシフトフォークNが軸方向に移動する。このシフトアクチュエータ機構40は、ウォームギヤ42とウォームホイール43を用いているため、ウォームギヤ42からウォームホイール43への駆動力の伝達は行われるが、その逆は行われない。つまり、シフトアクチュエータ機構40は、逆戻り防止機能を有する。
【0049】
次に、本実施形態のデュアルクラッチ式自動変速装置1の動作について図5を参照して説明する。デュアルクラッチ式自動変速機1の制御装置は、アクセル開度、エンジン回転速度、車速などの自動車の作動状態に応じて、デュアルクラッチCの第1摩擦クラッチC1、第2摩擦クラッチC2および第1〜第4切換クラッチ30A〜30Dを、図5に示すように作動させる。不作動状態ではデュアルクラッチCの第1,第2摩擦クラッチC1,C2はともに解除されており、第1〜第4切換クラッチ30A〜30Dは中立位置にある。
【0050】
停車状態においてエンジン10を起動させた場合にも、上記不作動状態と同様の状態を維持する。そして、停車状態においてエンジン10を起動させた後に、デュアルクラッチ式歯車変速装置のシフトレバー(図示省略)を前進位置とすれば、制御装置は図5の第1速に示すように、第1切換クラッチ30Aの第1速係合部材S1が係合し、その他の各クラッチが中立位置となるようにして第1速段を形成する。この状態でアクセル開度が増大してエンジン10が所定の低回転速度を越えれば、制御装置はアクセル開度に合わせてデュアルクラッチCの第1摩擦クラッチC1の係合力を徐々に増加させ、これにより駆動軸11の駆動トルクは第1摩擦クラッチC1から第1入力軸15、第1速ギヤ列21a,21b(駆動ギヤ21aは後進段駆動ギヤ27aと共用)、第1切換クラッチ30Aの第1速係合部材S1、第1副軸17、第1リダクションギヤ列28a,28bを介して出力軸19に伝達され、自動車は第1速で走行し始める。
【0051】
アクセル開度が増大するなどして自動車の作動状態が第2速走行に適した状態となれば、制御装置は、先ず第2切換クラッチ30Bの第2速係合部材S2を係合させて第2速段を形成してから、デュアルクラッチCを第2摩擦クラッチC2側に切り換えて第2速走行に切り換え、次いで第1切換クラッチ30Aの第1速係合部材S1を離脱させて、図5の第2速に示す状態にする。同様にして制御装置は、第3速及び第4速では、自動車の作動状態に応じた変速段を順次選択するとともに第1摩擦クラッチC1と第2摩擦クラッチC2を交互に選択して、その状態に適した変速段での走行が行われるようにする。
【0052】
自動車の作動状態が第5速走行に適した状態となれば、制御装置は、第4切換クラッチ30Dの第5速係合部材S5を係合させ第1入力軸15と出力軸19を直結して第5速段を形成してから、デュアルクラッチCを第1摩擦クラッチC1側に切り換えて第5速走行に切り換え、次いで第2切換クラッチ30Bの第4速係合部材S4を離脱させて、図5の第5速に示す状態にする。この場合は駆動軸11の駆動トルクは第1摩擦クラッチC1から第1入力軸15、第4切換クラッチ30Dの第5速係合部材S5を介して出力軸19に伝達される。自動車の作動状態が第6速走行に適した状態となれば、制御装置は、第3切換クラッチ30Cの第6速係合部材S6を係合させて第6速段を形成してから、デュアルクラッチCを第2摩擦クラッチC2側に切り換えて第6速走行に切り換え、次いで第4切換クラッチ30Dの第5速係合部材S5を離脱させて、図5の第6速に示す状態にする。この場合は駆動軸11の駆動トルクは第2摩擦クラッチC2から第2入力軸16、第6速ギヤ列25a,25b、第3切換クラッチ30Cの第6速係合部材S6、第2副軸18、第2リダクションギヤ列29a,29bを介して出力軸19に伝達される。
【0053】
自動車の作動状態が第7速走行に適した状態となれば、制御装置は、第4切換クラッチ30Dの第7速係合部材S7を係合させて第7速段を形成してから、デュアルクラッチCを第1摩擦クラッチC1側に切り換えて第7速走行に切り換え、次いで第3切換クラッチ30Cの第6速係合部材S6を離脱させて、図5の第7速に示す状態にする。第6速および第7速においては、出力軸19の回転速度は駆動軸11よりも増速される。また、ある走行状態から車速が低下するなどして自動車の作動状態が低速段走行に適した状態となれば、制御装置は同様にして自動車の作動状態に応じた低速段を順次選択するとともに第1摩擦クラッチC1と第2摩擦クラッチC2を交互に選択して、その状態に適した変速段での走行に切り換える。
【0054】
エンジン10を起動させた停車状態において歯車変速装置のシフトレバーを後進位置とすれば、制御装置はそれを検出して図5の後進に示すように、第3切換クラッチ30Cの後進係合部材SRを係合させ、その他の各クラッチが中立位置となるようにして後進段を形成する。アクセル開度が増大してエンジン10が所定の低回転速度を越えれば、制御装置はアクセル開度に合わせてデュアルクラッチCの第1摩擦クラッチC1の係合力を徐々に増加させる。これにより駆動軸11の駆動トルクは第1摩擦クラッチC1から第1入力軸15、後進段ギヤ列27a,27b,27c,27d(駆動ギヤ27aは第1速駆動ギヤ21aと共用)、第3切換クラッチ30Cの後進係合部材SR、第2副軸18、第2リダクションギヤ列29a,29bを介して出力軸19に伝達され、自動車は後進を開始する。
【0055】
停車状態において歯車変速装置のシフトレバーを駐車位置とすれば、制御装置はそれを検出し、図5の駐車に示すように、第1切換クラッチ30Aの第1速係合部材S1を係合させるとともに、第3切換クラッチ30Cの後進係合部材SRを係合させる。第1速係合部材S1の係合により、第1入力軸15から、第1速ギヤ列21a,21b、第1切換クラッチ30Aの第1速係合部材S1、第1副軸17、第1リダクションギヤ列28a,28bを介して出力軸19に一方向の回転力が伝達される状態となる。一方、後進係合部材SRの係合により、第1入力軸15から、後進段ギヤ列27a,27b,27c,27d、第3切換クラッチ30Cの後進係合部材SR、第2副軸18、第2リダクションギヤ列29a,29bを介して出力軸19に反対方向の回転力が伝達される状態となる。従って、第1速ギヤ列21a,21b及び第1リダクションギヤ列28a,28bと後進段ギヤ列27a,27b,27c,27d及び第2リダクションギヤ列29a,29bによる2重噛み合いがなされて、パーキングロックがなされる。
【0056】
そして、デュアルクラッチCはノーマルオープンタイプを構成しているため、エンジン10を停止することなく、かつ、デュアルクラッチCの係合解除制御を行うことなく、パーキングロックを実行することができる。さらに、エンジン停止時においてもクランクシャフトを回転させる必要がなく、ギヤ押し分け時の慣性が減少するため、パーキングロック時および解除時の双方においてシフトアクチュエータの駆動力を小さくすることができる。
【0057】
本実施形態によれば、第1速の動力伝達を行うギヤ列21a,21b,28a,28bと、後進の動力伝達を行うギヤ列27a,27b,27c,27d,29a,29bによる2重噛み合いによりパーキングロックを行っているので、パーキングロックのための特別な部材を設けることなく歯車変速装置にパーキングロック機能を追加することができ、部品点数が削減されるので製造コストを低下させることができる。
【0058】
さらに、パーキングロックの際に噛合する第1速段の切換クラッチ部分、すなわち、第1切換クラッチ30Aの第1速係合部材S1の側面S1bにおける軸方向断面形状と、それに噛合するスリーブMの側面Mbにおける軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されている。さらに、後進段の切換クラッチ部分、すなわち、第3切換クラッチ30Cの後進係合部材SRの側面における軸方向断面形状と、それに噛合するスリーブMの側面における軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されている。これにより、スリーブMのギヤと係合部材S1,SRのギヤとは、周方向に噛合しているが、軸方向には係合していない状態となる。従って、パーキングロックを解除する際に、スリーブMを軸方向へ移動させるシフトアクチュエータの駆動力は従来に比べて小さくすることができる。
【0059】
ただし、スリーブMのギヤと係合部材S1,SRのギヤが噛合している状態において、軸方向に係合していないために、両者に抜け力が発生した場合に、スリーブMとシフトフォークNとの間に接触負荷が発生するおそれがある。しかし、スリーブMのギヤと係合部材S1,SRのギヤの側面の軸方向断面形状を軸方向に平行な直線状とするギヤ列は、1速段ギヤ列21a,21bおよび後進段ギヤ列26a,26bとしている。走行中において、一般に、1速段ギヤ21a,21bおよび後進段ギヤ列25a,25bの噛合継続時間は短時間である。従って、走行中にスリーブMと係合部材S1,SRとに抜け力が発生したとしても、スリーブMとシフトフォークNとの大きな接触負荷がかかる時間は短時間であるために、問題とならない。
【0060】
このように、走行中におけるスリーブMとシフトフォークNとの間の接触負荷による問題を発生させることなく、パーキングロック解除時にシフトアクチュエータの駆動力を低減することができる。さらに、スリーブMのギヤの側面と係合部材S1,SRのギヤの側面を軸方向に平行な面とすることによって、製造コストを低減することができる。
【0061】
また、第1速および後進段の切換クラッチ以外の切換クラッチについては、スリーブMとそれぞれの係合部材とが噛合している状態において、スリーブMと係合部材S2〜S7との抜け力に対抗する力を発生することができる。つまり、走行中において、1速段ギヤ列21a,21bおよび後進段ギヤ列26a,26b以外の変速段ギヤ列が噛合している場合に、スリーブMとシフトフォークNとの間に接触負荷が発生することを抑制できる。つまり、走行中に、長時間使用させる変速段ギヤ列においては、スリーブMとシフトフォークNとの間に接触負荷が発生することによる問題発生を抑制できる。また、当該切換クラッチは、パーキングロックの際には噛合していないので、パーキングロック解除時におけるスリーブMを軸方向へ移動させるシフトアクチュエータの駆動力には、何ら影響を与えるものではない。
【0062】
さらに、シフトアクチュエータ機構に逆戻り防止機能を適用することで、走行中、スリーブMと係合部材S1,SRとが噛合している際に抜け力が発生したとしても、逆戻り防止機構によって抜け力に対抗する力を発生できる。なお、逆戻り防止機能として、ウォームギヤ機構に換えて、または併用して、ディテント機構を適用することもできる。
【0063】
<第二実施形態>
第二実施形態のデュアルクラッチ式自動変速機100について、図6〜図8を参照して説明する。本実施形態のデュアルクラッチ式自動変速機100は、前進7段、後進1段のFFタイプの自動変速機である。このデュアルクラッチ式自動変速機100は、図6および図7に示すように、軸として、第1入力軸115、第2入力軸116、第1副軸117、第2副軸118、および、出力軸119を有している。
【0064】
第2入力軸116は、筒状に形成されており、第1入力軸115を同軸的に囲んで、第1入力軸115に対して相対回転可能に設けられる。ただし、第1入力軸115の車両左端は、第2入力軸116の車両左端よりも突出する長さに形成されている。第1副軸117および第2副軸118は、両入力軸115,116に対して平行に配置されている。出力軸119は、第1入力軸115に対して平行に配置されている。
【0065】
また、デュアルクラッチ式自動変速機100は、エンジンなどの原動機10により回転駆動されるデュアルクラッチCを有している。デュアルクラッチCは、車両が停車している状態で、エンジンが停止中および起動中の場合に、係合状態を解除するノーマルオープンタイプを構成している。
【0066】
このデュアルクラッチCは、第1摩擦クラッチC1と第2摩擦クラッチC2とを備えている。そして、それぞれ摩擦クラッチC1,C2が原動機10に連結されている。第1摩擦クラッチC1は、第1入力軸115に連結されており、第2摩擦クラッチC2は、第2入力軸116に連結されている。つまり、第1摩擦クラッチC1は、原動機10の回転駆動力を第1入力軸115に伝達し、第2摩擦クラッチC2は、原動機10の回転駆動力を第2入力軸116に伝達する。
【0067】
また、デュアルクラッチ式自動変速機100は、ギヤ列として、第1入力軸115または第2入力軸116と第1副軸117との間に設けられる第1歯車変速機構120Aと、第1入力軸115または第2入力軸116と第2副軸118との間に設けられる第2歯車変速機構120Bと、第1副軸117と出力軸119とを連結する第1リダクションギヤ列129a,129cと、第2副軸118と出力軸119とを連結する第2リダクションギヤ列129b,129cとを備えている。
【0068】
第1歯車変速機構120Aは、第1入力軸115と第1副軸117の間に設けられる第1歯車切換ユニット120A1と、第2入力軸116と第1副軸117の間に設けられる第2歯車切換ユニット120A2により構成されている。
【0069】
第1歯車切換ユニット120A1は、第7速ギヤ列127a,127bと、第5速ギヤ列125a,125bと、第1切換クラッチ130Aにより構成されている。第7速ギヤ列127a,127bは、第1入力軸115に固定された駆動ギヤ127aと、第1副軸117に回転自在に設けられた従動ギヤ127bとにより構成されている。第5速ギヤ列125a,125bは、第1入力軸115に固定された駆動ギヤ125aと、第1副軸117に回転自在に設けられた従動ギヤ125bとにより構成されている。
【0070】
第1切換クラッチ130Aは、図6に示すように、クラッチハブLと、第7速係合部材S7と、第5速係合部材S5と、シンクロナイザリングOと、スリーブMとにより構成されている。クラッチハブLは、第7速従動ギヤ127bと第5速従動ギヤ125bとの軸方向間となる第1副軸117にスプライン固定される。第7速係合部材S7および第5速係合部材S5は、第7速ギヤ127bおよび第5速従動ギヤ125bのそれぞれに、例えば圧入などにより固定される部材である。シンクロナイザリングOは、クラッチハブLと軸方向両側の各係合部材S7,S5との間にそれぞれ介在される。スリーブMは、クラッチハブLの外周に軸方向移動自在にスプライン係合される。
【0071】
第7速従動ギヤ127bおよび第5速従動ギヤ125bの一方と第1副軸117との係合を可能とし、かつ、第7速従動ギヤ127bおよび第5速従動ギヤ125bの両者を第1副軸117に対して離脱する状態にすることができるシンクロメッシュ機構を構成している。
【0072】
第1切換クラッチ130AのスリーブMは、図6に示す中立位置では何れの係合部材S7,S5とも係合されていない。外周の環状溝に係合されたシフトフォークNによりスリーブMが第7速従動ギヤ127b側にシフトされれば、スリーブMは先ずそちら側のシンクロナイザリングOにスプライン係合して第1副軸117と第7速従動ギヤ127bの回転を同期させ、次いで第7速係合部材S7の外周の外歯スプラインと係合し、第1副軸117と第7速従動ギヤ127bを一体的に連結して第7速段を形成する。また、シフトフォークNによりスリーブMが第5速従動ギヤ125b側にシフトされれば、同様にして第1副軸117と第5速従動ギヤ125bの回転を同期させた後に、この両者を一体的に連結して第5速段を形成する。
【0073】
そして、第1切換クラッチ130Aを構成するスリーブMのギヤ形状は、軸方向の両側共に、第一実施形態にて説明した図3に示すスリーブMの第3速係合部材S3側のギヤ形状に形成されている。つまり、スリーブMの軸方向の両側共に、図3の先端尖部Mcおよび側部Mdの形状をなしている。また、第1切換クラッチ130Aを構成する第7速係合部材S7および第5速係合部材S5のギヤ形状は、共に、第一実施形態の図3の第3速係合部材S3のギヤ形状に形成されている。つまり、第7速係合部材S7および第5速係合部材S5は、共に、図3の先端尖部S3aと側部S3bの形状をなしている。従って、第1切換クラッチ130Aにおいて、スリーブMと第7速係合部材S7または第5速係合部材S5との噛合は、噛合状態から離脱する方向において係合する。
【0074】
第2歯車切換ユニット120A2は、第6速ギヤ列126a,126bと、第2速ギヤ列122a,122bと、後進段駆動ギヤ128aと、第2切換クラッチ130Bにより構成されている。第6速ギヤ列126a,126bは、第2入力軸116に固定された駆動ギヤ126aと第1副軸117に回転自在に設けられた従動ギヤ126bとにより構成されている。第2速ギヤ列122a,122bは、第2入力軸116に固定された駆動ギヤ122aと第1副軸117に回転自在に設けられた従動ギヤ122bとにより構成されている。後進段駆動ギヤ128aは、第2速従動ギヤ122bに一体に形成されており、第2速従動ギヤ122bよりも車両右側(エンジン10側)に設けられ、第1副軸117に回転自在に設けられている。この後進段駆動ギヤ128aは、第2副軸118に回転自在に設けられている後進段従動ギヤ128bに噛合している。
【0075】
第2切換クラッチ130Bは、第6速従動ギヤ126bおよび第2速従動ギヤ122bの一方と第1副軸117との係合を可能とし、かつ、第6速従動ギヤ126bおよび第2速従動ギヤ122bの両者を第1副軸117に対して離脱する状態にすることができるシンクロメッシュ機構を構成している。
【0076】
第2切換クラッチ130Bは、第1切換クラッチ130Aとほぼ同じである。第1切換クラッチ130Aにおいては、第5速係合部材S5と第7速係合部材S7がそれぞれ第5速従動ギヤ125bおよび第7速従動ギヤ127bに固定されているのに対して、第2切換クラッチ130Bにおいては、第6速係合部材S6と第2速係合部材S2がそれぞれ第6速従動ギヤ126b及び第2速従動ギヤ122bに固定されている点が相違する。また、第6速係合部材S6のギヤ形状は、第一実施形態の図3の第3速係合部材S3のギヤ形状と同一形状である。第2速係合部材S2のギヤ形状は、第一実施形態の図3の第1速係合部材S1のギヤ形状と同一形状である。この第2切換クラッチ130Bを構成するスリーブMのギヤ形状は、第一実施形態の図3のスリーブMのギヤ形状と同一形状である。つまり、第2切換クラッチ130Bにおいて、スリーブMと第6速係合部材S6との噛合は、噛合状態から離脱する方向において係合する。一方、スリーブMと第2速係合部材S2とが噛合する場合には、両者が軸方向に対して係合する状態とはならない。
【0077】
この第2切換クラッチ130BのスリーブMは、図6に示す中立位置では何れの係合部材S6,S2とも係合されていない。外周の環状溝に係合されたシフトフォークNによりスリーブMが第6速従動ギヤ126b側にシフトされれば、スリーブMは第1副軸117と第6速従動ギヤ126bの回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて第6速段が形成される。また、シフトフォークNによりスリーブMが第2速従動ギヤ122b側にシフトされれば、第1副軸117と第2速従動ギヤ122bの回転を同期させた後に、この両者を一体的に連結する。
【0078】
シフトフォークNを軸方向に移動させるシフトアクチュエータ機構は、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。なお、このシフトアクチュエータ機構40は、ウォームギヤ42とウォームホイール43とを噛合させる構成を採用しているため、逆戻り防止機能を有する。
【0079】
第2歯車変速機構120Bは、第1入力軸115と第2副軸118の間に設けられる第3歯車切換ユニット120B1と、第2入力軸116と第2副軸118の間に設けられる第4歯車切換ユニット120B2により構成されている。
【0080】
第3歯車切換ユニット120B1は、第1速ギヤ列121a,121bと、第3速ギヤ列123a,123bと、第3切換クラッチ130Cにより構成されている。第1速ギヤ列121a,121bは、第1入力軸115に固定された駆動ギヤ121aと、第2副軸118に回転自在に設けられた従動ギヤ121bとにより構成されている。第3速ギヤ列123a,123bは、第1入力軸115に固定された駆動ギヤ123aと、第2副軸118に回転自在に設けられた従動ギヤ123bとにより構成されている。
【0081】
第3切換クラッチ130Cは、実質的に第1切換クラッチ130Aと同じ構造で、第1速従動ギヤ121bおよび第3速従動ギヤ123bの一方と第2副軸118との係合を可能とし、かつ、第1速従動ギヤ121bおよび第3速従動ギヤ123bの両者を第2副軸118に対して離脱する状態にすることができる周知のシンクロメッシュ機構を構成している。
【0082】
第3切換クラッチ130CのスリーブMは、図6に示す中立位置では何れの係合部材S1,S3とも係合されていない。外周の環状溝に係合されたシフトフォークNによりスリーブMが第1速従動ギヤ121b側にシフトされれば、スリーブMは第2副軸118と第1速従動ギヤ121bの回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて第1速段が形成される。また、シフトフォークNによりスリーブMが第3速従動ギヤ123b側にシフトされれば、第2副軸118と第3速従動ギヤ123bの回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて第3速段が形成される。
【0083】
そして、第3切換クラッチ130Cを構成するスリーブMのギヤ形状は、軸方向の両側共に、第一実施形態にて説明した図3に示すスリーブMの第3速係合部材S3側のギヤ形状に形成されている。つまり、スリーブMの軸方向の両側共に、図3の先端尖部Mcおよび側部Mdの形状をなしている。また、第3切換クラッチ130Cを構成する第1速係合部材S1および第3速係合部材S3のギヤ形状は、共に、第一実施形態の図3の第3速係合部材S3のギヤ形状に形成されている。つまり、第1速係合部材S1および第3速係合部材S3は、共に、図3の先端尖部S3aと側部S3bの形状をなしている。従って、第3切換クラッチ130Cにおいて、スリーブMと第1速係合部材S1または第3速係合部材S3との噛合は、噛合状態から離脱する方向において係合する。
【0084】
第4歯車切換ユニット120B2は、第4速ギヤ列124a,124bと、後進段従動ギヤ128bと、第4切換クラッチ130Dにより構成されている。第4速ギヤ列124a,124bは、第2入力軸116に固定された駆動ギヤ124aと、第2副軸118に回転自在に設けられた従動ギヤ124bとにより構成されている。後進段従動ギヤ128bは、第2副軸118に回転自在に設けられている。
【0085】
第4切換クラッチ130Dは、第4速従動ギヤ124bおよび後進段従動ギヤ128bの一方と第2副軸118との係合を可能とし、かつ、第4速従動ギヤ124bおよび後進段従動ギヤ128bの両者を第2副軸118に対して離脱する状態にすることができるシンクロメッシュ機構を構成している。
【0086】
第4切換クラッチ130Dは、第2切換クラッチ130Bとほぼ同じである。第2切換クラッチ130Bにおいては、第2速係合部材S2と第6速係合部材S6がそれぞれ第2速従動ギヤ122bおよび第6速従動ギヤ126bに固定されているのに対して、第4切換クラッチ130Dにおいては、第4速係合部材S4と後進係合部材SRがそれぞれ第4速従動ギヤ124b及び後進段従動ギヤ128bに固定されている点が相違する。また、第4速係合部材S4のギヤ形状は、第一実施形態の図3の第3速係合部材S3のギヤ形状と同一形状である。後進係合部材SRのギヤ形状は、第一実施形態の図3の第1速係合部材S1のギヤ形状と同一形状である。この第4切換クラッチ130Dを構成するスリーブMのギヤ形状は、第一実施形態の図3のスリーブMのギヤ形状と同一形状である。つまり、第4切換クラッチ130Dにおいて、スリーブMと第4速係合部材S4との噛合は、噛合状態から離脱する方向において係合する。一方、スリーブMと後進係合部材SRとが噛合する場合には、両者が軸方向に対して係合する状態とはならない。
【0087】
この第4切換クラッチ130DのスリーブMは、図6に示す中立位置では何れの係合部材S4,SRとも係合されていない。外周の環状溝に係合されたシフトフォークNによりスリーブMが第4速従動ギヤ124b側にシフトされれば、スリーブMは第2副軸118と第4速従動ギヤ124bの回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて第4速段が形成される。また、シフトフォークNによりスリーブMが後進段従動ギヤ128b側にシフトされれば、第2副軸118と後進段従動ギヤ128bの回転を同期させた後に、この両者を一体的に連結する。ここで、第1副軸117の第2速ギヤ列122a,122b、後進段駆動ギヤ128aおよび後進段従動ギヤ128bを用いて、後進段を形成する。
【0088】
次に、本実施形態のデュアルクラッチ式自動変速装置100の動作について図8を参照して説明する。デュアルクラッチ式自動変速機100の制御装置は、アクセル開度、エンジン回転速度、車速などの自動車の作動状態に応じて、デュアルクラッチCの第1摩擦クラッチC1、第2摩擦クラッチC2および第1〜第4切換クラッチ130A〜130Dを、図8に示すように作動させる。不作動状態ではデュアルクラッチCの第1,第2摩擦クラッチC1,C2はともに解除されており、第1〜第4切換クラッチ130A〜130Dは中立位置にある。
【0089】
停車状態においてエンジン10を起動させた場合にも、上記不作動状態と同様の状態を維持する。そして、停車状態においてエンジン10を起動させた後に、デュアルクラッチ式歯車変速装置のシフトレバー(図示省略)を前進位置とすれば、制御装置は図8の第1速に示すように、第3切換クラッチ130Cの第1速係合部材S1が係合し、その他の各クラッチが中立位置となるようにして第1速段を形成する。この状態でアクセル開度が増大してエンジン10が所定の低回転速度を越えれば、制御装置はアクセル開度に合わせてデュアルクラッチCの第1摩擦クラッチC1の係合力を徐々に増加させ、これにより駆動軸11の駆動トルクは第1摩擦クラッチC1から第1入力軸115、第1速ギヤ列121a,121b、第3切換クラッチ130Cの第1速係合部材S1、第2副軸118、第2リダクションギヤ列129b,129cを介して出力軸119に伝達され、自動車は第1速で走行し始める。
【0090】
アクセル開度が増大するなどして自動車の作動状態が第2速走行に適した状態となれば、制御装置は、先ず第2切換クラッチ130Bの第2速係合部材S2を係合させて第2速段を形成してから、デュアルクラッチCを第2摩擦クラッチC2側に切り換えて第2速走行に切り換え、次いで第3切換クラッチ130Cの第1速係合部材S1を離脱させて、図8の第2速に示す状態にする。このとき、駆動軸11の駆動トルクは、第1摩擦クラッチC2から第2入力軸116、第2速ギヤ列122a,122b、第2切換クラッチ130Bの第2速係合部材S2、第1副軸117、第1リダクションギヤ列129a,129cを介して出力軸119に伝達され、自動車は第1速で走行し始める。
【0091】
同様にして、制御装置は、第3速〜第7速では、自動車の作動状態に応じた変速段を図8に示すように順次選択するとともに第1摩擦クラッチC1と第2摩擦クラッチC2を交互に選択して、その状態に適した変速段での走行が行われるようにする。
【0092】
エンジン10を起動させた停車状態において歯車変速装置のシフトレバーを後進位置とすれば、制御装置はそれを検出して図8の後進に示すように、第4切換クラッチ130Dの後進係合部材SRを係合させ、その他の各クラッチが中立位置となるようにして後進段を形成する。アクセル開度が増大してエンジン10が所定の低回転速度を越えれば、制御装置はアクセル開度に合わせてデュアルクラッチCの第2摩擦クラッチC2の係合力を徐々に増加させる。これにより駆動軸11の駆動トルクは第2摩擦クラッチC2から第2入力軸116、第2速ギヤ列122a,122b、後進段ギヤ列128a,128b、第4切換クラッチ130Dの後進係合部材SR、第2副軸118、第2リダクションギヤ列129b,129cを介して出力軸119に伝達され、自動車は後進を開始する。
【0093】
停車状態において歯車変速装置のシフトレバーを駐車位置とすれば、制御装置はそれを検出し、図8の駐車に示すように、第2切換クラッチ130Bの第2速係合部材S2を係合させるとともに、第4切換クラッチ130Dの後進係合部材SRを係合させる。第2速係合部材S2の係合により、第2入力軸116から、第2速ギヤ列122a,122b、第2切換クラッチ130Bの第2速係合部材S2、第1副軸117、第1リダクションギヤ列129a,129cを介して出力軸119に一方向の回転力が伝達される状態となる。一方、後進係合部材SRの係合により、第2入力軸116から、第2速ギヤ列122a,122b、後進段ギヤ列128a,128b、第4切換クラッチ130Dの後進係合部材SR、第2副軸118、第2リダクションギヤ列129b,129cを介して出力軸119に反対方向の回転力が伝達される状態となる。従って、第2速ギヤ列122a,122bと第1リダクションギヤ列129a,129cによる噛み合いと、後進段ギヤ列128a,128bと第2リダクションギヤ列129b,129cによる噛み合いの、2重噛み合いがなされて、パーキングロックがなされる。なお、第二実施形態においては、第一実施形態に記載の効果と同一の効果を奏する。
【符号の説明】
【0094】
1,100:デュアルクラッチ式自動変速機
10:原動機、 11:駆動軸
15,115:第1入力軸、 16,116:第2入力軸
17,117:第1副軸、 18,118:第2副軸、 19,119:出力軸
20A,20B,120A,120B:歯車変速機構
30A〜30D,130A〜130D:切換クラッチ
40:シフトアクチュエータ機構
C:デュアルクラッチ、 C1,C2:摩擦クラッチ
L:クラッチハブ、 M:スリーブ、 N:シフトフォーク
O:シンクロナイザリング、 S1〜S7,SR:係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同軸的に配置された第1入力軸および第2入力軸と、
前記第1入力軸および前記第2入力軸と平行に配置された第1副軸および第2副軸と、
原動機の回転駆動力を前記第1入力軸に伝達する第1クラッチと前記回転駆動力を前記第2入力軸に伝達する第2クラッチとを有するデュアルクラッチと、
前記両入力軸と前記第1副軸の間に設けられ、所定の低速段のギヤ列を含む複数段のギヤ列と、当該ギヤ列と前記両入力軸および前記第1副軸とを離脱係合させる第1切換クラッチとを有する第1歯車変速機構と、
前記両入力軸と前記第2副軸の間に設けられ、後進段ギヤ列を含む複数のギヤ列と、当該ギヤ列と前記両入力軸および前記第2副軸とを離脱係合させる第2切換クラッチとを有する第2歯車変速機構と、
前記両入力軸および前記両副軸の何れかの回転が伝達される出力軸と、
を備え、
前記第1入力軸と前記第2入力軸の何れか一方に、前記低速段のギヤ列の一部を構成するギヤと前記後進段ギヤ列の一部を構成するギヤを設け、
パーキングの際には、前記第1切換クラッチのうち前記第1入力軸と前記第2入力軸の一方と前記低速段のギヤ列とを係合させるための低速段切換クラッチを係合させると共に、前記第2切換クラッチのうち前記第1入力軸と前記第2入力軸の一方と前記後進段ギヤ列とを係合させるための後進段切換クラッチを係合させることにより、パーキングロックを行い、
前記第1切換クラッチおよび前記第2切換クラッチは、前記副軸に固定され外周面にギヤが形成されたクラッチハブと、前記副軸に対して相対回転可能に設けられ外周面にギヤが形成された係合部材と、前記クラッチハブおよび前記係合部材に対して軸方向に移動可能に設けられ、前記クラッチハブのギヤと常時係合し且つ前記係合部材のギヤと離脱係合するギヤが内周面に形成されたスリーブと、それぞれを有し、
前記低速段切換クラッチおよび前記後進段切換クラッチの少なくとも何れか一方において、前記係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状および当該側面に噛合する前記スリーブのギヤの側面における軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されていることを特徴とするデュアルクラッチ式自動変速機。
【請求項2】
請求項1において、
前記低速段切換クラッチおよび前記後進段切換クラッチの何れもにおいて、前記係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状および当該側面に噛合する前記スリーブのギヤの側面における軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されていることを特徴とするデュアルクラッチ式自動変速機。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記低速段切換クラッチは、1速段切換クラッチであることを特徴とするデュアルクラッチ式自動変速機。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記第1切換クラッチおよび前記第2切換クラッチのうち前記低速段切換クラッチおよび前記後進段切換クラッチ以外において、前記係合部材のギヤの側面における軸方向断面形状および当該側面に噛合する前記スリーブのギヤの側面における軸方向断面形状は、軸方向に対して非平行な直線状に形成され、前記スリーブのギヤと前記係合部材のギヤとが噛合状態から離脱する方向において係合するように形成されていることを特徴とするデュアルクラッチ式自動変速機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記スリーブを前記係合部材に対して軸方向へ移動させ且つ逆戻り防止機能を有するシフトアクチュエータ機構を備えることを特徴とするデュアルクラッチ式自動変速機。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項において、
前記デュアルクラッチは、車両が停車した場合に係合状態を解除するタイプであることを特徴とするデュアルクラッチ式自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−144872(P2011−144872A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5764(P2010−5764)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】