説明

トラクタ

【課題】キャビン内のオペレータが機体側方へ視線を向けた際に、その視線をサイドフレームでできるだけ遮らないようにして、視界性の向上を図る。
【解決手段】運転操作部を覆うキャビン20を備え、該キャビン20を構成するフロントフレーム25とリアフレーム26との間にサイドフレーム27を上下方向に延びるように設けて、該運転操作部に備えた座席23の側方に配置したトラクタにおいて、前記サイドフレーム27の上下中央部27cの太さL3を上部27aと下部27bの太さL1・L2よりも細くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転操作部を覆うキャビンを備えたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転操作部を覆うキャビンを備え、該キャビンを構成するフロントフレームとリアフレームとの間にサイドフレームを上下方向に延びるように設けて、該運転操作部に備えた座席の側方に配置したトラクタは公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−316671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のようなトラクタのキャビンおいては、左右一対のサイドフレームの上部と下部とに、サイドガラスを機体側方へ開閉可能にするヒンジを取り付けることができるように、上下にわたって略均一の太さが確保されていた。つまり、サイドフレームのヒンジを取り付ける必要がなく、キャビン内のオペレータの視界にはいりやすい上下中途部まで、上部や下部と同様に太くなっていた。そのため、オペレータが機体側方へ視線を向けたときに、その視線がサイドフレームにて遮られる領域が大きくなり、視界性が悪くなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、運転操作部を覆うキャビンを備え、該キャビンを構成するフロントフレームとリアフレームとの間にサイドフレームを上下方向に延びるように設けて、該運転操作部に備えた座席の側方に配置したトラクタにおいて、前記サイドフレームの上下中央部の太さを上部と下部の太さよりも細くしたものである。
【0006】
請求項2においては、前記サイドフレームの上下中途部の外側に機体外側へ突出する突出部を上下方向に延びるように設けたものである。
【0007】
請求項3においては、前記サイドフレームの内側に取付フレームを上下方向に延びるように一体的に設けて、該取付フレームの内側に被嵌合部を形成し、該被嵌合部にカバー体に形成した嵌合部を嵌合して、該サイドフレームを被覆する構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、キャビン内のオペレータが視線を機体側方へ向けた際に、その視線をサイドフレームの上下中途部で遮りにくくして、視界性を向上させることができる。また、キャビンの形状に変化を与えて、その意匠性を高めることができる。
【0010】
請求項2においては、キャビンの意匠性を高めることができるとともに、サイドフレームの強度を向上させることができる。また、突出部でその両側に形成されるシール部を隠して、該シール部への雨水などによる直接被水を防止することができる。
【0011】
請求項3においては、カバー体を用いたサイドフレームの被覆作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施例に係るトラクタの全体構成を示す側面図、図2はキャビン側部の構成を示す側面図、図3はサイドフレームの構成を示す側面図、図4は図2におけるA−A矢視断面図、図5はカバー体の取付構造を示す斜視図、図6はカバー体の取付構造を示す分解斜視図である。
【0014】
まず、本発明の一実施例に係るキャビン20を備えたトラクタ1の全体構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、トラクタ1は、機体前部に備えたエンジンフレーム2にエンジン3を搭載し、機体後部に設けたトランスミッション4の左右両側にクローラ式走行装置5を支持して、動力をエンジン3からクローラ式走行装置5にトランスミッションを介して伝達することにより、前進または後進走行可能とされている。また、トランスミッション4の後部にロアリンク6やトップリンク等からなる作業機装着装置を設けて、これに装着した作業機を駆動させることができるように構成されている。
【0016】
前記トラクタ1において、クローラ式走行装置5は、トランスミッション4から左右両側に突出する車軸10に駆動スプロケット11を支持する一方、トラックフレーム12の前端部および後端部に従動スプロケット13を回転自在に支持するともに、前後の従動スプロケット13の間に転輪14を回転自在に支持し、これらの駆動スプロケット11と、従動スプロケット13と、転輪14との周囲にクローラベルト15を巻回することで構成されている。そして、トラックフレーム12で機体後部に支持されている。
【0017】
前記トラクタ1の機体前部にはエンジン3を覆うボンネット18が設けられ、機体後部には運転操作部を覆うキャビン20が設けられている。キャビン20内の運転操作部では、ボンネット18の後方にダッシュボード21が配設され、該ダッシュボード21の後方に機体の操向操作を行うためのステアリングハンドル22が設けられている。また、ステアリングハンドル22の後方に座席23が配置され、該座席23の周囲に機体各部の装置を操作するためのレバーやスイッチなどが配置されている。
【0018】
前記キャビン20は、複数のフレームからなるキャビンフレームに各種ガラスおよびルーフを設けて構成されている。このキャビンフレームは、運転操作部の左右前方にフロントフレーム25を立設し、運転操作部の左右後方にリアフレーム26を立設し、運転操作部の左右側方でフロントフレーム25とリアフレーム26との間にサイドフレーム27を立設し、各フレーム25・26・27の上端部を連結するようにルーフフレーム28を横設することで、運転操作部の周囲にかたちづくられている。
【0019】
そして、このように形成されるキャビンフレームのうち、左右のフロントフレーム25の間にフロントガラスが設けられ、左右のリアフレーム26の間にリアガラスが設けられ、左右の各フロントフレーム25とサイドフレーム27との間にオペレータ乗降用ドアとなるサイドガラス31が設けられ、左右の各サイドフレーム27とリアフレーム26との間に左右のリアサイドガラス32が設けられ、さらにこれらのフレーム25・26・27上のルーフフレーム28にルーフ33が設けられている。
【0020】
図2に示すように、前記サイドガラス31は外側外周縁部にシール部材34を備えて、後端部でサイドフレーム27にヒンジ35にて左右回動可能に支持され、前端部に設けた把手36でもってヒンジ35を支点として機体側方へ開閉可能とされている。同様に、リアサイドガラス32も外側外周縁部にシール部材37を備えて、後端部でリアサイドフレーム27にヒンジ38にて回動可能に支持され、前端部内側に備えた把手39でもってヒンジ38を支点として機体側方へ開閉可能とされている。
【0021】
次に、前記キャビン20のサイドフレーム27の構成について詳細に説明する。
【0022】
図2、図3に示すように、サイドフレーム27は、運転操作部に備えられた座席23の左右側方で、クローラ式走行装置5の上方を覆う左右のフェンダ40上面に上下方向に延設されて、前述のようにキャビン20の一部を構成するようになっている。そして、サイドガラス31を支持するヒンジ35の取付部を除いた部分を、十分な強度を確保しつつ、キャビン20内で座席23に着座するなどしたオペレータの視線をできるだけ遮らない細さとして、オペレータの視界を広くするように形成されている。
【0023】
すなわち、サイドフレーム27は、ヒンジ38を取り付ける上部27aおよび下部27bの太さに比べて、その間の座席23に着座したオペレータの視界に入りやすい上下中途部27cの太さが細くなるように形成されている。このサイドフレーム27では、上下中途部での前後幅L1が上部および下部の前後幅L2・L3よりも狭く(L1<L2、L1<L3)なるように形成されて、上下中途部27cが幅狭となり、上部27aおよび下部27bが幅広となる形状とされている。
【0024】
具体的に本実施例では、サイドフレーム27の前側(前辺、または前面)が側面視で上下略直線状に形成され、後側(後辺)が側面視で前方へ凹となる湾曲状に形成されて、上下中途部27cの前後幅L1が上部27aおよび下部27bの前後幅L2・L3よりも狭く(L1<L2、L1<L3)なるように構成されている。こうして、サイドフレーム27が、その上下中途部27cの太さを上部27aまたは下部27b、もしくは上部27aと下部27bの太さよりも細くする形状とされている。
【0025】
なお、サイドフレームは、前記形状とは逆に前側を側面視で後方へ凹となる湾曲状に形成し、後側を側面視で略直線状に形成して、上下中途部が細くなる形状とすることも可能である。また、前後の片側だけでなく、前側を側面視で後方へ凹となる湾曲状に形成し、後側を側面視で前方へ凹となる湾曲状に形成して、上下中途部が細くなる形状とすることも可能である。さらに、前後の片側もしくは両側に直線状に凹部を形成して、上下中央部を細くする形状としてもよい。
【0026】
そして、前記サイドフレーム27とリアフレーム26との間に設けられたリアサイドガラス32の前側が、図2に示すように、該サイドフレーム27後側の湾曲形状に沿って出っ張るように、側面視で前方へ凸となる湾曲状に形成されている。これにより、従来のようにサイドフレーム27の太さを上下にわたって略均一とした場合に比べて、リアサイドガラス32を前記出っ張り部分だけ大きくして、キャビン20内のオペレータの視界を広くとることができるようになっている。
【0027】
図3、図4に示すように、前記サイドフレーム27においては、幅狭となる上下中途部27cの外側に、機体側方へ突出する突出部27dが設けられている。この突出部27dは、サイドフレーム27の上部27aと下部27bとに取り付けられたヒンジ38の間で、上下中途部27cの前後中央付近に上下方向に略直線状延びるように形成されている。これによって、キャビン20の意匠性やサイドフレーム27自体の強度の向上が図られている。
【0028】
また、突出部27dの前後両側には、サイドガラス31およびリアサイドガラス32の縁部に備えたシール部材34・37がそれぞれ側面視で重複するように配置されている。これらのシール部材34・37は前後方向に突出部27dを挟んで対向して、該突出部27dの前後両側にそれぞれ外側から密着してシール部34a・37aを形成し、該サイドガラス31とサイドフレーム27との間をシールする一方、該リアサイドガラス32とサイドフレーム27との間をシールするようになっている。
【0029】
そして、このように突出部27dは前後に配置されたシール部材34・37の間に位置して、図4に示すように、その高さ(側方への突出長さ)がシール部材34・37の外側端と略同じ高さとなるように設定されて、風きり音が小さくなり、埃などが溜まり難くなるように、各シール部材34・37との隙間を小さくして構成されている。これにより、サイドフレーム27と各シール部材34・37とのシール部34a・37aが側面視で外側から隠されて、雨水などがサイドフレーム27に向かって飛んできた場合には、突出部27dに当たり、これをシール部34a・37aが直接に被らないようになっている。つまり、シール部34a・37aを直接風雨にさらさないようにして、その寿命を長くし、シールが確実に行われるようになっている。
【0030】
図4、図5、図6に示すように、前記サイドフレーム27の内側には、これと一体的にカバー体46の取付フレーム45が固設されている。取付フレーム45はサイドフレーム27と略同じ上下長さとし、幅狭となる上下中途部の幅に合わせた前後幅とを有して、フェンダ40上面に上下方向に延びるように構成されている。そしてこの取付フレーム45の前後が内側に折り曲げられて被嵌合部45a・45bとされている。すなわち、取付フレーム45は、その上下にわたって前部を内側に向かって後斜め側方へ屈曲させて前側被嵌合部45aを形成し、その後部に内側に向かって前斜め側方へ屈曲させた後側被嵌合部45bを形成して、内側を開放した平面断面視略「ム」状に形成されている。
【0031】
カバー体46は、キャビン20の内側において、取付フレーム45、即ちサイドフレーム27を被覆するものであり、取付フレーム45と略同じ上下長さおよび前後幅を有して、押出成形を用いた合成樹脂などで、該取付フレーム45に沿って上下方向に延びるように構成されている。そして、フェンダ40とルーフ33との間に配置されている。このカバー体46は、平面断面視で内側に向かって凸となる湾曲状に形成されて、その前後両側の開放端を取付フレーム45の前後両側の開放端に対向させるように配置されている。そして、前後両側に上下にわたって平面断面視で略U字状に形成した嵌合部46a・46bを、それぞれ取付フレーム45の前後の各被嵌合部45a・45bに嵌合されるようになっている。
【0032】
また、カバー体46の後側の上下中途部には切欠き46cが形成されている。一方、この切欠き46cと対向するように、取付フレーム45の後側被嵌合部45aに略コ形の取付ステー48が設けられて、これがカバー体46の取付時にその切欠き46cに嵌り、その一部がカバー体46と切欠き46c付近で重なるように構成されている。そしてこのカバー体46と取付ステー48の互いの重複部に貫通孔46d・48aが一致するように形成されている。こうして、カバー体46を嵌合部46a・46bで取付フレーム45の被嵌合部45a・45bに嵌合させたうえで、貫通孔46d・48aに締結具49を挿通して、カバー体46を取付ステー48に締結することによって、カバー体46が取付フレーム45に取り付けられるようになっている。
【0033】
以上のように、運転操作部を覆うキャビン20を備え、該キャビン20を構成するフロントフレーム25とリアフレーム26との間にサイドフレーム27を上下方向に延びるように設けて、該運転操作部に備えた座席23の側方に配置したトラクタにおいて、前記サイドフレーム27の上下中央部27cの太さL3を上部27aと下部27bの太さL1・L2よりも細くしたことにより、キャビン20内のオペレータが視線を機体側方へ向けた際に、その視線をサイドフレーム27の上下中途部で遮りにくくして、視界性を向上させることができる。また、キャビン20の形状に変化を与えて、その意匠性を高めることができる。
【0034】
また、前記トラクタ1において、サイドフレーム27の上下中途部の外側に機体外側へ突出する突出部27dを上下方向に延びるように設けたことにより、キャビン20の意匠性を高めることができるとともに、サイドフレーム27の強度を向上させることができる。また、突出部27dでその両側に形成されるシール部34a・37aを隠して、該シール部34a・37aへの雨水などによる直接被水を防止することができる。
【0035】
また、前記トラクタ1において、前記サイドフレーム27の内側に取付フレーム45を上下方向に延びるように一体的に設けて、該取付フレーム45の内側に被嵌合部45a・45bを形成し、該被嵌合部45a・45bにカバー体46に形成した嵌合部46a・46bを嵌合して、該サイドフレーム27を被覆する構成としたことにより、カバー体46を用いたサイドフレーム27の被覆作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例に係るトラクタの全体構成を示す側面図。
【図2】キャビン側部の構成を示す側面図。
【図3】サイドフレームの構成を示す側面図。
【図4】図2におけるA−A矢視断面図。
【図5】カバー体の取付構造を示す斜視図。
【図6】カバー体の取付構造を示す分解斜視図。
【符号の説明】
【0037】
1 トラクタ
20 キャビン
23 座席
27 サイドフレーム
27a 上部
27b 下部
27c 上下中途部
27d 突出部
45 取付フレーム
45a 被嵌合部
45b 被嵌合部
46 カバー体
46a 嵌合部
46b 嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転操作部を覆うキャビンを備え、該キャビンを構成するフロントフレームとリアフレームとの間にサイドフレームを上下方向に延びるように設けて、該運転操作部に備えた座席の側方に配置したトラクタにおいて、前記サイドフレームの上下中央部の太さを上部と下部の太さよりも細くしたことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記サイドフレームの上下中途部の外側に機体外側へ突出する突出部を上下方向に延びるように設けたことを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記サイドフレームの内側に取付フレームを上下方向に延びるように一体的に設けて、該取付フレームの内側に被嵌合部を形成し、該被嵌合部にカバー体に形成した嵌合部を嵌合して、該サイドフレームを被覆する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−195171(P2008−195171A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31197(P2007−31197)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】