説明

トナーおよびその製造方法、現像剤、現像装置ならびに画像形成装置

【課題】 地球環境保全に対して配慮され、環境安定性に優れ、耐加水分解性の高いトナーおよびそのトナーの製造方法、現像剤、現像装置ならびに画像形成装置を提供する。
【解決手段】 トナーは、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子で構成される。結着樹脂は、植物由来成分から成る樹脂を含み、トナー粒子には疎水性微粒子が内添されている。このようなトナーを含む現像剤を画像形成装置内の現像装置に充填して画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーおよびその製造方法、現像剤、現像装置ならびに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全の観点から、様々な技術分野において多くの取り組みがなされている。具体的には、現在は、数多くの製品の原材料が石油から製造されているので、これらの原材料の製造時や焼却時に発生する二酸化炭素や、必要となるエネルギーなどを削減する取り組みがなされている。これらの取り組みは地球温暖化防止の観点から非常に重要である。
【0003】
地球温暖化防止につながる新たな取り組みとして、バイオマスと呼ばれる植物由来の資源を利用することが大いに注目されている。バイオマスを燃焼させる際に発生する二酸化炭素は、もともと植物が光合成により取り込んだ大気中の二酸化炭素なので、全体で見ると大気中の二酸化炭素の収支はゼロでありその総量は変化しない。このように、大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない性質はカーボンニュートラルと呼ばれており、カーボンニュートラルである植物由来の資源を利用することで大気中の二酸化炭素量を固定することができる。
【0004】
このようなバイオマスから製造されるプラスチックは、バイオマスポリマー、バイオマスプラスティック、非石油系高分子材料などの名称で呼ばれており、これらの原料となるモノマーはバイオマスモノマーと呼ばれている。
【0005】
一般的に、ポリエステル樹脂はジカルボン酸とジオールとを縮重合させることによって製造されるが、ジカルボン酸成分としてコハク酸やイタコン酸などのバイオマスモノマーを使用し、ジオール成分として1、3−プロパンジオールなどのバイオマスモノマーを使用すると、ポリエステル系のバイオマスポリマーが製造できる。
【0006】
また、とうもろこしなどの植物から得られる乳酸を原料として製造されるポリ乳酸樹脂もバイオマスポリマーである。ポリ乳酸樹脂は、様々な成形加工が可能であるため新しい汎用樹脂となりうる可能性を秘めており、工業的にも既に販売がなされている。
【0007】
電子写真の分野においても、地球環境保全に配慮して、環境安全性に優れ、二酸化炭素削減に効果的な資源であるバイオマスポリマーを利用する取り組みがなされている。たとえば、バイオマスポリマーを、電子写真方式の画像形成プロセスに用いられ潜像を顕像化するトナーに含まれる結着樹脂として用いている。
【0008】
トナーは、結着樹脂、および着色剤を主成分とし、必要に応じて、離型剤、帯電制御剤などを添加して混合したトナー原料を溶融混練し、冷却して固化させた後、粉砕分級する混練粉砕法や、懸濁重合法、乳化重合凝集法などに代表される重合法などによって得られる。このようなトナーを含む現像剤には、トナーのみを主成分とする1成分現像剤と、トナーとキャリアとを混合して使用する2成分現像剤とがある。
【0009】
前記現像剤を用いる電子写真方式の画像形成プロセスを利用する画像形成装置は、たとえば潜像担持体である感光体ドラム表面の感光層を均一に帯電させる帯電工程、帯電状態にある感光体ドラム表面に原稿像の信号光を投射して静電潜像を形成する露光工程、感光体ドラム表面の静電潜像に電子写真用トナーを供給して顕像化する現像工程、感光体ドラム表面のトナー像を紙やOHPシートなどのメディアに転写する転写工程、トナー像を加熱、加圧などによりメディア上に定着させる定着工程およびトナー像転写後の感光体ドラム表面に残留するトナーなどをクリーニングブレードにより除去して清浄化するクリーニング工程を実行してメディア上に所望の画像を形成する。メディアへのトナー像の転写は、中間転写媒体を介して行われることもある。
【0010】
しかしながら、バイオマスポリマーは、加水分解性が高いので、トナー用結着樹脂に使用すると、トナー性能の経時安定性に乏しく、初期の性能を維持することが困難である。バイオマスポリマーの加水分解により、トナーの定着性や帯電性が劣るなどの問題が起こり、バイオマスポリマーを含むトナーの実用化にはこの問題の解決が必要不可欠である。
【0011】
このため、特許文献1には、ポリ乳酸系生分解性樹脂とテルペンフェノール共重合体とを含む結着樹脂を含有するトナー母体粒子に、平衡吸着水分量が5.0×10−5g/m以下の疎水性無機微粒子を外添剤として添加することによって、高耐久化を実現し、経時変化がなく環境保全や安全性に優れる電子写真用トナーが開示されている。
【特許文献1】特開2004−93829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示の電子写真用トナーでは、トナー母体粒子の凹凸や疎水性無機微粒子の外添方法によっては、疎水性無機微粒子によるトナー母体粒子の被覆が充分でない部分ができるので、トナー性能が経時変化し、安定性に問題が生じる。
【0013】
本発明の目的は、地球環境保全に対して配慮され、環境安定性に優れ、耐加水分解性の高いトナーおよびそのトナーの製造方法、現像剤、現像装置ならびに画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子で構成されるトナーであって、
結着樹脂は、植物由来成分から成る樹脂を含み、
トナー粒子には疎水性微粒子が内添されていることを特徴とするトナーである。
【0015】
また本発明は、植物由来成分から成る樹脂が、下記化学式(1)で示されるユニットであるポリ乳酸を含み、結着樹脂全量に対して20重量%以上50重量%以下の割合で含有されることを特徴とする。
−[O−CH(CH)−CO]− …(1)
(式中、nは、正の整数を表す。)
【0016】
また本発明は、トナー粒子に内添されている疎水性微粒子の表面積の合計が前記結着樹脂100重量部に対して300m以上1200m以下の範囲内にあることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記疎水性微粒子は、疎水化度が80%以上であることを特徴とする。
また本発明は、前記記載のトナーの製造方法であって、
少なくとも植物由来成分から成る樹脂を含む結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子を混合して混合物を作製する前混合工程と、
混合物を溶融混練して溶融混練物を作製する溶融混練工程と、
溶融混練物を粉砕して粉砕物を作製する粉砕工程と、
粉砕物から過粉砕物および粗粉を除去する分級工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法である。
【0018】
また本発明は、前記記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤である。
また本発明は、前記トナーとキャリアとを含む2成分現像剤であることを特徴とする現像剤である。
【0019】
また本発明は、前記記載の現像剤を用いて、像担持体に形成される潜像を現像してトナー像を形成することを特徴とする現像装置である。
【0020】
また本発明は、潜像が形成される像担持体と、
像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記記載の現像装置とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トナーは、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子で構成され、結着樹脂は植物由来成分から成る樹脂を含み、トナー粒子には疎水性微粒子が内添されている。結着樹脂が植物由来成分から成る樹脂を含むことによって、地球環境保全に配慮したトナーとすることができる。また、トナー粒子に疎水性微粒子を内添することによって、トナー粒子中の水分量を抑制でき、加水分解性の高い植物由来成分から成る樹脂を含む結着樹脂の耐加水分解性を改善することができる。したがって、地球環境保全に配慮し、環境安定性に優れ、耐加水分解性の高いトナーを実現することができる。このようなトナーを用いて画像を形成すると、高温高湿環境下においても、トナー性能の経時変化を抑えられ、定着性および帯電性を良好にすることができるので、長期間にわたって良好な画像を安定して形成することができる。
【0022】
また本発明によれば、植物由来成分から成る樹脂が、前記化学式(1)で示されるユニットであるポリ乳酸を含み、結着樹脂全量に対して20重量%以上50重量%以下の割合で含有される。これによって、化学式(1)で示されるユニットであるポリ乳酸を含んで構成される植物由来成分から成る樹脂を結着樹脂に使用することにおいて問題になる加水分解性を充分に改善することができる。結着樹脂全量に対して20重量%未満の割合で含有されると、含有比率が低いため、地球環境保全に配慮したとは言い難い。結着樹脂全量に対して50重量%を超えて含有されると、疎水性微粒子を内添することによる耐加水分解性の改善効果を打ち消してしまい、耐加水分解性を充分に改善することができない。したがって、高温高湿環境下においても、トナー性能の経時変化を抑えられ、帯電性を良好にすることができ、長期間にわたって良好な画像をより安定して形成することができる。
【0023】
また本発明によれば、トナー粒子に内添されている疎水性微粒子の表面積の合計は、結着樹脂100重量部に対して300m以上1200m以下の範囲内である。このような表面積の範囲内で疎水性微粒子を内添することによって、疎水性微粒子を内添することによる効果を充分に発揮し、結着樹脂の加水分解性を一層改善することができる。疎水性微粒子の表面積の合計が結着樹脂100重量部に対して300m未満であると、充分な加水分解性の改善効果を得ることができない。疎水性微粒子の表面積の合計が結着樹脂100重量部に対して1200mを超えると、疎水性微粒子の添加によるフィラー効果でトナーの定着性が悪化する。トナー粒子に内添されている疎水性微粒子の表面積の合計が結着樹脂100重量部に対して300m以上1200m以下の範囲内であることによって、高温高湿環境下においても、トナー性能の経時変化を抑えられ、帯電性を良好にすることができ、長期間にわたって良好な画像をより一層安定して形成することができる。
【0024】
また本発明によれば、疎水性微粒子の疎水化度は80%以上である。疎水性微粒子の疎水化度が80%以上であると、耐加水分解性の改善効果を顕著に発揮することができ、結着樹脂の加水分解性をより一層改善することができる。したがって、高温高湿環境下においても、トナー性能の経時変化を抑えられ、帯電性を良好にすることができ、長期間にわたって良好な画像をより一層安定して形成することができる。
【0025】
また本発明によれば、トナーの製造方法は、少なくとも植物由来成分から成る樹脂を含む結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子を混合して混合物を作製する前混合工程と、混合物を溶融混練して溶融混練物を作製する溶融混練工程と、溶融混練物を粉砕して粉砕物を作製する粉砕工程と、粉砕物から過粉砕物および粗粉を除去する分級工程とを含む。トナーの製造方法のうち、重合法などに代表される湿式法は、その製造過程において、水などの水性媒体を使用するので、結着樹脂が吸水して結着樹脂の加水分解を助長するおそれがあるが、乾式法においては、製造時において結着樹脂が吸水しにくい。そのため、本発明のトナーを製造するには、前記工程を含むような乾式法である粉砕法が最適である。このような製造方法でトナーを製造することで、製造時の結着樹脂の加水分解を最小限に抑えたトナーを製造することができる。
【0026】
また本発明によれば、現像剤は本発明のトナーを含む。これによって、地球環境保全に配慮し、また高温高湿環境下での帯電安定性に優れる現像剤とすることができる。このような現像剤を用いることで、高温高湿環境下においても帯電性を良好にすることができ、良好な画像を安定して形成することができる。
【0027】
また本発明によれば、現像剤は、本発明のトナーとキャリアとを含む2成分現像剤である。これによって、地球環境保全に配慮し、また高温高湿環境下での帯電安定性に優れる2成分現像剤とすることができる。このような2成分現像剤を用いることで、高温高湿環境下においても帯電性を良好にすることができ、良好な画像を安定して形成することができる。
【0028】
また本発明によれば、現像装置は、本発明の現像剤を用いて潜像を現像するので、高温高湿環境下においても安定した性能を維持でき、高精細で高解像度のトナー像を像担持体に安定して形成することができる。したがって、良好な画像を安定して形成することができる。
【0029】
また本発明によれば、潜像が形成される像担持体と、像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、前述のように、高温高湿環境下においても高精細で高解像度のトナー像を像担持体に形成可能な本発明の現像装置とを備えて画像形成装置が実現される。このような画像形成装置で画像を形成することによって、長期間にわたって良好な画像を安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
1、トナー
本発明の第1の実施形態であるトナーは、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子で構成される。結着樹脂は、植物由来成分から成る樹脂を含み、トナー粒子には疎水性微粒子が内添されている。
【0031】
(1)結着樹脂
本実施形態のトナーに含まれる結着樹脂は、主成分である樹脂と、バイオマスを含む植物由来成分から成る樹脂とを含んで構成される。植物由来成分から成る樹脂は、結晶性樹脂であることが好ましい。
【0032】
(主成分である樹脂)
主成分である樹脂としては、一般的な熱可塑性樹脂を使用でき、たとえば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂およびエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。また、同一種の樹脂において、分子量や単量体組成などの各物性のうちいずれか1つまたは複数の物性が異なる樹脂を2種以上併用して使用してもよい。
【0033】
ポリエステル樹脂としては、特に制限されず公知のものを使用でき、たとえば、多塩基酸類と多価アルコール類との縮重合物が挙げられる。多塩基酸類とは、多塩基酸、および多塩基酸の誘導体たとえば多塩基酸の酸無水物またはエステル化物などのことである。多価アルコール類とは、ヒドロキシル基を2個以上含有する化合物のことであり、アルコール類およびフェノール類のいずれをも含む。
【0034】
多塩基酸類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸およびナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸およびアジピン酸などの脂肪族カルボン酸類が挙げられる。多塩基酸類は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0035】
多価アルコール類としてもポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびグリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよび水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類が挙げられる。「ビスフェノールA」とは、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンのことである。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。多価アルコール類は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0036】
ポリエステル樹脂は、縮重合反応によって合成することができる。たとえば、有機溶媒中または無溶媒下で、触媒の存在下に多塩基酸類と多価アルコール類とを重縮合反応、具体的には脱水縮合反応させることによって合成することができる。このとき、多塩基酸類の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用い、脱メタノール重縮合反応を行なってもよい。多塩基酸類と多価アルコール類との重縮合反応は、生成するポリエステル樹脂の酸価および軟化温度が、合成しようとするポリエステル樹脂における値となったところで終了させればよい。この重縮合反応において、多塩基酸類と多価アルコール類との配合比および反応率などの反応条件を適宜変更することによって、たとえば、得られるポリエステル樹脂の末端に結合するカルボキシル基の含有量、ひいては得られるポリエステル樹脂の酸価を調整することにより、軟化温度などの他の物性値を調整することもできる。
【0037】
アクリル樹脂としても特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえばアクリル系モノマーの単独重合体およびアクリル系モノマーとビニル系モノマーとの共重合体が挙げられる。その中でも、酸性基を有するアクリル樹脂が好ましい。
【0038】
アクリル系モノマーとしては、アクリル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用でき、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシルおよびアクリル酸ドデシルなどのアクリル酸エステル系単量体、ならびにメタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシルおよびメタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。これらのアクリル系モノマーは、置換基を有していてもよい。
【0039】
置換基を有するアクリル系モノマーとしては、たとえば、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基を有するアクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。アクリル系モノマーは、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0040】
ビニル系モノマーとしても公知のものを使用でき、たとえば、スチレンおよびα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、臭化ビニル、塩化ビニルおよび酢酸ビニルなどの脂肪族ビニル単量体、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルなどのアクリロニトリル系単量体などが挙げられる。ビニル系モノマーは、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0041】
アクリル樹脂は、たとえば、アクリル系モノマーの1種または2種以上、もしくアクリル系モノマーの1種または2種以上とビニル系モノマーの1種または2種以上とを、ラジカル重合開始剤の存在下に、溶液重合法、懸濁重合法または乳化重合凝集法などで重合させることによって製造することができる。酸性基を有するアクリル樹脂は、たとえば、アクリル系モノマーまたはアクリル系モノマーとビニル系モノマーとを重合させるに際し、酸性基または親水性基を含有するアクリル系モノマーおよび酸性基または親水性基を有するビニル系モノマーのいずれか一方または両方を用いることによって製造することができる。
【0042】
ポリウレタン樹脂としても特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえば、ポリオールとポリイソシアネートとの付加重合物が挙げられる。その中でも、酸性基または塩基性基を有するポリウレタン樹脂が好ましい。酸性基または塩基性基を有するポリウレタン樹脂は、たとえば、酸性基または塩基性基を有するポリオールと、ポリイソシアネートとを付加重合反応させることによって合成することができる。
【0043】
酸性基または塩基性基を有するポリオールとしては、たとえば、ジメチロールプロピオン酸、N−メチルジエタノールアミンなどのジオール類、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオールなどの3価以上のポリオール類などが挙げられる。ポリオールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0044】
ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。ポリイソシアネートは、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0045】
エポキシ樹脂としても特に制限されず、公知のものを使用でき、たとえば、ビスフェノールAとエピクロヒドリンとから合成されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールとホルムアルデヒドとの反応生成物であるフェノールノボラックとエピクロルヒドリンとから合成されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールとホルムアルデヒドとの反応生成物であるクレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとから合成されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。その中でも、酸性基または塩基性基を有するエポキシ樹脂が好ましい。酸性基または塩基性基を有するエポキシ樹脂は、たとえば、前述のエポキシ樹脂をベースとし、このベースのエポキシ樹脂にアジピン酸、無水トリメリット酸などの多価カルボン酸またはジブチルアミン、エチレンジアミンなどのアミンを付加または付加重合させることによって製造することができる。
【0046】
結着樹脂において、主成分である樹脂は、前述の樹脂の中でもポリエステル樹脂であることが好ましい。結着樹脂の主成分である樹脂としてポリエステル樹脂を使用することによって、優れたシャープメルト性および耐久性を兼ね備えたカラートナーに最適なトナーを得ることができる。また、ポリエステル樹脂はアクリル樹脂などの他の樹脂に比べて軟化温度(T1/2)が低いので、ポリエステル樹脂を用いることによって、より低い温度で定着することのできる低温定着性に優れるトナーを得ることができる。さらに、ポリエステル樹脂は透過性に優れるので、ポリエステル樹脂を用いることによって、発色性に優れ、また他の色のトナーとの重ね合わせによって作製される二次色の発色性に優れるカラートナーを得ることができる。
【0047】
主成分である樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、得られるトナーの定着性および保存安定性などを考慮すると、30℃以上80℃以下であることが好ましい。30℃未満であると、保存安定性が不充分になるため画像形成装置内部でのトナーの熱凝集が起こりやすくなり、現像不良が発生するおそれがある。またホットオフセット現象が発生し始める温度(以後、「ホットオフセット開始温度」と記す)が低下してしまう。「ホットオフセット現象」とは、加熱ローラなどの定着部材で加熱および加圧してトナーを記録媒体に定着させる際に、トナーが過熱されることによってトナー粒子の凝集力がトナーと定着部材との接着力を下回ってトナー層が分断され、トナーの一部が定着部材に付着して取去られる現象のことである。また80℃を超えると、定着性が低下するため定着不良が発生するおそれがある。
【0048】
主成分である樹脂の軟化温度(T1/2)は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、150℃以下であることが好ましく、さらには60℃以上120℃以下であることが好ましい。60℃未満であると、トナーの保存安定性が低下し、画像形成装置内部でトナーの熱凝集が起こりやすくなり、トナーを安定して像担持体に供給することができず、現像不良が発生するおそれがある。また画像形成装置の故障が誘発されるおそれもある。120℃を超えると、溶融混練工程において結着樹脂が溶融しにくくなるため、トナーの各原料の混練が困難になり、溶融混練物中における着色剤、離型剤および帯電制御剤などの分散性が低下するおそれがある。またトナーを記録媒体に定着させる際に、トナーが溶融または軟化しにくくなるので、トナーのメディア(記録媒体)への定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
【0049】
主成分である樹脂の分子量は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるが、重量平均分子量(Mw)で5000以上500000以下であることが好ましい。5000未満であると、結着樹脂の機械的強度が低下し、得られるトナー粒子が現像装置内部での撹拌などによって粉砕されやすくなり、トナー粒子の形状が変化し、たとえば帯電性能にばらつきが生じるおそれがある。また500000を超えると、溶融されにくくなるため、溶融混練工程における混練が困難になり、溶融混練物中における着色剤、離型剤および帯電制御剤などの分散性が低下するおそれがある。またトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。ここで、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(Gel
Permeation chromatography;略称GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値である。
【0050】
このような樹脂を主成分として含んで結着樹脂が構成されることによって、その分子量分布を優れた低温定着性を得るために最適な値となるように制御することができる。また、植物由来成分から成る樹脂が結晶性樹脂であり、結晶性樹脂を含んで結着樹脂が構成されることによって、地球環境保全に配慮したカーボンニュートラルなトナーを得ることができる。さらに、上記結晶性樹脂のトナー中での分散に起因するフィラー効果によって優れた耐ホットオフセット性を得ることができる。したがって、定着性および保存安定性を良好に保つことができる。
【0051】
(植物由来成分から成る樹脂)
植物由来成分から成る樹脂としては、バイオマスを含むものであれば特に限定されるものではない。植物由来成分から成る樹脂は、結晶性樹脂であることが好ましい。バイオマスとしては、たとえば、乳酸系ポリマー、詳しくは、ポリ乳酸樹脂、および乳酸と他のヒドロキシカルボン酸とのコポリマーなどが挙げられる。コモノマーとして用いられる他のヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸などが例示される。上述の乳酸系ポリマーは、カーボンニュートラルなバイオマスポリマーである。
【0052】
これらの乳酸系ポリマーは、L−乳酸、D−乳酸および他のヒドロキシカルボン酸の中から必要とする構造のものを選んで原料とし、脱水縮重合することによって得ることができる。特には、乳酸の環状二量体であるラクチド、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド、およびカプロラクトンなどから必要とする構造のものを選んで開環重合することによって得ることが好ましい。
【0053】
上述のような植物由来成分から成る樹脂は、下記化学式(1)で示されるユニットを含んで構成されることが好ましく、さらにはポリ乳酸樹脂であることが好ましい。
−[O−CH(CH)−CO]− …(1)
(式中、nは、正の整数を表す。)
【0054】
これによって、地球環境保全に対してより一層配慮され、環境安全性に優れ、二酸化炭素削減に効果的なトナーを得ることができる。
【0055】
ポリ乳酸樹脂の原料であるラクチドには、L−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソ−ラクチド、およびD−ラクチドとL−ラクチドとのラセミ混合物であるDL−ラクチドがある。本発明ではいずれのラクチドでも用いることができる。
【0056】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。たとえば、乳酸の環状二量体であるラクチドを加熱溶融させて均一混合させた後、公知の重合触媒を使用して加熱開環重合させる方法や、加熱および減圧によって乳酸モノマーから直接脱水重縮合させる方法などが挙げられる。
【0057】
上述の重合反応に用いられる重合触媒としては、特に限定されるものではないが、公知の乳酸重合用触媒を用いることができる。たとえば、オクチル酸スズ、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリル酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフトエ酸スズおよびβ−ナフトエ酸スズなどのスズ系化合物、粉末スズ、酸化スズ、亜鉛末、ハロゲン化亜鉛および酸化亜鉛などの有機亜鉛系化合物、テトラプロピルチタネートなどのチタン系化合物、ジルコニウムイソプロポキシドなどのジルコニウム系化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物、酸化ビスマス(III)などのビスマス系化合物、ならびに酸化アルミニウムおよびアルミニウムイソプロポキシドなどのアルミニウム系化合物などを挙げることができる。これらの重合触媒の使用量としては、たとえば開環重合を行う場合、ラクチドに対して0.001重量%〜5重量%程度である。重合反応は、上述の重合触媒の存在下、触媒種によって異なるが、通常100℃〜220℃の温度で行うことができる。
【0058】
なお、ポリ乳酸樹脂における、L−乳酸ユニットに対するD−乳酸ユニットのモル比は特に限定されるものではなく、融点などが所望の数値範囲となるように、適宜選択されればよい。
【0059】
上記化学式(1)で示されるユニットであるポリ乳酸を含んで構成される植物由来成分から成る樹脂は、結着樹脂全量に対して20重量%以上50重量%以下の割合で含有されることが好ましい。これによって、化学式(1)で示されるユニットであるポリ乳酸を含んで構成される植物由来成分から成る樹脂を結着樹脂に使用することにおいて問題になる加水分解性を充分に改善することができる。結着樹脂全量に対して20重量%未満の割合で含有されると、含有比率が低いため、地球環境保全に配慮したとは言い難い。結着樹脂全量に対して50重量%を超えて含有されると、疎水性微粒子を内添することによる耐加水分解性の改善効果を打ち消してしまい、耐加水分解性を充分に改善することができない。したがって、高温高湿環境下においても、トナー性能の経時変化を抑えられ、定着性および帯電性を良好にすることができ、長期間にわたって良好な画像をより安定して形成することができる。
【0060】
また、植物由来成分から成る樹脂が結晶性樹脂である場合に結着樹脂全量に対して植物由来成分から成る樹脂が20重量%以上50重量%以下で含有させるとトナー中の結晶性樹脂の分散性を良好に保つことができる。植物由来成分から成る樹脂が20重量%未満で含有されると、ポリ乳酸樹脂のトナー中での分散性が低下し、結晶性樹脂を含有することにより得られるフィラー効果が充分に得られず、耐ホットオフセット性が低下するおそれがある。植物由来成分から成る樹脂が50重量%を超えて含有されると、低温定着に最適な分子量分布を得ることが困難になり、定着性が悪化してしまうおそれがある。また、トナーの各原料の溶融混練が困難になるおそれがある。
【0061】
植物由来成分から成る樹脂が結晶性樹脂である場合には、植物由来成分から成る樹脂の融点(Tm)は、周波数1Hzにおけるトナーの損失弾性率G”が10Paになる温度よりも5℃〜10℃高い温度であることがこのましい。これによって、結晶性樹脂が溶融しない温度でトナーを定着させることができるため、結晶性樹脂の分散状態を維持することができ良好な定着性を得ることができる。また、定着後の結晶性樹脂の再結晶化によりその分散状態が不均一になることを防ぐことができるため、光透過性の悪化を抑えることができる。このようなトナーは、光透過性の均一性に偏りがなく、カラートナーに適するトナーである。なお、上記再結晶化とは、紙やOHPシートなどのメディア上に定着する際に、結晶性樹脂が溶融した後冷却固化されることによって再び結晶化する現象のことを示す。なお、融点(Tm)とは、示差走査熱量測定(Differential Scanning
Calorimetry:略称DSC)によって得られるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの温度のことである。
【0062】
植物由来成分から成る樹脂の分子量は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できる。主成分である樹脂および上記結晶性樹脂のそれぞれの分子量は特に制限されず、トナーの分子量分布が優れた耐ホットオフセット性および低温定着性を得るために最適な数値範囲となるように、適宜選択されればよい。
【0063】
植物由来成分から成る樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず、主成分である樹脂との組み合わせによって適宜選択されればよい。
【0064】
(2)着色剤
着色剤としては、染料および顔料が挙げられる。その中でも、顔料を用いることが好ましい。顔料は染料に比べて耐光性および発色性に優れるので、顔料を用いることによって耐光性および発色性に優れるトナーを得ることができる。着色剤の具体例としては、以下に記すように、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、およびブラックトナー用着色剤などが挙げられる。以下では、カラーインデックス(Color Index)を「C.I.」と略記する。
【0065】
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0066】
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0067】
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、およびC.I.ダイレクトブルー86やKET.BLUE111などが挙げられる。
【0068】
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。これら各種カーボンブラックの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択すればよい。
【0069】
これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用できる。着色剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
【0070】
着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造することができる。合成樹脂としては、トナーの結着樹脂における主成分である樹脂と同種の樹脂またはトナーの結着樹脂における主成分である樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。合成樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒径2mm〜3mm程度に造粒されて用いられる。
【0071】
本発明のトナーにおける着色剤の含有量は特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上20重量部以下である。マスターバッチを用いる場合には、本発明のトナーにおける着色剤の含有量が上記範囲になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。着色剤の含有量が上記範囲の値であることにより、着色剤の添加によるフィラー効果を抑え、かつ高着色力を有するトナーを得ることができる。また、充分な画像濃度を有し、発色性が高く画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。着色剤の含有量が20重量部を超えると、着色剤のフィラー効果によって、弾性が上昇し、トナーの定着性が低下するおそれがある。
【0072】
(3)疎水性微粒子
前述のように本実施形態のトナーにおいてトナー粒子には疎水性微粒子が内添されている。トナー粒子に疎水性微粒子を内添することによって、トナー粒子中の水分量を抑制でき、加水分解性の高い植物由来成分から成る樹脂を含む結着樹脂の耐加水分解性を改善することができる。したがって、地球環境保全に配慮し、環境安定性に優れ、耐加水分解性の高いトナーを実現することができる。このようなトナーを用いて画像を形成すると、高温高湿環境下においても、トナー性能の経時変化を抑えられ、帯電性を良好にすることができるので、長期間にわたって良好な画像を安定して形成することができる。
【0073】
疎水性微粒子は、疎水性であり、トナー粒子径よりも小さいものであれば、特に限定されるものではないが、たとえばトナーの外添剤として使用されている無機微粒子を疎水化処理した疎水性無機微粒子が好適である。
【0074】
無機微粒子としては、たとえばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を挙げることができるが、本発明においてはシリカが好ましい。
【0075】
無機微粒子を疎水化処理するための疎水化処理剤としては、たとえば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルジクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、p−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、クロルメチルトリクロルシラン、p−クロルフェニルトリクロルシラン、3−クロルプロピルトリクロルシラン、3−クロルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルジクロルシラン、ジメチルビニルクロルシラン、オクチルトリクロルシラン、デシルトリクロルシラン、ノニルトリクロルシラン、(4−t−プロピルフェニル)トリクロルシラン、(4−t−ブチルフェニル)トリクロルシラン、ジペンチルジクロルシラン、ジヘキシルジクロルシラン、ジオクチルジクロルシラン、ジノニルジクロルシラン、ジデシルジクロルシラン、ジドデシルジクロルシラン、ジヘキサデシルジクロルシラン、(4−t−ブチルフェニル)オクチルジクロルシラン、ジオクチルジクロルシラン、ジデセニルジクロルシラン、ジノネニルジクロルシラン、ジ−2−エチルヘキシルジクロルシラン、ジ−3,3−ジメチルペンチルジクロルシラン、トリヘキシルクロルシラン、トリオクチルクロルシラン、トリデシルクロルシラン、ジオクチルメチルクロルシラン、オクチルジメチルクロルシラン、(4−t−プロピルフェニル)ジエチルクロルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ジエチルテトラチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン等の有機系シラン化合物やジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル、メタクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル、その他シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤などが挙げられる。中でも有機系シラン化合物が好ましい。
【0076】
これら疎水化処理剤で前記無機微粒子を処理することによって疎水化処理されたシリカ微粒子の商品名としては、HDK H 2000、HDK H 2000/4、HDK H 2050EP、HVK21(以上ヘキスト社製)やR972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(以上日本アエロジル社製)、TS530、TS720(以上キャボット社製)などが挙げられる。
【0077】
疎水性微粒子の平均一次粒子径は、トナー粒子中への分散などの点から0.2μm以下であることが好ましい。平均一次粒径が0.2μmより大きい疎水性微粒子を用いると、疎水性微粒子の表面積が小さくなり、本発明の効果が充分に発揮できないばかりでなく、トナー粒子中への分散状態が疎密になり、充分な効果が得られない。これら疎水性微粒子の添加量は、トナーに対し0.05重量%以上5.0重量%以下、好ましくは0.3重量%以上2.0重量%以下である。0.05重量%以下であると、耐加水分解性の効果が得られなくなり、5.0重量%以上であると、トナーの熱物性に影響を与え、トナーの定着性が低下するおそれがある。
【0078】
疎水性微粒子は、結着樹脂に対して0.1重量部以上5重量部以下の割合でトナー粒子に内添されることが好ましい。疎水性微粒子が結着樹脂100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下の割合でトナー粒子に内添されることによって、耐加水分解性をより一層改善することができる。
【0079】
トナー粒子に内添されている疎水性微粒子の表面積の合計は、結着樹脂100重量部に対して300m以上1200m以下の範囲内であることが好ましい。このような表面積の範囲内で疎水性微粒子を内添することによって、疎水性微粒子を内添することによる効果を充分に発揮し、結着樹脂の加水分解性を一層改善することができる。疎水性微粒子の表面積の合計が結着樹脂100重量部に対して300m未満であると、充分な加水分解性の改善効果を得ることができない。疎水性微粒子の表面積の合計が結着樹脂100重量部に対して1200mを超えると、疎水性微粒子の添加によるフィラー効果でトナーの定着性が悪化する。したがって、高温高湿環境下においても、トナー性能の経時変化を抑えられ、帯電性を良好にすることができ、長期間にわたって良好な画像をより一層安定して形成することができる。
【0080】
疎水性微粒子の疎水化度は80%以上であることが好ましい。疎水性微粒子の疎水化度が80%以上であると、耐加水分解性の改善効果を顕著に発揮することができ、結着樹脂の加水分解性をより一層改善することができる。したがって、高温高湿環境下においても、トナー性能の経時変化を抑えられ、帯電性を良好にすることができ、長期間にわたって良好な画像をより一層安定して形成することができる。
【0081】
(4)その他の構成成分
本実施形態のトナーには、結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子の他に、離型剤、帯電制御剤などのその他のトナー成分が添加されていてもよい。
【0082】
(離型剤)
離型剤は、トナーを記録媒体に定着させる際にトナーに離型性を付与するために添加される。したがって、離型剤を使用しない場合と比較してホットオフセット開始温度を高め、耐ホットオフセット性を向上させることができる。さらに、トナーを定着させる際の加熱によって離型剤を溶融させて定着開始温度を低下させることで、低温定着性を向上させることができる。
【0083】
離型剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえばワックスなどが挙げられる。ワックスとしては、パラフィンワックス.カルナバワックスおよびライスワックスなどの天然ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックスおよびフィッシャートロプッシュワックスなどの合成ワックス、モンタンワックスなどの石炭系ワックスなどの石油系ワックス、アルコール系ワックス、ならびにエステル系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0084】
離型剤の配合量は特に制限されず、結着樹脂、着色剤などの他の成分の種類および含有量、作製しようとするトナーに要求される特性などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択することができるが、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して、3重量部以上10重量部以下である。離型剤の配合量が3重量部未満であると、低温定着性および耐ホットオフセット性の向上効果が充分に発揮されないおそれがある。離型剤の配合量が10重量部を超えると、溶融混練物中における離型剤の分散性が低下し、一定の性能を有するトナーを安定して得ることができなくなるおそれがある。またトナーが感光体などの像担持体の表面に皮膜(フィルム)状に融着するフィルミングと呼ばれる現象が発生しやすくなるおそれがある。
【0085】
離型剤の融点(Tm)は、50℃以上150℃以下であることが好ましく、さらには、80℃以下であることが好ましい。融点が50℃未満であると、現像装置内において離型剤が溶融してトナー粒子同士が凝集したり、感光体表面へのフィルミングなどの不良を引き起こしたりするおそれがある。融点が150℃を超えると、トナーを記録媒体に定着するときに離型剤が充分に溶出することができず、耐ホットオフセット性の向上効果が充分に発揮されないおそれがある。
【0086】
(帯電制御剤)
帯電制御剤は、トナーに好ましい帯電性を付与するために添加する。帯電制御剤としては、正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などの正電荷制御用の帯電制御剤と、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などの負電荷制御用の帯電制御剤が挙げられる。
【0087】
帯電制御剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であり、より好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。帯電制御剤が5重量部よりも多く含まれると、キャリアが汚染されてしまい、トナー飛散が発生するおそれがある。0.5重量部未満であると、トナーに充分な帯電特性を付与することができないおそれがある。
【0088】
カラートナーにおいては無色の帯電制御剤を使用することが望ましく、たとえばサリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩を使用することが望ましい。
【0089】
(5)トナーの製造方法
以下に、本発明の第1の実施形態であるトナーを製造するための方法について説明する。図1は、本実施形態のトナーの製造方法における手順の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態のトナーの製造方法は、ステップS1の前混合工程と、ステップS2の溶融混練工程と、ステップS3の粉砕工程と、ステップS4の分級工程とを含む。前混合工程は、少なくとも、主成分である樹脂と、植物由来成分から成る樹脂とを含んで構成される結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子を混合して混合物を作製する。溶融混練工程は、混合物を溶融混練して溶融混練物を作製する。粉砕工程は、溶融混練物を粉砕して粉砕物を作製する。分級工程は、粉砕物から過粉砕物および粗粉を除去する。
【0090】
トナーの製造方法のうち、重合法などに代表される湿式法は、その製造過程において、水などの水性媒体を使用するので、結着樹脂が吸水して結着樹脂に含まれるバイオマス樹脂の加水分解を助長するおそれがあるが、乾式法においては、製造時において結着樹脂が吸水しにくい。そのため、本発明のトナーを製造するには、前記工程を含むような乾式法である粉砕法が最適である。このような製造方法でトナーを製造することで、製造時の結着樹脂の加水分解を最小限に抑えたトナーを製造することができる。
以下に、ステップS1〜ステップS4の各製造工程について詳細に説明する。
【0091】
(前混合工程)
ステップS1の前混合工程では、少なくとも結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子を混合機によって乾式混合して混合物を作製する。混合物には、結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子の他に、その他のトナー添加成分が含有されていてもよい。その他のトナー添加成分としては、たとえば、前述の離型剤、帯電制御剤などが挙げられる。
【0092】
乾式混合に用いられる混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0093】
(溶融混練工程)
ステップS2の溶融混練工程では、前混合工程で作製された混合物を溶融混練して溶融混練物を作製する。混合物の溶融混練は、結着樹脂の軟化点以上、熱分解温度未満の温度に加熱して行われ、結着樹脂を溶融または軟化させて結着樹脂中に結着樹脂以外のトナーの各原料を分散させる。
【0094】
溶融混練に使用される混練機としては公知のものを使用でき、たとえば、ニーダ、二軸押出機、二本ロールミル、三本ロールミル、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を用いることができる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダや、MOS320−1800、ニーデックス(以上いずれも商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール型混練機などが挙げられる。トナー原料の混合物は、複数の混練機を用いて溶融混練されても構わない。
【0095】
(粉砕工程)
ステップS3の粉砕工程では、溶融混練工程にて得られた溶融混練物を冷却して固化させた後、粉砕して粉砕物を作製する。すなわち、冷却固化された溶融混練物は、まずハンマーミルまたはカッティングミルなどによって、たとえば体積平均粒径100μm以上5mm以下程度の粗粉砕物に粗粉砕される。その後、得られた粗粉砕物は、たとえば体積平均粒径15μm以下の粉砕物にまでさらに微粉砕される。粗粉砕物の微粉砕には、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などを用いることができる。
【0096】
なお、冷却固化された溶融混練物は、ハンマーミルまたはカッティングミルなどによる粗粉砕を経ることなく、直接ジェット式粉砕機または衝撃式粉砕機などにより粉砕されてもよい。
【0097】
(分級工程)
ステップS4の分級工程では、粉砕工程にて作製された粉砕物から、分級機を用いることによって、過粉砕トナー粒子(以下、「過粉砕物」と記す場合がある)や粗大トナー粒子(以下、「粗粉」と記す場合がある)を除去する。過粉砕トナー粒子や粗大トナー粒子は、他のトナーの製造に再利用するために回収して使用することもできる。
【0098】
分級には、遠心力による分級や風力による分級によって過粉砕トナー粒子や粗大トナー粒子を除去できる公知の分級機を使用することができ、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。
【0099】
分級は分級条件を適宜調整して、分級後に得られるトナー粒子の体積平均粒径が3μm以上15μm以下となるように行われることが好ましい。特に高画質画像を得るためには、トナー粒子の体積平均粒径を3μm以上9μm以下とすることが好ましく、さらに画質の向上を図るためには、トナー粒子の体積平均粒径を5μm以上8μm以下とすることが好ましい。トナー粒子の体積平均粒径が3μm未満であると、トナーの粒径が小さくなり過ぎ、高帯電化および低流動化が起こるおそれがある。この高帯電化および低流動化が発生すると、像担持体である感光体にトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。トナー粒子の体積平均粒径が15μmを超えると、トナーの粒径が大きいので、高精細な画像を得ることができない。またトナーの粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、トナーの帯電量が小さくなる。トナーの帯電量が小さくなると、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。なお、上述の調整すべき分級条件とは、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)における分級ロータの回転速度などである。
【0100】
(6)外添剤
上述のようにして製造されたトナー粒子には、たとえば、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性向上、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤を混合してもよい。外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。これらの無機微粉末は、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物などの処理剤で処理されていることが好ましく、1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、トナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対して5重量部以下が好適である。
【0101】
外添剤は、一次粒子の個数平均粒子径が10nm〜500nmであることが好ましい。このような粒径の外添剤を用いることによって、トナーの流動性向上効果が一層発揮されやすくなる。
【0102】
2、現像剤
上述のようにしてトナー粒子に必要に応じて外添剤が外添される本発明のトナーは、そのまま1成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して2成分現像剤として使用することができる。これによって、地球環境保全に配慮し、また高温高湿環境下での帯電安定性に優れる現像剤とすることができる。このような現像剤を用いることで、高温高湿環境下においても帯電性を良好にすることができ、良好な画像を安定して形成することができる。
【0103】
(1)キャリア
キャリアとしては、磁性を有する粒子を使用することができる。磁性を有する粒子の具体例としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。
【0104】
また磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。磁性を有する粒子を被覆する樹脂としては特に制限はないけれども、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂、およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール系樹脂などが挙げられる。
【0105】
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。また、キャリアの体積平均粒子径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、好ましくは10μm〜100μm、さらに好ましくは50μm以下である。
【0106】
このように、キャリアの体積平均粒子径を50μm以下にすることにより、トナーとキャリアとの接触機会が増え、個々のトナー粒子の帯電も適正に制御できるために、非画像部カブリが発生せず、かつ高画質な画像を達成することが出来る。
【0107】
さらにキャリアの抵抗率は、好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1012Ω・cm以上である。キャリアの抵抗率は、キャリアを0.50cmの断面積を有する容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cmの荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値を読取ることから得られる値である。抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアに電荷が注入され、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こりやすくなる。
【0108】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10emu/g〜60emu/g、さらに好ましくは15emu/g〜40emu/gである。磁化強さは現像ローラの磁束密度にもよるけれども、現像ローラの一般的な磁束密度の条件下においては、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また磁化強さが60emu/gを超えると、キャリアの穂立ちが高くなり過ぎる非接触現像では、像担持体と非接触状態を保つことが困難になる。また接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
【0109】
2成分現像剤におけるトナーとキャリアとの使用割合は特に制限されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できるけれども、樹脂被覆キャリア(密度5g/cm〜8g/cm)に例をとれば、現像剤中に、トナーが現像剤全量の2重量%〜30重量%、好ましくは2重量%〜20重量%含まれるように、トナーを用いればよい。また2成分現像剤において、トナーによるキャリアの被覆率は、40%〜80%であることが好ましい。
【0110】
3、現像装置および画像形成装置
図2は、本発明の第2の実施形態である画像形成装置1の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録材にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置1は、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、後述する制御部によって、印刷モードが選択される。
【0111】
画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、転写手段3と、定着手段4と、記録材供給手段5と、排出手段6とを含む。トナー像形成手段2を構成する各部材および転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0112】
トナー像形成手段2は、感光体ドラム11と、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像手段14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12、現像手段14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像手段14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。帯電手段12および露光ユニット13は、潜像形成手段に相当する。
【0113】
像形成体である感光体ドラム11は、図示しない駆動手段によって、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属およびこれらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルムまたは紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、ならびに導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
【0114】
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であってもよい。
【0115】
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部以上500重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上200重量部以下である。
【0116】
電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミドおよびポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
【0117】
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することによって形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上2.5μm以下である。
【0118】
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニルおよびベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10重量部以上300重量部以下、さらに好ましくは30重量部以上150重量部以下である。
【0119】
電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0120】
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、ならびに有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.05重量%以上5重量%以下である。
【0121】
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することによって形成できる。このようにして得られる電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。
【0122】
なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
【0123】
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
【0124】
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、たとえば、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置してもよく、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
【0125】
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像手段14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
【0126】
クリーニングユニット15は、記録材にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。本発明の画像形成装置1において、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
【0127】
トナー像形成手段2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像手段14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0128】
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、中間転写ローラ28と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。
【0129】
中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置される中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。
【0130】
駆動ローラ26は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。
【0131】
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録材の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。
【0132】
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部、すなわち転写ニップ部において、中間転写ベルト25に担持されて搬送されるトナー像が、後述する記録材供給手段5から送給される記録材に転写される。トナー像を担持する記録材は、定着手段4に送給される。
【0133】
転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録材に転写される。
【0134】
定着手段4は、転写手段3より記録材の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録材に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録材に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。定着ローラ31表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。
【0135】
加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ32は、定着ローラ31によってトナーが溶融して記録材に定着する際に、トナーと記録材とを押圧することによって、トナー像の記録材への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。
【0136】
定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録材が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録材に押圧されることによって、トナー像が記録材に定着され、画像が形成される。
【0137】
記録材供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録材を貯留する容器状部材である。記録材には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録材を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録材をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録材を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録材を画像形成装置1内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録材は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録材供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録材を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0138】
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録材を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録材を、画像形成装置1の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録材を貯留する。
【0139】
画像形成装置1は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録材判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。
【0140】
外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HDDVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
【0141】
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ、すなわち、画像形成命令、検知結果、画像情報など、および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(Central Processing Unit;CPU)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置内部における各装置にも電力を供給する。
【0142】
図3は、図2に示す現像装置20の構成を模式的に示す概略断面図である。現像手段14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ110、供給ローラ111、撹拌ローラ112などのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部114が形成され、この開口部114を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ110が回転駆動可能に設けられる。
【0143】
現像ローラ110は、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ110表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ110表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。
【0144】
供給ローラ111は現像ローラ110を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ110周辺にトナーを供給する。攪拌ローラ112は供給ローラ111を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ111周辺に送給する。
【0145】
トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口113と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口115とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
【0146】
このように、本発明の現像装置14は、本発明の現像剤を用いて潜像を現像するので、感光体ドラム11に良好なトナー像を安定して形成することができる。したがって、良好な画像を安定して形成することができる。また、前述のように良好なトナー像を形成可能な本発明の現像装置14を備えて画像形成装置1が実現される。このような画像形成装置1で画像を形成することによって、長期間にわたって良好な画像を安定して形成することができる。
【0147】
本発明の画像形成装置1は、潜像が形成される感光体ドラム11と、感光体ドラム11表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、定着ローラと、定着ローラの外周面を押圧する加圧手段とで形成される圧接部にトナー像が転写された記録媒体を通過させることによって、トナー像に含まれるトナーを熱溶融して、トナー像を記録媒体に定着させる定着手段とを備えて画像形成装置1が実現される。このような画像形成装置1で画像を形成することによって、長期間にわたって良好な画像を安定して形成することができる。
【0148】
また、本発明の画像形成装置1は、本発明の現像装置14を備えるので、高温高湿環境下においても安定した性能を維持でき、高精細で高解像度のトナー像を感光体ドラム11に安定して形成することができる。したがって、良好な画像を安定して形成することができる。
【実施例】
【0149】
以下に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り特に本実施例に限定されるものではない。
【0150】
(物性値測定方法)
実施例および比較例における各物性値は、以下に示すようにして測定した。
【0151】
〔結着樹脂のガラス転移温度(Tg)〕
示差走査熱量計(商品名:Diamond DSC、パーキンエルマージャパン株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料0.01gを昇温速度毎分10℃(10℃/min)で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの低温側のベースラインを高温側に延長した直線とピークの低温側の曲線に対して勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
【0152】
〔結着樹脂の軟化温度(T1/2)〕
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−500C、株式会社島津製作所製)を用い、試料1gをシリンダに挿入し、ダイから押出されるように荷重10kgf/cm(0.980665MPa)を与えながら、昇温速度毎分6℃(6℃/min)で加熱し、ダイから試料の半分が流出したときの温度を軟化温度として求めた。ダイには、口径1mm、長さ1mmのものを用いた。
【0153】
〔結着樹脂の重量平均分子量(Mw)および、分子量分布指数(Mw/Mn)〕
GPC装置(商品名:HLC−8220GPC、東ソー株式会社製)を用い、温度40℃において、試料の0.25重量%のテトラヒドロフラン(以下、「THF」と記す)溶液を試料溶液とし、試料溶液の注入量を200μLとして、分子量分布曲線を求めた。得られた分子量分布曲線のピークの頂点の分子量をピークトップ分子量として求めた。また得られた分子量分布曲線から、重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを求め、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比である分子量分布指数(Mw/Mn;以下、単に「Mw/Mn」と記す)を求めた。なお、分子量校正曲線は標準ポリスチレンを用いて作成した。
【0154】
〔結着樹脂の酸価〕
酸価は以下のようにして中和滴定法によって測定した。THF50mLに、試料5gを溶解させ、指示薬としてフェノールフタレインのエタノール溶液を数滴加えた後、0.1モル/Lの水酸化カリウム(KOH)水溶液で滴定を行なった。試料溶液の色が無色から紫色に変化した点を終点とし、終点に達するまでに要した水酸化カリウム水溶液の量と滴定に供した試料の重量とから、酸価(mgKOH/g)を算出した。
【0155】
〔結着樹脂のTHF不溶分〕
試料1gを円筒濾紙に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF100mLを用いて6時間加熱還流して、試料中のTHFに可溶な成分をTHFによって抽出した。抽出されたTHF可溶分を含む抽出液から溶媒を除去した後、THF可溶分を100℃で24時間乾燥し、得られたTHF可溶分の重量X(g)を秤量した。求めたTHF可溶分の重量X(g)と、測定に用いた試料の重量(1g)とから、下記式(2)に基づいて、結着樹脂中のTHFに不溶な成分であるTHF不溶分の割合P(重量%)を算出した。以下、この割合PをTHF不溶分と記す。
P(重量%)={1(g)−X(g)}/1(g)×100 …(2)
【0156】
〔離型剤の融点(Tm)〕
示差走査熱量計(商品名:Diamond DSC、パーキンエルマージャパン株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料0.01gを温度20℃から200℃まで1分間当たり10℃の割合で昇温させ、次いで200℃から20℃まで1分間当たり50℃の割合で降温させた後、再度、温度20℃から200℃まで1分間当たり10℃の割合で昇温させることにより得られるDSC曲線の融解熱のピークについて、ピークの頂点の温度を融点(Tm)として求めた。
【0157】
〔トナーの体積平均粒径(D50v)および、変動係数(CV値)〕
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(分散剤、キシダ化学株式会社製)1mlを添加し、超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)にて超音波周波数20kHzで3分間超音波分散処理したものを測定用試料とした。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径20μm、測定粒子数50000カウントの条件下に試料粒子の粒径の測定を行い、得られた測定結果から試料粒子の体積粒度分布を求め、求めた体積粒度分布から体積平均粒径D50V(μm)を算出した。また、体積粒度分布における標準偏差を求めて、下記式(3)に基づいて変動係数(CV値、%)を算出した。なお、体積平均粒径D50V(μm)とは、累積体積分布における大粒径側からの累積体積が50%になる粒径のことを示す。
CV値(%)={体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒径(μm)}×100
…(3)
【0158】
〔疎水性微粒子の粒子径〕
電子顕微鏡(商品名:VE−9500、株式会社キーエンス製)によって20,000倍の倍率で疎水性微粒子を写真撮影し、無作為に抽出した100個の疎水性微粒子について、その長径の平均値を求めた。
【0159】
〔疎水性微粒子の疎水化度〕
純水50mlに0.2gの疎水性微粒子を添加し、マグネチックスターラーで緩やかに攪拌しながら、メタノールを滴下し、疎水性微粒子の全量が液面以下に沈降した時のメタノールの量を測定し、下記式(4)から、疎水化度を算出した。
疎水化度(%)=メタノール量(ml)/{純水量(ml)+メタノール量(ml)}
×100 …(4)
【0160】
〔疎水性微粒子の表面積の合計〕
疎水性微粒子の表面積の合計は、疎水性微粒子のBET比表面積を測定し、下記式(5)から算出した。BET比表面積は、相対圧力3点に対する窒素吸着量から傾きAを求め、BET式から比表面積値を求めるBET3点法で測定した。BET比表面積の測定には、比表面積・細孔分布測定装置(商品名:NOVAe 4200e、ユアサアイオニクス株式会社製)を用いた。
疎水性微粒子の表面積の合計(m)=疎水性微粒子のBET比表面積(m/g)
×疎水性微粒子の添加比率(wt%)
×100(g) …(5)
【0161】
[結着樹脂の作製]
ポリエステル樹脂A(ガラス転移温度(Tg):60℃、軟化温度(T1/2):125℃、重量平均分子量72500、Mw/Mn=15.2、酸価3、THF不溶分5%)80.0重量部およびポリ乳酸樹脂(商品名:テラマックTE−2000C、ユニチカ株式会社製、融点(Tm):170℃)20.0重量部を、撹拌装置および加熱装置を備えた容器に入れ、撹拌しながら220℃まで昇温して、樹脂を溶融させて、加熱撹拌を行い、結着樹脂B(ガラス転移温度(Tg):55℃、軟化温度(T1/2):110℃、ピークトップ分子量10500、Mw/Mn=5.1、酸価5、THF不溶分4%)を得た。
【0162】
表1に示すポリ乳酸樹脂比率になるように、ポリエステル樹脂Aとポリ乳酸樹脂との混合割合を調整する以外は上記結着樹脂Bの作製方法と同様にして、結着樹脂C,D,Eを得た。
【0163】
(実施例1)
[前混合工程]
結着樹脂として樹脂B 88.5重量%(100重量部)と、着色剤としてKET.BLUE111(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)5.0重量%(5.6重量部)と、離型剤としてパラフィンワックス(商品名:HNP−10、日本精蝋株式会社製、融点(Tm):75℃)3.0重量%(3.4重量部)と、疎水性微粒子として疎水性シリカ(商品名:R−974、比表面積:200m/g、日本アエロジル株式会社製)2.0重量%(2.3重量部)、および帯電制御剤(商品名:Copy Charge N4P VP 2481、クラリアントジャパン株式会社製)1.5重量%(1.7重量部)を含有するトナー原料をヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)にて3分間混合し、混合物を得た。
【0164】
[溶融混練工程]
前混合工程で得られた混合物20.0kgを、オープンロール型(2本ロール型)連続混練機(商品名:MOS320−1800、三井鉱山株式会社製)で溶融混練して溶融混練物を作製した。このときのオープンロール型連続混練機の設定条件は、加熱ロールの供給側温度が140℃、排出側温度が70℃であり、冷却ロールの供給側温度が80℃、排出側温度が15℃であった。加熱ロールおよび冷却ロールとしては、ともに直径が320mm、有効長が1550mmであるロールを用い、供給側および排出側におけるロール間ギャップをいずれも0.3mmとした。また、加熱ロールの回転数を75rpm、冷却ロールの回転数を65rpmとし、混合物の供給量を30kg/hとした。
【0165】
[粉砕工程および分級工程]
溶融混練工程にて得られた溶融混練物を室温まで冷却して固化した後、カッターミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した。次いで、粗粉砕によって得られた粗粉砕物をカウンタージェットミル(商品名:AFG、ホソカワミクロン株式会社製)によって微粉砕した後、得られた粉砕物をロータリー式分級機(商品名:TSPセパレータ、ホソカワミクロン株式会社製)によって分級して過粉砕トナー粒子や粗粉トナー粒子を除去してトナー粒子を得た。
【0166】
[外添工程]
分級工程で得られたトナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(商品名:R−974、日本アエロジル株式会社製)0.2重量部と、疎水性チタン(商品名:T−805、日本アエロジル株式会社製)0.3重量部とを添加し、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合することによって実施例1のトナー500gを製造した。
【0167】
得られたトナーの体積平均粒径は6.7μmであり、変動係数(CV値)は23%であった。
【0168】
(実施例2〜24、比較例1〜4)
結着樹脂の種類、疎水性微粒子の添加量、比表面積および合計の表面積、ならびに疎水性微粒子の疎水化度を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜24および比較例1〜4のトナーを製造した。
【0169】
実施例1〜24および比較例1〜4で得られたトナーにおいて、結着樹脂の種類、結着樹脂全量に対するポリ乳酸樹脂の比率、結着樹脂100重量部に対する疎水性微粒子の表面積の合計、疎水性微粒子の疎水化度などを表1に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
(評価)
実施例1〜24および比較例1〜4のトナーについて、以下のようにして、耐加水分解性、定着性および帯電安定性を評価した。
【0172】
<2成分現像剤の作製>
実施例1〜24および比較例1〜4のトナーと、体積平均粒子径が45μmのフェライトコアキャリアとを用いて、キャリアに対する前記トナーの被覆率が60%となるように、V型混合器混合機(商品名:V−5、株式会社特寿工作所製)にて20分間それぞれ混合して2成分現像剤を作製した。
【0173】
〔耐加水分解性〕
トナー0.5gをそれぞれ成型用冶具(25mmΦ)に入れ、簡易成形器(商品名:テーブルプレスTB−50H、NPaシステム社製)を用い、室温25℃、圧力30MPaで1分間プレスして、プレート状のサンプルを作製した。80℃/85%RHの恒温恒湿槽中で24時間保管した後のサンプルと初期のサンプルとの重量平均分子量(Mw)を測定した。耐加水分解性の評価には、分子量保持率(%)を用い、分子量保持率(%)は、測定した前記重量平均分子量(Mw)を下記式(6)に代入して求めた。
分子量保持率(%)=(24時間後の重量平均分子量/初期の重量平均分子量)
×100 …(6)
【0174】
耐加水分解性の評価基準は、次のとおりである。
◎:非常に良好。分子量保持率が90%以上である。
○:良好。分子量保持率が80%以上90%未満である。
△:可。分子量保持率が70%以上80%未満である。
×:不可。分子量保持率が70%未満である。
【0175】
〔定着性〕
カラー複合機(商品名:MX−2700、シャープ株式会社製)を改造したものに実施例1〜24および比較例1〜4のトナーを含む前記2成分現像剤を充填した。べた画像部における未定着状態でのトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cmになるように調整して、縦20mm、横50mmの長方形状のべた画像部を含むサンプル画像を用いて記録媒体である記録用紙(商品名:PPC用紙SF−4AM3、シャープ株式会社製)に未定着画像を形成した。前記カラー複合機の定着部を用いて作製した外部定着器で、この未定着画像を定着させた。
【0176】
定着プロセス速度は124mm/秒とし、定着ローラの温度を130℃から10℃刻みで上げていき、低温オフセットも高温オフセットも起こらない温度域を求め、それを定着非オフセット域とした。オフセットの定義としては、定着時にトナーが記録用紙に定着せずに定着ローラに付着したまま前記ローラが一周した後に記録用紙に付着することとした。オフセットが発生する温度のうち、定着非オフセット域の上限の温度より高い温度で発生するオフセットを高温オフセットとし、定着非オフセット域の下限の温度より低い温度で発生するオフセットを低温オフセットとした。
【0177】
定着性の評価基準は、次のとおりである。
◎:非常に良好。定着非オフセット域が60℃以上である。
○:良好。定着非オフセット域が50℃以上60℃未満である。
△:可。定着非オフセット域が30℃以上50℃未満である。
×:不可。定着非オフセット域が30℃未満である。
【0178】
〔帯電安定性〕
トナー5重量部と体積平均粒径45μmのフェライトコアキャリア95重量部とをそれぞれ混合し、温度10℃、相対湿度20%の低温低湿環境下(LL)、および温度35℃、相対湿度80%の高温高湿環境下(HH)でそれぞれ24時間放置した後に、卓上ボールミル(東京硝子器械株式会社製)で30分間攪拌を行ない、2成分現像剤を作製した。得られた2成分現像剤は、帯電量測定装置(商品名:210HS−2A、トレック・ジャパン株式会社製)を用いて、ボールミル内から採集したキャリアとトナーとの混合物を、底部に500メッシュの導電性スクリーンを具備した金属製の容器に入れ、吸引機によってトナーのみを吸引圧250mmHgで吸引し、吸引前の混合物の重量と吸引後の混合物の重量との重量差と、容器に接続されたコンデンサー極板間の電位差とからトナーの帯電量を求めた。低温低湿環境下(LL)で放置した後の帯電量と、高温高湿環境下(HH)で放置した後の帯電量のとの比率である帯電量比(HHの帯電量/LLの帯電量)を計算した。
【0179】
帯電安定性の評価基準は、次のとおりである。
○:良好。帯電量比が80%以上である。
△:可。帯電量比が70%以上80%未満である。
×:不可。帯電量比が70%未満である。
【0180】
〔総合評価〕
上記の耐加水分解性および帯電安定性の評価結果において、◎:3点、○:2点、△:1点、×:0点とし、評価結果の合計点数により、下記のような評価基準で総合評価を行った。
○:良好。合計点数が4点以上である。
△:実使用上問題なし。合計点数が2点以上3点以下である。
×:不良。合計点数が1点以下である。
【0181】
上述のようにして評価した、耐加水分解性、定着性および帯電安定性の評価結果、ならびに総合評価結果を表2に示す。
【0182】
【表2】

【0183】
表2に示すように、トナー粒子に疎水性微粒子が内添された実施例1〜24のトナーは、耐加水分解性、定着性および帯電安定性が良好であった。実施例1,9,13,17は、疎水性微粒子の表面積の合計が充分に大きく、ポリ乳酸樹脂の比率が比較的小さいので、耐加水分解性が特に良好になった。実施例4,8,12,16,20,24は、ポリ乳酸樹脂の比率が比較的高いので、耐加水分解性および帯電安定性が少し低下した。実施例5〜8は、疎水性微粒子の表面積の合計が比較的少ないので、耐加水分解性および帯電安定性が少し低下した。実施例22〜24は、疎水性微粒子の疎水化度が比較的低いので耐加水分解性および帯電安定性が少し低下した。実施例21の疎水性微粒子の疎水化度も比較的低いが、ポリ乳酸樹脂の比率が低いので耐加水分解性および帯電安定性はほとんど低下しなかった。比較例1〜4は、疎水性微粒子を含まず加水分解が発生したので定着性が悪化した。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本実施形態のトナーの製造方法における手順の一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態である画像形成装置1の構成を模式的に示す概略図である。
【図3】図2に示す現像装置20の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0185】
1 画像形成装置
2 トナー像形成手段
3 転写手段
4 定着手段
5 記録材供給手段
6 排出手段
11 感光体ドラム
12 帯電手段
13 露光ユニット
14 現像手段
15 クリーニングユニット
25 中間転写ベルト
26 駆動ローラ
27 従動ローラ
28 中間転写ローラ
29 転写ベルトクリーニングユニット
30 転写ローラ
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
35 自動給紙トレイ
36 ピックアップローラ
37 搬送ローラ
38 レジストローラ
39 手差給紙トレイ
40 排出ローラ
41 排出トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子で構成されるトナーであって、
結着樹脂は、植物由来成分から成る樹脂を含み、
トナー粒子には疎水性微粒子が内添されていることを特徴とするトナー。
【請求項2】
植物由来成分から成る樹脂が、下記化学式(1)で示されるユニットであるポリ乳酸を含み、結着樹脂全量に対して20重量%以上50重量%以下の割合で含有されることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
−[O−CH(CH)−CO]− …(1)
(式中、nは、正の整数を表す。)
【請求項3】
トナー粒子に内添されている疎水性微粒子の表面積の合計が前記結着樹脂100重量部に対して300m以上1200m以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記疎水性微粒子は、疎水化度が80%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のトナー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のトナーの製造方法であって、
少なくとも植物由来成分から成る樹脂を含む結着樹脂、着色剤および疎水性微粒子を混合して混合物を作製する前混合工程と、
混合物を溶融混練して溶融混練物を作製する溶融混練工程と、
溶融混練物を粉砕して粉砕物を作製する粉砕工程と、
粉砕物から過粉砕物および粗粉を除去する分級工程とを含むことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項7】
前記トナーとキャリアとを含む2成分現像剤であることを特徴とする現像剤。
【請求項8】
請求項6または7に記載の現像剤を用いて、像担持体に形成される潜像を現像してトナー像を形成することを特徴とする現像装置。
【請求項9】
潜像が形成される像担持体と、
像担持体に潜像を形成する潜像形成手段と、
請求項8に記載の現像装置とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−60847(P2010−60847A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226498(P2008−226498)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】