説明

データ通信システム、データ通信方法及び地上局

【課題】 ブロッキングを地上局が速やかに検出し、通信効率のよいデータ通信システムを提供する。
【解決手段】 衛星を介して移動地上局間で通信を行なうデータ通信システムであって、前記地上局は、データを送受信する相手地上局との間で、通信接続時から切断時まで継続的に監視信号を送受信する監視信号送受信手段と、前記監視信号に基づいて通信遮断を検出する通信遮断検出手段とを備える。また、前記通信遮断検出手段は、前記監視信号を所定の期間以上受信しない場合、通信遮断として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地上局と衛星とを用いた移動体衛星通信システムに関するものである。特に、ビル・橋・トンネルなどの障害物により地上移動局と衛星との見通しが遮られ通信が一時停止するデータ通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、例えば特許2658865号(特許文献1と呼ぶ)に示すように、地上移動局と地上基地局における通信を想定し、地上移動局が衛星のパイロット信号強度を検出し、その信号の有無をもって地上移動局側がブロッキングの発生にともなう通信制御を行なっていた。地上基地局は位置固定であり、ブロッキングが発生しないような条件である。
【0003】
【特許文献1】特許2658865号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術ではブロッキングの発生する地上移動局はブロッキングを検出できるが、地上移動局がパイロット信号の検出しか行っていないため、データの送受信のタイムアウト発生するまで地上基地局側は地上移動局のブロッキングを検出することができず、通信効率が悪化するという問題があった。また、地上局が両方とも移動する場合に、相手地上局のブロッキングを地上局の両方で検出できないため、更に通信効率が悪化するという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、ブロッキングを地上局が速やかに検出し、通信効率のよいデータ通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
衛星を介して移動地上局間で通信を行なうデータ通信システムであって、前記地上局は、データを送受信する相手地上局との間で、通信接続時から切断時まで継続的に監視信号を送受信する監視信号送受信手段と、前記監視信号に基づいて通信遮断を検出する通信遮断検出手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
衛星を介して移動地上局間で通信を行なうデータ通信システムであって、前記地上局は、データを送受信する相手地上局との間で、通信接続時から切断時まで継続的に監視信号を送受信する監視信号送受信手段と、前記監視信号に基づいて通信遮断を検出する通信遮断検出手段とを備えることにより、ブロッキングを速やかに検出でき、通信効率をよくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は本実施の形態1におけるシステム構成図である。図1において、地上局10と11との間で衛星20を介してデータ通信を行なう。地上局10、11の衛星捕捉信号受信部102、112で衛星捕捉ビームを送受信し、その後データ送受信部101、111を用いてデータの送受信を行なう。監視信号送受信部103、113により、ブロッキングを監視する。この監視信号送受信部103、113が本実施の形態1の特徴的部分である。
【0009】
次に、図1における各構成要素がどのように動作するかについて説明する。
図2は動作を示すシーケンス図である。図2において、まず地上局10、11は衛星捕捉信号受信部102、112によって衛星20の位置を追尾するための衛星捕捉ビームを受信している。地上局10、11は、この衛星捕捉ビームの検出なくしては衛星との無線信号送受ができないため通信できない。通信を開始したい地上局10は、衛星捕捉ビームを検出しているときに接続要求を送信し、通信相手の地上局11は、この接続要求を受信したとき接続確認を送信し、データ送受信状態になる。このとき両地上局10、11は、データ送受信の有無にかかわらず、監視信号送受信部103、113によりブロッキング監視信号を連続的に送受信し、ブロッキングの発生を監視し続ける。その後、データ送受信部101、111によりデータの送受信が行なわれる。
【0010】
ここで、図2に示されるように衛星20と地上局11との間でブロッキングが発生した場合、従来技術である衛星捕捉ビーム信号だけであると、地上局11では衛星捕捉ビームの信号の断絶によりブロッキングを検出できるが、地上局10では、衛星20からの衛星捕捉ビーム信号は断絶せず、データの送受信のタイムアウトが発生するまで、衛星20と地上局11との間のブロッキングは検出できない。しかし、本実施の形態1における地上局10は、データ送受信の有無にかかわらず監視信号送受信部101によりブロッキング監視信号を連続的に送受信して監視しているので、衛星20と地上局11との間でブロッキングが発生した場合でも、ブロッキング監視信号の断絶により直ちにブロッキングを検出することができる(例えば一定期間受信しなかったら、ブロッキング監視信号の断絶と判断する)。地上局11は、衛星捕捉ビーム信号の断絶だけでなく、ブロッキング監視信号の断絶によっても、ブロッキングを検出できる。また、衛星20と地上局10との間でブロッキングが発生した場合も同様に、ブロッキング監視信号の断絶により、地上局11でブロッキングを検出することができる。つまり、両地上局10、11は、監視信号送受信部103、113において、データ送受信の有無にかかわらずブロッキング監視信号を連続的に送受信することにより、衛星捕捉ビームでは検出できない相手地上局と衛星間にて発生するブロッキングをも検出することができる。
【0011】
また、地上局10、11は、監視信号送受信部103、113と衛星捕捉信号受信部102、112とで監視を行なうことにより、ブロッキング監視信号だけが途絶したときは衛星20と相手地上局間がブロッキングされたこと、衛星捕捉ビームとブロッキング監視信号双方が途絶したときは衛星20と自地上局間がブロッキングされたことの区別を直ちに行なうことができる。
【0012】
以上のように、監視信号送受信部103、113、更には衛星捕捉信号受信部102、112を備え監視することにより、ブロッキングを速やかに検出でき、さらにブロッキング発生側を特定することができるので、再送や保留の制御がきめ細かくできるようになり通信効率をよくすることができる。
【0013】
なお、ブロッキング監視信号は、監視信号送受信部103、113より衛星通信の接続から切断まで連続して送信し続けてもよいが、衛星捕捉信号受信部102、112において衛星捕捉ビームを検出している間のみ送信することにより、地上局の電力消費を抑えることもできる。
【0014】
また、地上局10、11は、一方が移動局で他方が基地局でもよいし、両方移動局でもよい。衛星20との間でブロッキングが発生することがあるのであれば、両方基地局でもよい。
【0015】
実施の形態2.
実施の形態2では、直接地上無線通信が行なえるような距離に他の地上局が存在するような場合に、ブロッキング監視信号に代わってブロッキングを検出する動作について説明する。図3は本実施の形態2におけるシステム構成図である。図3において各地上局は、直接地上無線によりデータを送受信する直接無線送受信部104、114、124と、ブロッキングの発生を検出するブロッキング検出部105、115、125と、このブロッキング検出部により検出されたブロッキングの発生を他の地上局へ通知するブロッキング通知部106、116、126とを備える。データ送受信部101、111、121と、衛星捕捉信号受信部102、112、122は、前記実施の形態1と同様である。
【0016】
次に、図3における各構成要素がどのように動作するかについて説明する。
図4は動作を示すシーケンス図である。図4において、まず地上局10、11、12は衛星捕捉信号受信部102、112、122において衛星の位置を追尾するための衛星捕捉ビームを受信している。図4に示すように、衛星20と地上局11間がブロッキングされたとき、地上局11のブロッキング検出部115は衛星捕捉ビームの断絶によりブロッキングの発生を検出するとともに、通信チャネルを識別する。地上局11のブロッキング検出部115によりブロッキングを検出すると、地上局11の直接無線送受信部114は、近くの地上局12に通信チャネルを識別する符号をつけてブロッキング発生通知を送信する。このブロッキング発生通知は、あらかじめ決まった地上局へ個別通信するようにしてもよいし、あるいはブロードキャスティングしてその通信を受信するのが任意の地上局となるようにしてもよい。
【0017】
直接無線送受信部105でブロッキング発生通知を受信した地上局12は、ブロッキング通知部126により地上局10へ通信チャネルを識別する符号をつけてブロッキング発生通知を送信する。地上局10のブロッキング検出部105は、通信チャネルを識別する符号のついたブロッキング発生通知を受信することにより直ちに衛星20と地上局11間がブロッキングされたことを検出する。
【0018】
衛星20と地上局11間のブロッキングがなくなり、再び衛星捕捉信号受信部112において衛星捕捉ビームを検出した地上局11は、ブロッキング通知部116により直接地上局10へブロッキング解除通知を送信する。地上局10は、ブロッキング解除通知を受信することにより、相手地上局と衛星間にて発生したブロッキングが解除されたことを検出する。
【0019】
以上のように、前記実施の形態1では監視信号送受信部よりブロッキング監視信号を連続的に送受信することにより他の地上局で発生したブロッキングの検出を行なっていたが、本実施の形態2では、ブロッキング検出部が衛星捕捉ビームの断絶によりブロッキングを検出したとき、直接無線送受信部が通信チャネルを識別する符号をつけてブロッキング発生通知を近隣地上局へ送るようにし、それを受信した近隣地上局が、ブロッキング通知部により衛星回線経由で通信チャネルを識別する符号をつけてブロッキング発生通知を送信する場合について示した。
【0020】
上記のような実施の形態2におけるデータ通信システムによれば、近くに他の地上局が存在するときはその地上局を経由してブロッキング発生通知を送受信することにより、同様にブロッキングを速やかに検出でき、さらにブロッキング発生側を特定することができる。
【0021】
また、衛星捕捉信号送受信部がブロッキング検出部の機能を兼ねてもよい。
【0022】
また、本実施の形態2では、衛星20と地上局11間のブロッキングを地上局が検出する際、衛星捕捉ビームの断絶によりブロッキングの発生を検出しているが、ブロッキングの発生を検出できればこれに限られず、他の方法でブロッキングの発生を検出してもよい。
【0023】
実施の形態3.
実施の形態3では、上記実施の形態2のブロッキング検出方法を利用して、さらにブロッキングを予測する動作について説明する。図5は、本実施の形態3におけるシステム構成図である。図5において、地上局11の近隣に地上局13が存在すること以外は、上記実施の形態2と同様である。図6は動作を示すシーケンス図である。
【0024】
図5の地上局12、13が衛星通信を行なっている途中で、衛星20と地上局13との間でブロッキングが発生したとき、上記実施の形態2と同様に、地上局13のブロッキング検出部135がブロッキングを検出し、直接無線送受信部134により近くの地上局11にブロッキング発生通知を送信する。このとき地上局13の直接無線送受信部134は地上局13の位置情報を付与して送信する。
【0025】
地上局11において、直接無線送受信部114は位置情報付のブロッキング発生通知を受信し、ブロッキング検出部115は地上局13でのブロッキングを検出し、ブロッキング通知部116は衛星20経由で地上局12へブロッキング発生通知を送信する。地上局11のブロッキング通知部116は、この動作と共に地上局11、13の位置情報と比較し、地上局11が既に他の地上局10と通信中であり、また地上局13のブロッキングが発生した地点を通過する場合、ブロッキングを予測するブロッキング予測通知を衛星20経由で地上局10に送信する。
【0026】
地上局10のブロッキング検出部105は、ブロッキング予測通知を受信することにより衛星20と地上局11間がブロッキングされることを予測検出する。
【0027】
衛星20と地上局11間のブロッキングがなくなり、再び衛星捕捉信号受信部112において衛星捕捉ビームを検出した地上局11は、ブロッキング通知部116によりブロッキング解除通知を衛星20経由で地上局10に送信し、地上局10はブロッキング解除通知を受信することにより相手地上局11と衛星20間にて発生したブロッキングが解除されたことを検出するのは実施形態2と同様である。
【0028】
上記のような実施の形態3におけるデータ通信システムによれば、ブロッキング発生通知を経由する地上局はブロッキングが発生した地上局との位置を把握することにより、ブロッキングの発生を予測し、ブロッキングが発生する前にブロッキングが起こることを相手地上局に伝えることができる。
【0029】
なお、本実施の形態3では、地上局11のブロッキング通知部116がブロッキングの予測と通知を行なっているが、ブロッキングの予測を他の手段で行なっても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1におけるシステム構成図
【図2】実施の形態1における動作を示すシーケンス図
【図3】実施の形態2におけるシステム構成図
【図4】実施の形態2における動作を示すシーケンス図
【図5】実施の形態3におけるシステム構成図
【図6】実施の形態3における動作を示すシーケンス図
【符号の説明】
【0031】
10、11、12、13 地上局
20 衛星
101、111、121、131 データ送受信部
102、112、122、132 衛星捕捉信号受信部
103、113 監視信号送受信部
104、114、124、134 直接無線送受信部
105、115、125、135 ブロッキング検出部
106、116、126、136 ブロッキング通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星を介して移動地上局間で通信を行なうデータ通信システムであって、
前記地上局は、データを送受信する相手地上局との間で、通信接続時から切断時まで継続的に監視信号を送受信する監視信号送受信手段と、
前記監視信号に基づいて通信遮断を検出する通信遮断検出手段とを備えることを特徴とするデータ通信システム。
【請求項2】
前記通信遮断検出手段は、前記監視信号を所定の期間以上受信しない場合、通信遮断として検出すること特徴とする請求項1記載のデータ通信システム。
【請求項3】
衛星を介して移動地上局間で通信を行なうデータ通信システムであって、
前記地上局は、通信遮断を検出する通信遮断検出手段と、
前記通信遮断検出結果を他の地上局へ直接送信する検出結果直接送信手段とを備え、
前記他の地上局は、前記検出結果直接送信手段による前記通信遮断検出結果を受信する検出結果直接受信手段と、
前記受信した通信遮断検出結果を、前記地上局の通信相手先地上局に、前記衛星を介して送信する検出結果送信手段とを備え、
前記通信相手先地上局は、前記通信遮断検出結果に基づいて、前記地上局の通信遮断を検出する相手先通信遮断検出手段とを備えることを特徴とするデータ通信システム。
【請求項4】
前記地上局は、自地上局の位置情報を付与して、前記通信遮断検出結果を他の地上局へ直接送信する検出結果直接送信手段を備え、
前記他の地上局は、前記位置情報を含む通信遮断検出結果に基づいて、自地上局の通信遮断を予測し、この通信遮断予測を、自地上局の通信相手先地上局に、前記衛星を介して送信する通信遮断予測送信手段を備え、
前記他の地上局の通信相手先地上局は、前記通信遮断予測に基づいて、前記他の地上局の通信遮断を予測する通信遮断予測手段を備えることを特徴とする請求項3記載のデータ通信システム。
【請求項5】
衛星を介して移動地上局間で通信を行なうデータ通信方法であって、
前記地上局は、データを送受信する相手地上局との間で、通信接続時から切断時まで継続的に監視信号を送受信するステップと、
前記監視信号に基づいて通信遮断を検出するステップとを備えることを特徴とするデータ通信方法。
【請求項6】
衛星を介してデータを送受信する相手地上局との間で、通信接続時から切断時まで継続的に監視信号を送受信する監視信号送受信手段と、
前記監視信号に基づいて通信遮断を検出する通信遮断検出手段と
を備えることを特徴とする地上局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−201867(P2007−201867A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18722(P2006−18722)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】