説明

デュアルモード交通システム

【課題】デュアルモード車両による単線双方向の運行管理を行う。
【解決手段】軌道区間の両側でデュアルモード車両100の進入を抑止する進入抑止手段と、軌道区間内へ進入しようとするデュアルモード車両100を検出する進入車両検出手段と、軌道区間の両端で車両の退出を検出する退出車両検出手段とを備え、軌道区間内にデュアルモード車両100が存在するかを判断する在線判断手段と、進入車両検出時に軌道区間内にデュアルモード車両100が在線しないと判断すると、対応する進入抑止手段を進入可能とする抑止通過決定手段とを具備する地上装置を備えるデュアルモード交通システム1000を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルモード交通システム、特にデュアルモード車両の運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、都市部への人口集中に伴い、地方山村部における過疎化が進行しており、この過疎化は、地方鉄道線(いわゆるローカル線)や地方路線バスの利用者の減少をもたらしている。このため、鉄道事業者やバス事業者は、運行管理コスト等を削減するために、地方鉄道線や地方路線バスに代わる新たな交通システムを創出する必要に迫られている。
【0003】
このような状況において、近年、軌道走行と道路走行との双方が可能な車両(以下、「デュアルモード車両」という)の開発が進められ、鉄道と道路とのシームレス化を行って鉄道車両とバスの双方の利点を生かす交通システム(以下、「デュアルモード交通システム」という)を構築して、車両コストの削減、メンテナンスコストの削減、運転コストの削減等を実現させようとする動きがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、鉄道システムにおいては、GPS衛星(GPS:Global Positioning System)からの電波を受信して車両の地球座標系座標(緯度・経度)を測位することにより鉄道車両の位置を認識する鉄道システムが知られている(特許文献2参照)。この鉄道システムでは、鉄道車両にGPS受信機と無線通信装置とを備え、鉄道車両から受信したGPSデータに基づき、運行監視センタが当該鉄道車両と後方鉄道車両との車間距離を算出し、車間距離が所定範囲内になった場合に、後方鉄道車両に警報信号を送信して鉄道車両の衝突を防いでいる。
【特許文献1】特許第3679108号公報
【特許文献2】特開2003−200827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デュアルモード交通システムにおいても、鉄道と道路それぞれにおける運行の管理のみならず、鉄道から道路、道路から鉄道への相互の乗り入れを実現するシステム、及び、鉄道が単線区間の場合にデュアルモード車両が鉄道へ進入し、双方向への運行を行う場合に好適なシステムはこれまで開発されていない。
【0006】
また、上記の鉄道区間においては、低コスト実現のために地上設備を極力廃し、一方では、一定の区間に複数のデュアルモード車両を在線させるため、その一区間を複数の閉塞区間に分割したいという要請もある。
【0007】
また、山岳地帯やトンネルの存在などにより、無線通信が不能になる区間が多く存在するため、通信データ量を低減して通信トラフィックも極力削減する必要もある。
【0008】
本発明は、道路及び鉄道における複数のデュアルモード車両の双方向の運行管理を好適なシステムで行うデュアルモード交通システムを構築することを一の目的とし、さらに、当該単線区間に通信不能な区間が存在し得る無線通信を介してデュアルモード車両の車両位置を把握する仮想閉塞を実現する場合に、限られた情報でも複数のデュアルモード車両の在線をより確実に把握して安全運行を実現するデュアルモード交通システムを低コストに構築することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
道路走行及び軌道走行可能な複数のデュアルモード車両の運行管理を行うデュアルモード交通システムであって、
軌道上の所定の軌道区間の両端にそれぞれ設置され、デュアルモード車両の前記軌道区間内における軌道上への進入の許可と抑止とを切り替え可能な進入抑止手段と、
前記各進入抑止手段の手前にそれぞれ設置され、前記軌道区間へ進入しようとするデュアルモード車両を検出する進入車両検出手段と、
前記軌道区間の両端にそれぞれ設置され、前記デュアルモード車両の前記軌道区間からの退出を検出する退出車両検出手段と、
を備え、さらに、
前記軌道区間内にデュアルモード車両が在線しているかどうかを判断する在線判断手段と、前記各進入車両検出手段でのデュアルモード車両検出時に、前記在線判断手段により前記軌道区間内にデュアルモード車両が在線しないと判断されると、対応する前記進入抑止手段を進入可能状態とする抑止通過決定手段と、を具備する地上装置と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記進入車両検出手段は、前記デュアルモード車両の前記軌道区間内の進入要求を入力する進入要求手段であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記軌道区間の両端にそれぞれ設置され、デュアルモード車両の前記軌道区間内における軌道上からの退出の許可と抑止とを切り替え可能な退出抑止手段を備え、
前記退出車両検出手段は、前記各退出抑止手段の手前にそれぞれ設置され、前記デュアルモード車両の前記軌道区間外への退出要求を入力する退出要求手段であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記在線判断手段は、前記軌道区間にデュアルモード車両が在線しているかどうかの判断を、前記進入車両検出手段及び退出車両検出手段の検出の状況に応じて行うことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記地上装置は、前記軌道区間内に在線するデュアルモード車両の進行方向を判断する進行方向判断手段を備え、
前記抑止通過決定手段は、前記各進入車両検出手段でのデュアルモード車両検出時に、前記軌道区間内に対向方向に進行するデュアルモード車両が在線しないと判断されると、対応する前記進入抑止手段を進入可能状態とすることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のデュアルモード交通システムであって、
複数の前記デュアルモード車両はそれぞれ、
GPS衛星(GPS:Global Positioning System)を利用して自車の車両位置を測位する自車測位手段と、
前記軌道区間を複数の仮想閉塞区間に分割して当該各仮想閉塞区間の位置範囲情報を記憶する閉塞区間情報記憶手段と、
前記自車測位手段で測位した車両位置を用いて自車がどの前記仮想閉塞区間に在線しているかを判定する個別区間判定手段と、
前記個別区間判定手段で判定した自車の車両位置を表す個別区間情報を前記地上装置へ送信し、前記軌道区間の各仮想閉塞区間に他のデュアルモード車両がどのように在線しているかを表す区間在線情報を、前記地上装置から受信する無線通信手段と、
前記区間在線情報を元に前記軌道区間の他のデュアルモード車両の在線状態を運転席に表示する運行路線情報報知手段と、
を具備する車載装置を備え、
前記地上装置は、
各デュアルモード車両から受信した前記個別区間情報を記憶する個別区間情報記憶手段と、
前記各デュアルモード車両から受信した前記個別区間情報を用いて前記区間在線情報を生成する区間在線情報生成手段と、
前記各デュアルモード車両からそれぞれの前記個別区間情報を受信し、当該各デュアルモード車両に前記区間在線情報を送信する無線通信手段と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記在線判断手段は、前記軌道区間にデュアルモード車両が在線しているかどうかの判断を、前記区間在線情報生成手段が生成する区間在線情報を用いて行うことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記閉塞区間情報記憶手段は、前記軌道区間におけるそれぞれの前記仮想閉塞区間の全ての境界が前記デュアルモード車両の無線通信手段の通信可能領域に配置された前記各仮想閉塞区間の位置範囲情報を記憶することを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項6から8の何れか一項に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記区間在線情報生成手段が生成する前記区間在線情報は、
前記軌道区間内の各仮想閉塞区間ごとにデュアルモード車両の在線/不在線を示す情報であることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項6から9の何れか一項に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記運行路線情報報知手段は、前記地上装置から受信した前記区間在線情報を元に、前記軌道区間の全仮想閉塞区間におけるデュアルモード車両の在線/不在線を識別可能に表示し、自車が在線する仮想閉塞区間についてに他の仮想閉塞区間の表示と区別可能に表示することを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項6から10の何れか一項に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記運行路線情報報知手段は、前記地上装置から受信した前記区間在線情報を元に、自車の在線する仮想閉塞区間から、前方で最も接近しているデュアルモード車両の在線する仮想閉塞区間の二つ手前までの仮想閉塞区間と、その次の仮想閉塞区間と、前記最も接近しているデュアルモード車両の在線する仮想閉塞区間から前の仮想閉塞区間とをそれぞれ異なる色彩で表示することを特徴とする。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項1から11の何れか一項に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記地上装置は、複数の前記軌道区間を同時に管理する機能をさらに有することを特徴とする。
【0021】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のデュアルモード交通システムであって、
前記車載装置は、前記地上装置に個別区間情報を送信する際にこれに伴って付与される、それぞれのデュアルモード車両に固有の識別番号を記憶する識別番号記憶部を備え、
前記地上装置は、
前記個別区間情報記憶手段に、前記識別番号を前記個別区間情報と対応させて記憶する機能をさらに有し、
前記個別区間情報記憶手段から前記識別番号と前記個別区間情報を読み取り、複数の軌道区間におけるそれぞれの閉塞区間にどのデュアルモード車両が在線しているかを表示する在線監視手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、単線区間内に軌道区間を設定することにより、当該軌道区間内にデュアルモード車両が在線しないと判断されると軌道区間内へのデュアルモード車両の進入を許可する運行が行われるので、道路及び鉄道の相互に乗り入れを行うる複数の前記デュアルモード車両の単線区間における双方向の運行管理を好適に行うデュアルモード交通システムを構築することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、前記デュアルモード車両が前記軌道区間への進入要求を入力するまで前記進入抑止手段を抑止状態に保つことができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、前記デュアルモード車両が前記軌道区間から退出する際に、退出要求を入力するまで前記退出抑止手段を抑止状態に保つことができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、前記在線判断手段は、前記進入車両検出手段及び前記退出車両検出手段の検出状況を順を追って確認することで、前記軌道区間にデュアルモード車両が在線しているかどうかを判断することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、前記デュアルモード車両が前記軌道区間へ進入しようとした際に、既に他のデュアルモード車両が在線している場合でも、進行方向が同一であれば、複数の後続のデュアルモード車両を前記軌道区間に在線させることができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、GPS衛星により自車位置を測位して軌道区間内に設定されたいずれの仮想閉塞区間に在線するかを判定するので、軌道回路などの地上設備を用いることなく、複数の仮想閉塞区間に分割された軌道区間内において複数のデュアルモード車両の同方向への走行について運行を行うことが可能となる。従って、設備コストの低減を図ることが可能となる。
また、軌道区間内に在線する全ての車両を把握するために地上装置と各車両との間で無線通信により送受される個別区間情報及び区間在線情報は、車両が在線する区間を特定可能な情報量であれば足りるので、軌道区間内に、山岳地帯やトンネルなどの無線通信が不能になる区間が多く存在する場合でも、通信データ量を低減して通信トラフィックも極力削減することが可能となる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、前記在線判断手段は、前記区間在線情報生成手段が生成する区間在線情報を参照するだけで即座に前記軌道区間にデュアルモード車両が在線しているかどうかを判断することができる。
【0029】
請求項8に記載の発明によれば、前記デュアルモード車両は前記閉塞区間情報記憶手段を参照することで、前記自車測位手段を用いて測位した自車の車両位置から、自車が現在どの軌道区間のどの閉塞区間に在線しているか、及び、自車が前記無線通信手段の通信可能領域に入ったかどうかを判断することができる。従って、仮想閉塞区間の境界で車載装置の無線通信手段から地上装置に対する通信を行うことで、より確実に自車の在線する仮想閉塞区間を地上装置に送信することが出来る。また、仮想閉塞区間の境界で地上装置に対する通信を行うことで、在線する仮想閉塞区間が変化した場合にいち早く地上装置に送信することが可能となる。従って、車載装置からの通信は境界の前後に渡って繰り返し行うことが望ましい。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、無線通信を介してデュアルモード車両の車両位置を把握する仮想閉塞を実現する場合に、区間在線情報を各仮想閉塞区間ごとにデュアルモード車両の在線/不在線を示す情報とすることにより送信情報の低減を図ることが出来、通信トラフィックも極力削減することが可能となる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、前記デュアルモード車両の運転士は、前記運行路線情報報知手段の表示を視覚により確認できるので、自車の在線している軌道区間おいて、どの仮想閉塞にデュアルモード車両がどのように在線しているかを迅速に確認することができる。
【0032】
請求項11に記載の発明によれば、自車の在線する仮想閉塞区間から、前方で最も接近しているデュアルモード車両の在線する仮想閉塞区間の二つ手前までの仮想閉塞区間は自由に進むことができ、その次の仮想閉塞区間は徐行、前記最も接近するデュアルモード車両の在線する仮想閉塞区間から前は停止と言うルールの下で、自車が在線している仮想閉塞区間から、さらに何区間進むことができるか、あと何区間で徐行すべきか、停止しなければならないかを視覚的に認識することができる。
また、軌道区間内の全ての車両を把握するのではなく、自車が進行可能な区間が表示されるので、走行時の減速、停車等の判断を容易且つ瞬間的に行うことが出来る。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、軌道に連続して並ぶ複数の前記軌道区間がさらに長い区間を構成している場合でも、星形や網目状など複数の前記軌道区間が複雑に配置されている場合でも、前記地上装置は一括して管理することができ、より柔軟性の高いデュアルモード交通システムを構築することができる。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、どのデュアルモード車両が、どの軌道区間の、何番目の仮想閉塞区間に在線しているかを、前記地上装置においてリアルタイムで表示し、把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
[第1の実施の形態]
以下、図1から図31を用いて、本発明における第1の実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000の構成について説明する。
【0036】
本実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000は、図1に示すように、複数のデュアルモード車両100と、単線の軌道500の随所に設置された駅A、駅B、駅C及び駅Dと、軌道区間AB、軌道区間BC及び軌道区間CDと、各軌道区間を含む運行範囲において運行管理を行う地上装置としての運行管理センター200に設けられた運行管理サーバ201及び各デュアルモード車両100に設けられた車載装置101とを備え、各デュアルモード車両100の適正な運行管理を行うためのシステムである。
【0037】
(デュアルモード車両)
デュアルモード車両100は、図2に示すように、車体102、車体102の前方及び後方に配設されたタイヤ用車軸103a,104aを中心に回転する前方ゴムタイヤ103及び後方ゴムタイヤ104、車体102の前方及び後方に昇降自在に配設された案内輪用車軸105a,106aを中心に回転する軌道走行用の前方案内輪105及び後方案内輪106、デュアルモード車両100の前方ゴムタイヤ103の操舵方向や後方ゴムタイヤ104の回転状態等を制御する図示されていない制御装置、等を備えて構成されている。デュアルモード車両100は、前方ゴムタイヤ103及び後方ゴムタイヤ104による道路走行モードと、前方案内輪105、後方案内輪106及び後方ゴムタイヤ104による軌道走行モードと、の双方を自在に切り換えて実現させることができるものである。
【0038】
車体102は、図2に示すようなマイクロバスの車体102を採用しており、運転手を含めて約30人を搭乗させることができる。前方ゴムタイヤ103は、車体102の運転席のハンドルにより操舵することができる。後方ゴムタイヤ104は、タイヤ用車軸104aに左右2本ずつ軸支され、図示されていないエンジン及び動力伝達装置によって駆動される前方案内輪105及び後方案内輪106は、鉄等の金属で構成され、図示されていない油圧アクチュエータの伸縮により上方及び下方に移動する。つまり、道路走行時においては、上方に移動させて、前方ゴムタイヤ103及び後方ゴムタイヤ104を接地させ、軌道走行時には、前方案内輪105及び後方案内輪106を下方に移動させて、軌道500のレールR上面に当接させ、前方ゴムタイヤ103を上方に浮かせると共に後方ゴムタイヤ104の内側輪のみをレールに接地させて当該後方ゴムタイヤ104の回転駆動により走行を可能とする。
【0039】
デュアルモード車両100は、走行モード変換用構造体10が設置されたモードインターチェンジ部で道路走行モードと軌道走行モードとの走行モード変換を行う。走行モード変換用構造体10は、図2に示すように、デュアルモード車両100の前方ゴムタイヤ103及び後方ゴムタイヤ104を当接させると共に軌道500の周辺においてレールRの上面とほぼ等しい高さにコンクリートやアスファルトが盛られた平坦状のタイヤ当接面21を有する複合構造体20と、複合構造体20上に配設される軌道案内体30と、を備えて構成されている。
【0040】
軌道案内体30は、複合構造体20の前後方向略中央位置に配置され、軌道走行モードで前進するデュアルモード車両100の前方案内輪105及び後方案内輪106の内側面に当接させて、軌道500の中心に対するデュアルモード車両100の位置合わせを行うものである。軌道案内体30は、一対のレールRにまたがって載置された平板部31と、この平板部31の上面に設けられ、一対のレールRの間において平面視で一対のレールRの中心位置から前進方向に向かうに従って各レールRの間隙幅まで拡幅する略くさび状を呈した案内板32と、平板部31の前端部に連接された傾斜部33と、を有している。この軌道案内体30は複合構造体20に固定されている。そして、各案内輪105,106を下ろした状態で前進走行するデュアルモード車両100の各案内輪105,106の内側側面が案内板32の左右に拡幅する方向に延びた左右端面32aにそれぞれ当接し、各レールR上に案内される。
【0041】
以上のように、デュアルモード車両100は、モードインターチェンジ部の走行モード変換用構造体10のタイヤ当接面21上で、各案内輪105,106を下降させて走行モード変換用構造体10に向けて走行させると、軌道500に導くことができ、また、タイヤ当接面21上で各案内輪105,106を上昇させることで軌道500から脱することができる。
【0042】
(運行管理の概要)
本実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000においては、各軌道区間AB、BC、CDにおいて、概ね以下のような運行管理が行われる。
【0043】
本実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000にあっては、各軌道区間内に在線するデュアルモード車両100の進行方向が一律等しくなるように、各軌道区間内への進入の抑止を行う。即ち、各駅からデュアルモード車両100が軌道500に進入することが可能であり、各駅には、進入ゲート1及び進入カードリーダー3が設けられている。そして、デュアルモード車両100は進入ゲート1の手前に停止して、進入カードリーダー3にICカードをかざす。その時点で当該軌道区間上に他のデュアルモード車両100が在線していない場合には進入ゲート1が開かれる。在線している場合は進入ゲート1は閉じたままで、在線していたデュアルモード車両100が当該軌道区間から退出した後、進入ゲート1が開かれる。
【0044】
また、各駅には、当該軌道区間の退出ゲート2及び退出カードリーダー4が設けられており、退出カードリーダー4にICカードをかざすことで退出ゲート2が開かれ、軌道区間から退出し、一般道路600へ向かう。道路600上では路線バスと同様に、交通ルールに従い、所定の路線に従って運行する。
【0045】
また、各ゲート1,2の内側には、デュアルモード車両100が道路走行モードから軌道走行モードへモード変換を行うためのモードインターチェンジ部が設けられている。
【0046】
そして、運行管理センター200に設置された運行管理サーバ201は、対向して走行するデュアルモード車両100が軌道区間上に在線していない場合のみ進入ゲート1を上げるように各進入ゲート1の動作制御を行う。ただし、後述のように、他のデュアルモード車両100が在線していても、同方向に進行していれば進入ゲート1を上げても良い。
【0047】
さらに、本実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000においては、前述の軌道区間に同方向に進行する複数のデュアルモード車両100を在線させても安全な運行管理ができるようにするため、当該軌道区間を複数の区間に分割した仮想閉塞区間を導入する。
【0048】
ここで、閉塞区間とは、軌道に並んで設定され、一つの区間について同方向に進行する車両を一つしか進入させないように運行させるための区間をいう。つまり、連続して並ぶ二つの閉塞区間において、前の閉塞区間に車両が在線しているときには当該車両が当該閉塞区間から退出しない限り後ろの閉塞区間に在線する車両は前の閉塞区間に進入することが規制される運行が行われる。
【0049】
通常の閉塞区間の場合には、各閉塞区間ごとに設けられた軌道回路を用いて各車両が在線する閉塞区間を認識し、信号により各車両に進行の許可と規制を促すことが一般的に行われるが、「仮想閉塞区間」は、軌道回路や信号等の実体的な設備を使用せずに、無体的なデータの上で仮想閉塞区間を定義すると共に、各車両の現在位置を検知して各車両がどの仮想閉塞区間に在線するか、進行又は停止すべきかという内容が全てデータの送受により行われる。
【0050】
上述の運行システムは、概ね以下のような動作を行うことで仮想閉塞区間を実現する。各デュアルモード車両100は、車載装置に備えられたGPS装置により自車の車両位置を測位して自車の在線する仮想閉塞区間を特定し、それを個別区間情報として運行管理センター200に設置された運行管理サーバ201に送信する。運行管理サーバ201では各デュアルモード車両100から送られた個別区間情報を元に、当該軌道区間毎のデュアルモード車両100の在線状態を表す区間在線情報を生成し、各デュアルモード車両100に送信する。各デュアルモード車両100では、区間在線情報に基づいて、表示装置140に停止・減速等の情報を表示する。
【0051】
これにより、自車が在線している軌道区間の各仮想閉塞区間に、他のデュアルモード車両100がどのように在線しているかを、視覚的に認識することができ、当該軌道区間に複数のデュアルモード車両100を在線させても安全な運行が実現可能なデュアルモード交通システムを構築できる。
【0052】
(各種の地上設備)
以下では、図3から図11を用いて、運行管理システムを構成する上で、前述のデュアルモード交通システム1000が備える地上設備について述べる。
【0053】
駅Aは、図3に示すように、一般道路600から軌道区間ABへの進入の許可と抑止を行う進入抑止手段としての進入ゲート1と、退出抑止手段としての退出ゲート2と、進入ゲート1に対する進入要求手段(進入車両検出手段)としての進入カードリーダー3と、退出ゲート2に対する退出要求手段(退出車両検出手段)としての退出カードリーダー4と、モードインターチェンジ部10と、デュアルモード車両100が停車して乗客の乗降を行う地点を表す停車標5(バス停)と、を備えており、デュアルモード車両100が相互に乗り入れ可能になるように軌道500と道路600とを接続している。なお、駅Aでは、進入カードリーダー3と退出カードリーダー4は、構造上同じ場所にまとめて設置されている。
【0054】
駅Bは、図4に示すように、対向するデュアルモード車両100が行き違うことができるよう設けられた停車帯6a,6bと、それぞれの停車帯6a,6bに設けられた停車標5と、軌道区間ABから退出し停車帯6aに入る際に通過する退出ゲート2と、停車帯6aから軌道区間BCに進入する際に通過する進入ゲート1と、軌道区間BCに進入する際に使用するモードインターチェンジ部10と、対向方向の軌道区間BCから退出し停車帯6bに入る際に通過する退出ゲート2と、停車帯6bから軌道区間ABに進入する際に通過する進入ゲート1と、軌道区間ABに進入する際に使用するモードインターチェンジ部と、それぞれのゲートに対応する進入カードリーダー3と、退出カードリーダー4とを備えている。
【0055】
駅Cは、図5に示すように、対向するデュアルモード車両100が行き違うことができるよう設けられた停車領域7と、停車領域7に設けられた双方の運行方向に対応する二つの停車標5と、軌道区間BCから退出し停車領域7に入る際に通過する退出ゲート2と、停車領域7から軌道区間CDに進入する際に通過する進入ゲート1と、軌道区間CDに進入する際に使用するモードインターチェンジ部10と、軌道区間CDから退出し停車領域7に入る際に通過する退出ゲート2と、停車領域7から軌道区間BCに進入する際に通過する進入ゲート1と、軌道区間BCに進入する際に使用するモードインターチェンジ部と、それぞれの進入ゲート1に対応する進入カードリーダー3と、それぞれの退出ゲート2に対応する退出カードリーダー4と、を備えている。
【0056】
駅Dは、図6に示すように、停車領域7と、停車領域7から軌道区間CDへの進入の際に通過する進入ゲート1と、軌道区間CDから退出し停車領域7に入る際に通過する退出ゲート2と、進入ゲート1に対応する進入カードリーダー3と、退出ゲート2に対応する退出カードリーダー4と、モードインターチェンジ部10と、停車領域7に設けられた双方向の運行方向に対応する二つの停車標5と、を備えており、停車領域7を介してデュアルモード車両100が軌道500と道路600を相互に乗り入れ可能に接続されている。なお、駅Dでも、進入カードリーダー3と退出カードリーダー4は、構造上同じ場所にまとめて設置されている。なお、各駅においては、必要に応じて駅舎(待合所)を設置しても良い。
【0057】
以上のように、各軌道区間の両端にはそれぞれ、当該軌道区間への進入の許可と抑止とをデュアルモード車両100に示す進入ゲート1と、進入の要求を受け付ける進入カードリーダー3、退出の許可と抑止とを示す退出ゲート2と、退出の要求を受け付ける退出カードリーダー4とが設けられている。
【0058】
上記進入ゲート1と退出ゲート2とは、いずれも、回動式の遮断竿を備え、遮断竿を水平に降ろした状態で進入又は退出の抑止をデュアルモード車両100に示し、遮断竿を垂直に立てた状態で進入又は退出の許可を示す。その動作の切り替え制御は、有線又は無線の通信装置で接続された運行管理サーバ201により行われる。
【0059】
また、各カードリーダー3,4は、ICカードを提示された際、内部情報を読み取ると共に当該内部情報に基づいて通過を許可して良いか否かを判定し、許可して良いと判定された場合に限り、進入又は退出の要求があったことを運行管理サーバに送信する。これにより、通過を許可する情報が記憶されたICカードの提示がない限り各軌道区間内に進入することができず、デュアルモード交通システム1000に無関係な車両の進入を防止することができる。なお、カードリーダー3,4は、ICカードに限らず、磁気カードや無線通信などでも実現することができるため、カードを挿入口に挿入する形式でも良いし、車載装置101に同等の機能を初めから組み込んでも良い。また、その場合は、ゲートの前で必ずしも停止する必要はなく、徐行して通過する形式でも良い。
【0060】
(運行管理サーバ:全体構成)
運行管理サーバ201は、各駅及び各軌道区間との通信に支障が少ない場所に設けられた運行管理センター200に設置されており、各軌道区間における進入ゲート1及び退出ゲート2を制御して、各デュアルモード車両100の各軌道区間への進入及び抑止の制御を行っている。
【0061】
運行管理サーバ201は、図7に示すように、処理装置210と、後述の各処理を行うプログラムを格納しているプログラム部220と、各プログラムが動作する際に扱うデータを随時格納する書き換え可能なメモリー上に準備されたデータ領域230と、各駅AからDに備えられたゲート1,2及びカードリーダー3,4との通信を行う通信装置240と、各デュアルモード車両100の車載装置101と各種情報の通信を行う無線通信装置250と、後述する在線監視処理で使用される表示装置260とを備えている。例えば、上記処理装置210はCPU、プログラム部220はROM、データ領域230はRAMにより構成される。
【0062】
プログラム部220には、抑止通過決定プログラム221、ゲート開閉要求情報記録プログラム222、区間在線情報生成プログラム223、無線通信制御プログラム224及び在線監視プログラム225を格納している。なお、区間在線情報生成プログラム223、無線通信制御プログラム224及び在線監視プログラム225は、後述する仮想閉塞区間を用いた運行管理に要する処理を行うものであり、当該処理に関連が深い車載装置101の説明と共にその処理内容の説明は後述することとする。
【0063】
抑止通過決定プログラム221は、処理装置210に読み出され実行されることにより、各軌道区間内にデュアルモード車両100が在線しているかどうかを判断する在線判断手段と、当該軌道区間にデュアルモード車両100が在線している場合にどちら向きにデュアルモード車両100が走行しているかを判断する進行方向判断手段と、デュアルモード車両100の運転士が進入カードリーダー3にICカードをかざし軌道区間への進入を要求した際に、当該軌道区間内にデュアルモード車両100が在線しないと判断された場合、及び、在線していても進行方向が同じであると判断された場合に、対応する進入ゲート1に進入を許可する指示を出す抑止通過決定手段として機能することになる。
【0064】
データ領域230には、ゲート開閉要求情報231、在線情報232、個別区間情報233及び区間在線情報234が、随時読み出し及び書き換え可能な状態で記録されている。なお、個別区間情報233及び区間在線情報234は、後述する仮想閉塞区間を用いた運行管理に要する処理に用いられるものであり、当該処理に関連が深い車載装置101の説明と共にその内容の説明は後述することとする。
【0065】
ゲート開閉要求情報231には、例えば、図8に示すように、駅Aと駅Bの間の軌道区間ABを例にして説明すると、「駅A側の進入ゲート」、「駅A側の退出ゲート」、「駅B側の進入ゲート」及び「駅B側の退出ゲート」のそれぞれに対する開閉要求(ゲートの通過の許可を求める要求)の有無231Ai、231Ao、231Bi、231Boと、進入ゲート1については駅A側と駅B側での開閉要求についてのどちらを優先させるかという情報231Ap、231Bpとが記録される。つまり、駅A又は駅Bの各カードリーダー3,4に対して通過の要求が行われると、開閉要求の有無231Ai、231Ao、231Bi、231Boのそれぞれが要求あり(図8では○で表記)へ書き換えられ、要求に応じてゲートが開かれると要求なし(図8では×で表記)へ書き換えられる。
【0066】
また、要求の優先とは、駅Aと駅Bとで進入の要求があったときにいずれを先に許可するかの設定である(図8では優先される方を○、優先されない方を×で表記)。いずれを優先するかは、要求を先に行うことを要件として、ゲート開閉要求情報記録プログラム222により決定される。
【0067】
詳細は後述するが、運行管理サーバ201の運行管理下では、原則として、軌道区間内に在線する車両の進行方向とこれから進入しようとする車両の進行方向とが逆であればその進入が抑止され、同じであれば進入は許可される。しかし、その原則を貫くと、断続的に同じ方向から進入する車両が続くと、逆方向から進入しようとする車両はいつまでも進入の許可が下りないこととなる。従って、軌道区間内に在線する車両と同じ進行方向の車両から進入の要求があった場合でも、既に逆方向の車両から進入の要求があった場合には、当該逆方向の車両の要求について優先の設定を行い、在線車両の退出後、運行管理サーバ201が逆方向の車両に優先的に進入を許可するようにしている。
【0068】
ここでは、軌道区間ABについてのデータについて説明したが、ゲート開閉要求情報231は他の全ての軌道区間について同様な情報を保持している。
【0069】
在線情報232には、例えば、図9に示すように、各軌道区間にその時点で在線しているデュアルモード車両の数232aとどちら向きに進行しているかという方向232bが記録される。即ち、在線情報232の車両の数232aは、進入ゲート1の通過回数と退出ゲート2の通過回数とから求められ、また、進行方向232bは両側の駅のいずれの進入ゲート1が開いたかにより求められる。つまり、在線情報232の車両の数232a及び在線情報232の方向232bのデータは各ゲート1,2の開閉により更新される。
【0070】
通信装置240は、地上に設置された各設備の間で通信を行う装置であり、有線又は無線で通信が行われる。例えば、有線であれば、専用線やVPN(Virtual Private Network)等が使用され、無線であれば、後述の無線通信装置250と同様の機器が使用される。なお、利用可能な既設の通信線の敷設状況や、無線通信の電波状況など、付近の環境に応じて有線と無線のどちらを選択しても良いし、混在させても良い。
【0071】
無線通信装置250は、無線通信回線を介して外部装置とデータ通信する手段である。例えば、携帯電話機網に接続してデータ通信することができる装置であって、パケット通信が可能な携帯電話機が好適である。その他、PHS端末や、FM無線機、衛星電話機などその他のカテゴリーの無線通信機であっても良い。運行管理サーバ201は、この無線通信装置250で携帯電話機網の無線基地局を介して車載装置101とデータ通信を行う。
【0072】
表示装置260は、運行管理サーバ201において、運行範囲内のいずれの区間に車両IDで特定されるいずれのデュアルモード車両100が在線するかを監視するための監視画面を表示するために使用される。具体的には、文字や画像を表示出力する手段、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)、ELD(Electronic Luminescent Display)、キャブシグナルなどによって実現される。
【0073】
(運行管理サーバ:ゲート開閉要求情報記録処理)
ここで、運行管理サーバ201における各プログラムの具体的な処理の流れについて説明する。
【0074】
まず、ゲート開閉要求情報記録プログラム222に基づく処理の流れについて説明する。ゲート開閉要求情報記録プログラム222は、処理装置210に読み出され実行されることで、図10のフローチャートに示すゲート開閉要求情報記録処理を処理装置210に行わせる。かかる処理は、進入カードリーダー3又は退出カードリーダー4にICカードの提示があると実行される。なお、ここでは例として、軌道区間ABについて行われる処理を例示するが、他の軌道区間に関してもそれぞれ同様の処理が実行されるものとする。
【0075】
軌道区間ABの両端に備えられているそれぞれの進入カードリーダー3及び退出カードリーダー4は、デュアルモード車両100の運転士によりICカードがかざされると、通信装置240を介して処理装置210にゲートの開閉要求を送信する。かかる開閉要求があるとゲート開閉要求情報記録プログラム222に基づく処理が実行される。
【0076】
処理装置210は、ゲートの開閉要求を受信する(ステップS1)と、その内容に応じて処理を分岐する。開閉要求が「駅A側の退出ゲート」からの要求であれば(ステップS2)、ゲート開閉要求情報231Aoに、その旨を記録し(ステップS3)、処理を終了する。開閉要求が「駅B側の退出ゲート」からの要求であれば(ステップS4)、ゲート開閉要求情報231Boに、その旨を記録し(ステップS5)、処理を終了する。
【0077】
開閉要求が「駅A側の進入ゲート」からの要求であれば(ステップS6)、ゲート開閉要求情報231Aiに、その旨を記録し(ステップS7)、ここで「駅B側の進入ゲート」の優先情報231Bpを読み出し、「駅B側の進入ゲート」が優先である旨が記録されていた場合(ステップS8;YES)は処理を終了する。「駅B側の進入ゲート」が優先である旨が記録されていない場合(ステップS8;NO)は、「駅A側の進入ゲート」が優先である旨を「駅A側の進入ゲート」の優先情報231Apに記録して(ステップS9)、処理を終了する。
【0078】
開閉要求が「駅B側の進入ゲート」からの要求であれば(ステップS10)、ゲート開閉要求情報231Biに、その旨を記録し(ステップS11)、ここで「駅A側の進入ゲート」の優先情報231Apを読み出し、「駅A側の進入ゲート」が優先である旨が記録されていた場合(ステップS12;YES)は処理を終了する。「駅A側の進入ゲート」が優先である旨が記録されていない場合(ステップS12;NO)は、「駅B側の進入ゲート」が優先である旨を「駅B側の進入ゲート」の優先情報231Bpに記録して(ステップS13)、処理を終了する。
【0079】
この処理を実行することによって、抑止通過決定プログラム221がどのゲートを開閉すべきか判断する材料としてのゲート開閉要求情報231を、軌道区間ABの各ゲートの開閉要求を用いて生成、保持することができる。
【0080】
(運行管理サーバ:抑止通過決定処理)
次いで、抑止通過決定プログラム221に基づく抑止通過決定処理の内容について説明する。抑止通過決定プログラム221は、処理装置210に読み出され実行されることで、図11のフローチャートに示す抑止通過決定処理を処理装置210に行わせる。かかる処理は、予め定められた周期で繰り返し実行される。なお、ここでは例として、軌道区間ABについて行われる処理を例示するが、他の軌道区間に関してもそれぞれ同様の処理が実行されるものとする。
【0081】
処理装置210は、ゲート開閉要求情報231を読み出し、駅A又は駅Bの退出ゲート2の開閉要求があるかどうかを確認する(ステップS21)。例えば、「駅A側の退出ゲート」の要求有無231Aoがある場合(ステップS21;YES)は退出ゲート2を開き(ステップS22)、在線情報232の軌道区間ABの数232aから1を減ずる(ステップS23)。その時、在線情報232の数232aがゼロになったかどうかを確認(ステップS24)し、ゼロの場合(ステップS24;YES)は在線情報232の方向232bを消去し(ステップS25)、「駅A側の退出ゲート」の要求有無231Aoを消去した(ステップS26)後、処理を終了する。ゼロでない場合(ステップS24;NO)、「駅A側の退出ゲート」の要求有無231Aoを消去し(ステップS26)、処理を終了する。「駅B側の退出ゲート」の要求有無231Boがあった場合も、ステップS22からステップS26と同様に実行する。
【0082】
また、駅A及び駅Bの退出ゲートの要求有無が記録されていない場合(ステップS21;NO)、処理装置210は、ゲート開閉要求情報231を読み出し、「駅A側の進入ゲート」の優先情報231Apが記録されているかを確認する(ステップS27)。「駅A側の進入ゲート」の優先情報231Apが記録されている場合(ステップS27;YES)は、在線情報232の軌道区間ABの数232aを読み出し、軌道区間ABに在線しているデュアルモード車両100の数を確認する(ステップS28:在線判断処理)。在線情報232の数232aがゼロの場合(ステップS28;NO)は、在線情報232の軌道区間ABにおける方向232bに進行方向が駅Aから駅Bに向かう方向である旨を記録した(ステップS35)後、次の処理(ステップS30)に進み、在線情報232の数232aが正数の場合(ステップS28;YES)は、在線情報232の方向232bを読み出し、その時点で軌道区間ABに在線しているデュアルモード車両100がどちら向きに走行しているかを確認する(ステップS29:進行方向判断処理)。進行方向が駅Aから駅Bに向かう方向の場合(ステップS29;YES)は、次の処理(ステップS30)に進み、逆方向の場合(ステップS29;NO)は、処理を終了する。
【0083】
引き続き、処理装置210は、在線情報232の数232aに1を足し(ステップS30)、「駅A側の進入ゲート」を開けるよう、通信装置240を介して指示を出し(ステップS31)、ゲート開閉要求情報231の要求有無231Ai及び優先情報231Apを消去する(ステップS32)。そして、この時、「駅B側の進入ゲート」の要求有無231Biがある場合(ステップS33;YES)は、「駅B側の進入ゲート」の優先情報231Bpを記録して(ステップS34)、処理を終了する。「駅B側の進入ゲート」の開閉要求231Biがない場合(ステップS33;NO)は、そのまま終了する。
【0084】
また、「駅A側の進入ゲート」の優先情報231Apが記録されていない場合(ステップS27;NO)は、処理装置210は、ゲート開閉要求情報231を読み出し、「駅B側の進入ゲート」の優先情報231Bpが記録されているかを確認する(ステップS36)。「駅B側の進入ゲート」の優先情報231Bpが記録されている場合(ステップS36;YES)は、在線情報232の軌道区間ABの数232aを読み出し、軌道区間ABに在線しているデュアルモード車両100の数を確認する(ステップS37:在線判断処理)。在線情報232の数232aがゼロの場合(ステップS37;NO)は、在線情報232の軌道区間ABにおける方向232bに進行方向が駅Bから駅Aに向かう方向である旨を記録した(ステップS44)後、次の処理(ステップS39)に進み、在線情報232の数232aが正数の場合(ステップS37;YES)は、在線情報232の方向232bを読み出し、その時点で軌道区間ABに在線しているデュアルモード車両100がどちら向きに走行しているかを確認する(ステップS38:進行方向判断処理)。進行方向が駅Bから駅Aに向かう方向の場合(ステップS38;YES)は、次の処理(ステップS39)に進み、逆方向の場合(ステップS38;NO)は、処理を終了する。
【0085】
引き続き、処理装置210は、在線情報232の数232aに1を足し(ステップS39)、「駅B側の進入ゲート」を開けるよう、通信装置240を介して指示を出し(ステップS40)、ゲート開閉要求情報231の要求有無231Bi及び優先情報231Bpを消去する(ステップS41)。そして、この時、「駅A側の進入ゲート」の要求有無231Aiがある場合(ステップS42;YES)は、「駅A側の進入ゲート」の優先情報231Apを記録して(ステップS43)、処理を終了する。「駅A側の進入ゲート」の開閉要求231Aiがない場合(ステップS42;NO)は、そのまま終了する。
【0086】
この処理を実行することによって、軌道区間ABにおける各ゲート1,2の開閉要求が来た場合に各ゲート1,2の抑止/通過を決定し、さらに、進入ゲート1の開閉要求が競合した場合においても、どちらの進入ゲート1を開くかを判断し、当該進入ゲート1に指示を出すことができる。
【0087】
(仮想閉塞区間の運行管理の概要)
次に、図12から図31を用いて、仮想閉塞区間を用いて一の軌道区間上を複数のデュアルモード車両100が同じ方向に走行する運行管理を実現するデュアルモード交通システム1000の備えるべき構成について説明することとする。前述したように、各軌道区間510を複数の仮想閉塞区間に分割することで、ある一の軌道区間510には複数のデュアルモード車両100が複数在線でき、かつ、当該軌道区間内に設定された一の仮想閉塞区間(例えば、仮想閉塞区間511)に二以上のデュアルモード車両100が在線できないよう運行が行われる。
【0088】
本実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000は、図12に示すように、駅Aと駅Bの間の軌道区間510を例えば4つの仮想閉塞区間511に分割している。なお、それぞれ仮想閉塞区間の境界に関する情報は、後述する各デュアルモード車両100に備えられた車載装置101の閉塞区間情報DB170に記憶されることで実現されており、地上には特別な設備を設置する必要はない。また、閉塞区間情報DB170に情報を登録することで、仮想閉塞区間を自由に設定することができるため、仮想閉塞区間の長さも、各軌道区間をいくつの仮想閉塞区間に分割するのかも比較的自由にかつ容易に設定でき、さらには、各仮想閉塞区間の区間長が均一である必要もない。ただし、後述のように、仮想閉塞区間の境界では車載装置101と運行管理サーバ201との間で無線通信をする必要があるため、各仮想閉塞区間の境界はトンネルやビル等の無線通信の妨げとなるものがない無線通信の可能な地点に設定する必要がある。
【0089】
(車載装置:全体構成)
以下では、図13から図25を用いて、仮想閉塞区間を適用した運行管理システムを構成する上で、前述のデュアルモード車両100に備えるべき車載装置101について述べる。
【0090】
デュアルモード車両100は、デュアルモード交通システム1000を実現するため、図13に示すように、車載装置101をさらに備えている。車載装置101は、処理装置110と、後述の各処理を行うプログラムを格納しているプログラム部120と、各プログラムが動作する際に扱うデータを随時格納する書き換え可能なメモリー上に準備されたデータ領域130と、各種情報を運転士などに提供する表示装置140と、自車の車両位置を測位する自車測位手段としてのGPS装置150と、運行管理サーバ201との間で通信を行う無線通信手段としての無線通信装置160と、後述する閉塞区間情報記憶手段としての閉塞区間情報DB170と、キロ程管理DB180と、を備えて構成されている。
【0091】
上記車載装置101の構成は、GPS装置150及び無線通信装置160を除き、処理装置110は、プログラムに従って種々の演算処理をするCPUやICメモリ、キーボードやマウスといった入力デバイス、外部装置とデータ送受するためのデータ通信端子及びディスプレイを備えている。例えば、コンピュータシステムなどが好例である。
【0092】
プログラム部120には、通信制御プログラム121、個別区間判定手段としての個別区間判定プログラム122、キロ程割出プログラム123及び区間在線情報表示プログラム124を格納している。
【0093】
通信制御プログラム121は、常に所定の周期で実行され、GPS装置150で測位した自車の車両位置(キロ程)を元に自車が通信エリア内にいるかどうかを確認し、通信エリア内に入っている事を検知した場合には、運行管理サーバ201へ後述する各種情報を送信し、折り返し送られてくる運行管理サーバ201からの情報を受信する、という処理を繰り返している。通信制御プログラム121の処理によって、車載装置101と運行管理サーバ201との間の無線通信は、図14のように、デュアルモード車両が通信エリアに入ることで開始され、各仮想閉塞区間511の境界の前後の所定距離範囲(例えば、境界の前後100m)に設定された通信エリア(例えば、通信エリア521:図12参照)で、所定の周期(例えば、0.5秒に1回)で繰り返し行われ、通信エリアから出ると終了することになる。
【0094】
個別区間判定プログラム122は、GPS装置150で測位した自車の車両位置を元に、閉塞区間情報DB170を参照することで、自車がその時点で在線している軌道区間及び閉塞区間を判別する処理を行う。
【0095】
区間在線情報表示プログラム124は、通信制御プログラム121の処理により運行管理サーバ201から取得される区間在線情報135に基くナビゲーション画面を表示装置140に表示させる処理を行う。
【0096】
キロ程割出プログラム123は、GPS装置150で測位した自車の車両位置(緯度・経度)を元に、キロ程管理DB180を参照することで、その時点での自車のキロ程を割り出す処理を行う。
【0097】
「キロ程」とは、予め設定された軌道上の基準位置を起点として、その起点から所定の地点までの軌道に沿った距離を表す。従来から鉄道システムでは、キロ程によって各地上設備の位置を管理している。
【0098】
データ領域130には、車両識別情報131、GPS装置150で測位し、緯度・経度で表された自車の車両位置である地球座標系座標を表す地球座標系座標情報132、地球座標系座標情報132を元にキロ程割出プログラム123により算出され、その時点で在線している路線のキロ程を表すキロ程情報133、キロ程情報133を元に個別区間判定プログラム122で求められ、その時点で在線している軌道区間と仮想閉塞区間の情報を表す個別区間情報134、運行管理サーバ201から受信する区間在線情報135、キロ程割出プログラム123が処理の途中で算出する現在地キロ程候補136が、随時読み出し及び書き換え可能な状態で記録されている。つまり、データ領域130は、車両固有の識別番号を記憶する識別番号記憶部としての機能を備えている。
【0099】
車両識別情報131は、図15に示すように、例えば、車両そのものに付された不変の自車両の車両番号131aと、車両の種類を示す車種カテゴリ131bと、運行されるダイヤに応じて割り当てられる番号である列車番号131cと、始発駅131dと、終着駅131eとを格納する。すなわち、車両識別情報131は、当該デュアルモード車両100の識別や属性を示す情報であって出発前に所定の操作によって予め設定される。なお、上記車両番号131a又は列車番号131cが車両固有の識別番号に相当する。
【0100】
区間在線情報135は、図16に示すように、自車が在線している軌道区間において、各仮想閉塞区間に複数のデュアルモード車両100がどのように在線しているかを、それぞれの仮想閉塞区間について1ビットで表現(当該仮想閉塞区間にデュアルモード車両100が在線している場合は”1”で、在線していない場合は”0”で表現する)したものを、当該軌道区間における仮想閉塞区間の数だけ連ねたもので、運行管理サーバ201から送信されてきたデータをそのままの形で格納する。
【0101】
現在地キロ程候補136は、現在地キロ程を割り出す過程で参照されるデータであり、地球座標系座標情報132をもとに設定された判定用範囲内に位置する標本点の単位キロデータを記憶する。
【0102】
表示装置140は、デュアルモード車両100の運転席に備えられ、運転士に対して現在の車両の状態や自車が在線している仮想閉塞区間の運行状況などを表示する装置であり、文字や画像を表示出力する手段、例えば、CRTやLCD、ELD、キャブシグナルなどによって実現される。表示装置140は、後述のように、デュアルモード車両100の車載装置101によって各車の在線状態を含んだ運行ナビゲーション情報が表示され、運行路線情報報知手段として機能する。
【0103】
GPS装置150は、GPS衛星からの電波を受信して車両の地球座標系座標(緯度・経度)を測位することによりその時点での車両の位置を認識する。GPS装置150は、図13に示すように、GPS衛星51を利用してデュアルモード車両100の車両位置を測位する測位手段として、GPS衛星から発せられる電波を受信するためのGPSアンテナ150bと、GPS受信機150aとを備える。必要に応じて、GPS衛星を単独で利用した場合よりも高精度な地球座標系座標を算出する事が可能なDGPS(ディファレンシャルGPS)や、RTK−GPS(リアルタイムキネマティック−GPS)といった測位方式を用いることができる。
【0104】
無線通信装置160は、無線通信回線を介して外部装置とデータ通信する手段であって、例えば、携帯電話機網に接続してデータ通信することができる装置であって、パケット通信が可能な携帯電話機が好適である。その他、PHS端末や、FM無線機、衛星電話機などその他のカテゴリーの無線通信機であっても良い。車載装置101は、この無線通信装置160で携帯電話機網の無線基地局を介して運行管理サーバ201とデータ通信を行う。
【0105】
閉塞区間情報DB170は、図17に示すように、軌道区間内の各仮想閉塞区間に割り当てられた番号を「キロ程」や地球座標系座標に対応づけて格納するデータベースであり、例えば、仮想閉塞区間を識別するための仮想閉塞区間ID170aと、当該仮想閉塞区間の始点の地球座標系座標170bと、当該仮想閉塞区間の始点のキロ程170cと、当該仮想閉塞区間が属している軌道区間の通し番号170dと、属する軌道区間内における当該仮想閉塞区間の通し番号170eとを対応付けて格納している。ここで、地球座標系座標170b、キロ程170cが各仮想閉塞区間の位置範囲情報に該当する。
【0106】
キロ程管理DB180は、走行線区内の各標本点のキロ程とその地球座標系の絶対位置(緯度・経度)との対応関係を定義したデータベースである。図18に、キロ程管理DB180のデータ構成例を示す。本実施形態では、標本点は軌道rに沿って単位距離間隔(例えば1m間隔)で設定される。キロ程管理DB180は、この標本点の通し番号であって、例えば該当線区の始発位置から順に終着位置まで割り振られるインデックスと対応付けて、キロ程とその地球座標系の絶対位置(緯度・経度)とを格納する。キロ程は、一部区間で値が不連続であったり重複していたりするが、インデックスと単位距離間隔とから、始発位置から所望のキロ程までの実際の距離を算出することが可能である。尚、以下の説明において、1つの標本点に係るデータである1レコード分のデータを「標本点データ」と言う。
【0107】
これらのデータベース、閉塞区間情報DB170、キロ程管理DB180は、車載装置101に内蔵或いはデータ通信端子で接続されたハードディスクや、CD−ROM等の情報記憶媒体及びその読取装置などによって実現される。
【0108】
(車載装置:通信制御処理)
ここで、車載装置101における各プログラムの具体的な処理の流れについて説明する。
【0109】
まず、通信制御プログラム121に基づく処理の流れについて説明する。通信制御プログラム121は、処理装置110に読み出され実行されることで、図19のフローチャートに示す通信制御処理を処理装置210に行わせる。かかる処理は、予め定められた周期で繰り返し実行される。
【0110】
処理装置110は、後述のキロ程割出プログラム123の処理によって、自車のその時点での地球座標系座標及びキロ程を算出し、データ領域130内の地球座標系座標情報132及びキロ程情報133に格納する(ステップS61)。次いで、キロ程情報133を元に、閉塞区間情報DB170を参照し、次に通過する仮想閉塞区間の境界のキロ程を求め(ステップS62)、自車が当該境界の前後の所定距離範囲に設定された通信エリアに入っているかどうかを確認する(ステップS63)。入っていない場合(ステップS63;NO)は処理を終了し、入っている場合(ステップS63;YES)は、引き続き、後述の個別区間判定プログラム122の処理を行う(ステップS64)。次いで、その処理によって求められた個別区間情報134を自車の識別ID(例えば、車両識別情報131の車両番号131a又は列車番号131c)と共に運行管理サーバ201へ送信する(ステップS65)。そして、運行管理サーバ201で処理されて返信される情報を受信し区間在線情報135へ格納して(ステップS66)、処理を終了する。
【0111】
(車載装置:個別区間判定処理)
次いで、個別区間判定プログラム122に基づく処理の流れについて説明する。個別区間判定プログラム122は、処理装置110に読み出され実行されることで、図20のフローチャートに示す個別区間判定処理を処理装置210に行わせる。かかる処理は、通信制御プログラム121に呼び出されることで、随時実行される。
【0112】
処理装置110は、後述のキロ程割出プログラム123の処理によって、自車のその時点での地球座標系座標及びキロ程を算出し、データ領域130内の地球座標系座標情報132及びキロ程情報133に格納する(ステップS81)。次いで、キロ程情報133を元に閉塞区間情報DB170を参照し、その時点で自車が在線している軌道区間番号170d及び閉塞区間番号170eを求める(ステップS82)。そして、それを個別区間情報134に格納して(ステップS83)、処理を終了する。
【0113】
(車載装置:キロ程割出処理)
次いで、キロ程割出プログラム123に基づく処理の流れについて説明する。キロ程割出プログラム123は、処理装置110に読み出され実行されることで、図21のフローチャートに示すキロ程割出処理を処理装置210に行わせる。かかる処理は、通信制御プログラム121又は個別区間判定プログラム122に呼び出されることで、随時実行される。
【0114】
キロ程割出処理では、処理装置110は、まずGPS衛星51からの電波を受信し、自車両の絶対位置(緯度・経度)を測位する(ステップS101)。測位した絶対位置は、地球座標系座標情報132に格納される。
【0115】
次いで、処理装置110は、地球座標系座標情報132をもとに判定用範囲を設定する(ステップS102)。本実施形態では、図22に示すように、地球座標系座標情報132を中心とした例えば10m四方の矩形領域を判定用範囲A1とする。なお、判定用範囲は、図23に示すように、自車両の進行方向に沿って判定用範囲A10の向きを可変することとしてもよいし、図24に示すように、地球座標系座標情報132を中心とした円形の領域の判定用範囲A20としてもよいし、図25に示すように、予め軌道rに沿って複数の判定用範囲を設定しておき、自車両の走行位置に基づいて判定用範囲A30を選択することとしてもよい。
【0116】
そして、処理装置110は、キロ程管理DB180を参照し、設定した判定用範囲内に位置する絶対位置が設定された標本点データを抽出する(ステップS103)。抽出した標本点データは、現在地キロ程候補136に格納される。
【0117】
そして、処理装置110は、抽出した各標本点データの中から、地球座標系座標情報132との距離が所定の距離条件を満足する絶対位置が設定された標本点データを選出して、走行位置をキロ程で表した現在地のキロ程を割り出す。
【0118】
すなわち、先ず、処理装置110は、地球座標系座標情報132とステップS103で現在地キロ程候補136として抽出した各標本点データとの距離をそれぞれ算出し(ステップS104)、地球座標系座標情報132との距離が最も近い絶対位置が設定された標本点データを選出する(ステップS105)。
【0119】
そして、地球座標系座標情報132とステップS105で選出した標本点データの絶対位置との距離が所定の閾値以下ならば(ステップS106:NO)、処理装置110は、当該標本点データのキロ程をキロ程情報133に格納し、自車両の現在地キロ程を割り出す(ステップS107)。一方、閾値より大きいと判定した(ステップS106:YES)場合には、ステップS101に戻って上記した処理を再度実行する。
【0120】
以上説明したように、本実施形態によれば、予め軌道rに沿って所定の単位距離間隔で標本点を定め、当該標本点のキロ程とその地球座標系の絶対位置(緯度・経度)との対応関係をそれぞれ定義しておく。自車両の現在地キロ程を割り出すときには、自車両の地球座標系の絶対位置である走行位置に基づいて判定用範囲を設定する。そして、設定した判定用範囲内に位置する標本点を照査の対象として地球座標系で取得した車両の走行位置との距離が最も近い標本点を選出し、選出した標本点のキロ程に基づいて自車両の現在地キロ程を割り出すことができる。したがって、自車両の現在の走行位置をキロ程で表した現在地キロ程を容易に割り出すことができる。
【0121】
また、デュアルモード車両100が軌道上を走行している間は、軌道区間510に進入する時点におけるキロ程を保持し、例えば後方案内輪106等のスリップが発生しづらい車輪に設けられた図示されていない回転計(ロータリーポテンショメーター)の測定値から算出した走行距離を進行方向に応じて加算又は減算することにより、別系統でキロ程を算出し、GPSによるキロ程の割り出しを補完する目的に使用しても良い。このように、別系統で求め比較することにより、異常の発生を即座に検知し、再度GPS衛星からの電波を受信するなどの対策をとることができる。なお、比較をする際には、キロ程の値として比較しても、キロ程管理DB180を用いてキロ程を地球座標系座標に変換してから比較しても構わない。
【0122】
(運行管理サーバ:仮想閉塞区間を適用した運行管理に関する構成)
以下では、図7、図26から図31を用いて、仮想閉塞区間を適用した運行管理システムを構成する上で、前述の運行管理サーバ201が備えるべき装置について述べる。
【0123】
運行管理サーバ201は、図7に示すように、プログラム部220に区間在線情報生成手段としての区間在線情報生成プログラム223及び無線通信制御プログラム224をさらに備え、データ領域230に各デュアルモード車両100から送信されてきた個別区間情報からなる全車両分の個別区間情報233及び全軌道区間分の区間在線情報234をさらに備え、各デュアルモード車両100との間でデータの送受信を行う無線通信装置250をさらに備えている。つまり、データ領域230は、個別区間情報を記憶する個別区間情報記憶手段としての機能を備えている。
【0124】
無線通信制御プログラム224は、デュアルモード車両100から個別区間情報134が送られてきた際に随時受信して各車を識別し、対応する個別区間情報233に記録する。その後、区間在線情報生成プログラム223に処理を渡し、その処理の終了を待って区間在線情報234を各デュアルモード車両に送信する。
【0125】
区間在線情報生成プログラム223は、無線通信制御プログラム224から呼び出され、個別区間情報233を加工し、一つの軌道区間内の各仮想閉塞区間の在線状態を示す区間在線情報234を生成する。
【0126】
個別区間情報233は、図26に示すように、各デュアルモード車両から送られてきた各車の識別IDを元に識別し、併せて送られてきた個別区間情報を格納する。
【0127】
区間在線情報234は、図27に示すように、後述の区間在線情報生成プログラム223によって生成されるデータで、本発明におけるデュアルモード交通システム1000内に存在する全ての軌道区間について、各軌道区間に存在する全てのデュアルモード車両の在線状態を、各仮想閉塞区間毎に1ビットで表したデータである。
【0128】
(運行管理サーバ:区間在線情報生成処理)
ここで、個別区間情報134を受信した運行管理サーバ201における各プログラムの具体的な処理の流れについて説明する。
【0129】
まず、区間在線情報生成プログラム223に基づく処理の流れについて説明する。区間在線情報生成プログラム223は、処理装置210に読み出され実行されることで、図28のフローチャートに示す区間在線情報生成処理を処理装置210に行わせる。かかる処理は、無線通信制御プログラム224に呼び出されることで、随時実行される。なお、ここでは例として、軌道区間ABについて行われる処理を例示するが、他の軌道区間に関してもそれぞれ同様の処理が実行されるものとする。
【0130】
処理装置210は、まず、軌道区間ABの区間在線情報234の全ビットを”0”にする(ステップS121)。次いで、個別区間情報233を参照し、在線している軌道区間233aが「AB間」であるデュアルモード車両を選出し、選出されたデュアルモード車両が在線している仮想閉塞区間233bを全て求める(ステップS122)。その仮想閉塞区間番号に応じた各ビットを”1”にセットしたデータを作成する(ステップS123)。例えば、デュアルモード車両が在線している仮想閉塞区間が第3仮想閉塞区間及び第5仮想閉塞区間であれば、そのデータは”0010100・・・”となる。そのデータを区間在線情報234に格納する(ステップS124)。こうして生成された区間在線情報234は、軌道区間AB内の各ビットに対応する仮想閉塞区間にそれぞれ、その時点でデュアルモード車両が在線していることを表す。
【0131】
(運行管理サーバ:無線通信制御処理)
次いで、無線通信制御プログラム224に基づく処理の流れについて説明する。無線通信制御プログラム224は、処理装置210に読み出され実行されることで、図29のフローチャートに示す無線通信制御処理を処理装置210に行わせる。かかる処理は、いずれかのデュアルモード車両100から個別区間情報134を受信すると実行される。
【0132】
処理装置210は、各デュアルモード車両の車載装置101から無線通信装置250を介して個別区間情報等を受信する(ステップS141)と、受信したデータを、各車の識別IDを元に個別区間情報233の該当する軌道区間233a及び仮想閉塞区間233bに格納する。その後、区間在線情報生成プログラム223を呼び出し、個別区間情報等を送信してきたデュアルモード車両がいる軌道区間における区間在線情報234を個別区間情報233から生成する(ステップS142)。次いで、生成した区間在線情報234を、個別区間情報等を送信してきたデュアルモード車両がいる軌道区間に在線している全てのデュアルモード車両に送信して(ステップS143)、処理を終了する。
【0133】
(運行管理サーバ:在線監視処理)
次いで、在線監視プログラム225に基づく処理について説明する。在線監視プログラム225は、処理装置210に読み出され実行されることで、在線監視処理を処理装置210に行わせる。かかる処理は、いずれかのデュアルモード車両100から個別区間情報134を受信すると実行される。
【0134】
処理装置210は、前述したように、いずれかのデュアルモード車両100から個別区間情報を受信して全車両の個別区間情報を記録した個別区間情報233(図26参照)が更新されると、当該個別区間情報233をデータ領域230から読み出し、全デュアルモード車両100がそれぞれ全軌道区間内の全仮想閉塞区間のいずれに在線するかを示す在線監視画面データを生成し、表示装置260に表示させる制御を行う。
【0135】
図30は在線監視画面データに基づく在線監視画面の表示例を示す説明図である。かかる在線監視画面では、各駅に対応する駅アイコンSと、各駅間の軌道区間内に設定された仮想閉塞区間の各々に対応する仮想閉塞区間アイコンCと、デュアルモード車両100を示す車両アイコンDとが表示される。そして、各仮想閉塞区間アイコンCには対応する仮想閉塞区間に在線するデュアルモード車両100が存在する場合に、そのアイコンの表示色が在線を示す所定の色彩に変化すると共に内部には在線車両の識別IDの表示が行われる。また、在線情報232(図9参照)等を参照することで当該仮想閉塞区間におけるデュアルモード車両100の進行方向が判別可能な場合は、車両アイコンDを、デュアルモード車両100が在線する仮想閉塞区間アイコンCの上に、当該デュアルモード車両100の進行方向に応じた方向に向けて表示しても良い。
【0136】
上記在線監視画面の表示を行うために、処理装置210は、まず、実際の駅とその間の軌道区間内に設定された仮想閉塞区間に対応するように駅アイコンSと仮想閉塞区間アイコンCのレイアウトを行う。
【0137】
そして、処理装置210は、個別区間情報233を参照し、運行路線に存在する各デュアルモード車両100がいずれの仮想閉塞区間に在線するかを判定し、在線する仮想閉塞区間に対応する仮想閉塞区間アイコンCの内部に各車両の各車識別IDを表示すると共に在線を示す表示色に切り替える。さらに、各軌道区間内に在線するデュアルモード車両100の車両アイコンDを、在線する仮想閉塞区間アイコンCの上に表示する。
【0138】
上記処理はいずれかのデュアルモード車両100から個別区間情報を受信して個別区間情報233が更新されるたびに行われるため、リアルタイムに各デュアルモード車両100の仮想閉塞区間の位置変化を在線監視画像に反映して表示することができる。
【0139】
さらに、上記処理で生成した在線監視画面データ、又は、在線監視画面を生成する際に必要なデータを通信装置240を介して送信し、例えば各駅や社内の各事務所などに別途設置された表示装置(コンピュータ等)において受信して表示することもできる。
【0140】
(車載装置:区間在線情報表示処理)
再び、車載装置101で行われる処理ついて説明する。運行管理サーバ201から区間在線情報135を無線通信装置160により受信すると、処理装置110は、プログラム部120から区間在線情報表示プログラム124を読み込んで区間在線情報表示処理を実行する。
【0141】
この区間在線情報表示処理は、前述した通信制御プログラム121の処理により区間在線情報135が受信されデータ領域130に格納されると(図31(a))、走行パターン138のデータを生成する(図31(b))。
【0142】
図31(a)に示すように、区間在線情報135は、軌道区間内の各仮想閉塞区間について当該仮想閉塞区間の並び順で、デュアルモード車両100が在線していなければ「0」、在線していれば「1」を羅列した仮想閉塞区間の区間数ビット分のデータである。
【0143】
一方、走行パターン138とは、自己の車両が在線する仮想閉塞区間と、自己の車両の前方直近の車両が在線する仮想閉塞区間から前方の区間とを「1」、それ以外を「0」として軌道区間内の各仮想閉塞区間について当該仮想閉塞区間の並び順で羅列した仮想閉塞区間の区間数ビット分のデータである。
【0144】
走行パターン138の生成にあっては、データ領域130に記憶されている個別区間情報134から、軌道区間内の各仮想閉塞区間について当該仮想閉塞区間の並び順で、自己の車両が在線する区間を「1」、それ以外は「0」を羅列した自車位置情報134aを生成する(図31(a)参照)。
【0145】
そして、自車位置情報134aにより区間在線情報135に含まれる複数の「1」の中から自己車両を特定し、自己車両の前方で直近の「1」を特定する。さらに、自己車両の前方直近の「1」より前方の仮想閉塞区間については全て「1」に変換することで走行パターン138が生成される。
【0146】
走行パターン138が生成されると、これに基づいて色彩表示パターン139が生成される(図31(c))。
【0147】
色彩表示パターン139とは、「0」、「1」の羅列データからなる走行パターン138を各種の色彩により区分して表示装置140で表示させるためのデータである。色彩の区分としては、前方直近の車両が在線する仮想閉塞区間から前の仮想閉塞区間は進入を禁ずる赤色に区分し、赤色の一つ手前の仮想閉塞区間を当該仮想閉塞区間の終端での停止を通告する黄色に区分し、自己車両の在線する仮想閉塞区間から黄色の一つ手前の仮想閉塞区間までを緑色に区分し、自己車両よりも後方の仮想閉塞区間を無着色或いは灰色に区分する。
【0148】
色彩表示パターン139が生成されると、処理装置110は、当該色彩表示パターン139の色彩区分に基づくゲージ表示の画像データを生成してナビゲーション画面の一部に組み込み、表示装置140に表示させる表示制御を実行する。また、このとき、処理装置110は、走行パターン138を参照して、ナビゲーション画面のゲージ表示における自己の車両とその前方直近の車両の在線する仮想閉塞区間の上にそれぞれ異なる色彩の逆三角形の自車表示と近接前方車両表示とを行うように表示制御を実行する(図31(d))。
【0149】
(デュアルモード交通システムの効果)
以上のように、デュアルモード交通システム1000は、各駅間の各々の軌道区間510において、その両側に進入ゲート1を設け、各カードリーダー3から進入の要求があると、軌道区間内に対向方向に進行する車両の存在を確認し、存在しない場合にゲートを開いて進入を許可する運行管理を行っている。このため、軌道区間510が単線であっても、双方向のデュアルモード車両100の運行を適切に行うことが可能となる。
【0150】
また、デュアルモード交通システム1000は、進入カードリーダー3及び退出カードリーダー4を軌道区間の両側に設け、各デュアルモード車両ごとに固有のIDを有するICカードの提示を求めるという進入又は退出要求の入力行為を要するため、前記デュアルモード車両100が前記軌道区間への進入要求を入力するまで進入ゲート1及び退出ゲート2を抑止状態に保つことができ、許可のない車両の進入、許可を受けずに退出、等を防止することができる。
【0151】
また、デュアルモード交通システム1000は、運行管理サーバ201によって、軌道区間内にデュアルモード車両100が在線する場合であっても、当該デュアルモード車両100と進行方向を等しくするデュアルモード車両100の進入要求に対しては軌道区間内の進入を許可する運行を行っていることから、一定方向について密にデュアルモード車両の運行が行われている場合であっても、渋滞の発生を緩和することを可能とする。
【0152】
また、デュアルモード交通システム1000は、各デュアルモード車両100の車載装置101が自車位置を測位して、在線する仮想閉塞区間を判定すると共に運行管理サーバ201に送信し、運行管理サーバ201はその個別区間情報233を元に各軌道区間の仮想閉塞区間ごとの在線の有無を示す区間在線情報234を生成して配信するので、軌道回路などの地上設備を設けることなく、設備コストの低減を図りつつ、同方向に進行する複数車両の的確な運行を行うことが可能となる。
【0153】
また、軌道区間内に在線する全てのデュアルモード車両100を把握するために運行管理サーバ201と各デュアルモード車両100との間で無線通信により送受される区間在線情報135,234は、各仮想閉塞区間について在線の有無を「0」、「1」で示しているので、送受信されるデータ量の低減を図ることができ、軌道区間内に山岳地帯やトンネルなどの無線通信が不能になる区間が多く存在する場合でも、通信データ量を低減して通信トラフィックを極力削減しつつ、円滑な運行管理することが可能となる。
【0154】
また、運行管理サーバ201は、各ゲート1,2の開閉状況により軌道区間510にデュアルモード車両100が在線しているかを判断できるので、軌道区間内に車両を検知するための手段を用意する必要がなく、設備コストの低減を図ることが可能となる。
【0155】
また、車載装置101は、区間在線情報表示プログラム124により、表示装置140において、最近接車両の在線する仮想閉塞区間の二つ手前までの仮想閉塞区間と、その次の仮想閉塞区間と、最近接車両の在線する仮想閉塞区間から前とをそれぞれ異なる色彩で表示するナビゲーション画面の表示が行われるので、自車の在線している軌道区間おいて、どの仮想閉塞にデュアルモード車両がどのように在線しているかを迅速に確認することができる。
【0156】
また、運行管理サーバ201は、複数の軌道区間AB,BC,CDについて運行管理を行っているので、これらを一括して管理することができ、より柔軟性の高いデュアルモード交通システムを構築することができる。
【0157】
また、運行管理サーバ201は、在線監視プログラム225により、どのデュアルモード車両100が、どの軌道区間の、何番目の仮想閉塞区間に在線しているかを、運行管理サーバ201の表示装置260においてリアルタイムで表示することができる。
【0158】
また、運行管理サーバ201と各ゲート1,2、カードリーダー3,4との間を有線の通信装置240を用いて接続することで安定した高速の通信をすることが可能であり、場合によっては通信事業者が提供している既設の通信線を利用することも可能である。
【0159】
一方、運行管理サーバ201と各デュアルモード車両100との間を無線通信装置250,160で接続することで、既設の通信線を不要とし、新たに通信線を敷設する事が難しい遠隔地の場合などでも、柔軟に通信手段を確保することが可能である。
【0160】
(その他)
なお、デュアルモード車両100は、駅等において、軌道から道路へ、道路から軌道へと走行モードを変換することができるので、図12に示すように、道路上にも運転経路610が設定され、その経路に従って、上述の仮想閉塞区間と同様な概念を適用して複数の路上走行区間611を定めることができる。これらの路上走行区間611でも前述の各仮想閉塞区間511の場合と同じように、デュアルモード車両100はGPS装置150により自車の車両位置を求め、自車の路上走行区間611を特定して運行管理サーバ201に送信することができるため、運行管理サーバ201は道路上の運転経路610における各デュアルモード車両100の運行状態を把握することが可能である。その際、無線通信も仮想閉塞区間511と同様に、各路上走行区間611の境界の前後の所定距離範囲(例えば、境界の前後100m)に設定された通信エリア(例えば、通信エリア621:図12参照)で、所定の周期(例えば、0.5秒に1回)で行われるため、各路上走行区間の境界はトンネルやビル等の無線通信の妨げとなるものがない無線通信に好適な場所に設定される。また、仮想閉塞区間と同様に、区間長も均一である必要はない。
【0161】
なお、道路上の運転経路610についても、運行管理サーバ201では、在線監視画面の生成及び表示を行って監視を行い、車載装置101では、ナビゲーション画面の生成及び表示を行うことが望ましい。
【0162】
なお、GPS装置150で測位した自車の車両位置を、無線通信の際に個別区間情報と同時に運行管理サーバ201に送信するようにすることで、デュアルモード車両100が運転経路610を離れて想定外の道路を走行した場合でも、当該デュアルモード車両100の位置を運行管理サーバ201で把握することができる。
【0163】
なお、バスのように一般道路上を運行する路線では、状況に応じて、軌道区間を退出した場所に戻って再度そこから軌道区間に進入するよう設定しても良いし、始めに進入した場所に戻って再度そこから軌道区間に進入するよう設定しても良い。これによって、道路600と軌道500を自在に行き来するデュアルモード交通システム1000が実現できる。
【0164】
なお、運行管理サーバ201は、各軌道区間内への進入の許可と抑止を行う運行における軌道区間内の在線判断を各ゲート1,2の開閉状況から判断する構成としているが、これに限らず他の方法から在線判断を行っても良い。例えば、区間在線情報234を読み出し、該当する軌道区間内の各仮想閉塞区間の在線の有無を判断しても良い。また、在線判断に伴う進行方向の判断は、ゲート1,2の開閉状況から判断しても良いし、予め、各デュアルモード車両のダイヤグラム情報が設定されている場合には、各デュアルモード車両のIDから運行予定を読み出して進行方向を判断しても良い。
【0165】
なお、各軌道区間内への進入の許可と抑止を行う運行において、軌道区間510に対して進入又は退出しようとするデュアルモード車両100を検出する方法はカードリーダー3,4に限らず、運転者が他の入力操作を行う方法や、ゲート1,2の前にいるデュアルモード車両100の存在そのものを検知するセンサを設けるなどの他の方法を採用しても良い。
【0166】
また、軌道区間からの退出については、ゲートを使用せずに別な方法で退出車両の検出を行うか、退出する車両からを通信などで退出すること自ら伝えることにより、ゲート等によって退出車両を一時停止させない方法を採用しても良い。
【0167】
[第2の実施の形態]
次に、図32から図39を用いて、本発明における第2の実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000Aの構成について説明する。なお、第1の実施の形態と重複する構成については、第1の実施の形態と同一の符号を付し、説明を省略することとする。
【0168】
本実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000Aは、図32に示すように、複数のデュアルモード車両100と、単線の軌道500の随所に設置された駅A’、駅B’及び駅C’と、軌道区間A’B’及び軌道区間B’C’と、各軌道区間毎に進入退出を制御するゲート制御装置401と、各軌道区間を含む運行範囲において運行管理を行う地上装置としての運行管理センター200Aに設けられた運行管理サーバ201A及び各デュアルモード車両100に設けられた車載装置101とを備え、各デュアルモード車両100の適正な運行管理を行うためのシステムである。
【0169】
(デュアルモード車両)
デュアルモード車両100の車体の構成、及び、走行モード変換用構造体10については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0170】
(運行管理の概要)
本実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000Aにおいては、各軌道区間A’B’、軌道区間B’C’において、概ね以下のような運行管理が行われる。
【0171】
本実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000Aにあっては、各軌道区間内に在線するデュアルモード車両100の進行方向が一律等しくなるように、各軌道区間内への進入の抑止を行う。即ち、各駅からデュアルモード車両100が軌道500に進入することが可能であり、各駅には、進入退出ゲート301及びリモコン受信器303が設けられている。そして、デュアルモード車両100は進入退出ゲート301の手前に停止して、デュアルモード車両100に搭載されたリモコンのスイッチを押すことにより軌道区間への進入要求を送信する。リモコン受信器303は進入要求を受信し、その時点で当該軌道区間上に他のデュアルモード車両100が在線していない場合には進入退出ゲート301が開かれる。在線している場合は進入退出ゲート301は閉じたままで、在線していたデュアルモード車両100が当該軌道区間から退出した後、進入退出ゲート301が開かれる。
【0172】
また、デュアルモード車両100は、各駅において軌道区間から退出することが可能で、当該軌道区間の終端でデュアルモード車両100に搭載されたリモコンのスイッチを押すことにより軌道区間からの退出要求を送信する。リモコン受信器303は退出要求を受信し、進入退出ゲート301を開き、デュアルモード車両100は軌道区間から退出して一般道路600へ向かう。道路600上では路線バスと同様に、交通ルールに従い、所定の路線に従って運行する。
【0173】
本実施の形態において、上記の制御は、各軌道区間毎に一つずつ設けられたゲート制御装置401によって行われる。ゲート制御装置401は、対向して走行するデュアルモード車両100が軌道区間上に在線していない場合のみ、進入を許可する進入退出ゲート301を上げるように制御を行う。ただし、他のデュアルモード車両100が在線していても、同方向に進行していれば進入を許可しても良い。
【0174】
このように、進入退出ゲート301の制御を運行管理サーバ201Aから独立させ、各軌道区間毎に分散して設置されたゲート制御装置401が制御することにより、運行管理サーバ201A又は通信系統に異常が発生した場合でも進入退出ゲート301の制御を続けることができ、各ゲート制御装置401の何れかにおいて異常が発生した場合でも、他の軌道区間に与える影響を最小限に抑えることができる。
【0175】
さらに、本実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000Aにおいても、第1の実施の形態と同様に、軌道区間を複数の区間に分割した仮想閉塞区間を導入する。仮想閉塞区間における制御は運行管理サーバ201Aが行う。
【0176】
仮想閉塞区間における運行システムの動作は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0177】
(各種の地上設備)
以下では、図32から図38を用いて、運行管理システムを構成する上で、前述のデュアルモード交通システム1000Aが備える地上設備について述べる。
【0178】
駅A’(駅C’)は、図33に示すように、停車領域7と、停車領域7から軌道区間A’B’(B’C’)への進入の許可及び抑止を行い、軌道区間A’B’(B’C’)から退出し停車領域7に入る際に通過する、進入抑止手段及び退出抑止手段としての進入退出ゲート301と、モードインターチェンジ部10と、デュアルモード車両100が停車して乗客の乗降を行う地点を表す二つの停車標5(バス停)と、を備えており、停車領域7を介してデュアルモード車両100が軌道500と道路600を相互に乗り入れ可能に接続されている。
【0179】
駅B’は、図34に示すように、対向するデュアルモード車両100が行き違うことができるよう設けられた停車領域7と、停車領域7に設けられた双方の運行方向に対応する二つの停車標5と、軌道区間A’B’と停車領域7との進入退出の際に通過する進入退出ゲート301と、停車領域7と軌道区間C’D’との進入退出の際に通過する進入退出ゲート301と、軌道区間C’D’に進入する際に使用するモードインターチェンジ部10と、軌道区間A’B’に進入する際に使用するモードインターチェンジ部10と、を備えている。また、停車領域7は、道路600に相互に乗り入れ可能に接続されていても良い。
【0180】
さらに、駅A’,B’,C’のいずれについても、それぞれの進入退出ゲート301には、進入要求手段(進入車両検出手段)及び退出要求手段(退出車両検出手段)としてのリモコン受信器303と、停車領域から軌道区間への進入が可能であるか不可能であるかを常時表示する信号灯305と、進入退出ゲート301の外側の地面に設置され、ゲートに接近した車両を検知する外方ループコイル311と、同様にゲートの内側の地面に設置された内方ループコイル312と、が設けられている。
【0181】
外方ループコイル311及び内方ループコイル312において、接近した車両を検知することで、進入要求又は退出要求を受けた際に、リモコン受信器303又はゲート制御装置401は、それが進入要求であるか、退出要求であるかを判断することができる。なお、各ループコイル311,312は接近した車両を検知することが可能であれば、地面に設置されていなくとも良いし、コイル以外のセンサを用いても良い。
【0182】
また、各リモコン受信器303は、各デュアルモード車両100に搭載されたリモコンからゲートの開閉要求を受け取ると、受信した情報に含まれるリモコン固有のIDを予め登録されているIDと比較し、一致した場合に限り進入又は退出の要求があったことをゲート制御装置401に送信し、ゲート制御装置401によって進入又は退出の許可の判断が行われる。これにより、IDが登録されたリモコンからの要求がない限り各軌道区間内に進入することができず、デュアルモード交通システム1000Aに無関係な車両の進入を防止することができる。ここで行われるデュアルモード車両100とリモコン受信器303との間の通信は、電波のみならず、赤外線や接触/非接触ICカード等、固有のIDを送受信できるものであれば、どのような形式を用いても良く、IDの登録及びチェックはゲート制御装置401において行っても良く、また、ゲートの前で必ずしも停止する必要はなく、徐行して通過する形式でも良い。
【0183】
(ゲート制御装置:全体構成)
ゲート制御装置401は、各軌道区間毎に一つずつ設置され、当該軌道区間の両端に設置された進入退出ゲート301を制御して、各デュアルモード車両100の当該軌道区間への進入及び抑止の制御を行っている。
【0184】
ゲート制御装置401は、図35に示すように、処理装置410と、後述の各処理を行うプログラムを格納しているプログラム部420と、各プログラムが動作する際に扱うデータを随時格納する書き換え可能なメモリー上に準備されたデータ領域430と、運行管理サーバ201A、各進入退出ゲート301、各リモコン受信器303、信号灯305、外方ループコイル311及び内方ループコイル312との通信を行う通信装置240とを備えている。例えば、上記処理装置410はCPU、プログラム部420はROM、データ領域430はRAMにより構成される。
【0185】
プログラム部420には、進入ゲート制御プログラム421、退出ゲート制御プログラム422を格納している。進入ゲート制御プログラム421及び退出ゲート制御プログラム422は、処理装置410に読み出され実行されることにより、協働して抑止通過決定手段として機能する。
【0186】
データ領域430には、ゲートAロック情報431、ゲートBロック情報432、在線車両IDリスト情報433が、随時読み出し及び書き換え可能な状態で記録されている。
【0187】
ゲートAロック情報431及びゲートBロック情報432は、それぞれのゲートからデュアルモード車両100が進入可能か不可能かを表す情報であって、これに併せて信号灯305も「緑」/「赤」を切替え、ゲートの開閉動作が制約されることとなる。
【0188】
在線車両IDリスト情報433には、図36に示すように、当該軌道区間に車両が進入を要求する際にリモコンから送信したIDが進入した順番と関連づけられて順次記録され、当該軌道区間から退出する際に削除される。また、削除の際には、進入した順番は繰り上げられるようになっている。
【0189】
(ゲート制御装置:進入ゲート制御処理、退出ゲート制御処理)
ここで、ゲート制御装置401における各プログラムの具体的な処理の流れについて説明する。
【0190】
まず、進入ゲート制御プログラム421に基づく処理の流れについて説明する。進入ゲート制御プログラム421は、処理装置410に読み出され実行されることで、図37のフローチャートに示す進入ゲート制御処理を処理装置410に行わせる。かかる処理は、軌道区間への進入要求があると実行される。なお、ここでは例として、軌道区間A’B’を担当するゲート制御装置401により、駅A’側から進入要求があった場合について行われる処理を例示するが、駅B’側から進入要求があった場合についても同様の処理が、また、他の軌道区間を担当するゲート制御装置401についても、同様の処理が実行されるものとする。
【0191】
ゲート制御装置401の処理装置410は、リモコン受信器303を経由して、駅A’側の進入退出ゲート301の外側で待機しているデュアルモード車両100からの軌道区間A’B’への進入要求を受け取ると、進入ゲート制御プログラム421に基づく処理を実行する。
【0192】
処理装置410は、進入要求を受けた駅A’側のリモコン受信器303から当該デュアルモード車両100のIDを受信する(ステップS161)。次いで、処理装置410は、ゲートAロック情報431を読み出し、駅A’側の進入退出ゲート301から進入が可能かどうかチェックする(ステップS162)。進入が不可能(ステップS162;NO)ならば処理を終了し、進入が可能(ステップS162;YES)ならば、引き続き、ゲートBロック情報432に「進入不可」を設定し(ステップS163)、駅B’側の信号灯305を「赤」にする(ステップS164)。そして、在線車両IDリスト情報433に当該デュアルモード車両100のIDを追加し(ステップS165)、駅A’側の進入退出ゲート301を開く(ステップS166)。その後、ループコイル311,312によって当該デュアルモード車両100が進入退出ゲート301を通過したことを確認した後、進入退出ゲート301を閉じて(ステップS167)、処理を終了する。
【0193】
次に、退出ゲート制御プログラム422に基づく処理の流れについて説明する。退出ゲート制御プログラム422は、処理装置410に読み出され実行されることで、図38のフローチャートに示す退出ゲート制御処理を処理装置410に行わせる。かかる処理は、軌道区間からの退出要求があると実行される。なお、ここでは例として、軌道区間A’B’に対して駅B’側から退出要求があった場合について行われる処理を例示するが、駅A’側から退出要求があった場合についても同様の処理が実行されるものとする。
【0194】
ゲート制御装置401の処理装置410は、リモコン受信器303を経由して、駅B’側の進入退出ゲート301の内側で待機しているデュアルモード車両100からの軌道区間A’B’からの退出要求を受け取ると、退出ゲート制御プログラム422に基づく処理を実行する。
【0195】
処理装置410は、退出要求を受けた駅B’側のリモコン受信器303から当該デュアルモード車両100のIDを受信する(ステップS171)。次いで、処理装置410は、駅B’側の進入退出ゲート301の外方ループコイル311上に他のデュアルモード車両がいないことを確認する(ステップS172)。外方ループコイル311上に他のデュアルモード車両がいる場合(ステップS172;NO)は、処理を終了し、いない場合(ステップS172;YES)は、引き続き、駅B’側の進入退出ゲート301を開き(ステップS173)、ループコイル311,312によって当該デュアルモード車両100が進入退出ゲート301を通過したことを確認した後、進入退出ゲート301を閉じる(ステップS174)。そして、在線車両IDリスト情報433から当該デュアルモード車両100のIDを削除する(ステップS175)。在線車両IDリスト情報433にまだ他のIDが残っていれば(ステップS176;NO)、そのまま処理を終了し、在線車両IDリスト情報433が空になった場合(ステップS176;YES)は、続いて、ゲートBロック情報432に「進入可」を設定し(ステップS177)、駅B’側の信号灯305を「緑」にして(ステップS178)、処理を終了する。
【0196】
以上のように、進入ゲート制御プログラム421及び退出ゲート制御プログラム422は協働して抑止通過決定手段として機能し、在線車両IDリスト情報433に対するIDの追加、削除及びチェックが在線判断手段として機能し、ゲートのロック及び信号灯305への操作が進行方向判断手段として機能することで、軌道区間A’B’の両端のにおける各進入退出ゲート301を制御して、各デュアルモード車両100の軌道区間への進入及び抑止の制御を行っている。なお、進入ゲート制御プログラム421及び退出ゲート制御プログラム422は、更新されたデータ領域430の各情報、外方ループコイル311及び内方ループコイル312の検知状況、進入退出ゲート301の開閉状況を、必要に応じて、運行管理サーバ201Aへ送信することとしても良い。
【0197】
(運行管理サーバ:全体構成)
運行管理サーバ201Aは、各駅及び各軌道区間との通信に支障が少ない場所に設けられた運行管理センター200Aに設置されており、図39に示すように、処理装置210と、後述の各処理を行うプログラムを格納しているプログラム部220Aと、各プログラムが動作する際に扱うデータを随時格納する書き換え可能なメモリー上に準備されたデータ領域230Aと、ゲート制御装置401との通信を行う通信装置240と、各デュアルモード車両100の車載装置101と各種情報の通信を行う無線通信装置250と、在線監視処理で使用される表示装置260とを備え、第1の実施の形態において説明したように、仮想閉塞区間を用いて一の軌道区間上を複数のデュアルモード車両100が同じ方向に走行する運行管理を実現する。
【0198】
プログラム部220Aには、区間在線情報生成プログラム223、無線通信制御プログラム224及び在線監視プログラム225を格納している。区間在線情報生成プログラム223、無線通信制御プログラム224及び在線監視プログラム225は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。なお、在線監視プログラム225においては、ゲートAロック情報431及びゲートBロック情報432を参照するか、外方ループコイル311及び内方ループコイル312の検知状況並びに進入退出ゲート301の開閉状況を参照することで、各仮想閉塞区間におけるデュアルモード車両100の進行方向が判別可能であるため、車両アイコンDを、デュアルモード車両100が在線する仮想閉塞区間アイコンCの上に、当該デュアルモード車両100を進行方向に応じた方向に向けて表示することができる。
【0199】
データ領域230Aには、個別区間情報233及び区間在線情報234が、随時読み出し及び書き換え可能な状態で記録されている。個別区間情報233及び区間在線情報234は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0200】
通信装置240、無線通信装置250及び表示装置260は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0201】
デュアルモード車両100に搭載される車載装置101に関しても、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0202】
(デュアルモード交通システムの効果)
ここでは、デュアルモード交通システム1000Aにより得られる効果のうち、前述した交通システム1000との共通部分により得られる効果については記載を省略する。
【0203】
デュアルモード交通システム1000Aは、各駅間の各々の軌道区間510において、その両側に進入退出ゲート301を設け、各リモコン受信器303から進入の要求があると、軌道区間内に対向方向に進行する車両の存在を確認し、存在しない場合にゲートを開いて進入を許可する運行管理を行っている。このため、軌道区間510が単線であっても、双方向のデュアルモード車両100の運行を適切に行うことが可能となる。
【0204】
また、デュアルモード交通システム1000Aは、リモコン受信器303を軌道区間の両側に設け、各デュアルモード車両ごとに固有のIDを有するリモコンによる進入又は退出要求の入力行為を要するため、前記デュアルモード車両100が前記軌道区間510への進入要求を入力するまで進入退出ゲート301を抑止状態に保つことができ、許可のない車両の進入、許可を受けずに退出、等を防止することができる。
【0205】
また、デュアルモード交通システム1000Aは、運行管理サーバ201A及びゲート制御装置401によって、軌道区間内にデュアルモード車両100が在線する場合であっても、当該デュアルモード車両100と進行方向を等しくするデュアルモード車両100の進入要求に対しては軌道区間内の進入を許可する運行を行っていることから、一定方向について密にデュアルモード車両の運行が行われている場合であっても、渋滞の発生を緩和することを可能とする。
【0206】
また、運行管理サーバ201Aは、各進入退出ゲート301の開閉状況等により軌道区間510にデュアルモード車両100が在線しているかを判断できるので、軌道区間内に車両を検知するための手段を用意する必要がなく、設備コストの低減を図ることが可能となる。
【0207】
また、進入退出ゲート301を制御して単線の軌道区間510におけるデュアルモード車両100の双方向の運行を司るゲート制御装置401と、各デュアルモード車両100と無線通信を行って軌道区間510内の複数の仮想閉塞区間511に在線する複数のデュアルモード車両100を統括する運行管理サーバ201Aとで、役割を分担することによって、有線及び無線通信網や、ゲート制御装置401に異常が発生した場合でも、正常に機能しているゲート制御装置401の管理下にある軌道区間510においては安全に単線双方向の運行を続行することができ、影響を最小限に抑えることが可能である。
【0208】
(その他)
なお、ゲート制御装置401は、各軌道区間内への進入の許可と抑止を行う運行において、在線車両IDリスト情報433に対するIDの追加、削除及びチェックによって軌道区間内の在線判断を行う構成としているが、これに限らず他の方法から在線判断を行っても良い。例えば、ゲートAロック情報431及びゲートBロック情報432を参照し、該当する軌道区間内の在線の有無を判断しても良い。また、在線判断に伴う進行方向の判断は、予め、各デュアルモード車両のダイヤグラム情報が設定されている場合には、各デュアルモード車両のIDから運行予定を読み出して進行方向を判断しても良い。
【0209】
なお、各軌道区間内への進入の許可と抑止を行う運行において、軌道区間510に対して進入又は退出しようとするデュアルモード車両100を検出する方法はリモコン受信器303に限らず、運転者が他の入力操作を行う方法や、進入退出ゲート301の前にいるデュアルモード車両100の存在そのものを検知するセンサ、例えば、ループコイル等を用いるなどの他の方法を採用しても良い。
【0210】
また、軌道区間510からの退出については、ゲートを使用せずに別な方法で退出車両の検出を行うか、退出する車両からを通信などで退出すること自ら伝えることにより、ゲート等によって退出車両を一時停止させない方法を採用しても良い。
【0211】
なお、デュアルモード交通システム1000Aでは、軌道区間への進入車両と退出車両の両方の通過を一つの進入退出ゲート301で規制する構成としているが、デュアルモード交通システム1000のようにゲートを個別化しても良い。また、逆に、デュアルモード交通システム1000に進入車両と退出車両の両方規制する進入退出ゲート301を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】本発明における第1の実施の形態に係るデュアルモード交通システムの構成図である。
【図2】図2(A)はデュアルモード車両及び走行モード変換用構造体の平面図、図2(B)は側面図である。
【図3】駅Aに設けられた地上設備の構成を示す斜視図である。
【図4】駅Bに設けられた地上設備の構成を示す斜視図である。
【図5】駅Cに設けられた地上設備の構成を示す斜視図である。
【図6】駅Dに設けられた地上設備の構成を示す斜視図である。
【図7】デュアルモード交通システムの運行管理サーバの構成を示すブロック図である。
【図8】ゲート開閉要求情報のデータ構成を示す概念図である。
【図9】在線情報のデータ構成を示す概念図である。
【図10】ゲート開閉要求情報記録処理を示すフローチャートである。
【図11】抑止通過決定処理を示すフローチャートである。
【図12】駅と駅の間の軌道区間に設定された複数の仮想閉塞区間と、一般道路の運転経路に設定された複数の路上走行区間を示す説明図である。
【図13】デュアルモード車両の車載装置の構成を示すブロック図である。
【図14】車載装置101による無線通信の実行の時期及び場所を示す説明図である。
【図15】車両識別情報のデータ構成を示す概念図である。
【図16】区間在線情報のデータ構成を示す概念図である。
【図17】閉塞区間情報データベースのデータ構成を示す概念図である。
【図18】キロ程管理データベースのデータ構成を示す概念図である。
【図19】通信制御処理を示すフローチャートである。
【図20】個別区間判定処理を示すフローチャートである。
【図21】キロ程割出処理を示すフローチャートである。
【図22】走行位置から現在地キロ程を割り出す際の原理を示す説明図である。
【図23】現在地キロ程を割り出す際の別な判定用範囲を示す説明図である。
【図24】現在地キロ程を割り出す際の別な判定用範囲を示す説明図である。
【図25】現在地キロ程を割り出す際の別な判定用範囲を示す説明図である。
【図26】個別区間情報のデータ構成を示す概念図である。
【図27】区間在線情報のデータ構成を示す概念図である。
【図28】区間在線情報生成処理を示すフローチャートである。
【図29】無線通信制御処理を示すフローチャートである。
【図30】在線監視画面データに基づく在線監視画面の表示例を示す説明図である。
【図31】区間在線情報表示処理の処理を順番に示す説明図であり、図31(a)は区間在線情報を取得する工程を示し、図31(b)は走行パターンのデータを生成する工程を示し、図31(c)は色彩表示パターンのデータを生成する工程を示し、図31(d)はナビゲーション画面の表示制御工程を示す。
【図32】本発明における第2の実施の形態に係るデュアルモード交通システム1000Aの構成図である。
【図33】駅A’及び駅C’に設けられた地上設備の構成を示す斜視図である。
【図34】駅B’に設けられた地上設備の構成を示す斜視図である。
【図35】デュアルモード交通システムのゲート制御装置の構成を示すブロック図である。
【図36】在線車両IDリスト情報のデータ構成を示す概念図である。
【図37】進入ゲート制御処理を示すフローチャートである。
【図38】退出ゲート制御処理を示すフローチャートである。
【図39】デュアルモード交通システムの運行管理サーバの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0213】
1 進入ゲート(進入抑止手段)
2 退出ゲート(退出抑止手段)
3 進入カードリーダー(進入要求手段、進入車両検出手段)
4 退出カードリーダー(退出要求手段、退出車両検出手段)
51 GPS衛星
100 デュアルモード車両
101 車載装置
110,210,410 処理装置
120,220,220A,420 プログラム部
121 通信制御プログラム
122 個別区間判定プログラム(個別区間判定手段)
123 キロ程割出プログラム
124 区間在線情報表示プログラム(運行路線情報報知手段)
130 データ領域(識別番号記憶部)
131 車両識別情報
132 地球座標系座標情報
133 キロ程情報
134 個別区間情報
135,234 区間在線情報
140 表示装置(運行路線情報報知手段)
150 GPS装置(自車測位手段)
160,250 無線通信装置(無線通信手段)
170 閉塞区間情報DB(閉塞区間情報記憶手段)
180 キロ程管理DB
200,200A 運行管理センター
201,201A 運行管理サーバ(地上装置)
221 抑止通過決定プログラム(抑止通過決定手段、在線判断手段、進行方向判断手段)
222 ゲート開閉要求情報記録プログラム
223 区間在線情報生成プログラム(区間在線情報生成手段)
224 無線通信制御プログラム
225 在線監視プログラム(在線監視手段)
230,230A データ領域(個別区間情報記憶手段)
231 ゲート開閉要求情報
232 在線情報
233 個別区間情報
240 通信装置
260 表示装置(在線監視手段)
301 進入退出ゲート(進入抑止手段、退出抑止手段)
303 リモコン受信器(進入要求手段、進入車両検出手段、退出要求手段、退出車両検出手段)
305 信号灯
311 外方ループコイル(進入車両検出手段)
312 内方ループコイル(退出車両検出手段)
401 ゲート制御装置(地上装置)
421 進入ゲート制御プログラム(抑止通過決定手段、在線判断手段、進行方向判断手段)
422 退出ゲート制御プログラム(抑止通過決定手段、在線判断手段、進行方向判断手段)
430 データ領域
431 ゲートAロック情報
432 ゲートBロック情報
433 在線車両IDリスト情報
500 軌道
510 軌道区間
511 仮想閉塞区間
521,621 通信エリア
600 一般道路
610 運転経路
611 路上走行区間
1000,1000A デュアルモード交通システム
R レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路走行及び軌道走行可能な複数のデュアルモード車両の運行管理を行うデュアルモード交通システムであって、
軌道上の所定の軌道区間の両端にそれぞれ設置され、デュアルモード車両の前記軌道区間内における軌道上への進入の許可と抑止とを切り替え可能な進入抑止手段と、
前記各進入抑止手段の手前にそれぞれ設置され、前記軌道区間へ進入しようとするデュアルモード車両を検出する進入車両検出手段と、
前記軌道区間の両端にそれぞれ設置され、前記デュアルモード車両の前記軌道区間からの退出を検出する退出車両検出手段と、
を備え、さらに、
前記軌道区間内にデュアルモード車両が在線しているかどうかを判断する在線判断手段と、前記各進入車両検出手段でのデュアルモード車両検出時に、前記在線判断手段により前記軌道区間内にデュアルモード車両が在線しないと判断されると、対応する前記進入抑止手段を進入可能状態とする抑止通過決定手段と、を具備する地上装置と、
を備えることを特徴とするデュアルモード交通システム。
【請求項2】
前記進入車両検出手段は、前記デュアルモード車両の前記軌道区間内の進入要求を入力する進入要求手段であることを特徴とする請求項1に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項3】
前記軌道区間の両端にそれぞれ設置され、デュアルモード車両の前記軌道区間内における軌道上からの退出の許可と抑止とを切り替え可能な退出抑止手段を備え、
前記退出車両検出手段は、前記各退出抑止手段の手前にそれぞれ設置され、前記デュアルモード車両の前記軌道区間外への退出要求を入力する退出要求手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項4】
前記在線判断手段は、前記軌道区間にデュアルモード車両が在線しているかどうかの判断を、前記進入車両検出手段及び退出車両検出手段の検出の状況に応じて行うことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項5】
前記地上装置は、前記軌道区間内に在線するデュアルモード車両の進行方向を判断する進行方向判断手段を備え、
前記抑止通過決定手段は、前記各進入車両検出手段でのデュアルモード車両検出時に、前記軌道区間内に対向方向に進行するデュアルモード車両が在線しないと判断されると、対応する前記進入抑止手段を進入可能状態とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項6】
複数の前記デュアルモード車両はそれぞれ、
GPS衛星(GPS:Global Positioning System)を利用して自車の車両位置を測位する自車測位手段と、
前記軌道区間を複数の仮想閉塞区間に分割して当該各仮想閉塞区間の位置範囲情報を記憶する閉塞区間情報記憶手段と、
前記自車測位手段で測位した車両位置を用いて自車がどの前記仮想閉塞区間に在線しているかを判定する個別区間判定手段と、
前記個別区間判定手段で判定した自車の車両位置を表す個別区間情報を前記地上装置へ送信し、前記軌道区間の各仮想閉塞区間に他のデュアルモード車両がどのように在線しているかを表す区間在線情報を、前記地上装置から受信する無線通信手段と、
前記区間在線情報を元に前記軌道区間の他のデュアルモード車両の在線状態を運転席に表示する運行路線情報報知手段と、
を具備する車載装置を備え、
前記地上装置は、
各デュアルモード車両から受信した前記個別区間情報を記憶する個別区間情報記憶手段と、
前記各デュアルモード車両から受信した前記個別区間情報を用いて前記区間在線情報を生成する区間在線情報生成手段と、
前記各デュアルモード車両からそれぞれの前記個別区間情報を受信し、当該各デュアルモード車両に前記区間在線情報を送信する無線通信手段と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項7】
前記在線判断手段は、前記軌道区間にデュアルモード車両が在線しているかどうかの判断を、前記区間在線情報生成手段が生成する区間在線情報を用いて行うことを特徴とする請求項6に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項8】
前記閉塞区間情報記憶手段は、前記軌道区間におけるそれぞれの前記仮想閉塞区間の全ての境界が前記デュアルモード車両の無線通信手段の通信可能領域に配置された前記各仮想閉塞区間の位置範囲情報を記憶することを特徴とする請求項6又は7に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項9】
前記区間在線情報生成手段が生成する前記区間在線情報は、
前記軌道区間内の各仮想閉塞区間ごとにデュアルモード車両の在線/不在線を示す情報であることを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項10】
前記運行路線情報報知手段は、前記地上装置から受信した前記区間在線情報を元に、前記軌道区間の全仮想閉塞区間におけるデュアルモード車両の在線/不在線を識別可能に表示し、自車が在線する仮想閉塞区間についてに他の仮想閉塞区間の表示と区別可能に表示することを特徴とする請求項6から9の何れか一項に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項11】
前記運行路線情報報知手段は、前記地上装置から受信した前記区間在線情報を元に、自車の在線する仮想閉塞区間から、前方で最も接近しているデュアルモード車両の在線する仮想閉塞区間の二つ手前までの仮想閉塞区間と、その次の仮想閉塞区間と、前記最も接近しているデュアルモード車両の在線する仮想閉塞区間から前の仮想閉塞区間とをそれぞれ異なる色彩で表示することを特徴とする請求項6から10の何れか一項に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項12】
前記地上装置は、複数の前記軌道区間を管理する機能をさらに有することを特徴とする請求項1から11の何れか一項に記載のデュアルモード交通システム。
【請求項13】
前記車載装置は、前記地上装置に個別区間情報を送信する際にこれに伴って付与される、それぞれのデュアルモード車両に固有の識別番号を記憶する識別番号記憶部を備え、
前記地上装置は、
前記個別区間情報記憶手段に、前記識別番号を前記個別区間情報と対応させて記憶する機能をさらに有し、
前記個別区間情報記憶手段から前記識別番号と前記個別区間情報を読み取り、複数の軌道区間におけるそれぞれの閉塞区間にどのデュアルモード車両が在線しているかを表示する在線監視手段をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載のデュアルモード交通システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2007−276626(P2007−276626A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105446(P2006−105446)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(599142590)北海道ジェイ・アール・サイバネット株式会社 (14)
【Fターム(参考)】