トランスインピーダンスアンプ
【課題】広帯域かつ平坦性の高い利得周波数特性を有するトランスインピーダンスアンプを提供する。
【解決手段】トランスインピーダンスアンプは、コア回路6と、コア回路6の出力信号振幅を検出する出力信号モニタ回路7と、振幅検出値に基づいてコア回路6の利得および周波数ピーキング量を制御する制御回路8を備える。制御回路8は、出力信号モニタ回路7の第一の帯域通過フィルタの通過帯域におけるコア回路6の出力信号振幅が所望の値になるように、出力信号モニタ回路7の第一の振幅検出回路が検出した検出値に基づいて帰還抵抗RFの値を変化させ、出力信号モニタ回路7の第二の帯域通過フィルタの通過帯域におけるコア回路6の出力信号振幅が所望の値になるように、出力信号モニタ回路7の第二の振幅検出回路が検出した検出値に基づいて周波数ピーキング量を変化させる。
【解決手段】トランスインピーダンスアンプは、コア回路6と、コア回路6の出力信号振幅を検出する出力信号モニタ回路7と、振幅検出値に基づいてコア回路6の利得および周波数ピーキング量を制御する制御回路8を備える。制御回路8は、出力信号モニタ回路7の第一の帯域通過フィルタの通過帯域におけるコア回路6の出力信号振幅が所望の値になるように、出力信号モニタ回路7の第一の振幅検出回路が検出した検出値に基づいて帰還抵抗RFの値を変化させ、出力信号モニタ回路7の第二の帯域通過フィルタの通過帯域におけるコア回路6の出力信号振幅が所望の値になるように、出力信号モニタ回路7の第二の振幅検出回路が検出した検出値に基づいて周波数ピーキング量を変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送方式の光/電気変換を行う光受信回路において、信号等化を行うトランスインピーダンスアンプに関するものである。特に本発明は、高速動作可能な広帯域な利得周波数特性をもつトランスインピーダンスアンプに関するものである。
具体的には、光基幹伝送システム、光アクセスシステム、光インターコネクション等の各種光伝送システムに用いられる光受信用IC、ならびにこれを用いた高速光受信モジュール、光送受信トランシーバなどに光受信回路として適用されるものである。本発明は、光通信技術の進展とともに、高速化が求めらる上記光受信回路において、広帯域な利得周波数特性を実現することにより、高速動作可能なトランスインピーダンスアンプを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の進展とともに、伝送されるデータ量が飛躍的に増大しており、伝送装置の大容量化が求められている。この伝送装置の大容量化を実現するために、光受信器の高速化が求められている。光通信において一般的な光/電気変換を行う光受信器の構成を、図11に示す。図中、101はトランスインピーダンスアンプ(TIA)、102は増幅回路、103は光受光素子(フォトディテクタ)、104は入力寄生容量、RFは帰還抵抗である。
【0003】
フォトディテクタ103は、光信号を受信して電流信号Iinに変換する。トランスインピーダンスアンプ101は、この電流信号Iinを受信して増幅し、後段の回路が受信可能な振幅の電圧信号Voutに変換するものである。トランスインピーダンスアンプ101において受信可能なデータの高速化を実現するためには、利得周波数特性の広帯域化が必須である。トランスインピーダンスアンプ101の帯域を制限する主な要因は、フォトディテクタ103や搭載基板等の入力の寄生容量と、トランスインピーダンスアンプ101の入力インピーダンスに起因する入力時定数である。上記入力回路の時定数による帯域制限について以下に詳述する。
【0004】
トランスインピーダンスアンプ101のインピーダンス変換利得Ztは、以下のように与えられる。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、RFは帰還抵抗、Cinはフォトディテクタ103等によって生じる入力の寄生容量、Aoは増幅回路102の開ループ利得(オープンループ利得)である。式(1)から、インピーダンス変換利得Ztが1/√2になる3dB帯域f3dBは、以下のように求められる。
【0007】
【数2】
【0008】
一方、受信する光信号の強度は、伝送距離や、光送信器の出力強度によって変化する。このため、受信信号強度に対応したトランスインピーダンス利得の可変制御機能が必要になる。利得制御は、式(1)から分かるように、帰還抵抗RFを可変とすることで実現できる。
【0009】
図12に一般的な利得制御機能を備えたトランスインピーダンスアンプの回路構成図を示す。図中、106はトランスインピーダンスアンプ・コア回路、107は出力信号モニタ回路、108は利得制御回路である。利得制御機能を備えたトランスインピーダンスアンプについては例えば特許文献1に開示されている。トランスインピーダンスアンプは、トランスインピーダンスアンプ・コア回路106と、出力信号モニタ回路107と、利得制御回路108とからなり、モニタ信号に応じて可変帰還抵抗RFの値を変化させて利得制御を行う。出力信号モニタ回路107は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路106の出力信号振幅を検出・モニタする。利得制御回路108は、可変帰還抵抗RFの値を制御し、あらかじめ設定された出力振幅が得られるようにトランスインピーダンスアンプの利得を最適値に設定する。
【0010】
トランスインピーダンスアンプ・コア回路106の具体的な構成を図13に示す。トランスインピーダンスアンプ・コア回路106は、トランジスタQ1,Q2と、コレクタ抵抗RLと、可変帰還抵抗RFと、電流源ISと、周波数ピーキング回路109とから構成される。このような周波数ピーキング回路を備えたトランスインピーダンスアンプ・コア回路については、例えば非特許文献1に開示されている。トランスインピーダンスアンプの利得を決定する可変帰還抵抗RFは、利得制御電圧VCONT(AGC)により制御される。さらに、トランスインピーダンスアンプの利得周波数特性を改善するためにエミッタ直列帰還抵抗REとピーキング容量CEとからなる周波数ピーキング回路109が用いられる。周波数ピーキング回路109において、例えばピーキング容量CEをバラクターなどの可変容量とすることで、周波数ピーキング量を調整することができ、トランスインピーダンスアンプの帯域を改善することができる。該可変容量は、周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)により制御される。
【0011】
周波数ピーキング制御と利得制御を行う場合のトランスインピーダンスアンプの従来の構成を図14に示す。周波数ピーキング制御と利得制御を行う制御回路108aは、出力信号モニタ回路107の単一の検出信号に応じて、利得制御電圧VCONT(AGC)と周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)を出力する。制御電圧VCONT(AGC),VCONT(Peak)は、出力信号モニタ回路107から出力される検出信号に対して係数や関数を乗じて与えられるものである。
【0012】
トランスインピーダンスアンプの利得をモニタする従来の出力信号モニタ回路107の例を図15(A)、図16(A)に示す。図15(A)は、平均値検出型の出力信号モニタ回路107の例を示す図、図16(A)は、ピーク検出型の出力信号モニタ回路107の例を示す図である。平均値検出型およびピーク検出型の出力信号モニタ回路については、例えば非特許文献2に開示されている。
【0013】
図15(A)に示す平均値検出型の出力信号モニタ回路107は、リファレンス電圧Vrefに対し、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutの振幅の平均値Vaveを検出するものである。この出力信号モニタ回路107は、例えば図15(A)に示すように抵抗R1とホールド容量C1とから構成される。図15(B)は平均値検出型の出力信号モニタ回路107の動作概要を示す図であり、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutの波形を示す図である。抵抗R1とホールド容量C1とからなるRCローパスフィルタ(LPF)は、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutを平滑化し、出力信号Voutの振幅に応じた平均値信号Vaveを検出する。
【0014】
一方、図16(A)に示すピーク検出型の出力信号モニタ回路107は、リファレンス電圧Vrefに対し、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutの振幅のピーク値Vpeakを検出する。この出力信号モニタ回路107は、例えば図16(A)に示すようにダイオード素子D1とホールド容量C2とから構成される。図16(B)はピーク検出型の出力信号モニタ回路107の動作概要を示す図であり、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutの波形を示す図である。ダイオード素子D1とホールド容量C2とからなるダイオード検波回路は、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutを検波して、出力信号Voutの振幅ピークに対応したピーク値信号Vpeakを検出する。
従来のトランスインピーダンスアンプでは、式(3)に示すように、その利得周波数特性は、入力容量Cin、帰還抵抗RFの影響を大きく受ける。
【0015】
【数3】
【0016】
式(3)において、Ztはトランスインピーダンス利得(電流−電圧変換利得)、Aoはトランスインピーダンスアンプ・コア回路106の開ループ利得である。
図17に、フォトディテクタ103等の入力容量Cinが変化した場合のトランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の変化の例を示す。図17において、150はトランスインピーダンスアンプの適正な周波数特性を示し、151は適正な周波数特性の場合の入力容量CinよりもCinが小さい場合の周波数特性を示し、152は適正な周波数特性の場合の入力容量CinよりもCinが大きい場合の周波数特性を示している。フォトディテクタ103等による入力容量Cinは、トランスインピーダンスアンプと接続するフォトディテクタ103の個体ばらつきや、モジュール実装条件等によって変化する。このため、図17に示すように、帯域不足や過剰ピーキングが生じ、トランスインピーダンスアンプの特性劣化の要因となる。
【0017】
また、入力信号強度によって利得Ztを変化させ最適な出力振幅を得るような可変利得とする場合、トランスインピーダンスアンプにおいては、帰還抵抗RFを可変とすることが一般に用いられる。しかしながら、帰還抵抗RFを変化させた場合も入力容量Cinが変化した場合と同様に、トランスインピーダンスアンプの周波数特性は大きく影響を受ける。図18に、帰還抵抗RFを可変とし利得Ztを変化させた場合のトランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の変化の例を示す。図18において、160はトランスインピーダンスアンプの適正な周波数特性を示し、161は適正な周波数特性の場合の利得ZtよりもZtが大きい場合の周波数特性を示し、162は適正な周波数特性の場合の利得ZtよりもZtが小さい場合の周波数特性を示している。図18に示すように、利得Ztの変化に伴い帯域不足や過剰ピーキングが生じるので、トランスインピーダンスアンプの特性劣化の要因となる。
【0018】
すなわち、トランスインピーダンスアンプにおいて、ピーク検出型あるいは平均値検出型の出力信号モニタ回路107を用いた従来のモニタ技術では、可変利得ならびに可変周波数ピーキング制御機構を有するトランスインピーダンスアンプ・コア回路の周波数特性の平坦化が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009−232380号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Chih-Fan Liao,and Shen-Luan Liu,“A 40Gb/s Transimpedance-AGC Amplifier with 19dB DR in 90nm CMOS”,IEEE International Solid-State Circuits Conference,Tech.Dig.,pp.54-55,2007
【非特許文献2】Ethan Crain,and Michael Perrott,“A 3.125Gb/s Limit Amplifier with 42dB Gain and 1 s Offset Compensation in 0.18μm CMOS”,IEEE International Solid-State Circuits Conference,Tech.Dig.,pp.232-233,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記のように、従来のトランスインピーダンスアンプでは、利得の変化や入力容量の変化に対して、利得周波数特性の広帯域性と平坦性を両立させることが難しいという問題があった。
【0022】
本発明の目的は上記の問題を解決し、広帯域かつ平坦性の高い利得周波数特性を有するトランスインピーダンスアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のトランスインピーダンスアンプは、電流信号を帰還抵抗の値に比例するトランスインピーダンス利得によって増幅すると同時に電圧信号に変換するコア回路と、このコア回路の出力信号振幅を検出する出力信号モニタ回路と、この出力信号モニタ回路が検出した振幅検出値に基づいて前記コア回路の利得および周波数ピーキング量を制御する制御回路とを備え、前記コア回路は、前記帰還抵抗の値を変化させる帰還抵抗可変回路と、前記周波数ピーキング量を変化させる周波数ピーキング回路とを備え、前記出力信号モニタ回路は、前記コア回路の出力信号を入力とする第一の帯域通過フィルタと、この第一の帯域通過フィルタの出力信号振幅を検出する第一の振幅検出回路と、前記コア回路の出力信号を入力とする第二の帯域通過フィルタと、この第二の帯域通過フィルタの出力信号振幅を検出する第二の振幅検出回路とから構成され、前記制御回路は、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値に基づいて前記帰還抵抗の値を変化させると共に、前記第二の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように、前記第二の振幅検出回路が検出した振幅検出値に基づいて前記周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記出力信号モニタ回路の第二の帯域通過フィルタの通過帯域は、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域よりも高い周波数帯域であることを特徴とするものである。
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記出力信号モニタ回路の第一の帯域通過フィルタは、前記コア回路の出力信号のうち低周波信号を通す低域通過フィルタであり、前記第二の帯域通過フィルタは、前記コア回路の出力信号のうち高周波信号を通す高域通過フィルタであることを特徴とするものである。
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記制御回路は、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値に応じた利得制御電圧を前記帰還抵抗可変回路に出力して、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように前記帰還抵抗の値を変化させると共に、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値と前記第二の振幅検出回路が検出した振幅検出値との差分に応じた周波数ピーキング制御電圧を前記周波数ピーキング回路に出力して、前記第二の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように前記周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記コア回路は、信号入力端子から入力される電流信号を増幅し電圧信号に変換して出力するエミッタ接地回路と、このエミッタ接地回路からの電圧信号を電力増幅して信号出力端子に出力するエミッタフォロア回路と、一端が前記信号出力端子に接続され、他端が前記信号入力端子に接続された前記帰還抵抗と、前記帰還抵抗可変回路と、前記周波数ピーキング回路とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記エミッタ接地回路は、ベースが前記信号入力端子に接続された増幅用トランジスタと、一端に第1の電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタに接続されたコレクタ抵抗と、一端が前記増幅用トランジスタのエミッタに接続され、他端に第2の電源電圧が供給されるエミッタ抵抗とから構成され、前記エミッタフォロア回路は、ベースが前記増幅用トランジスタのコレクタに接続され、コレクタに第1の電源電圧が供給され、エミッタが前記信号出力端子に接続された出力用トランジスタと、この出力用トランジスタに一定の電流を供給する電流源とから構成され、前記周波数ピーキング回路は、前記エミッタ抵抗のインピーダンス値を変化させることにより、周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、光信号に対応した電流信号を電圧信号に変換増幅するトランスインピーダンスアンプにおいて、従来技術では困難であった利得周波数特性の広帯域化と平坦化の両立が可能となる。本発明では、利得周波数特性の広帯域化により動作速度に対し必要な帯域が得られるため、符号間干渉による信号伝送特性劣化を抑えることができる。さらに、利得周波数特性の平坦化により過剰ピーキングが抑えられるので、高周波の信号成分が過剰になることによるリンギングや、郡遅延偏差の悪化による波形劣化を改善できるので、信号伝送特性劣化を抑えることができる。本発明では、特に、伝送距離等に応じて変更が必要になる利得の可変時や、受光素子や実装等によって生じる入力容量の変化に対し、安定して利得周波数特性の広帯域性と平坦性の改善が可能となる。すなわち、受信強度変化や入力容量等の外部要因に対して、トランスインピーダンスアンプの最適な利得周波数制御を提供することができる。本発明により、トランスインピーダンスアンプの広帯域かつ平坦な利得周波数特性が得られるので、良好な信号伝送特性が得られ、伝送距離の長延化に有効である。さらに、本発明による制御機能により実装等の外部要因に対し、容易に特性改善ができるため、コストを抑えることができ、高速動作化に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける可変帰還抵抗の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおけるピーキング容量の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける制御回路の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路のフィルタ特性例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路の動作概要を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプの利得帯域制御特性を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路のフィルタ特性例を示す図である。
【図11】従来の光受信器の構成を示すブロック図である。
【図12】利得制御機能を備えた従来のトランスインピーダンスアンプの構成を示すブロック図である。
【図13】利得制御機能および周波数ピーキング制御機能を備えた従来のトランスインピーダンスアンプ・コア回路の構成を示す回路図である。
【図14】利得制御機能および周波数ピーキング制御機能を備えた従来のトランスインピーダンスアンプの構成を示すブロック図である。
【図15】従来の平均値検出型の出力信号モニタ回路の構成を示す回路図および動作概要を示す図である。
【図16】従来のピーク検出型の出力信号モニタ回路の構成を示す回路図および動作概要を示す図である。
【図17】従来のトランスインピーダンスアンプの周波数特性の入力容量依存性の例を示す図である。
【図18】従来のトランスインピーダンスアンプの周波数特性の利得依存性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示すブロック図である。
電流信号Iinを受信し電圧信号Voutを出力するトランスインピーダンスアンプは、利得制御機能および周波数ピーキング制御機能を備えたトランスインピーダンスアンプ・コア回路6と、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号振幅を検出する出力信号モニタ回路7と、出力信号モニタ回路7が検出した振幅検出値に基づいてトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得および周波数ピーキング量を制御する制御回路8とを備えている。
【0029】
トランスインピーダンスアンプ・コア回路6は、増幅回路2と、増幅回路2の入出力端子間に設けられた可変帰還抵抗RFとから構成される。トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の構成は図13に示した構成と同一である。すなわち、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6は、ベースがコア回路6の信号入力端子に接続されたトランジスタQ1と、ベースがトランジスタQ1のコレクタに接続され、コレクタに電源電圧が供給され、エミッタがコア回路6の信号出力端子に接続されたトランジスタQ2と、一端がトランジスタQ1のコレクタに接続され、他端に電源電圧が供給されるコレクタ抵抗RLと、一端が信号入力端子に接続され、他端が信号出力端子に接続された可変帰還抵抗RFと、一端が信号出力端子に接続され、他端が接地された電流源ISと、一端がトランジスタQ1のエミッタに接続され、他端が接地された周波数ピーキング回路109とから構成される。
【0030】
トランジスタQ1とコレクタ抵抗RLとエミッタ直列帰還抵抗REとは、エミッタ接地回路を構成し、トランジスタQ2と電流源ISとは、エミッタフォロア回路を構成している。エミッタ接地回路とエミッタフォロア回路とは、図1に示した増幅回路2を構成している。トランスインピーダンスアンプ・コア回路6は、信号入力端子からトランジスタQ1のベースに入力される電流信号Iinを、可変帰還抵抗RFの値に応じて増幅して、電圧信号に変換し、しかる後、トランジスタQ2のエミッタから、電力増幅した出力信号Vout(電圧信号)として低インピーダンスで出力する。
【0031】
図2は可変帰還抵抗RFの構成を示す回路図である。図2に示すように、可変帰還抵抗RFは、ゲートに制御回路8からの利得制御電圧VCONT(AGC)が入力され、ソースがトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の信号出力端子に接続され、ドレインがトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の信号入力端子に接続されたMOSトランジスタQ3と、一端がトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の信号出力端子に接続され、他端がトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の信号入力端子に接続された帰還抵抗RF1とから構成される。MOSトランジスタQ3は、帰還抵抗可変回路を構成しており、利得制御電圧VCONT(AGC)に応じてドレイン−ソース間の抵抗値が連続的に変化する連続可変抵抗となる。
【0032】
周波数ピーキング回路109は、一端がトランジスタQ1のエミッタに接続され、他端が接地されたエミッタ直列帰還抵抗REと、エミッタ直列帰還抵抗REと並列に設けられたピーキング容量CEとからなる。ピーキング容量CEは、MIM容量、MOS容量やバラクタ容量などの可変容量を用いることにより実現できる。
【0033】
図3はMOSトランジスタを可変抵抗として用いる場合のピーキング回路CEの構成を示す回路図である。図3に示すように、ピーキング回路CEは、ゲートに周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)が入力され、ドレインがトランジスタQ1のエミッタに接続されたMOSトランジスタQ4と、一端がMOSトランジスタQ4のソースに接続され、他端が接地されたエミッタ抵抗Re1と、一端がMOSトランジスタQ4のソースに接続された容量Ce1と、一端が容量Ce1の他端に接続され、他端が接地されたエミッタ抵抗Re2とから構成される。MOSトランジスタQ4は、周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)に応じてドレイン−ソース間の抵抗値が連続的に変化する連続可変抵抗となる。このMOSトランジスタQ4およびエミッタ抵抗Re1,Re2は、エミッタ直列帰還抵抗REに対して並列に接続されていることから明らかなように、エミッタ直列帰還抵抗REの抵抗値を連続的に変化させる役割を果たす。さらに、エミッタ抵抗Re2と直列に挿入されている容量Ce1は、エミッタ直列帰還抵抗REの高周波帯におけるインピーダンスを変化させる役割を果たす。従って、上記回路はMOSトランジスタQ4のゲート電位を制御することにより、高周波帯におけるインピーダンスを制御でき、ピーキング回路として機能する。
【0034】
図4は出力信号モニタ回路7の構成を示すブロック図である。図4に示すように、出力信号モニタ回路7は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutのうち低周波信号のみを通す第一の帯域通過フィルタである低域通過フィルタ(LPF)10と、出力信号Voutのうち高周波信号のみを通す第二の帯域通過フィルタである帯域通過フィルタ(BPF)11と、LPF10から出力される出力信号の振幅を検出する第一の振幅検出回路12と、BPF11から出力される出力信号の振幅を検出する第二の振幅検出回路13とから構成される。
【0035】
図5は制御回路8の構成を示すブロック図である。制御回路8には、第一の振幅検出回路12が検出した振幅検出値VLと第二の振幅検出回路13が検出した振幅検出値VHとが入力される。制御回路8は、低周波信号の振幅検出値VLに応じた利得制御電圧VCONT(AGC)を出力する出力バッファ14と、低周波信号の振幅検出値VLと高周波信号の振幅検出値VHとの差分(VL−VH)を算出する減算器15と、減算器15が算出した差分(VL−VH)に応じた周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)を出力する出力バッファ16とから構成される。
【0036】
本実施の形態では、異なる周波数帯の出力信号振幅を検出する2つの振幅検出回路を出力信号モニタ回路7に設けることにより、トランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の広帯域性と平坦性の両立を可能とした。すなわち、本実施の形態では、出力信号モニタ回路7の第二の帯域通過フィルタであるBPF11の通過帯域を、第一の帯域通過フィルタであるLPF10の通過帯域よりも高い周波数帯域とすることにより、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutに含まれる低周波信号の振幅検出値VLと出力信号Voutに含まれる高周波信号の振幅検出値VHとをモニタできるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得情報を検出できるだけでなく、低周波信号の振幅検出値VLと高周波信号の振幅検出値VHとの差分からトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得特性の周波数特性をも検出できるため、トランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の平坦性制御が可能となる。
【0037】
前述の式(3)に示すように、トランスインピーダンス利得Ztは、その周波数帯域の決定要因である入力時定数として帰還抵抗RFと開ループ利得Aoがあるので、周波数ピーキング回路109のみでなく開ループ利得も制御することにより、トランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の広帯域化と平坦性の改善がより可能となる。
【0038】
図4に示した出力信号モニタ回路7のフィルタ特性例を図6に示す。図6において、60はトランスインピーダンスアンプの適正な利得周波数特性を示し、61はLPF10の通過帯域特性を示し、62はBPF11の通過帯域特性を示している。
図7(A)、図7(B)、図7(C)は出力信号モニタ回路7による出力信号振幅検出の動作概要を示す図であり、LPF10が抽出する低周波信号とBPF11が抽出する高周波信号の波形例を示す図である。図7(A)は高周波信号の振幅VaHと低周波信号の振幅VaLが同じ場合の波形例を示し、図7(B)は高周波信号の振幅VaHが低周波信号の振幅VaLよりも小さい場合の波形例を示し、図7(C)は高周波信号の振幅VaHが低周波信号の振幅VaLよりも大きい場合の波形例を示している。
【0039】
出力信号モニタ回路7の第一の振幅検出回路12は、LPF10が抽出した低周波信号の振幅VaLに応じた振幅検出値VLを出力し、第二の振幅検出回路13は、BPF11が抽出した高周波信号の振幅VaHに応じた振幅検出値VHを出力する。
【0040】
制御回路8は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得については低周波信号の振幅検出値VLに応じて制御する。低周波信号の振幅検出値VLが大きくなると、利得制御電圧VCONT(AGC)が上昇するので、MOSトランジスタQ3のドレイン−ソース間の抵抗値が小さくなる。これにより、可変帰還抵抗RFの抵抗値(MOSトランジスタQ3と帰還抵抗RF1の合成の抵抗値)が小さくなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得が小さくなる。
【0041】
反対に、低周波信号の振幅検出値VLが小さくなると、利得制御電圧VCONT(AGC)が低下するので、MOSトランジスタQ3のドレイン−ソース間の抵抗値が大きくなる。これにより、可変帰還抵抗RFの抵抗値が大きくなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得が大きくなる。こうして、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の低周波帯の出力信号振幅が所望の値になるように利得制御を行うことができる。
【0042】
また、制御回路8は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の周波数ピーキング量については高周波信号の振幅検出値VHに応じて制御する。さらに、制御回路8は、低周波信号の振幅検出値VLを基準値とし、高周波信号の振幅検出値VHとの差分信号に応じて高周波信号振幅を制御する。
【0043】
すなわち、図7(B)の場合のようにトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutの高周波成分が不足している場合は、VaL>VaHとなり、VL>VHとなるので、周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)が上昇し、MOSトランジスタQ4のドレイン−ソース間の抵抗値が小さくなる。これにより、エミッタ直列帰還抵抗REとピーキング容量CEの合成の抵抗値が小さくなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得が大きくなる。このとき、低周波帯においてはMOSトランジスタQ4とエミッタ抵抗Re1とからなる回路がエミッタ直列帰還抵抗REに並列に接続されている状態と等価であるのに対して、高周波帯においては更に容量Ce1とエミッタ抵抗Re2とからなる回路がエミッタ直列帰還抵抗REに並列に接続されている状態となるので、エミッタ直列帰還抵抗REとピーキング容量CEの合成のインピーダンス値は低周波帯に比べて高周波帯でより小さくなる。こうして、周波数ピーキング回路109のピーキング量を増やすことにより、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯の出力信号振幅が大きくなるように制御する。
【0044】
一方、図7(C)の場合のようにトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutの高周波成分が大きく過剰ピーキングになっている場合は、VaL<VaHとなり、VL<VHとなるので、周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)が低下し、MOSトランジスタQ4のドレイン−ソース間の抵抗値が大きくなる。これにより、エミッタ直列帰還抵抗REとピーキング容量CEの合成の抵抗値が大きくなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得が小さくなる。MOSトランジスタQ4のドレイン−ソース間の抵抗値が大きくなると、キャパシタCe1によるインピーダンス低減効果が弱くなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯の利得を増大させる高周波ピーキング効果も弱くなる。こうして、周波数ピーキング回路109のピーキング量を減らすことにより、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯の出力信号振幅が小さくなるように制御する。以上により、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯の出力信号振幅が所望の値になるように周波数ピーキング制御を行うことができる。
【0045】
図8は本実施の形態のトランスインピーダンスアンプの利得帯域制御特性を示す図である。図8において、80はトランスインピーダンスアンプの適正な利得周波数特性を示し、81は帯域不足の場合の利得周波数特性を示し、82は過剰ピーキングの場合の利得周波数特性を示している。上記の図7(B)に示した低周波信号と高周波信号の関係は図8の81の場合に対応し、図7(C)に示した低周波信号と高周波信号の関係は図8の82の場合に対応している。
【0046】
LPF10と第一の振幅検出回路12とからなる回路は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の低周波帯fWLの利得ZtLに対応する出力信号振幅VaLを検出するのに対し、BPF11と第二の振幅検出回路13とからなる回路は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯fWHの利得ZtHに対応する出力信号振幅VaHを検出する。この周波数帯域に応じた振幅検出値により、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得制御と周波数ピーキング量制御を行う。
【0047】
特に、高速受信用トランスインピーダンスアンプなどの広帯域受信増幅回路においては、広帯域特性を得るために増幅回路内の周波数極(ポール)を周波数帯域(f3dB)付近に設定する。このため、広帯域受信増幅回路の利得周波数特性は図8に示すように低周波帯で平坦で、高周波帯で周波数極が集中し帯域不足もしくは過剰ピーキングになりやすいため、本実施の形態による利得制御およびピーキング制御は広帯域受信増幅回路の広帯域化に有効である。
【0048】
したがって、本実施の形態では、上記の手段により、トランスインピーダンスアンプにおいて、従来技術では困難であった利得周波数特性の広帯域性と平坦性の両立を大きく改善することができる。特に、伝送距離等に応じて変更が必要になる利得の可変時や、フォトディテクタや実装等によって生じる入力容量の変化に対して、安定して利得周波数特性の広帯域性と平坦性の改善が可能となる。すなわち、受信強度変化や入力容量等の外部要因に対して、トランスインピーダンスアンプの最適な利得周波数制御を提供することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、出力信号モニタ回路7の第二の帯域通過フィルタとしてBPF11を用いたが、高域通過フィルタ(HPF)を用いてもよい。
図9は本実施の形態の出力信号モニタ回路7の構成を示すブロック図である。本実施の形態においても、トランスインピーダンスアンプ全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1〜図3、図5の符号を用いて説明する。
【0050】
図9に示すように、本実施の形態の出力信号モニタ回路7は、LPF10と、第一の振幅検出回路12と、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutのうち高周波信号のみを通す第二の帯域通過フィルタであるHPF17と、HPF17から出力される出力信号の振幅を検出する第二の振幅検出回路18とから構成される。第二の振幅検出回路18は、HPF17が抽出した高周波信号の振幅に応じた振幅検出値VHを出力する。
【0051】
図9に示した出力信号モニタ回路7のフィルタ特性例を図10に示す。図10において、60はトランスインピーダンスアンプの適正な利得周波数特性を示し、61はLPF10の通過帯域特性を示し、63はHPF17の通過帯域特性を示している。
その他の構成は、第1の実施の形態と同じである。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、出力信号モニタ回路7の第二の帯域通過フィルタとしてBPF11の代わりに、HPF17を用いることにより、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、光受信回路において信号等化を行うトランスインピーダンスアンプに適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
2…増幅回路、6…トランスインピーダンスアンプ・コア回路、7…出力信号モニタ回路、8…制御回路、10…低域通過フィルタ、11…帯域通過フィルタ、12,13,18…振幅検出回路、14,16…出力バッファ、15…減算器、17…高域通過フィルタ、Q1〜Q4…トランジスタ、RL,RE,Re1,Re2…抵抗、RF,RF1…帰還抵抗、CE,Ce1…容量、IS…電流源。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送方式の光/電気変換を行う光受信回路において、信号等化を行うトランスインピーダンスアンプに関するものである。特に本発明は、高速動作可能な広帯域な利得周波数特性をもつトランスインピーダンスアンプに関するものである。
具体的には、光基幹伝送システム、光アクセスシステム、光インターコネクション等の各種光伝送システムに用いられる光受信用IC、ならびにこれを用いた高速光受信モジュール、光送受信トランシーバなどに光受信回路として適用されるものである。本発明は、光通信技術の進展とともに、高速化が求めらる上記光受信回路において、広帯域な利得周波数特性を実現することにより、高速動作可能なトランスインピーダンスアンプを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の進展とともに、伝送されるデータ量が飛躍的に増大しており、伝送装置の大容量化が求められている。この伝送装置の大容量化を実現するために、光受信器の高速化が求められている。光通信において一般的な光/電気変換を行う光受信器の構成を、図11に示す。図中、101はトランスインピーダンスアンプ(TIA)、102は増幅回路、103は光受光素子(フォトディテクタ)、104は入力寄生容量、RFは帰還抵抗である。
【0003】
フォトディテクタ103は、光信号を受信して電流信号Iinに変換する。トランスインピーダンスアンプ101は、この電流信号Iinを受信して増幅し、後段の回路が受信可能な振幅の電圧信号Voutに変換するものである。トランスインピーダンスアンプ101において受信可能なデータの高速化を実現するためには、利得周波数特性の広帯域化が必須である。トランスインピーダンスアンプ101の帯域を制限する主な要因は、フォトディテクタ103や搭載基板等の入力の寄生容量と、トランスインピーダンスアンプ101の入力インピーダンスに起因する入力時定数である。上記入力回路の時定数による帯域制限について以下に詳述する。
【0004】
トランスインピーダンスアンプ101のインピーダンス変換利得Ztは、以下のように与えられる。
【0005】
【数1】
【0006】
ここで、RFは帰還抵抗、Cinはフォトディテクタ103等によって生じる入力の寄生容量、Aoは増幅回路102の開ループ利得(オープンループ利得)である。式(1)から、インピーダンス変換利得Ztが1/√2になる3dB帯域f3dBは、以下のように求められる。
【0007】
【数2】
【0008】
一方、受信する光信号の強度は、伝送距離や、光送信器の出力強度によって変化する。このため、受信信号強度に対応したトランスインピーダンス利得の可変制御機能が必要になる。利得制御は、式(1)から分かるように、帰還抵抗RFを可変とすることで実現できる。
【0009】
図12に一般的な利得制御機能を備えたトランスインピーダンスアンプの回路構成図を示す。図中、106はトランスインピーダンスアンプ・コア回路、107は出力信号モニタ回路、108は利得制御回路である。利得制御機能を備えたトランスインピーダンスアンプについては例えば特許文献1に開示されている。トランスインピーダンスアンプは、トランスインピーダンスアンプ・コア回路106と、出力信号モニタ回路107と、利得制御回路108とからなり、モニタ信号に応じて可変帰還抵抗RFの値を変化させて利得制御を行う。出力信号モニタ回路107は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路106の出力信号振幅を検出・モニタする。利得制御回路108は、可変帰還抵抗RFの値を制御し、あらかじめ設定された出力振幅が得られるようにトランスインピーダンスアンプの利得を最適値に設定する。
【0010】
トランスインピーダンスアンプ・コア回路106の具体的な構成を図13に示す。トランスインピーダンスアンプ・コア回路106は、トランジスタQ1,Q2と、コレクタ抵抗RLと、可変帰還抵抗RFと、電流源ISと、周波数ピーキング回路109とから構成される。このような周波数ピーキング回路を備えたトランスインピーダンスアンプ・コア回路については、例えば非特許文献1に開示されている。トランスインピーダンスアンプの利得を決定する可変帰還抵抗RFは、利得制御電圧VCONT(AGC)により制御される。さらに、トランスインピーダンスアンプの利得周波数特性を改善するためにエミッタ直列帰還抵抗REとピーキング容量CEとからなる周波数ピーキング回路109が用いられる。周波数ピーキング回路109において、例えばピーキング容量CEをバラクターなどの可変容量とすることで、周波数ピーキング量を調整することができ、トランスインピーダンスアンプの帯域を改善することができる。該可変容量は、周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)により制御される。
【0011】
周波数ピーキング制御と利得制御を行う場合のトランスインピーダンスアンプの従来の構成を図14に示す。周波数ピーキング制御と利得制御を行う制御回路108aは、出力信号モニタ回路107の単一の検出信号に応じて、利得制御電圧VCONT(AGC)と周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)を出力する。制御電圧VCONT(AGC),VCONT(Peak)は、出力信号モニタ回路107から出力される検出信号に対して係数や関数を乗じて与えられるものである。
【0012】
トランスインピーダンスアンプの利得をモニタする従来の出力信号モニタ回路107の例を図15(A)、図16(A)に示す。図15(A)は、平均値検出型の出力信号モニタ回路107の例を示す図、図16(A)は、ピーク検出型の出力信号モニタ回路107の例を示す図である。平均値検出型およびピーク検出型の出力信号モニタ回路については、例えば非特許文献2に開示されている。
【0013】
図15(A)に示す平均値検出型の出力信号モニタ回路107は、リファレンス電圧Vrefに対し、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutの振幅の平均値Vaveを検出するものである。この出力信号モニタ回路107は、例えば図15(A)に示すように抵抗R1とホールド容量C1とから構成される。図15(B)は平均値検出型の出力信号モニタ回路107の動作概要を示す図であり、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutの波形を示す図である。抵抗R1とホールド容量C1とからなるRCローパスフィルタ(LPF)は、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutを平滑化し、出力信号Voutの振幅に応じた平均値信号Vaveを検出する。
【0014】
一方、図16(A)に示すピーク検出型の出力信号モニタ回路107は、リファレンス電圧Vrefに対し、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutの振幅のピーク値Vpeakを検出する。この出力信号モニタ回路107は、例えば図16(A)に示すようにダイオード素子D1とホールド容量C2とから構成される。図16(B)はピーク検出型の出力信号モニタ回路107の動作概要を示す図であり、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutの波形を示す図である。ダイオード素子D1とホールド容量C2とからなるダイオード検波回路は、トランスインピーダンスアンプの出力信号Voutを検波して、出力信号Voutの振幅ピークに対応したピーク値信号Vpeakを検出する。
従来のトランスインピーダンスアンプでは、式(3)に示すように、その利得周波数特性は、入力容量Cin、帰還抵抗RFの影響を大きく受ける。
【0015】
【数3】
【0016】
式(3)において、Ztはトランスインピーダンス利得(電流−電圧変換利得)、Aoはトランスインピーダンスアンプ・コア回路106の開ループ利得である。
図17に、フォトディテクタ103等の入力容量Cinが変化した場合のトランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の変化の例を示す。図17において、150はトランスインピーダンスアンプの適正な周波数特性を示し、151は適正な周波数特性の場合の入力容量CinよりもCinが小さい場合の周波数特性を示し、152は適正な周波数特性の場合の入力容量CinよりもCinが大きい場合の周波数特性を示している。フォトディテクタ103等による入力容量Cinは、トランスインピーダンスアンプと接続するフォトディテクタ103の個体ばらつきや、モジュール実装条件等によって変化する。このため、図17に示すように、帯域不足や過剰ピーキングが生じ、トランスインピーダンスアンプの特性劣化の要因となる。
【0017】
また、入力信号強度によって利得Ztを変化させ最適な出力振幅を得るような可変利得とする場合、トランスインピーダンスアンプにおいては、帰還抵抗RFを可変とすることが一般に用いられる。しかしながら、帰還抵抗RFを変化させた場合も入力容量Cinが変化した場合と同様に、トランスインピーダンスアンプの周波数特性は大きく影響を受ける。図18に、帰還抵抗RFを可変とし利得Ztを変化させた場合のトランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の変化の例を示す。図18において、160はトランスインピーダンスアンプの適正な周波数特性を示し、161は適正な周波数特性の場合の利得ZtよりもZtが大きい場合の周波数特性を示し、162は適正な周波数特性の場合の利得ZtよりもZtが小さい場合の周波数特性を示している。図18に示すように、利得Ztの変化に伴い帯域不足や過剰ピーキングが生じるので、トランスインピーダンスアンプの特性劣化の要因となる。
【0018】
すなわち、トランスインピーダンスアンプにおいて、ピーク検出型あるいは平均値検出型の出力信号モニタ回路107を用いた従来のモニタ技術では、可変利得ならびに可変周波数ピーキング制御機構を有するトランスインピーダンスアンプ・コア回路の周波数特性の平坦化が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009−232380号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Chih-Fan Liao,and Shen-Luan Liu,“A 40Gb/s Transimpedance-AGC Amplifier with 19dB DR in 90nm CMOS”,IEEE International Solid-State Circuits Conference,Tech.Dig.,pp.54-55,2007
【非特許文献2】Ethan Crain,and Michael Perrott,“A 3.125Gb/s Limit Amplifier with 42dB Gain and 1 s Offset Compensation in 0.18μm CMOS”,IEEE International Solid-State Circuits Conference,Tech.Dig.,pp.232-233,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記のように、従来のトランスインピーダンスアンプでは、利得の変化や入力容量の変化に対して、利得周波数特性の広帯域性と平坦性を両立させることが難しいという問題があった。
【0022】
本発明の目的は上記の問題を解決し、広帯域かつ平坦性の高い利得周波数特性を有するトランスインピーダンスアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のトランスインピーダンスアンプは、電流信号を帰還抵抗の値に比例するトランスインピーダンス利得によって増幅すると同時に電圧信号に変換するコア回路と、このコア回路の出力信号振幅を検出する出力信号モニタ回路と、この出力信号モニタ回路が検出した振幅検出値に基づいて前記コア回路の利得および周波数ピーキング量を制御する制御回路とを備え、前記コア回路は、前記帰還抵抗の値を変化させる帰還抵抗可変回路と、前記周波数ピーキング量を変化させる周波数ピーキング回路とを備え、前記出力信号モニタ回路は、前記コア回路の出力信号を入力とする第一の帯域通過フィルタと、この第一の帯域通過フィルタの出力信号振幅を検出する第一の振幅検出回路と、前記コア回路の出力信号を入力とする第二の帯域通過フィルタと、この第二の帯域通過フィルタの出力信号振幅を検出する第二の振幅検出回路とから構成され、前記制御回路は、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値に基づいて前記帰還抵抗の値を変化させると共に、前記第二の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように、前記第二の振幅検出回路が検出した振幅検出値に基づいて前記周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記出力信号モニタ回路の第二の帯域通過フィルタの通過帯域は、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域よりも高い周波数帯域であることを特徴とするものである。
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記出力信号モニタ回路の第一の帯域通過フィルタは、前記コア回路の出力信号のうち低周波信号を通す低域通過フィルタであり、前記第二の帯域通過フィルタは、前記コア回路の出力信号のうち高周波信号を通す高域通過フィルタであることを特徴とするものである。
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記制御回路は、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値に応じた利得制御電圧を前記帰還抵抗可変回路に出力して、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように前記帰還抵抗の値を変化させると共に、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値と前記第二の振幅検出回路が検出した振幅検出値との差分に応じた周波数ピーキング制御電圧を前記周波数ピーキング回路に出力して、前記第二の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように前記周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記コア回路は、信号入力端子から入力される電流信号を増幅し電圧信号に変換して出力するエミッタ接地回路と、このエミッタ接地回路からの電圧信号を電力増幅して信号出力端子に出力するエミッタフォロア回路と、一端が前記信号出力端子に接続され、他端が前記信号入力端子に接続された前記帰還抵抗と、前記帰還抵抗可変回路と、前記周波数ピーキング回路とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のトランスインピーダンスアンプの1構成例において、前記エミッタ接地回路は、ベースが前記信号入力端子に接続された増幅用トランジスタと、一端に第1の電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタに接続されたコレクタ抵抗と、一端が前記増幅用トランジスタのエミッタに接続され、他端に第2の電源電圧が供給されるエミッタ抵抗とから構成され、前記エミッタフォロア回路は、ベースが前記増幅用トランジスタのコレクタに接続され、コレクタに第1の電源電圧が供給され、エミッタが前記信号出力端子に接続された出力用トランジスタと、この出力用トランジスタに一定の電流を供給する電流源とから構成され、前記周波数ピーキング回路は、前記エミッタ抵抗のインピーダンス値を変化させることにより、周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、光信号に対応した電流信号を電圧信号に変換増幅するトランスインピーダンスアンプにおいて、従来技術では困難であった利得周波数特性の広帯域化と平坦化の両立が可能となる。本発明では、利得周波数特性の広帯域化により動作速度に対し必要な帯域が得られるため、符号間干渉による信号伝送特性劣化を抑えることができる。さらに、利得周波数特性の平坦化により過剰ピーキングが抑えられるので、高周波の信号成分が過剰になることによるリンギングや、郡遅延偏差の悪化による波形劣化を改善できるので、信号伝送特性劣化を抑えることができる。本発明では、特に、伝送距離等に応じて変更が必要になる利得の可変時や、受光素子や実装等によって生じる入力容量の変化に対し、安定して利得周波数特性の広帯域性と平坦性の改善が可能となる。すなわち、受信強度変化や入力容量等の外部要因に対して、トランスインピーダンスアンプの最適な利得周波数制御を提供することができる。本発明により、トランスインピーダンスアンプの広帯域かつ平坦な利得周波数特性が得られるので、良好な信号伝送特性が得られ、伝送距離の長延化に有効である。さらに、本発明による制御機能により実装等の外部要因に対し、容易に特性改善ができるため、コストを抑えることができ、高速動作化に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける可変帰還抵抗の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおけるピーキング容量の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける制御回路の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路のフィルタ特性例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路の動作概要を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプの利得帯域制御特性を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプにおける出力信号モニタ回路のフィルタ特性例を示す図である。
【図11】従来の光受信器の構成を示すブロック図である。
【図12】利得制御機能を備えた従来のトランスインピーダンスアンプの構成を示すブロック図である。
【図13】利得制御機能および周波数ピーキング制御機能を備えた従来のトランスインピーダンスアンプ・コア回路の構成を示す回路図である。
【図14】利得制御機能および周波数ピーキング制御機能を備えた従来のトランスインピーダンスアンプの構成を示すブロック図である。
【図15】従来の平均値検出型の出力信号モニタ回路の構成を示す回路図および動作概要を示す図である。
【図16】従来のピーク検出型の出力信号モニタ回路の構成を示す回路図および動作概要を示す図である。
【図17】従来のトランスインピーダンスアンプの周波数特性の入力容量依存性の例を示す図である。
【図18】従来のトランスインピーダンスアンプの周波数特性の利得依存性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るトランスインピーダンスアンプの構成を示すブロック図である。
電流信号Iinを受信し電圧信号Voutを出力するトランスインピーダンスアンプは、利得制御機能および周波数ピーキング制御機能を備えたトランスインピーダンスアンプ・コア回路6と、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号振幅を検出する出力信号モニタ回路7と、出力信号モニタ回路7が検出した振幅検出値に基づいてトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得および周波数ピーキング量を制御する制御回路8とを備えている。
【0029】
トランスインピーダンスアンプ・コア回路6は、増幅回路2と、増幅回路2の入出力端子間に設けられた可変帰還抵抗RFとから構成される。トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の構成は図13に示した構成と同一である。すなわち、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6は、ベースがコア回路6の信号入力端子に接続されたトランジスタQ1と、ベースがトランジスタQ1のコレクタに接続され、コレクタに電源電圧が供給され、エミッタがコア回路6の信号出力端子に接続されたトランジスタQ2と、一端がトランジスタQ1のコレクタに接続され、他端に電源電圧が供給されるコレクタ抵抗RLと、一端が信号入力端子に接続され、他端が信号出力端子に接続された可変帰還抵抗RFと、一端が信号出力端子に接続され、他端が接地された電流源ISと、一端がトランジスタQ1のエミッタに接続され、他端が接地された周波数ピーキング回路109とから構成される。
【0030】
トランジスタQ1とコレクタ抵抗RLとエミッタ直列帰還抵抗REとは、エミッタ接地回路を構成し、トランジスタQ2と電流源ISとは、エミッタフォロア回路を構成している。エミッタ接地回路とエミッタフォロア回路とは、図1に示した増幅回路2を構成している。トランスインピーダンスアンプ・コア回路6は、信号入力端子からトランジスタQ1のベースに入力される電流信号Iinを、可変帰還抵抗RFの値に応じて増幅して、電圧信号に変換し、しかる後、トランジスタQ2のエミッタから、電力増幅した出力信号Vout(電圧信号)として低インピーダンスで出力する。
【0031】
図2は可変帰還抵抗RFの構成を示す回路図である。図2に示すように、可変帰還抵抗RFは、ゲートに制御回路8からの利得制御電圧VCONT(AGC)が入力され、ソースがトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の信号出力端子に接続され、ドレインがトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の信号入力端子に接続されたMOSトランジスタQ3と、一端がトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の信号出力端子に接続され、他端がトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の信号入力端子に接続された帰還抵抗RF1とから構成される。MOSトランジスタQ3は、帰還抵抗可変回路を構成しており、利得制御電圧VCONT(AGC)に応じてドレイン−ソース間の抵抗値が連続的に変化する連続可変抵抗となる。
【0032】
周波数ピーキング回路109は、一端がトランジスタQ1のエミッタに接続され、他端が接地されたエミッタ直列帰還抵抗REと、エミッタ直列帰還抵抗REと並列に設けられたピーキング容量CEとからなる。ピーキング容量CEは、MIM容量、MOS容量やバラクタ容量などの可変容量を用いることにより実現できる。
【0033】
図3はMOSトランジスタを可変抵抗として用いる場合のピーキング回路CEの構成を示す回路図である。図3に示すように、ピーキング回路CEは、ゲートに周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)が入力され、ドレインがトランジスタQ1のエミッタに接続されたMOSトランジスタQ4と、一端がMOSトランジスタQ4のソースに接続され、他端が接地されたエミッタ抵抗Re1と、一端がMOSトランジスタQ4のソースに接続された容量Ce1と、一端が容量Ce1の他端に接続され、他端が接地されたエミッタ抵抗Re2とから構成される。MOSトランジスタQ4は、周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)に応じてドレイン−ソース間の抵抗値が連続的に変化する連続可変抵抗となる。このMOSトランジスタQ4およびエミッタ抵抗Re1,Re2は、エミッタ直列帰還抵抗REに対して並列に接続されていることから明らかなように、エミッタ直列帰還抵抗REの抵抗値を連続的に変化させる役割を果たす。さらに、エミッタ抵抗Re2と直列に挿入されている容量Ce1は、エミッタ直列帰還抵抗REの高周波帯におけるインピーダンスを変化させる役割を果たす。従って、上記回路はMOSトランジスタQ4のゲート電位を制御することにより、高周波帯におけるインピーダンスを制御でき、ピーキング回路として機能する。
【0034】
図4は出力信号モニタ回路7の構成を示すブロック図である。図4に示すように、出力信号モニタ回路7は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutのうち低周波信号のみを通す第一の帯域通過フィルタである低域通過フィルタ(LPF)10と、出力信号Voutのうち高周波信号のみを通す第二の帯域通過フィルタである帯域通過フィルタ(BPF)11と、LPF10から出力される出力信号の振幅を検出する第一の振幅検出回路12と、BPF11から出力される出力信号の振幅を検出する第二の振幅検出回路13とから構成される。
【0035】
図5は制御回路8の構成を示すブロック図である。制御回路8には、第一の振幅検出回路12が検出した振幅検出値VLと第二の振幅検出回路13が検出した振幅検出値VHとが入力される。制御回路8は、低周波信号の振幅検出値VLに応じた利得制御電圧VCONT(AGC)を出力する出力バッファ14と、低周波信号の振幅検出値VLと高周波信号の振幅検出値VHとの差分(VL−VH)を算出する減算器15と、減算器15が算出した差分(VL−VH)に応じた周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)を出力する出力バッファ16とから構成される。
【0036】
本実施の形態では、異なる周波数帯の出力信号振幅を検出する2つの振幅検出回路を出力信号モニタ回路7に設けることにより、トランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の広帯域性と平坦性の両立を可能とした。すなわち、本実施の形態では、出力信号モニタ回路7の第二の帯域通過フィルタであるBPF11の通過帯域を、第一の帯域通過フィルタであるLPF10の通過帯域よりも高い周波数帯域とすることにより、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutに含まれる低周波信号の振幅検出値VLと出力信号Voutに含まれる高周波信号の振幅検出値VHとをモニタできるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得情報を検出できるだけでなく、低周波信号の振幅検出値VLと高周波信号の振幅検出値VHとの差分からトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得特性の周波数特性をも検出できるため、トランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の平坦性制御が可能となる。
【0037】
前述の式(3)に示すように、トランスインピーダンス利得Ztは、その周波数帯域の決定要因である入力時定数として帰還抵抗RFと開ループ利得Aoがあるので、周波数ピーキング回路109のみでなく開ループ利得も制御することにより、トランスインピーダンスアンプの利得周波数特性の広帯域化と平坦性の改善がより可能となる。
【0038】
図4に示した出力信号モニタ回路7のフィルタ特性例を図6に示す。図6において、60はトランスインピーダンスアンプの適正な利得周波数特性を示し、61はLPF10の通過帯域特性を示し、62はBPF11の通過帯域特性を示している。
図7(A)、図7(B)、図7(C)は出力信号モニタ回路7による出力信号振幅検出の動作概要を示す図であり、LPF10が抽出する低周波信号とBPF11が抽出する高周波信号の波形例を示す図である。図7(A)は高周波信号の振幅VaHと低周波信号の振幅VaLが同じ場合の波形例を示し、図7(B)は高周波信号の振幅VaHが低周波信号の振幅VaLよりも小さい場合の波形例を示し、図7(C)は高周波信号の振幅VaHが低周波信号の振幅VaLよりも大きい場合の波形例を示している。
【0039】
出力信号モニタ回路7の第一の振幅検出回路12は、LPF10が抽出した低周波信号の振幅VaLに応じた振幅検出値VLを出力し、第二の振幅検出回路13は、BPF11が抽出した高周波信号の振幅VaHに応じた振幅検出値VHを出力する。
【0040】
制御回路8は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得については低周波信号の振幅検出値VLに応じて制御する。低周波信号の振幅検出値VLが大きくなると、利得制御電圧VCONT(AGC)が上昇するので、MOSトランジスタQ3のドレイン−ソース間の抵抗値が小さくなる。これにより、可変帰還抵抗RFの抵抗値(MOSトランジスタQ3と帰還抵抗RF1の合成の抵抗値)が小さくなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得が小さくなる。
【0041】
反対に、低周波信号の振幅検出値VLが小さくなると、利得制御電圧VCONT(AGC)が低下するので、MOSトランジスタQ3のドレイン−ソース間の抵抗値が大きくなる。これにより、可変帰還抵抗RFの抵抗値が大きくなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得が大きくなる。こうして、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の低周波帯の出力信号振幅が所望の値になるように利得制御を行うことができる。
【0042】
また、制御回路8は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の周波数ピーキング量については高周波信号の振幅検出値VHに応じて制御する。さらに、制御回路8は、低周波信号の振幅検出値VLを基準値とし、高周波信号の振幅検出値VHとの差分信号に応じて高周波信号振幅を制御する。
【0043】
すなわち、図7(B)の場合のようにトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutの高周波成分が不足している場合は、VaL>VaHとなり、VL>VHとなるので、周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)が上昇し、MOSトランジスタQ4のドレイン−ソース間の抵抗値が小さくなる。これにより、エミッタ直列帰還抵抗REとピーキング容量CEの合成の抵抗値が小さくなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得が大きくなる。このとき、低周波帯においてはMOSトランジスタQ4とエミッタ抵抗Re1とからなる回路がエミッタ直列帰還抵抗REに並列に接続されている状態と等価であるのに対して、高周波帯においては更に容量Ce1とエミッタ抵抗Re2とからなる回路がエミッタ直列帰還抵抗REに並列に接続されている状態となるので、エミッタ直列帰還抵抗REとピーキング容量CEの合成のインピーダンス値は低周波帯に比べて高周波帯でより小さくなる。こうして、周波数ピーキング回路109のピーキング量を増やすことにより、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯の出力信号振幅が大きくなるように制御する。
【0044】
一方、図7(C)の場合のようにトランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutの高周波成分が大きく過剰ピーキングになっている場合は、VaL<VaHとなり、VL<VHとなるので、周波数ピーキング制御電圧VCONT(Peak)が低下し、MOSトランジスタQ4のドレイン−ソース間の抵抗値が大きくなる。これにより、エミッタ直列帰還抵抗REとピーキング容量CEの合成の抵抗値が大きくなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得が小さくなる。MOSトランジスタQ4のドレイン−ソース間の抵抗値が大きくなると、キャパシタCe1によるインピーダンス低減効果が弱くなるので、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯の利得を増大させる高周波ピーキング効果も弱くなる。こうして、周波数ピーキング回路109のピーキング量を減らすことにより、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯の出力信号振幅が小さくなるように制御する。以上により、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯の出力信号振幅が所望の値になるように周波数ピーキング制御を行うことができる。
【0045】
図8は本実施の形態のトランスインピーダンスアンプの利得帯域制御特性を示す図である。図8において、80はトランスインピーダンスアンプの適正な利得周波数特性を示し、81は帯域不足の場合の利得周波数特性を示し、82は過剰ピーキングの場合の利得周波数特性を示している。上記の図7(B)に示した低周波信号と高周波信号の関係は図8の81の場合に対応し、図7(C)に示した低周波信号と高周波信号の関係は図8の82の場合に対応している。
【0046】
LPF10と第一の振幅検出回路12とからなる回路は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の低周波帯fWLの利得ZtLに対応する出力信号振幅VaLを検出するのに対し、BPF11と第二の振幅検出回路13とからなる回路は、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の高周波帯fWHの利得ZtHに対応する出力信号振幅VaHを検出する。この周波数帯域に応じた振幅検出値により、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の利得制御と周波数ピーキング量制御を行う。
【0047】
特に、高速受信用トランスインピーダンスアンプなどの広帯域受信増幅回路においては、広帯域特性を得るために増幅回路内の周波数極(ポール)を周波数帯域(f3dB)付近に設定する。このため、広帯域受信増幅回路の利得周波数特性は図8に示すように低周波帯で平坦で、高周波帯で周波数極が集中し帯域不足もしくは過剰ピーキングになりやすいため、本実施の形態による利得制御およびピーキング制御は広帯域受信増幅回路の広帯域化に有効である。
【0048】
したがって、本実施の形態では、上記の手段により、トランスインピーダンスアンプにおいて、従来技術では困難であった利得周波数特性の広帯域性と平坦性の両立を大きく改善することができる。特に、伝送距離等に応じて変更が必要になる利得の可変時や、フォトディテクタや実装等によって生じる入力容量の変化に対して、安定して利得周波数特性の広帯域性と平坦性の改善が可能となる。すなわち、受信強度変化や入力容量等の外部要因に対して、トランスインピーダンスアンプの最適な利得周波数制御を提供することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、出力信号モニタ回路7の第二の帯域通過フィルタとしてBPF11を用いたが、高域通過フィルタ(HPF)を用いてもよい。
図9は本実施の形態の出力信号モニタ回路7の構成を示すブロック図である。本実施の形態においても、トランスインピーダンスアンプ全体の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図1〜図3、図5の符号を用いて説明する。
【0050】
図9に示すように、本実施の形態の出力信号モニタ回路7は、LPF10と、第一の振幅検出回路12と、トランスインピーダンスアンプ・コア回路6の出力信号Voutのうち高周波信号のみを通す第二の帯域通過フィルタであるHPF17と、HPF17から出力される出力信号の振幅を検出する第二の振幅検出回路18とから構成される。第二の振幅検出回路18は、HPF17が抽出した高周波信号の振幅に応じた振幅検出値VHを出力する。
【0051】
図9に示した出力信号モニタ回路7のフィルタ特性例を図10に示す。図10において、60はトランスインピーダンスアンプの適正な利得周波数特性を示し、61はLPF10の通過帯域特性を示し、63はHPF17の通過帯域特性を示している。
その他の構成は、第1の実施の形態と同じである。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、出力信号モニタ回路7の第二の帯域通過フィルタとしてBPF11の代わりに、HPF17を用いることにより、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、光受信回路において信号等化を行うトランスインピーダンスアンプに適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
2…増幅回路、6…トランスインピーダンスアンプ・コア回路、7…出力信号モニタ回路、8…制御回路、10…低域通過フィルタ、11…帯域通過フィルタ、12,13,18…振幅検出回路、14,16…出力バッファ、15…減算器、17…高域通過フィルタ、Q1〜Q4…トランジスタ、RL,RE,Re1,Re2…抵抗、RF,RF1…帰還抵抗、CE,Ce1…容量、IS…電流源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流信号を帰還抵抗の値に比例するトランスインピーダンス利得によって増幅すると同時に電圧信号に変換するコア回路と、
このコア回路の出力信号振幅を検出する出力信号モニタ回路と、
この出力信号モニタ回路が検出した振幅検出値に基づいて前記コア回路の利得および周波数ピーキング量を制御する制御回路とを備え、
前記コア回路は、
前記帰還抵抗の値を変化させる帰還抵抗可変回路と、
前記周波数ピーキング量を変化させる周波数ピーキング回路とを備え、
前記出力信号モニタ回路は、
前記コア回路の出力信号を入力とする第一の帯域通過フィルタと、
この第一の帯域通過フィルタの出力信号振幅を検出する第一の振幅検出回路と、
前記コア回路の出力信号を入力とする第二の帯域通過フィルタと、
この第二の帯域通過フィルタの出力信号振幅を検出する第二の振幅検出回路とから構成され、
前記制御回路は、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値に基づいて前記帰還抵抗の値を変化させると共に、前記第二の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように、前記第二の振幅検出回路が検出した振幅検出値に基づいて前記周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記出力信号モニタ回路の第二の帯域通過フィルタの通過帯域は、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域よりも高い周波数帯域であることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記出力信号モニタ回路の第一の帯域通過フィルタは、前記コア回路の出力信号のうち低周波信号を通す低域通過フィルタであり、前記第二の帯域通過フィルタは、前記コア回路の出力信号のうち高周波信号を通す高域通過フィルタであることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記制御回路は、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値に応じた利得制御電圧を前記帰還抵抗可変回路に出力して、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように前記帰還抵抗の値を変化させると共に、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値と前記第二の振幅検出回路が検出した振幅検出値との差分に応じた周波数ピーキング制御電圧を前記周波数ピーキング回路に出力して、前記第二の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように前記周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記コア回路は、
信号入力端子から入力される電流信号を増幅し電圧信号に変換して出力するエミッタ接地回路と、
このエミッタ接地回路からの電圧信号を電力増幅して信号出力端子に出力するエミッタフォロア回路と、
一端が前記信号出力端子に接続され、他端が前記信号入力端子に接続された前記帰還抵抗と、
前記帰還抵抗可変回路と、
前記周波数ピーキング回路とを備えることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項6】
請求項5に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記エミッタ接地回路は、ベースが前記信号入力端子に接続された増幅用トランジスタと、一端に第1の電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタに接続されたコレクタ抵抗と、一端が前記増幅用トランジスタのエミッタに接続され、他端に第2の電源電圧が供給されるエミッタ抵抗とから構成され、
前記エミッタフォロア回路は、ベースが前記増幅用トランジスタのコレクタに接続され、コレクタに第1の電源電圧が供給され、エミッタが前記信号出力端子に接続された出力用トランジスタと、この出力用トランジスタに一定の電流を供給する電流源とから構成され、
前記周波数ピーキング回路は、前記エミッタ抵抗のインピーダンス値を変化させることにより、周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項1】
電流信号を帰還抵抗の値に比例するトランスインピーダンス利得によって増幅すると同時に電圧信号に変換するコア回路と、
このコア回路の出力信号振幅を検出する出力信号モニタ回路と、
この出力信号モニタ回路が検出した振幅検出値に基づいて前記コア回路の利得および周波数ピーキング量を制御する制御回路とを備え、
前記コア回路は、
前記帰還抵抗の値を変化させる帰還抵抗可変回路と、
前記周波数ピーキング量を変化させる周波数ピーキング回路とを備え、
前記出力信号モニタ回路は、
前記コア回路の出力信号を入力とする第一の帯域通過フィルタと、
この第一の帯域通過フィルタの出力信号振幅を検出する第一の振幅検出回路と、
前記コア回路の出力信号を入力とする第二の帯域通過フィルタと、
この第二の帯域通過フィルタの出力信号振幅を検出する第二の振幅検出回路とから構成され、
前記制御回路は、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値に基づいて前記帰還抵抗の値を変化させると共に、前記第二の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように、前記第二の振幅検出回路が検出した振幅検出値に基づいて前記周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記出力信号モニタ回路の第二の帯域通過フィルタの通過帯域は、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域よりも高い周波数帯域であることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記出力信号モニタ回路の第一の帯域通過フィルタは、前記コア回路の出力信号のうち低周波信号を通す低域通過フィルタであり、前記第二の帯域通過フィルタは、前記コア回路の出力信号のうち高周波信号を通す高域通過フィルタであることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記制御回路は、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値に応じた利得制御電圧を前記帰還抵抗可変回路に出力して、前記第一の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように前記帰還抵抗の値を変化させると共に、前記第一の振幅検出回路が検出した振幅検出値と前記第二の振幅検出回路が検出した振幅検出値との差分に応じた周波数ピーキング制御電圧を前記周波数ピーキング回路に出力して、前記第二の帯域通過フィルタの通過帯域における前記コア回路の出力信号振幅が所望の値になるように前記周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記コア回路は、
信号入力端子から入力される電流信号を増幅し電圧信号に変換して出力するエミッタ接地回路と、
このエミッタ接地回路からの電圧信号を電力増幅して信号出力端子に出力するエミッタフォロア回路と、
一端が前記信号出力端子に接続され、他端が前記信号入力端子に接続された前記帰還抵抗と、
前記帰還抵抗可変回路と、
前記周波数ピーキング回路とを備えることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【請求項6】
請求項5に記載のトランスインピーダンスアンプにおいて、
前記エミッタ接地回路は、ベースが前記信号入力端子に接続された増幅用トランジスタと、一端に第1の電源電圧が供給され、他端が前記増幅用トランジスタのコレクタに接続されたコレクタ抵抗と、一端が前記増幅用トランジスタのエミッタに接続され、他端に第2の電源電圧が供給されるエミッタ抵抗とから構成され、
前記エミッタフォロア回路は、ベースが前記増幅用トランジスタのコレクタに接続され、コレクタに第1の電源電圧が供給され、エミッタが前記信号出力端子に接続された出力用トランジスタと、この出力用トランジスタに一定の電流を供給する電流源とから構成され、
前記周波数ピーキング回路は、前記エミッタ抵抗のインピーダンス値を変化させることにより、周波数ピーキング量を変化させることを特徴とするトランスインピーダンスアンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−90128(P2013−90128A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228692(P2011−228692)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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